説明

棚装置

【課題】構造が簡単で強度と美観に優れた棚装置を提供する。
【解決手段】棚装置はL形のコーナー支柱1と複数段の棚板2とを備えている。棚板2は四周を囲う外壁5を備えており、外壁5の先端縁には内壁6が一体に形成されている。コーナー支柱1と棚板2の外壁5とはボルト7及びナット8で締結されている。また、コーナー支柱1に形成した位置決め突起9と外壁5に空けた位置決め穴10とが嵌まり合っているため、棚装置は頑丈な構造になっている。また、ナット8は内壁6で隠れているため体裁も良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コーナー支柱で棚板を支持している棚装置に関するものである。なお、本願発明の棚装置は定置式のものには限らず、キャスターを備えたワゴンタイプも含んでいる。
【背景技術】
【0002】
物品を保管したり持ち運んだりするのに平面視四角形でオープン方式の棚装置(スチール棚)が多用されている。この棚装置の一種に、平面視四角形の棚板を平面視L形のコーナー支柱にボルトで締結したタイプがあり、このタイプでは、棚板の周囲には、コーナー支柱の内面に重なる外壁を折り曲げ形成している。
【0003】
棚板をコーナー支柱にボルトで固定する方法としては、棚板の外壁に内側から重なる金具を使用して、コーナー支柱と金具とで棚板の外壁をはさみ固定するタイプ(例えば特許文献1参照)と、棚板の外壁をボルト及びナットで直接に締結するタイプとがある。
【0004】
後者の直接に締結するタイプは構造が単純である利点があるが、コーナー支柱と棚板との間にガタ付きが生じやすい(すなわち剛性が低い)問題があった。特に、キャスターを有するワゴンタイプの棚装置は、移動させるのに際してコーナー支柱と棚板との締結箇所に慣性力が作用するため、ガタ付きの問題が顕著に現われている。この問題の解決手段として特許文献2には、棚板の外壁(公報の用語では外壁)を外側に折り返すか又は別体の金属板を外壁の外面に溶接することにより、コーナー支柱の側端面に当たる小片を外壁に重ねて設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭47−9722号公報
【特許文献2】特許第3437988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の発明は、小片の端面をコーナー支柱の側端面に突き当てることによってコーナー支柱の倒れを阻止せんとしたものであり、この場合、小片を溶接によってコーナー支柱の外壁に固着した場合は、小片を外壁に強固に固着できると共に小片として厚い板を使用することができるため、倒れ防止機能(ガタ付き防止機能)は高いが、溶接に手間がかかる問題や、溶接によって塗装が剥げたりひずみが生じたりする問題がある。
【0007】
他方、外壁を折り返すことによって小片を形成した場合は、溶接に起因した問題は生じないが、小片はその上端が外壁に繋がっているに過ぎないため、小片の下端に水平方向の荷重(コーナー支柱を倒すような荷重)がかかると小片が変形しやすくなり、このため、強度アップに限度があるという問題があった。また、特許文献2のものは、外壁の内面にナットが配置されるが、このナットが露出するため見栄えが悪い問題や、物品が引っ掛かることがある点も問題であった。
【0008】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたもので、コーナー支柱の外壁とコーナー支柱とを直接に締結する点では特許文献2と共通しつつ、より改善された形態の棚装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の棚装置は、前提の構成として、複数本のコーナー支柱と、前記コーナー支柱の群で囲われた空間に配置された金属板製の棚板とを備えており、前記コーナー支柱は平
面視で交叉した2枚の側板を備えている一方、前記棚板は、水平状に広がる基板とこの基板の周囲に折り曲げ形成した外壁とを備えており、外壁の端部をコーナー支柱の側板に密着させて両者をボルトで締結している。そして、請求項1の発明は、前記コーナー支柱の側板と棚板の外壁とのうちいずれか一方には位置決め突起を、他方には前記位置決め突起がきっちり嵌まる位置決め穴を設けている点を特徴にしている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ボルトは頭がコーナー支柱の外側に位置するように配置されており、棚板における外壁の内面には前記ボルトがねじ込まれるナットを配置しており、前記棚板における外壁の先端に、基板の側に折り返された内壁が一体に形成されており、外壁と内壁との間には前記ナットを隠す空間が空いており、更に、前記コーナー支柱の側板に位置決め突起が突き出し形成され、棚板の外壁に位置決め穴が空けられている。突起は突き出し(押し出し)加工によって膨出形成されているため、当該位置決め突起と位置決め穴とはコーナー支柱の左右側縁よりも内側(中心線の側)に位置している。
【0011】
なお、本願発明の棚板は基板の周囲に外壁を備えているが、棚板は基板から上向きに立ち上がっていても良いし、下向きに垂下していても良い。いうまでもないが、前者では棚板は上向きに開口した姿勢になっており、外壁は物品の落下防止機能も果たしている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、コーナー支柱と棚板とは位置決め突起と位置決め穴との嵌め合わせによって相対的な姿勢が保持されているため、コーナー支柱と棚板との間のガタ付きを防止できる。この場合、突起及び穴とも加工は簡単であるためコストが嵩むことはない。
【0013】
また、位置決め突起と位置決め穴との間を相対動させるような外力が作用してもそれら位置決め突起が潰れたり位置決め穴の箇所か破断したりすることはないため、高いガタ付き防止機能(締結強度)を発揮することができる。更に、特許文献2では、小片とコーナー支柱とはその端面同士の1箇所だけで突き合わさっているに過ぎないためストッパー機能に限度があるが、本願発明では、位置決め突起と位置決め穴とはコーナー支柱と棚板とが重なっている部分に複数個設けることが可能であるため、ストッパー機能を格段に高くすることが可能になるのであり、この面でも、棚装置の頑丈さを格段にアップできる。
【0014】
請求項2のように構成すると、内壁も補強機能を果たして棚板の剛性が高くなるため棚装置全体としてより頑丈な構造にすることができ、また、ナットは内壁と外壁との間の空間に隠れているため、体裁が良いと共にナットに物品が引っ掛かることも防止できる。また、一般に、棚装置ではコーナー支柱は棚板よりも厚いため、押し出し加工によってコーナー支柱に高い強度の位置決め突起を形成することができ、このため、棚装置の剛性を高める上で好適であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る棚装置の概略斜視図である。
【図2】(A)は分離した状態での一部破断平面図、(B)は組み立てた状態での一部破断平面図である。
【図3】(A)は部分正面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図4】第2〜第4実施形態を示す図である。
【図5】他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(1).第1実施形態(図1〜図3)
図1〜図3では第1実施形態を示している。本実施形態はワゴンタイプの棚装置に適用しており、図1の斜視図で棚装置の概略を示している。棚装置は、平面視で直交した2枚の側板1aを有する4本のコーナー支柱1と、コーナー支柱1の群の間に配置座された上中下3段の棚板2と、各コーナー支柱1の下端に取り付けたキャスター3とから成っている。コーナー支柱1は、帯鋼板を折り曲げて製造することもできるし、市販されているアングル材を使用することも可能である。
【0018】
棚板2は、水平状に広がる平面視四角形の基板4と、基板4の各辺から上向きに立ち上がっている外壁5と、外壁5の上端に連接した内壁6とから成っており、外壁5をコーナー支柱1に締結している。この点を図2及び図3に基づいて説明する。
【0019】
図2のうち(A)はコーナー支柱1と棚板2とを分離した状態での一部破断平面図、(B)は棚板2をコーナー支柱1に締結した状態での一部破断平面図、図3のうち(A)は棚装置の部分的な正面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【0020】
棚板2の外壁5の端部はコーナー支柱1の側板1aの内面に重なっており、両者がボルト7及びナット8で締結されている。コーナー支柱1の1枚の側板1aと棚板2の1枚の外壁5とは1本のボルト7と1個のナット8で締結されており、かつ、コーナー支柱1の各側板1aと棚板2の各外壁5とは、それぞれ上下2個ずつの位置決め突起9と位置決め穴10とで位置決めされている。位置決め突起9及び位置決め穴10は円形に形成されている(多角形又は楕円形でもよい)。
【0021】
本実施形態では、コーナー支柱1の側板1aに位置決め突起9を突設し、棚板2の外壁5に位置決め穴10を形成している。また、位置決め突起9及び位置決め穴10を外壁5の外端部寄りに設けて、ボルト7及びナット8はコーナーの側に配置しているが、ボルト7及びナット8の配置位置や個数、及び、位置決め突起9と位置決め穴10との個数及び配置位置は、それぞれ任意に設定することができる。例えば、ボルト7を囲う4箇所に位置決め突起9と位置決め穴10とを設けることも可能である。
【0022】
コーナー支柱1や棚板2の厚さは棚装置の大きさや耐荷重の大きさによって異なるが、一般には、棚板2よりもコーナー支柱1が厚くなっている。そして、本実施形態の位置決め突起9は、穴を有するダイスでコーナー支柱1を支持し、その状態でポンチで強打してコーナー支柱1の肉をダイスの穴の箇所に突き出すことで形成されている。コーナー支柱1が棚板2よりも厚いため、コーナー支柱1には、棚板2の位置決め穴10がすっぽり嵌まる高さの位置決め突起9を形成することができる。
【0023】
ナット8は棚板2における外壁5の内面に溶接によって固着している。また、図3(B)に示すように、棚板2の内壁6は外壁5から離反しており、このため、外壁5と内壁6との間にはナット8及びボルト7の端部が隠れる空間が空いている。内壁6のうち外壁5に繋がる連接部11は本実施形態では略平坦状の姿勢になっている。他方、内壁6の下端部(自由端部)6aは、外壁5に向けて傾斜した傾斜部になっている。なお、棚の連接部11の各端部は平面視で45度カットされて傾斜しており、隣り合った連接部11が互いに突き合わさっている。
【0024】
以上の構成において、コーナー支柱1と棚板2とは位置決め突起9と位置決め穴10によって位置決めされており、棚装置を変形させようとする外力に対して位置決め突起9と位置決め穴10とが高い抵抗として作用するため、棚装置は高い剛性を保持して頑丈な頑丈な構造になっている。
【0025】
(2).第2〜第4実施形態(図4)
図4では第2〜第4実施形態を示している。このうち(A)に示す第2実施形態では、棚板2の内壁6に、ナット8に嵌まるソケットレンチ13を抜き差し自在な円形の窓穴14を空けている。この例では、ナット8は溶接する必要がないため、組み立て作業の能率を向上できると共に加工誤差を吸収できる利点がある。
【0026】
(B)に示す第3実施形態では、コーナー支柱1の側板1に位置決め穴10を空けて、棚板2の外壁5に位置決め突起9を膨出形成している。更に(C)に示す第4実施形態で
は、コーナー支柱1の側板1aに位置決め穴10を空けて棚板2の外壁5に位置決め突起9をバーリング加工した場合において、位置決め突起9と位置決め穴10とをボルト挿通穴に兼用している。
【0027】
(3).他の実施形態(図5)
図5では棚板2の断面形状の別例を示している。このうち(A)に示す例では、内壁6の連接部11を上向き凸の半円状に形成している。(B)に示す例では、(A)と同様に連接部11を上向き凸の半円状に形成した場合において、下端部6aは斜め上向きの傾斜部になっている。
【0028】
(C)及び(D)に示す例では、内壁6の連接部11は、外壁5と重なるように折り返されてから、外壁5との間隔が広がるように傾斜しており、また、下端部6aは斜め下向きの傾斜部に形成されている。(D)では、斜め下向きの下端部6aに、外壁5と重なる幅狭の重合部6bを一体に設けている。
【0029】
(E)及び(F)の例では、連接部11は斜め下向きに傾斜しており、また、下端部6aは斜め下向きの傾斜部になっており、この下端部6aに、外壁5と重なる幅狭の重合部6bを設けている。(E)の例では重合部6bは上向きに延びており、(F)の例では重合部6bは下向きに延びている。
【0030】
(G)及び(H)に示す例では、内壁6は全体としてやや角張っただ面形状になっており、下端部6aは水平状の姿勢になっている。そして、(G)に示す例では水平状の下端部6aに上向きの重合部6bが一体に形成され、(H)に示す例では水平状の下端部6aに下向きの重合部6bが一体に形成されている。(I)に示す例は(G)と類似しており、(G)よりも角部が丸みを帯びている。
【0031】
(J)に示す例では、連接部11及び下端部6aとも円弧状に形成している。(K)に示す例では、連接部11及び下端部6aとも断面山形に形成されており、(L)に示す例では、連接部11及び下端部6aとも断面台形状に形成されている。
【0032】
(M)に示す例では、内壁6に水平方向に延びるリブ15を多段に形成している。リブ15を設ける場合、縦長の姿勢でも良いし、また、外壁5に形成することも可能である。(N)に示す例では、内壁6のうちボルトによる締結箇所を台錐状に凹ませた凹陥部16と成すことにより、内壁6に外壁5と重なる重合部を形成して、棚板2の外壁5と内壁6とコーナー支柱1とをボルト7とナット8とで共締めしている。
【0033】
(4).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば棚の段数は任意に設定することができる。また、棚装置は、本願発明の構造で締結された棚板に加えて、例えば引出しなどの他の要素を備えていても良い。棚には補強フレームを固着することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 コーナー支柱
2 棚板
4 棚板の基板
5 棚板の外壁
6 棚板の内壁
7 ボルト
8 ナット
9 位置決め突起
10 位置決め穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のコーナー支柱と、前記コーナー支柱の群で囲われた空間に配置された金属板製の棚板とを備えており、前記コーナー支柱は平面視で交叉した2枚の側板を備えている一方、前記棚板は、水平状に広がる基板とこの基板の周囲に折り曲げ形成した外壁とを備えており、外壁の端部をコーナー支柱の側板に密着させて両者をボルトで締結している棚装置であって、
前記コーナー支柱の側板と棚板の外壁とのうちいずれか一方には位置決め突起を、他方には前記位置決め突起がきっちり嵌まる位置決め穴を設けている、
棚装置。
【請求項2】
前記ボルトは頭がコーナー支柱の外側に位置するように配置されており、棚板における外壁の内面には前記ボルトがねじ込まれるナットを配置しており、前記棚板における外壁の先端に、基板の側に折り返された内壁が一体に形成されており、外壁と内壁との間には前記ナットを隠す空間が空いており、
更に、前記コーナー支柱の側板に位置決め突起が突き出し形成され、棚板の外壁に位置決め穴が空けられている、
請求項1に記載した棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206589(P2011−206589A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162246(P2011−162246)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2006−123085(P2006−123085)の分割
【原出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506090451)
【Fターム(参考)】