説明

椅子の背凭れ取付装置

【課題】座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子において、背凭れ部を軽量な金属パイプで作製した背凭れ杆の上端部に応力を分散させて強固に取付けることができるとともに、加工工数が少なく、耐久性にも優れ、コスト低減化に寄与する椅子の背凭れ取付装置を提供する。
【解決手段】背凭れ杆4は、金属丸パイプで作製し、その立上り部43の先端をプレス成形して偏平な固定板45を所定角度を設けて一体形成し、該固定板に形成した取付孔46を用いて合成樹脂製の背インナーの背面に面接触状態でネジ止めする。背凭れ杆4は、固定板の背面に丸パイプ形状を保ったまま立上り部の上端が交差した形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の背凭れ取付装置に係わり、更に詳しくは座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子の背凭れ取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、前記脚部に立設した脚柱の内部に回転可能且つ昇降可能にガスシリンダーを設け、該ガスシリンダーの上端部に前記座部を支持する金属製の座受体を固定するともに、該座受体に前記背凭れ部を支持する背凭れ杆の基部を前記回動軸にてロッキング可能に枢着し、前記座部に設けた前記操作レバーで前記ガスシリンダーを操作して該座部の高さを調節可能とした椅子は各種提供されている。
【0003】
そして、前記座部に基部を枢着した背凭れ杆の立上り部に、背凭れ部を取付けてロッキング可能としている。特許文献1には、金属パイプで背凭れ杆を形成し、左右一対の背凭れ杆を複数の連結部材で連結して一体化し、両背凭れ杆の立上り部を、合成樹脂製の背インナーに前後面の何れかに一方に、後方又は前方に凹入し、かつ下方に開口する凹部を形成し、前記背凭れ杆の上端部を前記凹部に挿入するとともに、背凭れ杆の上端部を背インナーの前面又は後面に当接させて保持し、前記背インナーの前後面をクッション材で外被した構造が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の構造は、前記背インナーに下方へ開放した筒状の凹部を成形するため、成形金型が複雑になって、製造コストの低減化の妨げになるばかりでなく、金属パイプからなる背凭れ杆の上端は切りっ放しの形状であるので、この先端と合成樹脂製の背インナーとの接触部に応力が集中して背インナーが経年劣化して割れる恐れがある。
【0005】
一方、特許文献2には、1本の背凭れ杆で背凭れ部を支持する構造であるが、背凭れ杆を断面が長方形状の角パイプを屈曲して作製し、該背凭れ杆の上端部をプレス加工して三角形状の偏平部を形成し、該偏平部に取付孔を3箇所設けて、合成樹脂製の背インナーの背面にネジ止めし、その背後に背アウターを装着して背凭れ杆の上端部を内部に収容する構造が開示されている。この場合、1本の背凭れ杆で背凭れ部の中央部を支持するので、一箇所に応力が集中し、背凭れ部の左右の捩じりに対して強度を保つために、横幅の大きな背凭れ杆を用いる必要があり、背凭れ杆の重量が増大する等の課題を有している。また、偏平部の両側にリブ部が形成され、このリブ部の存在によって偏平部の曲げ強度が高くなる反面、偏平部と角パイプとのなす角度が10度以内と小さく殆ど直線状にならざるを得ず、また角度設定も難しく設計上の制約になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−101761号公報
【特許文献2】特開2011−183107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子において、背凭れ部を軽量な金属パイプで作製した背凭れ杆の上端部に応力を分散させて強固に取付けることができるとともに、加工工数が少なく、耐久性にも優れ、コスト低減化に寄与する椅子の背凭れ取付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子において、前記背凭れ杆は、金属丸パイプで作製し、その立上り部の先端をプレス成形して偏平な固定板を所定角度を設けて一体形成し、該固定板に形成した取付孔を用いて合成樹脂製の背インナーの背面に面接触状態でネジ止めすることを特徴とする椅子の背凭れ取付装置を構成した(請求項1)。
【0009】
ここで、前記背凭れ杆は、前記固定板の背面に丸パイプ形状を保ったまま前記立上り部の上端が交差した形状となっていることが好ましい(請求項2)。
【0010】
そして、2本の同一外形の側面視略く字状の背凭れ杆を平行に配置し、両立上り部に渡して取付板を溶接して一体化し、該取付板の両端部に取付片を折曲形成し、前記各背凭れ杆の固定板と両取付片に形成した取付孔を用いて4箇所で前記背インナーの背面にネジ止めすることがより好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
以上にしてなる請求項1に係る発明の椅子の背凭れ取付装置は、座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子において、前記背凭れ杆は、金属丸パイプで作製し、その立上り部の先端をプレス成形して偏平な固定板を所定角度を設けて一体形成し、該固定板に形成した取付孔を用いて合成樹脂製の背インナーの背面に面接触状態でネジ止めするので、背凭れ部を軽量な金属パイプで作製した背凭れ杆の上端部に応力を分散させて強固に取付けることができるとともに、加工工数が少なく、応力集中やガタツキを抑制し、耐久性を高めることができ、コスト低減化に寄与する。また、前記背凭れ杆の固定板が偏平なので、前記背インナー18に取付ける際の位置決めが容易になるとともに、背凭れ部3の前後の厚みを抑制することができる。
【0012】
請求項2によれば、前記背凭れ杆は、前記固定板の背面に丸パイプ形状を保ったまま前記立上り部の上端が交差した形状となっているので、背インナーの背面に対する接触面積が広くなるので、該背インナーに対して荷重を分散して支持することができ、また固定板の背面の中央部まで金属丸パイプで支持されるので、該固定板に対する曲げ剛性が高くなり、耐久性の向上が図れる。
【0013】
請求項3によれば、2本の同一外形の側面視略く字状の背凭れ杆を平行に配置し、両立上り部に渡して取付板を溶接して一体化し、該取付板の両端部に取付片を折曲形成し、前記各背凭れ杆の固定板と両取付片に形成した取付孔を用いて4箇所で前記背インナーの背面にネジ止めするので、軽量構造であるにも係わらず、背凭れ部の捩じれに対する強度が高く、安定に背凭れ部を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る椅子の正面図である。
【図2】同じく椅子の縦断側面図である。
【図3】同じく椅子の分解斜視図である。
【図4】座アウターに操作レバーを揺動可能に取付けた状態を裏面側から見た斜視図である。
【図5】同じく座アウターに操作レバーを揺動可能に取付けた状態の部分拡大斜視図である。
【図6】同じく座アウターに操作レバーを揺動可能に取付けた状態の部分拡大縦断側面図である。
【図7】本実施形態の背凭れ杆を示し、(a)は背凭れ杆の斜視図、(b)は背凭れ杆の先端部の側面図、(c)は背凭れ杆の先端部の斜視図である。
【図8】背凭れ杆を座受体にロッキング可能に取付けた枢着部を示す部分縦断正面図である。
【図9】同じく背凭れ杆の枢着部の部分竪断面図である。
【図10】同じく背凭れ杆の枢着部を示し、(a)は部分側面図、(b)は部分横断平面図である。
【図11】本実施形態の化粧カバーを示す全体斜視図である。
【図12】座アウターと背凭れ杆と化粧カバーとの関係を示す部分縦断正面図である。
【図13】座部と背凭れ部の関係を示し,(a)は背凭れ部が無負荷状態の部分側面図、(b)は背凭れ部が後傾したロッキング状態の部分側面図である。
【図14】座部と背凭れ部の関係を示し,(a)は背凭れ部が無負荷状態の部分縦断側面図、(b)は背凭れ部が後傾したロッキング状態の部分縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図3は本発明に係る椅子を示し、図中符号1は脚部、2は座部、3は背凭れ部、4は背凭れ杆、5は回動軸、6は操作レバー、7は化粧カバーをそれぞれ示している。
【0016】
本発明に係る椅子は、前記脚部1に立設した脚柱8の内部に回転可能且つ昇降可能にガスシリンダー9を設け、該ガスシリンダー9の上端部に前記座部2を支持する金属製の座受体10を固定するともに、該座受体10に前記背凭れ部3を支持する背凭れ杆4の基部を前記回動軸5にてロッキング可能に枢着し、前記座部2に設けた前記操作レバー6で前記ガスシリンダー9を操作して該座部の高さを調節可能とし、そしてロッキングの際に可動部での指詰めを防止する目的と外観性の向上を目的として前記背凭れ杆4の下部を前記化粧カバー7で覆った構造のものである。尚、前記背凭れ部3の後傾に対する抵抗力を付与するために、前記背凭れ杆4の基部に設けた傾動板11と前記座受体10との間に、抵抗力を調節可能な弾性付勢手段12を設けている。尚、本発明に関係のない構造は他の公知な構造で置き換えることができる。
【0017】
前記座部2は、合成樹脂製の座アウター13の下面に前記座受体10を取付けるとともに、該座アウター13の上面に、モールドウレタン製の座クッション14を張地15で覆って取付けた構造である。前記座部2の両側部に肘掛け16,16を取付けるには、前記座アウター13の上面に肘補強金具17を取付け、前記肘掛け16の固定部を座アウター13の下面側部に位置させ、前記肘補強金具17にネジ止めする。
【0018】
前記背凭れ部3は、合成樹脂製の背インナー18の前面側にウレタン製の背クッション19を配置し、その表面を張地20で覆うとともに、該張地20の周縁部を前記背インナー18の背面に回り込ませてその周縁部を緊縛して保持し、そして前記背インナー18の背面側の中央部に前記背凭れ杆4の上部を取付けるとともに、背面側から合成樹脂製の背アウター21を嵌着して該背アウター21の周囲で前記張地20の周縁部を圧迫保持した構造である。
【0019】
更に詳しく各部の詳細を添付図面に基づいて説明する。先ず、前記座アウター13は、図4に示すように、下面側に多数のリブ22,…を縦横に設けて強度を高めた合成樹脂製の一体成形品であり、下面の両側部に前後方向に延びた垂下壁23,23が形成され、両垂下壁23,23は前側において連結壁24で連続している。特に、前記両垂下壁23,23は、どのリブ22,…よりも大きく下方へ突出している。そして、前記両垂下壁23,23と連結壁24で囲まれた空間の四隅には、取付孔25,…が貫通形成されている。一方、図1〜図3及び図6に示すように、金属製の前記座受体10は断面ハット形にプレス成形され、上方開放したボックス部26の上端周縁に外向きに補強板27を形成したものである。更に、前記座受体10のボックス部26の底面中央部には、前記ガスシリンダー9の上端部を固定する固定部28が形成され、該ガスシリンダー9の作動ピン29が該固定部28を通して前記ボックス部26の内部に露出するようになっている。そして、前記座受体10の補強板27を前記両垂下壁23,23と連結壁24で囲まれた空間に嵌合した状態で、両側の補強板27,27と前記取付孔25,…を下方から貫通させた固定ネジ30と爪付ナット31とで締め付けて取付けるのである。
【0020】
次に、図4〜図6に基づいて、前記ガスシリンダー9の作動ピン29を操作して座部2の高さを調節するための前記操作レバー6の取付構造を説明する。前記操作レバー6は、1本の金属棒から回動可能に支持される軸部32と、該軸部32の基部側にハンドル部33と先端側に作用部34とをクランク状に屈曲して形成するとともに、ハンドル部33に合成樹脂製のレバーキャップ35を固定した構造である。
【0021】
そして、前記座アウター13の裏面で前記両垂下壁23,23と連結壁24で囲まれた空間内に、前記操作レバー6の軸部32を回動可能に嵌合する軸受部36を一体成形している。本実施形態では、間隔を隔てて二つの軸受部36,36を同軸となるように成形している。ここで、前記軸受部3は、裏面側に突出した一対の嵌合片36A,36Aからなり、両嵌合片36A,36Aの間に前記軸部32を回動可能に嵌合し、両嵌合片36A,36Aの先端内側に対向するように形成した突出部で抜止めをする公知の構造である。前記軸受部36,36は、一方の前記垂下壁23に沿って形成され、その軸受部36の近傍の前記垂下壁2には開口37を形成している。前記開口37は、前記座アウター13を成形する際に、表側の成形金型の突起を抜くことによって形成する。
【0022】
前記操作レバー6を前記座アウター13の裏面側に装着するには、前記垂下壁23の外側から作用部34を前記開口3に挿入し、屈曲部を通過させて前記軸部32まで開口37を通過させ、それから該軸部32を前記軸受部36,36に回動可能に嵌着する。その後、前記座受体10を前述のように前記座アウター1に取付け、固定部28にガスシリンダー9の上端部を固定すると、前記操作レバー6の作用部34の先端部が、前記ガスシリンダー9の作動ピン29の直上に位置するようになる。通常、前記操作レバー6のレバーキャップ35を含むハンドル部33の重量は、前記作用部34の重量よりも重いため、前記ハンドル部33は自重で下がり、前記作用部34は上昇した位置にある。そして、前記レバーキャップ35を持ち上げることにより、前記軸部32を支点として前記作用部34が降下して前記ガスシリンダー9の作動ピン29を押し込んでロックを解除し、前記座部2の高さを調節できるようになる。ここで、前記操作レバー6の軸部32は、前記軸受部36,36に嵌合しているので、その摺動摩擦によって不必要に操作レバー6がバタつくことはない。尚、前記垂下壁23に設けた開口37、前記操作レバー6のハンドル部33の上下変位を許容できるように上下に長い形状となっている。
【0023】
このように、前記操作レバー6を前記座アウター13の裏面側に形成した軸受部36,36に開口37を通して嵌着するだけであるので、従来のように金属製の座受体10に加工し、また他の軸受部品を取付けていたものより、製造工程が少なくなり、部品点数も少なくコスト低減化に寄与するのである。また、前記開口37は、前記垂下壁23を分断してないので、該開口37を設けても曲げ強度を保つことができる。
【0024】
しかし、前記操作レバー6のレバーキャップ35を持ち上げると、前記軸部32が軸受部36から外れる方向に力が加わるので、必要以上に強く持ち上げた場合に、前記軸部32が軸受部36から脱落するのを防止するために、図5に示すように、前記軸受部36,36の間に位置する前記軸部32の下側に金属製又は合成樹脂製の規制板38を前記座アウター13に取付けて、該軸部32の下方変位を規制することも好ましい。具体的には、前記座アウター13に一体成形した嵌合部39に前記規制板38の一端を嵌合保持するとともに、該規制板38の他端をネジ40で座アウター13の円筒形の取付台41に螺合する。
【0025】
次に、図1〜図3及び図7に基づいて、前記背凭れ杆4と背凭れ部3との連結構造を説明する。本実施形態では、2本の同一外形の側面視略く字状の背凭れ杆4,4を平行に配置し、基部42を前記座受体10に回動軸5にて上下に回動可能に枢着し、前記背凭れ部3がロッキング可能となっている。2本の背凭れ杆4,4は、略水平な基部42,42において前記傾動板11を溶接して一体化し、先端部の立上り部43,43において帯状の取付板44を渡して溶接して一体化している。前記背凭れ杆4は、金属丸パイプで作製し、前記立上り部43の先端をプレス加工して偏平な固定板45を、所定角度を設けて一体形成している。
【0026】
更に詳しくは、図7に示すように、前記背凭れ杆4は、前記固定板45の背面に丸パイプ形状を保ったまま前記立上り部43の上端が交差した形状となっており、該固定板45の前面は平面であり、背面は中央部まで立上り部43の金属丸パイプが円形断面を保った状態で連続している。見方を変えれば、板状の固定板45の背面の中央部から一端部にかけて、斜めに切断した金属丸パイプの切断面を接合した形状となっている。図7(b)に示すように、前記固定板45に対する立上り部43の交差する角度θは、15〜50度の範囲で設定可能であり、本実施形態では約23度であるが、15〜30度の角度が好ましい。このような形態に金属丸パイプから固定板45をプレス加工して形成することにより、前述の角度θは広い範囲で設定できる。前記固定板45の背面の中央部まで金属丸パイプで支持されるので、該固定板45に対する曲げ剛性が高くなり、耐久性の向上が図れる。勿論、この形状は、前記固体板45を別部材として、前記立上り部43の先端斜め切断面に溶接することにより実現できるが、本実施形態ではこれをプレス加工して一体形成したことに特徴がある。
【0027】
前記背凭れ杆4の固定板45には取付孔46を穿設し、また前記取付板44の両端部に段状に折曲形成した取付片47にも取付孔48を形成し、図1及び図2に示すように、前記背インナー18の背面の4箇所に面接触状態でネジ49,…で取付けている。そして、これらの取付構造は、前記背インナー18の背面側に前記背アウター21を取付けることにより隠蔽される。ここで、前記固定板45は、平面となっており、前記背インナー18の背面に対する接触面積が広くなるので、該背インナー18に対して荷重を分散して支持することができ、応力集中やガタツキを抑制し、耐久性を高めることができる。また、前記背凭れ杆4の固定板45が偏平なので、前記背インナー18に取付ける際の位置決めが容易になるとともに、背凭れ部3の前後の厚みを抑制することができる。ここで、前記取付片47,47は、ネジ止めではなく前記背インナー18の背面に形成した係合部にスライド係合させても良い。
【0028】
次に、図1〜図3、図7〜図10に基づいて、前記背凭れ杆4を前記座受体10に回動軸5で枢着する構造を説明する。前記座アウター13の両垂下壁23,23と連結壁24で囲まれた空間に前記座受体10を取付けた状態では、図8に示すように、前記垂下壁23と座受体10のボックス部26の側面板50の間に空間が形成され、この左右の空間内に前記背凭れ杆4,4の基部42,42をそれぞれ位置させて、前記ボックス部26の側面板50,50を貫通させた回動軸5で回動可能に支持するのである。図7に示すように、一方の前記背凭れ杆4の基部42に非円孔51を形成するとともに、他方の前記背凭れ杆4の基部42に円孔52を形成する。前記回動軸5は、金属丸棒の一端部を前記非円孔51に非回転で嵌合する非円柱部53とし、具体的には金属丸棒をプレス加工して直径方向の両側に凸部53A,53Aを形成している。ここで、前記非円孔51は、円孔52の直径部に前記凸部53A,53Aを受け入れる凹部51A,51Aを形成した形状であるが、この非円孔51と非円柱部53の関係自体は公知の構造である。
【0029】
前記座受体10のボックス部26の両側面板50,50には、前記回動軸5の直径よりも十分に大きな直径の通孔54,54を内方へ向けてバーリング加工して形成している。つまり、前記側面板50の内側で通孔54の周囲には円筒部を有している。そして、前記側面板50の通孔54には、外側にフランジ部56を有する合成樹脂製のブッシュ55をそれぞれ嵌着している。そして、前記回動軸5の円柱部を前記背凭れ杆4の非円孔51から挿入し、二つのブッシュ55,55を貫通して他方の背凭れ杆4の円孔52に挿入すると同時に、前記非円柱部53を設けた基部を非円孔51に嵌合する。前記回動軸5の長さは、前記両垂下壁23,23の間隔よりも短く、両端部がそれぞれ両背凭れ杆4,4から突出する長さを有している。前記座受体10のボックス部26に、前記両背凭れ杆4,4の基部42,42を回動軸5で回動可能に連結した状態で、該座受体10を座アウター13に取付けることにより、前記回動軸5が両垂下壁23,23の間に位置し、該回動軸5の両端を当止することにより、該回動軸5の先端にEリング等の抜止め用部材を装着しなくても抜止めがなされるのである。しかし、通常は、前記回動軸5の両端は前記両垂下壁23,23には接触しないように設定されている。
【0030】
従って、組立工数が減り、また部品点数も少なくなるので、コスト低減化に寄与するのである。しかも、前記回動軸5は、凸部53A,53Aを設けた非円柱部53が非円孔51に嵌合するので、ロッキングの際に前記背凭れ杆4に対して回動軸5が回転することがなく、前記座受体10のボックス部26に対してブッシュ55,55を軸受として回転するので、またブッシュ55のフランジ部56が、背凭れ杆4とボックス部26の側面板57との間でスペーサーとして機能するので、金属同士の擦れ音が発生することがなく、摩耗も少なくなり、回動動作が円滑である。また、前記通孔54をバーリング加工で形成したので、内方に有する円筒部が前記ブッシュ55にかかる荷重を分散することができ、該ブッシュ55の耐久性が高くなる。尚、一方の前記背凭れ杆4の両管壁に同じ形状の非円孔51,51を形成したが、これは加工がし易いたためであり、図9及び図10に示すように、内側の管壁に形成した非円孔51は前記回動軸5の非円柱部53が嵌合しないので、内側は円孔にしても良い。
【0031】
前述のように、前記座部2を構成する座受体10に、背凭れ部3をロッキング可能に支持する背凭れ杆4,4の基部42,42を回動軸5にて枢着し、両背凭れ杆4,4の基部42,42に渡して固定した前記傾動板11と前記座受体10のボックス部26の底面板57とに、その間隔が接近する方向に前記弾性付勢手段12にて、背凭れ部3の後傾に対して弾性付勢力を付与している。前記弾性付勢手段12は、公知の構造であるが、図12に示すように、前記傾動板11と底面板57に形成した開口部に調節螺軸58を貫通させ、該調節螺軸58の上端に固定した係止部材59と前記底面板57の間に圧縮コイルばね60を介装し、前記傾動板11を貫通した前記調節螺軸58の下端部に調節ハンドル61の内部に埋め込んだナット部材62を螺合したものである。
【0032】
前記背凭れ部3のロッキング動作時に、前記背凭れ杆4の基部42が前記回動軸5を中心に上下に傾動する。このとき背凭れ杆4の可動部に指を挟む危険性があるので、図1〜図3、図11〜図14に示すように、前記背凭れ杆4,4の基部42,42を合成樹脂製の化粧カバー7で覆い、指が挿入される恐れのある空間を無くするのである。
【0033】
一般的に、可動部の指詰め防止処理における指針として、クリアランスを8mm以下、25mm以上にすることが基本である。それが不可能であれば、指を挟んだとしても怪我をしないこと、痛くないことが要求される。本実施形態における椅子は、この指針に準拠した設計となっている。
【0034】
前記化粧カバー7は、図11に示すように、上方へ開放したボックス状となっており、両側に前記座アウター13の両垂下壁23,23の内側に重なって位置する側面カバー片63,63を上向きに形成するとともに、前記座受体10のボックス部26から後方へ延びた前記背凭れ杆4,4の基部42,42から立上り部43の下部にかけて包み込む外被部64を有し、底面カバー部65の前部には前記弾性付勢手段12の調節ハンドル61を受け入れる開口部66が形成され、更に前記座受体10のボックス部26の後部に密接する隔壁部67を前記底面カバー部65に立設している。そして、図13(b)、図14(b)に示すロッキング状態になっても、前記化粧カバー7の側面カバー片63,63は、と前記座アウター13の両垂下壁23,23に接近して内外に重なり、前記隔壁部67は、前記座受体10のボックス部26の後部に接近若しくは密接した状態を維持し、それらの間に指がはまる隙間を塞いでいる。
【0035】
ここで、前記化粧カバー7を所定位置に取付ける構造を説明する。前記化粧カバー7には、前記隔壁部67に平行に前記外被部64に保持片68を立設し、前記隔壁部67の上端部両側に円弧状の接合部を有する係止部69,69を側方へ突設し、前記保持片68にも上端部両側に円弧状の接合部を有する係止部70,70を突設し、更に前記外被部64の後端に前記背アウター21の下端内側に係止する突片71を形成している。そして、前記化粧カバー7の突片71を背アウター21の下端内側に係止した状態で、本体部を持ち上げれば、前記隔壁部67と保持片68は、左右の背凭れ杆4,4の基部42,42の間に変形しながら挿入され、前記隔壁部67の係止部69,69と保持片68の係止部70,70が、それぞれ背凭れ杆4,4に内側上部に圧接状態で係止するのである。この状態では、前記側面カバー片63,63は、前記座アウター13の両垂下壁23,23の内側に密接するようになる(図12参照)。尚、前記背凭れ部3に無負荷の状態(図13(a)、図14(a)参照)では、前記背凭れ杆4,4の基部42,42と座アウター13の間には、指を挟まない程度の十分な間隔が設けられている。また、前記係止部70,70は、前記取付体10のボックス部26の後端コーナー部から側部にかけて包み込むように丸く形成され、その間でも指が挟まれないようにしている。
【0036】
前記座アウター13の垂下壁23は、断面形状が下向きに先細のテーパー形状となっており、上下寸法が大きな垂下壁23の成形時の抜き勾配となりばかりでなく、前記化粧カバー7の側面カバー片63,63を受け入れるためのガイド面ともなっている。前記背凭れ部3をロッキングする際に、前記垂下壁23と側面カバー片63は擦れるが、その摩擦抵抗を低減するために、前記側面カバー片63の外面には、複数の縦リブ72,…を突設している。このように、前記化粧カバー7によって、可動部における指を挟む可能性のある隙間を前記側面カバー片63,63と垂下壁23とで完全に塞いでいるので非常に安全であるとともに、前記背凭れ杆4,4の基部42,42の側方、下方及び後方が、完全に隠蔽されるので外観性にも優れたものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 脚部、 2 座部、
3 背凭れ部、 4 背凭れ杆、
5 回動軸、 6 操作レバー、
7 化粧カバー、 8 脚柱、
9 ガスシリンダー、 10 座受体、
11 傾動板、 12 弾性付勢手段、
13 座アウター、 14 座クッション、
15 張地、 16 肘掛け、
17 肘補強金具、 18 背インナー、
19 背クッション、 20 張地、
21 背アウター、 22 リブ、
23 垂下壁、 24 連結壁、
25 取付孔、 26 ボックス部、
27 補強板、 28 固定部、
29 作動ピン、 30 固定ネジ、
31 爪付ナット、 32 軸部、
33 ハンドル部、 34 作用部、
35 レバーキャップ、 36 軸受部、
37 開口、 38 規制板、
39 嵌合部、 40 ネジ、
41 取付台、 42 基部、
43 立上り部、 44 取付板、
45 固定板、 46 取付孔、
47 取付片、 48 取付孔、
49 ネジ、 50 側面板、
51 非円孔、 52 円孔、
53 非円柱部、 54 通孔、
55 ブッシュ、 56 フランジ部、
57 底面板、 58 調節螺軸、
59 係止部材、 60 圧縮コイルばね、
61 調節ハンドル、 62 ナット部材、
63 側面カバー片、 64 外被部、
65 底面カバー部、 66 開口部、
67 隔壁部、 68 保持片、
69 係止部、 70 係止部、
71 突片、 72 縦リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部に取付けた背凭れ杆によって背凭れ部を支持してなる椅子において、前記背凭れ杆は、金属丸パイプで作製し、その立上り部の先端をプレス成形して偏平な固定板を所定角度を設けて一体形成し、該固定板に形成した取付孔を用いて合成樹脂製の背インナーの背面に面接触状態でネジ止めすることを特徴とする椅子の背凭れ取付装置。
【請求項2】
前記背凭れ杆は、前記固定板の背面に丸パイプ形状を保ったまま前記立上り部の上端が交差した形状となっている請求項1記載の椅子の背凭れ取付装置。
【請求項3】
2本の同一外形の側面視略く字状の背凭れ杆を平行に配置し、両立上り部に渡して取付板を溶接して一体化し、該取付板の両端部に取付片を折曲形成し、前記各背凭れ杆の固定板と両取付片に形成した取付孔を用いて4箇所で前記背インナーの背面にネジ止めする請求項1又は2記載の椅子の背凭れ取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−103088(P2013−103088A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250930(P2011−250930)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【出願人】(591130803)株式会社東洋工芸 (15)
【Fターム(参考)】