説明

椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置及びこの背揉み装置を備えた椅子型マッサージ機

【課題】マッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる背揉み装置において、マッサージ効果を低下させてしまうようなことはなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものであり、しかも機構的な大型化や複雑化を招来することもない構成とする。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ機1に備えられた背揉み装置4は、左右一対のマッサージ部材17を有するマッサージ機構10と、この機構10を下端側で枢支するベース部材12と、ベース部材12を上下動させる上下移動機構13と、マッサージ機構10を揺動駆動する出退動作機構14と、上昇位置ではマッサージ部材17の上端部が前方突出し下降位置では下端部が前方突出するようにマッサージ機構10の回動角を規制する揺動制限機構15とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置、及び背揉み装置を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機の背もたれ部に関し、その内部に、左右一対のマッサージ部材をマッサージ動作させるマッサージ機構が装備されたものは周知である。
このマッサージ機構は、座部に座った使用者の背筋に沿わせて移動させる必要があり、この移動のための上下移動機構が設けられており、このマッサージ機構と上下移動機構とで背揉み装置が構成される。
【0003】
この種の背揉み装置には、必要に応じて又は使用者の好みに応じて、マッサージ部材を通常のマッサージ位置よりも前方へ突出させたり、元の通常位置へ戻したりできるようにした出退動作機構を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この出退動作機構では、上下移動機構により背もたれ部内で上下移動する支持フレームをマッサージ機構とは別に設けておき、この支持フレームに対して、下部枢支点を介してマッサージ機構をその上端側が前後揺動するように支持してある。そして、そのうえで支持フレームとマッサージ機構との上部相互間を前後方向で接離動作(前後駆動)させるようにしてあった。
【0004】
この接離動作を行わせる駆動方式としては、エアの出し入れで膨張と収縮を切り換えるエアセルを用いた「エア方式」と、上下方向で正ネジ部と逆ネジ部とが区画形成されたネジ軸に対して上下の各ネジ部にそれぞれ雌ねじ体を螺合させ、上下の雌ねじ体間を一対のリンクでトグル機構のように連結した「リンク方式」と、偏心カムをベアリング入りの支持体内に嵌合させた状態にして回動させる「カム方式」と、ウオームギヤとネジ歯車(ピニオンギヤ)との噛合でリンク(揺動レバー)を揺動させる「レバー方式」と、の4種が例示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−102798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の背揉み装置付き椅子型マッサージ機において、出退動作機構に例示された4種の駆動方式にはそれぞれに難点があり、いずれも実用において不都合を生じるものであった。
例えば、エア方式では、エアセルを膨張させてマッサージ機構を前方へ突出させたとき、使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)にエアセルの膨張力が屈して、マッサージ機構が押し戻されてしまう問題があった。この問題はマッサージ機構による指圧力(マッサージ効果)の低下や指圧位置のズレにも繋がる。またエア流や排気音などによる騒音の問題もあった。
【0007】
リンク方式では、一対のリンクが必要であることがネックとなり、正ネジ部と逆ネジ部とを有するネジ軸が必須不可欠であるから、これによってパーツとしての高コスト化が生じる問題があった。のみならず、このネジ軸が長くなり、背揉み装置全体としての大型化を招来する問題もあった。
カム方式では、カムの偏心量を大きく確保できないことから、マッサージ機構の前後動ストロークを大きくできないという根本的な問題があった。なお、前後動ストロークを大きくするためにカムの偏心量を大きくしたとすると、背揉み装置としてだけでなく、椅子型マッサージ機の背もたれ部までもを大型化する(分厚くなる)ことになり、採用できない。また、カムと支持部材とがベアリグを介した嵌合関係になっていることから、マッサージ機構の前方突出時に使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)が作用すると、カムと支持部材とがスリップ回転してしまい、エアセルの場合と同様、マッサージ機構が押し戻されてしまう問題があった。
【0008】
レバー方式では、ウオームギヤとネジ歯車とによる減速比が原理的・宿命的に大きくなることから、出退動作機構としての動きは非常に緩慢なものとなり、結果、マッサージ機構の前後動が低速となる問題があった。このため例えば、椅子型マッサージ機全体として、一連のマッサージ動作を行うときなどにあって、サイクルタイムが徒に長くなってしまうといった不都合に繋がっていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、マッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる構成を採用するに際し、マッサージ効果を低下させてしまうようなことはなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものであり、しかも機構的な大型化や複雑化を招来することもない、椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の背揉み装置は、椅子型マッサージ機の背もたれ部に配設された背揉み装置であって、上端部及び下端部のそれぞれに施療子を備え且つ左右一対に配備されたマッサージ部材と、このマッサージ部材にマッサージ動作を伝動する駆動部とを有するマッサージ機構と、このマッサージ機構の下端部を揺動枢支部で支持することで当該マッサージ機構を前後方向に揺動自在に保持するベース部材と、このベース部材を前記背もたれ部内で上下方向に移動可能にする上下移動機構と、前記ベース部材に対して前記マッサージ機構の上端部を前後方向に出退させる出退動作機構と、前記出退動作機構によりマッサージ機構の上端部が前方に突出状態とされた際に、前記マッサージ部材の上端部を前方突出状態で保持可能とする揺動制限機構と、を有していることを特徴とする。
【0011】
なお好ましくは、前記揺動制限機構は、前記出退動作機構によりマッサージ機構の上端部が後方に退行状態とされた際に、前記マッサージ部材の下端部を前方突出状態で保持可能とするよう構成されているとよい。
前述のマッサージ機構は、左右方向に架設された第1回転軸と、この第1回転軸に相対回転自在に設けられたマッサージ部材と、前記マッサージ部材が第1回転軸の回転に伴って連れ回りするのを規制すべく当該マッサージ部材に係合された振れ止め機構とを有することで、第1回転軸の駆動回転によりマッサージ部材を互いに近接離反させ揉み動作を行う揉み駆動部を備え、さらに、前記マッサージ機構は、前記振れ止め機構に連結され且つこの振れ止め機構を介して前記支持アームを第1回転軸の軸心回りに往復揺動させることで、マッサージ部材を前後方向へ出退させ叩き動作を行う叩き駆動部を備えており、前記叩き駆動部は、前記第1回転軸と平行に配設された第2回転軸と、この第2回転軸に偏心した状態で設けられた偏心駆動体と、一端部が前記偏心駆動体からの偏心回転を受動可能に連結され且つ他端部が前記振れ止め機構に連結され且つ前記偏心駆動体からの偏心回転によって長手方向に往復運動する長尺のクランク軸と、を有していて、前記叩き駆動部が、第1回転軸に垂直な方向で且つ上下方向に移動自在とされており、当該叩き駆動部が上下に移動することで前記クランク軸が上下動し、前記マッサージ部材を第1回転軸の軸心回りに回動可能な構成となっているとよい。
【0012】
更に好ましくは、前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、前記案内レール部には、前記マッサージ機構の上端部が前方に突出状態とされた際に前記摺動部材が嵌り込むことで、前記マッサージ部材の上端部を前方突出状態で保持可能なように当該マッサージ部材の回動角を規制する第1回動規制部が形成されているとよい。
【0013】
また、前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、前記案内レール部には、前記マッサージ機構の上端部が後方に退行状態とされた際に前記摺動部材が嵌り込むことで、前記マッサージ部材の下端部を前方突出状態で保持可能なように当該マッサージ部材の回動角を規制する第2回動規制部が形成されているとよい。
【0014】
また、前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、前記案内レール部には、前記摺動部材の上下動を許容することで、前記第1回転軸回りでのマッサージ部材の回動を可能とする回動許容部が形成されているとよい。
さらには、前記案内レール部は、側面視菱形に形成された開口の縁部で構成されていて、前記開口の長軸が前後方向を向き、前記開口の長軸に略垂直な短軸は、上下方向を向いていて、前記長軸の前後端に位置する開口の縁部には、摺動部材が嵌り込む半円部がそれぞれ形成されており、前方に位置する半円部が第1回動規制部とされると共に、後方に位置する半円部が第2回動規制部とされ、前記短軸に沿った空間が回動許容部とされているとよい。
【0015】
前記案内レール部は以下のようにしてもよい。
すなわち、前記開口の長軸が前後方向を向き、前記開口の長軸に略垂直な短軸は、上下方向を向いていて、前記長軸の前後端に位置する開口の縁部には、摺動部材を嵌め込んだ状態で前後方向への摺動のみを許容する前後の通路部と、これら前後両通路部の前後端を突き当たり状態にする半円部とがそれぞれ形成されており、前方に位置する半円部が第1回動規制部とされ、且つこの第1回動規制部と前記開口との間に配置される前方の通路部が第1突出調整部とされ、後方に位置する半円部が第2回動規制部とされ、且つこの第2回動規制部と前記開口との間に配置される後方の通路部が第2突出調整部とされ、前記短軸に沿った空間が回動許容部とされているとよい。
【0016】
一方で、前記出退動作機構は、前記ベース部材に対して上下移動自在に設けられたスライダーと、このスライダーを上下移動させるスライド機構と、前記マッサージ機構の上端部及び前記スライダーに対してそれぞれ回動自在に枢支され且つ前記スライダーとマッサージ機構とを連結する伝動アームと、前記ベース部材からマッサージ機構の側部に沿って前方へ延び出す状態で設けられたレール部と、前記マッサージ機構からレール部へ向けて突出状に設けられて前記レール部に沿って移動自在となるように係合する摺動部材と、を有しているとよい。
【0017】
また、前記レール部は、前記揺動枢支部を中心とする上膨らみ形の円弧カーブで形成されているとよい。
また、前記マッサージ機構に対して摺動部材が設けられる位置と、前記伝動アームがマッサージ機構に枢支される枢支軸とが、この枢支軸の軸心上で同軸配置とされているとよい。
【0018】
前記スライド機構は、前記スライダーに設けられた上下方向に貫通する雌ねじ部と、この雌ねじ部に螺合する送りネジ軸と、この送りネジ軸を駆動回転する電動モータとを有しているとよい。
なお、座部と、座部の後部に設けられ且つ上記した背揉み装置を内蔵した背もたれ部を有する椅子型マッサージ機を構成することは非常に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る背揉み装置では、マッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる構成を採用するに際し、マッサージ効果を低下させてしまうようなことはなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものであり、しかも機構的な大型化や複雑化を招来することもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させた状態の背揉み装置を示す概略側断面図である。
【図2】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させた状態の背揉み装置を示す概略側断面図である。
【図3】第1実施形態においてマッサージ機構を上下移動機構によって下降させた状態の背揉み装置を示した斜視図である。
【図4】第1実施形態においてマッサージ機構を上下移動機構によって上昇させた状態の背揉み装置を示した斜視図である。
【図5】第1実施形態においてマッサージ機構を上下移動機構によって上下方向の中間位置にさせた状態の背揉み装置を示した斜視図である。
【図6】第1実施形態において下降させた状態にあるマッサージ機構のみを示した斜視図である。
【図7】第1実施形態において上昇させた状態にあるマッサージ機構のみを示した斜視図である。
【図8】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させ且つ上下移動機構によって下降させた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図9】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させる途中であって且つ上下移動機構によって上昇途中とさせた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図10】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させ且つ上下移動機構によって上昇させた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図11】第1実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させる途中であって且つ上下移動機構によって下降途中とさせた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図12】第1実施形態において揺動制限機構を構成するレール部の形状を示した側面図である。
【図13】本発明に係る背揉み装置付き椅子型マッサージ機を示した斜視図である。
【図14】第2実施形態において揺動制限機構を構成するレール部の形状を示した側面図である。
【図15】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させ且つ上下移動機構によって下降させた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図16】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させ且つ上下移動機構によって下降させた状態から上昇開始直後とした背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図17】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させる途中であって且つ上下移動機構によって上昇途中とさせた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図18】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させ且つ上下移動機構によって上昇させた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図19】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって前方へ突出させ且つ上下移動機構によって上昇させた状態から下降開始直後とした背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【図20】第2実施形態においてマッサージ機構を出退動作機構によって後方へ退行させる途中であって且つ上下移動機構によって下降途中とさせた状態の背揉み装置を一部省略して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図13は、本発明に係る背揉み装置付き椅子型マッサージ機の第1実施形態を示している。
図13に示すように、この椅子型マッサージ機1は、使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さの座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有しており、背もたれ部3の内部に、背揉み装置4(使用者の肩部〜背部〜腰部を揉み又は叩きマッサージするマッサージ装置)が設けられている。
【0022】
座部2の下部には、この椅子型マッサージ機1を床面へ設置するための脚フレーム6が設けられており、この脚フレーム6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。
なお、以下の説明において、背もたれ部3及び背揉み装置4に関しては、背もたれ部3の高さ方向を上下方向とおき、これを基準に左右方向や前後方向を決めて構造の説明をする。例えば図1や図2では、図での上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。また、図1や図2ではそれらの紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼び、図1や図2の右左方向を実際の装置での前後方向と呼ぶ。なお、図1,図3,図6,図12には、本実施の形態の説明で用いる上下、左右、前後方向を明確に記している。
【0023】
背もたれ部3は、その下端部が座部2の後部又は脚フレーム6の後部に対して枢支され、前後揺動自在な状態に保持されている。この背もたれ部3は、脚フレーム6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構により、リクライニング可能となっている。また、座部2の前部には足揉み装置5が設けられ、座部2の左右両側には肘掛け部7が設けられたものとしてある。ただこれらは、椅子型マッサージ機1における装備の一例であり、その有無や細部機構が限定されるものではない。
【0024】
図1〜図5に示すように、背揉み装置4は、マッサージ機構10と、このマッサージ機構10の下端部を揺動枢支部11を介して支持するベース部材12と、このベース部材12を背もたれ部3内で上下方向に移動可能にする上下移動機構13とを備えている。更に、背揉み装置4は、ベース部材12に対してマッサージ機構10の上端部を前後動させて、マッサージ機構10の前後傾斜角を変化させる出退動作機構14と、マッサージ機構10に備えられたマッサージ部材17の回動乃至揺動を規制する揺動制限機構15とを有している。
【0025】
まず、主に図6及び図7を用いてマッサージ機構10を説明する。
マッサージ機構10は、左右一対のマッサージ部材17と、これら左右のマッサージ部材17に適宜マッサージ動作を行わせる駆動部18とを有している。
マッサージ部材17は、上方及び下方の斜め前方へ先端部を突出させたブーメラン形の支持アーム20と、この支持アーム20の上下両端部に設けられたマッサージ体21(施療子)とを有している。各マッサージ体21は、例えば樹脂や硬質ゴムなどによって肉厚な円盤型や球形などに形成することができる。なお以下では、上端側のマッサージ体21を必要に応じて「上マッサージ体21a」と呼び、また下端側のマッサージ体21を必要に応じて「下マッサージ体21b」と呼ぶ。
【0026】
駆動部18は、左右のマッサージ部材17に対して相互近接離反の動作を行わせる揉み駆動部23と、左右のマッサージ部材17に対して交互の叩き動作を行わせる叩き駆動部24とを有したものとしてある。
揉み駆動部23は、マッサージ部材17の支持アーム20に対してその中央屈曲部に埋め込み状態で設けられた傾斜回転部材25と、この傾斜回転部材25を貫通するように軸心を左右方向へ向けて架設された第1回転軸26と、この第1回転軸26を回転駆動する揉みモータ27(図1及び図2参照)と、支持アーム20における中央屈曲部の後部に設けられてこの支持アーム20が第1回転軸26に伴って連れ回りすることを規制する振れ止め機構28とを有している。この振れ止め機構28には例えばボールジョイントやユニバーサルジョイント等の自在継ぎ手を採用可能である。
【0027】
傾斜回転部材25は、第1回転軸26に同心で且つ傾斜状態で一体回転に設けられた取付ボス部に対し、そのまわりにベアリング等を介して回転自在に嵌合保持されている。従って、揉みモータ27の駆動によって第1回転軸26を回転させると、その回転中心を軸として傾斜回転部材25がゆらぎ状の回転ブレを起こすようになり、この回転ブレが支持アーム20を介してマッサージ体21へと伝えられるようになる。
【0028】
支持アーム20は、振れ止め機構28によって第1回転軸26と供回りしない状態に保持されるが、前後方向・左右方向及び上下方向に沿った所定範囲の動作は許容されている。また、左右の支持アーム20間において、傾斜回転部材25の傾斜方向は第1回転軸26まわりで180°の位相差に保持されている。
このようなことから、この揉み駆動部23において左右の支持アーム20は、上マッサージ体21a同士が、左右方向において相互近接及び相互離反を繰り返すように動作すると共に、下マッサージ体21b同士が、左右方向において相互離反及び相互近接を繰り返すように動作することになる。上マッサージ体21a同士の相互近接時には下マッサージ体21b同士が相互離反し、上マッサージ体21a同士の相互離反時には下マッサージ体21b同士が相互近接するようになるので、これがマッサージ部材17としての揉み動作を発生させる。
【0029】
一方、叩き駆動部24は、傾斜回転部材25の第1回転軸26よりも上部位置でこれと平行するように軸心を左右方向へ向けて設けられた第2回転軸31と、この第2回転軸31を回転駆動する叩きモータ32と、第2回転軸31の左右両端部に対して180°の位相差で偏心して設けられた左右の偏心駆動体34と、これら左右の偏心駆動体34を回転自在に抱持するハウジング35に対して下方へ突出して設けられたリンクレバー36(長尺のクランク軸)とを有している。
【0030】
偏心駆動体34は、ベアリングに対してその内輪側又は外輪側に偏心カラーを装着することによって、第2回転軸31とハウジング35との軸心を不一致にさせたものである。またリンクレバー36の下端部は、マッサージ部材17が有する支持アーム20の中央屈曲部に連結されているが、この連結部分は、上記した振れ止め機構28(ボールジョイント等)を形成したものとなっている。すなわち、リンクレバー36の下端部に振れ止め機構28が設けられ、この振れ止め機構28を介して支持アーム20の基端部が連結されていることになる。
【0031】
従ってこの叩き駆動部24では、叩きモータ32を駆動させると、偏心駆動体34が第2回転軸31の軸心に対して偏心回転し、これを受けてハウジング35が円周移動するようになる。従って、このハウジング35からリンクレバー36(長尺のクランク軸)に対して上下方向の押引動作が伝えられるようになる。このようなことから、左右の支持アーム20は互いのマッサージ体21を第1回転軸26のまわりで小刻みに揺動させ、上マッサージ体21aと下マッサージ体21bとを前後方向において相対逆向きに移動させるようになるから、これがマッサージ部材17としての叩き動作を発生させることになる。
【0032】
なお、左右の支持アーム20に生じる揺動は、左右の偏心駆動体34が180°の位相差で設けられていることから、交互に生じるようになっている。
すなわち、左側の支持アーム20が、上マッサージ体21aを前方へ移動させるときには、右側の支持アーム20が、上マッサージ体21aを後方へ移動させる。反対に、左側の支持アーム20が、下マッサージ体21bを前方へ移動させるときには、右側の支持アーム20が、下マッサージ体21bを後方へ移動させる。
【0033】
ただ、これは限定される事項ではなく、例えば左右の偏心駆動体34に対してそれらの位相差をゼロにさせるような適宜切換機構を設けておけば、左右の支持アーム20が同期して同じ向きに揺動するように、叩き動作の設定(叩きパターン)を変更できることになる。
なお、図1や図2、或いは図6や図7に示すように、叩きモータ32から第2回転軸31に対して回転駆動を伝える部分には、減速機を内蔵する構造として、叩きモータ32用のモータ支持台37が設けられている。このモータ支持台37には、長手方向を上下方向へ向けた2本のガイドバー38が互いに所定間隔をおいた平行状態で串刺し状に貫通している。
【0034】
これらガイドバー38は、側面視凹型のガイド枠40に対してその枠内に架設されたものであり、このガイド枠40は、揉み駆動部23の揉みモータ27が第1回転軸26に回転駆動を伝えるための減速機内蔵のギヤヘッド39を支え(基礎)にして、その上側へ延びる状態に固定されている。
すなわち、叩きモータ32は、ガイドバー38に沿って上下方向(揉みモータ27に近接離反する方向)へ移動自在な状態に保持されているものであり、ここにおいてガイドバー38やガイド枠40は、叩き駆動部24を上下移動自在に保持するための縦ガイド支持部41を構成したものとなっている。
【0035】
このような縦ガイド支持部41が設けられていることから、次のような動きが実現できる。すなわち、揉みモータ27が第1回転軸26を回転させるときも、また叩きモータ32が第2回転軸31を回転させるときも、マッサージ部材17は、原則として、振れ止め機構28によって第1回転軸26回りの連れ回りが制限される。
しかし、マッサージ部材17に使用者による凭れ掛かり荷重が負荷したような場合には、振れ止め機構28、リンクレバー36、第2回転軸31、モータ支持台37などと共に、互いに連結関係にある叩きモータ32が上下動することになる。そのため、マッサージ部材17は第1回転軸26を中心として、所定範囲で回動乃至は揺動が許容される、という動きである。
【0036】
係る構成により、揉み駆動部23や叩き駆動部24によるマッサージ動作に関係なく、マッサージ部材17が背中のS字カーブに応じて第1回転軸26回りに回動し、各マッサージ体21がほぼ均等圧に背中に当接することになる。揉み駆動部23や叩き駆動部24は、いずれか一方だけ作動させたり、又は両方同時に作動させたりを切替可能にしておくことができる。
【0037】
上記構成を具備するマッサージ機構10は、その下端部が揺動枢支部11(図1及び図2参照)を介して前記したベース部材12に支持されている。揺動枢支部11は軸心を左右方向へ向けた枢軸42を有したものであって、マッサージ機構10は、この枢軸42を支点としつつその上端側がベース部材12に対して前後方向へ揺動自在に保持されている。
【0038】
加えて、本第1実施形態では、図1や図2に示す如く、揉みモータ27のギヤヘッド39に下方へ突出するヒンジ片部43が設けられていると共に、ベース部材12の下端部から前方へ突出してヒンジ片部43を左右両側から挟持状態にするヒンジ台部44が設けられている。これらヒンジ片部43とヒンジ台部44とを左右方向へ貫通する状態で枢軸42が設けられている。
【0039】
上下移動機構13は、ベース部材12ごと、マッサージ機構10を上下に移動させるようになっており、ベース部材12の上部及び下部の左右両側に、回転軸心を左右方向へ向けてガイドローラ45が設けられ、これらガイドローラ45が、背もたれ部3の内部に、長手方向を上下に向けて組み込まれた左右一対のガイドレール46に沿って上下動自在にガイドされるようになっている。
【0040】
そして、図3〜図5に示すように、両ガイドレール46の相互間には昇降モータ47により回転駆動可能とされたネジ軸48が設けられ、ベース部材12には、このネジ軸48に螺合するナット部材49が内蔵(図8〜図11参照)されている。従って、昇降モータ47の作動でネジ軸48が回転駆動されることで、ベース部材12と共にマッサージ機構10が背もたれ部3内を上下動するようになっている。
【0041】
これにより、座部2に座って背もたれ部3に背中を押しつけた使用者は、肩部から背中及び腰部にわたる広い範囲でマッサージを受けられるものとなっている。
次に、主として図1及び図2を用いて、本発明に係る椅子型マッサージ機1に備えられた特徴的な機構である「出退動作機構14」及び「揺動制限機構15」について説明する。
【0042】
出退動作機構14は、ベース部材12に対して上下移動自在に設けられたスライダー50と、このスライダー50を上下移動させるスライド機構51と、スライダー50とマッサージ機構10とを連結する伝動アーム52と、ベース部材12に設けられたレール部53と、マッサージ機構10からレール部53へ向けて突出状に設けられた摺動部材54(図6及び図7参照)とを有している。
【0043】
スライダー50はベース部材12の前面に配置されており、左右方向に長い柱状ブロックとして形成されている(図5参照)。ベース部材12に対するスライダー50の上下動は、ベース部材12の前面上部から前方へ突出状に設けられた上部ブラケット57と、ベース部材12の前面下部から前方へ突出状に設けられた下部ブラケット58との上下間に架設されたガイドバー59(図5参照)により、このスライダー50が串刺し状に貫通されることで、可能とされている。
【0044】
これに対し、スライド機構51は上部ブラケット57と下部ブラケット58との上下間で且つスライダー50用のガイドバー59に平行するようにして回転自在に架設された送りネジ軸63と、この送りネジ軸63を駆動回転する電動モータ64とを有している。送りネジ軸63はスライダー50を上下方向に貫通しており、スライダー50には、この送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65が設けられている。これら雌ねじ部65と送りネジ軸63との螺合構造は、ネジ推進力及びガタツキ防止性に優れた角ネジ、好ましくは台形ネジによって形成されている。
【0045】
レール部53は、ベース部材12の左右両側部から前方へ突出する側板部66に対し、それらが対向する内面に設けられている。本第1実施形態では、レール部53が溝として側板部66に凹設されたものを示してある。このレール部53は、ベース部材12がマッサージ機構10の下端部を揺動自在に支持する揺動枢支部11を中心として、上膨らみ形の円弧カーブを有して形成されている。
【0046】
摺動部材54は、レール部53(溝)に対して摺動自在になる状態で係合(嵌合)する回転自在なローラにより形成されたものとしてある。従って、マッサージ機構10に対し、揺動枢支部11を中心とした揺動を起こすような外力が加えられたときに、この摺動部材54がレール部53に沿って円弧移動をし、マッサージ機構10の揺動を安定化させるようになっている。
【0047】
伝動アーム52は左右一対(2本)設けられており、それぞれ、マッサージ機構10及びスライダー50に対してそれらの左右両側に振り分けられるように配置されている。これら各伝動アーム52において、マッサージ機構10との連結部分には、軸心を左右方向へ向けた第1枢支軸67が設けられており、この第1枢支軸67を中心に揺動自在なリンク接合部68が形成されている。このリンク接合部68は、マッサージ機構10の上端部に配置されている。
【0048】
なお、マッサージ機構10に対して摺動部材54が設けられる位置(ローラの回転中心)と、伝動アーム52におけるマッサージ機構10側のリンク接合部68とは、このリンク接合部68が有する第1枢支軸67の軸心上で一軸配置とされている。そのため、伝動アーム52を介してマッサージ機構10に伝達される押引力は、効率良く摺動部材54にも伝えられるようになり、結果、この摺動部材54が円滑にレール部53に沿った移動を生じ易くなっている。
【0049】
伝動アーム52におけるスライダー50との連結部分には、軸心を左右方向へ向けた第2枢支軸69(図2にのみ示す)が設けられており、この第2枢支軸69を中心に揺動自在なリンク接合部70が形成されている。
このような構成を具備した出退動作機構14では、スライド機構51の電動モータ64により送りネジ軸63を駆動回転させることで、この送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65を介してスライダー50に上方移動力又は下方移動力を生じさせ、もってスライダー50をスライド機構51のガイドバー59に沿って上方移動又は下方移動させることができる。
【0050】
スライダー50が上方移動するときには、図2に示すように、伝動アーム52が摺動部材54をレール部53に沿って前方へ押し出すようになるので、これによってマッサージ機構10が揺動枢支部11を中心として前方へ突出するように揺動する。従って、左右のマッサージ部材17が前方へ迫り出すようになる。
スライド機構51の電動モータ64を上記とは逆転駆動させると、図1に示すように、送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65を介してスライダー50が下方移動するようになる。このときは、伝動アーム52が摺動部材54をレール部53に沿って後方へ引き戻すようになるので、これによってマッサージ機構10が揺動枢支部11を中心として元の状態(後方へ)戻るように揺動する。従って、左右のマッサージ部材17も元の状態(後方)へ戻るようになる。
【0051】
一方、揺動制限機構15は、出退動作機構14に付加されて協働しつつ動作する機構である。揺動制限機構15は、マッサージ機構10が前方へ傾斜したり後方へ起立状態となった際に、縦ガイド支持部41により得られる第1回転軸26を中心としたマッサージ部材17の回動乃至は揺動を一部制限する機能を有している。
この揺動制限機構15は、上マッサージ体21aが最も前方に突出すると共に下マッサージ体21bが最も後方に退行するような位置で支持アーム20の回動(第1回転軸26回りの回動)を規制する第1回動規制部80を備えている。また、揺動制限機構15は、上マッサージ体21aが最も後方に退行すると共に下マッサージ体21bが最も前方に突出するような位置で支持アーム20の回動を規制する第2回動規制部81を備えている。
【0052】
さらに、揺動制限機構15は、第1回動規制部80及び第2回動規制部81で規制されるマッサージ部材17(支持アーム20)の姿勢以外において、マッサージ部材17の回動(第1回転軸26回りの回動)を許容する回動許容部82を有している。
これら第1回動規制部80、第2回動規制部81、回動許容部82は、ベース部材12側に設けられた案内レール部85の所定部位が対応し、これら所定部位にマッサージ機構10から案内レール部85へ向けて突出状に設けられたローラ状の摺動部材86(図6及び図7参照)が位置することで、第1回動規制部80、第2回動規制部81、回動許容部82としての機能を発揮するように構成されている。
【0053】
具体的に説明すれば、案内レール部85は無端状のレール軌道であって、ベース部材12の左右両側部から前方へ突出する側板部66(出退動作機構14のレール部53が設けられたのと同じもの)の互いに対向する内面壁に形成されている。言い換えるならば、側板部66の内面壁には、左右側面視で菱形に開口形状を有する凹部(菱形開口)が形成されていて、この菱形開口の立側壁が案内レール部85となっている。なお、この側板部66には、前述した出退動作機構14のレール部53も形成されている。
【0054】
図12に示す如く、案内レール部85は、ローラ状の摺動部材86が嵌り込むような半円部L1を有している。この半円部L1の上部端から斜め上方に延びる直線部L2が形成され、直線部L2に比して傾きが緩やかな直線部L3が繋がるように形成されている。直線部L3の先端であって半円部L1に対向する側には、ローラ状の摺動部材86が嵌り込むような半円部L4が形成されている。この半円部L4の上部端と直線部L3とは滑らかに繋がっている。
【0055】
半円部L4の下部端からは、斜め下方に延びる直線部L5が形成され、直線部L5に比して傾きが緩やかな直線部L6が繋がるように形成されている。最終的には、直線部L6の先端は半円部L1の下部端に滑らかに接続するようになっており、ループ状の案内レール部85が形成されている。
係る案内レール部85において、直線部L2と直線部L3との接続点P3、直線部L3と半円部L4の上部端との接続点、直線部L5と直線部L6との接続点P4、直線部L6と半円部L1の下部端との接続点は、滑らかな曲線で繋がるものとなっている。その一方で、半円部L1の上部端と直線部L2との接続点P2、半円部L4の下部端と直線部L5との接続点P1は、尖ったもの(突点P1,突点P2)となっており極値を持つ曲線で接続されている。
【0056】
なお、案内レール部85は側面視で菱形開口形状をしていると述べたが、半円部L1と半円部L4とを結ぶラインが菱形開口の長軸となっており、この長軸が前後方向を向くように、案内レール部85が側板部66に形成されている。すなわち、案内レール部85は、揺動枢支部11の枢軸42から見て出退動作機構14のレール部53より径方向内方に配置されており、菱形開口の長軸を揺動枢支部11を中心とする円弧に沿わせるような斜め向きにして設けられている。
【0057】
菱形開口の案内レール部85の短軸(長軸に略垂直なライン)は、長軸の略半分ほどの長さを有している。この短軸は、叩きモータ32を上下方向(揉みモータ27に近接離反する方向)へ移動自在に支持するガイドバー38に沿った方向を向いている。案内レール部85の短軸長は、叩きモータ32の上下移動範囲と略同じとされている。
一方で、摺動部材86は、第2回転軸31の左右両端部からその軸心と同軸で左右両外側へ突出する回転自在なローラにより形成されており、それぞれは、菱形開口の凹部に嵌り込んだ上で、左右の案内レール部85上を転がり可能となっている。
【0058】
上記した如く配置と開口形状とが定められた案内レール部85において、図12に示すように、半円部L4に相当する部位が第1回動規制部80となっている。また、半円部L1が第2回動規制部81となっている。これら第1回動規制部80及び第2回動規制部81は、いずれも、摺動部材86をガタツキなく嵌合できるような開口幅とされている。
また案内レール部85は、第1回動規制部80から交点P3へ向かうにしたがって凹部内が上下方向で徐々に広くなり、反対に、交点P3から第2回動規制部81へ近接するにしたがって凹部内が上下方向で徐々に狭くなっている。このことから、これらの領域(直線部L3と直線部L5の上下間、直線部L2と直線部L6の上下間)は、上下方向において摺動部材86よりも幅広である。すなわち、摺動部材86が上下方向で遊動できるスペースとなっていて、このスペースが回動許容部82となっている。
【0059】
このような揺動制限機構15の動作を、図1,図2,図8〜図12に基づいて説明する。
図8は、マッサージ機構10が上下移動機構13により下端位置(使用者の腰位置)に存在している状態を示している。
図9は、マッサージ機構10が上昇している途中を示している。
【0060】
図10は、マッサージ機構10が上下移動機構13により上端位置(使用者の肩位置)へ移動されて停止している状態を示している。
図11は、マッサージ機構10が下降をしている途中を示している。図11の後は、図8の状態へと戻る。
まず、マッサージ機構10が上方に移動し使用者の肩部に位置する過程(図8→図9→図10)を説明する。以下の動きは、椅子型マッサージ機1に備えられた制御部(図示しない)のプログラムにより、昇降モータ47、電動モータ64を制御することで実現されている。
【0061】
まず、図8に示すマッサージ機構10では、マッサージ部材17は使用者の腰部をマッサージすることを主眼においているため、下マッサージ体21bが前方に突出し、上マッサージ体21aが後方へ退行した状態となっている。下マッサージ体21bが前方へ最も突出しているため、下マッサージ体21bは、使用者の腰部を確実に且つ効果的にマッサージすることができる。
【0062】
その状態から、上下移動機構13の昇降モータ47が回転し、ネジ軸48が回転することで、それに螺合するナット部材49が上昇すると共に、ナット部材49が取り付けられたベース部材12が上昇し、ひいては、マッサージ機構10が上方に移動するようになる。
マッサージ機構10の上方移動に伴い、図9に示すように、制御部は出退動作機構14の電動モータ64に指令を出し、スライダー50を上方に押し上げると共に、伝動アーム52を介して、レール部53内に摺動自在に嵌り込む摺動部材54を前方側へ押し上げ、マッサージ機構10を枢軸42回りに前方へ傾動させる。
【0063】
マッサージ機構10の前方傾動に連動して、図12に示すように、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の直線部L6上を摺動しつつ、案内レール部85内の中点P4を通過し、直線部L5上を半円部L4へ向けて移動することになる。このとき、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31も同様に、直線部L6上を移動→中点P4を通過→直線部L5上を通過→半円部L4へと移動することとなり、叩き駆動部24(叩きモータ32)が上方移動する。そのため、リンクレバー36が上方へ引っ張られることとなり、ひいては、支持アーム20の基端部が上方へ引っ張られ、支持アーム20が第1回転軸26回りに回動し、下マッサージ体21bが後方に若干退行し且つ上マッサージ体21aが前方へ若干突出するようになる。
【0064】
なお、以上の動作において、摺動部材86が案内レール部85の直線部L2側へと移動しないのは、突点P2を乗り越えるための抵抗が大きいためであり、案内レール部85の突点P2は、揺動制限機構15の動きを実現するための必須構成要件である。
その後、図10に示すように、マッサージ機構10が更に上方へ移動し、使用者の肩位置に達する際には、摺動部材86は第1回動規制部80(半円部L4)に到達し、この第1回動規制部80に嵌合する。このとき叩き駆動部24も、縦ガイド支持部41の最上位置へ到達した状態となる。この状態においては、リンクレバー36が最も上方へ引っ張られることとなり、さらに支持アーム20が第1回転軸26回りに回動し、下マッサージ体21bが後方に最も退行し且つ上マッサージ体21aが前方へ最も突出するようになる。
【0065】
上マッサージ体21aが前方へ最も突出しているため、上マッサージ体21aは、使用者の肩部を上方から前方にかけて確実に且つ効果的にマッサージすることができるようになる。
この状況下にあるときに、マッサージ部材17の上マッサージ体21aに対して凭れ掛かり荷重PU(後向きに押す力)が負荷したとする。これによりマッサージ部材17には、第1回転軸26回りに回動して、上マッサージ体21aを下マッサージ体21bよりも後方にさせようとする揺動作用が付加され、リンクレバー36を介して叩き駆動部24を下方へ引き下ろす下向きの力FLが加わることが予想される。しかしながら、揺動制限機構15の摺動部材86が第1回動規制部80内に確実に嵌合されると共に、突点P1の抵抗が存在するため、直線部L5→中点P4→直線部L6と逆走することはない。つまり、揺動制限機構15により、マッサージ部材17の前方突出状態が確実に保持されるものとなっている。
【0066】
次に、出退動作機構14がマッサージ機構10を後方へ退行させてゆく過程(図10→図11→図8)を説明する。以下の動きも、椅子型マッサージ機1に備えられた制御部(図示しない)のプログラムにより、昇降モータ47、電動モータ64を制御することで実現されている。
まず、図10に示すマッサージ機構10では、マッサージ部材17は使用者の肩部をマッサージすることを主眼においているため、上マッサージ体21aが前方に突出し、下マッサージ体21bが後方へ退行した状態となっている。
【0067】
その状態から、上下移動機構13の昇降モータ47が回転し、ネジ軸48が逆回転することで、それに螺合するナット部材49が下降すると共に、ナット部材49が取り付けられたベース部材12が下降し、ひいては、マッサージ機構10が下方に移動するようになる。
マッサージ機構10の下方移動に伴い、図11に示すように、制御部は出退動作機構14の電動モータ64に指令を出し、スライダー50を下方に引き下げると共に、伝動アーム52を介して、レール部53内に摺動自在に嵌り込む摺動部材54を後方側へ引き戻し、マッサージ機構10を枢軸42回りに後方へ傾動させる(起立状態へと近づける)。
【0068】
マッサージ機構10の後方傾動に連動して、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の直線部L3上を摺動しつつ、案内レール部85内の中点P3を通過し、直線部L2上を半円部L1へ向けて移動することになる。このとき、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31も同様に、直線部L3→中点P3→直線部L2→半円部L1へと移動することとなり、叩き駆動部24(叩きモータ32)が下方移動する。そのため、リンクレバー36が下方へ押し戻されることとなり、ひいては、支持アーム20の基端部が下方へ押され、支持アーム20が第1回転軸26回りに逆回動し、下マッサージ体21bが前方に若干突出するようになる。
【0069】
なお、摺動部材86が案内レール部85の直線部L5側へと移動しないのは、突点P1を乗り越えるための抵抗が大きいためであり、案内レール部85の突点P1は、揺動制限機構15の動きを実現するための必須構成要件である。
その後、図8に示すように、マッサージ機構10が更に下方へ移動し、使用者の腰位置に達する際には、摺動部材86は第2回動規制部81(半円部L1)に到達し、この第2回動規制部81に嵌合する。このとき叩き駆動部24も、縦ガイド支持部41の最下位置へ到達した状態となる。この状態においては、リンクレバー36が最も下方へ押しやられることとなり、さらに支持アーム20が逆回動し、下マッサージ体21bが前方に最も突出し且つ上マッサージ体21aが後方に最も退行するようになる。
【0070】
下マッサージ体21bが前方へ最も突出しているため、下マッサージ体21bは、使用者の腰部を確実に且つ効果的にマッサージすることができる。
この状況下にあるときに、マッサージ部材17の下マッサージ体21bに対して凭れ掛かり荷重PU(後向きに押す力)が負荷したとする。これによりマッサージ部材17には、第1回転軸26回りに回動して、下マッサージ体21bを上マッサージ体21aよりも後方にさせようとする揺動作用が付加され、リンクレバー36を介して叩き駆動部24を上方へ押し上げる上向きの力FUが加わることが予想される。しかしながら、揺動制限機構15の摺動部材86が第2回動規制部81内に嵌合されると共に、突点P2の抵抗が存在するため、直線部L2→中点P3→直線部L3と逆走することはない。つまり、揺動制限機構15により、マッサージ部材17の前方突出状態が確実に保持されるものとなっている。
【0071】
なお、出退動作機構14がマッサージ機構10を前方へ突出させてゆく途中や、後方へ退行させてゆく途中は、案内レール部85内の回動許容部82を摺動部材86が移動していることになる。この回動許容部82は上下方向において摺動部材86よりも幅広であるから、摺動部材86は上下方向で遊動自在である(図9及び図11参照)。
すなわち、これらの状況下にあるとき、第2回転軸31も同様に上下方向で遊動自在であり、叩き駆動部24(叩きモータ32)は、ガイドバー38に沿って上下に移動自在となる。そのため、リンクレバー36を介して連接している支持アーム20も回動自在な状態となる。
【0072】
ゆえに、マッサージ部材17の上マッサージ体21aや下マッサージ体21bに対して凭れ掛かり荷重PUやPL(後向きに押す力)が負荷したときに、叩き駆動部24に対する下向きの作用や上向きの作用を邪魔するものは何もなく、前記したように、マッサージ部材17が背中のS字カーブに応じて第1回転軸26回りに回動し、各マッサージ体21がほぼ均等圧に背中に当接するといった縦ガイド支持部41の作用が発揮される。
【0073】
また、摺動部材86は、前述したように第2回転軸31の軸心と同軸に設けられているので、叩き駆動部24の駆動に伴って第2回転軸31が回転しても、その回転は偏心回転ではないため、回転振動が摺動部材86を介して案内レール部85に伝わることはない。すなわち、マッサージ部材17が叩き動作をしても、案内レール部85の設けられている側板部66やベース部材12に対して振動などの影響を及ぼすことはない。
【0074】
以上詳説したところから明かなように、本発明の椅子型マッサージ機1では、座部2に着座した使用者が、背もたれ部3に背中を押しつけるようにしてもたれ掛かり、その状態で背揉み装置4を作動させることにより、マッサージ機構10の揉み駆動部23による揉みマッサージや叩き駆動部24による叩きマッサージを、左右のマッサージ部材17を介して受けることができる。
【0075】
そして、使用者の体型やマッサージ位置に関する必要性又は使用者の好みに応じて出退動作機構14を作動させることにより、マッサージ機構10(マッサージ部材17)を通常のマッサージ位置よりも前方へ突出させたり、元の通常位置へ戻したりできる。
出退動作機構14を作動させる場合、マッサージ機構10を前方へ突出させたときには揺動制限機構15によってマッサージ部材17の上端部(上マッサージ体21a)が前方突出状態となり、使用者による凭れ掛かり荷重PU(後向きに押す力)が負荷したとしてもこの状態が保持されるようになる。
【0076】
またマッサージ機構10を後方へ退行させたときには揺動制限機構15によってマッサージ部材17の下端部(下マッサージ体21b)が前方突出状態となり、使用者による凭れ掛かり荷重PL(後向きに押す力)が負荷したとしてもこの状態が保持されるようになる。
従って、叩きや揉みなどのマッサージが的確且つ局部的に(ピンポイントで)得られる状態となり、使用者の期待を満足させることができる。
【0077】
また出退動作機構14は、エア方式を採用したものではないために、使用者による凭れ掛かり荷重にエアセルの膨張力が屈して、マッサージ機構10が押し戻されてしまう問題も起こらない。そのためマッサージ機構10による指圧力(マッサージ効果)の低下や指圧力の位置ズレには繋がらない。勿論、エア流や排気音などによる騒音の問題もない。
またリンク方式を採用したものでもないため、正ネジ部と逆ネジ部とを有する長大なネジ軸は不要であり、パーツとしての高コスト化や装置の大型化が生じる問題もない。
【0078】
また従来の単なるカム方式とは異なって伝動アーム52を具備するものであるから、マッサージ機構10の前後動ストロークを大きく確保できるものである。更に、従来のレバー方式とも異なっているために動作の迅速性が得られており、椅子型マッサージ機1の全体として、一連のマッサージ動作を行うときなどにあって、サイクルタイムを徒に長びかせるおそれもない。
[第2実施形態]
図14〜図20は、本発明に係る背揉み装置付き椅子型マッサージ機の第2実施形態を示している。
【0079】
第2実施形態において、椅子型マッサージ機1が座部2と背もたれ部3とを有したものであり、背もたれ部3内に背揉み装置4が設けられ、座部2の下部に脚フレーム6が設けられている点などは第1実施形態(図13参照)と同じである。また、背揉み装置4が、マッサージ機構10とベース部材12と上下移動機構13とを備えており、更に、ベース部材12に対してマッサージ機構10の前後傾斜角を変化させる出退動作機構14と、マッサージ機構10に備えられたマッサージ部材17の回動乃至揺動を規制する揺動制限機構15とを有している点も、第1実施形態(図1〜図7参照)と同じである。
【0080】
なお、以下の説明でも、装置各部における上下方向や左右方向、前後方向などは第1実施形態で定義した方向を援用するものとする。
図14に示すように、第2実施形態が第1実施形態と最も異なるところは、揺動制限機構15に設けられた案内レール部85に、第1突出調整部103及び第2突出調整部102が設けられている点にある。
【0081】
揺動制限機構15が、第1回動規制部80、第2回動規制部81、マッサージ部材17による第1回転軸26回りの回動を許容するための回動許容部82を有している点は、第1実施形態と略同様である。また、案内レール部85が無端状のレール軌道であって、ベース部材12の左右両側部から前方へ突出する側板部66の互いに対向する内面壁に形成されている構成なども第1実施形態と略同様であり、この案内レール部85に、第1回動規制部80、第1突出調整部103、第2回動規制部81、第2突出調整部102、及び回動許容部82が形成されている(案内レール部85内の所定部位が対応している)。
【0082】
まず、図14に示すように、案内レール部85は、その後方下部にローラ状の摺動部材86が嵌り込む半円部G1を有している。この半円部G1の上部端から前方であって且つ僅かに斜め上方へ延びる直線部G2が形成され、この直線部G2の前端から傾斜角度を更に斜め上方へ向けて延びる直線部G3が形成され、更に、この直線部G3に比して傾きが緩やかな直線部G4が繋がるように形成されている。
【0083】
直線部G4は菱形の一辺に必要とされる長さを超えて前方へ延長されており、その前端であって半円部G1に対向する側には、ローラ状の摺動部材86が嵌り込む半円部G5が形成されている。半円部G5の上部端に直線部G4が連結している。
半円部G5の下部端からは、直線部G4が前方へ延長された範囲と平行しつつ後方へ延びる直線部G6が形成され、この直線部G6の後端から斜め下方に延びる直線部G7が形成され、更に、この直線部G7に比して傾きが緩やかな直線部G8が繋がるように形成されている。
【0084】
直線部G8は菱形の一辺に必要とされる長さを有したうえで、更に、直線部G2と平行しつつ後方へ延長されるようになっており、その延長部後端が半円部G1の下部端に接続され、最終的に、これら全体でエンドレスの案内レール部85が形成されている。
後方に位置する半円部G1には摺動部材86が嵌り込むようになっているので、この半円部G1の直径に対応するように設けられている直線部G2と直線部G8との平行部分は、その相互間を摺動部材86の通路として使用できる。このことから、この後方側の半円部G1は、摺動部材86の後方移動を当て止めするための第2回動規制部81として形成され、またこの第2回動規制部82と菱形開口との間に配置される後方の通路部(両直線部G2,G8の相互間)は、摺動部材86を嵌め込んだ状態で前後方向への摺動のみを許容するための第2突出調整部102として形成されることとなる。
【0085】
これと同様に、前方に位置する半円部G5には摺動部材86が嵌り込むようになっているので、この半円部G5の直径に対応するように設けられている直線部G4と直線部G6との平行部分は、その相互間を摺動部材86の通路として使用できる。このことから、この前方側の半円部G5は、摺動部材86の前方移動を当て止めするための第1回動規制部80として形成され、またこの第1回動規制部80と菱形開口との間に配置される前方の通路部(両直線部G4,G6の相互間)は、摺動部材86を嵌め込んだ状態で前後方向への摺動のみを許容するための第1突出調整部103として形成されることとなる。
【0086】
半円部G1の上部端と直線部G2との接続点、直線部G4と半円部G5の上部端との接続点、半円部G5の下部端と直線部G6との接続点、直線部G8と半円部G1の下部端との接続点は、いずれも直線又は滑らかな曲線で繋がるものとなっている。
その一方で、直線部G2と直線部G3との接続点Q2、直線部G6と直線部G7との接続点Q1は、凸を有した凸交差部、すなわち摺動部材86の乗り移りを邪魔するように尖ったもの(突点Q1,突点Q2)として形成されている。
【0087】
なお、案内レール部85は側面視で菱形開口形状をしていると述べたが、第2回動規制部81(半円部G1)寄りである第2突出調整部102と、第1回動規制部80(半円部G5)寄りである第1突出調整部103とを結ぶラインが菱形開口の長軸となっており、この長軸が前後方向を向くように、案内レール部85が側板部66に形成されている。
このような揺動制限機構15の動作を、図15〜図20に基づいて説明する。
【0088】
図15は、マッサージ機構10が上下移動機構13により下端位置(使用者の腰位置)に到達している状態を示している。
図16は、マッサージ機構10が上昇を開始した直後を示している。
図17は、マッサージ機構10が上昇している途中を示している。
図18は、マッサージ機構10が上下移動機構13により上端位置(使用者の肩位置)に到達している状態を示している。
【0089】
図19は、マッサージ機構10が下降を開始した直後を示している。
図20は、マッサージ機構10が下降をしている途中を示している。図20の後は、図15の状態へと戻る。
まず、マッサージ機構10が上方に移動して使用者の肩部に到達するまでの過程(図15→図16→図17→図18)を説明する。以下の動きは、椅子型マッサージ機1に備えられた制御部(図示しない)のプログラムにより、昇降モータ47、電動モータ64を制御することで実現されている。
【0090】
まず、図15に示すマッサージ機構10では、マッサージ部材17は使用者の腰部をマッサージすることを主眼においているため、下マッサージ体21bが前方に突出し、上マッサージ体21aが後方へ退行した状態となっている。下マッサージ体21bが前方へ最も突出しているため、下マッサージ体21bは、使用者の腰部を確実に且つ効果的にマッサージすることができる。
【0091】
その状態から、上下移動機構13の昇降モータ47が回転を始めると、制御部は出退動作機構14の電動モータ64にも指令を出すようにプログラムされている。この電動モータ64が回転を始めることで、図16に示すように、スライダー50を上方に押し上げると共に、伝動アーム52を介して、レール部53内に摺動自在に嵌り込む摺動部材54を前方側へ押し出すようになり、これに伴ってマッサージ機構10を枢軸42回りに前方へ傾動させ始める。
【0092】
図14に示すように、マッサージ機構10が前方傾動を開始すると、これに連動して、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の第2回動規制部81に当て止めされた状態から、第2突出調整部102を前方へ移動する。すなわち、摺動部材86は半円部G1から直線部G8上を摺動し、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31(リンクレバー36の上端部)も同様に、直線部G8に沿って前方へ移動するので、マッサージ機構10が前方傾動する。
【0093】
このような作用に伴い、支持アーム20が第1回転軸26回りにほんの少しだけ回動して、下マッサージ体21bも後方に若干退行する状況が起こる。このとき上マッサージ体21aも前方へ若干突出するようになる。これらのことにより、下マッサージ体21bによる使用者の腰部押圧力が緩和される(若干弱められる)ようになる。つまり、第2突出調整部102は、下マッサージ体21bの押し付け力調整機構(強弱調整機構)としての機能を発する。
【0094】
但し、摺動部材86は、第2突出調整部102に嵌っている限り、摺動部材86が上下移動することは阻止される状態にあり、第2回転軸31が上方へ押し上げられることも阻止される。それ故、下マッサージ体21bの前方突出状態は確実に維持される。
図17に示すように、下マッサージ体21bによる腰部押圧力が緩和される動きを経た後、マッサージ機構10はさらに上方に移動し、使用者の背部に対応する位置となる。
【0095】
マッサージ機構10の上方移動と共に、マッサージ機構10の前方傾動が継続して行われ、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の直線部G8上を摺動しつつ、案内レール部85内の中点Q4を通過し、直線部G7上を前方上部へ向けて摺動することになる。
このとき、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31も同様に、直線部G8上を移動→中点Q4を通過→直線部G7上を移動することとなる。このような動きに伴って叩き駆動部24(叩きモータ32)が上方移動することで、リンクレバー36が上方へ引上げられる。ひいては、支持アーム20の基端部が上方へ引っ張られ、支持アーム20が第1回転軸26回りに回動し、下マッサージ体21bが後方に退行し且つ上マッサージ体21aが前方へ突出するようになる。
【0096】
なお、以上の動作において、摺動部材86が案内レール部85の直線部G2から突点Q2を経て直線部G3側へと移動しないのは、突点Q2を乗り越えるための抵抗が大きいためであり、案内レール部85の突点Q2は、揺動制限機構15の動きを実現するための必須構成要件である。
また、摺動部材86が案内レール部85の直線部G8〜直線部G7上を通過するとき、それぞれの対辺側となる直線部G4〜G3までの間隔は摺動部材86の外径よりも広幅であって、回動許容部82として形成されている。それ故、摺動部材86が回動許容部82内を上下方向に移動可能となり、第2回転軸31も同様に上下移動するので、結果として、マッサージ部材17が第1回転軸26回りに回動して、マッサージ機構10の上方移動と共に、使用者の背中のS字カーブに馴染むように適宜調和されつつ繰り返され、各マッサージ体21がほぼ均等圧に背中に当接するといった縦ガイド支持部41の作用が発揮される。
【0097】
その後、図18に示すように、マッサージ機構10が更に上方へ移動し、使用者の肩位置に達する際には、案内レール部85内において摺動部材86は、直線部G7から突点Q1を超え、直線部G4と直線部G6との相互間、すなわち、第1突出調整部103に嵌った状態として前方へ移動し、半円部G5である第1回動規制部80に到達して当て止めされる。このとき、上マッサージ体21aが前方へ最も突出しているため、上マッサージ体21aは、使用者の肩部を上方から前方にかけて確実に且つ効果的にマッサージすることができるようになる。
【0098】
次に、出退動作機構14がマッサージ機構10を後方へ退行させてゆく過程(図18→図19→図20→図15)を説明する。以下の動きも、椅子型マッサージ機1に備えられた制御部(図示しない)のプログラムにより、昇降モータ47、電動モータ64を制御することで実現されている。
まず、前述した図18の状態から、上下移動機構13の昇降モータ47が回転を始めると、制御部は出退動作機構14の電動モータ64にも指令を出すようにプログラムされている。この電動モータ64が回転を始めることで、図19に示すように、スライダー50を下方に引き下げると共に、伝動アーム52を介して、レール部53内に摺動自在に嵌り込む摺動部材54を後方側へ引き戻すようになり、これに伴ってマッサージ機構10を枢軸42回りに後方へ傾動させ始める(起立状態へと近づける)。
【0099】
図19,図14に示すように、マッサージ機構10が後方傾動を開始すると、これに連動して、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の第1回動規制部80に当て止めされた状態から、第1突出調整部103を後方へ移動する。すなわち、摺動部材86は半円部G2から直線部G4上を摺動し、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31(リンクレバー36の上端部)も同様に、直線部G4に沿って後方へ移動するので、マッサージ機構10が後方傾動する。
【0100】
このような作用に伴い、支持アーム20が第1回転軸26回りにほんの少しだけ回動して、上マッサージ体21aも後方に若干退行する状況が起こる。このとき下マッサージ体21bも前方へ若干突出するようになる。これらのことにより、上マッサージ体21aによる使用者の肩部押圧力が緩和される(若干弱められる)ようになる。つまり、第1突出調整部103は、上マッサージ体21aの押し付け力調整機構(強弱調整機構)としての機能を発する。
【0101】
但し、摺動部材86は、第1突出調整部103内に嵌っている限り、前後方向の移動以外(摺動部材86が上下移動すること)は阻止される状態にあり、第2回転軸31が下方へ引き下げられることも阻止される。
その後、図20に示すように、マッサージ機構10の下方移動と共に、マッサージ機構10の後方傾動が継続して行われ、揺動制限機構15の摺動部材86は案内レール部85の直線部G4上を摺動しつつ、案内レール部85内の中点Q3を通過し、直線部G3上を後方下部へ向けて摺動することになる。
【0102】
このとき、摺動部材86が取り付けられている第2回転軸31も同様に、直線部G4上を移動→中点Q3を通過→直線部G3上を移動することとなる。このような動きに伴って叩き駆動部24(叩きモータ32)が下方移動することで、リンクレバー36が下方へ押し戻される。ひいては、支持アーム20の基端部が下方へ押され、支持アーム20が第1回転軸26回りに逆回動し、上マッサージ体21aが後方に退行し且つ下マッサージ体21bが前方へ突出するようになる。
【0103】
なお、以上の動作において、摺動部材86が案内レール部85の直線部G6から突点Q1を経て直線部G7側へと移動しないのは、突点Q1を乗り越えるための抵抗が大きいためであり、案内レール部85の突点Q1は、揺動制限機構15の動きを実現するための必須構成要件である。
また、摺動部材86が案内レール部85の直線部G4〜直線部G3上を通過するとき、それぞれの対辺側となる直線部G8〜G7までの間隔は摺動部材86の外径よりも広幅であって、回動許容部82として形成されている。
【0104】
この回動許容部82内を摺動部材86は上下移動可能であり、結果として、マッサージ部材17が第1回転軸26回りに回動して、マッサージ機構10の下方移動と共に、使用者の背中のS字カーブに馴染むように適宜調和されつつ繰り返され、各マッサージ体21がほぼ均等圧に背中に当接するといった縦ガイド支持部41の作用が発揮される。
その後、図15に示す状態へとマッサージ機構10は移行する。
【0105】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、椅子型マッサージ機1としての細部構造(座部2及び背もたれ部3を具備する基本構成以外)や、マッサージ機構10の細部構造などは何ら限定されるものではない。
【0106】
また、椅子型マッサージ機1は、背もたれ部3の内部に、光電センサなどからなる「体部分検出センサ」を有していてもよい。このセンサにより、例えば、使用者の肩位置を検出し、検出された使用者の肩位置を基に、使用者の肩位置にあっては、マッサージ機構10の上端部(上マッサージ体21a)を前方向に突出させ、使用者の腰位置(肩位置より所定距離だけ下方部分)にあっては、マッサージ機構10の上端部(上マッサージ体21a)を後方向に退行させるよう制御してもよい。かかる制御は、椅子型マッサージ機1に設けられた制御部により行うとよい。
【符号の説明】
【0107】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背もたれ部
4 背揉み装置
10 マッサージ機構
11 揺動枢支部
12 ベース部材
13 上下移動機構
14 出退動作機構
17 マッサージ部材
18 駆動部
50 スライダー
51 スライド機構
52 伝動アーム
53 レール部
54 摺動部材
63 送りネジ軸
64 モータ
65 雌ねじ部
67 枢支軸(第1枢支軸)
68 リンク接合部
70 リンク接合部
80 第1回動規制部
81 第2回動規制部
82 回動許容部
85 案内レール部
86 摺動部材
102 第2突出調整部
103 第1突出調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子型マッサージ機の背もたれ部に配設された背揉み装置であって、
上端部及び下端部のそれぞれに施療子を備え且つ左右一対に配備されたマッサージ部材と、このマッサージ部材にマッサージ動作を伝動する駆動部とを有するマッサージ機構と、
このマッサージ機構の下端部を揺動枢支部で支持することで当該マッサージ機構を前後方向に揺動自在に保持するベース部材と、
このベース部材を前記背もたれ部内で上下方向に移動可能にする上下移動機構と、
前記ベース部材に対して前記マッサージ機構の上端部を前後方向に出退させる出退動作機構と、
前記出退動作機構によりマッサージ機構の上端部が前方に突出状態とされた際に、前記マッサージ部材の上端部を前方突出状態で保持可能とする揺動制限機構と、
を有していることを特徴とする椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項2】
前記揺動制限機構は、前記出退動作機構によりマッサージ機構の上端部が後方に退行状態とされた際に、前記マッサージ部材の下端部を前方突出状態で保持可能とするよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項3】
前記マッサージ機構は、左右方向に架設された第1回転軸と、この第1回転軸に相対回転自在に設けられたマッサージ部材と、前記マッサージ部材が第1回転軸の回転に伴って連れ回りするのを規制すべく当該マッサージ部材に係合された振れ止め機構とを有することで、第1回転軸の駆動回転によりマッサージ部材を互いに近接離反させ揉み動作を行う揉み駆動部を備え、
さらに、前記マッサージ機構は、前記振れ止め機構に連結され且つこの振れ止め機構を介して前記支持アームを第1回転軸の軸心回りに往復揺動させることで、マッサージ部材を前後方向へ出退させ叩き動作を行う叩き駆動部を備えており、
前記叩き駆動部は、前記第1回転軸と平行に配設された第2回転軸と、この第2回転軸に偏心した状態で設けられた偏心駆動体と、一端部が前記偏心駆動体からの偏心回転を受動可能に連結されると共に他端部が前記振れ止め機構に連結され且つ前記偏心駆動体からの偏心回転によって長手方向に往復運動する長尺のクランク軸と、を有していて、
前記叩き駆動部が、第1回転軸に垂直な方向で且つ上下方向に移動自在とされていて、当該叩き駆動部が上下に移動することで前記クランク軸が上下動し、前記マッサージ部材を第1回転軸の軸心回りに回動可能な構成となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項4】
前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、
前記案内レール部には、前記マッサージ機構の上端部が前方に突出状態とされた際に前記摺動部材が嵌り込むことで、前記マッサージ部材の上端部を前方突出状態で保持可能なように当該マッサージ部材の回動角を規制する第1回動規制部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項5】
前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、
前記案内レール部には、前記マッサージ機構の上端部が後方に退行状態とされた際に前記摺動部材が嵌り込むことで、前記マッサージ部材の下端部を前方突出状態で保持可能なように当該マッサージ部材の回動角を規制する第2回動規制部が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項6】
前記揺動制限機構は、前記叩き駆動部に備えられた第2回転軸の両端部に同軸状に設けられた摺動部材と、この摺動部材が摺動する無端状の案内レール部とを有していて、
前記案内レール部には、前記摺動部材の上下動を許容することで、前記第1回転軸回りでのマッサージ部材の回動を可能とする回動許容部が形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項7】
前記案内レール部は、側面視菱形に形成された開口の縁部で構成されていて、
前記開口の長軸が前後方向を向き、前記開口の長軸に略垂直な短軸は、上下方向を向いていて、
前記長軸の前後端に位置する開口の縁部には、摺動部材が嵌り込む半円部がそれぞれ形成されており、前方に位置する半円部が第1回動規制部とされると共に、後方に位置する半円部が第2回動規制部とされ、前記短軸に沿った空間が回動許容部とされていることを特徴とする請求項6に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項8】
前記案内レール部は、側面視菱形に形成された開口の縁部で構成されていて、
前記開口の長軸が前後方向を向き、前記開口の長軸に略垂直な短軸は、上下方向を向いていて、
前記長軸の前後端に位置する開口の縁部には、摺動部材を嵌め込んだ状態で前後方向への摺動のみを許容する前後の通路部と、これら前後両通路部の前後端を突き当たり状態にする半円部とがそれぞれ形成されており、
前方に位置する半円部が第1回動規制部とされ、且つこの第1回動規制部と前記開口との間に配置される前方の通路部が第1突出調整部とされ、
後方に位置する半円部が第2回動規制部とされ、且つこの第2回動規制部と前記開口との間に配置される後方の通路部が第2突出調整部とされ、
前記短軸に沿った空間が回動許容部とされている
ことを特徴とする請求項6に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項9】
前記出退動作機構は、前記ベース部材に対して上下移動自在に設けられたスライダーと、このスライダーを上下移動させるスライド機構と、
前記マッサージ機構の上端部及び前記スライダーに対してそれぞれ回動自在に枢支され且つ前記スライダーとマッサージ機構とを連結する伝動アームと、
前記ベース部材からマッサージ機構の側部に沿って前方へ延び出す状態で設けられたレール部と、
前記マッサージ機構からレール部へ向けて突出状に設けられて前記レール部に沿って移動自在となるように係合する摺動部材と、
を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項10】
前記レール部は、前記揺動枢支部を中心とする上膨らみ形の円弧カーブで形成されていることを特徴とする請求項9に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項11】
前記マッサージ機構に対して摺動部材が設けられる位置と、前記伝動アームがマッサージ機構に枢支される枢支軸とが、この枢支軸の軸心上で同軸配置とされていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項12】
前記スライド機構は、前記スライダーに設けられた上下方向に貫通する雌ねじ部と、この雌ねじ部に螺合する送りネジ軸と、この送りネジ軸を駆動回転する電動モータとを有していることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項13】
座部と、座部の後部に設けられ且つ請求項1〜12のいずれか1項に記載された背揉み装置を内蔵した背もたれ部を有することを特徴とする椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−131039(P2011−131039A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75366(P2010−75366)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】