説明

椅子型マッサージ機

【課題】 被施療者の視点を基準にして、操作装置を操作した場合にその操作方向に略一致する方向へ施療部を移動させ、被施療者が直感的に操作装置を操作することができる椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】 椅子型マッサージ機1は、被施療者の背部を支持する背凭れ部3に設けられ、略前後方向へ可動であって前記背部へ刺激を与える施療子(施療部)10と、被施療者の操作により、所定の中立位置から施療子10の可動方向と略一致する前後方向へ傾倒動作可能なグリップ部72を有し、該グリップ部72の位置の変位に応じた信号を出力する操作装置7と、該操作装置7からの信号に基づき、前記グリップ部72の動作方向と略一致する前方又は後方へ前記施療子10を移動させるように該施療子10の動作を制御する制御部40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機に関し、特に、着座した被施療者が操作装置を直感的に操作して施療部を所望の位置に移動させることのできる椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
被施療者の身体を施療することが可能な従来のマッサージ機には、被施療者の身体に刺激を与える施療部と、この施療部の位置を変更させるのに被施療者が操作する操作装置とを備えるものがある。一例として、特許第2566275号公報(特許文献1)に開示された椅子型マッサージ機がある。この椅子型マッサージ機は、背凭れ部に上下動可能な施療子(施療部)を備え、肘掛け部の上部に、立設された棒状の操作子を有するジョイスティック型の操作器(操作装置)を備えている。そして、被施療者が該操作器の操作子を前後方向に傾倒操作することにより、これに対応して施療子の上下位置が変更されるようになっている。
【特許文献1】特許第2566275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示されたマッサージ機は、上述したようにジョイスティック型の操作装置を前後方向に傾倒操作すると、施療部は上下方向にその位置が変更されるものであり、被施療者による操作装置の操作方向と施療部の移動方向とが一致していない。このように、被施療者による操作装置の操作と施療部の移動とにおいて方向性の不一致が生じると、被施療者にしてみれば、これに違和感を感じたり、所望の位置に施療部を移動させる際に操作装置を操作し難いと感じる場合がある。
【0004】
そこで本発明は、被施療者の視点を基準にして、操作装置を前後方向へ傾倒操作した場合に、その操作方向に一致する方向へ施療部を移動させ、被施療者が直感的に操作装置を操作することができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述したような事情に鑑みて成されたものであり、本発明に係る椅子型マッサージ機は、被施療者の背部を支持する背凭れ部に設けられ、可動であって前記背凭れ部へ刺激を与える施療部と、被施療者の操作により所定の中立位置から変位可能なグリップ部を有し、該グリップ部の操作に応じた信号を出力する操作装置と、該操作装置からの信号に基づき、前記グリップ部の操作方向に一致する方向への前記施療部の移動を制御する制御部とを備える。このような構成とすることにより、被施療者が操作装置のグリップ部を所定の中立位置から変位させると、施療部はグリップ部の操作方向(変位方向)に一致する方向へ移動するため、被施療者に違和感を感じさせることなく、操作装置の直感的な操作が可能となる。
【0006】
なお、ここで「グリップ部の操作方向に一致する方向への施療部の移動」とは、方向の厳密な一致を意味するものではないことは言うまでもない。即ち、椅子型マッサージ機を使用する被施療者がグリップ部を操作したときに、感覚的にその操作方向に一致すると認識する範囲内の方向への施療部の移動をいうものである。より具体的には、「グリップ部の操作方向に一致する前後方向(又は、上下方向)への施療部の移動」とは、椅子型マッサージ機を使用する被施療者がグリップ部を操作したときに、感覚的にその操作方向に一致すると認識する範囲内の前後方向(又は、上下方向)への施療部の移動をいう。そしてこのことは、以下の説明中の記載においても同様である。
【0007】
また、前記施療部、及び前記操作装置のグリップ部は、共に前後方向へ可動であり、前記制御部は、前記グリップ部の前後方向への操作時に、該操作方向に一致する前後方向へ前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、グリップ部を前後方向へ操作すると、施療部も同じ前後方向へ移動されるため、被施療者は直感的に操作することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から前後方向へ操作された時間に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、グリップ部を操作している間、その操作方向に一致する前方又は後方へ施療部を移動させることができる。このように、簡易且つ直感的な操作装置の操作により、施療部を移動させることができる。
【0009】
また、前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から前後方向へ操作された変位量に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、操作装置のグリップ部の変位と施療部の変位とが、その方向(前後)及び距離(変位量)の関係において更に一致することとなり、被施療者はより一層、直感的に操作装置を操作することができる。
【0010】
また、前記施療部、及び前記操作装置のグリップ部は、共に上下方向へ可動であり、前記制御部は、前記グリップ部の上下方向への操作時に、該操作方向に一致する上下方向へ前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、グリップ部を上下方向へ操作すると、施療部も同じ上下方向へ移動されるため、被施療者は直感的に操作することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から上下方向へ操作された時間に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、グリップ部を操作している間、その操作方向に一致する上方又は下方へ施療部を移動させることができる。このように、簡易且つ直感的な操作装置の操作により、施療部を移動させることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から上下方向へ操作された変位量に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、操作装置のグリップ部の変位と施療部の変位とが、その方向(上下)及び距離(変位量)の関係において更に一致することとなり、被施療者はより一層、直感的に操作装置を操作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被施療者の視点を基準にして、操作装置を操作した場合にその操作方向に一致する方向へ施療部を移動させ、被施療者が直感的に操作装置を操作することができる椅子型マッサージ機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機の全体構成を示す斜視図である。この椅子型マッサージ機1は、座部2、背凭れ部3、フットレスト4、及びアームレスト(肘掛け部)5から主として構成されている。座部2は、図示しない基台の上部に、上面が座面として用いられるように略平坦に形成されたクッション部2cが配置されることにより構成されており、前記基台の下部両側にはそれぞれ脚部2a(図1では左側の脚部2aのみを示す)が設けられている。クッション部2cは、ウレタンフォーム,スポンジ,又は発泡スチロール製の内装材(図示せず)が前記基台の上面に載置されており、更にこれをポリエステル製の起毛トリコット,合成皮革,又は天然皮革等からなる外装材(カバー)にて覆って構成されている。
【0015】
座部2の上部前側には、被施療者の足首及び脹脛をマッサージするためのフットレスト4の上端部が枢着されている。これにより、フットレスト4は、その上端部を中心にして前後に揺動可能とされている。なお、本実施の形態の説明で用いる方向の概念は、文中に特に説明を付している場合を除き、椅子型マッサージ機1の座部2に着座した被施療者(図示せず)から見たときの方向の概念と一致するものとする。
【0016】
フットレスト4は、座部2の前端から図1においては下方へ延びた平面状の下腿支持面4aと、該下腿支持面4aの両側から前方へ突出した側壁4b,4cと、下腿支持面4aの下端、即ち下腿支持面4aにおいて座部2から最も離隔した端部から前方へ突出した足底支持壁4dとから構成されている(なお、この説明では、前後に揺動可能なフットレスト4が、図1に示すように後方に位置する状態について記載している)。
【0017】
側壁4b,4cの内部には空気袋47(図4参照)が設けられており、これらの空気袋47は、座部2又は背凭れ部3に内蔵されたポンプ及びバルブ等からなる給排気装置46に、エアホース48(図4参照)を介して接続されており、該給排気装置46からの給排気によって膨張又は収縮するように構成されている。従って、被施療者が着座したときに、空気袋47が膨張及び収縮を繰り返すことによって、被施療者の下腿の外側部分並びに足の側部及び上部に対して押圧刺激を与えることができる。
【0018】
また、下腿支持面4aは、被施療者が椅子型マッサージ機1に着座したときに、被施療者の下腿に当接してこれを支持するようになっている。かかる下腿支持面4aの複数箇所にも空気袋47(図4参照)が設けられており、これらも給排気装置46にエアホース48を介して接続されている。そして、これらの空気袋47が膨張及び収縮を繰り返すことによって、被施療者の脹脛及びアキレス腱の周辺に対して押圧刺激を与えるようになっている。
【0019】
更に、足底支持壁4dは、被施療者が椅子型マッサージ機1に着座したときに、被施療者の足底に当接してこれを支持するようになっている。かかる足底支持壁4dの内部にはバイブレータ及び空気袋47(図4参照)が設けられており、該空気袋47は前記給排気装置46にエアホース48を介して接続されている。また、前記バイブレータは、例えばDCモータの出力軸に偏心質量が取り付けられた如き構成のものであり、駆動されることによって微振動を発生することができる。そして、これらの空気袋47が膨張及び収縮を繰り返すことによって、被施療者の足底に対して押圧刺激を与えることができ、また前記バイブレータが動作することによって、被施療者の足底に振動刺激を与えることができるようになっている。
【0020】
また、複数の空気袋47が、座部2の座面後側(奥側)にも配されている。これらの空気袋47もまた、エアホース48を介して給排気装置46に接続されており、該給排気装置46からの給排気によって膨張又は収縮するように構成されている。また、座部2の座面中央の後側(奥側)には、前述したものと同様の構成のバイブレータ(図示せず)が設けられている。このような構成により、被施療者が座部2に着座した状態で空気袋47の膨張・収縮を繰り返すことで、被施療者の臀部に押圧刺激を与えることができ、同状態でバイブレータを駆動することで、被施療者の肛門部に振動刺激を与えることができる。
【0021】
座部2の後部には、背凭れ部3が設けられている。背凭れ部3は、被施療者の上半身を支持すべく、一般的な体格の成人が椅子型マッサージ機1の座部2に着座した際に、この成人の身体の一部がその外部にはみ出ない程度の大きさとされており、正面視で略長方形状になっている。背凭れ部3の下端部は、座部2の後部にて左右方向の枢軸(図示せず)によって枢支されており、この枢軸を中心に背凭れ部3は回動して前後にリクライニングが可能になっている。また背凭れ部3の両側部には、座部2の基台に固定支持されたアームレスト5が夫々設けられている。このアームレスト5は、背凭れ部3の両側部から前方へ延びていて、椅子型マッサージ機1が内蔵する制御部40(図4参照)に接続された後述する操作装置7が右側のアームレスト5上に取り付けられている。また、椅子型マッサージ機1には、前記操作装置7とは別個にして、前記制御部40と接続されたコントローラ8が備えられている。
【0022】
背凭れ部3の内部には、着座した被施療者の背部に刺激を与えるマッサージ機構200が、このマッサージ機構200を移動させるための移動装置200aに搭載された状態で設けられている。図2は、このマッサージ機構200及び移動装置200aの構成を示す斜視図であり、図3は、マッサージ機構200によるもみ及びたたき動作についての動作原理を説明するために該マッサージ機構200の構成を模式的に示す分解斜視図である。初めに、マッサージ機構200の動作原理について図3を用いて説明する。図3に示すように、マッサージ機構200は、被施療者の身体に機械的刺激を与えるための2つのローラ状の施療子10,10を左右に有している。これらの施療子10は、前方へ延びる左右のアーム11,11の先端部にそれぞれ回転自在に取付けられている。
【0023】
それぞれのアーム11は、その基部がもみコンロッド12の一端部において支持軸13により回動可能に支持されている。また、アーム11ともみコンロッド12との間には、それぞれの内側面に突設された係止部11a,12aに係止されてスプリング14が懸架されており、このスプリング14の作用によりアーム11は支持軸13を中心として下方へ揺動するように付勢されている。
【0024】
もみコンロッド12の他端部は、連結部材15を介してたたきコンロッド16の一端部に連結されている。後述するように、もみコンロッド12は施療子10にもみ動作をさせるべく上下・左右・前後の三次元的な動作をし、たたきコンロッド16は施療子10にたたき動作をさせるべく上下・前後の二次元的な動作をする。そして連結部材15は、動作の異なるもみコンロッド12及びたたきコンロッド16を、それぞれの動作を許容しつつ互いを連結できるよう、フレキシブルな連結構造を有している。本実施の形態に係るマッサージ機構200では、この連結構造としてボールジョイントを採用している。
【0025】
左右に設けられたもみコンロッド12,12間には、左右方向へ延びるもみ軸20が配設されている。このもみ軸20の左右の端部には、もみ軸20の軸芯に対して同一方向に所定角度で傾斜するように形成された傾斜軸部21,21が設けられている。また、もみコンロッド12と連結部材15との連結部分には、左右方向の中心側に開口する嵌合穴12bが形成されている。そして、もみ軸20の傾斜軸部21は、この嵌合穴12bに図示しない軸受を介して回動可能に嵌挿されている。
【0026】
もみ軸20の左右方向の中央部分には、ヘリカルギヤ22aが同軸的に設けられており、このヘリカルギヤ22aは、上下方向の回転軸芯を有するウォーム22bと噛合している。このように、ヘリカルギヤ22aとウォーム22bとでウォームギヤ機構23が構成されている。また、ウォーム22bの下端部にはプーリ24が同軸的に設けられており、該プーリ24は、ベルト25を介してサーボモータ等のもみ用モータ26の出力軸に設けられたプーリ27と連結している。
【0027】
従って、モータ26の出力軸の回転運動はベルト25を介してウォーム22bへ伝達され、ウォーム22bの回転の回転によってもみ軸20が回転する。そして、もみ軸20の回転に伴い、傾斜軸21が円錐形の軌跡を描くように変位し、これによってもみコンロッド12が規則的に動作して、左右の施療子10,10が上下・左右・前後へと三次元的に移動する。このような移動動作が、施療子10のもみ動作となる。
【0028】
また、もみ軸20の上方であって左右に設けられたたたきコンロッド16,16間には、左右方向へ延びるたたき軸30が配設されている。該たたき軸30の左右の両端には偏芯軸部31が設けられている。この偏芯軸部31は、たたき軸30の軸芯と平行な軸芯を有しており、左右の偏芯軸部31,31は互いに位相が180°ずれるように形成されている。たたきコンロッド16の他端部、即ち、たたきコンロッド16において連結部材15が接続されていない方の端部には、左右方向の中心側に開口する嵌合穴16bが形成されている。そして、たたき軸30の両端に設けられた偏芯軸部31は、この嵌合穴16bに図示しない軸受を介して回動可能に挿通している。たたき軸30の右側の部分にはプーリ32が同軸的に設けられており、該プーリ32は、ベルト33を介してサーボモータ等のたたき用モータ34の出力軸に設けられたプーリ35と連結している。
【0029】
従って、モータ34の出力軸の回転運動はベルト33を介してたたき軸30に伝達され、たたき軸30の両端の偏芯軸部31の公転によってたたきコンロッド16は上下・前後へと二次元的に動作する。この動作は、連結部材15を介してアーム11へ伝達され、その結果、施療子10が移動する。このときの施療子の動作がたたき動作となる。
【0030】
このようなマッサージ機構200は移動装置200aに搭載されており、該移動装置200aは昇降機構200bと揺動機構200cとを備えている。そして、マッサージ機構200は、昇降機構200bの駆動により、背凭れ部3(図1参照)の内部において該背凭れ部3に沿って上下方向へ昇降動するようになっており、また、揺動機構200cの駆動により、背凭れ部3の内部において前後方向へ揺動するようになっている。以下、マッサージ機1の移動装置200aが備える昇降機構200b及び揺動機構200cについてそれぞれ説明する。
【0031】
図2に示すように昇降機構200bは、プレート材から成る左右の側部フレーム251,251、該側部フレーム251の上部間に架設されてこれらを支持するプレート材から成る上部フレーム252、及び側部フレーム251の下部間に架設されてこれらを支持する丸棒状のポールから成る下部フレーム(揺動軸)253によって構成された昇降枠体250を備えている。
【0032】
側部フレーム251の下部には、左右方向へ貫通してネジ254が通される貫通孔255が形成されている。また、丸棒状のポールから成る下部フレーム253の両端には、ネジ254と螺合するネジ孔253aが左右の外方へ開口するように形成されている。下部フレーム253は、側部フレーム251の貫通孔255に左右方向の内側からネジ孔253aを一致させた状態で、貫通孔255を挟んで外側からネジ254をネジ孔253aに螺合することにより、側部フレーム251に固定される。逆に、左右のネジ254を取り外すことにより、側部フレーム251から下部フレーム253を容易に取り外すことが可能である。
【0033】
左右の側部フレーム251には、ガイドローラ257,258が回動可能なように取付けられている。これらのガイドローラ257,258は、マッサージ機1の背凭れ部3内に配設された昇降フレーム29を構成するガイドレール29aに沿って転動可能になっている。詳説すると、背凭れ部3内に設けられた昇降フレーム29aは、上下方向へ延びて互いに平行を成す左右のガイドレール29a,29aを有している。ガイドレール29aは、長手方向に交差する断面がチャネル形状になっており、左右方向の中心側が開口している。
【0034】
上記ガイドローラ257は左右方向に沿った回転軸芯を有し、側部フレーム251の上部、中部、及び下部にそれぞれ配設されている。そしてガイドレール29aの内壁面上を転動し、昇降枠体250の前後方向への移動を規制する。また、ガイドローラ258は前後方向に沿った回転軸芯を有し、上下で隣り合うガイドローラ257間に配設されている。そしてガイドレール29aの内壁面上を転動し、昇降枠体250の左右方向への移動を規制する。
【0035】
左右の側部フレーム251の下部間には昇降駆動軸260が軸芯回りに回動自在にして設けられており、該昇降駆動軸260の両端であって側部フレーム251の外側には昇降用ピニオン207が取付けられている。昇降枠体250の左側下部には減速機262及び昇降用モータ214が備えられており、昇降駆動軸260は、減速機262を介して昇降用モータ214によって回転駆動される。また、ガイドレール29aの後部には、該ガイドレール29aに沿って複数の歯が列設された昇降用ラック264が設けられており、昇降用ピニオン207はこの昇降用ラック264に噛合している。
【0036】
従って、昇降用モータ214が駆動すると、昇降駆動軸260の回転により昇降用ピニオン207が昇降用ラック264に沿って上下方向へ転動する。このとき、ガイドレール29aの内壁面に沿って転動するガイドローラ257,258により、昇降枠体250の前後及び左右への移動が規制され、昇降枠体250は安定的に昇降動する。
【0037】
図2に示すように下部フレーム253には、揺動機構200cが支持されている。即ち、揺動機構200cは、左右に対面配置された板状部材から成る揺動フレーム270,270を備え、その下部には下方へ延びる延設部270aが形成されている。この延設部270aの先端部(下端部)には、左右方向へ貫通する孔から成る軸受部270bが形成されており、昇降枠体250の丸棒状の下部フレーム253はこの孔に挿通されている。そして、下部フレーム253は揺動フレーム270の揺動軸を成しており、該揺動フレーム270は、軸受部270bにおいて下部フレーム253により回動可能に支持され、該下部フレーム253を中心にして前後方向へ揺動可能になっている。
【0038】
左右の揺動フレーム270間には矩形の支持プレート271が配され、該支持プレート271の四隅が、左右の揺動フレーム270にボルト271aで締結されている。上述したマッサージ機構200は、支持プレート271の後方に配置され、該支持プレート271に支持されている。なお、支持プレート271には左右に図示しない貫通穴が形成されており、マッサージ機構200が備えるアーム11は、この貫通穴を通じて支持プレート271の前方へ突出している。
【0039】
一方、上部フレーム252の左右の下部には、揺動フレーム270に支持されたマッサージ機構200を揺動させるための中間アイドル減速ユニット273,274が取付けられている。ここで、左右の中間アイドル減速ユニット273,274は左右対称の形状になっているため、一方の中間アイドル減速ユニット273の形状についてのみ説明する。
【0040】
中間アイドル減速ユニット273は、ケース275と、該ケース275内にて支持されて一体回転するアイドルギヤ276及びラック駆動ギヤ(歯車)240とを備えている。このような中間アイドル減速ユニット273は、昇降枠体250の上部フレーム252の下部にネジ286を用いて固定される。
【0041】
図2に示すように、昇降枠体250が有する左の側部フレーム251の上部には、進退用モータ226及びウォーム減速機291が取付けられている。ウォーム減速機291は、進退用モータ226の出力軸に連結されており、該出力軸の回転を減速して出力し、この出力は伝達軸(回転軸)292へ伝達される。伝達軸292は左右方向へ軸芯を向けてマッサージ機構200の上方に設けられ、左側端部がウォーム減速機291に連結され、右側端部が昇降枠体250の右側の側部フレーム251の上部にて回転自在に支持されている。
【0042】
上述した伝達軸292は中間アイドル減速ユニット273のケース275によって支持されている。そして、伝達軸292に同軸状に設けられた図示しない伝達ギヤが、中間アイドル減速ユニット273のアイドルギヤ276に噛合している。また、マッサージ機構200を支持する左右の揺動フレーム270の上部には、およそ円弧状の進退用ラック241が取付けられている。この進退用ラック241は、揺動フレーム270の下部を支持する下部フレーム253の軸芯を中心とする半径Dの円周上に複数の歯が列設されて構成されている。そして、中間アイドル減速ユニット273が有するラック駆動ギヤ240が、この進退用ラック241に上方から噛合している。図15に示すように、進退用ラック241の前部及び後部のそれぞれにはストッパ241aが上方へ突出して設けられている。このストッパ241aは、進退用ラック241に沿って転動するラック駆動ギヤ240の移動範囲を規制している。
【0043】
このような構成を成す揺動機構200cは、進退用モータ226の回転が、ウォーム減速機291、伝達軸292,中間アイドル減速ユニット273を介して進退用ラック241へ伝達される。この際、ウォーム減速機291,アイドルギヤ276,及び伝達ギヤを介することによって、進退用モータ226の回転数は適当に減速されてラック駆動ギヤ240へ伝達される。そして、ラック駆動ギヤ240が回転すると、これに噛合する進退用ラック241は前後方向へ移動する。その結果、マッサージ機構200を支持する揺動フレーム270は、下部フレーム253を中心として前後方向へ揺動する(図15中の矢印参照)。このとき、図15に示すハッチングで囲まれた部分、即ち、マッサージ機構200、揺動フレーム270、及び進退用ラック241が、前後方向へ揺動する。
【0044】
図4は、椅子型マッサージ機1の構成を示す機能ブロック図である。図4に示すように椅子型マッサージ機1は制御部40を備え、この制御部40は、背凭れ部3(図1参照)の下部などに配設されている。制御部40は、CPU41、ROM42、RAM43、及び入出力インタフェース44から主として構成されている。また、入出力インタフェース44には、制御部40の外部に設けられてアームレスト5(図1参照)上に配設された操作装置7が接続されている。
【0045】
CPU41は、ROM42に記憶されているプログラム及び/又はRAM43にロードされたプログラムを実行することが可能である。ROM42は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等から構成されており、CPU41にて実行されるプログラム及びこれに用いるデータ等が記憶されている。CPU41は、ROM42に記憶されているプログラムを実行することにより、椅子型マッサージ機1に上述したような揉み動作、たたき動作、指圧動作などのマッサージ動作の他、上述したようなマッサージ機構200の昇降動作及び前後動作を行わせることができる。また、RAM43は、SRAM又はDRAM等により構成されている。RAM43は、ROM42に記憶されているプログラムを実行するときに、CPU41の作業領域として利用される。
【0046】
入出力インタフェース44は、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、D/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等により構成されている。上述したようにこの入出力インタフェース44には操作装置7及びコントローラ8が接続されており、この操作装置7及びコントローラ8からの信号を受信することができる。
【0047】
また、入出力インタフェース44には、給排気装置46を駆動するための駆動回路45が接続されている。給排気装置46は、電磁弁等の切換バルブ及びエアポンプ等から構成されており、フットレスト4及び座部2などの各所に設けられた複数の空気袋47との間でエアホース48を介して接続され、この空気袋47に対して各々独立的に給排気を行う。
【0048】
また、入出力インタフェース44には、モータ11,12,214,226を夫々駆動するための駆動回路50a〜50dが接続されている。これらの駆動回路50a〜50dは、図示しない電源に接続されており、入出力インタフェース44から出力された回転指示信号に応じた電力をモータ11,12,214,226に夫々供給するようになっている。更に具体的に説明すると、操作装置7又はコントローラ8から受信した信号に基づき、CPU41がモータ11,12,214,226の回転方向及び回転速度、又はこれらに加えて回転数(回転角度)を決定し、決定内容に応じた回転指示信号を入出力インタフェース44に発生させる。駆動回路50a〜50dは、夫々パルス発生器を備えており、該パルス発生器が、入出力インタフェース44から与えられた回転指示信号に応じたパルス幅の電圧(パルス信号)を夫々発生し、該電圧が夫々モータ11,12,214,226の端子間に印加される。このようなPWM制御により、モータ11,12,214,226に電力が供給され、所要の回転方向、回転速度、回転数(回転角度)を満たして駆動される。
【0049】
なお、本実施の形態においては、モータ11,12,214,226はDCサーボモータとしているが、ACサーボモータであってもよい。また、このような駆動対象のモータの種類の変更に応じて駆動回路50a〜50dの構成も変更されることは言うまでもない。
【0050】
入出力インタフェース44には、更にエンコーダ53及び磁気センサ54が接続されている。エンコーダ53は、マッサージ機構200を昇降させるモータ214の回転に応じてパルス信号を発生するようになっている。CPU41がこのパルス信号のパルス数を計数することにより、マッサージ機構200の上下方向の位置を検出することができる。また、磁気センサ54は、回転軸16の軸長方向の所定箇所において、円周方向の複数位置に配置された磁石(図示せず)と対向するように、回転軸16の近傍に配置されており、周囲の磁気の強さに応じた出力電圧を発生するようになっている。回転軸16が回転した場合には、磁気センサ54の近傍を磁石が順次通過するので、CPU41が磁気センサ54からの出力電圧のピークを係数することにより、回転軸16の回転角度、即ち、施療子10の位置を検出することができる。
【0051】
次に、椅子型マッサージ機1に設けられた操作装置7の構成について説明する。図1に示すように、椅子型マッサージ機1が有するアームレスト5は、座部2の両側に設けられたアームレスト基部5bと、このアームレスト基部5bの上部に覆い被せられた上部カバー5aとを備えている。そして、操作装置7は、右側のアームレスト5の上部カバー5aの上に取り付けられている。また、操作装置7はいわゆるジョイスティック型の構造になっており、図1に示すように、アームレスト5の上部カバー5aに固定されるベース部70と、該ベース部70に立設されたロッド部71と、該ロッド部71の上部に外嵌して被施療者に把持される筒状のグリップ部72とから構成されている。
【0052】
図5は、図1に示す操作装置7のベース部70とロッド部71とのジョイント機構73の構成を一部分を省略して示す斜視図であって、右斜め後方からの視線に基づく構成を示している。また、図6は、図5に示すジョイント機構73の構成を示す斜視図であって、左斜め後方からの視線に基づく構成を示している。また、図8は、図1に示す操作装置7の構成を示す機能ブロック図である。なお、図5及び図6において、ジョイント機構73を上方から覆うカバー73a(図1参照)は省略している。図5及び図6に示すように、ベース部70には複数のネジ孔70aが形成されており、ベース部70は、ネジ孔70aに挿通された複数の取付ネジ(図示せず)がアームレスト5の上部カバー5aを貫通してその下のアームレスト基部5b(図1参照)に螺着されることにより、上部カバー5aの上部に固定されている。
【0053】
図5及び図6に示すように、ジョイント機構73は、ベース部70の左右の上面にそれぞれ立設されたロッド枢支台75a,75b(左側のロッド枢支台75aは、図5において二点鎖線で示している)を有している。ロッド部71の下端部の左右の側部からは、左右のそれぞれへ枢支軸76が突設され、該枢支軸76は、ロッド枢支台75a,75bの上部に形成された枢支孔75cに挿通されている。その結果、ロッド部71は、枢支軸76を中心として前後方向に揺動可能にしてベース部70上に枢支されている。
【0054】
図5に示すように、ロッド部71と右側のロッド枢支台75bとの間には、2つのバネフック77a,77bが設けられている。バネフック77a,77bは上部が枢支軸76に貫通され、一方のバネフック77aは枢支軸76から斜め前下方へ向けて延設され、他方のバネフック77bは枢支軸76から斜め後下方へ向けて延設されている。そして、両者の下端部間にスプリングバネ77cが架け渡され、両下端部はスプリングバネ77cによって互いに近接する方向へ付勢されている。
【0055】
斜め前下方へ延びるバネフック77aは、ロッド部71が後傾したときに該ロッド部71と共に枢支軸76回りに揺動して下端部が前方へ向かい、ロッド部71が前傾したときには、ロッド枢支台75bの内側面から突設された図示しない突起に係止されて揺動しないようになっている。また、斜め後下方へ延びるバネフック77bは、ロッド部71が前傾したときに該ロッド部71と共に枢支軸76回りに揺動して下端部が後方へ向かい、ロッド部71が後傾したときには、ロッド枢支台75bの前記突起に係止されて揺動しないようになっている。従って、ロッド部71が前傾したとき及び後傾したときの何れの場合も、バネフック77a,77bの下端部間のスプリングバネ77cが伸長され、ロッド部71は直立状態(中立位置)に復帰するように付勢される。
【0056】
なお、ロッド部71の中立位置とは、後述するようにロッド部71の傾倒状態に起因してマッサージ機構200が前後動しないようなロッド部71の姿勢をいう。また、ロッド部71の中立位置は直立状態である必要はなく、被施療者の操作性を考慮してより好ましい位置を選択することができ、例えば、若干だけ前方又は後方へ傾斜した状態を中立位置としてもよい。
【0057】
図5に示すように、ロッド部71と左側のロッド枢支台75aとの間には、平歯車の所定の中心角部分に相当する歯車片78が配設されている。図6にも示すようにこの歯車片78は、そのピッチ円の中心部分が枢支軸76に固定的に支持され、ロッド部71の前傾時及び後傾時に該ロッド部71と共に枢支軸76回りに揺動する。歯車片78は別の平歯車である第1歯車79と噛合しており、この第1歯車79は、ベース部70上に立設された図示しない支持部に枢支された枢支軸80に、同軸芯状に取り付けられている。また、図6に示すように第1歯車79には、図示しない前記支持部に固定されたロータリーダンパ(減衰部)81の回転軸に取り付けられた第2歯車82が噛合している。更に、第1歯車79が取り付けられた枢支軸80の端部には、ロータリースイッチ83が取り付けられており、このロータリースイッチ83は、図示しない信号線を介して図4に示す入出力インタフェース44に接続されている。
【0058】
このような操作装置7において、被施療者がロッド部71を傾倒させた場合、歯車片78の回転が第1歯車79を介してロータリーダンパ81の第2歯車82に伝達される。このとき、ロータリーダンパ81が発揮する第2歯車82の回転方向の粘性抵抗により、ロッド部71の変位速度が減衰(緩和)される。また、ロッド部71の傾倒角度及び傾倒方向に関する信号が、ロータリースイッチ83から出力され、入出力インタフェース44から制御部40へ入力される。制御部は、入力された信号に基づいて進退用モータ226(図2又は図4参照)を回転駆動させ、マッサージ機構200を前後方向へ移動させる。より具体的には、ロッド部71を前傾操作した場合は、制御部40は進退用モータ226を一方向へ回転駆動させてマッサージ機構200を前方へ移動させ、ロッド部71を後傾操作した場合は、制御部40は進退用モータ226を他方向へ回転駆動させてマッサージ機構200を後方へ移動させる。
【0059】
図7は、図1に示す操作装置7のグリップ部72と、該グリップ部72内のロッド部71との構成を示す斜視図である。図7に示すように、グリップ部72は、右側のグリップ部材72a(実線で示す)と左側のグリップ部材72b(二点鎖線で示す)とによって左右割りに構成され、グリップ部材72a,72bが左右から合わさって成るグリップ部72は下端部が開口した略筒状になっている。そして、グリップ部72の内部空間にロッド部71の上部が挿通されたようになっており、下記に説明するように、ロッド部71に対してグリップ部72は相対的に上下動可能に連結されている。
【0060】
ロッド部71は、その下部に断面略矩形状の角柱部71aを有し、また、角柱部71aの上端から上方へ延びてグリップ部72に内嵌する段付き円柱状の円柱部71bを有している。更に、円柱部71bは下側から順に、第1小径部91、この第1小径部91より径の大きい第1大径部92、この第1大径部92より径の小さい第2小径部93、及び、この第2小径部93より径の大きい第2大径部94によって構成されている。また、第1大径部92には、その全長に亘って前後方向に貫通する縦長の貫通穴92aが形成されている。
【0061】
第1大径部92を上下から挟むようにして、第1小径部91の上端部と第2小径部93の下端部とには、グリップ部72を支持するための略矩形のグリップ支持板95,95が配設されている。この上下のグリップ支持板95は、それぞれの中央部分に穴(図示せず)が形成されており、下側のグリップ支持板95の穴にはロッド部71の第1小径部91が内挿し、上側のグリップ支持板95の穴には第2小径部93が内挿している。また、第2小径部93の上端部には、同様に略矩形状であって中央部分に穴(図示せず)を有するスプリング支持板96が、前記穴に第2小径部93が内挿して設けられている。
【0062】
そして、下側のグリップ支持板95の下面と角柱部71aの上端面との間には、第1小径部91に外嵌するようにしてコイルスプリング97が配設され、上側のグリップ支持板95の上面とその上方に位置するスプリング支持板96の下面との間には、第2小径部93に外嵌するようにして別のコイルスプリング98が配設されている。これらのコイルスプリング97,98は、共に圧縮された状態になっており、下側のグリップ支持板95を上方へ、上側のグリップ支持板95を下方へ、それぞれ付勢している。
【0063】
グリップ部72のグリップ部材72a,72bの内側の壁部には、上下のグリップ支持板95に対応するそれぞれの部分に、周方向へ延びる第1切欠溝100が形成されている。この第1切欠溝100は、深さ寸法に比べて幅広になっており(即ち、図7において上下方向に若干長寸になっており)、この第1切欠溝100には上述したグリップ支持板95の周部が係合している。なお、図7では右側のグリップ部材72aについてのみ詳細な構成を図示しているが、左側のグリップ部材72bは右側のグリップ部材72aと左右対称の構成を有しており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0064】
このような操作装置7は、例えばグリップ部72を中立位置から上方へ操作した場合、該グリップ部72は、下側の第1切欠溝100が有する幅寸法の距離だけ上方へ移動可能であり、即ち、グリップ部72は、下側の第1切欠溝100の下部内面に下側のグリップ支持板95が当接する位置(最上方位置)まで上方へ操作可能である。また、上側のグリップ支持板95は上側の第1切欠溝100に係合した状態でグリップ部72と共に上方へ移動され、コイルスプリング98が圧縮されてグリップ部72は下方へ付勢される。そして、上方への操作を止めた場合、圧縮されたコイルスプリング98の伸長力により、グリップ部72は下方へ戻され、グリップ部72は中立位置に復帰する。なお、グリップ部72の中立位置とは、後述するようにグリップ部72の上下方向への変位に起因してマッサージ機構200が前後動しないようなグリップ部72の位置をいい、上述した操作装置7では、被施療者が何ら操作しない場合(非操作時)のグリップ部72の位置を中立位置としている。
【0065】
他方、グリップ部72を中立位置から下方へ操作した場合は、該グリップ部72は、上側の第1切欠溝100が有する幅寸法の距離だけ下方へ移動可能であり、即ち、グリップ部72は、上側の第1切欠溝100の上部内面に上側のグリップ支持板95が当接する位置(最下方位置)まで下方へ操作可能である。また、下側のグリップ支持板95は下側の第1切欠溝100に係合した状態でグリップ部72と共に下方へ移動され、コイルスプリング97が圧縮されてグリップ部72は上方へ付勢される。そして、下方への操作を止めた場合、圧縮されたコイルスプリング97の伸長力により、グリップ部72は上方へ戻され、グリップ部72は中立位置に復帰する。
【0066】
また、左右のグリップ部材72a,72bの内側部の前部及び後部であって、上側の第1切欠溝100の下方近傍と、下側の第1切欠溝100の上方近傍とのそれぞれには、周方向へ延びる第2切欠溝101が形成されている。上側の前後に形成された第2切欠溝101には、前後方向に長寸の長方形状を成すスイッチ支持板102uが、前端部及び後端部のそれぞれが嵌め込まれて支持されている。このスイッチ支持板102uは、ロッド部71の第1大径部92に形成された貫通穴92a内の上部を通って設けられており、下面には押しボタン式の第1スイッチ103uが取り付けられている。この第1スイッチ103uは、グリップ部72が上下方向に操作されたとき、該グリップ部72と一体的に上下動する。
【0067】
同様にして、グリップ部材72a,72bの内側部における下側の前後に形成された第2切欠溝101には、前後方向に長寸の長方形状を成すスイッチ支持板102dが、前端部及び後端部のそれぞれが嵌め込まれて支持されている。このスイッチ支持板102dは、ロッド部71の第1大径部92に形成された貫通穴92a内の下部を通って設けられており、上面には押しボタン式の第2スイッチ103dが取り付けられている。この第2スイッチ103dも、グリップ部72が上下方向に操作されたとき、該グリップ部72と一体的に上下動する。
【0068】
ロッド部71の第1大径部92に形成された貫通穴92aにおける上下方向の中央位置には、第1大径部92の左右の側壁部間に架け渡されるようにしてリブ105が設けられており、第1大径部92の剛性が強化されている。また、このリブ105の上下には、それぞれ板バネ106u,106dが設けられており、上側の板バネ106uは弾性的に下方へ湾曲可能であり、下側の板バネ106dは弾性的に上方へ湾曲可能になっている。そして、上述した上側の第1スイッチ103uは、リブ105の上側に配された板バネ106uの上方に所定間隔を隔てて(即ち、遊びを有して)対向して設けられ、下側の第2スイッチ103dは、リブ105の下側に配された板バネ106dの下方に所定間隔を隔てて(即ち、遊びを有して)対向して配されている。
【0069】
従って、例えば上述したようにして被施療者がグリップ部72を上方へ操作した場合、下側の第2スイッチ103dも上方へ移動し、下側の板バネ106dに対して下方から接近する。そして、この板バネ106dに当接することによって第2スイッチ103dはオフからオンへと切り換えられ、板バネ106dから離反するまでの間、第2スイッチ103dはオン状態の信号を出力する。出力された信号は、図示しない信号線によって第2スイッチ103dと接続された制御部40(図4参照)へ、前記信号線を通じて入力される。制御部40は、入力された信号に基づいてモータ214(図2又は図4参照)を一方向へ回転駆動させ、移動装置200aと共にマッサージ機構200を上昇動させる。
【0070】
同様にして、被施療者がグリップ部72を下方へ操作した場合、上側の第1スイッチ103uも下方へ移動し、上側の板バネ106uに対して上方から接近する。そして、この板バネ106uに当接することによって第1スイッチ103uはオフからオンへと切り換えられ、この板バネ106uから離反するまでの間、第1スイッチ103uはオン状態の信号を出力する。出力された信号は、図示しない信号線によって第1スイッチ103uと接続された制御部40(図4参照)へ、前記信号線を通じて入力される。制御部40は、入力された信号に基づいてモータ214を他方向へ回転駆動させ、移動装置200aと共にマッサージ機構200を下降動させる。
【0071】
また、板バネ106u,106dが弾性を有するため、第1スイッチ103u,103dがこの板バネ106u,106dに当接するときの衝撃が緩和される。また、第1スイッチ103u,103dが板バネ106u,106dに当接した後、さらにグリップ部72が上方又は下方へ操作された場合であっても、板バネ106u,106dが湾曲するため、この板バネ106u,106dとの接触によって第1スイッチ103u,103dが破損するのを防止することができる。
【0072】
図7に示すように、グリップ部72の上部であってロッド部71の上方にはローラ収容室107が形成されており、このローラ収容室107には左右方向に向けられた軸芯回りに回転するローラ108が収容されている。また、グリップ部72の上部後面には上述したローラ収容室107に通じる矩形の窓109が形成されており、ローラ収容室107内に収容されたローラ108の周部の一部分が、この窓109から外部へ露出している。ローラ収容室107内にはボリュームスイッチ110(図8参照)が収容されており、このボリュームスイッチ110の回転軸はローラ108の回転軸に連動するようになっている。
【0073】
このローラ108は、マッサージ機構6が有するモータ11,12(図3参照)の回転速度を調節するためのものであり、被施療者が親指などでローラ108を一方へ所定角度だけ回転操作すると、回転角度に応じた信号がボリュームスイッチ110から図示しない信号線を通じて制御部40(図4参照)へ入力され、施療子10のマッサージ動作が速められる。また、ローラ108を他方へ所定角度だけ回転させると、回転角度に応じた信号がボリュームスイッチ110から前記信号線を通じて制御部40へ入力され、施療子10のマッサージ動作が遅められる。
【0074】
上述した椅子型マッサージ機1が備えるマッサージ機構200は、操作装置7を前後及び上下へ操作することによって、同じく前後及び上下へと動作する。以下、操作装置7の操作とマッサージ機構200の動作について、更に詳しく説明する。初めに、操作装置7のロッド部71が前後方向へ傾倒操作されたされたときのマッサージ機構200の動作について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、マッサージ機構200は、すでに述べたように揉み動作、たたき動作、指圧動作などの様々のマッサージ動作を行うことができ、このようなマッサージ動作は、本実施の形態においては操作装置7とは別のコントローラ8を用いて実現可能である。また、コントローラ8を操作してマッサージ機構200の動作を制御することに関しては、公知の技術を用いて実現することができ、ここでの詳述な説明は省略する。
【0075】
図9に示すように、被施療者が操作装置7を前傾操作すると(S21)、ジョイント機構73に設けられたロータリースイッチ83(図6,8参照)がロッド部71の傾倒方向(即ち、前方)を検出し(S22)、検出信号が制御部40へ入力される(S23)。制御部40は、入力された信号に基づいて進退用モータ226を回転駆動し(S24)、その結果、マッサージ機構200は前方へ揺動される(S25)。
【0076】
その後、制御部40は、ロータリースイッチ83からロッド部71が前傾していることを示す信号が入力されているか否かを判断する(S26)。被施療者が操作装置7を引き続き前傾操作の状態で保持し、ロータリースイッチ83から上記信号が制御部40へ入力され続けている場合には(S26:YES)、ステップ24からの動作を繰り返す。一方、被施療者が、グリップ72を直立状態の中立位置へ戻すよう操作するか、又は、グリップ部72から手を離してスプリングバネ77c(図5参照)の作用によりロッド部71が直立する中立位置へ復帰した場合は、ロータリースイッチ83からの入力信号が途絶えるので、ロッド部71が前傾していることを示す信号の入力がないと判断する(S26:NO)。そして、制御部40は進退用モータ226の回転駆動を停止させ(S27)、マッサージ機構200の前方への揺動を停止させる(S28)。
【0077】
従って、上述した構成によれば、被施療者が操作装置7を前方へ傾倒操作している期間(時間)だけ、マッサージ機構200が前方へ揺動し、被施療者がグリップ部72から手を離すなどして操作装置7の操作を止めると、マッサージ機構200はその位置にて維持される。なお、被施療者が操作装置7を後方へ傾倒操作した場合も同様の動作をし、被施療者が操作装置7を後方へ傾倒操作している期間だけ、マッサージ機構200が後方へ揺動、グリップ部72から手を離すなどして操作を止めると、マッサージ機構200はその位置にて維持される。また、被施療者がグリップ部72の操作を止めて操作装置7が非操作状態になった場合(即ち、ジョイント機構73のロータリースイッチ83からの信号が制御部40へ入力されなくなった場合)には、マッサージ機構200が所定の位置へ復帰するように制御部40を構成することも可能である。
【0078】
このように、操作装置7の傾倒操作と、マッサージ機構200の前後方向への揺動動作とを対応付けることにより、椅子型マッサージ機1の座部2に着座した被施療者の視点を基準にして、操作装置7の傾倒操作方向(即ち、前後方向)と、マッサージ機構200の揺動動作方向(即ち、前後方向)とが一致する。従って、被施療者は、直感的に操作装置7を前後方向へ傾倒操作して、マッサージ機構200を所望の前後位置に移動させることができ、操作装置7の操作に違和感を感じることがなく、操作性の向上を図ることが可能である。
【0079】
ところで、上述した操作装置7の説明では、ロッド部71の傾倒操作を検出するために、傾倒方向を検出するロータリースイッチ83を備えた構成について言及したが、他の構成を採用してもよい。例えば、図6及び図8において、ロータリースイッチ83に換えてボリュームスイッチを備えてもよい。この場合、ロッド部71を傾倒操作すると、傾倒方向に加えて傾倒方向の変位量(又は回動角度)を検出することができる。このようにボリュームスイッチを備える操作装置7を操作したときの、マッサージ機構200の動作について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0080】
図10に示すように、被施療者によって操作装置7のグリップ部72が前方へ操作されると(S11)、ボリュームスイッチがグリップ部72の操作方向(即ち、前方)、及びロッド部71が直立状態にある中立位置からの傾倒変位量(操作距離)に応じた信号を出力し(S12)、この信号が制御部40へ入力される(S13)。制御部40は、入力された信号に基づき、グリップ部72の操作方向に応じた方向へ、ロッド部71の傾倒変位量に応じた分だけ、モータ226(図2又は図4参照)を一方向へ回転させる(S14)。その結果、マッサージ機構200が有する進退用ピニオン240が移動装置200aの進退用ラック241上を転動し、マッサージ機構200は、グリップ部72の操作方向に一致する方向へ、ロッド部71の傾倒変位量(操作距離)に応じた距離だけ前方へ移動させられる(S15)。
【0081】
従って、ボリュームスイッチを備えた操作装置7を用いることにより、被施療者による操作装置7の操作と、マッサージ機構200の動作とをリニアに対応させることができる。即ち、座部2に着座した被施療者の視点を基準にして、グリップ部72の操作方向(前後方向)と、マッサージ機構200の動作方向(前後方向)とを一致させ、且つ、ロッド部71の傾倒変位量に応じた(例えば、比例した)距離だけマッサージ機構200を移動させることができる。また、グリップ部72から手を離すなどして操作を止めた場合は、スプリングバネ77cの作用によりロッド部71は直立状態にある中立位置へ復帰し、マッサージ機構200も初期位置に戻る。
【0082】
ここで、ステップ15におけるマッサージ機構200の移動距離(即ち、ステップ14でのモータの回転数(又は、回転角度))は、傾倒するロッド部71の変位量に比例するようにしてもよく、また、ロッド部71の変位量の2次、又はそれ以上の高次関数で近似的に表されるようにしてもよい。また、ロッド部71の変位量の指数関数で近似的に表されるようにしてもよい。更には、これらの関数の組み合わせによってマッサージ機構200の移動距離が表されるようにしてもよく、不連続な関数を用いてもよい。この場合、比例関数、2次又はそれ以上の高次関数、指数関数に関して、入力値とこれに対する出力値とが関連付けられたテーブルデータ等を予め制御部40のROM42に記憶しておく。そして制御部40は、操作装置7が有するボリュームスイッチから信号が入力された場合に、ROM42内のテーブルデータを参照し、入力信号に対応する出力信号を取得し、これによってモータ226を駆動すればよい。また、上記テーブルデータに換え、演算用のプログラムを用いてもよく、更には、フリップフロップなどにより演算回路を別途設けてもよい。
【0083】
次に、操作装置7のグリップ部72が上下方向へ操作されたされたときのマッサージ機構200の動作について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。図11に示すように、被施療者によって操作装置7のグリップ部72が中立位置から下方へ操作されると(S1)、第1スイッチ103uと上側の板バネ106uとの間の遊び分だけ下降した後、第1スイッチ103uが板バネ106uに当接し、第1スイッチ103uはオフ状態からオン状態に切り換えられる(S2)。すると、第1スイッチ103uから制御部40へ信号が出力され(S3)、制御部40はこの信号に基づいてモータ214を回転駆動し(S4)、昇降用ピニオン207がガイドレール29aに沿って転動し、マッサージ機構200は移動装置200aと共にガイドレール29aに沿って下降動する(S5)。
【0084】
その後、制御部40は、第1スイッチ103uからのオン状態を示す信号の入力が引き続き存在するか否かを判断する(S6)。被施療者が操作装置7のグリップ部72を引き続き下方位置に保持し、第1スイッチ103uからオン状態を示す信号が制御部40へ入力され続けている場合には(S6:YES)、ステップ4からの動作を繰り返す。一方、被施療者が、グリップ部72を中立位置へ戻すよう操作するか、又は、グリップ部72から手を離して下側のコイルスプリング97の作用によりグリップ部72が中立位置へ復帰した場合は、第1スイッチ103uが板バネ106uから離反し、制御部40は、ステップ6にて第1スイッチ103uからのオン状態を示す信号の入力がないと判断する(S6:NO)。そして、制御部40はモータ214の回転駆動を停止させ(S7)、マッサージ機構200の下降動を停止させる(S8)。
【0085】
従って、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1は、被施療者が操作装置7のグリップ部72を下方へ操作している期間だけ、マッサージ機構200が下降動し、被施療者がグリップ部72から手を離すなどして操作装置7の操作を止めると、マッサージ機構200はその位置にて維持される。なお、被施療者が操作装置7のグリップ部72を上方へ操作した場合も同様の動作をし、被施療者がグリップ部72を上方へ操作している期間だけ、マッサージ機構200が上昇動し、グリップ部72から手を離すなどして操作を止めると、マッサージ機構200はその位置にて維持される。また、被施療者がグリップ部72の操作を止めて操作装置7が非操作状態になった場合(即ち、第1スイッチ103u及び第2スイッチ103dの何れからもオン状態を示す信号が制御部40へ入力されなくなった場合)には、マッサージ機構200が所定の位置(例えば、最上方位置又は最下方位置)へ復帰するように制御部40を構成することも可能である。
【0086】
また、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1は、座部2に着座した被施療者の視点を基準にすると、操作装置7のグリップ部72の上述した操作方向(即ち、上下方向)と、マッサージ機構200の動作方向(即ち、上下方向)とが一致する。従って、被施療者は、直感的に操作装置7のグリップ部72を上下方向へ操作して、マッサージ機構200を所望の位置(高さ)に移動させることができ、操作装置7の操作に違和感を感じることがなく、操作性の向上を図ることが可能である。
【0087】
なお、マッサージ機構200の昇降動作にあっても、操作装置7のグリップ部72の操作方向に加え、上下方向への操作距離に応じた分だけマッサージ機構200を移動させるよう構成してもよい。例えば、第1スイッチ103u、第2スイッチ103d、及び板バネ106u,106dに換え、操作装置7のロッド部71にラックを設け、グリップ部72には前記ラックに噛合して上下方向へ転動可能なようにピニオンを設ける。更に、ピニオンと連動回転するボリュームスイッチを設ける。そして、ボリュームスイッチが検出した、グリップ部72の操作方向及び操作距離に関する信号を制御部40へ入力し、入力された信号に基づいて制御部40に昇降用モータ214を回転駆動させればよい。
【0088】
次に、操作装置7の一部を異なる構成に変えた他の操作装置7aについて説明する。この操作装置7aは、ロッド部71が傾倒状態にあるときに非操作状態となった場合であっても、直立状態に復帰せずに現状姿勢(傾倒姿勢)を維持し得るものである。
【0089】
図12は、操作装置7aのジョイント機構73bの構成を一部分を省略して示す斜視図である。図12に示すように、この操作装置7aは、既に説明した操作装置7におけるバネフック77a,77b及びスプリングバネ77cと、一方のロッド枢支台75bとに換えて、ロータリーダンパ(維持部)81aが備えられている。このロータリーダンパ81aは、ジョイント機構73bを覆うカバー73a(図1参照)の内壁部に本体部がネジ止めされ、その回転軸(図示せず)は、枢支軸76に軸芯を一致させた状態でロッド部71に接続されている。また、ロータリーダンパ81aは、もう一つのロータリーダンパ81と共に、ロッド部71の前後方向への揺動に対して粘性摩擦力を発揮する。そして、その摩擦力は、ロッド部71が更に傾倒しようとする力を相殺するものになっている。
【0090】
このような構成の操作装置7aの場合、被施療者の操作によってロッド部71が傾倒状態にあるときに、被施療者が操作を止めてグリップ部72から手を離すと、操作装置7aは現状姿勢を維持する(即ち、傾倒姿勢を維持する)。従って、被施療者が操作装置7aを傾倒操作した状態でグリップ部72から手を離しても、操作装置7aのロータリースイッチ83からは継続的に傾倒操作を示す信号が制御部40へ出力され、マッサージ機構200は前後方向への移動を継続する。また、ロータリースイッチ83に換えてボリュームスイッチを備える構成の場合は、被施療者が操作装置7aを傾倒操作した状態でグリップ部72から手を離すと、手を離したときの操作装置7aのロッド部71の傾倒方向及び傾倒変位量に応じ、マッサージ機構200は前後方向の位置が維持される。なお、ロータリーダンパ81のみで必要十分な粘性摩擦力を発揮し得る場合は、ロータリーダンパ81aは省略してもよく、また、その逆にロータリーダンパ81aのみで必要十分な粘性摩擦力を発揮し得る場合には、ロータリーダンパ81は省略してもよい。
【0091】
次に、上述した操作装置7及び操作装置7aとは異なる構成を有する更に他の操作装置について、外観構成を示す斜視図である図13を用いて説明する。この図13に示される操作装置300は、前記操作装置7及び操作装置7aと同様に、図1に示す椅子型マッサージ機1に採用することのできるものであり、椅子型マッサージ機1の右側のアームレスト5の上部カバー5a上に取り付けられる。
【0092】
図13に示すように、操作装置300は、ベース部301と、該ベース部301に立設されたロッド部302と、該ロッド部302の上部に取り付けられたグリップ部303とから主として構成されている。なお、通常はグリップ部303を覆ってカバーが設けられているが、図13ではこれを省略して示している。ベース部301は、伏せたお椀の如き形状であり、背凭れ部3のリクライニング位置を調整するためのリクライニング調整ボタン305、マッサージ機構6,200が有する施療子10によるたたき動作の速度を調整するたたき速度調整スイッチ306など、様々のボタン,スイッチ類が配設されている。
【0093】
ベース部301に立設されたロッド部302は、その下端部にてベース部301とボールジョイントされており、前後及び左右など、あらゆる方向へ傾倒可能になっている。また、ベース部301内には図示しないロータリースイッチが備えられ、ロッド部302の傾倒方向を検出するとともに、検出信号を制御部40(図4参照)へ出力するようになっている。更に、ベース部301内には図示しないスプリングバネ及びロータリーダンパが設けられ、ロッド部302の傾倒時又は直立状態への復帰時に、変位方向とは逆向きに粘性抵抗を付与するようになっている。そしてこのような構成は、図5及び図6に示す操作装置7のジョイント機構73と同様の機能を発揮し得るものになっている。なお、ロータリースイッチに換えてボリュームスイッチを配し、復帰用のスプリングバネを省くことにより、図12に示す操作装置7aのジョイント機構73bと同様の機能を発揮し得る構成とすることも可能である。
【0094】
ロッド部302の上部には、円筒形状を成すロッド収容部307が外嵌して設けられている。これらロッド部302及びロッド収容部307は、図7に示す操作装置7のロッド部71及びグリップ部72と同様にして接続されている。即ち、ロッド収容部307の内部空間には、該ロッド収容部307の上下方向への操作を検出する図示しないスイッチ(図7に示す第1スイッチ103u,第2スイッチ103dに相当するもの)や、ロッド収容部307を上下方向の中心位置(中立位置)に復帰させるように付勢する図示しないコイルスプリング(図7に示すコイルスプリング97,98に相当するもの)などが設けられている。そして、ロッド部302に対してロッド収容部307は、上方及び下方へ相対的に操作可能であり、且つ、上方及び下方へ操作された場合には中立位置へ付勢されると共に、操作方向に応じた信号が制御部40(図4参照)へ出力される。
【0095】
このような構成を成す操作装置300の場合にも、上述した操作装置7,7aの操作による場合と同様に、被施療者による直感的な操作によって、マッサージ機構200を前後方向へ動作させることができ、且つ、上下方向へ動作させることもできる。即ち、操作装置300が有するグリップ部303を前後方向へ傾倒操作した場合に、この操作方向と略一致する前後方向へマッサージ機構200を移動させることができ、グリップ部303を上下方向へ操作した場合は、マッサージ機構200を上下方向へ移動させることができる。従って、被施療者が直感的に操作装置300を操作可能であって、操作性の向上を図ることができる。なお、グリップ部303を操作したときのマッサージ機構200の前後方向の動作および上下方向の動作は、図9〜図11のフローチャートに示す動作と略同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0096】
ロッド収容部307は、その上方に配されたグリップ部303との間を接続部材309によって接続されている。この接続部材309は、左右へ分かれる二股形状を成しており、ロッド収容部307を左右から挟持するようにして該ロッド収容部307にネジ止めされている。そして、グリップ部303は、接続部材309の上部に取り付けられている。従って、グリップ部303を上下方向へ操作すると、グリップ部303、接続部材309、及びロッド収容部307は一体的に上下動し、ロッド収容部307内の図示しないスイッチが、操作方向に応じた信号を制御部40(図4参照)へ出力する。
【0097】
グリップ部303は、上下に配されて前後に長寸のプレート320,320と、このプレート320,320を支持する支持部材321と、プレート320,320間に配設されて被施療者によって把持操作される把持ハンドル322とから主として構成されている。把持ハンドル322は、左右の把持部材323,324を有し、被施療者はこの把持部材323,324を挟持して、両者を離反又は近接するように、即ち、把持ハンドル322が開閉するように把持操作する。
【0098】
図14は、図13に示す操作装置300が有するグリップ部303のXIV矢視断面図であり、把持ハンドル322の構成と動作原理とを説明するためのものである。また、図14(a)は、把持ハンドル322が開いているときの構成を示し、図14(b)は、把持ハンドル322が閉じているときの構成を示している。なお、構成物の視認性と動作原理の理解のため、図14では全て実線により各構成物を表しているが、この各構成物の主に上下の位置関係については下記の説明において逐次言及する。
【0099】
図14(a)に示すように、左右の把持部材323,324は、横断面が略チャネル形状になっており、それぞれの開口部分を互いに対向させて配設され、それぞれの前部が枢軸325によって枢支されている。また、枢軸325にはコイル状の付勢バネ326が設けられており、左右の把持部材323,324が所定の開度以下に閉じられた場合にこれら把持部材323,324を開く方向へ付勢する。
【0100】
左側の把持部材323には、内方へ延びる板状のラック支持板330が枢支されており、このラック支持板330の上面には略左右方向へ延びるラック331が取り付けられている。また、ラック支持板330には、ラック331の後側において該ラック331に沿って略左右へ延びる案内孔332が形成されている。右側の把持部材324には、内側へ延びる板状のピニオン支持板335が図示しないブラケットを介して取り付けられている。このピニオン支持板335は、ラック支持板330に対して上方に配置されており、該ピニオン支持板335の下面には、ロータリーダンパ336が下方へ出力軸336aを向けて取り付けられている。この出力軸336aにはピニオン337が同軸状に取り付けられており、該ピニオン337はラック331と噛合している。また、ロータリーダンパ336の出力軸336aの下端部は、ラック支持板330に形成された案内孔332に挿通されている。
【0101】
図14(b)に示すように、このような構成を成すグリップ部303を被施療者が把持操作すると、左右の把持部材323,324は、付勢バネ326の付勢力に抗って枢軸325の回りに回動する。そして、左右の把持部材323,324が接近する際、ロータリーダンパ336の出力軸336aは案内孔332に案内されており、出力軸336aの端部のピニオン337はラック331に噛合した状態が保たれて転動する。一方、被施療者が把持ハンドル322から手を離すなどして操作装置300が非操作状態になると、付勢バネ326の作用によって、左右の把持部材323,324は離反し、把持ハンドル322は再び初期状態(図14(a)の状態)まで開く。
【0102】
また、例えばピニオン337又は枢軸325には図示しないボリュームスイッチが同軸状に設けられており、左右の把持部材323,324の接近した距離(又は把持ハンドル322の開度)に応じた信号が、前記ボリュームスイッチから制御部40(図4参照)へ出力される。制御部40は、この入力信号に基づき、左右の把持部材323,324間の距離に応じて、マッサージ機構200(図2参照)が有する左右の施療子10,10間の距離を移動させ、揉み動作を実現する。このように、操作装置300の把持ハンドル322を把持操作することにより、マッサージ機構200に揉み動作を行わせることができ、実際の手揉み感覚に近いマッサージを実現することができる。
【0103】
なお、上述した説明では、椅子型マッサージ機1の背凭れ部3に設けられた施療子10を動作させるための構成について言及したが、操作装置7等の操作によって動作を制御する施療部は他の箇所に設けられていてもよい。操作装置7等の前後方向への傾倒操作によって、フットレスト4の下腿支持面4a(図1参照)に設けられた空気袋47(図4参照)を膨張又は収縮させ、被施療者の下腿に接触する部分を前後方向へ移動させるようにしてもよい。また、操作装置7等は、椅子型マッサージ機1に固着されている必要はなく、着脱可能に設けられていて必要に応じて固定可能に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、背凭れ部に設けられて被施療者の背部に刺激を与える施療部と、該施療部の動作を被施療者が操作する操作装置とを備える椅子型マッサージ機に適用することができる。特に、背凭れ部に設けられた施療部が可動である椅子型マッサージ機であって、被施療者の視点を基準にして、操作装置を操作した場合にその操作方向に略一致する方向へ施療部を移動させ、被施療者が直感的に操作装置を操作することができる椅子型マッサージ機を実現するために、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す椅子型マッサージ機が備えるマッサージ機構及び移動装置の構成を示す背面図である。
【図3】図2に示すマッサージ機構の動作原理を説明するために該マッサージ機構の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】図1に示す椅子型マッサージ機の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図1に示す椅子型マッサージ機が備える操作装置のベース部とロッド部とのジョイント機構の構成を、一部分を省略して示す斜視図であって、右斜め後方からの視線に基づく構成を示している。
【図6】図5に示すジョイント機構の構成を示す斜視図であって、左斜め後方からの視線に基づく構成を示している。
【図7】図1に示す操作装置のグリップ部と、該グリップ部内のロッド部との構成を示す斜視図である。
【図8】図1に示す操作装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】操作装置のグリップ部が前後方向へ傾倒操作されたときの椅子型マッサージ機が備えるマッサージ機構の動作について説明するためのフローチャートである。
【図10】操作装置のグリップ部が前後方向へ傾倒操作されたときの椅子型マッサージ機が備えるマッサージ機構の他の動作について説明するためのフローチャートである。
【図11】操作装置のグリップ部が上下方向へ操作されたときの椅子型マッサージ機が備えるマッサージ機構の動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】図1に示す椅子型マッサージ機が備える操作装置のジョイント機構の他の構成を、一部分を省略して示す斜視図であって、右斜め後方からの視線に基づく構成を示している。
【図13】図5〜図8に示す操作装置とは更に異なる構成を成す操作装置の外観構成を示す斜視図である。
【図14】図14に示す操作装置が有するグリップ部のXV矢視断面図であり、把持ハンドルの構成を示している。また、図15(a)は、把持ハンドルが開いているときの構成を示し、図15(b)は、把持ハンドルが閉じているときの構成を示している。
【図15】図2に示すマッサージ機構の前後方向への揺動動作を示す側面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 椅子型マッサージ機
3 背凭れ部
5 アームレスト
200 マッサージ機構
200a 移動装置
7,7a,300 操作装置
8 コントローラ
10 施療子(施療部)
11,12,214,226 モータ
40 制御部
28 昇降台
29a ガイドレール
70 ベース部
71 ロッド部
72 グリップ部
73,73b ジョイント機構
77a,77b バネフック
77c スプリングバネ
81 ロータリーダンパ(減衰部)
81a ロータリーダンパ(維持部)
83 ロータリースイッチ
200a 移動装置
200b 昇降機構
200c 揺動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の背部を支持する背凭れ部に設けられ、可動であって前記背凭れ部へ刺激を与える施療部と、
被施療者の操作により所定の中立位置から変位可能なグリップ部を有し、該グリップ部の操作に応じた信号を出力する操作装置と、
該操作装置からの信号に基づき、前記グリップ部の操作方向に一致する方向への前記施療部の移動を制御する制御部と
を備えることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記施療部、及び前記操作装置のグリップ部は、共に前後方向へ可動であり、前記制御部は、前記グリップ部の前後方向への操作時に、該操作方向に一致する前後方向へ前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から前後方向へ操作された時間に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から前後方向へ操作された変位量に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記施療部、及び前記操作装置のグリップ部は、共に上下方向へ可動であり、前記制御部は、前記グリップ部の上下方向への操作時に、該操作方向に一致する上下方向へ前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から上下方向へ操作された時間に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項5に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記制御部は、前記操作装置のグリップ部が前記中立位置から上下方向へ操作された変位量に応じて前記施療部を移動させるよう制御すべく構成されていることを特徴とする請求項5に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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