説明

椅子型マッサージ機

【課題】使用者に新たな体感を与えることができる椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】上面に座面7aを有する座部1と、使用者の上半身を支持する背凭れ部とを備えている。座部1は、座部フレーム8にアーム部材17によって左右動可能に取り付けられており、駆動部12によって左右動する。アーム部材17は、座面7aの右端部41が左端部40よりも高くなるようにして座部1を右側へ移動させ、座面7aの左端部40が右端部41よりも高くなるようにして座部1を左側へ移動させるように、座部フレーム8に座部1を左右動可能に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座部及び背凭れ部を備えている椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の肩部、背中及び腰部に対してマッサージを行なう椅子型マッサージ機として、揉みや叩き等のマッサージ動作が可能な施療子を有しているマッサージユニットが背凭れ部に設けられているものがある。
このような椅子型マッサージ機は、床面に置かれるベース部と、このベース部から立設し使用者の背中を支持する背凭れ部と、ベース部に取り付けられ使用者を着座させる座部とを有している(例えば特許文献1参照)。
そして、使用者は背凭れ部に凭れた状態で、前記マッサージユニットによってマッサージを受けることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−20927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような座部及び背凭れ部を備えている椅子型マッサージ機において、使用者に対して新たな体感を与えるために、様々な改良が加えられている。例えば、空気の給排によって膨縮するエアセルを用いることで使用者に対して柔軟なマッサージを行なったり、座部や背凭れ部等に振動器を搭載したりしている。
そこで、この発明は、新たな体感を使用者に与えることができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するためのこの発明の椅子型マッサージ機は、床面に置かれるベース部と、前記ベース部に設けられ使用者の上半身を支持する背凭れ部と、前記座面の右端部が左端部よりも高くなるようにして前記座部を右側へ移動させ、前記座面の左端部が右端部よりも高くなるようにして前記座部を左側へ移動させるように、前記ベース部に前記座部を左右動可能に取り付けている取付部と、前記座部を左右動させる駆動部とを備えているものである。
【0006】
この発明によれば、座面の左端部が高くなったり右端部が高くなったりしながら、座部は左右動する。このため、座部は高さ方向の成分を有した左右方向の揺動を行なうことができる。このように、座部及び背凭れ部を有する椅子型マッサージ機において、座部が左右方向に揺動することにより、使用者に新たな体感を与えることができる。
【0007】
また、前記椅子型マッサージ機は、前記ベース部の左右両側に設けられ使用者の腕を支持する肘掛け部を備え、前記座部は、左右の前記肘掛け部の間を左右動するのが好ましい。
これによれば、左右両側に肘掛け部があるため、座部が左右動した際に、使用者に安心感を与え、リラックスさせることができる。
【0008】
また、前記取付部は、前記ベース部の左右両側部から前記座部の左右両側部を持ち上げて当該座部を支持しているとともに、左右方向の傾き角度が変わることで前記座部を左右動可能としているアーム部材を有しているのが好ましい。
これによれば、アーム部材は座部を下から持ち上げて支持している構成となる。これにより、座部の左右両側にアーム部材を存在させない構成とすることができるため、座部(座面)を左右方向に広くすることができる。
【0009】
また、前記椅子型マッサージ機は、前記座部を持ち上げて支持している前記アーム部材の左右方向の傾き角度の変化を防いで前記座部を静止させる静止状態、又は、前記アーム部材の左右方向の傾き角度の変化を許容して前記座部を左右動可能とさせる動作可能状態に切り替える動作機構部を有しているのが好ましい。
これによれば、前記座部を静止状態としたり、左右動可能状態としたりできる。
【0010】
また、前記取付部は、前記ベース部の左右両側部から前記座部の左右両側部を支持しているとともに、左右方向の傾き角度が変わることで前記座部を左右動可能としている左右のアーム部材を有し、左右の前記アーム部材は、互いの傾き角度が相違することによって、前記座面の右端部が左端部よりも高くなるようにして前記座部を右側へ移動させ、前記座面の左端部が右端部よりも高くなるようにして前記座部を左側へ移動させるように、前記ベース部に前記座部を左右動可能に取り付けている構成とすることができる。
これにより、座面の左端部が高くなったり右端部が高くなったりしながら、座部は左右動する構成が得られる。
【0011】
また、前記椅子型マッサージ機は、前記座部の左右位置を検出するセンサと、前記センサの検出信号に基づいて前記座部を所定の左右位置に停止させる制御を行なう制御部とを備えているのが好ましい。
これによれば、センサの検出信号に基づいて、制御部は座部を所定の左右位置に停止させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、座部及び背凭れ部を有する椅子型マッサージ機において、座面の左端部が高くなったり右端部が高くなったりしながら、座部が左右方向に揺動することにより、使用者に新たな体感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。この椅子型マッサージ機は、床面に置かれるベース部6と、このベース部6の後部に設けられ使用者の上半身を支持する背凭れ部2と、ベース部6の前部に設けられ使用者の脚部を支持する脚載せ部20と、このベース部6の前後方向の中央部に設けられ使用者が着座する座部1と、ベース部6の左右両側部に設けられ使用者の腕を支持する肘掛け部3a,3bとを備えている。
【0014】
図2は、前記ベース部6の側面図である。ベース部6は、本体フレーム6aと、この本体フレーム6aの左右両側の下部にある脚部6bとを有している。
図1と図2において、背凭れ部2は、傾動可能として本体フレーム6aの後部に取り付けられており、本体フレーム6aと背凭れ部2との間に、背凭れ部2の傾倒角度を変化させるためのリクライニング機構(図示せず)が設けられている。リクライニング機構は、例えば電動モータにより伸縮駆動するアクチュエータを備えている。アクチュエータが伸びると背凭れ部が起立した状態となり、アクチュエータが縮むと背凭れ部が倒れた状態となる。
【0015】
また、図1において、背凭れ部2にはマッサージユニット4が設けられている。マッサージユニット4は、複数個の施療子4aと、この施療子4aに揉みや叩きなどのマッサージ動作を行なわせるために駆動する施療駆動部(図示せず)とを備えている。マッサージユニット4は、上下方向に移動可能となっており、施療子4aによって、使用者の肩部、背中及び腰部に対してマッサージ動作を行なうことができる。
【0016】
脚載せ部20は、その基部において揺動可能として本体フレーム6aの前部に取り付けられており、脚先部が上下する。本体フレーム6aと脚載せ部20との間に、脚載せ部20を揺動させるための揺動駆動機構35(図2参照)が設けられている。揺動駆動機構は、例えば電動モータにより動作するアクチュエータを備えたものとすることができる。
また、図1において、脚載せ部20は使用者の脚を入れる凹部20aを有しており、凹部20aに入れた使用者の脚に対してマッサージ動作を行なうマッサージ具20bが設けられている。マッサージ具20bとしては、空気の給排によって膨縮するエアセルとすることができる。
【0017】
図2において、ベース部6の本体フレーム6aは、座部1が取り付けられる座部フレーム8を有している。座部フレーム8は本体フレーム6aに固定されている。図3は座部フレーム8、座部1及び取付部9を有している座構造の斜視図である。後にも説明するが、取付部9は、座部1を座部フレーム8に取り付けており、この座構造は、取付部9によって座部1を左右動させることができる構造となっている。
図1において、座部1の上側であって、左右の肘掛け部3a,3bの左右方向内側部には、マッサージ具21が設けられている。このマッサージ具21は、空気の給排によって膨縮するエアセルである。なお、このマッサージ具21は、ベース部6の左右両側にある側壁部の左右方向内側に取り付けられている。具体的には、マッサージ具21は、左右の肘掛け部3a,3bの内側面に取り付けられており、座部1が左右動しても、このマッサージ具21は座部1と共に左右動しない。
【0018】
また、この椅子型マッサージ機は、前記各エアセルにエアを供給するエア供給装置(図示せず)と、各動作部の動作を制御する制御装置5とを有している。エア供給装置及び制御装置5は、本体フレーム6a内(座部1の下方)に設けられている。制御装置5は、前記エア供給装置、マッサージユニット4、座部1、背凭れ部2及び脚載せ部20の動作を制御する。
【0019】
制御装置5は使用者が操作する操作器(図示せず)と接続されており、操作器が操作されることによって電源のオン、オフや各種マッサージ動作を行なう。操作器には、電源のオン・オフ操作を行うための電源ボタン、停止ボタン、マッサージコース選択ボタンや、座部1を左右動させる後述の駆動部12(図3参照)を駆動させる動作開始ボタン及び動作停止ボタン等が設けられている。
【0020】
図4は、前記座構造の下方からの斜視図である。図5はこの座構造の正面図である。図3と図4と図5とにおいて、座部フレーム8は、左右両側の側壁部10a,10bと、これら側壁部10a,10bを下部において連結している下部部材11とを有している。側壁部10a,10bのそれぞれは、前後の位置において下方へ延びているフレーム連結部27を有している。また、側壁部10a,10bは、肘掛け部3a,3b(図1参照)の左右内側面の一部となる。
【0021】
座部1は、上面に座面7aを有している座本体7を備えている。椅子型マッサージ機は、座本体7の上にパッドが載せられた状態として使用されるが、図3〜図5ではパッドを省略して記載している。なお、使用者が実際に載る着座面はパッドの上面となる。座本体7は平面視矩形に形成された板状部材であり、金属製又は樹脂製である。座部1は左右動することから、座面7a上の使用者の臀部及び大腿部を左右から補助的に支えるため、座本体7は、その左右両側部(左端部40及び右端部41)が中央部42よりも高くなった凹型の湾曲形状となっている(図5参照)。また、座本体7は、その下面の左右それぞれにおける前後の各位置に形成された座連結部26を有している。
【0022】
そして、座本体7は、取付部9によって、座部フレーム8に左右動可能として取り付けられている。取付部9は、座部フレーム8と座本体7との間において、左右両側でかつ前後の各々に取り付けられた合計四本のアーム部材17を有している。アーム部材17は直線的な支持部材であり、軽量でありながら剛性を高めるために、板部材を断面U字形に形成したものである。
各アーム部材17は、その上部において第1軸(上軸)28によって前記座連結部26に回動自在に取り付けられており、その下部において第2軸(下軸)29によって前記フレーム連結部27に回動自在に取り付けられている。なお、図4において、前後の第1軸28は、前後方向に延びている上連結軸30の両端部に形成されており、前後の第1軸28は同一直線上に存在している。また、前後の第2軸29は、前後方向に延びている下連結軸31の両端部に形成されており、前後の第2軸29は同一直線上に存在している。
つまり、座本体7の左右両側に設けられ前後方向に延びている上連結軸30の両端部(第1軸28)に、アーム部材17の上部が取り付けられており、座部フレーム8の左右両側に設けられ前後方向に延びている下連結軸31の両端部(第2軸29)にアーム部材17の下部が、取り付けられている。よって、座本体7は前後左右に存在する四本のアーム部材17によって支持されている。
【0023】
図5において、左右のアーム部材17は、上方に向かって相互が接近するように傾いた状態(水平に対する傾き角度θ0)で配置されている。つまり、左右のアーム部材17は、前後方向に見てハの字形に配置されている。そして、四本のアーム部材17は、座部フレーム8の左右両側部(フレーム連結部27)から座本体7の左右両側部(座連結部26)を持ち上げて(下方から)当該座本体7を支持している。取付部9は、この左右のアーム部材17により、左右の第1軸28と左右の第2軸29との中心を支点とし、これら支点が台形の配置にあるリンク構造を構成している。
そして、各アーム部材17は、その左右方向の傾き角度θ0を変えることで座本体7を左右動可能としている。つまり、アーム部材17が第2軸29の軸心回りに回動することで、座本体7は左右動することができる。
なお、左右に揺れるアーム部材17の水平に対する傾き角度(θ0、及び後述するθ1〜θ4)は、90°未満となるように構成されている。つまり、座本体7が左右動しても、アーム部材17は第2軸29を支点として、左右方向の内側に傾いた状態にある構成であり、左右方向の外側に傾かない構成となっている。
【0024】
そして、この椅子型マッサージ機は、座本体7を強制的に左右動させる駆動部12を有している。図4と図5において、駆動部12は、モータ13と、このモータ13の回転を減速する減速部14と、減速部14の出力軸(図示せず)と一体回転する回転部材16と、回転部材16と座本体7との間に設けられている棒状の動力伝達部材18とを有している。図5において、回転部材16には、その軸心C0(出力軸の軸心C0)に対して偏心している軸心C1を有する偏心軸部16aが設けられている。
この偏心軸部16aに、動力伝達部材18の一端部18aが回動自在として取り付けられている。そして、動力伝達部材18の他端部18bは、前記上連結軸30に取り付けられている(図4参照)。この他端部18bは、上連結軸30に、その長手方向中央部で連結されており、相互は回動自在として連結されている。
【0025】
減速部14は、モータ13の出力軸に取り付けたプーリ14a、減速部14の入力軸に取り付けたプーリ14b及びこれらの間に架けられたベルト14cを有している第1減速部と、ケース14d(図5参照)に格納されたウォームギア及びウォームホイール(図示せず)を有している第2減速部とを有している。このウォームホイールと回転部材16とが一体回転する構造となっている。
【0026】
モータ13及び減速部14は、座部フレーム8の下部部材11に取り付けられている。モータ13は、前記制御装置5からの信号に基づいて回転することができる。モータ13が回転すると回転部材16が回転し、これにより動力伝達部材18の一端部18aが偏心回転する。つまり、動力伝達部材18は、クランク部材として機能し、回転部材16の回転運動を座本体7の左右往復運動へと変換することができる。この結果、アーム17に支持されている座本体7を左右方向に往復して揺動させることができる。
【0027】
また、減速部14は、前記第2減速部においてウォームギア及びウォームホイールを有していることから、モータ13の回転によって回転部材16を回転させ動力伝達部材18を動作させることができるが、モータ13が停止している状態で、動力伝達部材18は回転部材16を回転させることができないセルフロック機能を有している。
【0028】
座本体7の具体的な左右方向の動作について説明する。
図5は、座本体7が左右方向の中心に位置している状態であり、この状態が初期状態(初期位置)である。この椅子型マッサージ機の使用を開始する際、使用を終了した際、使用状態においてアーム部材17による座部1の左右動を機能させない状態では、座本体7はこの初期状態にある。この初期状態では、座面7aの左端部40と右端部41とは同じ高さとなっている。
【0029】
そして、図5から図6に示しているように、左右一方側(右側)のアーム部材17が第2軸29の軸心を中心として他方(左)のアーム部材17側へ倒れると、つまり、図5の状態から右側のアーム部材17の傾き角度が小さくなると(図6)、他方(左側)のアーム部材17は図5の状態から傾き角度を初期位置の時よりも大きくするように起立し(θ0<θ1)、座本体7は左右方向の他方側(左側)へ移動した状態となる。この状態において、左側のアーム部材17の傾き角度θ1は、右側のアーム部材17の傾き角度θ2よりも大きくなり(θ1>θ2)、座面7aの左端部40は右端部41よりも高くなっている。なお、図5の状態は、座部1が左右動していない静止状態の場合(初期状態)と、座部1が左右動している動作途中状態の場合とがある。
【0030】
また、図7に示しているように、左右他方側(左側)のアーム部材17が第2軸29の軸心を中心として一方(右)のアーム部材17側へ倒れると、つまり、図5の状態から左側のアーム部材17の傾き角度が小さくなると(図7)、一方(右側)のアーム部材17は図5の状態から傾き角度を初期位置の時よりも大きくするように起立し(θ0<θ3)、座本体7は左右方向一方側(右側)へ移動した状態となる。この状態において、左側のアーム部材17の傾き角度θ4は、右側のアーム部材17の傾き角度θ3よりも小さくなり(θ4<θ3)、座面7aの右端部41は左端部40よりも高くなっている。
【0031】
このように、左のアーム部材17の傾き角度と右のアーム部材17の傾き角度とが相違して、左右のアーム部材17,17は座本体7を左右動させていることから、座本体7が右側に移動した状態で座面7aの右端部41を左端部40よりも高くし、座本体7が左側に移動した状態で座面7aの左端部41を右端部40よりも高くすることができる。そして、これらアーム部材17は、図6と図7とに示しているように、座面7aを左右方向交互に傾斜させながら座本体7を左右動させることができる。
【0032】
また、前記のとおり、座本体7の座面7aは凹型の湾曲形状となっていることから、図6に示しているように、座本体7が最も左側に移動した状態において、座面7aの右端部41は低くなっているが、座面7aの右半分の面は、水平面に対して右上方へ傾いており、右下方へ傾いていない。同様に、図7に示しているように、座本体7が最も右側に移動した状態において、座面7aの左端部41は低くなっているが、座面7aの左半分の面は、水平面に対して左上方へ傾いており、左下方へ傾いていない。したがって、座本体7が左に移動しても、座面7aに着座している使用者を、左側へ振り落とそうとすることを防ぎ、座本体7が右に移動しても、右側へ振り落とそうとすることを防ぐことができる。これにより、使用者はリラックスすることができる。
【0033】
また、四本のアーム部材17は、座本体7を座部フレーム8から上方へ持ち上げた状態で支持していることから、図5の初期位置(中央位置)にあるこの座本体7に使用者が着座すると、座本体7は左右のいずれかに移動しようとする力が働く。例えば、右側のアーム部材17が内側(左側)に倒れようとする力が座本体7に作用し、座本体7は左側へ移動しようとする。
そこで、この椅子型マッサージ機は、左右のいずれかに移動しようとする座本体7を静止させた静止状態とするために、座本体7を持ち上げて支持しているアーム部材17の左右方向の傾き角度の変化(アーム部材17が左右方向に倒れること)を防ぐ機構(動作機構部)を有している。さらに、この機構は、座本体7を左右動可能とさせる動作可能状態とするために、このアーム部材17の左右方向の傾き角度の変化(アーム部材17が左右方向に倒れること)を許容し、かつ、倒れたアーム部材17を初期位置の状態に復帰させる機能を有している。
【0034】
この機構は、前記駆動部12からなる。つまり、アーム部材17が倒れる方向に左右方向の傾き角度を変えようとすることにより、アーム部材17が動力伝達部材18をその一端部18a側へ押しても、制御装置5によって駆動部12のモータ13が停止している状態では、減速部14による前記セルフロック機能により、回転部材16は回転することができない。これにより、無動力で座本体7の静止状態が得られる。この際、前記セルフロック機能により回転が拘束されている回転部材16から延びている動力伝達部材18は、倒れる方向に左右方向の傾き角度を変えようとするアーム部材17を下から支えている状態にある。
【0035】
これに対して、制御装置5の信号に基づいて駆動部12のモータ13が回転すると、回転部材16は回転することができる。これにより、左右方向の傾き角度を変えようとする(倒れようとする)アーム部材17を下から支えている動力伝達部材18は動作することができ、アーム部材17を所定の傾き角度(図6のθ2、図7のθ4)まで倒すことができる。
そして、モータ13の回転が継続されることで、所定の傾き角度に倒れたアーム部材17を初期位置の状態(図5)に復帰させるように動力伝達部材18が当該アーム部材17を押し上げ、そして、動力伝達部材18は、アーム部材17を下から支えながら所定の傾斜角度まで再び倒すことができ、これが繰り返されることにより、座本体7の左右動が行なわれる。
【0036】
図5において、椅子型マッサージ機は、座本体7の左右位置を検出するセンサ23を備えている。センサ23は座部フレーム8と駆動部12との間に設けられており、センサ23は、座部フレーム8に対する動力伝達部材18の位置を検出することによって、座本体7の位置を検出する構成である。
【0037】
具体的に説明すると、回転部材16が軸心C0回りに1回転する間に、動力伝達部材18の一端部18aは1回転し、座本体7は、図5の基準位置から、図6の左揺動位置と図7の右揺動位置とを経て再び基準位置となる。つまり、動力伝達部材18の一端部18aが1回転する間に、座本体7は1周期の左右動を行なう(1往復する)。そして、座本体7の左右動位置と動力伝達部材18の一端部18aの偏心回転位置とは対応関係を有している。
そして、動力伝達部材18の一端部18aに被検出部23aが設けられ、センサ本体23bが座部フレーム8(下部部材11)に設けられ、センサ本体23bによる被検出部23aの検出信号が制御装置5に送信される。これにより、センサ本体23bが被検出部23aを検出することにより、制御装置5は、動力伝達部材18の一端部18aの特定の偏心回転位置を判別し、座本体7の特定の揺動位置を知ることができる。センサ23(センサ本体23b)は従来知られている位置検出センサを用いることができるが、非接触式センサが好ましく、例えば磁気センサ(ホールIC)が好ましい。この場合、動力伝達部材18の一端部18aに被検出部23aとして磁石を取り付ければよい。
【0038】
座本体7の前記特定の揺動位置を前記初期位置とした場合、センサ23、駆動部12及び制御装置5によって座本体7を初期位置に停止させることができる。このために、座本体7が初期位置にある状態で、動力伝達部材18の一端部18aに設けられている被検出部23aをセンサ本体23bが検出できる構成とする。これにより、センサ本体23bが被検出部23aを検出した際、制御装置5が停止指令(停止信号)を駆動部12に与え、モータ13を停止させる。このように、センサ23の検出信号に基づいて、制御装置5が駆動部12に対して停止指令を与えることにより、駆動部12は座本体7を初期位置(特定の左右位置)に停止させることができる。
【0039】
または、座本体7を初期位置に停止させるために、座本体7が初期位置となる直前の状態で、動力伝達部材18の一端部18aに設けられている被検出部23aをセンサ本体23bが検出できる構成とすることができる。この場合、センサ本体23bが被検出部23aを検出すると、制御装置5が停止指令を駆動部12に与え、座本体7が初期位置になるまでの間においてモータ13の回転を徐々に減速させ、座本体7が初期位置で完全にモータ13が停止した状態とする。これにより、座本体7をゆっくりと初期位置に停止させることができる。
【0040】
また、制御装置5は、回転部材16の偏心回転速度を変更することができる。例えば、モータ13の回転速度を変更することによりこれを実現することができる。これにより、座本体7の左右動スピードを変更することができ、座本体7をゆっくり左右動させたり、早く左右動させたりすることができる。
このように、制御装置5は、座本体7を左右動させる揺らぎ動作の速度(揺らぎ速度)を、使用者の操作器による操作に基づいて又は制御装置5が自発的に、変更することができる他に、揺らぎ時間を変更することができる。つまり、後に説明する、座部1(座本体7)の揺らぎのみの動作、自動コースプログラム及び手動コースプログラムにおいて、制御装置5は、揺らぎ時間として、座本体7の揺らぎ動作を所定の時間(設定時間)について継続させるように設定している。そして、制御装置5は、この揺らぎ時間を、使用者の操作器による操作に基づいて又は自発的に、変更することができる。
【0041】
以上の構成によれば、図6のように、座本体7の座面7aの左端部40が高くなったり、図7のように、右端部41が高くなったりしながら、座本体7は左右動することから、座本体7は高さ方向の成分を有した左右方向のゆらぎ動作を行なうことができる。このように、椅子型マッサージ機において、座部1(座本体7)がゆらぎ動作を行なうことにより、使用者に対して新たな体感(ゆらぎ感)を与えることができる。
また、例えば、使用者を着座させている座部1が右側へ移動し、その後、左側へ移動方向を変えた瞬間、右方向へ移動していた使用者にはその右方向の慣性力が作用する。しかし、この発明の椅子型マッサージ機によれば、座部1が右側へ移動した際、座面7aの右端部41が左端部40よりも高くなって座面7aが左下がりに傾斜しているため、座面7aに着座している使用者を左側へ傾けようとする作用が生じる。この結果、使用者に作用する前記慣性力を和らげることができる。このため、使用者は前記慣性力に抗するために体を緊張させる必要がないことから、この椅子型マッサージ機の座部1による揺らぎ動作によれば、使用者はリラックスすることができる。
また、前記作用によれば、使用者の上半身(頭部側)が大きく左右に振られず、さらには、使用者は背凭れ部2に凭れることができることから、使用者の頭部側を中心として使用者の上半身を左右に揺することができるため、使用者はリラックスすることができる。
【0042】
さらに、座部1(座本体7)は、左右の肘掛け部3a,3bの間を左右動することとなる。このため、使用者は肘掛け部3a,3bに腕を載せた状態で、座部1は左右動する。左右両側に肘掛け部3a,3bがあるため、座部1が左右動した際に、使用者に安心感を与えリラックスさせることができる。
【0043】
また、アーム部材17は座本体7を下から持ち上げて支持していることから、座本体7の左右両側方にアーム部材17を存在させない構造となる。このため、側壁部10a,10b間において、座本体7(座面7a)を左右方向に広くすることができる。
また、座本体7の上には前記のとおりパッド(図示せず)が設けられる。このため、座本体7が左右動することによって、パッドが側壁部10a,10bに当り座本体7の左右動を阻害しないように、図5に示しているように、座部フレーム8の左右内側部には、パッドの左右縁部を入れることができる逃げ用凹部が形成されている。具体的には、側壁部10a,10bに、逃げ用凹部として、前後方向に延びている凹溝33が形成されている。この凹溝33にパッドの左右縁部が入ることで、座部フレーム8と干渉することなく、座本体7は所定のストロークで左右動することができる。
【0044】
図8は、前記実施形態による座本体7の移動軌跡を説明する説明図である。この図では、座本体7、アーム部材17、座部フレーム8のフレーム連結部27及び動力伝達部材18を記載している。実線は初期位置(中央位置)にある座本体7を示しており、一点鎖線は最も右へ移動した座本体7を示しており、二点差線は最も左へ移動した座本体7を示している。そして、破線h1,h2,h3は、座本体7の、座面7aの中央部42、右端部41及び左端部40における移動軌跡を示している。
【0045】
破線h1,h2,h3によって示しているように、座面7a(座面の中央部42、右端部41及び左端部40)は、上に凸の円弧に沿った軌跡を描く。これにより、着座した使用者を持ち上げようとしながら左側へ又は右側へ移動させることができる。これにより、座部1の揺らぎ動作は軽快なものとなる。
【0046】
また、図9は、椅子型マッサージ機の他の実施の形態の説明図であり、この椅子型マッサージ機が備えている座構造を示している。この椅子型マッサージ機では、座部フレーム8のフレーム連結部27から、前後左右の四本のアーム部材17によって、座本体7が吊り下げられた構成となっている。
そして、左右のアーム部材17は、下方に向かって相互が接近するように傾いた状態で配置されている。なお、このように座本体7が吊り下げられた構成であっても、座連結部26を、高さ方向についてアーム部材17よりも長いものとし、座面7aを、座部フレーム8における支持点となる第2軸29よりも高い位置としている。
【0047】
この実施形態では、前記実施形態と、アーム部17による座本体7の取り付け構造が異なるが、その他は同じである。
すなわち、左右のアーム部材17は、座部フレーム8の左右両側部から座本体7の左右両側部を吊り下げて支持しており、左右のアーム部材17は、左右方向の傾き角度が変わることで座本体7を左右動可能としている。そして、左右のアーム部材17,17は、傾き角度が相違することによって、座部1が右側にある状態で座面7aの右端部41を左端部40よりも高くし、座部1が左側にある状態で座面7aの左端部40を右端部41よりも高くするように、座部フレーム8に座部1を左右動可能に取り付けている。
この実施形態では、図9の破線h1,h2,h3によって示しているように、座本体7が左右動すると、座面7aは下に凸の円弧に沿った軌跡を描く。
【0048】
前記各実施形態による椅子型マッサージ機におけるマッサージ動作について説明する。
制御装置5は、他の動作部を動かさないで、座部1のみを単独で左右動させることができる。これは、使用者が手動によって操作器を操作することにより、座部1(座本体7)の揺らぎのみの動作を選択することができる。この場合、座部1が単体で揺らぎ動作を行なう。
または、他の動作部を動かしながら、複合的に座部1を左右動させることができる。なお、この動作の選択についても、使用者が操作器を操作することによって行われる。
または、制御装置5が記憶している一連のマッサージプログラム(コンピュータプログラム)に従って、単独で座部1を左右動させたり、複合的に動作させたりする。このマッサージプログラムの選択についても、使用者が操作器を操作することによって行われる。
【0049】
複合的な動作を説明する。制御装置5には座部1の揺らぎ動作についての自動コースプログラムが記憶されている。この自動コースプログラムは、使用者が操作器を操作することによって選択される。この自動コースプログラムが選択されると、制御装置5は、座部1を左右動させると共に、他のマッサージ具を自動的に動作させる。他のマッサージ具としては、座部1上の左右側部に設けられた前記マッサージ具21(図1参照)である。このマッサージ具21はエアセルであり、エアセルが膨縮することで使用者を左右両側から挟み揉みしながら座部1が左右動する。また、他のマッサージ具としては、脚載せ部20のマッサージ具20b(図1参照)や、背凭れ部2にあるマッサージユニット4(施療子4a)であってもよい。
【0050】
また、制御装置5には座部1の揺らぎ動作についての手動コースプログラムが記憶されている。この手動コースプログラムが選択されると、制御装置5は座部1を左右動させる。さらに、使用者が操作器を操作して、他のマッサージ具を任意に動作させることができる。これにより、座部1の揺らぎ動作と、他のマッサージ具による任意のマッサージ動作とを同時に、使用者の好みに応じて選択して行なうことができる。
さらに、制御装置5は、自動コースプログラム、手動コースプログラム及び揺らぎのみの動作において、前記のとおり、揺らぎ速度や揺らぎ時間を可変としているため、揺らぎ動作のみを行っても使用者を飽きさせず、使用者にリラックス効果を与えることができる。そして、揺らぎ速度や揺らぎ時間が可変であるため、さらによいリラックス効果が得られる。
【0051】
図3の二点鎖線で示しているように、座部フレーム8の左右の側壁部10a,10bのそれぞれに、座部1上のマッサージ具21として、前後方向について前部、中央部、後部のエアセル21a,21b,21cが設けられている。前部のエアセル21aは水平かつ後方へ使用者を押圧するように膨張し、後部のエアセル21cは水平かつ前方へ使用者を押圧するように膨張し、中央部のエアセル21bは、上方から座面7aへと下方に向かって使用者を押圧するように膨張する。
座部1上のマッサージ具21は、揺れる座部1に着座している使用者を左右両側から挟んで保持する機能、つまり、座部1から使用者が位置ずれすることを抑制する機能と、マッサージ効果を与える機能とを有している。
【0052】
また、図1に示しているように、座部1は着座した使用者に対して上方へ押圧するエアセル37を有している。エアセル37は座部1の前位置及び後位置にそれぞれ配設されている。制御装置5は、座部1を左右動させている際に、このエアセル37を膨縮させてもよい。このエアセル37は座本体7の上に取り付けられており、エアセル37は座本体7と一体として左右動する。
【0053】
また、この発明の椅子型マッサージ機は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、脚載せ部20がベース部6に取り付けられていない椅子型マッサージ機であってもよい。また、使用者の身体に対してマッサージ動作を行なうことができるさらに別のマッサージ具が、座部1、背凭れ部2、脚載せ部20又は肘掛け部3a,3bに設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】ベース部の側面図である。
【図3】座部フレーム、座部及び取付部を備えた座構造の斜視図である。
【図4】座構造の下方からの斜視図である。
【図5】座構造の正面図である。
【図6】座構造の正面図であり、座部が左側へ移動した状態を示している。
【図7】座構造の正面図であり、座部が右側へ移動した状態を示している。
【図8】座本体の移動軌跡を説明する説明図である。
【図9】椅子型マッサージ機の他の実施の形態の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 座部
2 背凭れ部
3a,3b 肘掛け部
5 制御装置(制御部)
6 ベース部
7 座本体
7a 座面
9 取付部
12 駆動部
17 アーム部材
23 センサ
40 左端部
41 右端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に置かれるベース部と、
前記ベース部に設けられ使用者の上半身を支持する背凭れ部と、
上面に座面を有する座部と、
前記座面の右端部が左端部よりも高くなるようにして前記座部を右側へ移動させ、前記座面の左端部が右端部よりも高くなるようにして前記座部を左側へ移動させるように、前記ベース部に前記座部を左右動可能に取り付けている取付部と、
前記座部を左右動させる駆動部と、
を備えていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記ベース部の左右両側に設けられ使用者の腕を支持する肘掛け部を備え、
前記座部は、左右の前記肘掛け部の間を左右動する請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記取付部は、前記ベース部の左右両側部から前記座部の左右両側部を持ち上げて当該座部を支持しているとともに、左右方向の傾き角度が変わることで前記座部を左右動可能としているアーム部材を有している請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記座部を持ち上げて支持している前記アーム部材の左右方向の傾き角度の変化を防いで前記座部を静止させる静止状態、又は、前記アーム部材の左右方向の傾き角度の変化を許容して前記座部を左右動可能とさせる動作可能状態に切り替える動作機構部を有している請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記取付部は、前記ベース部の左右両側部から前記座部の左右両側部を支持しているとともに、支持状態から左右方向の傾き角度が変わることで前記座部を左右動可能としている左右のアーム部材を有し、
左右の前記アーム部材は、互いの傾き角度が相違することによって、前記座面の右端部が左端部よりも高くなるようにして前記座部を右側へ移動させ、前記座面の左端部が右端部よりも高くなるようにして前記座部を左側へ移動させるように、前記ベース部に前記座部を左右動可能に取り付けている請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記座部の左右位置を検出するセンサと、前記センサの検出信号に基づいて前記座部を所定の左右位置に停止させる制御を行なう制御部とを備えている請求項1〜5のいずれか一項に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28095(P2009−28095A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192433(P2007−192433)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】