椅子型マッサージ装置
【課題】座部及び背もたれ部と座部の前部に設けられた足揉み装置とを有し、足揉み装置を座部下方に収納する椅子型マッサージ装置において、収納時に過負荷が加わると収納動作が停止される。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ装置１は、座部２と、この座部２の後部に設けられた背もたれ部３と、座部２の前部に設置された足揉み装置５と、この足揉み装置５を使用位置に進出させると共に収納位置に退行させる進退機構１５と、この進退機構１５を駆動する駆動源３５と、を備え、進退機構１５には、駆動源３５からの駆動力とは別に使用位置への外力が足揉み装置５に対して付与された際に、進退機構１５と駆動源３５との連動状態を切り離す連結切断機構１６が備えられている。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ装置１は、座部２と、この座部２の後部に設けられた背もたれ部３と、座部２の前部に設置された足揉み装置５と、この足揉み装置５を使用位置に進出させると共に収納位置に退行させる進退機構１５と、この進退機構１５を駆動する駆動源３５と、を備え、進退機構１５には、駆動源３５からの駆動力とは別に使用位置への外力が足揉み装置５に対して付与された際に、進退機構１５と駆動源３５との連動状態を切り離す連結切断機構１６が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、足揉み装置を備えた椅子型マッサージ装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
足揉み装置が備えられた椅子型マッサージ装置としては、例えば、特許文献１に開示されたものがある。
この椅子型マッサージ装置は、座部の後部に背もたれ部、前部に足揉み装置をそれぞれ有しており、背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ装置構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ装置構が内蔵されている。また、背もたれ部は前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【０００３】
このような椅子型マッサージ装置は、マッサージを行うために利用されるだけでなく、単なる椅子として利用されることも多い。特に、この種の椅子型マッサージ装置では、座部等に柔らかいクッションを内蔵している場合が多く、また、背もたれ部にリクライニング機能を有していることからソファとしての利用にも適したものとなっている。
しかしながら、特許文献１の足揉み装置については、その正面に保持溝を形成したものとなっているため、マッサージ装置能を使わない場合でも保持溝に下肢を嵌め込まなければならず、これによって足の自由な動きが制限され、楽な体勢をとることが困難となっていた。また、椅子の見栄えを損ねる一因ともなっていた。
【０００４】
そこで、このような不都合を回避すべく、特許文献２のような技術を本願出願人は既に開発している。
この椅子型マッサージ装置は、足揉み装置を使用位置と座部の下方に位置する内蔵位置とに移動可能な押引機構を有しており、この押引機構は、椅子型マッサージ装置の両側に設置されているガイドレール、ガイドレールに沿って出入りする押引ロッド、押引ロッドに連結されたキャリッジ板を有し、このキャリッジ板に足揉み装置がピン接続されている。
【０００５】
そのため、足揉み装置を使用位置に位置させた上で、足揉み装置の正面（マッサージ面）と後面（フットレスト面）とを回転切換自在としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２３８９６３号公報
【特許文献２】特開２００７−７５５９０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前述の如く、特許文献２に記載の椅子型マッサージ装置では、足揉み装置は、座部の前方で且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である「使用位置」と、座部の下方に形成された「収納位置」との間を移動するようになっており、使用位置から収納位置への移動に際しては、座部と足揉み装置との間に何某かの異物が存在した場合、その移動が抑制され、最悪の場合、足揉み装置や押引機構を破壊してしまうといった不具合が予想される。
その一方で、足揉み装置を収納位置から使用位置へ進出させるに際しては、押引機構を作動させることが必須である。このことは、もし押引機構（特にその駆動部）が故障した際には、その修理のために足揉み装置を外側へ引き出すことすら出来ないといった不都合を孕んでいることになる。
【０００８】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても不都合が生じない、又、故障時に足揉み装置を使用位置側に容易に引き出したりすることが可能な椅子型マッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る椅子型マッサージ装置は、座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設置された足揉み装置と、この足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ装置において、前記進退機構には、前記駆動源からの駆動力とは別に前記使用位置側へ向けての外力が前記足揉み装置に対して付与された際に、当該進退機構と前記駆動源との連動状態を切り離す連結切断機構が備えられていることを特徴とする。
【００１０】
この椅子型マッサージ装置によると、進退機構により、座部の前方で且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に足揉み装置を進出させたり、座部の下方に形成された収納位置に足揉み装置を退行させたりすることができる。この進退機構には連結切断機構が設けられている。この連結切断機構は、足揉み装置に対して使用位置側への外力が付与された際（例えば、足揉み装置と座部との間に異物が挟まれた場合や、駆動源が故障し足揉み装置を使用位置側に人力により引き出す場合）には、駆動源との連動状態を一時的に切り離す。このため、足揉み装置を容易に使用位置側（外側）へ引き出すことができるようになる。
【００１１】
好ましくは、前記足揉み装置には、当該足揉み装置を前後揺動自在に支持するリンクが連結しており、前記リンクは、前記連結切断機構を介して駆動源に連結されているとよい。
さらに好ましくは、前記連結切断機構は、軸心回りに回動自在で且つ前記リンクが連結されたリンク支軸と、前記リンク支軸と同軸で相対回転自在に連結され、且つ前記駆動源からの回転伝動が伝達される駆動支軸と、前記リンクに連結された足揉み装置を収納位置から使用位置へ移動させる駆動支軸の回転伝動のみを前記リンク支軸へ伝達し、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を非伝達とする一方向クラッチ機構と、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を、弾性力により前記リンク支軸へ伝達する回転ダンパ機構と、を有するとよい。
【００１２】
この場合、前記回転ダンパ機構は、前記駆動支軸及びリンク支軸の外周面を巻き回すように設けられたコイルバネを有し、前記コイルバネは、駆動支軸とリンク支軸との連結間で一端部を駆動支軸へ係合させ他端部をリンク支軸へ係合させて設けられ、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動時において、駆動支軸とリンク支軸との間の回転角度差で捻り弾性力を生じるように構成されているとよい。
【発明の効果】
【００１３】
本発明に係る椅子型マッサージ装置によれば、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても不都合が生じない。加えて、故障時に足揉み装置を使用位置側に容易に引き出したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態を一部内部透視状態にして示した側面図である。
【図２】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態について足揉み装置を使用位置へ動作させた状態にして示した側面図である。
【図３】図２のＡ矢視図（下から見た状態の斜視図）である。
【図４】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態について足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態を示した側面図である。
【図５】図３のＢ部拡大図である。
【図６】連結切断機構を示した斜視図である。
【図７】連結切断機構を示した分解斜視図である。
【図８】連結切断機構において回転ダンパ機構（コイルバネ）を省略してその内部に設けられる一方向クラッチ機構を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
図１〜図４（ｃ）は、本発明に係る椅子型マッサージ装置１の一実施形態を示している。なお、図１及び図２が全体的な側面図であり、その他の図では説明の便宜上、必要に応じて構造の一部を省略して描いてある。
椅子型マッサージ装置１は、座部２と、この座部２の後部に設けられた背もたれ部３とを有しており、座部２の前部には、この座部２に着座した使用者の下肢（特にふくらはぎ）を揉みマッサージする足揉み装置５が設けられている。
【００１６】
図１及び図２に示すように、座部２の下部には、この椅子型マッサージ装置１を床面Ｆへ設置するための脚フレーム６が設けられており、この脚フレーム６によって座部２が所定高さに支持されるようになっている。
また座部２の両側を挟むようにしてアームレスト（図示略）が設けられており、これらアームレストによって脚フレーム６が外から見えないように隠されている。
なお、以下の説明において、図１の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図１の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図１の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、椅子型マッサージ装置１に座った使用者から見たものと一致する。
【００１７】
座部２は使用者の臀部を支持するに十分な広さを有している。背もたれ部３は、その下端部が座部２の後部又は脚フレーム６の後部に対して前後揺動自在な状態に枢支されている。この背もたれ部３は、脚フレーム６内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構（図示略）により、リクライニング可能となっている。
背もたれ部３の内部には、揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行う背部用マッサージ装置構（図示略）が上下移動自在に設けられている。
足揉み装置５は、正面視すれば略四角形状を呈し、側面視すれば丸みを帯びた三角形状を呈するような箱形に形成されている。足揉み装置５の正面には、使用者の下肢（左右の足）を嵌め入れ可能にする左右一対の保持溝１０，１０が形成されている。
【００１８】
各保持溝１０の内部対向面（嵌め入れられた片方の足を挟むようにする両側）には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置が内蔵されている。この下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成としたりすることができる。
座部２の下方（脚フレーム６の内部）には進退機構１５が設けられており、足揉み装置５は、この進退機構１５を介して座部２側（脚フレーム６）と連結される構成となっている。この進退機構１５は、前方へ向けて進出動作することで、座部２の前方で足揉み装置５を床面Ｆから浮き上げて、使用者の下肢をマッサージ可能な使用位置Ｕ（図２参照）へ移動させるようになっている。また進退機構１５は、その後に後方へ向けて退行動作することで、座部２の下方に形成された収納位置Ｐ（図１参照）へ足揉み装置５を収納すべく移動させるようになっている。
【００１９】
図４（ｄ）は足揉み装置５の収納状態（収納位置Ｐ）であり、図４（ａ）は足揉み装置５の使用状態（使用位置Ｕ）であり、図４（ｂ）〜図４（ｃ）は収納状態と使用状態との切り替わりの様子（中途状態）を示している。
本発明に係る椅子型マッサージ装置１では、この進退機構１５に対して、必要に応じて駆動を切り離す連結切断機構１６が備えられている。この連結切断機構１６の作用により、足揉み装置５に使用位置Ｕ側へ向けて外力が付与された際の各種不具合を解消するものである。連結切断機構１６についての詳細構造については後述する。
【００２０】
なお、座部２を支持している脚フレーム６には、床面設置部分の後端に対して左右一対の移動用車輪２３が設けられ、床面設置部分の前後・左右の四箇所に着床部材２４が設けられている。従って、椅子型マッサージ装置１の設置場所を移動させる場合には、左右の移動用車輪２３だけを床面Ｆに押し付け、椅子前部を浮かしながら椅子全体を後方へ傾け、全ての着床部材２４が床面Ｆから離れる状態にして移動用車輪２３を転がすようにする。
図３に示すように、座部２の下部（脚フレーム６内の上部側）にはその左右方向中央部で軸心を左右方向へ向けた定置枢支部３２が設けられ、足揉み装置５の背面上部には、その左右方向中央部で軸心を左右方向へ向けた移動枢支部（軸部）３３が設けられ、これら両枢支部３２，３３の間がリンク２０で連結されている。
【００２１】
リンク２０は、左右方向で所定間隔をおいて並行させ、互いに連結した２本のリンク構成杆３４により、剛性の高い枠形に形成されている。リンク構成杆３４としての本数は特に限定されるものではない。
またリンク２０は側面視Ｃ型にカーブする形状に形成されている。すなわち、足揉み装置５が座部２下方の収納位置Ｐとされている状態（図４（ｄ）の状態）で説明すると、リンク２０は、定置枢支部３２から一旦、後方へ延びるようになされ、その後、足揉み装置５の正面上部から頂部を経由して背面上部側へ回り込むように下方へＵターンし、その後更に、前方へ延びるようになってから移動枢支部３３へ至る形状となっている。
【００２２】
図４（ｄ）に示したように、定置枢支部３２の軸心から床面Ｆまで最短距離で結んだ直線を最大半径Ｒとおく仮想円Ｄを考えるとき、リンク２０は、定置枢支部３２を中心に、この仮想円Ｄの範囲内に全て収まるような大きさで形成されたものとなっている。そのため、リンク２０が定置枢支部３２を中心に前後揺動しても、このリンク２０は床面Ｆに接触することはない。
足揉み装置５の背面上部に設けられる移動枢支部３３とリンク２０との連結部には、回動角制限部材５０が設けられている。
【００２３】
この回動角制限部材５０は、リンク２０が前方揺動することで移動枢支部３３が上昇し、足揉み装置５の背面とリンク２０の前端部との角度θが所定値に達したときに、この角度θを維持させたまま、足揉み装置５全体を床面Ｆから浮き上がらせるようにするためのものである。
ここにおいて、所定角度θとは、足揉み装置５の正面が、座部２の上面と略面一な水平状態（多少の段差は含む）となるか、又は前下がりの折曲状態で連なる形態が実現可能なものとする。
【００２４】
言い換えるならば、図２及び図４（ａ）に示される如く、回動角制限部材５０は、転動輪２２を床面Ｆから浮き上がらせる瞬間に、移動枢支部３３とリンク２０とを回動自在に連結している回動軸心の直下位置より前方で足揉み装置５側へ係合して、移動枢支部３３とリンク２０とがそれ以上回動しないようにする。この回動角制限部材５０は、移動枢支部３３とリンク２０とを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材としてある。
前記したように、本発明に係る椅子型マッサージ装置１では、進退機構１５の動作によって足揉み装置５が使用位置Ｕに進んだり、その後、座部２下方の収納位置Ｐに収納されたりする。このような動作を行わせる進退機構１５は、リンク２０と揺動駆動部２１とを有し、また足揉み装置５における背面下端のコーナー部分で回転自在に設けられた転動輪２２を有して構成されている。
【００２５】
揺動駆動部２１は、電動モータ３５と、この電動モータ３５の動作で伸縮する伸縮機構３６とを有している。伸縮機構３６の後端部は、脚フレーム６の適所に対して回動自在に連結されており、またこの伸縮機構３６の前端部には、ブラケット部材３８が回動自在に連結されている。
このブラケット部材３８は、リンク２０の揺動支点となる定置枢支部３２に対してその径方向外方へ突出して設けられたもので、この定置枢支部３２を支点としつつ、リンク２０と一体揺動可能になっている。
【００２６】
すなわち、揺動駆動部２１は、電動モータ３５の駆動で伸縮機構３６を伸縮させ、これによってブラケット部材３８を揺動させ、リンク２０を前後揺動させる構造であり、このことからこの揺動駆動部２１は、進退機構１５を駆動させるための駆動源である。
そして、このような進退機構１５に対して前記したように連結切断機構１６が設けられており、必要に応じて駆動源（揺動駆動部２１）からの駆動を切り離すことができるようになっている。
図５〜図８に示すように、本実施形態において連結切断機構１６には、リンク２０と揺動駆動部２１の伸縮機構３６との連動状態を一時的に切り離す構成となっている。連結切断機構１６は、リンク支軸５５と、駆動支軸５６と、一方向クラッチ機構５７と、回転ダンパ機構５８とを有している。
【００２７】
図７，図８に示すように、リンク支軸５５と駆動支軸５６とは、互いに同軸で且つ相対回転自在に連結された（構造的に回転方向で分離している）もので、これら両軸が一軸状に連結された状態として、リンク２０の揺動を支持するための定置枢支部３２を構成している。
このうちリンク支軸５５は、リンク２０と一体的に結合された軸であって、リンク２０の揺動と一体となって回転する。また駆動支軸５６は、リンク２０の揺動とは駆動的に無縁の状態（回転自在）に保持された軸であって、この駆動支軸５６に対してブラケット部材３８が一体的に設けられている。
【００２８】
これら両軸５５，５６は、例えば一方の軸（図例では駆動支軸５６側）から芯軸６５を突出させると共に、他方の軸（図例ではリンク支軸５５側）を芯軸６５の嵌る中空軸として形成させておくことで、互いにガタツキなく嵌合して同軸回転するように保持されている。
一方向クラッチ機構５７は、足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ移動させるときだけ、駆動支軸５６からリンク支軸５５への回転伝動を繋ぎ、これとは逆回転となる伝動については切断する構成となっている。
【００２９】
具体的にこの一方向クラッチ機構５７は、リンク支軸５５において駆動支軸５６に向く軸端に、偏心突起６７を突設させたカラー部材６８が固定され、また駆動支軸５６においてリンク支軸５５に向く軸端に、偏心突起６９を突設させたカラー部材７０が固定されたものとなっている。これら両カラー部材６８，７０間では、リンク支軸５５と駆動支軸５６との回転方向が相対的に切り替わるたびに、偏心突起６７，６９が係合離反可能になっている。
すなわち、足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ移動させるに際し、揺動駆動部２１がブラケット部材３８を揺動させる（伸縮機構３６を伸長させる）とき、偏心突起６７，６９は係合状態となって駆動支軸５６側からリンク支軸５５へ回転駆動力が伝えられる。
【００３０】
しかし、揺動駆動部２１がブラケット部材３８を上記と逆向きに揺動させる（伸縮機構３６を収縮させる）とき、偏心突起６７，６９は離反し（リンク支軸５５側の偏心突起６７が置いてきぼりにされる）、駆動支軸５６側からリンク支軸５５へ回転駆動力は伝わらない。
回転ダンパ機構５８は、足揉み装置５が使用位置Ｕから収納位置Ｐへ移動するときに、駆動支軸５６の回転に対してリンク支軸５５を連動して回転させる構成を有している。具体的にこの回転ダンパ機構５８は、駆動支軸５６とリンク支軸５５との連結間（カラー部材６８，７０を外嵌する位置）に設けられたコイルバネ７５を有して形成されている。
【００３１】
図５，図７に示すように、このコイルバネ７５は、両側の端部（バネ脚）７５ａ，７５ｂがそれぞれコ字状に折り曲げられており、そのうち一端部７５ａが駆動支軸５６の適所（ブラケット部材３８など）に係合されており、他端部７５ｂがリンク支軸５５の適所（リンク２０など）に係合されている。
コイルバネ７５の取付向きは、駆動支軸５６とリンク支軸５５との間に回転角度差が生じたときに、巻き方向の捻り力を生じるようになっている。すなわち、一方向クラッチ機構５７の偏心突起６７，６９が係合しあう方向でリンク支軸５５と駆動支軸５６とが相対回転しても、偏心突起６７，６９が係合した状態では両軸５５，５６間に回転角度差が生じることはない。
【００３２】
しかし、これとは逆方向へリンク支軸５５と駆動支軸５６とが相対回転すると、偏心突起６７，６９が離反する状態となるから、両軸５５，５６間に回転角度差が生じることになる。このような回転角度差が生じる方向でコイルバネ７５が捻り力を発生させ、且つ強めてゆくように、このコイルバネ７５は取付向きが決められているということである。
コイルバネ７５に捻り力を発生させるには、巻き締め方向（コイル径が径小化する方向）とするのが好適である。
なお、駆動支軸５６とリンク支軸５５との連結間にコイルバネ７５を取り付ける際に、このコイルバネ７５の両端部７５ａ，７５ｂ間にある程度の捻り力を生じさせた状態にしておくと、コイルバネ７５には常にこの捻り力が発生している状態とさせることができる。このようにすると、駆動支軸５６とリンク支軸５５間の両偏心突起６７，６９が積極的に係合し合おうとする付勢力を付与させることができる。そのため、駆動支軸５６に対するリンク支軸５５の追随状態に、回転方向の遊び（ガタツキ）が生じるのを防止できることに繋がり、始動時の防振や部品破損の抑制効果などが得られことになって好適である。
【００３３】
次に、上記した連結切断機構１６の作用を説明する。
足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ向けて移動させる場合に、進退機構１５がその駆動源としての揺動駆動部２１（伸縮機構３６）を伸長動作させると、ブラケット部材３８が押し出されて揺動し、これと一体となって定置枢支部３２の駆動支軸５６が回転する。
駆動支軸５６の回転に伴い、この駆動支軸５６側に設けられた偏心突起６９がリンク支軸５５側に設けられた偏心突起６７と係合して、このリンク支軸５５に回転駆動を伝える。そのため、リンク支軸５５の回転と共にリンク２０が揺動し、足揉み装置５は使用位置Ｕへ向けて移動する。
【００３４】
一方、足揉み装置５を使用位置Ｕから収納位置Ｐへ向けて移動させる場合に、進退機構１５が揺動駆動部２１（伸縮機構３６）を短縮動作させると、ブラケット部材３８が引き込まれて揺動し、これと一体となって定置枢支部３２の駆動支軸５６が上記と逆回転する。
駆動支軸５６が逆回転を始めても、この駆動支軸５６側に設けられた偏心突起６９はリンク支軸５５側に設けられた偏心突起６７と離反するだけであるので、これら偏心突起６７，６９間（即ち、一方向クラッチ機構５７）においてリンク支軸５５へ直接的な回転駆動が伝わることはない。
【００３５】
駆動支軸５６の逆回転により、駆動支軸５６とリンク支軸５５との間に回転角度差が生じると、コイルバネ７５が捻り力を発生させることになる。そのため、このコイルバネ７５による捻り又はコイルバネ７５自体の剛性により、駆動支軸５６の逆回転がリンク支軸５５へと伝えられ、リンク支軸５５も逆回転を生じるようになる。従ってリンク２０が上記と逆向きに揺動し、足揉み装置５は収納位置Ｐへ向けて移動する。
ところで、足揉み装置５が収納位置Ｐへ向けて移動している途中に足揉み装置５と座部２との間に異物や障害物が挟まれるなどして、足揉み装置５に対して使用位置Ｕ側へ向けた「過大な外力」が作用したとする。
【００３６】
すると、一方向クラッチ機構５７では、コイルバネ７５が捻り弾性力を増大させながら駆動支軸５６だけが逆回転を続行させるようになる。すなわち、コイルバネ７５がバッファ（ダンパ）として作用するため、リンク支軸５５に対して、揺動駆動部２１による駆動は伝達しない状態となり、リンク２０及び足揉み装置５はフリー（無駆動）の状態となる。従って、足揉み装置５は、異物や障害物の影響で略一定の位置に留まることになり、見かけ上、その動きを停止した状態になる。
つまり、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても、揺動駆動部２１は略通常動作をすることとなり、揺動駆動部２１に過大な力や負荷が生じることはなく不都合が発生しない。
【００３７】
なお、揺動駆動部２１は、例えば駆動支軸５６の回転角度や伸縮機構３６の収縮量などをセンサ検出して、所定タイミングで電動モータ３５が停止するように回路構成しておけばよい。
なお、足揉み装置５と座部２との間に挟まった異物や障害物を外すため、足揉み装置５を積極的に使用位置Ｕ側へ引き出そうとすれば、コイルバネ７５は捻り力を増大させることになるものの、足揉み装置５を使用位置Ｕ側へ引き出すことは可能である。
また、進退機構１５が足揉み装置５を移動させていないときに、足揉み装置５に対して使用位置Ｕ側へ向けた外力を作用させたとしても、連結切断機構１６は同様に作動するため、足揉み装置５を使用位置Ｕ側へ引き出すことができる。つまり、本実施形態の椅子型マッサージ装置１は、メンテナンス等で、足揉み装置５を座部２の下部から引き出すことが可能な構成となっている。
【００３８】
次に、本発明に係る椅子型マッサージ装置１の使用状況を説明する。
まず、図４（ｄ）に示すように足揉み装置５が座部２下方の収納位置Ｐにある状態とする。このとき足揉み装置５は、その底面が前方を向き、正面（使用者の下肢を嵌め入れる保持溝１０，１０が設けられた面）が上を向いており、また底面は座部２の前端部と略面一になっている。
揺動駆動部２１の電動モータ３５を作動させると、伸縮機構３６が伸長動作を開始する。そのため、伸縮機構３６の後端部が連結された脚フレーム６を支えとして、伸縮機構３６の前端部（ブラケット部材３８）で定置枢支部３２（一方向クラッチ機構５７で連結された駆動支軸５６及びリンク支軸５５）が回動を開始するようになる。
【００３９】
これに伴い、リンク２０は、定置枢支部３２を支点として移動枢支部３３が前方へ向けて揺動するようになり、その結果、図４（ｃ）に示すように足揉み装置５はその背面上部を前方へ前進させるようになる。この際、転動輪２２が床面Ｆ上を転動するため、足揉み装置５はスムーズに移動することとなる。
リンク２０が更に前方へ揺動することで、図４（ｂ）→図４（ａ）に示すように足揉み装置５はその背面上部が上昇を開始する。そして足揉み装置５の背面上部が座部２の前端下部よりも前方へ出て、且つ図４（ａ）に示すように、足揉み装置５がその全体として上昇するようになれば、この足揉み装置５は使用位置Ｕへ至ったことになる。
【００４０】
これら一連の動作が進退機構１５の進出動作である。使用位置Ｕに至った足揉み装置５は、その背面を床面Ｆと対面させつつ底面が前方を向き、且つ下肢をマッサージする正面（左右の保持溝１０，１０における溝底に相当）が座部２の上面と略面一な水平状態又は前下がりの折曲状態（図２参照）で連なりつつ上方を向く状態となっている。
使用者は、足揉み装置５に対して左右の保持溝１０，１０に片足ずつ差し入れた状態として下肢用のマッサージ装置を作動させれば、心地よくマッサージを受けることができる。また、このとき足揉み装置５が全体として上昇していることにより、使用者は足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようになり、膝を極度に曲げる必要がないので、使用感を高められるようになっている。
【００４１】
なお、使用位置にある足揉み装置５が使用者の脚の長さに対して窮屈に感じた場合には、前方突出機構により足揉み装置５を前方突出させればよい。足揉み装置５の使用後には、足揉み装置５を座部２へ近接させるようにする。
一方、この使用位置Ｕから揺動駆動部２１の電動モータ３５を上記と逆作動させると、伸縮機構３６が収縮動作を開始する。そのため、伸縮機構３６の後端部が連結された脚フレーム６を支えとして、伸縮機構３６の前端部（ブラケット部材３８）で定置枢支部３２の駆動支軸５６が上記と逆回動を開始するようになる。
【００４２】
このとき、一方向クラッチ機構５７は駆動伝達を切断した状態になるが、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）の作用でリンク支軸５５が駆動支軸５６の回転に連動しつつ回転するようになる。これに伴い、リンク２０は、定置枢支部３２を支点として移動枢支部３３が後方へ向けて揺動するようになる。
その結果、図４（ａ）→図４（ｂ）に示すように足揉み装置５はその全体として下降し、且つその正面上部を下方へ沈み込ませるようになる。図４（ｃ）に示すように、足揉み装置５の正面上部が座部２下方より低くなるまで背面上部が下降すると、足揉み装置５は座部２下方を後方へ向けて退行するようになる。この際、転動輪２２が床面Ｆ上を転動するため、足揉み装置５はスムーズに移動することとなる。
【００４３】
そして図４（ｄ）に示すように、足揉み装置５が収納位置Ｐへ格納された状態に戻される。これら一連の動作が進退機構１５の退行動作である。
足揉み装置５が収納位置Ｐに収まると、その底面が前方を向くと共に座部２の前端部から突出しない状態となるので、椅子型マッサージ装置１に座った「マッサージを受けない使用者」は楽な体勢を保持できると共に、椅子型マッサージ装置１の見栄えもシンプルなものとなってスッキリとする。
伸縮機構３６を収縮動作させているときに、足揉み装置５と座部２との間に使用者の下肢等の障害物があると、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）が捻り力を発生させることでリンク支軸５５と駆動支軸５６との間で駆動が切断されるようになる。電動モータ３５が進退機構１５を退行させるように回転しても、リンク２０は揺動しない。
【００４４】
さらに、進退機構１５が電気的に故障しているとき（少なくとも電動モータ３５が回転していないとき）に、足揉み装置５を使用位置Ｕ側に人手で移動させようと足揉み装置５を手前に引っ張ると、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）が捻り力を増大させることでリンク支軸５５のみを回転させることができ、その結果として足揉み装置５を使用位置Ｕ側に容易に引き出すことができる。
このように、進退機構１５にはその駆動源（揺動駆動部２１であり更に言えば電動モータ３５である）からの駆動を伝達したり遮断したりする連結切断機構１６が設けられているので、電気的な回路構成を必要としないで使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができる。さらに、電気的に故障しても足揉み装置５を使用位置Ｕ側に容易に引き出すことができる。
【００４５】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【００４６】
本発明は、椅子型マッサージ装置に取り付けられる足揉み装置に適用することが可能であり、ソファや車両の座席等にも適用可能である。
【符号の説明】
【００４７】
１ 椅子型マッサージ装置
２ 座部
３ 背もたれ部
５ 足揉み装置
１５ 進退機構
２０ リンク
２２ 転動輪
２１ 揺動駆動部
３２ 定置枢支部
３３ 移動枢支部
３５ 電動モータ（駆動源）
３６ 伸縮機構
５０ 回動角制限部材（ピン部材）
５５ リンク支軸
５６ 駆動支軸
５７ 一方向クラッチ機構
５８ 回転ダンパ機構
６５ 芯軸
６７ 偏心突起
６８ カラー部材
６９ 偏心突起
７０ カラー部材
７５ コイルバネ
Ｆ 床面
Ｐ 収納位置
Ｕ 使用位置
【技術分野】
【０００１】
本発明は、足揉み装置を備えた椅子型マッサージ装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
足揉み装置が備えられた椅子型マッサージ装置としては、例えば、特許文献１に開示されたものがある。
この椅子型マッサージ装置は、座部の後部に背もたれ部、前部に足揉み装置をそれぞれ有しており、背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ装置構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ装置構が内蔵されている。また、背もたれ部は前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【０００３】
このような椅子型マッサージ装置は、マッサージを行うために利用されるだけでなく、単なる椅子として利用されることも多い。特に、この種の椅子型マッサージ装置では、座部等に柔らかいクッションを内蔵している場合が多く、また、背もたれ部にリクライニング機能を有していることからソファとしての利用にも適したものとなっている。
しかしながら、特許文献１の足揉み装置については、その正面に保持溝を形成したものとなっているため、マッサージ装置能を使わない場合でも保持溝に下肢を嵌め込まなければならず、これによって足の自由な動きが制限され、楽な体勢をとることが困難となっていた。また、椅子の見栄えを損ねる一因ともなっていた。
【０００４】
そこで、このような不都合を回避すべく、特許文献２のような技術を本願出願人は既に開発している。
この椅子型マッサージ装置は、足揉み装置を使用位置と座部の下方に位置する内蔵位置とに移動可能な押引機構を有しており、この押引機構は、椅子型マッサージ装置の両側に設置されているガイドレール、ガイドレールに沿って出入りする押引ロッド、押引ロッドに連結されたキャリッジ板を有し、このキャリッジ板に足揉み装置がピン接続されている。
【０００５】
そのため、足揉み装置を使用位置に位置させた上で、足揉み装置の正面（マッサージ面）と後面（フットレスト面）とを回転切換自在としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２３８９６３号公報
【特許文献２】特開２００７−７５５９０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前述の如く、特許文献２に記載の椅子型マッサージ装置では、足揉み装置は、座部の前方で且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である「使用位置」と、座部の下方に形成された「収納位置」との間を移動するようになっており、使用位置から収納位置への移動に際しては、座部と足揉み装置との間に何某かの異物が存在した場合、その移動が抑制され、最悪の場合、足揉み装置や押引機構を破壊してしまうといった不具合が予想される。
その一方で、足揉み装置を収納位置から使用位置へ進出させるに際しては、押引機構を作動させることが必須である。このことは、もし押引機構（特にその駆動部）が故障した際には、その修理のために足揉み装置を外側へ引き出すことすら出来ないといった不都合を孕んでいることになる。
【０００８】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても不都合が生じない、又、故障時に足揉み装置を使用位置側に容易に引き出したりすることが可能な椅子型マッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る椅子型マッサージ装置は、座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設置された足揉み装置と、この足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ装置において、前記進退機構には、前記駆動源からの駆動力とは別に前記使用位置側へ向けての外力が前記足揉み装置に対して付与された際に、当該進退機構と前記駆動源との連動状態を切り離す連結切断機構が備えられていることを特徴とする。
【００１０】
この椅子型マッサージ装置によると、進退機構により、座部の前方で且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に足揉み装置を進出させたり、座部の下方に形成された収納位置に足揉み装置を退行させたりすることができる。この進退機構には連結切断機構が設けられている。この連結切断機構は、足揉み装置に対して使用位置側への外力が付与された際（例えば、足揉み装置と座部との間に異物が挟まれた場合や、駆動源が故障し足揉み装置を使用位置側に人力により引き出す場合）には、駆動源との連動状態を一時的に切り離す。このため、足揉み装置を容易に使用位置側（外側）へ引き出すことができるようになる。
【００１１】
好ましくは、前記足揉み装置には、当該足揉み装置を前後揺動自在に支持するリンクが連結しており、前記リンクは、前記連結切断機構を介して駆動源に連結されているとよい。
さらに好ましくは、前記連結切断機構は、軸心回りに回動自在で且つ前記リンクが連結されたリンク支軸と、前記リンク支軸と同軸で相対回転自在に連結され、且つ前記駆動源からの回転伝動が伝達される駆動支軸と、前記リンクに連結された足揉み装置を収納位置から使用位置へ移動させる駆動支軸の回転伝動のみを前記リンク支軸へ伝達し、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を非伝達とする一方向クラッチ機構と、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を、弾性力により前記リンク支軸へ伝達する回転ダンパ機構と、を有するとよい。
【００１２】
この場合、前記回転ダンパ機構は、前記駆動支軸及びリンク支軸の外周面を巻き回すように設けられたコイルバネを有し、前記コイルバネは、駆動支軸とリンク支軸との連結間で一端部を駆動支軸へ係合させ他端部をリンク支軸へ係合させて設けられ、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動時において、駆動支軸とリンク支軸との間の回転角度差で捻り弾性力を生じるように構成されているとよい。
【発明の効果】
【００１３】
本発明に係る椅子型マッサージ装置によれば、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても不都合が生じない。加えて、故障時に足揉み装置を使用位置側に容易に引き出したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態を一部内部透視状態にして示した側面図である。
【図２】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態について足揉み装置を使用位置へ動作させた状態にして示した側面図である。
【図３】図２のＡ矢視図（下から見た状態の斜視図）である。
【図４】本発明に係る椅子型マッサージ装置の一実施形態について足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態を示した側面図である。
【図５】図３のＢ部拡大図である。
【図６】連結切断機構を示した斜視図である。
【図７】連結切断機構を示した分解斜視図である。
【図８】連結切断機構において回転ダンパ機構（コイルバネ）を省略してその内部に設けられる一方向クラッチ機構を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
図１〜図４（ｃ）は、本発明に係る椅子型マッサージ装置１の一実施形態を示している。なお、図１及び図２が全体的な側面図であり、その他の図では説明の便宜上、必要に応じて構造の一部を省略して描いてある。
椅子型マッサージ装置１は、座部２と、この座部２の後部に設けられた背もたれ部３とを有しており、座部２の前部には、この座部２に着座した使用者の下肢（特にふくらはぎ）を揉みマッサージする足揉み装置５が設けられている。
【００１６】
図１及び図２に示すように、座部２の下部には、この椅子型マッサージ装置１を床面Ｆへ設置するための脚フレーム６が設けられており、この脚フレーム６によって座部２が所定高さに支持されるようになっている。
また座部２の両側を挟むようにしてアームレスト（図示略）が設けられており、これらアームレストによって脚フレーム６が外から見えないように隠されている。
なお、以下の説明において、図１の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図１の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図１の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、椅子型マッサージ装置１に座った使用者から見たものと一致する。
【００１７】
座部２は使用者の臀部を支持するに十分な広さを有している。背もたれ部３は、その下端部が座部２の後部又は脚フレーム６の後部に対して前後揺動自在な状態に枢支されている。この背もたれ部３は、脚フレーム６内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構（図示略）により、リクライニング可能となっている。
背もたれ部３の内部には、揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行う背部用マッサージ装置構（図示略）が上下移動自在に設けられている。
足揉み装置５は、正面視すれば略四角形状を呈し、側面視すれば丸みを帯びた三角形状を呈するような箱形に形成されている。足揉み装置５の正面には、使用者の下肢（左右の足）を嵌め入れ可能にする左右一対の保持溝１０，１０が形成されている。
【００１８】
各保持溝１０の内部対向面（嵌め入れられた片方の足を挟むようにする両側）には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置が内蔵されている。この下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成としたりすることができる。
座部２の下方（脚フレーム６の内部）には進退機構１５が設けられており、足揉み装置５は、この進退機構１５を介して座部２側（脚フレーム６）と連結される構成となっている。この進退機構１５は、前方へ向けて進出動作することで、座部２の前方で足揉み装置５を床面Ｆから浮き上げて、使用者の下肢をマッサージ可能な使用位置Ｕ（図２参照）へ移動させるようになっている。また進退機構１５は、その後に後方へ向けて退行動作することで、座部２の下方に形成された収納位置Ｐ（図１参照）へ足揉み装置５を収納すべく移動させるようになっている。
【００１９】
図４（ｄ）は足揉み装置５の収納状態（収納位置Ｐ）であり、図４（ａ）は足揉み装置５の使用状態（使用位置Ｕ）であり、図４（ｂ）〜図４（ｃ）は収納状態と使用状態との切り替わりの様子（中途状態）を示している。
本発明に係る椅子型マッサージ装置１では、この進退機構１５に対して、必要に応じて駆動を切り離す連結切断機構１６が備えられている。この連結切断機構１６の作用により、足揉み装置５に使用位置Ｕ側へ向けて外力が付与された際の各種不具合を解消するものである。連結切断機構１６についての詳細構造については後述する。
【００２０】
なお、座部２を支持している脚フレーム６には、床面設置部分の後端に対して左右一対の移動用車輪２３が設けられ、床面設置部分の前後・左右の四箇所に着床部材２４が設けられている。従って、椅子型マッサージ装置１の設置場所を移動させる場合には、左右の移動用車輪２３だけを床面Ｆに押し付け、椅子前部を浮かしながら椅子全体を後方へ傾け、全ての着床部材２４が床面Ｆから離れる状態にして移動用車輪２３を転がすようにする。
図３に示すように、座部２の下部（脚フレーム６内の上部側）にはその左右方向中央部で軸心を左右方向へ向けた定置枢支部３２が設けられ、足揉み装置５の背面上部には、その左右方向中央部で軸心を左右方向へ向けた移動枢支部（軸部）３３が設けられ、これら両枢支部３２，３３の間がリンク２０で連結されている。
【００２１】
リンク２０は、左右方向で所定間隔をおいて並行させ、互いに連結した２本のリンク構成杆３４により、剛性の高い枠形に形成されている。リンク構成杆３４としての本数は特に限定されるものではない。
またリンク２０は側面視Ｃ型にカーブする形状に形成されている。すなわち、足揉み装置５が座部２下方の収納位置Ｐとされている状態（図４（ｄ）の状態）で説明すると、リンク２０は、定置枢支部３２から一旦、後方へ延びるようになされ、その後、足揉み装置５の正面上部から頂部を経由して背面上部側へ回り込むように下方へＵターンし、その後更に、前方へ延びるようになってから移動枢支部３３へ至る形状となっている。
【００２２】
図４（ｄ）に示したように、定置枢支部３２の軸心から床面Ｆまで最短距離で結んだ直線を最大半径Ｒとおく仮想円Ｄを考えるとき、リンク２０は、定置枢支部３２を中心に、この仮想円Ｄの範囲内に全て収まるような大きさで形成されたものとなっている。そのため、リンク２０が定置枢支部３２を中心に前後揺動しても、このリンク２０は床面Ｆに接触することはない。
足揉み装置５の背面上部に設けられる移動枢支部３３とリンク２０との連結部には、回動角制限部材５０が設けられている。
【００２３】
この回動角制限部材５０は、リンク２０が前方揺動することで移動枢支部３３が上昇し、足揉み装置５の背面とリンク２０の前端部との角度θが所定値に達したときに、この角度θを維持させたまま、足揉み装置５全体を床面Ｆから浮き上がらせるようにするためのものである。
ここにおいて、所定角度θとは、足揉み装置５の正面が、座部２の上面と略面一な水平状態（多少の段差は含む）となるか、又は前下がりの折曲状態で連なる形態が実現可能なものとする。
【００２４】
言い換えるならば、図２及び図４（ａ）に示される如く、回動角制限部材５０は、転動輪２２を床面Ｆから浮き上がらせる瞬間に、移動枢支部３３とリンク２０とを回動自在に連結している回動軸心の直下位置より前方で足揉み装置５側へ係合して、移動枢支部３３とリンク２０とがそれ以上回動しないようにする。この回動角制限部材５０は、移動枢支部３３とリンク２０とを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材としてある。
前記したように、本発明に係る椅子型マッサージ装置１では、進退機構１５の動作によって足揉み装置５が使用位置Ｕに進んだり、その後、座部２下方の収納位置Ｐに収納されたりする。このような動作を行わせる進退機構１５は、リンク２０と揺動駆動部２１とを有し、また足揉み装置５における背面下端のコーナー部分で回転自在に設けられた転動輪２２を有して構成されている。
【００２５】
揺動駆動部２１は、電動モータ３５と、この電動モータ３５の動作で伸縮する伸縮機構３６とを有している。伸縮機構３６の後端部は、脚フレーム６の適所に対して回動自在に連結されており、またこの伸縮機構３６の前端部には、ブラケット部材３８が回動自在に連結されている。
このブラケット部材３８は、リンク２０の揺動支点となる定置枢支部３２に対してその径方向外方へ突出して設けられたもので、この定置枢支部３２を支点としつつ、リンク２０と一体揺動可能になっている。
【００２６】
すなわち、揺動駆動部２１は、電動モータ３５の駆動で伸縮機構３６を伸縮させ、これによってブラケット部材３８を揺動させ、リンク２０を前後揺動させる構造であり、このことからこの揺動駆動部２１は、進退機構１５を駆動させるための駆動源である。
そして、このような進退機構１５に対して前記したように連結切断機構１６が設けられており、必要に応じて駆動源（揺動駆動部２１）からの駆動を切り離すことができるようになっている。
図５〜図８に示すように、本実施形態において連結切断機構１６には、リンク２０と揺動駆動部２１の伸縮機構３６との連動状態を一時的に切り離す構成となっている。連結切断機構１６は、リンク支軸５５と、駆動支軸５６と、一方向クラッチ機構５７と、回転ダンパ機構５８とを有している。
【００２７】
図７，図８に示すように、リンク支軸５５と駆動支軸５６とは、互いに同軸で且つ相対回転自在に連結された（構造的に回転方向で分離している）もので、これら両軸が一軸状に連結された状態として、リンク２０の揺動を支持するための定置枢支部３２を構成している。
このうちリンク支軸５５は、リンク２０と一体的に結合された軸であって、リンク２０の揺動と一体となって回転する。また駆動支軸５６は、リンク２０の揺動とは駆動的に無縁の状態（回転自在）に保持された軸であって、この駆動支軸５６に対してブラケット部材３８が一体的に設けられている。
【００２８】
これら両軸５５，５６は、例えば一方の軸（図例では駆動支軸５６側）から芯軸６５を突出させると共に、他方の軸（図例ではリンク支軸５５側）を芯軸６５の嵌る中空軸として形成させておくことで、互いにガタツキなく嵌合して同軸回転するように保持されている。
一方向クラッチ機構５７は、足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ移動させるときだけ、駆動支軸５６からリンク支軸５５への回転伝動を繋ぎ、これとは逆回転となる伝動については切断する構成となっている。
【００２９】
具体的にこの一方向クラッチ機構５７は、リンク支軸５５において駆動支軸５６に向く軸端に、偏心突起６７を突設させたカラー部材６８が固定され、また駆動支軸５６においてリンク支軸５５に向く軸端に、偏心突起６９を突設させたカラー部材７０が固定されたものとなっている。これら両カラー部材６８，７０間では、リンク支軸５５と駆動支軸５６との回転方向が相対的に切り替わるたびに、偏心突起６７，６９が係合離反可能になっている。
すなわち、足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ移動させるに際し、揺動駆動部２１がブラケット部材３８を揺動させる（伸縮機構３６を伸長させる）とき、偏心突起６７，６９は係合状態となって駆動支軸５６側からリンク支軸５５へ回転駆動力が伝えられる。
【００３０】
しかし、揺動駆動部２１がブラケット部材３８を上記と逆向きに揺動させる（伸縮機構３６を収縮させる）とき、偏心突起６７，６９は離反し（リンク支軸５５側の偏心突起６７が置いてきぼりにされる）、駆動支軸５６側からリンク支軸５５へ回転駆動力は伝わらない。
回転ダンパ機構５８は、足揉み装置５が使用位置Ｕから収納位置Ｐへ移動するときに、駆動支軸５６の回転に対してリンク支軸５５を連動して回転させる構成を有している。具体的にこの回転ダンパ機構５８は、駆動支軸５６とリンク支軸５５との連結間（カラー部材６８，７０を外嵌する位置）に設けられたコイルバネ７５を有して形成されている。
【００３１】
図５，図７に示すように、このコイルバネ７５は、両側の端部（バネ脚）７５ａ，７５ｂがそれぞれコ字状に折り曲げられており、そのうち一端部７５ａが駆動支軸５６の適所（ブラケット部材３８など）に係合されており、他端部７５ｂがリンク支軸５５の適所（リンク２０など）に係合されている。
コイルバネ７５の取付向きは、駆動支軸５６とリンク支軸５５との間に回転角度差が生じたときに、巻き方向の捻り力を生じるようになっている。すなわち、一方向クラッチ機構５７の偏心突起６７，６９が係合しあう方向でリンク支軸５５と駆動支軸５６とが相対回転しても、偏心突起６７，６９が係合した状態では両軸５５，５６間に回転角度差が生じることはない。
【００３２】
しかし、これとは逆方向へリンク支軸５５と駆動支軸５６とが相対回転すると、偏心突起６７，６９が離反する状態となるから、両軸５５，５６間に回転角度差が生じることになる。このような回転角度差が生じる方向でコイルバネ７５が捻り力を発生させ、且つ強めてゆくように、このコイルバネ７５は取付向きが決められているということである。
コイルバネ７５に捻り力を発生させるには、巻き締め方向（コイル径が径小化する方向）とするのが好適である。
なお、駆動支軸５６とリンク支軸５５との連結間にコイルバネ７５を取り付ける際に、このコイルバネ７５の両端部７５ａ，７５ｂ間にある程度の捻り力を生じさせた状態にしておくと、コイルバネ７５には常にこの捻り力が発生している状態とさせることができる。このようにすると、駆動支軸５６とリンク支軸５５間の両偏心突起６７，６９が積極的に係合し合おうとする付勢力を付与させることができる。そのため、駆動支軸５６に対するリンク支軸５５の追随状態に、回転方向の遊び（ガタツキ）が生じるのを防止できることに繋がり、始動時の防振や部品破損の抑制効果などが得られことになって好適である。
【００３３】
次に、上記した連結切断機構１６の作用を説明する。
足揉み装置５を収納位置Ｐから使用位置Ｕへ向けて移動させる場合に、進退機構１５がその駆動源としての揺動駆動部２１（伸縮機構３６）を伸長動作させると、ブラケット部材３８が押し出されて揺動し、これと一体となって定置枢支部３２の駆動支軸５６が回転する。
駆動支軸５６の回転に伴い、この駆動支軸５６側に設けられた偏心突起６９がリンク支軸５５側に設けられた偏心突起６７と係合して、このリンク支軸５５に回転駆動を伝える。そのため、リンク支軸５５の回転と共にリンク２０が揺動し、足揉み装置５は使用位置Ｕへ向けて移動する。
【００３４】
一方、足揉み装置５を使用位置Ｕから収納位置Ｐへ向けて移動させる場合に、進退機構１５が揺動駆動部２１（伸縮機構３６）を短縮動作させると、ブラケット部材３８が引き込まれて揺動し、これと一体となって定置枢支部３２の駆動支軸５６が上記と逆回転する。
駆動支軸５６が逆回転を始めても、この駆動支軸５６側に設けられた偏心突起６９はリンク支軸５５側に設けられた偏心突起６７と離反するだけであるので、これら偏心突起６７，６９間（即ち、一方向クラッチ機構５７）においてリンク支軸５５へ直接的な回転駆動が伝わることはない。
【００３５】
駆動支軸５６の逆回転により、駆動支軸５６とリンク支軸５５との間に回転角度差が生じると、コイルバネ７５が捻り力を発生させることになる。そのため、このコイルバネ７５による捻り又はコイルバネ７５自体の剛性により、駆動支軸５６の逆回転がリンク支軸５５へと伝えられ、リンク支軸５５も逆回転を生じるようになる。従ってリンク２０が上記と逆向きに揺動し、足揉み装置５は収納位置Ｐへ向けて移動する。
ところで、足揉み装置５が収納位置Ｐへ向けて移動している途中に足揉み装置５と座部２との間に異物や障害物が挟まれるなどして、足揉み装置５に対して使用位置Ｕ側へ向けた「過大な外力」が作用したとする。
【００３６】
すると、一方向クラッチ機構５７では、コイルバネ７５が捻り弾性力を増大させながら駆動支軸５６だけが逆回転を続行させるようになる。すなわち、コイルバネ７５がバッファ（ダンパ）として作用するため、リンク支軸５５に対して、揺動駆動部２１による駆動は伝達しない状態となり、リンク２０及び足揉み装置５はフリー（無駆動）の状態となる。従って、足揉み装置５は、異物や障害物の影響で略一定の位置に留まることになり、見かけ上、その動きを停止した状態になる。
つまり、足揉み装置が使用位置から収納位置に移動している際に、異物が存在しその移動が抑制されたとしても、揺動駆動部２１は略通常動作をすることとなり、揺動駆動部２１に過大な力や負荷が生じることはなく不都合が発生しない。
【００３７】
なお、揺動駆動部２１は、例えば駆動支軸５６の回転角度や伸縮機構３６の収縮量などをセンサ検出して、所定タイミングで電動モータ３５が停止するように回路構成しておけばよい。
なお、足揉み装置５と座部２との間に挟まった異物や障害物を外すため、足揉み装置５を積極的に使用位置Ｕ側へ引き出そうとすれば、コイルバネ７５は捻り力を増大させることになるものの、足揉み装置５を使用位置Ｕ側へ引き出すことは可能である。
また、進退機構１５が足揉み装置５を移動させていないときに、足揉み装置５に対して使用位置Ｕ側へ向けた外力を作用させたとしても、連結切断機構１６は同様に作動するため、足揉み装置５を使用位置Ｕ側へ引き出すことができる。つまり、本実施形態の椅子型マッサージ装置１は、メンテナンス等で、足揉み装置５を座部２の下部から引き出すことが可能な構成となっている。
【００３８】
次に、本発明に係る椅子型マッサージ装置１の使用状況を説明する。
まず、図４（ｄ）に示すように足揉み装置５が座部２下方の収納位置Ｐにある状態とする。このとき足揉み装置５は、その底面が前方を向き、正面（使用者の下肢を嵌め入れる保持溝１０，１０が設けられた面）が上を向いており、また底面は座部２の前端部と略面一になっている。
揺動駆動部２１の電動モータ３５を作動させると、伸縮機構３６が伸長動作を開始する。そのため、伸縮機構３６の後端部が連結された脚フレーム６を支えとして、伸縮機構３６の前端部（ブラケット部材３８）で定置枢支部３２（一方向クラッチ機構５７で連結された駆動支軸５６及びリンク支軸５５）が回動を開始するようになる。
【００３９】
これに伴い、リンク２０は、定置枢支部３２を支点として移動枢支部３３が前方へ向けて揺動するようになり、その結果、図４（ｃ）に示すように足揉み装置５はその背面上部を前方へ前進させるようになる。この際、転動輪２２が床面Ｆ上を転動するため、足揉み装置５はスムーズに移動することとなる。
リンク２０が更に前方へ揺動することで、図４（ｂ）→図４（ａ）に示すように足揉み装置５はその背面上部が上昇を開始する。そして足揉み装置５の背面上部が座部２の前端下部よりも前方へ出て、且つ図４（ａ）に示すように、足揉み装置５がその全体として上昇するようになれば、この足揉み装置５は使用位置Ｕへ至ったことになる。
【００４０】
これら一連の動作が進退機構１５の進出動作である。使用位置Ｕに至った足揉み装置５は、その背面を床面Ｆと対面させつつ底面が前方を向き、且つ下肢をマッサージする正面（左右の保持溝１０，１０における溝底に相当）が座部２の上面と略面一な水平状態又は前下がりの折曲状態（図２参照）で連なりつつ上方を向く状態となっている。
使用者は、足揉み装置５に対して左右の保持溝１０，１０に片足ずつ差し入れた状態として下肢用のマッサージ装置を作動させれば、心地よくマッサージを受けることができる。また、このとき足揉み装置５が全体として上昇していることにより、使用者は足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようになり、膝を極度に曲げる必要がないので、使用感を高められるようになっている。
【００４１】
なお、使用位置にある足揉み装置５が使用者の脚の長さに対して窮屈に感じた場合には、前方突出機構により足揉み装置５を前方突出させればよい。足揉み装置５の使用後には、足揉み装置５を座部２へ近接させるようにする。
一方、この使用位置Ｕから揺動駆動部２１の電動モータ３５を上記と逆作動させると、伸縮機構３６が収縮動作を開始する。そのため、伸縮機構３６の後端部が連結された脚フレーム６を支えとして、伸縮機構３６の前端部（ブラケット部材３８）で定置枢支部３２の駆動支軸５６が上記と逆回動を開始するようになる。
【００４２】
このとき、一方向クラッチ機構５７は駆動伝達を切断した状態になるが、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）の作用でリンク支軸５５が駆動支軸５６の回転に連動しつつ回転するようになる。これに伴い、リンク２０は、定置枢支部３２を支点として移動枢支部３３が後方へ向けて揺動するようになる。
その結果、図４（ａ）→図４（ｂ）に示すように足揉み装置５はその全体として下降し、且つその正面上部を下方へ沈み込ませるようになる。図４（ｃ）に示すように、足揉み装置５の正面上部が座部２下方より低くなるまで背面上部が下降すると、足揉み装置５は座部２下方を後方へ向けて退行するようになる。この際、転動輪２２が床面Ｆ上を転動するため、足揉み装置５はスムーズに移動することとなる。
【００４３】
そして図４（ｄ）に示すように、足揉み装置５が収納位置Ｐへ格納された状態に戻される。これら一連の動作が進退機構１５の退行動作である。
足揉み装置５が収納位置Ｐに収まると、その底面が前方を向くと共に座部２の前端部から突出しない状態となるので、椅子型マッサージ装置１に座った「マッサージを受けない使用者」は楽な体勢を保持できると共に、椅子型マッサージ装置１の見栄えもシンプルなものとなってスッキリとする。
伸縮機構３６を収縮動作させているときに、足揉み装置５と座部２との間に使用者の下肢等の障害物があると、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）が捻り力を発生させることでリンク支軸５５と駆動支軸５６との間で駆動が切断されるようになる。電動モータ３５が進退機構１５を退行させるように回転しても、リンク２０は揺動しない。
【００４４】
さらに、進退機構１５が電気的に故障しているとき（少なくとも電動モータ３５が回転していないとき）に、足揉み装置５を使用位置Ｕ側に人手で移動させようと足揉み装置５を手前に引っ張ると、回転ダンパ機構５８（コイルバネ７５）が捻り力を増大させることでリンク支軸５５のみを回転させることができ、その結果として足揉み装置５を使用位置Ｕ側に容易に引き出すことができる。
このように、進退機構１５にはその駆動源（揺動駆動部２１であり更に言えば電動モータ３５である）からの駆動を伝達したり遮断したりする連結切断機構１６が設けられているので、電気的な回路構成を必要としないで使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができる。さらに、電気的に故障しても足揉み装置５を使用位置Ｕ側に容易に引き出すことができる。
【００４５】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【００４６】
本発明は、椅子型マッサージ装置に取り付けられる足揉み装置に適用することが可能であり、ソファや車両の座席等にも適用可能である。
【符号の説明】
【００４７】
１ 椅子型マッサージ装置
２ 座部
３ 背もたれ部
５ 足揉み装置
１５ 進退機構
２０ リンク
２２ 転動輪
２１ 揺動駆動部
３２ 定置枢支部
３３ 移動枢支部
３５ 電動モータ（駆動源）
３６ 伸縮機構
５０ 回動角制限部材（ピン部材）
５５ リンク支軸
５６ 駆動支軸
５７ 一方向クラッチ機構
５８ 回転ダンパ機構
６５ 芯軸
６７ 偏心突起
６８ カラー部材
６９ 偏心突起
７０ カラー部材
７５ コイルバネ
Ｆ 床面
Ｐ 収納位置
Ｕ 使用位置
【特許請求の範囲】
【請求項１】
座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設置された足揉み装置と、この足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ装置において、
前記進退機構には、前記駆動源からの駆動力とは別に前記使用位置側への外力が前記足揉み装置に対して付与された際に、当該進退機構と前記駆動源との連動状態を切り離す連結切断機構が備えられていることを特徴とする椅子型マッサージ装置。
【請求項２】
前記足揉み装置には、当該足揉み装置を前後揺動自在に支持するリンクが連結しており、
前記リンクは、前記連結切断機構を介して駆動源に連結されていることを特徴とする請求項１に記載の椅子型マッサージ装置。
【請求項３】
前記連結切断機構は、軸心回りに回動自在で且つ前記リンクが連結されたリンク支軸と、
前記リンク支軸と同軸で相対回転自在に連結され、且つ前記駆動源からの回転伝動が伝達される駆動支軸と、
前記リンクに連結された足揉み装置を収納位置から使用位置へ移動させる駆動支軸の回転伝動のみを前記リンク支軸へ伝達し、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を非伝達とする一方向クラッチ機構と、
前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を、弾性力により前記リンク支軸へ伝達する回転ダンパ機構と、
を有することを特徴とする請求項２に記載の椅子型マッサージ装置。
【請求項４】
前記回転ダンパ機構は、前記駆動支軸及びリンク支軸の外周面を巻き回すように設けられたコイルバネを有し、
前記コイルバネは、駆動支軸とリンク支軸との連結間で一端部を駆動支軸へ係合させ他端部をリンク支軸へ係合させて設けられ、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動時において、駆動支軸とリンク支軸との間の回転角度差で捻り弾性力を生じるように構成されている、
ことを特徴とする請求項３に記載の椅子型マッサージ装置。
【請求項１】
座部と、この座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記座部の前部に設置された足揉み装置と、この足揉み装置を使用位置と収納位置との間で移動させる進退機構と、この進退機構を駆動する駆動源と、を備えた椅子型マッサージ装置において、
前記進退機構には、前記駆動源からの駆動力とは別に前記使用位置側への外力が前記足揉み装置に対して付与された際に、当該進退機構と前記駆動源との連動状態を切り離す連結切断機構が備えられていることを特徴とする椅子型マッサージ装置。
【請求項２】
前記足揉み装置には、当該足揉み装置を前後揺動自在に支持するリンクが連結しており、
前記リンクは、前記連結切断機構を介して駆動源に連結されていることを特徴とする請求項１に記載の椅子型マッサージ装置。
【請求項３】
前記連結切断機構は、軸心回りに回動自在で且つ前記リンクが連結されたリンク支軸と、
前記リンク支軸と同軸で相対回転自在に連結され、且つ前記駆動源からの回転伝動が伝達される駆動支軸と、
前記リンクに連結された足揉み装置を収納位置から使用位置へ移動させる駆動支軸の回転伝動のみを前記リンク支軸へ伝達し、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を非伝達とする一方向クラッチ機構と、
前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動を、弾性力により前記リンク支軸へ伝達する回転ダンパ機構と、
を有することを特徴とする請求項２に記載の椅子型マッサージ装置。
【請求項４】
前記回転ダンパ機構は、前記駆動支軸及びリンク支軸の外周面を巻き回すように設けられたコイルバネを有し、
前記コイルバネは、駆動支軸とリンク支軸との連結間で一端部を駆動支軸へ係合させ他端部をリンク支軸へ係合させて設けられ、前記回転伝動とは逆方向を向く駆動支軸の回転伝動時において、駆動支軸とリンク支軸との間の回転角度差で捻り弾性力を生じるように構成されている、
ことを特徴とする請求項３に記載の椅子型マッサージ装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【公開番号】特開２０１１−５０３４（Ｐ２０１１−５０３４Ａ）
【公開日】平成２３年１月１３日（２０１１．１．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１５２４２１（Ｐ２００９−１５２４２１）
【出願日】平成２１年６月２６日（２００９．６．２６）
【出願人】（５９２００９２１４）大東電機工業株式会社 (106)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１月１３日（２０１１．１．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年６月２６日（２００９．６．２６）
【出願人】（５９２００９２１４）大東電機工業株式会社 (106)
【Ｆターム（参考）】
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