椅子式マッサージ機
【課題】 座部に対してスライド自在であり且つ座部に近付く方向にばね付勢される脚載部を備えるとともに、大きくスライドさせた位置から脚載部が勢い良く戻り過ぎることがコンパクト且つ安価な構造により確実に防止された椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】 脚載部と座部とを連結させるスライド機構27を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材26とスライド部材15とで形成し、上記スライド支持部材26とスライド部材15の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体40を備える。上記弾性体40は、摺動方向に間隔を隔てて複数個配することが好ましい。
【解決手段】 脚載部と座部とを連結させるスライド機構27を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材26とスライド部材15とで形成し、上記スライド支持部材26とスライド部材15の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体40を備える。上記弾性体40は、摺動方向に間隔を隔てて複数個配することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚載部を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被施療者が着座する座部と、座部前方に支持される脚載部とを具備する椅子式マッサージ機が知られている。上記脚載部としては、被施療者の脹脛から足裏までを保持するものがあり、脚載部に備えたエアバッグ等の施療手段により脹脛や足裏にマッサージを施すことが可能になっている。
【0003】
上記のように足裏までも保持させる構造の脚載部を備える椅子式マッサージ機にあっては、被施療者の体型にあわせて脚載部と座部との距離を変更自在にすることが好ましい。そこで、座部に対して脚載部を被施療者の足先方向に進退自在に連結させる為のスライド機構を備えたものが提案されいている(特許文献1参照)。上記スライド機構には、脚載部を座部に近接する方向に付勢する付勢ばねが配してあり、脚載部に足裏を当てて伸ばす力で付勢ばねの力に抗して脚載部を座部から遠ざけ、被施療者の体型に適した位置にまで脚載部をスライドさせた時点でロックさせる構造となっている。
【0004】
ところが、上記構造の椅子式マッサージ機にあっては、座部から大きく距離を隔てた位置で脚載部をロックさせていた場合には、このロックを解除すると付勢ばねに蓄積されていた弾性エネルギが一気に開放されて脚載部が勢い良くスライドし過ぎてしまい、危険であるとともに破損も生じ易いといった問題が有る。
【0005】
上記問題を解決する為に、ダンパー等の減衰装置を配することも考えられるが、この場合には構造が大型化してしまうといった問題や、製造コストが高くなるといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−135928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、座部に対してスライド自在であり且つ座部に近付く方向にばね付勢される脚載部を備えるとともに、大きくスライドさせた位置から脚載部が勢い良く戻り過ぎることがコンパクト且つ安価な構造により確実に防止された椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明を、被施療者が着座する座部2と、被施療者の脹脛及び足裏を保持する脚載部6とを、脚載部6が座部2から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構27を介して連結させるとともに、脚載部6を座部2に近接する方向に付勢する付勢ばね33を備えて成る椅子式マッサージ機において、上記スライド機構27を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材26とスライド部材15とで形成し、上記スライド支持部材26とスライド部材15の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体40を備えていることを特徴としたものとする。
【0008】
上記構成の椅子式マッサージ機とすることで、座部2から大きく距離を隔てた位置から脚載部6を一気に離した場合であっても、付勢ばね33により生じる付勢力に抗して弾性体40の摩擦抵抗が生じるので、脚載部6が勢い良く戻り過ぎることが防止される。しかも、このようにする為にスライド機構27中に弾性体40を配するだけの簡単な構造でよいことから、コンパクト且つ安価な商品として提供可能である。
【0009】
なお、上記弾性体40は、摺動方向に間隔を隔てて複数備えていることが好ましい。このようにすることで、摺動方向の広い範囲内で脚載部6に摩擦抵抗を与えることができるとともに、この間隔を適宜設定することで、スライド動作中に脚載部6に付与される摩擦抵抗を容易且つ適切に管理することができる。
【0010】
また、上記弾性体40の摺動面40aを、摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面50に形成することも好ましい。上記凸曲面50が摺動して摩擦抵抗を付与するように設けることで、摺動時の摩擦抵抗により脚載部6のスライドに引掛かりを生じることが防止されるものである
また、上記弾性体40の摺動面40aに、グリス溜まり用の凹溝60を形成することも好ましい。上記凹溝60中にグリスを配しておくことで、弾性体40の寿命を延ばすことができる。
【0011】
なお、以上述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜組合せ可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、座部に対してスライド自在であり且つ座部に近付く方向にばね付勢される脚載部を備える椅子式マッサージ機において、大きくスライドさせた位置から脚載部が勢い良く戻り過ぎることを、コンパクト且つ安価な構造により確実に防止するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。図8〜図10には、本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機全体を示している。本例の椅子式マッサージ機は、被施療者が着座するための座部2と、座部2に着座状態にある被施療者が背中を凭れ掛けるために座部2の後方に起倒自在に設けた背凭れ部3と、座部2に着座状態にある被施療者が腕を置くために座部2の左右両側に設けた肘置き部4と、上記各部2〜4を支持する支持脚部5とで主体を成すマッサージ機本体1に、座部2に着座状態にある被施療者が脚部の膝下部分(即ち脹脛部分から足裏部分まで)を保持させるための脚載部6を姿勢変更自在に連結させたものである。なお、本文中に用いる上下、左右、前後等の各方向は、座部2に着座状態にある被施療者側から見た方向を基準とする。
【0014】
本例の脚載部6は、被施療者の脚部の脹脛部分を当ててこれを保持させる脹脛保持部7と、被施療者の脚部の足裏部分を当ててこれを保持させる足裏保持部8とを一体に形成したものである。脚載部6には、被施療者の脚部の膝下部分全体が嵌まり込む左右一対の凹溝9を形成しており、脚部の足先方向に伸びる凹溝9の基端側及び正面側を開放させて被施療者の脚部が該開放部分から出入自在となるように設けている。
【0015】
本例においては上記凹溝9の先端側に形成される部分が、被施療者の足裏及び足先、足首部分が嵌まり込む足裏保持部8の溝部分であり、足裏保持部8の該溝部分の内壁に配してあるエアバッグ等の施療手段(図示せず)を駆動することで足裏や足先、足首部分に対してマッサージを施すようになっている。そして、凹溝9であって上記足裏保持部8の溝部分よりも基端側の部分が、被施療者の脹脛部分が嵌まり込む脹脛保持部7の溝部分であり、脹脛保持部7の溝部分内壁に配してあるエアバッグ等の施療手段(図示せず)を駆動することで脹脛部分に対してマッサージを施すようになっている。なお、上記した凹溝9の基端側とは、該凹溝9の長手方向両端のうち座部2に近い側のことであり、凹溝9の先端側とは該凹溝9の長手方向両端のうち座部2から離れた側のことであり、また凹溝9の正面側とは脚載部6の先端を下方に向けた場合に前方を向く側のことである。
【0016】
図2〜図7に示すように脚載部6は、両凹溝9の底壁部分を支持するベースパイプ10と、ベースパイプ10から立設されて各凹溝9の左右の側壁部分を支持する補強パイプ11及び補強板12と、ベースパイプ10から立設されて各凹溝9の先端側の側壁部分(即ち、足裏保持部8において足裏が当る部分)を支持する足裏保持部材13とで全体の枠組を形成し、この枠組上にカバー14を被嵌させることで主体を成すものである。本例においては上記足裏保持部材13に板金を用いることで、薄型でありながら被施療者の足裏部分から受ける荷重に耐えるだけの強度を保持させているので、座部2の座面高さの制約がある中で足裏保持部8を薄型に形成して脹脛保持部7の長さ領域を確保することが可能になっている。
【0017】
脚載部6の左右方向の中央部分には、ベースパイプ10と足裏保持部材13との間に架け渡すように、被施療者の脚部の足先方向に(即ち、凹溝9の長手方向に)伸びるスライド部材15を固定している。上記スライド部材15は、後述の連結支持部19に固定されるスライド支持部材26と、脚部の足先方向(以下、これを「スライド方向」という)にスライド自在に嵌合することでスライド機構27を形成するものである。また、脚載部6には、上記スライド部材15と平行に(即ちスライド方向に)伸び、且つ多数の嵌合孔16をスライド方向に列設して成る調整部材17を固定しており、後述の連結支持部19に固定されるロック位置決め部材28の可動ピン29を該嵌合孔16に嵌脱自在に設けることでスライドロック機構30を形成している。更に、脚載部6の左右両端部には、断面コ字状を成す一対の傾倒防止部材18を互いの開口側が向い合うように固定しており、この傾倒防止部材18が後述の連結支持部19のサイドパイプ23を囲んで位置することで、傾倒防止機構31を形成している。上記各機構27,30,31については改めて詳述する。
【0018】
連結支持部19は、座部2の前方位置にてマッサージ機本体1に上下に回動自在に支持されるとともに、脚載部6をスライド方向に進退自在に連結させるものであり、該連結支持部19を介することで、脚載部6はマッサージ機本体1に回動自在且つスライド自在に連結される構造になっている。上記連結支持部19は、左右方向に伸びるパイプ20と、パイプ20の左右両端に固定されており且つ該固定部分と別の部分に回転軸受部21を開口させている支持板22と、パイプ20の左右両側からスライド方向に伸びるように延設される一対のサイドパイプ23と、左右両側のサイドパイプ23の間に架け渡すように固定される一対の連結板24とで主体を成すものである。
【0019】
スライド方向に列設される一対の連結板24のうち先端側の連結板24には、その左右方向の中央部分に、スライド方向に伸びる嵌合溝25を有する樹脂製のスライド支持部材26を固定しており、このスライド支持部材26の嵌合溝25に対してスライド部材15の凸状を成す底部15aがスライド自在に嵌合することで(図1参照)、連結支持部19に対して脚載部6をスライド方向に進退自在に連結させるスライド機構27を形成している。また、同じく先端側の連結板24には、座部2の左右方向側部に配した操作レバー37及びワイヤ(図示せず)を用いた遠隔操作により可動ピン29を突没自在に備えたロック位置決め部材28を固定しており、調整部材17に列設してある複数の嵌合孔16のいずれか一つに、突出状態とした上記可動ピン29が嵌合するように設けることで、複数段階に設定されるスライド量の中から選択した任意のスライド量で脚載部6を固定させるスライドロック機構30を形成している。
【0020】
更に、連結支持部19の左右両端部に並設される一対のサイドパイプ23と、各サイドパイプ23を囲むように脚載部6の左右両端部に固定される一対の傾倒防止部材18とで、脚載部6が連結支持部19に対して所定の許容量を超えて傾倒することを防止する傾倒防止機構31を形成している。傾倒防止部材18は、サイドパイプ23との間に所定距離を保持するように該サイドパイプ23の外形よりも若干大きく形成し、通常はサイドパイプ23と接触しないように設けている。
【0021】
連結支持部19と脚載部6との間には、脚載部6を座部2と接近する方向に付勢する為の付勢手段32として、左右一対のコイル状の付勢ばね33を介在させている。この付勢ばね33は、連結支持部19の基端側に位置するパイプ20と、脚載部6の先端側に位置する足裏保持部材13との間に架設されるものであり、スライド機構27を挟む左右両側の対称な位置に同一のものが配置されることで、左右のバランスを保って脚載部6の円滑なスライドを確保している。
【0022】
上記連結支持部19は、その基端側の左右両端に設けてある支持板22の回転軸受部21に、マッサージ機本体1の座部2の前方位置に左右方向に伸びるように設けた回転軸(図示せず)を回動自在に嵌合させることで、先端側を下げて座部2の座面と略直行するような垂直姿勢と、先端側を持ち上げて座部2の座面と略平行になるような水平姿勢との間で、回転軸を中心として上下方向に回動自在に連結されるものである。連結支持部19の姿勢を制御する為の機構は特に図示していないが、モータやエアで駆動されるリンク等の伸縮自在な支持手段を用いることが好適である。
【0023】
しかして、上記構成の椅子式マッサージ機において、マッサージ機本体1の座部2に着座した状態にある被施療者が自身の左右両脚部の膝下部分を脚載部6の左右一対の凹溝9内に夫々嵌め込むことで、脚載部6の先端側に形成される足裏保持部8の溝部分内底面に足裏部分を当てて該足裏部分を保持させ、脚載部6の基端側に形成される脹脛保持部7の溝部分内に脹脛部分を嵌合させて該脹脛部分を保持させ、この状態で、足裏保持部8の溝部分内壁に配してある施療手段を駆動させて足裏部分や足先、足首部分にマッサージを施すとともに、脹脛保持部7の溝部分内壁に配してある施療手段を駆動させて脹脛部分にマッサージを施すことができる。
【0024】
脚載部6の姿勢を変更しようとする場合には、マッサージ機本体1の座部2前方に配してある回転軸を中心に連結支持部19を上下方向に回動させればよい。この連結支持部19を介した脚載部6の回動により、該脚載部6を、先端側を下げて座部2の座面と略直行するような垂直姿勢と、先端側を持ち上げて座部2の座面と略平行になるような水平姿勢との間の任意の姿勢に移動させることができる。
【0025】
また、脚載部6のスライド位置を変更しようとする場合には、まず、通常時は調整部材17の嵌合孔16の一つに嵌合させてある突出状態の可動ピン29を、操作レバー35を用いた遠隔操作によってロック位置決め部材28内に没入させ、可動ピン29の嵌合孔16との嵌合を解除する。そして、スライド機構27を介して連結支持部19に対する脚載部6のスライド量を変更したうえで、可動ピン29を突出させて前回嵌合していた嵌合孔16とは別の嵌合孔16に嵌合させ、変更したスライド量において脚載部6を連結支持部19に再度固定すればよい。
【0026】
スライド量の変更は以下のようにして行う。即ち、例えば被施療者が膝下の長い体型である等して脚載部6を座部2と離れる方向にスライドさせようとする場合には、被施療者は可動ピン29の嵌合を解除したうえで足裏保持部8に当接する自身の足裏部分を足先側へと押し込み、付勢ばね33の引張力に抗して脚載部6を先端側へとスライドさせればよい。また、例えば被施療者が膝下の短い体型である等して脚載部6を座部2と近接する側にスライドさせようとする場合、被施療者が可動ピン29の嵌合を解除すれば脚載部6は付勢ばね33の引張力によりその基端側に向けてスライドされることとなり、これにより脚載部6を引き下げることができる。
【0027】
ここで、付勢ばね33はスライド機構27を挟む左右両側の等間隔を隔てた箇所に一対設けているので、脚載部6は左右のバランスを維持しながら円滑にスライド可能となっている。また、付勢ばね33は複数存在することから該付勢ばね33一つ当りに要求される引張力も小さくて済み、したがって各付勢ばね33を細くコンパクトに設定することができる。付勢ばね33は、マッサージ機本体1と脚載部6との間で両者1,6を連結させる機構中に配されるものであるから、これを細く設定することで、マッサージ機本体1から脚載部6の凹溝9内底面までの距離も短く設定可能になり、被施療者にとっては着座状態で脚部を保持させ易い構造となる。
【0028】
また、上記付勢ばね33でバランスを保持する場合であっても脚載部6の左右一方に大きな偏荷重が生じた場合には該脚載部6が大きな傾倒を生じてしまってスライドに引掛かりを生じる場合が考えられるが、本例の脚載部6にあっては、連結支持部19の左右両端部のサイドパイプ23を更に外側から囲む位置に傾倒防止部材18を備えているので、脚載部6が連結支持部19に対して所定の許容量を超えて傾倒する前の時点で該傾倒防止部材18が連結支持部19のサイドパイプ23に当ってそれ以上の傾倒を防止する構造になっている。
【0029】
上記傾倒防止部材18は、スライド機構27及び付勢ばね33を挟む左右両側に配してあるが、この配置にすることで、中央に配されるスライド機構27と両側の傾倒防止部材18との間の距離を最大限に設定可能になっている。これにより、傾倒防止部材18とサイドパイプ23との間に保持すべき所定距離も比較的大きく設定することができ、したがって傾倒防止部材18の部品精度や取付精度に多少のばらつきが存在する場合であっても、このばらつきが傾倒防止機構31全体の精度に影響を及ぼし難くなっている。即ち、上記の簡単な構造により脚載部6の円滑なスライドを確保することが可能になっている。なお、本例においては脚載部6として脹脛保持部7と足裏保持部8とが一体のものを用いているが、これに限らず脹脛保持部7と足裏保持部8が別体に形成された構造であっても構わない。また、付勢ばね33も左右に一つずつでなく、左右に複数ずつ備えてあっても構わない。
【0030】
ここで、本例のマッサージ機にあっては上記した通りに、座部2と脚載部6とを、脚載部6が座部2から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構27を介して連結させるとともに、脚載部6を座部2に近接する方向に付勢する付勢ばね33と、任意のスライド量で脚載部6を固定させるスライドロック機構30とを備えた構造であるから、座部2から大きく離れた位置で脚載部6をロックさせてある場合、スライドロック機構30を操作して上記ロックを解除すると付勢ばね33に蓄積されていた弾性エネルギが一気に開放されて脚載部6が勢い良くスライドし過ぎてしまうという心配があるが、図1に示すような弾性体40をスライド機構27中に配してあることでこの問題は解決されている。なお、図2〜図7においては弾性体40は省略して示している。
【0031】
上記弾性体40は硬度50〜70のゴムを用いて略直方体状に形成されたものであり、スライド部材15の凸状を成す底部15a内に、底部15aの側壁に設けた開口部から圧入されるようになっている。図示例では上記開口部をスライド方向に間隔を隔てて三箇所列設しており、各箇所に圧入してある弾性体40の側面が開口部から露出して、スライド支持部材26の嵌合溝25の内側面と摺動する構造である。
【0032】
上記弾性体40の配置は、スライド部材15のうち座部2と近い側(図11(a)の上側)の領域に偏って分布するように設けている。上記領域は、脚載部6のスライド量が大きくて付勢ばね33による付勢力が大きく働くような場合にスライド支持部材26と接する領域であり、この領域に集中的に弾性体40を位置させることで、脚載部6を戻す付勢力が大きく働く場合にはこの大きな付勢力に抗する摩擦力を付与して脚載部6が勢い良く戻り過ぎることを防止し、且つ脚載部6のスライド量が小さくて付勢ばね33による付勢力が小さな場合には、弾性体40の摩擦力を付与させず脚載部6のスライドが戻りきる前に停止することを防止するものである。
【0033】
加えて図示例にあっては、隣接する弾性体40同士が、スライド方向に所定間隔Lだけずれて位置するように配設してあるが、この所定間隔Lは、スライド支持部材26のスライド方向の長さL′以下となるように設定している。これにより、スライド部材15の座部2と近い側の上記領域中にあってスライド支持部材26は絶えず1以上分の弾性体40と摺接し、且つ上記領域中にてスライド支持部材26が摺接する弾性体40の面積は略一定量に保持されるものである。
【0034】
なお、弾性体40の配設個所は図示例のような三箇所でなくてもよく、脚載部6のスライド可能な距離に対応して複数箇所或いは一箇所設けてあればよい。また、上記のような摩擦抵抗を付与する弾性体40を、スライド支持部材26の摺動面側、若しくはスライド部材15とスライド支持部材26の両方の摺動面側に適宜形態で配設してあっても構わない。
【0035】
図11には、本発明の実施形態における他例の椅子式マッサージに配される弾性体40を示している。なお、本例の構成は上記弾性体40の構成を除いて一例と同様であるから、同様の構成については詳しい説明を省略する。図示のように本例の弾性体40は、スライド部材15の底部15aの開口部から露出してスライド支持部材26に摺接することとなる摺動面40aを、スライド方向つまりスライド機構27の摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面50に形成している。上記凸曲面50とすることで、弾性体40とスライド支持部材26との摺動により脚載部6のスライドに引掛かりを生じることが防止されるものである。
【0036】
本例においても隣接する弾性体40同士は、スライド方向に所定間隔Lだけずれて位置するように配設しており、したがって隣接する弾性体40の凸曲面50の頂部51間は、スライド方向に所定間隔L(≦スライド支持部材26の長さL′)だけ隔てて位置している。これにより、スライド部材15の座部2と近い側の領域中にあってスライド支持部材26は絶えず1以上分の弾性体40の頂部51と摺接する構造である。
【0037】
図12には、本発明の実施形態における更に他例の椅子式マッサージに配される弾性体40を示している。なお、本例の構成は上記弾性体40の構成を除いて一例と同様であるから、同様の構成については詳しい説明を省略する。図示のように本例の弾性体40は、スライド部材15の底部15aの開口部から露出してスライド支持部材26に摺接することとなる摺動面40aに、グリス(図示せず)を溜める為の凹溝60を、スライド方向に略等間隔を隔てて多数列設している。上記凹溝60中にグリスを配しておくことで、スライド支持部材26との摺動を繰り返す弾性体40の寿命を延ばすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態における一例のマッサージ機のスライド機構を示しており、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)は座部側から見た断面図である。
【図2】同上の椅子式マッサージ機の脚載部の、左右一方にカバーを被せた状態を示す斜視図である。
【図3】同上の脚載部の、カバーを外した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の脚載部の正面図である。
【図5】図3の脚載部の下面図である。
【図6】同上の椅子式マッサージ機の脚載部の、カバーを外して下方にスライドさせた状態を示す斜視図である。
【図7】図6の脚載部の正面図である。
【図8】同上の椅子式マッサージ機全体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】同上の椅子式マッサージ機全体を示す平面図である。
【図10】同上の椅子式マッサージ機の脚載部を上方に回動させた状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態における他例のマッサージ機に配される弾性体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図12】本発明の実施形態における更に他例のマッサージ機に配される弾性体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 座部
6 脚載部
15 スライド部材
26 スライド支持部材
27 スライド機構
33 付勢ばね
40 弾性体
40a 摺動面
50 凸曲面
60 凹溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚載部を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被施療者が着座する座部と、座部前方に支持される脚載部とを具備する椅子式マッサージ機が知られている。上記脚載部としては、被施療者の脹脛から足裏までを保持するものがあり、脚載部に備えたエアバッグ等の施療手段により脹脛や足裏にマッサージを施すことが可能になっている。
【0003】
上記のように足裏までも保持させる構造の脚載部を備える椅子式マッサージ機にあっては、被施療者の体型にあわせて脚載部と座部との距離を変更自在にすることが好ましい。そこで、座部に対して脚載部を被施療者の足先方向に進退自在に連結させる為のスライド機構を備えたものが提案されいている(特許文献1参照)。上記スライド機構には、脚載部を座部に近接する方向に付勢する付勢ばねが配してあり、脚載部に足裏を当てて伸ばす力で付勢ばねの力に抗して脚載部を座部から遠ざけ、被施療者の体型に適した位置にまで脚載部をスライドさせた時点でロックさせる構造となっている。
【0004】
ところが、上記構造の椅子式マッサージ機にあっては、座部から大きく距離を隔てた位置で脚載部をロックさせていた場合には、このロックを解除すると付勢ばねに蓄積されていた弾性エネルギが一気に開放されて脚載部が勢い良くスライドし過ぎてしまい、危険であるとともに破損も生じ易いといった問題が有る。
【0005】
上記問題を解決する為に、ダンパー等の減衰装置を配することも考えられるが、この場合には構造が大型化してしまうといった問題や、製造コストが高くなるといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−135928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、座部に対してスライド自在であり且つ座部に近付く方向にばね付勢される脚載部を備えるとともに、大きくスライドさせた位置から脚載部が勢い良く戻り過ぎることがコンパクト且つ安価な構造により確実に防止された椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明を、被施療者が着座する座部2と、被施療者の脹脛及び足裏を保持する脚載部6とを、脚載部6が座部2から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構27を介して連結させるとともに、脚載部6を座部2に近接する方向に付勢する付勢ばね33を備えて成る椅子式マッサージ機において、上記スライド機構27を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材26とスライド部材15とで形成し、上記スライド支持部材26とスライド部材15の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体40を備えていることを特徴としたものとする。
【0008】
上記構成の椅子式マッサージ機とすることで、座部2から大きく距離を隔てた位置から脚載部6を一気に離した場合であっても、付勢ばね33により生じる付勢力に抗して弾性体40の摩擦抵抗が生じるので、脚載部6が勢い良く戻り過ぎることが防止される。しかも、このようにする為にスライド機構27中に弾性体40を配するだけの簡単な構造でよいことから、コンパクト且つ安価な商品として提供可能である。
【0009】
なお、上記弾性体40は、摺動方向に間隔を隔てて複数備えていることが好ましい。このようにすることで、摺動方向の広い範囲内で脚載部6に摩擦抵抗を与えることができるとともに、この間隔を適宜設定することで、スライド動作中に脚載部6に付与される摩擦抵抗を容易且つ適切に管理することができる。
【0010】
また、上記弾性体40の摺動面40aを、摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面50に形成することも好ましい。上記凸曲面50が摺動して摩擦抵抗を付与するように設けることで、摺動時の摩擦抵抗により脚載部6のスライドに引掛かりを生じることが防止されるものである
また、上記弾性体40の摺動面40aに、グリス溜まり用の凹溝60を形成することも好ましい。上記凹溝60中にグリスを配しておくことで、弾性体40の寿命を延ばすことができる。
【0011】
なお、以上述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜組合せ可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、座部に対してスライド自在であり且つ座部に近付く方向にばね付勢される脚載部を備える椅子式マッサージ機において、大きくスライドさせた位置から脚載部が勢い良く戻り過ぎることを、コンパクト且つ安価な構造により確実に防止するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。図8〜図10には、本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機全体を示している。本例の椅子式マッサージ機は、被施療者が着座するための座部2と、座部2に着座状態にある被施療者が背中を凭れ掛けるために座部2の後方に起倒自在に設けた背凭れ部3と、座部2に着座状態にある被施療者が腕を置くために座部2の左右両側に設けた肘置き部4と、上記各部2〜4を支持する支持脚部5とで主体を成すマッサージ機本体1に、座部2に着座状態にある被施療者が脚部の膝下部分(即ち脹脛部分から足裏部分まで)を保持させるための脚載部6を姿勢変更自在に連結させたものである。なお、本文中に用いる上下、左右、前後等の各方向は、座部2に着座状態にある被施療者側から見た方向を基準とする。
【0014】
本例の脚載部6は、被施療者の脚部の脹脛部分を当ててこれを保持させる脹脛保持部7と、被施療者の脚部の足裏部分を当ててこれを保持させる足裏保持部8とを一体に形成したものである。脚載部6には、被施療者の脚部の膝下部分全体が嵌まり込む左右一対の凹溝9を形成しており、脚部の足先方向に伸びる凹溝9の基端側及び正面側を開放させて被施療者の脚部が該開放部分から出入自在となるように設けている。
【0015】
本例においては上記凹溝9の先端側に形成される部分が、被施療者の足裏及び足先、足首部分が嵌まり込む足裏保持部8の溝部分であり、足裏保持部8の該溝部分の内壁に配してあるエアバッグ等の施療手段(図示せず)を駆動することで足裏や足先、足首部分に対してマッサージを施すようになっている。そして、凹溝9であって上記足裏保持部8の溝部分よりも基端側の部分が、被施療者の脹脛部分が嵌まり込む脹脛保持部7の溝部分であり、脹脛保持部7の溝部分内壁に配してあるエアバッグ等の施療手段(図示せず)を駆動することで脹脛部分に対してマッサージを施すようになっている。なお、上記した凹溝9の基端側とは、該凹溝9の長手方向両端のうち座部2に近い側のことであり、凹溝9の先端側とは該凹溝9の長手方向両端のうち座部2から離れた側のことであり、また凹溝9の正面側とは脚載部6の先端を下方に向けた場合に前方を向く側のことである。
【0016】
図2〜図7に示すように脚載部6は、両凹溝9の底壁部分を支持するベースパイプ10と、ベースパイプ10から立設されて各凹溝9の左右の側壁部分を支持する補強パイプ11及び補強板12と、ベースパイプ10から立設されて各凹溝9の先端側の側壁部分(即ち、足裏保持部8において足裏が当る部分)を支持する足裏保持部材13とで全体の枠組を形成し、この枠組上にカバー14を被嵌させることで主体を成すものである。本例においては上記足裏保持部材13に板金を用いることで、薄型でありながら被施療者の足裏部分から受ける荷重に耐えるだけの強度を保持させているので、座部2の座面高さの制約がある中で足裏保持部8を薄型に形成して脹脛保持部7の長さ領域を確保することが可能になっている。
【0017】
脚載部6の左右方向の中央部分には、ベースパイプ10と足裏保持部材13との間に架け渡すように、被施療者の脚部の足先方向に(即ち、凹溝9の長手方向に)伸びるスライド部材15を固定している。上記スライド部材15は、後述の連結支持部19に固定されるスライド支持部材26と、脚部の足先方向(以下、これを「スライド方向」という)にスライド自在に嵌合することでスライド機構27を形成するものである。また、脚載部6には、上記スライド部材15と平行に(即ちスライド方向に)伸び、且つ多数の嵌合孔16をスライド方向に列設して成る調整部材17を固定しており、後述の連結支持部19に固定されるロック位置決め部材28の可動ピン29を該嵌合孔16に嵌脱自在に設けることでスライドロック機構30を形成している。更に、脚載部6の左右両端部には、断面コ字状を成す一対の傾倒防止部材18を互いの開口側が向い合うように固定しており、この傾倒防止部材18が後述の連結支持部19のサイドパイプ23を囲んで位置することで、傾倒防止機構31を形成している。上記各機構27,30,31については改めて詳述する。
【0018】
連結支持部19は、座部2の前方位置にてマッサージ機本体1に上下に回動自在に支持されるとともに、脚載部6をスライド方向に進退自在に連結させるものであり、該連結支持部19を介することで、脚載部6はマッサージ機本体1に回動自在且つスライド自在に連結される構造になっている。上記連結支持部19は、左右方向に伸びるパイプ20と、パイプ20の左右両端に固定されており且つ該固定部分と別の部分に回転軸受部21を開口させている支持板22と、パイプ20の左右両側からスライド方向に伸びるように延設される一対のサイドパイプ23と、左右両側のサイドパイプ23の間に架け渡すように固定される一対の連結板24とで主体を成すものである。
【0019】
スライド方向に列設される一対の連結板24のうち先端側の連結板24には、その左右方向の中央部分に、スライド方向に伸びる嵌合溝25を有する樹脂製のスライド支持部材26を固定しており、このスライド支持部材26の嵌合溝25に対してスライド部材15の凸状を成す底部15aがスライド自在に嵌合することで(図1参照)、連結支持部19に対して脚載部6をスライド方向に進退自在に連結させるスライド機構27を形成している。また、同じく先端側の連結板24には、座部2の左右方向側部に配した操作レバー37及びワイヤ(図示せず)を用いた遠隔操作により可動ピン29を突没自在に備えたロック位置決め部材28を固定しており、調整部材17に列設してある複数の嵌合孔16のいずれか一つに、突出状態とした上記可動ピン29が嵌合するように設けることで、複数段階に設定されるスライド量の中から選択した任意のスライド量で脚載部6を固定させるスライドロック機構30を形成している。
【0020】
更に、連結支持部19の左右両端部に並設される一対のサイドパイプ23と、各サイドパイプ23を囲むように脚載部6の左右両端部に固定される一対の傾倒防止部材18とで、脚載部6が連結支持部19に対して所定の許容量を超えて傾倒することを防止する傾倒防止機構31を形成している。傾倒防止部材18は、サイドパイプ23との間に所定距離を保持するように該サイドパイプ23の外形よりも若干大きく形成し、通常はサイドパイプ23と接触しないように設けている。
【0021】
連結支持部19と脚載部6との間には、脚載部6を座部2と接近する方向に付勢する為の付勢手段32として、左右一対のコイル状の付勢ばね33を介在させている。この付勢ばね33は、連結支持部19の基端側に位置するパイプ20と、脚載部6の先端側に位置する足裏保持部材13との間に架設されるものであり、スライド機構27を挟む左右両側の対称な位置に同一のものが配置されることで、左右のバランスを保って脚載部6の円滑なスライドを確保している。
【0022】
上記連結支持部19は、その基端側の左右両端に設けてある支持板22の回転軸受部21に、マッサージ機本体1の座部2の前方位置に左右方向に伸びるように設けた回転軸(図示せず)を回動自在に嵌合させることで、先端側を下げて座部2の座面と略直行するような垂直姿勢と、先端側を持ち上げて座部2の座面と略平行になるような水平姿勢との間で、回転軸を中心として上下方向に回動自在に連結されるものである。連結支持部19の姿勢を制御する為の機構は特に図示していないが、モータやエアで駆動されるリンク等の伸縮自在な支持手段を用いることが好適である。
【0023】
しかして、上記構成の椅子式マッサージ機において、マッサージ機本体1の座部2に着座した状態にある被施療者が自身の左右両脚部の膝下部分を脚載部6の左右一対の凹溝9内に夫々嵌め込むことで、脚載部6の先端側に形成される足裏保持部8の溝部分内底面に足裏部分を当てて該足裏部分を保持させ、脚載部6の基端側に形成される脹脛保持部7の溝部分内に脹脛部分を嵌合させて該脹脛部分を保持させ、この状態で、足裏保持部8の溝部分内壁に配してある施療手段を駆動させて足裏部分や足先、足首部分にマッサージを施すとともに、脹脛保持部7の溝部分内壁に配してある施療手段を駆動させて脹脛部分にマッサージを施すことができる。
【0024】
脚載部6の姿勢を変更しようとする場合には、マッサージ機本体1の座部2前方に配してある回転軸を中心に連結支持部19を上下方向に回動させればよい。この連結支持部19を介した脚載部6の回動により、該脚載部6を、先端側を下げて座部2の座面と略直行するような垂直姿勢と、先端側を持ち上げて座部2の座面と略平行になるような水平姿勢との間の任意の姿勢に移動させることができる。
【0025】
また、脚載部6のスライド位置を変更しようとする場合には、まず、通常時は調整部材17の嵌合孔16の一つに嵌合させてある突出状態の可動ピン29を、操作レバー35を用いた遠隔操作によってロック位置決め部材28内に没入させ、可動ピン29の嵌合孔16との嵌合を解除する。そして、スライド機構27を介して連結支持部19に対する脚載部6のスライド量を変更したうえで、可動ピン29を突出させて前回嵌合していた嵌合孔16とは別の嵌合孔16に嵌合させ、変更したスライド量において脚載部6を連結支持部19に再度固定すればよい。
【0026】
スライド量の変更は以下のようにして行う。即ち、例えば被施療者が膝下の長い体型である等して脚載部6を座部2と離れる方向にスライドさせようとする場合には、被施療者は可動ピン29の嵌合を解除したうえで足裏保持部8に当接する自身の足裏部分を足先側へと押し込み、付勢ばね33の引張力に抗して脚載部6を先端側へとスライドさせればよい。また、例えば被施療者が膝下の短い体型である等して脚載部6を座部2と近接する側にスライドさせようとする場合、被施療者が可動ピン29の嵌合を解除すれば脚載部6は付勢ばね33の引張力によりその基端側に向けてスライドされることとなり、これにより脚載部6を引き下げることができる。
【0027】
ここで、付勢ばね33はスライド機構27を挟む左右両側の等間隔を隔てた箇所に一対設けているので、脚載部6は左右のバランスを維持しながら円滑にスライド可能となっている。また、付勢ばね33は複数存在することから該付勢ばね33一つ当りに要求される引張力も小さくて済み、したがって各付勢ばね33を細くコンパクトに設定することができる。付勢ばね33は、マッサージ機本体1と脚載部6との間で両者1,6を連結させる機構中に配されるものであるから、これを細く設定することで、マッサージ機本体1から脚載部6の凹溝9内底面までの距離も短く設定可能になり、被施療者にとっては着座状態で脚部を保持させ易い構造となる。
【0028】
また、上記付勢ばね33でバランスを保持する場合であっても脚載部6の左右一方に大きな偏荷重が生じた場合には該脚載部6が大きな傾倒を生じてしまってスライドに引掛かりを生じる場合が考えられるが、本例の脚載部6にあっては、連結支持部19の左右両端部のサイドパイプ23を更に外側から囲む位置に傾倒防止部材18を備えているので、脚載部6が連結支持部19に対して所定の許容量を超えて傾倒する前の時点で該傾倒防止部材18が連結支持部19のサイドパイプ23に当ってそれ以上の傾倒を防止する構造になっている。
【0029】
上記傾倒防止部材18は、スライド機構27及び付勢ばね33を挟む左右両側に配してあるが、この配置にすることで、中央に配されるスライド機構27と両側の傾倒防止部材18との間の距離を最大限に設定可能になっている。これにより、傾倒防止部材18とサイドパイプ23との間に保持すべき所定距離も比較的大きく設定することができ、したがって傾倒防止部材18の部品精度や取付精度に多少のばらつきが存在する場合であっても、このばらつきが傾倒防止機構31全体の精度に影響を及ぼし難くなっている。即ち、上記の簡単な構造により脚載部6の円滑なスライドを確保することが可能になっている。なお、本例においては脚載部6として脹脛保持部7と足裏保持部8とが一体のものを用いているが、これに限らず脹脛保持部7と足裏保持部8が別体に形成された構造であっても構わない。また、付勢ばね33も左右に一つずつでなく、左右に複数ずつ備えてあっても構わない。
【0030】
ここで、本例のマッサージ機にあっては上記した通りに、座部2と脚載部6とを、脚載部6が座部2から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構27を介して連結させるとともに、脚載部6を座部2に近接する方向に付勢する付勢ばね33と、任意のスライド量で脚載部6を固定させるスライドロック機構30とを備えた構造であるから、座部2から大きく離れた位置で脚載部6をロックさせてある場合、スライドロック機構30を操作して上記ロックを解除すると付勢ばね33に蓄積されていた弾性エネルギが一気に開放されて脚載部6が勢い良くスライドし過ぎてしまうという心配があるが、図1に示すような弾性体40をスライド機構27中に配してあることでこの問題は解決されている。なお、図2〜図7においては弾性体40は省略して示している。
【0031】
上記弾性体40は硬度50〜70のゴムを用いて略直方体状に形成されたものであり、スライド部材15の凸状を成す底部15a内に、底部15aの側壁に設けた開口部から圧入されるようになっている。図示例では上記開口部をスライド方向に間隔を隔てて三箇所列設しており、各箇所に圧入してある弾性体40の側面が開口部から露出して、スライド支持部材26の嵌合溝25の内側面と摺動する構造である。
【0032】
上記弾性体40の配置は、スライド部材15のうち座部2と近い側(図11(a)の上側)の領域に偏って分布するように設けている。上記領域は、脚載部6のスライド量が大きくて付勢ばね33による付勢力が大きく働くような場合にスライド支持部材26と接する領域であり、この領域に集中的に弾性体40を位置させることで、脚載部6を戻す付勢力が大きく働く場合にはこの大きな付勢力に抗する摩擦力を付与して脚載部6が勢い良く戻り過ぎることを防止し、且つ脚載部6のスライド量が小さくて付勢ばね33による付勢力が小さな場合には、弾性体40の摩擦力を付与させず脚載部6のスライドが戻りきる前に停止することを防止するものである。
【0033】
加えて図示例にあっては、隣接する弾性体40同士が、スライド方向に所定間隔Lだけずれて位置するように配設してあるが、この所定間隔Lは、スライド支持部材26のスライド方向の長さL′以下となるように設定している。これにより、スライド部材15の座部2と近い側の上記領域中にあってスライド支持部材26は絶えず1以上分の弾性体40と摺接し、且つ上記領域中にてスライド支持部材26が摺接する弾性体40の面積は略一定量に保持されるものである。
【0034】
なお、弾性体40の配設個所は図示例のような三箇所でなくてもよく、脚載部6のスライド可能な距離に対応して複数箇所或いは一箇所設けてあればよい。また、上記のような摩擦抵抗を付与する弾性体40を、スライド支持部材26の摺動面側、若しくはスライド部材15とスライド支持部材26の両方の摺動面側に適宜形態で配設してあっても構わない。
【0035】
図11には、本発明の実施形態における他例の椅子式マッサージに配される弾性体40を示している。なお、本例の構成は上記弾性体40の構成を除いて一例と同様であるから、同様の構成については詳しい説明を省略する。図示のように本例の弾性体40は、スライド部材15の底部15aの開口部から露出してスライド支持部材26に摺接することとなる摺動面40aを、スライド方向つまりスライド機構27の摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面50に形成している。上記凸曲面50とすることで、弾性体40とスライド支持部材26との摺動により脚載部6のスライドに引掛かりを生じることが防止されるものである。
【0036】
本例においても隣接する弾性体40同士は、スライド方向に所定間隔Lだけずれて位置するように配設しており、したがって隣接する弾性体40の凸曲面50の頂部51間は、スライド方向に所定間隔L(≦スライド支持部材26の長さL′)だけ隔てて位置している。これにより、スライド部材15の座部2と近い側の領域中にあってスライド支持部材26は絶えず1以上分の弾性体40の頂部51と摺接する構造である。
【0037】
図12には、本発明の実施形態における更に他例の椅子式マッサージに配される弾性体40を示している。なお、本例の構成は上記弾性体40の構成を除いて一例と同様であるから、同様の構成については詳しい説明を省略する。図示のように本例の弾性体40は、スライド部材15の底部15aの開口部から露出してスライド支持部材26に摺接することとなる摺動面40aに、グリス(図示せず)を溜める為の凹溝60を、スライド方向に略等間隔を隔てて多数列設している。上記凹溝60中にグリスを配しておくことで、スライド支持部材26との摺動を繰り返す弾性体40の寿命を延ばすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態における一例のマッサージ機のスライド機構を示しており、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)は座部側から見た断面図である。
【図2】同上の椅子式マッサージ機の脚載部の、左右一方にカバーを被せた状態を示す斜視図である。
【図3】同上の脚載部の、カバーを外した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の脚載部の正面図である。
【図5】図3の脚載部の下面図である。
【図6】同上の椅子式マッサージ機の脚載部の、カバーを外して下方にスライドさせた状態を示す斜視図である。
【図7】図6の脚載部の正面図である。
【図8】同上の椅子式マッサージ機全体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】同上の椅子式マッサージ機全体を示す平面図である。
【図10】同上の椅子式マッサージ機の脚載部を上方に回動させた状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態における他例のマッサージ機に配される弾性体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図12】本発明の実施形態における更に他例のマッサージ機に配される弾性体を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 座部
6 脚載部
15 スライド部材
26 スライド支持部材
27 スライド機構
33 付勢ばね
40 弾性体
40a 摺動面
50 凸曲面
60 凹溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、被施療者の脹脛及び足裏を保持する脚載部とを、脚載部が座部から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構を介して連結させるとともに、脚載部を座部に近接する方向に付勢する付勢ばねを備えて成る椅子式マッサージ機において、上記スライド機構を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材とスライド部材とで形成し、上記スライド支持部材とスライド部材の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体を備えていることを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
上記弾性体を、摺動方向に間隔を隔てて複数備えていることを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
上記弾性体の摺動面を、摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面に形成することを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
上記弾性体の摺動面に、グリス溜まり用の凹溝を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、被施療者の脹脛及び足裏を保持する脚載部とを、脚載部が座部から離れる方向に進退自在となるようにスライド機構を介して連結させるとともに、脚載部を座部に近接する方向に付勢する付勢ばねを備えて成る椅子式マッサージ機において、上記スライド機構を、互いに摺動自在に連結されるスライド支持部材とスライド部材とで形成し、上記スライド支持部材とスライド部材の少なくとも一方の部材に、他方の部材と摺動して摩擦抵抗を付与する弾性体を備えていることを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
上記弾性体を、摺動方向に間隔を隔てて複数備えていることを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
上記弾性体の摺動面を、摺動方向に沿って円弧状に湾曲する凸曲面に形成することを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
上記弾性体の摺動面に、グリス溜まり用の凹溝を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子式マッサージ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−204766(P2006−204766A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24026(P2005−24026)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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