説明

椅子

【課題】座の上向き付勢手段を座と一体成形することにより、部品点数や組付工数を削減し、安価な椅子を提供する。
【解決手段】脚柱4により支持された支基5と、この支基5に、左右方向を向く枢軸9をもって枢着された座6と、支基5と座6との間に設けられ、座6における前記枢軸9よりも後部を上向きに付勢する付勢手段とを備える椅子において、前記付勢手段を、座6と一体成形され、支基5と座6との間において弾性変形することにより、座を上向きに付勢するようにした板ばね18とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座時において、座の後部が付勢手段に抗して下方に回動しうるようにした椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の椅子の中には、脚杆の上端に取付けた支基(支持アーム)の前端部に、前後方向を向く積層状の板ばねの前端部を固着し、この板ばねを座板により下方に撓ませることにより、着座時に座の後部が下方に回動しうるようにしたもの(例えば特許文献1参照)や、脚杆の上端に取付けた支基に、ゴムトーションユニットを設け、ゴムトーションユニットにより、座が後上向きに傾斜する不使用位置から、ほぼ水平をなす使用位置まで回動する際に、座に上向きの抵抗力を付与するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−31965号公報
【特許文献2】2010−104562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている椅子においては、座の上向き付勢手段に、座とは別体の板ばねやゴムトーションユニットを使用しているので、部品点数や組付工数が増え、コスト的に不利である。
また、金属製の板ばねやゴムトーションユニットは、質量があるので、椅子の質量も大きくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、座の上向き付勢手段を座と一体成形することにより、部品点数や組付工数を削減し、安価で軽量な椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)脚により支持された支基と、この支基に、左右方向を向く枢軸をもって枢着された座と、前記支基と座との間に設けられ、座における前記枢軸よりも後部を上向きに付勢する付勢手段とを備える椅子において、前記付勢手段を、前記座と一体成形され、前記支基と座との間において弾性変形することにより、前記座を上向きに付勢するようにした弾性撓曲手段とする。
【0007】
このような構成とすると、座の後部を上向きに付勢する弾性撓曲手段を、座と一体成形してあるので、座と支基との間に別体の付勢手段を設ける際に比して、部品点数及び組付工数を削減することができ、コスト的に有利となる。
【0008】
(2)上記(1)項において、弾性撓曲手段を、一端が座の下面と一体化され、他端が支基に止着され、かつ中間部が弾性撓曲するようにした板ばねとする。
【0009】
このような構成とすると、板ばねを、支基と座との間の狭いスペース内にコンパクトに配設することができる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、弾性撓曲手段を左右1対設ける。
【0011】
このような構成とすると、座を、左右の弾性撓曲手段により安定よく支持することができるので、左右方向にぐらつくのが防止される。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、座は、合成樹脂製の座板を備え、この座板の下面に、弾性撓曲手段を一体的に成形する。
【0013】
このような構成とすると、座板と弾性撓曲手段とを、合成樹脂により容易に一体成形しうるとともに、弾性撓曲手段を含む座全体の質量が軽減されるので、椅子を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、座の後部を上向きに付勢する弾性撓曲手段を、座と一体成形してあるので、部品点数及び組付工数が削減され、安価な椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の椅子の着座前の正面図である。
【図2】同じく、着座前の側面図である。
【図3】同じく、着座時の側面図である。
【図4】同じく、背凭れを後傾させたときの側面図である。
【図5】同じく、着座前の椅子の要部の中央縦断拡大側面図である。
【図6】支基とその上面に取付けられた付勢手段の斜視図である。
【図7】座板における板ばね成形部の拡大縦断側面図である。
【図8】圧縮ばねの拡大平面図である。
【図9】同じく、拡大側面図である。
【図10】図8のXーX線拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の椅子の着座前の正面図、図2は同じく側面図、図3は、同じく着座時の側面図、図4は、背凭れを後傾させたときの側面図、図5は、着座前の椅子の要部の中央縦断側面図、図6は、支基とその上面に取付けられた付勢手段の斜視図である。
【0017】
図1〜図4に示すように、この椅子は、先端部にキャスタ1を備える放射状をなす5本の脚杆2を有する脚体3を備えている。脚体3の中央には、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱4が立設され、脚柱4の上端には、前方を向く支基5の後部が固着されている。なお、支基5と脚柱4と脚体3とを一体化して実施することもある。
【0018】
支基5は、図6に示すように、前方に向かって拡開する平面視三角形の浅い皿状をなすとともに、側面視において前上方に向かって傾斜している。また、図1に示すように、支基5は、前方より見て上向きコ字状をなし、前方に開口しているので、支基5への部材の取付け作業時に、側方や後方だけでなく、前方からも部材や工具等を挿入し易いようになっている。
【0019】
座6は、合成樹脂製の座板7と、その上面に取付けられたクッション材8とからなり、座板7の前端両側部を、支基5の前端両側部に左右方向を向く枢軸9をもってそれぞれ枢着することにより、図2に示す後上向きに傾斜する不使用位置と、図3に示す水平、または後下向きに傾斜する使用位置とに、枢軸9を中心として回動可能である。この回動範囲は、ほぼ15度程度とするのが好ましい。
【0020】
座6は、後述する付勢手段12により、常時不使用位置に向かって上向きに付勢されている。
図2に示すように、座6が不使用位置にあるとき、着座者が座ろうとする際に最初に当接する初期当接部Pが、脚柱4の中心線Oよりも後方に位置するようにしてある。
この初期当接部Pは、座6が使用位置にあるときは、着座者が適正な着座姿勢で着座したとき、その臀部である座骨部付近を安定よく支持する安定支持部と一致するように定めておくのが好ましい。
【0021】
この初期当接部Pを、座6が不使用位置にあるとき、脚柱4の中心線Oよりも後方に位置するようにしておくと、着座者が不使用位置にある座6に着座する際に、着座者の臀部が座6の初期当接部Pに当接したとき、椅子が後方に移動するという不都合が生じるおそれはない。
また、着座者の臀部が座6の初期当接部Pに当接した後、座6は、着座者の臀部とともに、付勢手段12の付勢力に抗して使用位置まで回動し、着座者の臀部を安定支持点まで誘導して、着座者が迅速に適正な着座姿勢を取ることができ、また着座者の荷重が脚柱4よりも後方に加わるので、座6の後部により、着座者の臀部を安定よく支持することができる。
【0022】
不使用位置に位置しているときの座6の後上向き傾斜角度は、大とすればするほど、初期当接部Pが前方に移動して、脚柱4に接近するか、もしくはその前方に位置するようになるが、上記のように、初期当接部Pが、脚柱4の中心線Oよりも後方に位置するように、不使用位置に位置しているときの座6の後上向き傾斜角度を制限するのが好ましい。
【0023】
座板7の後部両側には、背凭れ10の下部両側より前方を向く延出部10aの前部が、脚柱4の中心線Oよりも後方に位置するようにして、左右方向を向く支軸11をもってそれぞれ枢着され、背凭れ10は、図2および図3に示すように、ほぼ上方を向く起立位置と、図4に示すような後傾位置とに、支軸11を中心として回動可能である。なお、この背凭れ10およびその枢着部分の具体的な構造については、本発明と直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
【0024】
支基5には、座6の後部を上向きに付勢する付勢手段12が設けられている。
この付勢手段12は、支基5における枢軸9より下方の部分と座6における枢軸9より後方の部分とを連結する弾性伸縮手段13と、この弾性伸縮手段13の両側方において、座板7の下面に前上端部が一体成形され、中間部が側面視において前方に向かって開口するU字状に弾性撓曲させられ、かつ前下端部が支基5における枢軸9より下方の位置に止着された左右1対の弾性撓曲手段14、14とを備えている。
【0025】
弾性伸縮手段13は、この例では、図2、図5および図6に示すように、前端部が支基5に左右方向の軸15をもって枢着され、かつ後端部が座板7の下面における前後方向の中間部に左右方向の軸ピン16をもって枢着された、ロック機能のないガススプリング17としてある。しかし、ロック機能を有するガススプリングや、圧縮コイルばね、またはオイルダンパもしくはエアダンパ等とすることもできる。
ロック機能を有するガススプリングとする場合には、そのロック解除操作手段を、例えば肘掛け(図示略)の一部等に設けるのが好ましい。
【0026】
左右の各弾性撓曲手段14、14は、この例では、図5〜図7に示すように、硬質合成樹脂よりなる座板7の下面における両側前部に一体成形された前後方向に長い長方形の上片18aと、この上片18aの後端から若干後方に向かって延び、前下方へ向かってほぼ半円弧状に湾曲する弾性撓曲部18bと、弾性撓曲部18bの下端から前方または前下方に延出する下片18cと、下片18cの前端に設けられ、かつ支基5に取付けるための下部取付部18dとを有する左右1対の板ばね18、18からなるものとしてある。なお、座板7における板ばね18の連設部の板厚は、上片18aを一体成形した分だけ、他の部分よりも厚肉とされ、強度が確保されている。
【0027】
左右の板ばね18、18における両下片18c、18cの左右方向の幅は、前方に向かって漸次小としてある。これは、ガススプリング17や後述する押動杆23との干渉を避けて、座6の下方の狭い空間内に、それらを集約的に収容するためである。
【0028】
また、左右の板ばね18、18は、図6に示すように、その両上片18aと下片18cとが、平面視において互いに後方に向かって拡開するように配設するのが好ましい。このようにすることによって、座6の後部を安定よく支持することができる。
【0029】
左右の板ばね18、18における下部取付部18d、18dは、上記軸15の両側端部に枢着されている。なお、下部取付部18dを軸15により枢着しないで、単に支基5の前部上面に摺動可能に当接させてもよい。
【0030】
弾性撓曲手段14は、上記の形状の板ばね18に代えて、半円弧状の弾性撓曲部18bが省略された形状、すなわち、上端部が座板7の後下面に一体化された、支基5の前部上面に向かって斜め前下方に延出する板またはロッド状のばねとしてもよい。
また、側面視において前方または後方に向かってU字状に開口するか、あるいは、正面視において左右方向にU字状に開口する板またはロッド状のばねとすることもある。
【0031】
軸15は、次のようにして、支基5の前部上面に固定されている。すなわち、図5および図6に示すように、支基5における枢軸9より下方の前部の底面に、左右方向を向く凹部5aを設け、この凹部5a内に左右方向に並べて設けた複数の突部19の上面に、上方および左右両方向に開口するU字状の凹溝20をそれぞれ設け、各凹溝20に軸15を嵌合したのち、各突部19の上面に、押え金具21を、ねじ22、22をもって止着することにより、軸15は、回動不能(回動可能としてもよい)として支基5の前端部上面に固定されている。
【0032】
付勢手段12を、弾性伸縮手段13と、この弾性伸縮手段13の両側方に配設した左右1対の弾性撓曲手段14とを備えるものとしてあるので、座6の後部を、左右のバランスよく持ち上げることができるとともに、座6を安定よく支持することができる。
また、弾性伸縮手段13と弾性撓曲手段14とを、小型化して、座6の下方にコンパクトに配設することができるので、椅子の体裁をよくすることができる。
【0033】
上記のように、弾性撓曲手段14である左右1対の板ばね18、18を、座板7の下面に一体成形してあると、他の別体の付勢手段を設ける際に比して、部品点数及び組付工数を削減することができ、コスト的に有利となる。
また、両板ばね18は、合成樹脂製の座板7と同材質で軽いので、従来のような金属製の板ばねやゴムトーションユニットを使用する際に比して、椅子を軽量化することができる。
さらに、弾性伸縮手段13をガススプリング17とし、弾性撓曲手段14を板ばね18とすると、弾性伸縮手段13および弾性撓曲手段14の構造は簡素化され、安価に製造することができる。
【0034】
弾性伸縮手段13の前端部と弾性撓曲手段14の下側の前端部とを、左右方向を向く共通の軸15をもって支基5に枢着してあるから、構造を簡素化できるだけでなく、支基5への弾性伸縮手段13と弾性撓曲手段14との枢着作業を簡略化することができる。
【0035】
座6が下向きに回動すると、板ばね18の上片18aと下片18cとの間隔が狭まり、かつ弾性撓曲部18bを弾性変形させつつ、下片18cが後上方に押し出されるように、板ばね18は弾性変形する。
このように板ばね18が弾性変形することにより、座6を下向きに回動させればさせるほど、板ばね18の反力が大となる。
【0036】
支基5における枢軸9より下方の部分と、背凭れ10における上記支軸11より下方の部分とは、前後方向を向く弾性伸縮可能の押動杆23により連結されている。
座6の不使用位置から使用位置への下向き回動時に、この押動杆23により、背凭れ10の下端部が後方に押動されて、背凭れ10は起立状態に維持され、また押動杆23が弾性収縮することにより、背凭れ10は、この押動杆23の弾性復元力に抗して、図4に示すように、後傾させることができる。
【0037】
図6および図8〜図10に示すように、押動杆23は、前端部が弾性伸縮手段13であるガススプリング17の両側方において、左右方向の軸15により支基5に枢着された硬質かつ非可撓性の左右1対の足片23a、23aと、両足片23a、23aの後端に連設された断面円形の後方を向く左右1対の弾性撓曲部23b、23bと、ガススプリング17の下方において、両足片23a、23aの後端部同士を連結する硬質かつ非可撓性の連結片23cと、両弾性撓曲部23b、23bの後端部同士を連結する硬質かつ非可撓性の連結部23dとを有する圧縮ばねにより構成してある。
連結片23cの中央部は、ガススプリング17の下面と干渉しないように、下方に凹ませてある。なお、押動杆23は、例えばポリアミド系の硬質合成樹脂により一体成形するのが好ましい。
【0038】
左右の足片23a、23aの前端部には、軸15に挿通される左右方向の軸孔24が形成されている。
また、後端の左右方向に幅広の連結部23dにも、左右方向を向く軸孔25が設けられ、この軸孔25には、連結部23dを、背凭れ10の下端部前面の左右方向の中央部に前向き突設された左右1対の軸受片26に枢着するための軸ピン27が挿通されている(図5参照)。
【0039】
左右の弾性撓曲部23b、23bは、椅子の左右方向外方に向かって概ね凸円弧状に湾曲され、かつ断面形状はほぼ円形とされている。
押動杆23における左右の弾性撓曲部23b、23bと、それらの各端部同士を連結する連結片23c、および連結部23dとにより、平面視ほぼ円形の閉ループ状に形成されている。
【0040】
押動杆23を、両弾性撓曲部23b、23bが椅子の左右に並ぶように配設して、支基5と背凭れ10に連結することにより、背凭れ10の後傾時において、弾性撓曲部23b、23bは、図8に2点鎖線で示すように、互いに左右方向外向きに膨らむように弾性撓曲する。なお、左右の弾性撓曲部23b、23bを、上記とは反対に、互いに内向き円弧状に湾曲させて、両弾性撓曲部23bが、椅子の左右方向内方に向かって弾性撓曲するようにすることもある。
【0041】
なお、図9に示すように、左右の弾性撓曲部23b、23bの中間部は、側面視においてわずかに下向き円弧状に湾曲され、両弾性撓曲部23bに前後方向の圧縮荷重が作用した際に、それらの中間部が、両弾性撓曲部23bを含む平面と直交する下方にも弾性変形しうるようにしてある。なお、弾性撓曲部23bを、上記とは反対に、上向き円弧状に湾曲させてもよい。
【0042】
押動杆23として使用した圧縮ばねは、前後の両端間に前後方向の圧縮力が作用した際に、両弾性撓曲部23b、23bは、圧縮方向と直交する方向に弾性撓曲し、2部材(支基5と背凭れ10)の一方が、上記の背凭れ10のように回動しながら相対移動するものであっても、両弾性撓曲部23b、23bは効果的に弾性撓曲して、ばね力を発揮することができ、汎用性の高いものとなる。
【0043】
また、ガススプリング等のシリンダ式の圧縮ばねに比して、構造が簡単であるため、安価で軽量な圧縮ばねを提供することができる。
さらに、両弾性撓曲部23b、23bと、それらの端部同士を連結する前後の硬質の連結片23cおよび連結部23dとにより、平面視円形または非円形(互いに内方に弾性撓曲させる場合等)の閉ループ状に形成されているので、弾性撓曲部23bを効果的に弾性撓曲させて、大きなばね力を得ることができ、かつ繰り返し荷重に対しても十分な強度および耐久性を有することができる。しかも、各弾性撓曲部23bをほぼ円形断面としてあるので、どのような方向にも効果的に弾性変形させることができる。
【0044】
両弾性撓曲部23bを、それらを含む平面と直交する方向にも弾性変形しうるようにしてあるので、前後の端部間の相対移動量が大となり、背凭れ10を大きく後傾させることができる。
【0045】
上記のような圧縮ばねを、上記実施形態の椅子において支基5と背凭れ10との間に押動杆23として装着すると、背凭れ10を後傾させた際に、左右の弾性撓曲部23b、23bは、左右方向に弾性撓曲するので、支基5と座6との間に、押動杆23の上下方向の撓み空間を殆ど設ける必要がなく、座6が使用位置にあるときの高さを低く設定することができる。
【0046】
また、押動杆23とした圧縮ばねは、ガススプリングやゴムトーションスプリングのような背凭れ付勢手段に比して、構造が簡単で安価であるので、椅子を軽量化することができるとともに、コスト低減が図れる。
【0047】
さらに、押動杆23は、前部の左右1対の足片23aと、後部の左右方向に幅広の連結部23dとを、それぞれ左右方向の軸15および軸ピン27をもって、支基5と背凭れ10に枢着してあるので、それを安定よく弾性変形させることができる。
【0048】
押動杆23における足片23a、23aの前端部を、弾性伸縮手段13であるガススプリング17の前端部と、弾性撓曲手段14である左右の板ばね18、18の下部取付部18d、18dとともに、左右方向を向く共通の軸15をもって支基5に枢着してあるので、構造をさらに簡素化できるだけでなく、支基5への弾性伸縮手段13と弾性撓曲手段14と押動杆23との枢着作業をさらに簡単化することができる。
【0049】
以上のような構成の椅子は、図2に示す待機状態では、付勢手段12の付勢力によって、座6の後部が上方に持ち上げられ、座6は後上向き傾斜する不使用位置に位置しており、背凭れ10は、押動杆23の伸長により、ほぼ上方を向く起立位置に保持されている。
【0050】
この状態で、着座者が着座しようとすると、まず着座者の臀部が、上述したように座6の初期当接部Pに当接し、座6は着座者の臀部とともに、付勢手段12の付勢力に抗して、図3に示す使用位置まで回動させられ、着座者の臀部を安定支持点まで誘導し、着座者は迅速に適正な着座姿勢を取ることができる。
【0051】
図3に示す着座状態から、着座者が背中を背凭れ10に凭せかけて背を後方に倒すと、背凭れ10は、押動杆23を弾性収縮させつつ、支軸11を中心として、図4に示すような後傾位置まで回動させられる。この押動杆23の弾性収縮の初期に、硬質の連結部23dが軸ピン27により前方に押動され、そのときの左右の弾性撓曲部23b、23bにおける連結部23dへの結合部分が若干上下方向に捩れつつ、弾性撓曲部23b、23b全体が、図8に2点鎖線で示すように、互いに左右方向外向きに膨らむように弾性撓曲するとともに、上下方向にも若干蛇行するように弾性変形する。
【0052】
着座者が背中を前方に戻すと、背凭れ10は、押動杆23の弾性復元力による伸長によって、支軸11を中心として前方に回動させられ、元の起立位置まで戻される。
【0053】
図3に示す着座状態から、着座者が立上がろうとすると、座6は、弾性伸縮手段13と弾性撓曲手段14との相乗作用により、不使用位置に向かって上向き回動するように付勢され、着座者の起立を支援することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚体
4 脚柱
5 支基
5a凹部
6 座
7 座板
8 クッション材
9 枢軸
10 背凭れ
10a延出部
11 支軸
12 付勢手段
13 弾性伸縮手段
14 弾性撓曲手段
15 軸
16 軸ピン
17 ガススプリング
18 板ばね
18a上片
18b弾性撓曲部
18c下片
18d下部取付部
19 凸部
20 凹溝
21 押え金具
22 ねじ
23 押動杆(圧縮ばね)
23a足片
23b弾性撓曲部
23c連結片
23d連結部
24、25 軸孔
26 軸受片
27 軸ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚により支持された支基と、この支基に、左右方向を向く枢軸をもって枢着された座と、前記支基と座との間に設けられ、座における前記枢軸よりも後部を上向きに付勢する付勢手段とを備える椅子において、
前記付勢手段を、前記座と一体成形され、前記支基と座との間において弾性変形することにより、前記座を上向きに付勢するようにした弾性撓曲手段としたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
弾性撓曲手段を、一端が座の下面と一体化され、他端が支基に止着され、かつ中間部が弾性撓曲するようにした板ばねとしてなる請求項1記載の椅子。
【請求項3】
弾性撓曲手段を左右1対設けてなる請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
座は、合成樹脂製の座板を備え、この座板の下面に、弾性撓曲手段を一体的に成形してなる請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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