椅子
【課題】椅子自体の強度を担保しつつ簡単な組み付け作業を実現し得る椅子を提供する。
【解決手段】背凭れ支持体が、左右の背支持アーム151を有している。背支持アームは、それぞれ支持基部に回動可能に支持されたものであり、支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、支軸、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーするものである。すなわち背支持アーム151は、背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、特に背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることにより互いに補強し合うことになり、背凭れ支持体としての強度を有効に高めたものである。
【解決手段】背凭れ支持体が、左右の背支持アーム151を有している。背支持アームは、それぞれ支持基部に回動可能に支持されたものであり、支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、支軸、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーするものである。すなわち背支持アーム151は、背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、特に背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることにより互いに補強し合うことになり、背凭れ支持体としての強度を有効に高めたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れが後傾可能に構成された椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、座及び背凭れを支持基部に支持させ、当該支持基部に対してそれぞれ動作可能に構成している椅子において、支持基部に回転可能に構成された背支持ブラケットに背凭れを支持する背支持アームを取付けることにより、背支持アームに取付けられた背凭れが後傾動作可能に構成された椅子が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような椅子においては、椅子自体の強度を可能な限り高く構成することが要求されている。
【0004】
そして、椅子自体の強度を高くするためには、着座者の体重や動作による荷重が掛かりやすい椅子の要所には例えば強度の高い金属製の連結材を用いることが多く行われている。このとき、例えば外見を全て樹脂による構成としたい場合など、椅子の仕様によってはこれらの金属を隠蔽するためのカバー部材を取付けることがある。
【0005】
しかしながら、このようなカバー部材の部品点数が多くなると、これらのカバー部材を組み付ける工程がそのまま組付けの際の作業効率に影響してしまい、その結果、組付けに多くの労力を要するものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−206765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した背景のもと、とくに背支持アームの組付け作業を簡素化することに着目したものであり、椅子自体の強度を担保しつつ簡単な組み付け作業を実現し得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係る椅子は後端を連結材により連結された左右の背支持ブラケットを支軸を介して支持基部に支持させ、前記支軸の前記背支持ブラケットよりも外側に突出する両端部に前記背支持ブラケットと共に回動する左右の背支持アームを支持させており、この背支持アームで背凭れを支持するようにした椅子であって、前記左右の背支持アームを前記背支持ブラケットの左右外方から取付けることで、前記支軸、背支持ブラケット及び連結材をカバーすることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、一度に複数の部材をカバーすることができるので、それぞれの部材をカバーするための部品点数を有効に削減することができ、ひいては組付け作業の工数を有効に削減することができる。また、複数の部材を一度にカバーすることにより、カバーによって生じる部品同士のつなぎ目も少なくすることができ、シンプルな見た目にも寄与し得るものとなる。
【0011】
連結材の強度を背支持アームの強度に有効に寄与させるための構成として、背支持アームが前記背凭れを後傾可能に支持する強度部材とし、連結材をカバーするカバー部材を一体に成型しているものを挙げることができる。
【0012】
また、左右の背支持アームの相対位置の位置決めと強度の担保とを併せて実現するためには、左右の背支持アームに前記カバー部材をそれぞれ設け、このカバー部材と前記連結材とを固定することが望ましい。
【0013】
カバー部材と連結材とを有効に位置決めするためには、カバー部材を断面視前向きコの字状をなしたものとし、連結材の後面をカバーすることが好ましい。
【0014】
特に、背支持アームに掛かる荷重に取付け強度が影響され難いものとし、常に強固な取付け状態を実現するためには、カバー部材を連結材の上向面に密着させた状態でこの上向面と前記カバー部材とを固定することが望ましい。
【0015】
捻れ方向の荷重に対する強度を有効に向上させるためには、連結材を側断面視屈曲させたものとすることが望ましい。
【0016】
可動部分と固定部分とをそれぞれ有効にカバーするとともに、固定部分を利用した位置決めを実現するためには、背支持アームを、支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものとすることが好ましい。
【0017】
背凭れに掛かる荷重を好適に受けるとともに、座や他の構成要素に干渉することなく背凭れを支持基部に間接的に支持させるためには、背支持アームを、前後方向に伸びる前後方向延出部と当該前後方向延出部の後端から連続して上方に伸びる起立部とを備えた側面視略くの字形状をなしたものとし、前記起立部に背凭れを支持させることが好ましい。
【0018】
そして、部品点数を有効に削減しながらシンプルな構成で背座シンクロロッキング機構を実現するためには、背支持アームに座を支持するための座支持突起を一体成形することが好ましい。
【0019】
この座支持突起が、背凭れの後傾に伴い座を上昇させるものであれば、体重感知式の背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現することができる。他方この座支持突起が背凭れの後傾に伴い座を下降させるものであれば、背凭れの後傾とともに座の後端が下降するタイプの背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現することができる。
【0020】
シンプルであり、且つ、背凭れの後傾に伴い確実に座を上昇させ得る体重感知式の背座シンクロロッキング機構を実現するための具体的な構成として座支持突起を、軸端カバー部に前向きに傾斜させて突設し前記座を支持するリンクとする態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一度に複数の部材をカバーすることができるので、組付け作業の工数を有効に削減し得る椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す前方からの斜視図。
【図2】同実施形態の張地を分解して示す前方からの斜視図。
【図3】同実施形態の張地を一部省略して示す正面。
【図4】同実施形態の張地を分解して示す左側面図。
【図5】同実施形態の張地を一部省略して示す背面図。
【図6】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図7】同実施形態の全体を一部省略して示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す前方からの斜視図。
【図9】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す分解斜視図。
【図10】同実施形態の支持基部を一部省略して分解して示す後方からの斜視図。
【図11】同実施形態の支持基部を分解して示す正面図。
【図12】同実施形態の支持基部及び座を示す左側面図。
【図13】同実施形態のロッキング機構を示す図12に相当する作用説明図。
【図14】同実施形態の座と座受を示す分解斜視図。
【図15】図5における要部を示したA−A線断面図。
【図16】図4における要部を示したB−B線断面図。
【図17】図16における要部を示したC−C線断面図。
【図18】同実施形態の背凭れ支持体と背支持部材との取付構造を示した斜視図。
【図19】同実施形態の背シェル及び背支持部材を分解して示す斜視図。
【図20】同実施形態の背シェルの正面図。
【図21】同実施形態の背支持部材の正面図。
【図22】図3における要部を示したD−D線断面図。
【図23】図3における要部を示したE−E線断面図。
【図24】図5におけるF−F線拡大断面図。
【図25】図21におけるG−G線断面図。
【図26】本実施形態の変形例1に係る要部を示す図。
【図27】同実施形態の変形例2に係る要部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図25を参照して説明する。
【0024】
この実施形態は本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。
【0025】
この椅子は、図1ないし図7に示すように、脚1と、この脚1に支持された支持基部3と、この支持基部3上に配された座受5と、この座受5に支持された座7と、前記支持基部3に回動可能に支持された背凭れ支持体9と、この背凭れ支持体9に取付けた背凭れ11と、この背凭れ11の後傾動作に伴わせて前記座受5及び座7を上動及び傾動させるロッキング機構13と、前記背凭れ支持体9に設けられた肘掛け15とを具備してなる。
【0026】
《脚の構成》
脚1は、図1ないし図7に示すように、脚ベース17と、この脚ベース17の中心部に設けられた脚支柱19を備えてなる。
【0027】
脚ベース17は、図1ないし図5及び図7に示すように、中心部に設けたハブ21から複数本の脚羽根23を放射状に突出させて設けたもので、前記脚羽根23先端にキャスタ25をそれぞれ設けている。
【0028】
前記脚支柱19は、図1ないし図5、図7及び図14に示すように、ガススプリングタイプのもので上下方向に弾性的に伸縮し、所望の位置においてロックすることができるようにした通常のものである。すなわち、この脚支柱19は前記脚ベース17のハブ21に嵌着されたガススプリング本体27と、このガススプリング本体27の上端から突出させたロッド29とを備えたもので、前記ロッド29の上端にロック解除用の操作ボタン31が突出させてある。そして、このロッド29の上端部に支持基部3を装着している。前記ロック解除用操作ボタン31は、後述する肘掛け15に設けられた昇降用の操作レバー295により操作される。
【0029】
《支持基部の構成》
支持基部3は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19のロッド29に取付けられるメインフレーム33と、このメインフレーム33に取付けられた前リンク軸35及び支軸37を具備してなるものである。前リンク軸35は、前リンク39を介して前記座受5の前端部を支持するためのものである。支軸37は、前記背凭れ支持体9を支持するとともに後リンク41を介して座受5の略中間部を支持するためのものである。
【0030】
メインフレーム33は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19におけるロッド29の上端部に嵌着されるボス部43と、このボス部43の上端側を囲う平面視半円弧状をなす後フレームメンバ45と、この後フレームメンバ45の左右の前端からそれぞれ前方に延出する一対の側フレームメンバ47と、これら側フレームメンバ47の前端部間を結合し前端に平坦な面を有する前フレームメンバ49とを備えたものである。これらボス部43、後フレームメンバ45、側フレームメンバ47、及び前フレームメンバ49は、アルミダイキャスト等により一体に成型されている。前フレームメンバ49の上面部には、前記前リンク軸35を支持する前の軸受部51が一体に設けられているとともに前記後フレームメンバ45と側フレームメンバ47との境界付近には前記支軸37を支持する後ろの軸受部53が一体に設けられている。なお、2つの軸受部51、53の軸心の床面からの高さが異なっており、前の軸受部51の方が後ろの軸受部53より高い位置に設定されている。
【0031】
そして、このメインフレーム33には、図12に示すように、背凭れ11を前方に付勢する傾動反力発生機構55が組み込まれている。
【0032】
傾動反力発生機構55は、図8ないし図13に示すように、基端部が前記支軸37に支持された左右対をなすトルク伝達用のブラケット57と、これら左右のトルク伝達用のブラケット57の先端部間に架設した可動軸59と、この可動軸59をメインフレーム33に設けたバネ受け61を足場として後方に弾性付勢するスプリング63とを具備してなる。また、符号64は、前記脚支柱19のロッド29に設けられたロック解除用の操作ボタン31を押圧するための昇降用ロック解除アームであり、図8ないし図10に示すように、符号297は、肘掛け15に設けた昇降用の操作レバー295の操作力を前記昇降用ロック解除アーム64に伝達するための昇降用のワイヤである。前記操作レバー295を操作することでワイヤ297を引くと、支軸37に外嵌された基端ボス部66が回動し、基端ボス部66を挟んでワイヤ297と反対側に一体に設けられたロック解除アーム64が下方に回動する。
【0033】
また、支持基部3は、図3ないし図6、図10及び図11に示すように、上カバー65と下カバー67とによって覆われている。
【0034】
上カバー65は、図10及び図11に示すように、支持基部3を上面側から覆うもので、支持基部3に係合するための下向きに突出した上係止爪69が設けられている。下カバー67は、支持基部3を下面側から覆うもので、支持基部3に係合するための上向きに突出した下係止爪71が設けられている。また、これら上カバー65と下カバー67とは、それら開口端縁73、75同士が突き合うように配されている。
【0035】
支持基部3のメインフレーム33の前側の外周面、換言すれば前フレームメンバ49の前端の平坦面には、図8、図10及び図11に示すように、前記上カバー65と下カバー67とを取付けるための上下共用取付部77とが設けられている。
【0036】
詳述すれば、前記支持基部3のメインフレーム33は、図8、図10及び図11に示すように、上カバー65の上係止爪69と下カバー67の下係止爪71とをそれぞれ係わり合わせるための上下共用取付部77を備えたものであり、前記上下共用取付部77が、前記上係止爪69が係わり合う係合端面79と、前記下係止爪71が係わり合う係合端面81と、前記上係止爪69の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面83と、前記下係止爪71の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面85とを備えている。
【0037】
前記上下共用取付部77は、図8、図10及び図11に示すように、メインフレーム33における前フレームメンバ49の前端の外周面87に設けられたもので、その前端の外周面87を長方形状に凹陥させたものである。この上下共用取付部77において、上辺が上カバー65の上係止爪69が係わり合う係合端面79であり、下辺が下カバー67の下係止爪71が係わり合う係合端面81である。また、上下共用取付部77において、左右両側辺が上カバー65及び下カバー67の上係止爪69及び下係止爪71に対する横ずれ防止用の係止端面83、85である。
【0038】
なお、メインフレーム33の外周における前後方向中間付近には、図8ないし図10、図12及び図13に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部89と下カバー67を取付けるための下専用取付部91とが設けられている。上カバー65には上専用取付部89に係わり合う爪93が設けられ、下カバー67には下専用取付部91に係わり合う爪95が設けられている。
【0039】
また、メインフレーム33の外周における後端には、図10に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部97と下カバー67を取付けるための下専用取付部99とが設けられている。上カバー65には上専用取付部97に係わり合う爪101が設けられ、下カバー67には下専用取付部99に係わり合う爪103が設けられている。換言すれば、メインフレーム33の後フレームメンバ45には、下専用取付部99である略水平な中央突条と、この下専用取付部99の両側に配置した一対の上専用取付部97である側突条とが設けられている。上専用取付部97は、前記下専用取付部99に対して高さを異ならせて配置されている。
【0040】
以上に加えて、上カバー65及び下カバー67の外周同士も突き合わせて嵌合するように、上下カバー65、67の開口端縁73、75には、回転軸の近傍部分を除いて溝、具体的には、上カバー65及び下カバー67の一方には嵌合凹部が外方に露出し、他方には嵌合凹部が内方に露出した互いに嵌合可能なL型溝が形成されている。これによって支持基部3の上下専用取付部89、91に係合するようにした上下カバー65、67の爪93、95を配するべく、支持基部3から一定間隔離れた位置を保ってカバーする構成をなしていても上下カバー65、67同士を確実に嵌合することができる。
【0041】
以上説明した支持基部3の前の軸受部51に前リンク軸35を介して左右の前リンク39を回動可能に取付けている。前リンク39の支持基部3への取付構造は次のようになっている。すなわち、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、左右にそれぞれ前記前リンク軸35を支持する軸受部51と、軸方向に垂直な対向する一対の平面105とを備えたものであり、前記前リンク39は、椅子本来の機能を発揮し得る使用時回動範囲(U)では前記平面105間に位置し、前記前リンク39を支持基部3に対して挿脱し得る図示しない挿脱時回動範囲では前記平面105外に位置する平面対応部分107を備えたもので、支持基部3に前リンク軸35を介して前リンク39を回動可能に支持させている。
【0042】
換言すれば、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、前リンク軸35を支持する前の軸受部51と、この軸受部51の軸方向に隣接する位置に前方及び上方に開口したリンクアーム収容部109とを備えている。リンクアーム収容部109は、前リンク軸35と直交する一対の平面105間に形成されたものである。前記前リンク39は、上端部に前連結軸111を保持する軸孔113を有するとともに基端部に前リンク軸35に外装されるボス部115を有しており、このボス部115の外周にリンクアーム117を備えている。このリンクアーム117は、前記リンクアーム収容部109に対応する平面対応部分107を有している。
【0043】
そして、前記使用時回動範囲(U)では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105間に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れることが禁止されている。一方、前記挿脱時回動範囲では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105外に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れ得るようになっている。組立状態においては、前リンク39が前記挿脱時回動範囲にまで回動できないように設定されている。組付け時には、前リンク39を後ろに寝かせて左右から、座受5の前リンク取付部121に通した前連結軸111と、メインフレーム33の前の軸受部51に通した前リンク軸35に嵌め込む。その状態で、前記前リンク39を前に倒してリンクアーム収容部109の対向する平面105間に前リンク39のリンクアーム117を嵌め込む。その後、座受5の略中間部に位置する後リンク取付部127に後連結軸123をそれぞれ嵌め込んで、左右から背支持アーム151を付けることにより、前述した組立状態となる。すなわち、ねじ等の抜け止め部品を用いることなしに、左右の前リンク39をメインフレーム33に取付けることができる。
【0044】
以上のようにしてなる支持基部3に、前リンク39及び後リンク41を介して座受5を支持させている。
【0045】
《座受の構成》
座受5は、図4ないし図6、図12、図13及び図15に示すように、アウターシェルと称し得る形態をなすもので、この実施形態においては合成樹脂により一体に成型されている。座受5の下面には、前連結軸111を介して前リンク39の回動端119を取付けるための前リンク取付部121と、後連結軸123を介して後リンク41の回動端125を取付けるための後リンク取付部127が設けられている。前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、座受5に一体に設けられている。
【0046】
座受5の上面には、縦横にマス目状にリブ126が形成され、そのリブ126の一部平行な2つのものがそのまま座受5の下方に突出するように伸びて前リンク取付部121及び後リンク取付部127を構成している。前リンク取付部121及び後リンク取付部127の左右は、貫通孔を有した側壁128、130により塞がれている。これらの側壁128、130も前記リブ126の一部を下方に延長して形成してもよい。その他のリブ126はこれらのリブ126と複数箇所でつながるように形成され、座受5自体の強度だけでなく、前リンク取付部121、後リンク取付部127の強度にも寄与するように設計されている。すなわち、前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、それぞれ前壁118、122と後壁120、124と左右の側壁128、130とを備えた中空体状のもので、前記前壁118、122、後壁120、124及び左右の側壁128、130の少なくとも1枚は、前記リブ126の一部を下方に延長することにより形成されている。
【0047】
《座の構成》
座7は、図7、図14及び図15に示すように、前記座受5の上面に取付けられたインナーシェル129と、このインナーシェル129の上に配設したクッション131と、このクッション131の外面に張設した張地133とを備えたものである。
【0048】
インナーシェル129は、図15に示すように、合成樹脂により一体に成型されたもので、図示しない爪等により、座受5に固定されている。このインナーシェル129は、前側に斜め下方になだらかに垂れ下がる前端垂れ下がり部分135を設けるとともに、前記中間部137と前記周縁部139との境界に中間部137が周縁部139よりも下方に膨出するような環状の段部141が形成されている。
【0049】
クッション131は、図14及び図15に示すように、発泡ウレタン等により作られたもので、前側に前記インナーシェル129の前端垂れ下がり部分135に沿うクッション垂れ下がり部分143を備えている。また座7の芯材であるクッション131の上面には一方向に並ぶ凹凸部、換言すれば、この実施形態では前後方向に並ぶ溝145を複数本設けている。
【0050】
張地133は、図1ないし図7、図14及び図15に示すように、クッション131及びインナーシェル129の周縁部139を覆う袋状のもので、インナーシェル129の下面側に巻き込んだ張地133の縁147は、インナーシェル129の段部141の端面に沿って配してある。この段部141及び張地133の縁147は、前記座受5により隠されるように覆われている。この張地133には、前記クッション131に形成された溝145に関連させて視覚的特徴部分が形成されている。この実施形態において視覚的特徴部分は、前記張地133にエンボス加工を施してなる線条149である。線条149は、この実施形態では前後方向に並ぶように複数本存在しており、張地133をクッション131に被せたときに平面視クッション131の溝145に上方から重なり合う位置に存在している。ただし、線条149が使用者の視覚に認識されることが重要なのであり、クッション131の溝145と張地133の線条149とは、必ずしも平面視重なり合うとは限られない。
【0051】
《背凭れ支持体の構成》
背凭れ支持体9は、図7ないし図9、図16及び図17に示すように、前記支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151と、これら左右の背支持アーム151の上端部169同士を連結する上連結材153と、前記トルク伝達用のブラケット57の基端から一体に後上方に向けて延設され前記背支持アーム151の基端部内側面に添接する左右の背支持ブラケット155と、これら左右の背支持ブラケット155の後端を連結する、本発明に係る連結材たる下連結材157とを具備してなる。
【0052】
左右の背支持アーム151は、図1ないし図9、図13、図16ないし図18に示すように、それぞれ前記支持基部3に回動可能に支持された樹脂製のものであり、支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーするものである。また、この背支持アーム151は、それ自体が一定以上の強度を有する例えばガラス繊維強化樹脂により一体成形されたもので、背支持体9自体の強度を担保する所謂強度部材として機能している。すなわち背支持アーム151は、背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、特に背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることにより互いに補強し合うことになり、背凭れ支持体9としての強度を有効に担保したものである。
【0053】
左右の背支持アーム151は、前後方向に延びる前後方向延出部159と、この前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えたものである。図示例では、前後方向延出部159と起立部161とは、側面視略くの字状をなしている。各背支持アーム151は、その基端部、すなわち前記前後方向延出部159の前端部163に、前記支持基部3に設けられた支軸37の端部165に外側から嵌め合わせるための軸端カバー部たる軸装部167を備えている。また、各背支持アーム151は、その先端部、すなわち前記起立部161の上端部169に、上連結材153を取付けるためのアーム突出部171を備えている。
【0054】
各背支持アーム151の軸装部167は、図3ないし図9及び図16に示すように、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部すなわち支軸37の端部165を嵌合させてカバーすべく内方にのみ開口させた軸穴173を備えている。具体的には、軸穴173にブッシュ175を介して前記支軸37の端部165が相対回転可能に嵌合されるようになっている。ブッシュ175は、支軸37を装着する前に背支持ブラケット155の内側面側から貫装させたものであり、このブッシュ175の内周に前記支軸37が相対回転可能に嵌入される。ブッシュ175の鍔部177は、前記背支持ブラケット155とメインフレーム33との間に位置している。このブッシュ175の外周に前記軸装部167が外嵌されており、この軸装部167によって前記支軸37の端部165がカバーされるようになっている。前記軸穴173は開口端部側が大径となるテーパー状をなしており、前記支軸37は円柱状をなしている。ブッシュ175は、前記軸穴173の内周面と前記軸37の外周面との間を埋める形状をなしている。すなわち、ブッシュ175の外周面はテーパー状をなし、内周面は各部同一断面形状をなす円柱形状をなしている。
【0055】
なお、前記軸装部167の外周には、図3ないし図9、図16及び図17に示すように、本発明に係る座支持突起たる後リンク41が一体に設けられている。つまり本発明では、背支持アームに座7を座受5を介して支持させることによって、後述するように背凭れ11及び座5を共に動作させる後述するロッキング機構13の一部を担わせている。背凭れ11を起立させた状態で、前記軸装部167の外周から斜め前方に傾斜させてこの後リンク41を設けることにより、背凭れ11の後傾に伴い座受5を支持する先端が上昇するように構成することで、後述するような体重感知式のシンクロロッキング動作を可能としている。
【0056】
また、この軸装部167の近傍における前記左右の背支持アーム151の内側面には、前記下連結材157の片半部179をカバーする側面視前向きコの字状のカバー部材181がそれぞれ一体に突設するように成形されている。カバー部材181には、ねじ挿通孔183が設けられている。このカバー部材181の下側面である密着面181aと下連結材の受圧面179aとを密着させた図8、図16及び図17に示した状態で、このねじ挿通孔183に挿通されたねじ187を前記下連結材157に設けられたねじ孔185に螺着することにより、左右の背支持アーム151が下連結材157に取付けられる。そして図17に示すように、カバー部材を下連結材157に取付けた状態では、下連結材157の後面すなわち立壁部157bを外方から視認不能にカバーしている。
【0057】
この状態では、左右の背支持アーム151が下連結材157を介して相互に結合されるので、軸装部167が支軸37から抜け出ることがなくなる。すなわち、後端を下連結材157により連結された左右の背支持ブラケット155を支軸37を介して支持基部3に支持させ、前記支軸37の前記背支持ブラケット155よりも外側に突出する両端部165に前記背支持ブラケット155と共に回動する左右の背支持アーム151を支持させているので、前記左右の背支持アーム151を前記背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることができる。この実施形態においては、左右の背支持アーム151のカバー部材181の端部189同士が組立状態において密に突き合うようになっている。
【0058】
背支持アーム151のアーム突出部171は、図7及び図18に示すように、上連結材153の端部を取付けるためのもので、ねじ挿通孔191とこのねじ挿通孔191に連続するねじ孔を有した図示しないナットとを備えている。
【0059】
上連結材153は、図7及び図18に示すように、チャネル状をなす金属製のもので、左右の背支持アーム151のアーム突出部171間に架設した上で、前記ナットに螺着されるねじ195により前記各背支持アーム151に取付けられる。すなわち、上連結材153は、後方に開口する形状をなし、前記アーム突出部171に前側から嵌め合わせて背支持アーム151の上端部169間に架設される。
【0060】
背支持ブラケット155は、図9、図12、図13、図16及び図17に示すように、金属製のもので、前記トルク伝達用ブラケット57と一体に作られており、前記支軸37を介してメインフレーム33に回動可能に支持されている。
【0061】
下連結材157は、図9、図16及び図17に示すように、金属製のもので、その両端部が、前記背支持ブラケット155の後端に溶接により剛結されている。下連結材157は、左右片半部179が、それぞれ上面側の受圧面179aがカバー部材の密着面181aに密着した状態で背支持アーム151からの荷重を強固に受けるとともに、後端において板金を屈曲させた屈曲部157aと、この屈曲部から下方に垂下させた立壁部とを有している、いわゆる側面視くの字形をなす。これにより、背支持ブラケット155に溶接された状態での捻れ方向の外力に対する剛性を有効に向上させている。
【0062】
この下連結材157は、背支持ブラケット155と協働して合成樹脂製の背支持アーム151の骨格的な機能を有している。また、左右から嵌め付けられる背支持アーム151が左右に離脱するのを防止するための土台としての機能も有している。さらに、下連結材157は、背凭れ11に作用する後傾方向の荷重を背支持アーム151を介して受け止め、その荷重を背支持ブラケット155を介して傾動反力発生機構55のトルク伝達用のブラケット57に伝える機能をも有している。
【0063】
以上のようにしてなる背凭れ支持体9に背凭れ11を支持させてなる。
【0064】
《背凭れの構成》
背凭れ11は、図1ないし図7に示すように、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有した樹脂製の背シェル205と、この背シェル205の頂部201よりも後方に位置する先端縁207を支持する背支持部材209と、前記背シェル205の表面側に添設された張地206とを具備してなる。
【0065】
背シェル205は、図2ないし図7、図19、図20、図22ないし図24に示すように、背凭れ支持体9に支持された樹脂製のものであり、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有したものである。すなわち、この背シェル205は、上部領域211に上下方向に伸びる複数の帯状部材213が左右に並び、それら帯状部材213間に前記開口部203が形成されている。また、背シェル205は、正面視において、着座者の腰部に対応する部分、すなわち腰部対応部分215が左右幅が広く、上に行くほど漸次幅狭となる形状をなしている。
【0066】
上部領域211は、図2ないし図7、図19、図20、図22、図24に示すように、着座者の背中を受ける前面部分217と、この前面部分217の上縁に連続して設けられ頂部201において略水平になるまで湾曲した上湾曲部分219と、この上湾曲部分219の後縁に連続して設けられ下方に湾曲して垂れ下がる背面部分221とを備えている。そして、背面部分221の先端縁207には、下方に開口する溝223が形成されている。
【0067】
この溝223は、前記背支持部材209を嵌合させるための主嵌入部225と、この主嵌入部225に背支持部材209を嵌合させた状態で背支持部材209の背面側に開口する副嵌入部227とを備えたものである。すなわち、背シェル205の先端縁207に設けられた溝223は、主嵌入部225と副嵌入部227を連続的に形成した段付き溝状のものであり、この主嵌入部225に背支持部材209の後述する上取付部251を挿入すると、前記副嵌入部227のみが外方に開口して残ることとなる。この副嵌入部227は、後述する側縁溝235と連続しており、これら副嵌入部227及び側縁溝235を用いて張地206を取り付けることにより、背シェル205の前面から上部背面側に向かって張地206でカバーできるようになっている。なお、背面部分221の帯状部材213には、弾性変形調整用のリブ228が形成されている。
【0068】
また、背シェル205の下部領域229は、図2ないし図7、図19、図20及び図23に示すように、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した凹型をなしている。この下部領域229には、前記帯状部材213に連続した突条231が形成されており、隣接する突条231間に前記開口部203に連続した薄肉部233が形成されている。背シェル205の下部領域229は、着座者の腰部に対応する部分215を側面視前方に隆起させており、平面視中央が凹むように湾曲させている。
【0069】
なお、背シェル205は、図1、図2、図4、図6、図19、図22及び図23に示すように、左右両側縁にそれぞれ外方に開口した側縁溝235を有しており、これら側縁溝235と前記溝223における副嵌入部227とが連続している。また、前記背シェル205の下端には、前記側縁溝235に連続する下縁溝237が設けられている。
【0070】
この背シェル205は、図1ないし図6に示すように、その下部239が前記背支持アーム151の前面に取り付けられるとともに、その上部243が前記背支持部材209に支持される。背シェル205の下部239の取付けについて述べると、左右の背支持アーム151の起立部161の前面側には、上下に離間させて複数のナット孔204が形成されている。他方、背シェル205の下部239の左右両側部には、これらナット孔204に各々対応したビス挿通孔が設けられている。したがって、取付け用のビス241を前記ビス挿通孔に前方から挿し通した上、前記ナット孔204に螺合緊締することにより、背シェル205の下部239の左右両側部を左右の背支持アーム151の起立部161の前面に固定することができる。ビス241は、張地206を張り設けた際に、覆い隠される。
【0071】
背支持部材209は、図1、図2、図4ないし図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、前記背シェル205の裏面に左右及び下方に開放された空間245を形成するように対面配置された板状のものであり、前記背凭れ支持体9に支持され前記背シェル205の前後方向へのたわみを制御するものである。背支持部材209は、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した前方から見て凹型をなし前記背シェル205の上部領域211の前面部分217及び下部領域229の幅寸法よりも小さな幅寸法を有した支持部材本体247と、この支持部材本体247の下端に設けられ前記上連結材153に取付けられる下取付部249と、前記支持部材本体247の上端に設けられ前記溝223の主嵌入部225に嵌合する上取付部251と、この上取付部251、前記支持部材本体247及び下取付部249に亘って形成されたリブ253とを有している。なお、背支持部材の左右両端縁は、中間部より厚くなっており、ここが周辺補強材として機能分担している。
【0072】
支持部材本体247は、図4ないし図7、図18、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、板状のもので、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した湾曲形状をなしており、上取付部251の下側に屈曲部255が形成されている。この屈曲部255は、該屈曲部255の上側が下側に対して前方に傾斜するような形状をなしている。換言すれば、この屈曲部255は、側面視くの字状に屈曲している。
【0073】
上取付部251は、図4ないし図7、図19、図21及び図24に示すように、前記主嵌入部225に密に嵌合し得る厚み寸法を有しているもので、嵌合状態においてねじ263を用いて背シェル205に取付けられる。すなわち、この上取付部251は、支持部材本体247の上端から上方に延出された板状のもので、その前面に前記リブ253の上端部が位置している。この上取付部251の前面において、隣接するリブ253間に板ナット257を配した上で、その上端部を溝223の主嵌入部225に嵌合させることによって、前記板ナット257を位置決め保持することができるようになっている。そして、この板ナット257のねじ孔259に背シェル205のねじ孔261を通して背面側から挿通させたねじ263を螺着することによって、この背支持部材209を前記背シェル205に取付けることができるようになっている。この状態では、前記板ナット257が、前記背シェル205及び前記背支持部材209によって隠されている。
【0074】
下取付部249は、図4ないし図7、図19、図21及び図25に示すように、前記支持部材本体247の下端から下方に連続して延出する後壁265と、この後壁265の上端から前方に延出し前記中間に位置するリブ253を相互に連結する天壁267と、この天壁267の前縁から下方に垂下させた前壁269とを備えたもので、前記上連結材153に上側から嵌合し得るように下方に開放された形状をなしている。前記下取付部249の前壁269には、背支持部材209を前記上連結材153に取付けるためのねじ271を挿通させるためのねじ挿通孔273が形成されている。
【0075】
リブ253は、図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、上下方向に亘って伸びるもので、背支持部材209の前面に複数枚設けられている。これらのリブ253は、上側に向かって漸次突出寸法が小さくなるような形状をなしている。また、これらのリブ253は、左右に略一定の間隔をあけて配されている。なお、左右両側に位置するリブ275は、支持部材本体247の下端においてとぎれており、下取付部249まで延出しておらず、この左右両側に位置するリブ275の下方には、前記天壁267及び前壁269は設けられていない。一方、中間に位置するリブ277は、下取付部249の前壁269の前面にまで延出している。なお、左右両側に位置するリブ275の突出寸法は、中間に位置するリブ277の突出寸法に比べて小さくなるように設定されている。また、背支持部材209の下方において、左右両側に位置するリブ275の厚み寸法は、中間に位置するリブ277の厚み寸法に比べて大きくしてある。具体的には、中間に位置するリブ277よりも上下方向の長さの短い左右両側に位置するリブ275は、下方において厚み寸法を約6ミリメートルとしており、一方中間に位置するリブ277は下方において厚み寸法を約4ミリメートルとしている。そのため、背支持部材209を背面側から見た際に、左右両側には縦方向に延びるフレームが存在するように見える。
【0076】
張地206は、図1ないし図7、図22ないし図24に示すように、通気性及び透光性を有した布材を主体に構成されたもので、背シェル205のほぼ全域を覆い隠し得る寸法を有したほぼ長方形状をなしており、端部279を背シェル205の外周縁に止着している。詳述すれば、前記張地206の下端部281を前記背シェル205の下縁溝237に押し込んで止着するとともに、左右両側の端部283を前記背シェル205の側縁溝235に押し込んで止着している。また、張地206の上部285を背シェル205の上湾曲部分219及び背面部分221の外面に被せ、その端部279を前記溝223の副嵌入部227に押し込んで止着している。具体的には、前記張地206の端部全周縁には、図示しない押し込み材が縫製されており、この押し込み材とともに前記張地206の端部279、下端部281、及び左右両側の端部283を、背シェル205の溝223の副嵌入部227、下縁溝237、及び側縁溝235にそれぞれ取付けるようにしている。なお、張地206を背シェル205に取付けた状態で、前記背シェル205と背支持部材209とを結合するねじ263の頭をカバーするようになっている。
【0077】
以上説明したような背凭れ11は、背面視において前記背シェル205の両側縁が、前記背支持部材209の両側縁よりも外側にはみ出した状態で視認可能となっている。また、斜め後方からの視線において、前記張地206の裏側が、背シェル205の開口部203を介して視認可能であり、斜め前方からの視線において、前記背支持部材209のリブ253が視認可能である。
【0078】
以上のようにしてなる背凭れ11と前記座7とをロッキング機構13により連動させるようにしている。
【0079】
《ロッキング機構の構成》
このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ上動させるようにした体重感知式のものである。
【0080】
詳述すれば、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、前側に前リンク軸35を保持するとともに後側に支軸37を保持する支持基部3と、下端部を前記前リンク軸35を介して前記支持基部3に回動可能に支持させた前リンク39と、下端部を前記支軸37に支持された背支持アーム151の軸装部167に一体化させてなる後リンク41と、前リンク取付部121を前連結軸111を介して前記前リンク39の回動端119に連結するとともに後リンク取付部127を後連結軸123を介して後リンク41の回動端125に連結してなる座受5とを主体に構成されたものである。
【0081】
すなわち、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、座7を支持する座受5を同一方向に傾斜する前リンク39と後リンク41とによって支持基部3に支持させ、その支持基部3に支持された背支持アーム151の後傾動作に伴わせて、前記前リンク39及び後リンク41を起立方向に回動させて前記座受5を上方に持ち上げるように構成した体重感知式のものであり、前記背凭れ11の後傾時に、前記座7の前部を座7の後部に比べてより多く持ち上げるように構成されたものである。すなわち、通常の背凭れ及び座のシンクロロッキング機構では、背凭れの後傾動作に伴わせて座を下方側にのみ傾動させるものであるが、本実施形態に示すような体重感知式のロッキング機構13は、通常のロッキング機構とは異なり、図13に二点鎖線で示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ着座者の荷重に抗して座7を持ち上げるように構成している。
【0082】
具体的に説明すれば、図13に示すように、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39の前傾度合いが後リンク41の前傾度合いよりも大きくなるように設定されている。換言すれば、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39における水平線に対する傾斜角度αが、後リンク41における水平線に対する傾斜角度βよりも小さく設定されている。また、前記前リンク39の支持基部3に対する回転中心を、前記後リンク41の支持基部3に対する回転中心よりも高い位置に設定している。換言すれば、前記前リンク軸35の軸心を前記支軸37の軸心よりも距離h分高い位置に設定している。前記前リンク39の有効長さ寸法、すなわち前記前リンク軸35と前記前連結軸111との軸心間距離L1と、前記後リンク41の有効長さ寸法、すなわち後リンク軸である前記支軸37と前記後連結軸123との軸心間距離L2とは略同じ距離に設定されている。また、前記背支持アーム151が、前記支持基部3における脚支柱19よりも前側の部位に枢支されている。換言すれば、前記背支持アーム151の軸装部167が、側面視において前記脚支柱19よりも前側に位置する支軸37に支持されている。
【0083】
前リンク39の前傾度合いを後リンク41の前傾度合いよりも大きくしている点は、後傾時に座7の前側を後側よりも相対的に大きく持ち上げることを目的としたもので、前リンク39と後リンク41との前傾度合いを相互に大きく異ならせることにより、後傾時の座7の前側の持ち上がりを大きく設定することが可能になる。つまり、前リンク39は座7の前部つまり座面7aの前部7a1を上方に持ち上げる動作が多く、後リンク41は座7を後方に移動させる動作が中心となる。これによって、座面7a1は前部7aを多く持ち上げながら座面7aの後部7a2は後方移動し、後傾する背凭れ11に追従するように後方に移動していくこととなる。その結果、座面7aを相対的に後傾させることで座7の後端部と背凭れ11の下端部との相対的な位置関係の変化が有効に抑えられたものとなっている。
【0084】
前リンク39と後リンク41の回転中心位置を上下方向に異ならせる点は、主に背起立時の座7の水平度合いを調整することを目的としたものであり、前述した前後リンク39、41の前傾度合い差と組み合わせることにより、背凭れ11起立時の座7の姿勢と背凭れ11後傾時の座7の姿勢を共に最適な状態に設定している。前リンク39の有効長さ寸法L1と後リンク41の有効長さ寸法L2とを略同寸法とすることにより、前記設定をより適切なものにすることができる。
【0085】
なお、一般に前記背支持アームが、前記支持基部における脚支柱よりも前側の部位に枢支されている椅子においては、背凭れ後傾時に背凭れが下方に沈みこむ傾向にあるため、背凭れ後傾時に座全体が平均的に上方に持ち上がるようにした通常の体重感知式ロッキング機構を採用した場合には大きな違和感、より具体的には、着座者の予想に反して、座の後側部分を含む座全体が上方に持ち上がる結果、着座者の腰部近傍に、背凭れの沈み込み動作とこの沈み込み動作と相反する座の持ち上がり動作とが同時に発生することによって与えられる違和感が発生するが、本実施形態の構成によればその違和感が緩和されるものとなる。すなわち、本実施形態のものは体重感知式ではあるが背凭れ11後傾時にも座7の後側が大きく持ち上がることがないので大きな違和感を与えにくいものとなる。
【0086】
また本実施形態では、この後リンク41は背支持アーム151の回動中心である支軸37を中心に、背支持アーム151及びトルク伝達用のブラケット57とともに一体的に回動するものとしている。これにより、背凭れ11の後傾動作に伴う座7の連動動作のみならず、後リンク41を介した支持基部3による座7の正確な位置決めを併せて実現している。さらに本実施形態では、背凭れ11の回動範囲を20度に設定しているとともに、背凭れ11を最大限後傾させた状態における座面7aのなす角度は、背凭れ11起立時に比べて4度後傾するように設定している。すなわち本実施形態では、主に後リンク41による背凭れ11後傾時の座受5の略中央部の持ち上げによって起こる座面7aの後部7a2が持ち上がる寸法γ2よりも、前リンク39による背凭れ11後傾時の座面7aの前部7a1が持ち上がる寸法γ1をより大きく設定する結果、背凭れ11の最大後傾時の座面7aの角度を背凭れ11起立時よりも4度後傾するようにしている。加えて本実施形態では、後リンク41を座受5の前後方向における略中央部に接続しているため、背凭れ11の後傾時前後リンク39、41共に座受5を持ち上げるような構成にしても、前リンク39が後リンク41よりも多く座受5を持ち上げるので、相対的に座受5の後端部は前端部よりも下がるように設定でき、座受5の前端部が上昇した際に座受5の後端部の高さ位置を、背凭れ11の起立時と後傾時で殆ど変わらないようにしている。
【0087】
《肘掛けの構成》
肘掛け15は、図1ないし図7及び図18に示すように、前記背凭れ支持体9の背支持アーム151における上端部前面から一体に前方に突出させた肘支持部287と、この肘支持部287の上に設けた肘当て289とを具備してなる。
【0088】
肘支持部287は、図3ないし図6及び図18に示すように、上方に開放した有底舟形をなしている。一方の肘支持部287、本実施形態では着座者から見て右側の肘支持部287の前端部位の底壁291には、貫通した窓293を形成しており、その窓293を介して下方に操作レバー295を突出させている。操作レバー295は、脚支柱のロック解除用の操作ボタン31を操作するためのものである。この操作レバー295と前記操作ボタン31との間はワイヤ297で接続しており、操作レバー295に加えられた操作力をワイヤ297によって操作ボタン31に伝達することで、操作ボタン31の操作、ひいては脚支柱のロック/ロック解除の切換えを行い得る。操作レバー295の基端部及び操作レバー295に接続するワイヤ297の一端部は、前記肘支持部287の内部に収まっている。
【0089】
肘支持部287の内部空間は、前記背支持アーム151の起立部161に形成されたワイヤ案内空間298に連通している。ワイヤ案内空間298は、上下方向に延伸し、かつ、その一部または全部が前方に開口する。ワイヤ案内空間298の下端部は、前後方向延出部159の直上まで到達しており、背シェル205の下部239を起立部161に取付けた状態で背シェル205の下端よりも若干下方に位置して前方に開通している。そのため、操作レバー295に接続されたワイヤ297は、肘支持部287の内部空間からワイヤ案内空間298の下端部へと導き出され、そこから前後方向延出部159に沿って支持基部3へと到る。
【0090】
肘当て289は、図1ないし図5、図7及び図18に示すように、前記肘支持部287に対して着脱可能である。これにより、共通の肘支持部287に取付可能な複数種類の肘当て289の中から任意のものを選んで使用することができる。本実施形態で示している肘当て289は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース299と、この取付ベース299に支持され着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体301とが一体的に設けられているものである。
【0091】
取付ベース299は、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169に蓋着される基体303と、この基体303の内方端から略水平に延出するスペーサ305とを具備してなる。基体303は、前側が図示しない係止機構により肘支持部287に掛け止めされるとともに、後側がビス307を用いて背支持アーム151の前面側に取付けられる。肘当て289のスペーサ305は、リブ275の直下の天壁267が存在していない空隙を埋めるためのもので、背支持部材209の下取付部249の天壁267にほぼ連続する板状をなしている。このスペーサ305は、前記上連結材153の上面と、背支持部材209の左右両側に位置するリブ275の下端面との間に密に介設される。
【0092】
このように、本実施形態に係る椅子は、背支持アーム151を背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーようにしているので、それぞれの部材をカバーするための部品点数を有効に削減することができ、ひいては組付け作業の工数を有効に削減し得たものとなっている。これにより、椅子を構成する部品点数の削減を実現するとともに、この椅子の組付けに係る工数並びに作業時間を、有効に削減し得たものとなっている。
【0093】
また本実施形態では、背支持アーム151が下連結材157をカバーするカバー部材181を一体に成型しているので、下連結材157の強度を背支持アーム151の強度に有効に寄与させることを実現している。
【0094】
加えて本実施形態では、左右の背支持アーム151に設けたカバー部材181と下連結材157とをそれぞれ固定することにより、左右の背支持アーム151の相対位置の位置決めと下連結材157と密着させる事による背凭れ支持体9の強度の担保とを併せて実現している。
【0095】
カバー部材181と下連結材157とを有効に位置決めするとともに、下連結材157のカバーを好適に行わせるために本実施形態では、カバー部材181を前方に開放部を有するコ字状の断面形状をなしたものとし、このカバー部材181が下連結材157の後側にある屈曲部157a、立壁部157bをカバーするようにしている。
【0096】
特に、背支持アーム151に掛かる荷重に取付け強度が影響され難いものとし、常に強固な取付け状態を実現するために本実施形態では、カバー部材181の下面に位置付けた密着面181aを下連結材157の上向面たる受圧面179aに押圧・密着させた状態でこの密着面181aと受圧面179aとを上方からねじで固定するようにしている。
【0097】
特に本実施形態では、背凭れ支持体9に対する、左右何れかに偏って掛かる、いわゆる捻れ方向の荷重に対する強度をも有効に向上させるために、屈曲部157aを設けて金属製の下連結材157を側断面視L字状に屈曲させたものとしている。すなわち、下連結材157自体の形状を捻れに強いものとすることで、ひいては背凭れ支持体9自体の捻れ剛性を有効に向上させている。
【0098】
また本実施形態では、背支持アーム151を、支持基部3から左右に突出している回転軸端部つまり支軸37の端部165をカバーする軸端カバー部たる軸装部167を設けることにより、可動部分と固定部分とをそれぞれを一つの背支持アーム151にカバーさせてさらなる部品点数の削減を実現している。
【0099】
背凭れ11に掛かる荷重を背支持アーム151が好適に受けるようにするとともに、座7や他の構成要素に背支持アーム151が干渉することなく背凭れ11を支持基部3に間接的に支持させるために本実施形態では、背支持アーム151を、前後方向に伸びる前後方向延出部159と当該前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えた側面視略くの字形状をなしたものとして、この起立部161に背凭れ11を支持させたものとしている。
【0100】
そして、部品点数を有効に削減しながらシンプルな構成で背座シンクロロッキング機構を実現するために本実施形態では、背支持アーム151に座7を支持するための座支持突起である後リンク41を一体成形したものとしている。
【0101】
特に本実施形態では、この後リンク41の動作を、背凭れ11の後傾に伴い座受5が上昇するように設けることにより、体重感知式の背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現している。具体的にはこのような構成を、背凭れ11を起立させた状態で後リンク41を前向きに傾斜させた状態で座7を支持するよう後リンク41を一体成形している。
【0102】
《変形例1》
以下に、本実施形態に係る各変形例について述べる。各変形例において、上記実施形態の構成要素に相当する構成要素については同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0103】
上記実施形態では、図9等に示すように、カバー部材181の端部189を密に付き合わせ得る形状に設定したが、この端部189を利用することによって、左右の背支持アーム151同士の位置決めをさらに確実に行わせる事が可能である。
【0104】
すなわち図26に示すように、一方のカバー部材181の端部189からさらに先端側に延出させた弾性爪189aを一体的に形成するとともに、他方のカバー部材181には前記弾性詰189aに対して弾性係合し得る爪受穴189bを設けたものとしても良い。
【0105】
このようなものであれば、左右の端部189が確実に密に付き合わされることとなるとともに、組付けの際には互いに離間することが禁止されるため、互いの位置決め精度の向上のみならず、組付け作業をさらに容易なものとすることが可能である。
【0106】
《変形例2》
また、図27に示す当該変形例2のように、一方のカバー部材181の端部189から側面視くの字状に延出させた突条189cを設けるとともに、他方のカバー部材181の端部189に、突条189cが密に嵌りながら当該突条189cを収容し得る溝穴189dを設けたものとしても良い。
【0107】
このようなものであれば、左右の端部189が互いに正確に位置決めされることとなる。また突条189cと溝穴189dは密に嵌る状態を構成するので、互いの摩擦によって組付け後は離間し難いものとなり、背支持アーム151の組付け作業が上記変形例1と同様に容易なものとなっている。
【0108】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0109】
例えば、上記実施形態では連結材の捻れ剛性を高めるために下連結材をくの字に屈曲させたものとしたが、勿論、側面視円筒状若しくは部分円状または波状に形成しても良い。すなわち側面視で湾曲または屈曲させたものであれば、種々の態様を実現することができる。また上記実施形態では背凭れの後傾に伴い座を上昇させる体重感知式のシンクロロッキング機構を備えた椅子に本発明を適用したが、勿論、オフィスにおいて多く用いられているような背凭れの後傾に伴い座を下降させるタイプのシンクロロッキング機構を有する椅子に本発明を適用しても良い。また、背支持アームがカバーする部材は上述したものの他種々の部品のカバーを兼ねて行うものであっても良い。
【0110】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、背凭れが後傾可能に構成された椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
3…支持基部
7…座
11…背凭れ
37…支軸
39…座支持突起(後リンク)
151…背支持アーム
155…背支持ブラケット
157…連結材(下連結材)
157a…屈曲部
159…前後方向延出部
161…起立部
165…端部
167軸端カバー部(軸装部)
175…ブッシュ
179a…上向面(受圧面)
181…カバー部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れが後傾可能に構成された椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、座及び背凭れを支持基部に支持させ、当該支持基部に対してそれぞれ動作可能に構成している椅子において、支持基部に回転可能に構成された背支持ブラケットに背凭れを支持する背支持アームを取付けることにより、背支持アームに取付けられた背凭れが後傾動作可能に構成された椅子が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような椅子においては、椅子自体の強度を可能な限り高く構成することが要求されている。
【0004】
そして、椅子自体の強度を高くするためには、着座者の体重や動作による荷重が掛かりやすい椅子の要所には例えば強度の高い金属製の連結材を用いることが多く行われている。このとき、例えば外見を全て樹脂による構成としたい場合など、椅子の仕様によってはこれらの金属を隠蔽するためのカバー部材を取付けることがある。
【0005】
しかしながら、このようなカバー部材の部品点数が多くなると、これらのカバー部材を組み付ける工程がそのまま組付けの際の作業効率に影響してしまい、その結果、組付けに多くの労力を要するものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−206765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した背景のもと、とくに背支持アームの組付け作業を簡素化することに着目したものであり、椅子自体の強度を担保しつつ簡単な組み付け作業を実現し得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係る椅子は後端を連結材により連結された左右の背支持ブラケットを支軸を介して支持基部に支持させ、前記支軸の前記背支持ブラケットよりも外側に突出する両端部に前記背支持ブラケットと共に回動する左右の背支持アームを支持させており、この背支持アームで背凭れを支持するようにした椅子であって、前記左右の背支持アームを前記背支持ブラケットの左右外方から取付けることで、前記支軸、背支持ブラケット及び連結材をカバーすることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、一度に複数の部材をカバーすることができるので、それぞれの部材をカバーするための部品点数を有効に削減することができ、ひいては組付け作業の工数を有効に削減することができる。また、複数の部材を一度にカバーすることにより、カバーによって生じる部品同士のつなぎ目も少なくすることができ、シンプルな見た目にも寄与し得るものとなる。
【0011】
連結材の強度を背支持アームの強度に有効に寄与させるための構成として、背支持アームが前記背凭れを後傾可能に支持する強度部材とし、連結材をカバーするカバー部材を一体に成型しているものを挙げることができる。
【0012】
また、左右の背支持アームの相対位置の位置決めと強度の担保とを併せて実現するためには、左右の背支持アームに前記カバー部材をそれぞれ設け、このカバー部材と前記連結材とを固定することが望ましい。
【0013】
カバー部材と連結材とを有効に位置決めするためには、カバー部材を断面視前向きコの字状をなしたものとし、連結材の後面をカバーすることが好ましい。
【0014】
特に、背支持アームに掛かる荷重に取付け強度が影響され難いものとし、常に強固な取付け状態を実現するためには、カバー部材を連結材の上向面に密着させた状態でこの上向面と前記カバー部材とを固定することが望ましい。
【0015】
捻れ方向の荷重に対する強度を有効に向上させるためには、連結材を側断面視屈曲させたものとすることが望ましい。
【0016】
可動部分と固定部分とをそれぞれ有効にカバーするとともに、固定部分を利用した位置決めを実現するためには、背支持アームを、支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものとすることが好ましい。
【0017】
背凭れに掛かる荷重を好適に受けるとともに、座や他の構成要素に干渉することなく背凭れを支持基部に間接的に支持させるためには、背支持アームを、前後方向に伸びる前後方向延出部と当該前後方向延出部の後端から連続して上方に伸びる起立部とを備えた側面視略くの字形状をなしたものとし、前記起立部に背凭れを支持させることが好ましい。
【0018】
そして、部品点数を有効に削減しながらシンプルな構成で背座シンクロロッキング機構を実現するためには、背支持アームに座を支持するための座支持突起を一体成形することが好ましい。
【0019】
この座支持突起が、背凭れの後傾に伴い座を上昇させるものであれば、体重感知式の背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現することができる。他方この座支持突起が背凭れの後傾に伴い座を下降させるものであれば、背凭れの後傾とともに座の後端が下降するタイプの背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現することができる。
【0020】
シンプルであり、且つ、背凭れの後傾に伴い確実に座を上昇させ得る体重感知式の背座シンクロロッキング機構を実現するための具体的な構成として座支持突起を、軸端カバー部に前向きに傾斜させて突設し前記座を支持するリンクとする態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一度に複数の部材をカバーすることができるので、組付け作業の工数を有効に削減し得る椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す前方からの斜視図。
【図2】同実施形態の張地を分解して示す前方からの斜視図。
【図3】同実施形態の張地を一部省略して示す正面。
【図4】同実施形態の張地を分解して示す左側面図。
【図5】同実施形態の張地を一部省略して示す背面図。
【図6】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図7】同実施形態の全体を一部省略して示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す前方からの斜視図。
【図9】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す分解斜視図。
【図10】同実施形態の支持基部を一部省略して分解して示す後方からの斜視図。
【図11】同実施形態の支持基部を分解して示す正面図。
【図12】同実施形態の支持基部及び座を示す左側面図。
【図13】同実施形態のロッキング機構を示す図12に相当する作用説明図。
【図14】同実施形態の座と座受を示す分解斜視図。
【図15】図5における要部を示したA−A線断面図。
【図16】図4における要部を示したB−B線断面図。
【図17】図16における要部を示したC−C線断面図。
【図18】同実施形態の背凭れ支持体と背支持部材との取付構造を示した斜視図。
【図19】同実施形態の背シェル及び背支持部材を分解して示す斜視図。
【図20】同実施形態の背シェルの正面図。
【図21】同実施形態の背支持部材の正面図。
【図22】図3における要部を示したD−D線断面図。
【図23】図3における要部を示したE−E線断面図。
【図24】図5におけるF−F線拡大断面図。
【図25】図21におけるG−G線断面図。
【図26】本実施形態の変形例1に係る要部を示す図。
【図27】同実施形態の変形例2に係る要部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図25を参照して説明する。
【0024】
この実施形態は本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。
【0025】
この椅子は、図1ないし図7に示すように、脚1と、この脚1に支持された支持基部3と、この支持基部3上に配された座受5と、この座受5に支持された座7と、前記支持基部3に回動可能に支持された背凭れ支持体9と、この背凭れ支持体9に取付けた背凭れ11と、この背凭れ11の後傾動作に伴わせて前記座受5及び座7を上動及び傾動させるロッキング機構13と、前記背凭れ支持体9に設けられた肘掛け15とを具備してなる。
【0026】
《脚の構成》
脚1は、図1ないし図7に示すように、脚ベース17と、この脚ベース17の中心部に設けられた脚支柱19を備えてなる。
【0027】
脚ベース17は、図1ないし図5及び図7に示すように、中心部に設けたハブ21から複数本の脚羽根23を放射状に突出させて設けたもので、前記脚羽根23先端にキャスタ25をそれぞれ設けている。
【0028】
前記脚支柱19は、図1ないし図5、図7及び図14に示すように、ガススプリングタイプのもので上下方向に弾性的に伸縮し、所望の位置においてロックすることができるようにした通常のものである。すなわち、この脚支柱19は前記脚ベース17のハブ21に嵌着されたガススプリング本体27と、このガススプリング本体27の上端から突出させたロッド29とを備えたもので、前記ロッド29の上端にロック解除用の操作ボタン31が突出させてある。そして、このロッド29の上端部に支持基部3を装着している。前記ロック解除用操作ボタン31は、後述する肘掛け15に設けられた昇降用の操作レバー295により操作される。
【0029】
《支持基部の構成》
支持基部3は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19のロッド29に取付けられるメインフレーム33と、このメインフレーム33に取付けられた前リンク軸35及び支軸37を具備してなるものである。前リンク軸35は、前リンク39を介して前記座受5の前端部を支持するためのものである。支軸37は、前記背凭れ支持体9を支持するとともに後リンク41を介して座受5の略中間部を支持するためのものである。
【0030】
メインフレーム33は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19におけるロッド29の上端部に嵌着されるボス部43と、このボス部43の上端側を囲う平面視半円弧状をなす後フレームメンバ45と、この後フレームメンバ45の左右の前端からそれぞれ前方に延出する一対の側フレームメンバ47と、これら側フレームメンバ47の前端部間を結合し前端に平坦な面を有する前フレームメンバ49とを備えたものである。これらボス部43、後フレームメンバ45、側フレームメンバ47、及び前フレームメンバ49は、アルミダイキャスト等により一体に成型されている。前フレームメンバ49の上面部には、前記前リンク軸35を支持する前の軸受部51が一体に設けられているとともに前記後フレームメンバ45と側フレームメンバ47との境界付近には前記支軸37を支持する後ろの軸受部53が一体に設けられている。なお、2つの軸受部51、53の軸心の床面からの高さが異なっており、前の軸受部51の方が後ろの軸受部53より高い位置に設定されている。
【0031】
そして、このメインフレーム33には、図12に示すように、背凭れ11を前方に付勢する傾動反力発生機構55が組み込まれている。
【0032】
傾動反力発生機構55は、図8ないし図13に示すように、基端部が前記支軸37に支持された左右対をなすトルク伝達用のブラケット57と、これら左右のトルク伝達用のブラケット57の先端部間に架設した可動軸59と、この可動軸59をメインフレーム33に設けたバネ受け61を足場として後方に弾性付勢するスプリング63とを具備してなる。また、符号64は、前記脚支柱19のロッド29に設けられたロック解除用の操作ボタン31を押圧するための昇降用ロック解除アームであり、図8ないし図10に示すように、符号297は、肘掛け15に設けた昇降用の操作レバー295の操作力を前記昇降用ロック解除アーム64に伝達するための昇降用のワイヤである。前記操作レバー295を操作することでワイヤ297を引くと、支軸37に外嵌された基端ボス部66が回動し、基端ボス部66を挟んでワイヤ297と反対側に一体に設けられたロック解除アーム64が下方に回動する。
【0033】
また、支持基部3は、図3ないし図6、図10及び図11に示すように、上カバー65と下カバー67とによって覆われている。
【0034】
上カバー65は、図10及び図11に示すように、支持基部3を上面側から覆うもので、支持基部3に係合するための下向きに突出した上係止爪69が設けられている。下カバー67は、支持基部3を下面側から覆うもので、支持基部3に係合するための上向きに突出した下係止爪71が設けられている。また、これら上カバー65と下カバー67とは、それら開口端縁73、75同士が突き合うように配されている。
【0035】
支持基部3のメインフレーム33の前側の外周面、換言すれば前フレームメンバ49の前端の平坦面には、図8、図10及び図11に示すように、前記上カバー65と下カバー67とを取付けるための上下共用取付部77とが設けられている。
【0036】
詳述すれば、前記支持基部3のメインフレーム33は、図8、図10及び図11に示すように、上カバー65の上係止爪69と下カバー67の下係止爪71とをそれぞれ係わり合わせるための上下共用取付部77を備えたものであり、前記上下共用取付部77が、前記上係止爪69が係わり合う係合端面79と、前記下係止爪71が係わり合う係合端面81と、前記上係止爪69の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面83と、前記下係止爪71の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面85とを備えている。
【0037】
前記上下共用取付部77は、図8、図10及び図11に示すように、メインフレーム33における前フレームメンバ49の前端の外周面87に設けられたもので、その前端の外周面87を長方形状に凹陥させたものである。この上下共用取付部77において、上辺が上カバー65の上係止爪69が係わり合う係合端面79であり、下辺が下カバー67の下係止爪71が係わり合う係合端面81である。また、上下共用取付部77において、左右両側辺が上カバー65及び下カバー67の上係止爪69及び下係止爪71に対する横ずれ防止用の係止端面83、85である。
【0038】
なお、メインフレーム33の外周における前後方向中間付近には、図8ないし図10、図12及び図13に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部89と下カバー67を取付けるための下専用取付部91とが設けられている。上カバー65には上専用取付部89に係わり合う爪93が設けられ、下カバー67には下専用取付部91に係わり合う爪95が設けられている。
【0039】
また、メインフレーム33の外周における後端には、図10に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部97と下カバー67を取付けるための下専用取付部99とが設けられている。上カバー65には上専用取付部97に係わり合う爪101が設けられ、下カバー67には下専用取付部99に係わり合う爪103が設けられている。換言すれば、メインフレーム33の後フレームメンバ45には、下専用取付部99である略水平な中央突条と、この下専用取付部99の両側に配置した一対の上専用取付部97である側突条とが設けられている。上専用取付部97は、前記下専用取付部99に対して高さを異ならせて配置されている。
【0040】
以上に加えて、上カバー65及び下カバー67の外周同士も突き合わせて嵌合するように、上下カバー65、67の開口端縁73、75には、回転軸の近傍部分を除いて溝、具体的には、上カバー65及び下カバー67の一方には嵌合凹部が外方に露出し、他方には嵌合凹部が内方に露出した互いに嵌合可能なL型溝が形成されている。これによって支持基部3の上下専用取付部89、91に係合するようにした上下カバー65、67の爪93、95を配するべく、支持基部3から一定間隔離れた位置を保ってカバーする構成をなしていても上下カバー65、67同士を確実に嵌合することができる。
【0041】
以上説明した支持基部3の前の軸受部51に前リンク軸35を介して左右の前リンク39を回動可能に取付けている。前リンク39の支持基部3への取付構造は次のようになっている。すなわち、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、左右にそれぞれ前記前リンク軸35を支持する軸受部51と、軸方向に垂直な対向する一対の平面105とを備えたものであり、前記前リンク39は、椅子本来の機能を発揮し得る使用時回動範囲(U)では前記平面105間に位置し、前記前リンク39を支持基部3に対して挿脱し得る図示しない挿脱時回動範囲では前記平面105外に位置する平面対応部分107を備えたもので、支持基部3に前リンク軸35を介して前リンク39を回動可能に支持させている。
【0042】
換言すれば、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、前リンク軸35を支持する前の軸受部51と、この軸受部51の軸方向に隣接する位置に前方及び上方に開口したリンクアーム収容部109とを備えている。リンクアーム収容部109は、前リンク軸35と直交する一対の平面105間に形成されたものである。前記前リンク39は、上端部に前連結軸111を保持する軸孔113を有するとともに基端部に前リンク軸35に外装されるボス部115を有しており、このボス部115の外周にリンクアーム117を備えている。このリンクアーム117は、前記リンクアーム収容部109に対応する平面対応部分107を有している。
【0043】
そして、前記使用時回動範囲(U)では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105間に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れることが禁止されている。一方、前記挿脱時回動範囲では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105外に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れ得るようになっている。組立状態においては、前リンク39が前記挿脱時回動範囲にまで回動できないように設定されている。組付け時には、前リンク39を後ろに寝かせて左右から、座受5の前リンク取付部121に通した前連結軸111と、メインフレーム33の前の軸受部51に通した前リンク軸35に嵌め込む。その状態で、前記前リンク39を前に倒してリンクアーム収容部109の対向する平面105間に前リンク39のリンクアーム117を嵌め込む。その後、座受5の略中間部に位置する後リンク取付部127に後連結軸123をそれぞれ嵌め込んで、左右から背支持アーム151を付けることにより、前述した組立状態となる。すなわち、ねじ等の抜け止め部品を用いることなしに、左右の前リンク39をメインフレーム33に取付けることができる。
【0044】
以上のようにしてなる支持基部3に、前リンク39及び後リンク41を介して座受5を支持させている。
【0045】
《座受の構成》
座受5は、図4ないし図6、図12、図13及び図15に示すように、アウターシェルと称し得る形態をなすもので、この実施形態においては合成樹脂により一体に成型されている。座受5の下面には、前連結軸111を介して前リンク39の回動端119を取付けるための前リンク取付部121と、後連結軸123を介して後リンク41の回動端125を取付けるための後リンク取付部127が設けられている。前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、座受5に一体に設けられている。
【0046】
座受5の上面には、縦横にマス目状にリブ126が形成され、そのリブ126の一部平行な2つのものがそのまま座受5の下方に突出するように伸びて前リンク取付部121及び後リンク取付部127を構成している。前リンク取付部121及び後リンク取付部127の左右は、貫通孔を有した側壁128、130により塞がれている。これらの側壁128、130も前記リブ126の一部を下方に延長して形成してもよい。その他のリブ126はこれらのリブ126と複数箇所でつながるように形成され、座受5自体の強度だけでなく、前リンク取付部121、後リンク取付部127の強度にも寄与するように設計されている。すなわち、前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、それぞれ前壁118、122と後壁120、124と左右の側壁128、130とを備えた中空体状のもので、前記前壁118、122、後壁120、124及び左右の側壁128、130の少なくとも1枚は、前記リブ126の一部を下方に延長することにより形成されている。
【0047】
《座の構成》
座7は、図7、図14及び図15に示すように、前記座受5の上面に取付けられたインナーシェル129と、このインナーシェル129の上に配設したクッション131と、このクッション131の外面に張設した張地133とを備えたものである。
【0048】
インナーシェル129は、図15に示すように、合成樹脂により一体に成型されたもので、図示しない爪等により、座受5に固定されている。このインナーシェル129は、前側に斜め下方になだらかに垂れ下がる前端垂れ下がり部分135を設けるとともに、前記中間部137と前記周縁部139との境界に中間部137が周縁部139よりも下方に膨出するような環状の段部141が形成されている。
【0049】
クッション131は、図14及び図15に示すように、発泡ウレタン等により作られたもので、前側に前記インナーシェル129の前端垂れ下がり部分135に沿うクッション垂れ下がり部分143を備えている。また座7の芯材であるクッション131の上面には一方向に並ぶ凹凸部、換言すれば、この実施形態では前後方向に並ぶ溝145を複数本設けている。
【0050】
張地133は、図1ないし図7、図14及び図15に示すように、クッション131及びインナーシェル129の周縁部139を覆う袋状のもので、インナーシェル129の下面側に巻き込んだ張地133の縁147は、インナーシェル129の段部141の端面に沿って配してある。この段部141及び張地133の縁147は、前記座受5により隠されるように覆われている。この張地133には、前記クッション131に形成された溝145に関連させて視覚的特徴部分が形成されている。この実施形態において視覚的特徴部分は、前記張地133にエンボス加工を施してなる線条149である。線条149は、この実施形態では前後方向に並ぶように複数本存在しており、張地133をクッション131に被せたときに平面視クッション131の溝145に上方から重なり合う位置に存在している。ただし、線条149が使用者の視覚に認識されることが重要なのであり、クッション131の溝145と張地133の線条149とは、必ずしも平面視重なり合うとは限られない。
【0051】
《背凭れ支持体の構成》
背凭れ支持体9は、図7ないし図9、図16及び図17に示すように、前記支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151と、これら左右の背支持アーム151の上端部169同士を連結する上連結材153と、前記トルク伝達用のブラケット57の基端から一体に後上方に向けて延設され前記背支持アーム151の基端部内側面に添接する左右の背支持ブラケット155と、これら左右の背支持ブラケット155の後端を連結する、本発明に係る連結材たる下連結材157とを具備してなる。
【0052】
左右の背支持アーム151は、図1ないし図9、図13、図16ないし図18に示すように、それぞれ前記支持基部3に回動可能に支持された樹脂製のものであり、支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーするものである。また、この背支持アーム151は、それ自体が一定以上の強度を有する例えばガラス繊維強化樹脂により一体成形されたもので、背支持体9自体の強度を担保する所謂強度部材として機能している。すなわち背支持アーム151は、背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、特に背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることにより互いに補強し合うことになり、背凭れ支持体9としての強度を有効に担保したものである。
【0053】
左右の背支持アーム151は、前後方向に延びる前後方向延出部159と、この前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えたものである。図示例では、前後方向延出部159と起立部161とは、側面視略くの字状をなしている。各背支持アーム151は、その基端部、すなわち前記前後方向延出部159の前端部163に、前記支持基部3に設けられた支軸37の端部165に外側から嵌め合わせるための軸端カバー部たる軸装部167を備えている。また、各背支持アーム151は、その先端部、すなわち前記起立部161の上端部169に、上連結材153を取付けるためのアーム突出部171を備えている。
【0054】
各背支持アーム151の軸装部167は、図3ないし図9及び図16に示すように、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部すなわち支軸37の端部165を嵌合させてカバーすべく内方にのみ開口させた軸穴173を備えている。具体的には、軸穴173にブッシュ175を介して前記支軸37の端部165が相対回転可能に嵌合されるようになっている。ブッシュ175は、支軸37を装着する前に背支持ブラケット155の内側面側から貫装させたものであり、このブッシュ175の内周に前記支軸37が相対回転可能に嵌入される。ブッシュ175の鍔部177は、前記背支持ブラケット155とメインフレーム33との間に位置している。このブッシュ175の外周に前記軸装部167が外嵌されており、この軸装部167によって前記支軸37の端部165がカバーされるようになっている。前記軸穴173は開口端部側が大径となるテーパー状をなしており、前記支軸37は円柱状をなしている。ブッシュ175は、前記軸穴173の内周面と前記軸37の外周面との間を埋める形状をなしている。すなわち、ブッシュ175の外周面はテーパー状をなし、内周面は各部同一断面形状をなす円柱形状をなしている。
【0055】
なお、前記軸装部167の外周には、図3ないし図9、図16及び図17に示すように、本発明に係る座支持突起たる後リンク41が一体に設けられている。つまり本発明では、背支持アームに座7を座受5を介して支持させることによって、後述するように背凭れ11及び座5を共に動作させる後述するロッキング機構13の一部を担わせている。背凭れ11を起立させた状態で、前記軸装部167の外周から斜め前方に傾斜させてこの後リンク41を設けることにより、背凭れ11の後傾に伴い座受5を支持する先端が上昇するように構成することで、後述するような体重感知式のシンクロロッキング動作を可能としている。
【0056】
また、この軸装部167の近傍における前記左右の背支持アーム151の内側面には、前記下連結材157の片半部179をカバーする側面視前向きコの字状のカバー部材181がそれぞれ一体に突設するように成形されている。カバー部材181には、ねじ挿通孔183が設けられている。このカバー部材181の下側面である密着面181aと下連結材の受圧面179aとを密着させた図8、図16及び図17に示した状態で、このねじ挿通孔183に挿通されたねじ187を前記下連結材157に設けられたねじ孔185に螺着することにより、左右の背支持アーム151が下連結材157に取付けられる。そして図17に示すように、カバー部材を下連結材157に取付けた状態では、下連結材157の後面すなわち立壁部157bを外方から視認不能にカバーしている。
【0057】
この状態では、左右の背支持アーム151が下連結材157を介して相互に結合されるので、軸装部167が支軸37から抜け出ることがなくなる。すなわち、後端を下連結材157により連結された左右の背支持ブラケット155を支軸37を介して支持基部3に支持させ、前記支軸37の前記背支持ブラケット155よりも外側に突出する両端部165に前記背支持ブラケット155と共に回動する左右の背支持アーム151を支持させているので、前記左右の背支持アーム151を前記背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることができる。この実施形態においては、左右の背支持アーム151のカバー部材181の端部189同士が組立状態において密に突き合うようになっている。
【0058】
背支持アーム151のアーム突出部171は、図7及び図18に示すように、上連結材153の端部を取付けるためのもので、ねじ挿通孔191とこのねじ挿通孔191に連続するねじ孔を有した図示しないナットとを備えている。
【0059】
上連結材153は、図7及び図18に示すように、チャネル状をなす金属製のもので、左右の背支持アーム151のアーム突出部171間に架設した上で、前記ナットに螺着されるねじ195により前記各背支持アーム151に取付けられる。すなわち、上連結材153は、後方に開口する形状をなし、前記アーム突出部171に前側から嵌め合わせて背支持アーム151の上端部169間に架設される。
【0060】
背支持ブラケット155は、図9、図12、図13、図16及び図17に示すように、金属製のもので、前記トルク伝達用ブラケット57と一体に作られており、前記支軸37を介してメインフレーム33に回動可能に支持されている。
【0061】
下連結材157は、図9、図16及び図17に示すように、金属製のもので、その両端部が、前記背支持ブラケット155の後端に溶接により剛結されている。下連結材157は、左右片半部179が、それぞれ上面側の受圧面179aがカバー部材の密着面181aに密着した状態で背支持アーム151からの荷重を強固に受けるとともに、後端において板金を屈曲させた屈曲部157aと、この屈曲部から下方に垂下させた立壁部とを有している、いわゆる側面視くの字形をなす。これにより、背支持ブラケット155に溶接された状態での捻れ方向の外力に対する剛性を有効に向上させている。
【0062】
この下連結材157は、背支持ブラケット155と協働して合成樹脂製の背支持アーム151の骨格的な機能を有している。また、左右から嵌め付けられる背支持アーム151が左右に離脱するのを防止するための土台としての機能も有している。さらに、下連結材157は、背凭れ11に作用する後傾方向の荷重を背支持アーム151を介して受け止め、その荷重を背支持ブラケット155を介して傾動反力発生機構55のトルク伝達用のブラケット57に伝える機能をも有している。
【0063】
以上のようにしてなる背凭れ支持体9に背凭れ11を支持させてなる。
【0064】
《背凭れの構成》
背凭れ11は、図1ないし図7に示すように、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有した樹脂製の背シェル205と、この背シェル205の頂部201よりも後方に位置する先端縁207を支持する背支持部材209と、前記背シェル205の表面側に添設された張地206とを具備してなる。
【0065】
背シェル205は、図2ないし図7、図19、図20、図22ないし図24に示すように、背凭れ支持体9に支持された樹脂製のものであり、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有したものである。すなわち、この背シェル205は、上部領域211に上下方向に伸びる複数の帯状部材213が左右に並び、それら帯状部材213間に前記開口部203が形成されている。また、背シェル205は、正面視において、着座者の腰部に対応する部分、すなわち腰部対応部分215が左右幅が広く、上に行くほど漸次幅狭となる形状をなしている。
【0066】
上部領域211は、図2ないし図7、図19、図20、図22、図24に示すように、着座者の背中を受ける前面部分217と、この前面部分217の上縁に連続して設けられ頂部201において略水平になるまで湾曲した上湾曲部分219と、この上湾曲部分219の後縁に連続して設けられ下方に湾曲して垂れ下がる背面部分221とを備えている。そして、背面部分221の先端縁207には、下方に開口する溝223が形成されている。
【0067】
この溝223は、前記背支持部材209を嵌合させるための主嵌入部225と、この主嵌入部225に背支持部材209を嵌合させた状態で背支持部材209の背面側に開口する副嵌入部227とを備えたものである。すなわち、背シェル205の先端縁207に設けられた溝223は、主嵌入部225と副嵌入部227を連続的に形成した段付き溝状のものであり、この主嵌入部225に背支持部材209の後述する上取付部251を挿入すると、前記副嵌入部227のみが外方に開口して残ることとなる。この副嵌入部227は、後述する側縁溝235と連続しており、これら副嵌入部227及び側縁溝235を用いて張地206を取り付けることにより、背シェル205の前面から上部背面側に向かって張地206でカバーできるようになっている。なお、背面部分221の帯状部材213には、弾性変形調整用のリブ228が形成されている。
【0068】
また、背シェル205の下部領域229は、図2ないし図7、図19、図20及び図23に示すように、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した凹型をなしている。この下部領域229には、前記帯状部材213に連続した突条231が形成されており、隣接する突条231間に前記開口部203に連続した薄肉部233が形成されている。背シェル205の下部領域229は、着座者の腰部に対応する部分215を側面視前方に隆起させており、平面視中央が凹むように湾曲させている。
【0069】
なお、背シェル205は、図1、図2、図4、図6、図19、図22及び図23に示すように、左右両側縁にそれぞれ外方に開口した側縁溝235を有しており、これら側縁溝235と前記溝223における副嵌入部227とが連続している。また、前記背シェル205の下端には、前記側縁溝235に連続する下縁溝237が設けられている。
【0070】
この背シェル205は、図1ないし図6に示すように、その下部239が前記背支持アーム151の前面に取り付けられるとともに、その上部243が前記背支持部材209に支持される。背シェル205の下部239の取付けについて述べると、左右の背支持アーム151の起立部161の前面側には、上下に離間させて複数のナット孔204が形成されている。他方、背シェル205の下部239の左右両側部には、これらナット孔204に各々対応したビス挿通孔が設けられている。したがって、取付け用のビス241を前記ビス挿通孔に前方から挿し通した上、前記ナット孔204に螺合緊締することにより、背シェル205の下部239の左右両側部を左右の背支持アーム151の起立部161の前面に固定することができる。ビス241は、張地206を張り設けた際に、覆い隠される。
【0071】
背支持部材209は、図1、図2、図4ないし図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、前記背シェル205の裏面に左右及び下方に開放された空間245を形成するように対面配置された板状のものであり、前記背凭れ支持体9に支持され前記背シェル205の前後方向へのたわみを制御するものである。背支持部材209は、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した前方から見て凹型をなし前記背シェル205の上部領域211の前面部分217及び下部領域229の幅寸法よりも小さな幅寸法を有した支持部材本体247と、この支持部材本体247の下端に設けられ前記上連結材153に取付けられる下取付部249と、前記支持部材本体247の上端に設けられ前記溝223の主嵌入部225に嵌合する上取付部251と、この上取付部251、前記支持部材本体247及び下取付部249に亘って形成されたリブ253とを有している。なお、背支持部材の左右両端縁は、中間部より厚くなっており、ここが周辺補強材として機能分担している。
【0072】
支持部材本体247は、図4ないし図7、図18、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、板状のもので、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した湾曲形状をなしており、上取付部251の下側に屈曲部255が形成されている。この屈曲部255は、該屈曲部255の上側が下側に対して前方に傾斜するような形状をなしている。換言すれば、この屈曲部255は、側面視くの字状に屈曲している。
【0073】
上取付部251は、図4ないし図7、図19、図21及び図24に示すように、前記主嵌入部225に密に嵌合し得る厚み寸法を有しているもので、嵌合状態においてねじ263を用いて背シェル205に取付けられる。すなわち、この上取付部251は、支持部材本体247の上端から上方に延出された板状のもので、その前面に前記リブ253の上端部が位置している。この上取付部251の前面において、隣接するリブ253間に板ナット257を配した上で、その上端部を溝223の主嵌入部225に嵌合させることによって、前記板ナット257を位置決め保持することができるようになっている。そして、この板ナット257のねじ孔259に背シェル205のねじ孔261を通して背面側から挿通させたねじ263を螺着することによって、この背支持部材209を前記背シェル205に取付けることができるようになっている。この状態では、前記板ナット257が、前記背シェル205及び前記背支持部材209によって隠されている。
【0074】
下取付部249は、図4ないし図7、図19、図21及び図25に示すように、前記支持部材本体247の下端から下方に連続して延出する後壁265と、この後壁265の上端から前方に延出し前記中間に位置するリブ253を相互に連結する天壁267と、この天壁267の前縁から下方に垂下させた前壁269とを備えたもので、前記上連結材153に上側から嵌合し得るように下方に開放された形状をなしている。前記下取付部249の前壁269には、背支持部材209を前記上連結材153に取付けるためのねじ271を挿通させるためのねじ挿通孔273が形成されている。
【0075】
リブ253は、図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、上下方向に亘って伸びるもので、背支持部材209の前面に複数枚設けられている。これらのリブ253は、上側に向かって漸次突出寸法が小さくなるような形状をなしている。また、これらのリブ253は、左右に略一定の間隔をあけて配されている。なお、左右両側に位置するリブ275は、支持部材本体247の下端においてとぎれており、下取付部249まで延出しておらず、この左右両側に位置するリブ275の下方には、前記天壁267及び前壁269は設けられていない。一方、中間に位置するリブ277は、下取付部249の前壁269の前面にまで延出している。なお、左右両側に位置するリブ275の突出寸法は、中間に位置するリブ277の突出寸法に比べて小さくなるように設定されている。また、背支持部材209の下方において、左右両側に位置するリブ275の厚み寸法は、中間に位置するリブ277の厚み寸法に比べて大きくしてある。具体的には、中間に位置するリブ277よりも上下方向の長さの短い左右両側に位置するリブ275は、下方において厚み寸法を約6ミリメートルとしており、一方中間に位置するリブ277は下方において厚み寸法を約4ミリメートルとしている。そのため、背支持部材209を背面側から見た際に、左右両側には縦方向に延びるフレームが存在するように見える。
【0076】
張地206は、図1ないし図7、図22ないし図24に示すように、通気性及び透光性を有した布材を主体に構成されたもので、背シェル205のほぼ全域を覆い隠し得る寸法を有したほぼ長方形状をなしており、端部279を背シェル205の外周縁に止着している。詳述すれば、前記張地206の下端部281を前記背シェル205の下縁溝237に押し込んで止着するとともに、左右両側の端部283を前記背シェル205の側縁溝235に押し込んで止着している。また、張地206の上部285を背シェル205の上湾曲部分219及び背面部分221の外面に被せ、その端部279を前記溝223の副嵌入部227に押し込んで止着している。具体的には、前記張地206の端部全周縁には、図示しない押し込み材が縫製されており、この押し込み材とともに前記張地206の端部279、下端部281、及び左右両側の端部283を、背シェル205の溝223の副嵌入部227、下縁溝237、及び側縁溝235にそれぞれ取付けるようにしている。なお、張地206を背シェル205に取付けた状態で、前記背シェル205と背支持部材209とを結合するねじ263の頭をカバーするようになっている。
【0077】
以上説明したような背凭れ11は、背面視において前記背シェル205の両側縁が、前記背支持部材209の両側縁よりも外側にはみ出した状態で視認可能となっている。また、斜め後方からの視線において、前記張地206の裏側が、背シェル205の開口部203を介して視認可能であり、斜め前方からの視線において、前記背支持部材209のリブ253が視認可能である。
【0078】
以上のようにしてなる背凭れ11と前記座7とをロッキング機構13により連動させるようにしている。
【0079】
《ロッキング機構の構成》
このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ上動させるようにした体重感知式のものである。
【0080】
詳述すれば、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、前側に前リンク軸35を保持するとともに後側に支軸37を保持する支持基部3と、下端部を前記前リンク軸35を介して前記支持基部3に回動可能に支持させた前リンク39と、下端部を前記支軸37に支持された背支持アーム151の軸装部167に一体化させてなる後リンク41と、前リンク取付部121を前連結軸111を介して前記前リンク39の回動端119に連結するとともに後リンク取付部127を後連結軸123を介して後リンク41の回動端125に連結してなる座受5とを主体に構成されたものである。
【0081】
すなわち、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、座7を支持する座受5を同一方向に傾斜する前リンク39と後リンク41とによって支持基部3に支持させ、その支持基部3に支持された背支持アーム151の後傾動作に伴わせて、前記前リンク39及び後リンク41を起立方向に回動させて前記座受5を上方に持ち上げるように構成した体重感知式のものであり、前記背凭れ11の後傾時に、前記座7の前部を座7の後部に比べてより多く持ち上げるように構成されたものである。すなわち、通常の背凭れ及び座のシンクロロッキング機構では、背凭れの後傾動作に伴わせて座を下方側にのみ傾動させるものであるが、本実施形態に示すような体重感知式のロッキング機構13は、通常のロッキング機構とは異なり、図13に二点鎖線で示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ着座者の荷重に抗して座7を持ち上げるように構成している。
【0082】
具体的に説明すれば、図13に示すように、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39の前傾度合いが後リンク41の前傾度合いよりも大きくなるように設定されている。換言すれば、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39における水平線に対する傾斜角度αが、後リンク41における水平線に対する傾斜角度βよりも小さく設定されている。また、前記前リンク39の支持基部3に対する回転中心を、前記後リンク41の支持基部3に対する回転中心よりも高い位置に設定している。換言すれば、前記前リンク軸35の軸心を前記支軸37の軸心よりも距離h分高い位置に設定している。前記前リンク39の有効長さ寸法、すなわち前記前リンク軸35と前記前連結軸111との軸心間距離L1と、前記後リンク41の有効長さ寸法、すなわち後リンク軸である前記支軸37と前記後連結軸123との軸心間距離L2とは略同じ距離に設定されている。また、前記背支持アーム151が、前記支持基部3における脚支柱19よりも前側の部位に枢支されている。換言すれば、前記背支持アーム151の軸装部167が、側面視において前記脚支柱19よりも前側に位置する支軸37に支持されている。
【0083】
前リンク39の前傾度合いを後リンク41の前傾度合いよりも大きくしている点は、後傾時に座7の前側を後側よりも相対的に大きく持ち上げることを目的としたもので、前リンク39と後リンク41との前傾度合いを相互に大きく異ならせることにより、後傾時の座7の前側の持ち上がりを大きく設定することが可能になる。つまり、前リンク39は座7の前部つまり座面7aの前部7a1を上方に持ち上げる動作が多く、後リンク41は座7を後方に移動させる動作が中心となる。これによって、座面7a1は前部7aを多く持ち上げながら座面7aの後部7a2は後方移動し、後傾する背凭れ11に追従するように後方に移動していくこととなる。その結果、座面7aを相対的に後傾させることで座7の後端部と背凭れ11の下端部との相対的な位置関係の変化が有効に抑えられたものとなっている。
【0084】
前リンク39と後リンク41の回転中心位置を上下方向に異ならせる点は、主に背起立時の座7の水平度合いを調整することを目的としたものであり、前述した前後リンク39、41の前傾度合い差と組み合わせることにより、背凭れ11起立時の座7の姿勢と背凭れ11後傾時の座7の姿勢を共に最適な状態に設定している。前リンク39の有効長さ寸法L1と後リンク41の有効長さ寸法L2とを略同寸法とすることにより、前記設定をより適切なものにすることができる。
【0085】
なお、一般に前記背支持アームが、前記支持基部における脚支柱よりも前側の部位に枢支されている椅子においては、背凭れ後傾時に背凭れが下方に沈みこむ傾向にあるため、背凭れ後傾時に座全体が平均的に上方に持ち上がるようにした通常の体重感知式ロッキング機構を採用した場合には大きな違和感、より具体的には、着座者の予想に反して、座の後側部分を含む座全体が上方に持ち上がる結果、着座者の腰部近傍に、背凭れの沈み込み動作とこの沈み込み動作と相反する座の持ち上がり動作とが同時に発生することによって与えられる違和感が発生するが、本実施形態の構成によればその違和感が緩和されるものとなる。すなわち、本実施形態のものは体重感知式ではあるが背凭れ11後傾時にも座7の後側が大きく持ち上がることがないので大きな違和感を与えにくいものとなる。
【0086】
また本実施形態では、この後リンク41は背支持アーム151の回動中心である支軸37を中心に、背支持アーム151及びトルク伝達用のブラケット57とともに一体的に回動するものとしている。これにより、背凭れ11の後傾動作に伴う座7の連動動作のみならず、後リンク41を介した支持基部3による座7の正確な位置決めを併せて実現している。さらに本実施形態では、背凭れ11の回動範囲を20度に設定しているとともに、背凭れ11を最大限後傾させた状態における座面7aのなす角度は、背凭れ11起立時に比べて4度後傾するように設定している。すなわち本実施形態では、主に後リンク41による背凭れ11後傾時の座受5の略中央部の持ち上げによって起こる座面7aの後部7a2が持ち上がる寸法γ2よりも、前リンク39による背凭れ11後傾時の座面7aの前部7a1が持ち上がる寸法γ1をより大きく設定する結果、背凭れ11の最大後傾時の座面7aの角度を背凭れ11起立時よりも4度後傾するようにしている。加えて本実施形態では、後リンク41を座受5の前後方向における略中央部に接続しているため、背凭れ11の後傾時前後リンク39、41共に座受5を持ち上げるような構成にしても、前リンク39が後リンク41よりも多く座受5を持ち上げるので、相対的に座受5の後端部は前端部よりも下がるように設定でき、座受5の前端部が上昇した際に座受5の後端部の高さ位置を、背凭れ11の起立時と後傾時で殆ど変わらないようにしている。
【0087】
《肘掛けの構成》
肘掛け15は、図1ないし図7及び図18に示すように、前記背凭れ支持体9の背支持アーム151における上端部前面から一体に前方に突出させた肘支持部287と、この肘支持部287の上に設けた肘当て289とを具備してなる。
【0088】
肘支持部287は、図3ないし図6及び図18に示すように、上方に開放した有底舟形をなしている。一方の肘支持部287、本実施形態では着座者から見て右側の肘支持部287の前端部位の底壁291には、貫通した窓293を形成しており、その窓293を介して下方に操作レバー295を突出させている。操作レバー295は、脚支柱のロック解除用の操作ボタン31を操作するためのものである。この操作レバー295と前記操作ボタン31との間はワイヤ297で接続しており、操作レバー295に加えられた操作力をワイヤ297によって操作ボタン31に伝達することで、操作ボタン31の操作、ひいては脚支柱のロック/ロック解除の切換えを行い得る。操作レバー295の基端部及び操作レバー295に接続するワイヤ297の一端部は、前記肘支持部287の内部に収まっている。
【0089】
肘支持部287の内部空間は、前記背支持アーム151の起立部161に形成されたワイヤ案内空間298に連通している。ワイヤ案内空間298は、上下方向に延伸し、かつ、その一部または全部が前方に開口する。ワイヤ案内空間298の下端部は、前後方向延出部159の直上まで到達しており、背シェル205の下部239を起立部161に取付けた状態で背シェル205の下端よりも若干下方に位置して前方に開通している。そのため、操作レバー295に接続されたワイヤ297は、肘支持部287の内部空間からワイヤ案内空間298の下端部へと導き出され、そこから前後方向延出部159に沿って支持基部3へと到る。
【0090】
肘当て289は、図1ないし図5、図7及び図18に示すように、前記肘支持部287に対して着脱可能である。これにより、共通の肘支持部287に取付可能な複数種類の肘当て289の中から任意のものを選んで使用することができる。本実施形態で示している肘当て289は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース299と、この取付ベース299に支持され着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体301とが一体的に設けられているものである。
【0091】
取付ベース299は、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169に蓋着される基体303と、この基体303の内方端から略水平に延出するスペーサ305とを具備してなる。基体303は、前側が図示しない係止機構により肘支持部287に掛け止めされるとともに、後側がビス307を用いて背支持アーム151の前面側に取付けられる。肘当て289のスペーサ305は、リブ275の直下の天壁267が存在していない空隙を埋めるためのもので、背支持部材209の下取付部249の天壁267にほぼ連続する板状をなしている。このスペーサ305は、前記上連結材153の上面と、背支持部材209の左右両側に位置するリブ275の下端面との間に密に介設される。
【0092】
このように、本実施形態に係る椅子は、背支持アーム151を背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーようにしているので、それぞれの部材をカバーするための部品点数を有効に削減することができ、ひいては組付け作業の工数を有効に削減し得たものとなっている。これにより、椅子を構成する部品点数の削減を実現するとともに、この椅子の組付けに係る工数並びに作業時間を、有効に削減し得たものとなっている。
【0093】
また本実施形態では、背支持アーム151が下連結材157をカバーするカバー部材181を一体に成型しているので、下連結材157の強度を背支持アーム151の強度に有効に寄与させることを実現している。
【0094】
加えて本実施形態では、左右の背支持アーム151に設けたカバー部材181と下連結材157とをそれぞれ固定することにより、左右の背支持アーム151の相対位置の位置決めと下連結材157と密着させる事による背凭れ支持体9の強度の担保とを併せて実現している。
【0095】
カバー部材181と下連結材157とを有効に位置決めするとともに、下連結材157のカバーを好適に行わせるために本実施形態では、カバー部材181を前方に開放部を有するコ字状の断面形状をなしたものとし、このカバー部材181が下連結材157の後側にある屈曲部157a、立壁部157bをカバーするようにしている。
【0096】
特に、背支持アーム151に掛かる荷重に取付け強度が影響され難いものとし、常に強固な取付け状態を実現するために本実施形態では、カバー部材181の下面に位置付けた密着面181aを下連結材157の上向面たる受圧面179aに押圧・密着させた状態でこの密着面181aと受圧面179aとを上方からねじで固定するようにしている。
【0097】
特に本実施形態では、背凭れ支持体9に対する、左右何れかに偏って掛かる、いわゆる捻れ方向の荷重に対する強度をも有効に向上させるために、屈曲部157aを設けて金属製の下連結材157を側断面視L字状に屈曲させたものとしている。すなわち、下連結材157自体の形状を捻れに強いものとすることで、ひいては背凭れ支持体9自体の捻れ剛性を有効に向上させている。
【0098】
また本実施形態では、背支持アーム151を、支持基部3から左右に突出している回転軸端部つまり支軸37の端部165をカバーする軸端カバー部たる軸装部167を設けることにより、可動部分と固定部分とをそれぞれを一つの背支持アーム151にカバーさせてさらなる部品点数の削減を実現している。
【0099】
背凭れ11に掛かる荷重を背支持アーム151が好適に受けるようにするとともに、座7や他の構成要素に背支持アーム151が干渉することなく背凭れ11を支持基部3に間接的に支持させるために本実施形態では、背支持アーム151を、前後方向に伸びる前後方向延出部159と当該前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えた側面視略くの字形状をなしたものとして、この起立部161に背凭れ11を支持させたものとしている。
【0100】
そして、部品点数を有効に削減しながらシンプルな構成で背座シンクロロッキング機構を実現するために本実施形態では、背支持アーム151に座7を支持するための座支持突起である後リンク41を一体成形したものとしている。
【0101】
特に本実施形態では、この後リンク41の動作を、背凭れ11の後傾に伴い座受5が上昇するように設けることにより、体重感知式の背座シンクロロッキング機構をシンプルな構成で実現している。具体的にはこのような構成を、背凭れ11を起立させた状態で後リンク41を前向きに傾斜させた状態で座7を支持するよう後リンク41を一体成形している。
【0102】
《変形例1》
以下に、本実施形態に係る各変形例について述べる。各変形例において、上記実施形態の構成要素に相当する構成要素については同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0103】
上記実施形態では、図9等に示すように、カバー部材181の端部189を密に付き合わせ得る形状に設定したが、この端部189を利用することによって、左右の背支持アーム151同士の位置決めをさらに確実に行わせる事が可能である。
【0104】
すなわち図26に示すように、一方のカバー部材181の端部189からさらに先端側に延出させた弾性爪189aを一体的に形成するとともに、他方のカバー部材181には前記弾性詰189aに対して弾性係合し得る爪受穴189bを設けたものとしても良い。
【0105】
このようなものであれば、左右の端部189が確実に密に付き合わされることとなるとともに、組付けの際には互いに離間することが禁止されるため、互いの位置決め精度の向上のみならず、組付け作業をさらに容易なものとすることが可能である。
【0106】
《変形例2》
また、図27に示す当該変形例2のように、一方のカバー部材181の端部189から側面視くの字状に延出させた突条189cを設けるとともに、他方のカバー部材181の端部189に、突条189cが密に嵌りながら当該突条189cを収容し得る溝穴189dを設けたものとしても良い。
【0107】
このようなものであれば、左右の端部189が互いに正確に位置決めされることとなる。また突条189cと溝穴189dは密に嵌る状態を構成するので、互いの摩擦によって組付け後は離間し難いものとなり、背支持アーム151の組付け作業が上記変形例1と同様に容易なものとなっている。
【0108】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0109】
例えば、上記実施形態では連結材の捻れ剛性を高めるために下連結材をくの字に屈曲させたものとしたが、勿論、側面視円筒状若しくは部分円状または波状に形成しても良い。すなわち側面視で湾曲または屈曲させたものであれば、種々の態様を実現することができる。また上記実施形態では背凭れの後傾に伴い座を上昇させる体重感知式のシンクロロッキング機構を備えた椅子に本発明を適用したが、勿論、オフィスにおいて多く用いられているような背凭れの後傾に伴い座を下降させるタイプのシンクロロッキング機構を有する椅子に本発明を適用しても良い。また、背支持アームがカバーする部材は上述したものの他種々の部品のカバーを兼ねて行うものであっても良い。
【0110】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、背凭れが後傾可能に構成された椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
3…支持基部
7…座
11…背凭れ
37…支軸
39…座支持突起(後リンク)
151…背支持アーム
155…背支持ブラケット
157…連結材(下連結材)
157a…屈曲部
159…前後方向延出部
161…起立部
165…端部
167軸端カバー部(軸装部)
175…ブッシュ
179a…上向面(受圧面)
181…カバー部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端を連結材により連結された左右の背支持ブラケットを支軸を介して支持基部に支持させ、前記支軸の前記背支持ブラケットよりも外側に突出する両端部に前記背支持ブラケットと共に回動する左右の背支持アームを支持させており、この背支持アームで背凭れを支持するようにした椅子であって、
前記左右の背支持アームを前記背支持ブラケットの左右外方から取付けることで、前記支軸、背支持ブラケット及び連結材をカバーすることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背支持アームが前記背凭れを後傾可能に支持する強度部材であり、前記連結材をカバーするカバー部材を一体に成型している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記左右の背支持アームが前記カバー部材をそれぞれ有し、このカバー部材と前記連結材とを固定している請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記カバー部材が断面視前向きコの字状をなし、前記連結材の後面をカバーしている請求項2または3記載の椅子。
【請求項5】
前記カバー部材が前記連結材の上向面に密着した状態で当該上向面と前記カバー部材とを固定しているものである請求項2、3または4記載の椅子。
【請求項6】
前記連結材が側断面視屈曲したものである請求項1、2、3、4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記背支持アームが、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものである請求項1、2、3、4、5または6記載の椅子。
【請求項8】
前記支持アームが、前後方向に伸びる前後方向延出部と当該前後方向延出部の後端から連続して上方に伸びる起立部とを備えた側面視略くの字形状をなしたものであり、前記起立部に背凭れを支持させている請求項1、2、3、4、5、6または7記載の椅子。
【請求項9】
前記背支持アームが前記座を支持するための座支持突起を一体成形している請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の椅子。
【請求項10】
前記座支持突起が、前記背凭れの後傾に伴い上昇するものである請求項9記載の椅子。
【請求項11】
前記背支持アームが、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものであり、
前記座支持突起が、前記軸端カバー部に前向きに傾斜させて突設し前記座を支持するリンクである請求項10記載の椅子。
【請求項1】
後端を連結材により連結された左右の背支持ブラケットを支軸を介して支持基部に支持させ、前記支軸の前記背支持ブラケットよりも外側に突出する両端部に前記背支持ブラケットと共に回動する左右の背支持アームを支持させており、この背支持アームで背凭れを支持するようにした椅子であって、
前記左右の背支持アームを前記背支持ブラケットの左右外方から取付けることで、前記支軸、背支持ブラケット及び連結材をカバーすることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背支持アームが前記背凭れを後傾可能に支持する強度部材であり、前記連結材をカバーするカバー部材を一体に成型している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記左右の背支持アームが前記カバー部材をそれぞれ有し、このカバー部材と前記連結材とを固定している請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記カバー部材が断面視前向きコの字状をなし、前記連結材の後面をカバーしている請求項2または3記載の椅子。
【請求項5】
前記カバー部材が前記連結材の上向面に密着した状態で当該上向面と前記カバー部材とを固定しているものである請求項2、3または4記載の椅子。
【請求項6】
前記連結材が側断面視屈曲したものである請求項1、2、3、4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記背支持アームが、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものである請求項1、2、3、4、5または6記載の椅子。
【請求項8】
前記支持アームが、前後方向に伸びる前後方向延出部と当該前後方向延出部の後端から連続して上方に伸びる起立部とを備えた側面視略くの字形状をなしたものであり、前記起立部に背凭れを支持させている請求項1、2、3、4、5、6または7記載の椅子。
【請求項9】
前記背支持アームが前記座を支持するための座支持突起を一体成形している請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の椅子。
【請求項10】
前記座支持突起が、前記背凭れの後傾に伴い上昇するものである請求項9記載の椅子。
【請求項11】
前記背支持アームが、前記支持基部から左右に突出している回転軸端部をカバーする軸端カバー部を有するものであり、
前記座支持突起が、前記軸端カバー部に前向きに傾斜させて突設し前記座を支持するリンクである請求項10記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−10939(P2012−10939A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149994(P2010−149994)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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