説明

植木鉢セット

【課題】鉢植えで植物を育てるための植木鉢セットであり、植物の生育段階に応じて過不足のない的確な肥料を植物に与えることができ、また、植え替えが不要で植物にダメージを与えないばかりか、植物に肥料を良好に吸収させることができる植木鉢セットを提供する。
【解決手段】カップ状に形成されていると共に夫々の内部空間が互いに連通可能に連設される複数の鉢体20を備え、前記各鉢体20には、含有する肥料が異なる栽培材30が充填されている。また、前記各鉢体20は、互いに上下方向に連設されるものである。また、前記各鉢体20の底面には、他の鉢体20との連通部が設けられており、最下の鉢体20のさらに下に配置され、変形しないように前記連通部を受ける連通部受け42を有する基台40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢セットに関するものであり、詳しくは、カップ状に形成されていると共に互いに連設される複数の鉢体を備えた植木鉢セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の成長には肥料が必要であり、植物を育てる際においては、種蒔き時、発芽時、茎や葉の成長時、開花時、結実時等、植物の成長段階に応じて適宜の肥料を投入することが一般的になされている。また、植物を鉢植えで育てる場合には、小さな植木鉢や苗床に種を蒔いて発芽させ、ある程度成長させた後に、大きな植木鉢に植え替えることも一般的になされている。
【0003】
上記事項は、文献を挙げて例示するまでもない一般的な事項である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、植物に必要な肥料の成分は、発芽時や茎の成長時等、その植物の成長段階によって異なるのであるが、市販されている一般的な肥料は、肥料の各種の成分が予め一定の比率で調整されたものである。よって、植物の成長段階に応じて追肥する場合に、肥料に無用な成分が含まれていたり、ある種の成分が多過ぎることがあり、資源の無駄使いとなることがある。また、資源の無駄使いばかりでなく、無用な成分や多過ぎる成分によって、例えば茎の成長ばかりが促進されて葉や花の成長が阻害される等、植物の良好な成長に支障をきたすこともある。
【0005】
一方、鉢植えで植物を育てる場合には、植え替えによって根を痛ませる等、植物にダメージを与えることがある。また、植物の成長段階に応じて植木鉢に充填された土の上から肥料を投入しても、土全体に肥料が行き渡らず、植物が肥料を良好に吸収できないこともある。
【0006】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、鉢植えで植物を育てるための植木鉢セットであり、植物の成長段階に応じて成分に過不足のない的確な肥料を植物に与えることができ、また、植え替えが不要で植物にダメージを与えないばかりか、植物に肥料を良好に吸収させることができる植木鉢セットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「カップ状に形成されていると共に夫々の内部空間が互いに連通可能に連設される複数の鉢体を備え、
前記各鉢体には、含有する肥料が異なる栽培材が充填されている
ことを特徴とする植木鉢セット」
である。
【0008】
ここで、「栽培材」は、腐葉土に鹿沼土や赤玉土等を混合した培養土、山土や川砂等の単種の土壌、脱脂綿、不織布、スポンジ等、植物を根付かせるための基材の全般を示すものである。
【0009】
また、「肥料が異なる」とは、肥料としての成分が異なること、複数の成分によって肥料が構成されている場合において各成分の配合比率が異なること、栽培材に対する肥料の量(栽培材の単位重量部に対する肥料の重量部)が異なること等のうち、少なくともいずれか一つが異なることを示すものである。
【0010】
なお、肥料の成分としては、窒素、リン酸、カリウムといった肥料の三大成分の他、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素等、微量ではあるが植物の生育に必須な必須成分や、ナトリウム、ケイ素等、植物の生育を助長させる助長成分を例示することができる。
【0011】
上記構成の植木鉢セットでは、含有する肥料が異なる栽培材が充填された複数の鉢体を備え、各鉢体は、互いに連設されるものであるため、植物の成長に応じて、植物が植えられている鉢体に肥料が異なる他の鉢体を接続することで、成分に過不足のない的確な肥料を植物に提供することができる。
【0012】
また、植物の成長に伴って他の鉢体を接続して追加すれば、栽培材全体の量を増やすことができることから、植物を植え替える必要がなく、植物に植え替えによるダメージを与えることがない。
【0013】
さらに、各鉢体には、そもそも肥料を含有する栽培材が充填されており、各鉢体の栽培材は、当然、全体に肥料が混入されたものであることから、植物が植えられている鉢体に新たな鉢体を接続することで、全体に肥料が行き渡った新たな栽培材を追加することができ、植物に肥料を良好に吸収させることができる。
【0014】
上述した手段において、
「前記各鉢体は、互いに上下方向に連設されるものである
ことを特徴とする植木鉢セット」
とするのが好適である。
【0015】
上記構成の植木鉢セットでは、上の鉢体に下の鉢体を接続する際に、上の鉢体の栽培材と下の鉢体の栽培材との間に空気が混入する。また、上の鉢体の栽培材が下の鉢体の栽培材の上に完全に落下しない場合には、上下の栽培材の間に空気層が形成される。よって、鉢体を上下に連設することで、植物に根腐れを生じ難くすることができる。
【0016】
上述した手段において、
「前記各鉢体の底面には、放射状のスリットにより分断された複数の舌片を有し、各舌片が下方に変形することで鉢体の内部空間が下に配置された他の鉢体の内部空間に連通する連通部が設けられており、
最下の鉢体のさらに下に配置され、前記各舌片が下方に変形しないように前記連通部を受ける連通部受けを有する基台を備える
ことを特徴とする植木鉢セット」
とするのが好適である。
【0017】
上記構成では、水を含んだ栽培材の自重や、植物の根が下方に伸長することで、連通部の舌片が下方に変形して、上の鉢体の内部空間が下の鉢体の内部空間と連通するのであるが、最下の鉢体の連通部が無用に変形してしまうと、最下の鉢体の底から栽培材がこぼれ落ちてしまう。
【0018】
これに対して、上記構成の如く、最下の鉢体のさらに下に基台を配置し、この基台によって最下の鉢体の連通部の舌片が下方に変形しないように受けることとすれば、最下の鉢体の底から栽培材がこぼれ落ちることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述した通り、本発明によれば、鉢植えで植物を育てるための植木鉢セットであり、植物の成長段階に応じて成分に過不足のない的確な肥料を植物に与えることができ、また、植え替えが不要で植物にダメージを与えないばかりか、植物に肥料を良好に吸収させることができる植木鉢セットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る植木鉢セットの実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本例の植木鉢セット10は、カップ状に形成された複数の鉢体20を備えている。そして、各鉢体20には、夫々、含有する肥料が異なる栽培材30が充填されている。ここで、本例においては、栽培材30として、腐葉土に鹿沼土または赤玉土を適宜比率で配合した培養土を用いている。なお、栽培材30としては、培養土に限らず、不織布やスポンジ等、天然の土や砂を用いない人工的に形成されたものであってもよい。
【0022】
また、各鉢体20の栽培材30には、異なる肥料が混入されている。ここで、本例では、鉢体20が発芽用、茎や葉の成長用、開花用、結実用といったように、植物の適宜の成長段階に応じて使用するものとなっており、夫々の鉢体20の栽培材30には、植物の種々の成長段階において過不足のない成分の肥料が混入されている。なお、本例においては、植物の成長に必須なカルシウムやマグネシウム等の微量成分、及び、植物の成長を助長するナトリウムやケイ素等の助長成分については、配合する成分の種類、配合比率及び混入量が同じなのであるが、肥料の三大要素である窒素、リン酸及びカリウムの配合比率を異ならせることで、植物の成長段階に応じた肥料としている。
【0023】
ところで、本例の植木鉢セット10は、各鉢体20が、夫々の内部空間が互いに連通するように上下方向に連設されるものとなっており、最下の鉢体20のさらに下方に配置されて、上下方向に連設された鉢体20が不用意に倒れないように安定させる基台40を備えている。
【0024】
次に、鉢体20及び基台40の詳細な構造について、図1〜3に基づいて詳細に説明する。
【0025】
各鉢体20は、カップ状、より具体的には有底の円筒状に形成されており、上部に、上方の他の鉢体20と接続される上接続部26を備え、下部に、下方の他の鉢体20と接続される下接続部27を備えている。ここで、上接続部26及び下接続部27は、互いに挿嵌可能な形状となっており、上の鉢体20の下接続部27に、下の鉢体20の上接続部26を嵌入することで、上下の各鉢体20が上下方向に接続される。なお、本例では、図示は省略するが、螺合、凹凸の嵌合等、適宜の接続手段によって、上下の各鉢体20が不用意に外れないように接続される。
【0026】
鉢体20の底は、中央に向かって凹む逆円錐状に形成されている。また、鉢体20の底には、中心から放射状に延びる複数のスリット23が設けられており、このスリット23によって、片持ち状に支持された三角形状の複数の舌片24が形成され、各舌片24によって、上の鉢体20の内部空間を下に接続された鉢体20の内部空間に連通させる連通部25が構成されている。また、鉢体20は、全体が弾性変形し易い樹脂によって形成されており、各舌片24は、鉢体20の底において、他の部分よりも薄く形成されている。これにより、各舌片24は、水を含んだ栽培材30の自重や、植物の根の伸長によって下方に容易に変形可能となっている。
【0027】
鉢体20の底よりも下部の周壁には、多数の貫通孔28が穿設されており、鉢体20の下部から鉢体20の底へと、空気が流入可能となっている。これにより、鉢体20の底部分の栽培材30に新鮮な吸気を与えることができ、鉢体20に植えた植物が根腐れし難くなる。
【0028】
また、各鉢体20には、栽培材30が予め充填されているのであるが、上部の開口から栽培材30が飛び出したり、底の連通部25から栽培材30がこぼれ落ちないように、上部の開口及び底面は、鉢体20の使用に際して取外すことのできるカバー29によって覆われている。ここで、栽培材30が密閉されると腐敗する虞があるものである場合には、通気性を有するシート等によってカバー29を形成することで、栽培材30が腐敗することを防止することができる。一方、栽培材30が適度な水分を含んだものである場合や、外気に長期間さらされると変質する虞があるものである場合には、通気性を有しないシート等によってカバー29を形成し、このカバー29によって鉢体20の内部空間を密閉することで、栽培材30に含まれた水分が蒸発したり、栽培材30が変質したりすることを防止することができる。
【0029】
基台40は、樹脂等によって、鉢体20よりも大径の円盤状に形成されており、上面に、鉢体20の下接続部27に接続される接続部41を備えている。なお、この基台40の接続部41は、鉢体20の上接続部26と同様に構成されている。これにより、鉢体20の下方に接続した基台40が鉢体20から不用意に外れないようにしてある。
【0030】
また、基台40の中央部分には、鉢体20の底の連通部25を受ける連通部受け42が凹設されている。鉢体20に基台40を接続した状態では、鉢体20の連通部25の各舌片24の下面が連通部受け42に当接し、各舌片24が下方に変形することが防止される。よって、鉢体20の底に基台40を取付けることで、鉢体20内の栽培材30が連通部25からこぼれ落ちることを防止することができる。なお、図示は省略するが、基台40の周縁に上方に立ち上がる周壁を設けて、基台40を皿状のものとすれば、基台40を鉢体20の受け皿として兼用することができる。
【0031】
次に、この植木鉢セット10の使用態様を、図4及び図5に基づいて説明する。
【0032】
まず、発芽用の肥料を含有する栽培材30が充填された第一の鉢体21の底に基台40を取付け(図1における一点鎖線A参照)、第一の鉢体21の栽培材30に種を蒔く。そして、図4に示すように、種が発芽してある程度成長するまでは、この第一の鉢体21によって植物を育てる。
【0033】
植物がある程度成長したら、第一の鉢体21から基台40を取外し、茎や葉の成長用の肥料を含有する栽培材30が充填された第二の鉢体22を、第一の鉢体21の下に接続し、第二の鉢体22の下に基台40を取付ける(図1における一点鎖線B参照)。そして、第一の鉢体21と第二の鉢体22とによって植物を育てる。すると、図5に示すように、植物の根が伸長して、第一の鉢体21の底を突き破り(連通部25の舌片24が下方に変形)、植物の根が第二の鉢体22の栽培材30に到達し、植物は、この栽培材30の肥料を吸収して良好に成長する。また、第一の鉢体21の栽培材30と、第二の鉢体22の栽培材30との間には、適当な大きさの空気層が形成されると共に、第一の鉢体21の下部に設けられた貫通孔28を通じて、空気層に新鮮な空気が供給される。よって、植物は、根腐れを起こし難く、この点においても良好に成長する。
【0034】
なお、図示は省略するが、植物がさらに成長した場合や、開花や結実時に必要な肥料を補いたい場合には、第三の鉢体、第四の鉢体といったように、必要な肥料の鉢体を順次接続すればよい。
【0035】
以上、本発明に係る植木鉢セットの一例を説明したが、本発明に係る植木鉢セットは、上述の例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更が可能である。
【0036】
例えば、植物の種類によっては必要な肥料が異なるので、種々の肥料の鉢体を用意しておき、植物の種類に応じて必要な肥料の鉢体を連設するようにしてもよい。
【0037】
また、本例においては、複数の鉢体を夫々同一形状として、鉢体の汎用性を高めてあるが、発芽用に用いる鉢体については、それほどの深さを必要としないことから、最初に用いる発芽用の鉢体を、他の鉢体よりも底の浅い発芽専用の鉢体としてもよい。
【0038】
さらに、上記例においては、複数の鉢体を上下方向に連設する例を示したが、図6に示すように、複数の鉢体20を側方に連設するようにしてもよい。
【0039】
図6(a)に示すものは、夫々円弧状に形成された複数の鉢体20を互いに隣接するように連設する植木鉢セット10である。また、図6(b)に示すものは、小径の鉢体20の周囲に大径の他の鉢体20を連設する植木鉢セット10である。
【0040】
このような植木鉢セット10においては、鉢体20における他の鉢体20と当接する面を網状に形成したり、この面に多数の孔を設けることで、内部空間が互いに連通するように複数の鉢体20を連設することができる。
【0041】
なお、他の鉢体20と当接する面にカバーを付けておき、使用に際してカバーを取外すこととすれば、単体で使用する際や不使用の際に、充填された栽培材30が網の目や孔からこぼれ出ることを防止することができる。
【0042】
また、各鉢体20の相互の接続については、例えば高さ方向に延設されたアリ及びアリ溝のアリ嵌合等、適宜の接続手段を適用することで、接続された鉢体20が不用意に外れることを防止することができる。
【0043】
ところで、本発明の如く、肥料が異なる栽培材が充填された複数の鉢体を備えた植木鉢セットは、植物を良好に成長させるためだけではなく、他の目的で使用することができる。
【0044】
例えば、異なる肥料の鉢体の夫々に、同種の植物の種を蒔いたり苗を植えることで、肥料の違いによる植物の成長の違いを観察することができ、理科の教材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る植木鉢セットの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した植木鉢セットの断面正面図である。
【図3】図1に示した植木鉢セットの平面図である。
【図4】発芽初期の植物を育てる状態を示す断面正面図である。
【図5】成長した植物を育てる状態を示す断面正面図である。
【図6】植木鉢セットの別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10 植木鉢セット
20 鉢体
21 第一の鉢体
22 第二の鉢体
23 スリット
24 舌片
25 連通部
26 上接続部
27 下接続部
28 貫通孔
29 カバー
30 栽培材
40 基台
41 接続部
32 連通部受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状に形成されていると共に夫々の内部空間が互いに連通可能に連設される複数の鉢体を備え、
前記各鉢体には、含有する肥料が異なる栽培材が充填されている
ことを特徴とする植木鉢セット。
【請求項2】
前記各鉢体は、互いに上下方向に連設されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の植木鉢セット。
【請求項3】
前記各鉢体の底面には、放射状のスリットにより分断された複数の舌片を有し、各舌片が下方に変形することで鉢体の内部空間が下に配置された他の鉢体の内部空間に連通する連通部が設けられており、
最下の鉢体のさらに下に配置され、前記各舌片が下方に変形しないように前記連通部を受ける連通部受けを有する基台を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の植木鉢セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51232(P2010−51232A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218991(P2008−218991)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(399094844)有限会社リタッグ (3)
【Fターム(参考)】