説明

植栽容器

【課題】オーバーフロー管から排水された植栽用水が下段の植栽容器の貯水部に確実に供給され易い植栽容器を提供する。
【解決手段】給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部8と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間2とを備え、所定高さを超える植栽用水を排水するオーバーフロー管10が貯水部8に設けてあり、オーバーフロー管10の上端よりも上方に、オーバーフロー管10の軸心と交差する遮蔽板14が設けられている植栽容器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、所定高さを超える植栽用水を排水するオーバーフロー管が貯水部に設けてある植栽容器に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の植栽容器に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された植栽容器は、ポンプなどの給水手段によって植栽容器の貯水部に植栽用水を供給すれば、オーバーフロー管の上端を越えないレベルで植栽用水が貯水部に溜まり、その溜まった植栽用水に一部が浸漬されている植栽床材が植栽用水を吸い上げ、適当量の植栽用水を内部に保持するため、植栽床材に植え付けられた植物を適切に栽培することできる。
【0003】
植栽床材の吸水能力を超える量の植栽用水が供給された場合や、給水手段による植栽用水の供給速度が植栽床材の吸水速度を超える場合は、余分な植栽用水はオーバーフロー管から排水される。特に、複数の植栽容器を上下に積み重ねて用いる場合には、オーバーフロー管から排水された植栽用水は、下方に設置された植栽容器に植栽用水として供給され、最終的に積み重ねた全ての植栽容器の植栽床材が必要量の植栽用水を吸水する。また、最も下段に設置された植栽容器のオーバーフロー管から排水された植栽用水は、適当な貯水容器に回収することで、必要に応じて、次回の潅水用の植栽用水として利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45015号公報(0021段落、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記された植栽容器では、一つの植栽容器のオーバーフロー管から排水された植栽用水が、その下に配置されている植栽容器(下段の植栽容器)の貯水部を経由せず、そのまま下段の植栽容器のオーバーフロー管に進入してしまい、下段の植栽容器に植えられた植物への潅水が不十分となる虞があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による植栽容器が与える課題に鑑み、オーバーフロー管から排水された植栽用水が、下段の植栽容器の貯水部に確実に供給され易い植栽容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による植栽容器の特徴構成は、
給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、
所定高さを超える植栽用水を排水するオーバーフロー管が前記貯水部に設けてあり、
前記オーバーフロー管の上端よりも上方に、前記オーバーフロー管の軸心と交差する遮蔽板が設けられている点にある。
【0008】
上記の特徴構成による植栽容器では、植栽容器のオーバーフロー管を下方に通り抜けた植栽用水が、下方に位置する植栽容器のオーバーフロー管の開口部に向かって落下しても、その大半がオーバーフロー管の軸心と交差するように設けられた遮蔽板によって外側に撥ね返されるため、下方に位置する植栽容器の貯水部に正しく供給される。
【0009】
また、上記の特徴構成による植栽容器では、互いにオーバーフロー管の位置の異なる2種類の植栽容器を交互に積み重ねて用いる構成などに比べて、植栽容器及び植栽床材の形状を一つに統一できるので、製造コストを低く抑えることが可能となる。
さらに、オーバーフロー管の上端などに別体の遮蔽板を取り付ける構成などに比べて、植栽容器の構成部品数を少なくできる。
【0010】
また、遮蔽板のないオーバーフロー管の場合、オーバーフローする植栽用水を受け入れるオーバーフロー管の開口部が横向きに延びた平面状となるため、栽培されている植物の葉によって穴が塞がれ、排水詰まりを起こし易いという傾向があった。しかし、上記の特徴構成による植栽容器では、オーバーフロー管の上部に遮蔽版があるため、オーバーフロー管の開口部が、縦向きに延び、且つ、オーバーフロー管の外周に沿って連続的に延びた湾曲面状または多角面状となるので、開口部が栽培されている植物の葉によって完全に塞がれることなく、排水詰まりを引き起こしにくい。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、互いに横方向で隣接する植栽用空間どうしを仕切る仕切り板が設けられており、前記遮蔽板は前記仕切り板の側面から横向きに突出形成されている点にある。
【0012】
本構成であれば、遮蔽板を支持するための専用の部材をオーバーフロー管の一部から立設した構成などに比べて、十分な強度を備えた遮蔽板を簡単に実現することができる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記オーバーフロー管の上端から前記遮蔽板へと延出する接続部と、前記遮蔽板の前記接続部を除く周縁部から上向きに立設された案内壁部とが設けられている点にある。
【0014】
本構成であれば、遮蔽板の上面に達した植栽用水は、案内壁部によって接続部に導かれ、接続部からオーバーフロー管の外周面に沿って確実に貯水部に達することができる。すなわち、遮蔽板の上面に達した植栽用水が、遮蔽板の縁部を経てオーバーフロー管の内面に達したりする虞がない。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記植栽容器の上端と、前記植栽容器の上方空間を閉じる蓋部材との間に、前記蓋部材の前記植栽容器に対する前面側から後方に向かう摺動移動によって両部材どうしを連結可能な係止手段が設けられており、
植栽用水を前記蓋部材の上方から前記貯水部に供給するための上部供給管を受け入れる開口部が、前記蓋部材の後端に向けて開放されたスリット状に形成されている点にある。
【0016】
本構成であれば、蓋部材を最上段の植栽容器の上端に対して前面側から後方に向けて摺動移動させるだけで、蓋部材を植栽容器の上端に連結可能であり、蓋部材の着脱を容易にできる。しかも、蓋部材には、上部供給管を受け入れる開口部が蓋部材の後端に向けて開放されたスリット状に形成されているので、既に最上段の植栽容器の上方から貯水部に向けて上部供給管が配置された状態でも、上部供給管を取り外すことなく蓋部材の着脱を実施できる。
【0017】
本発明による植栽容器の特徴構成は、
給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、
前記貯水部の手前側から前記植栽用空間の背面側上端付近に向かって斜めに延出される目隠し板が着脱自在に設けられている点にある。
【0018】
上記の特徴構成による植栽容器では、植栽用空間の一つに植物を植え付けた植栽床材が載置されていない場合に、この植栽用空間に対して目隠し板を取り付けることで、特に植物を植え付けていない植栽床材が見えることや植栽用空間の背面と貯水部との境界部が見えることによる不足感や空白感が抑制される。
【0019】
尚、目隠し板が貯水部の手前側から植栽用空間の手間側上端付近などに向かって概して鉛直状に延出される構成では、目隠し板の下端付近から上端付近までの全体が同じ条件で周辺の光によって照らされるため、目隠し板の存在が余りにも顕著となり、植栽容器に植えられた植物の鑑賞者に対して、平板で不自然な印象を与える傾向が生じる。しかし、上記の特徴構成による植栽容器では、目隠し板が貯水部の手前側から植栽用空間の背面側上端付近に向かって斜めに延出されるので、周辺の光によって明るく照らされ易い目隠し板の下端付近から、植栽容器の前面開口部から後方に引退しているために周辺の光によって照らされ難い目隠し板の上端付近に向かって、グラデーション状の外観的変化が生じ、自然な印象を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る植栽容器を用いた植栽装置の全体を示す正面図である。
【図2】積み重ねられた複数の植栽容器を示す破断側面図である。
【図3】植栽容器を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】植栽容器を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】積み重ねられた複数の植栽容器を蓋部材と共に示す斜視図である。
【図6】左右のオーバーフロー管と遮蔽板を示す斜視図である。
【図7】遮蔽板の作用を示す破断後面図である。
【図8】上部供給管を用いた場合の蓋部材と植栽容器を示す破断側面図である。
【図9】上部供給管の下端付近を示す要部正面図である。
【図10】蓋部材の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る植栽容器は、上下に積み重ねて使用可能な植栽容器本体1(植栽容器の一例)と、最上段の植栽容器本体1の上方開口部を閉鎖可能な蓋部材30(植栽容器の一例)とを含む。植栽容器本体1は、図1に示すように、植栽用水Wを貯留可能な貯水部8を備え、貯水部8に植栽用水Wを供給する電動式などのポンプ40と協働して一つの植栽装置を構成することができる。
【0022】
(植栽容器の概略構成)
図3と図4に示すように、個々の植栽容器本体1は、合成樹脂の射出成形などで形成された横方向に長い形状を呈し、底壁3と、底壁3の後方の一辺から上方に立設される1つの長側壁4と、底壁3の左右の二辺から上方に立設される2つの短側壁5を一体的に備えることで、内部に植栽用空間2を形成している。また、底壁3の上面の一部からは、互いに横方向で隣接する複数の植栽用空間2どうしを仕切る3つの仕切り壁6が一体的に立設され、短側壁5と平行に延びている。
【0023】
したがって、図5に示すように、植栽容器本体1の上面に他の植栽容器本体1または蓋部材30を載置して取り付けると、植栽用空間2が3つの仕切り壁6によって合計4個の単位植栽用空間2aに区画され、各単位植栽用空間2aの開口部が前面に位置するように構成されている。
【0024】
図2と図3に示すように、各単位貯水部8aの底壁3は、前後方向の中間付近で概して水平に延出した中央底壁3aと、中央底壁3aの前端から各単位植栽用空間2aの開口部側に向かって次第に上方に位置するように前上がりに傾斜(傾斜角α)した前方底壁3bと、中央底壁3aの後端から長側壁4に向かって次第に上方に位置するように後ろ上がりに傾斜した後方底壁3cを有する。これらの中央底壁3a、前方底壁3b、後方底壁3c、長側壁4、短側壁5が互いに協働して、ポンプ40によって供給される植栽用水Wを貯留可能な貯水部8を形成している。
【0025】
貯水部8も仕切り壁6により合計で4個の単位貯水部8aに区画されて、各単位植栽用空間2aの下部に配置され、各仕切り壁6の下部には、各単位貯水部8aどうしを横方向で連通する連通路9が、概して矩形の切り欠き状に形成されている。
【0026】
図2と図5に示すように、植物Pは、各単位植栽用空間2aに載置されたスポンジ状などの吸水性材料からなる植栽床材Aに植え付けられる。単位植栽用空間2aに載置された植栽床材Aの後端は後方底壁3cに載置され、植栽床材Aの前端は概して前方底壁3bの前端付近に載置される。十分な大きさの根圏を確保するために、この実施形態では傾斜角αの値を約55°としているが、この数値に限定する必要はない。
【0027】
植栽床材Aは、例えば、保水性充填材(ピートモス)、ウレタンプレポリマー、ポリエステル系ポリオール、水を100:120:1:800などの割合(数値はいずれも重量部)で混合して適当な形状に成形することで調製できる。植栽床材Aの形状は特に限定されず、立方体、直方体、または、円柱状などの各種形状のものを適用できる。
【0028】
図1と図2に示すように、貯水部8の一部で、中央底壁3aと後方底壁3cとの境界付近には、所定高さを超える植栽用水Wを排水することで、貯水部8内における植栽用水Wを一定量以下に維持するためのオーバーフロー管10が上向きに突設されている。
ここでは、左右一対のオーバーフロー管10が設けられており、それらは左右の2つの仕切り壁6の一部と一体化するように、また、各仕切り壁6に対して左右に跨るように配置されているが、仕切り壁6はオーバーフロー管10の内部には通っていない。
【0029】
オーバーフロー管10の下方には、オーバーフロー管10に進入した植栽用水Wを下方に案内するための排水管11が一体的に連接されている。
他方、左右中央に位置する仕切り壁6の後方には、後述する植栽用水汲み上げ用の給水ホースH2を上向きに案内するための案内筒12が、長側壁4の内面に上下に沿って、且つ、後方底壁3aを上下に貫通する状態で一体的に設けられている。
【0030】
(連結手段)
図3と図4に示すように、複数の植栽容器本体1どうしが容易に上下に正しい位置関係で積み重ねられるように、長側壁4の下端の内側縁部からは、下段の植栽容器本体1の長側壁4の内面に係止される薄板状の凸状片4aが下向きに突出形成されている。同様に、短側壁5の下端の内側縁部からも、下段の植栽容器本体1の短側壁5の内面に係止される薄板状の凸状片5aが下向きに突出形成されている。
さらに、凸状片4a,5aの外向き面の一部には小さな係止突起18が形成されており、係入段部4b,5bの対応箇所には、係止突起18を受け入れ可能な貫通孔19が設けられている。係止突起18は上方ほど外側に張り出す傾斜案内面を有する。
【0031】
つまり、上方の植栽容器本体1の凸状片4a,5aが下方の植栽容器本体1の係入段部4b,5bに嵌入されるように植栽容器本体1を上下に積み重ね、上下方向から押付け合わせると、長側壁4及び短側壁5の一時的な弾性変形に基づいて、上方の植栽容器本体1の各係止突起18が、下方の植栽容器本体1の係入凹部19に圧入嵌合され、上下の植栽容器本体1どうしが簡単に一体化されるように設定されている。
【0032】
図1に例示するように、室内などの床面に配置したケーシング1cの上に複数段の植栽容器本体1を嵌合/連結し、各植栽容器本体1に給水するための植栽用水Wを貯留可能な植栽用水タンク1bをケーシング1cの内部に配置した形態で実施することができる。
図1に示す例では、ケーシング1cの平面視での輪郭形状を植栽容器本体1のものと共通化し、且つ、植栽用水タンク1bの内部にポンプ40を設置することで、植栽装置の全体として外観的に優れたものとしている。
【0033】
また、各植栽容器本体1の前方底壁3bは前方上寄りに向かって傾斜状に延設されているので、一段下の植栽容器本体1に設置された植物が上方に展開可能な空間が形成され、同時に、前方底壁3bの裏面が、正面から見たときに植物の背景を兼ねた天井面を構成する。
【0034】
(蓋部材)
図2と図5に示すように、最上段に配置された植栽容器本体1の上方開口部を閉じる蓋部材30は、屋根部36と、屋根部36の後方の一辺から下方に立設される1つの長側壁37と、屋根部36の左右の二辺から下方に立設される2つの短側壁38を一体的に備える。
屋根部36は、長側壁37の上端付近から前方に概して水平に延びる主屋根部36aと、主屋根部36aの前端から前方に向かって次第に高くなる傾斜状に延びた補助屋根部36bとを有する。
【0035】
図2から理解されるように、補助屋根部36bが、植栽容器本体1の前方底壁3bとほぼ同様に、前方上寄りに向かって傾斜状に延設されているので、最上段に配置された植栽容器本体1に設置された植物が上方に展開可能な空間が形成され、且つ、正面から見たときに植物の背景を兼ねた天井面を構成する。
【0036】
図2と図5に示すように、蓋部材30の下端にも、植栽容器本体1の凸状片4a,5aと基本的に同じ形状の凸状片31a,32a(係止手段の一例)が形成されており、凸状片31a,32aの外向き面の一部には係止突起33(係止手段の一例)が形成されている。しかし、蓋部材30は、植栽容器本体1どうしの連結方法とは異なり、植栽容器本体1の前方から後方に向けてスライド状に嵌め込むことで取り付けられる。そこで、蓋部材30の係止突起33には、前方ほど外側に張り出す傾斜案内面が設けられている。
【0037】
(植栽用水の主な流れ)
図1に示すように、各植栽容器本体1のオーバーフロー管10から排水された植栽用水Wは、排水管11を経て、下方に隣接する植栽容器本体1の貯水部8に供給され、最終的に最下段のオーバーフロー管10の下方に連接された排水管11に外嵌された排水ホースH3を介して植栽用水タンク1bに回収される。尚、オーバーフロー管10及び排水管11の内径は約14〜15mmとされている。
【0038】
植栽用水タンク1bに回収された植栽用水Wは、ポンプ40の出口と植栽用水タンク1bの上面に設置されたジョイントJ1とを接続する槽内ホースH1と、ジョイントJ1から各案内筒12を介して上方に案内される給水ホースH2とを介して、最上段の植栽容器本体1に供給されるという形で無駄なく使用される。給水ホースH2の先端は分岐継手J2によって左右二つに分岐されて、最上段の植栽容器本体1の左右の単位貯水部8aにほぼ均等に供給される。
【0039】
植栽床材Aは、その下部を単位貯水部8a内の植栽用水Wに浸した状態で載置されるので、各植栽床材Aが植栽用水Wを吸水しながら、植物Pの根Rに植栽用水Wを供給して植栽することができる。
また、前述したように、植栽床材Aを載置する前方底壁3bが、各単位植栽用空間2aの開口部側ほど上方に位置し開口部から遠ざかる側ほど下方に位置する傾斜角αを有する傾斜面に形成されている。
【0040】
したがって、植栽床材Aは、図2に示すように、開口部から遠ざかる側が植栽用水W内に浸漬し、開口部側が植栽用水Wに少しだけ浸漬するか、場合によっては、植栽用水Wに浸漬しない状態となる。すなわち、植物の根Rが生長して伸びようとする根圏を大きく確保することができ、かつ、その根圏に対して十分な量の植栽用水Wが供給されるため、植物の良好な生育が確保される。
【0041】
(ドレン孔の構成)
図3に示すように、オーバーフロー管10の下端近くには、植栽床材Aに必要量の水分を供給した上で貯水部8に残留した植栽用水Wを比較的短時間で排水するためのドレン孔20が設けられている。したがって、ポンプ40による貯水部8への給水が終了した時点で植栽床材Aに吸水されず貯水部8に残留した植栽用水Wが貯水部8に長く放置されることがない。その結果、植栽床材Aや植栽用水Wに害虫や黴その他の微生物が繁殖し難くなっている。
【0042】
ドレン孔20は貯水部8の底面と排水管11の内面とを連通させるように形成されている。ドレン孔20の内径は、ドレン孔20による排水能力がポンプ40の給水速度を下回るように設定されているので、ポンプ40による貯水部8への給水中は、貯水部8に10mm以上などの適当な高さで植栽用水Wが保持されるため、植栽床材Aは植栽用水Wを適切な効率で吸水し、保水した状態を現出することができる。
また、ドレン孔20の内径は、植栽用水Wに含まれる粒子状や繊維状などの異物によってドレン孔20が閉塞され難い適切な大きさを有するように設定されている。
【0043】
ドレン孔20は、オーバーフロー管10の側面に形成された一つの貫通孔状を呈し、同貫通孔はオーバーフロー管10の径方向に延びている。ドレン孔20が植栽用水Wに含まれる粒子状や繊維状などの異物によって閉塞される現象をさらに抑制する目的で、同貫通孔の下端の位置は貯水部8の実質的な底面を構成する中央底壁3aの上面から5mm高いレベルに設定されている。ここでは、ドレン孔20の内径は約3mmとされている。
【0044】
より具体的には、図6(a)と図6(b)に示すように、オーバーフロー管10を構成する円筒状部位の一部(対応する仕切り壁6よりも中央寄りで前方部位)が、概して長側壁4と平行に延出する平坦壁部10aによって構成されており、ドレン孔20は同平坦壁部10aの下端に前後向きに貫通形成される形で、貯水部8の底面と排水管11の内面とを連通させている。
【0045】
ドレン孔20の左右側方及び下方には、径方向外向きに突出した異物捕捉凸部21が設けられている。異物捕捉凸部21は、特にドレン孔20の左右側方において概して前方に突出する部分球面状を呈している。
【0046】
ドレン孔20は、鉛直方向に対して角度をなすように、ここでは概して前後水平方向に延出されているので、ドレン孔20から排出される植栽用水Wの大半は、基本的に下方に至るほど平坦壁部10aから後方向きに離間する放物線を描きながら落下し、下方に位置する植栽容器本体1のオーバーフロー管10以外の貯水部8または植栽床材Aに到達する。
【0047】
尚、中央底壁3aの後端と後方底壁3cの前端とは、概して長側壁4と平行に延びた中間縦壁3dによって接続されており、ドレン孔20は上下方向に関してこの中間縦壁3dの中間付近のレベルに配置されている。
【0048】
(遮蔽板の構成)
図6(a)と図6(b)に示すように、オーバーフロー管10の上端よりも上方には、オーバーフロー管10の上端またはドレン孔20からオーバーフロー管10内に進入し、排水管11から流下した植栽用水Wが、下方の植栽容器本体1の貯水部8に供給されずにオーバーフロー管10に入ってしまう現象を抑制する手段としての遮蔽板14が設けられている。
【0049】
遮蔽板14は、左右2つの仕切り壁6の外側の各側面から、オーバーフロー管10の軸心と交差し、且つ、平面視においてオーバーフロー管10の開口部の大半を覆うように横向きに突出形成されている。
オーバーフロー管10の上端部のうちで、仕切り壁6との境界に相当する前後の2箇所からは、一対の接続部15a,15bが遮蔽板14に向かって真上に延出し、遮蔽板14の前端及び後端と滑らかに連結されている。
【0050】
また、遮蔽板14の接続部15a,15bを除く周縁部からは薄板状の案内壁部16が上向きに立設されている。
その結果、遮蔽板14の上面は、仕切り壁6と案内壁部16とで挟まれることで、前後に延出した溝状の流路を形成している。
【0051】
したがって、図7に例示するように、上方の植栽容器本体1のオーバーフロー管10の上端またはドレン孔20から排水管11を経て流下する植栽用水Wがオーバーフロー管10に向かって落下してきても、その大半は遮蔽板14の上面で受けられ、仕切り壁6と案内壁部16とに案内されて、前後の接続部15a,15bに沿ってオーバーフロー管10の外周などから貯水部8に供給されるため、オーバーフロー管10の内面に大量の植栽用水Wが進入する虞が少ない。
【0052】
(上部供給管)
図1では、最下段の植栽容器本体1の下に配置した植栽用水タンク1bの植栽用水Wをポンプ40によって各植栽容器本体1の案内筒12に連続的に通した給水ホースH2を介して最上段の植栽容器本体1へ供給する形態を説明した。
他方、図8及び図9に例示するように、蓋部材30を貫通するように配置した上部供給管37から植栽用水Wを最上段の植栽容器本体1へ供給する形態で実施することも可能である。図9に示すように、上部供給管37の下端は案内筒12の上端よりも下方まで延ばされ、案内筒12を左右いずれか寄りに迂回するように配置されている。
【0053】
ここでは、蓋部材30の上方を植栽容器本体1の長手方向と平行に延設された配管35の一部にT字分岐管36を設け、このT字分岐管36から下方に開閉コックを備えた上部供給管37が延設されている。上部供給管37の下端に接続された上部給水ホースH4は、最上段の植栽容器本体1の案内筒12やオーバーフロー管10を迂回するように曲げられて、貯水部8の上面に向けられている。
【0054】
図10に示すように、蓋部材30には、これらの上部供給管37や上部給水ホースH4を後方から受け入れ可能なように、上部供給管37や上部給水ホースH4を上下方向で挿通するための開口部30aが蓋部材30の後端に向けて開放されたスリット状に形成されているので、既に上方から植栽用空間2に進入するように設置済みの上部供給管37や上部給水ホースH4を取り除くことなく、蓋部材30を容易に着脱操作することができる。
【0055】
(目隠し板)
例えば一部の植栽用空間2に植栽床材Aを載置しない場合などに、この空いた植栽用空間2に対して着脱自在に取り付け可能な目隠し板60が用意されている。
図5に示すように、目隠し板60は、概して矩形の本体60aと、本体60aの上端から上方に延設された一つの上方係止片60bと、本体60aの下端から下方に延設された一つの下方係止片60cと、本体60aの左右の側辺から下方に延設された一対の補強片60dとを有する。
【0056】
本体60aの上端付近における左右の側辺には、上方に配置された植栽容器本体1の排水管11との干渉を避けるための切り欠き60eが設けられており、補強片60dは切り欠き60eを除いた部位にのみ設けられている。
また、本体60aの上端付近における切り欠き60eよりも内側には、最上段の植栽容器本体1の案内筒12に設置された分岐継手J2のフランジとの干渉を避けるための貫通孔60fが設けられている。
【0057】
植栽容器本体1及び蓋部材30の必要箇所には、目隠し板60を確実に取り付けるための係止手段が形成されている。図2に示すように、係止手段は、植栽容器本体1の前上がりに傾斜した前方底壁3bの上端(前方端部)の内面側に横向きに延設された左右一対の第1係止溝3v、植栽容器本体1の長側壁4の下端に設けられた凸状片4aの内面側に横向きに延設された第2係止溝4v、及び、蓋部材30の長側壁37の下端に設けられた凸状片31aの内面側に横向きに延設された第2係止片31vである。第2係止溝4v,31vは一段下に位置する植栽容器本体1の植栽用空間2に目隠し板60を取り付ける際に用いられることになる。
【0058】
目隠し板60を取り付けるには、先ず、目隠し板60の下方係止片60cの下端を取り付けたい植栽容器本体1の第1係止溝3vに挿入し、次に、本体60aの上下中央部が前後いずれかに突出するように両手で撓ませた状態で、目隠し板60の上方係止片60bの上端を一段上の植栽容器本体1の第2係止溝4vに係入させながら、撓ませている力を緩めるとよい。取り付けが完了すると、目隠し板60は、貯水部8の手前側から植栽用空間2の背面側上端付近に向かって斜めに延出された状態となる。
【0059】
目隠し板60は、植栽容器本体1に対して、その任意の植栽用空間2に取り付けることができる。例えば、植栽容器本体1多数段に積み重ねて用いる場合には、植栽床材A及び植物を配置した植栽用空間2と、植栽床材Aがなく目隠し板60で閉じられた植栽用空間2とを交互に配置することで、植栽装置の全体として市松模様状を呈するように用いることも可能である。
【0060】
必要に応じて、多数段に積み重ねた植栽容器本体1の角部に沿って長尺のアングル材(不図示)を配置し、このアングル材に各植栽容器本体1をボルトなどの連結具により連結することで、複数の植栽容器本体1どうしの連結状態を補強することができる。
【0061】
また、図4と図10に示すように、植栽容器本体1の長側壁4と蓋部材30の長側壁37には、幾つかのネジ挿通部50が設けてある。ネジ挿通部50は円形の薄肉部50aと、薄肉部50aを取り囲む補強用の環状の厚肉部50bを有する。特に植栽容器本体1を多数段で積み重ねて用いる場合などに、この薄肉部50aに適宜挿通したネジによって植栽容器本体1のセットを建屋の壁面などに固定することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
(1)本発明に係る遮蔽板14は、仕切り壁6と一体的に形成されていないオーバーフロー管10に対しても適用することができる。この場合は、例えば、オーバーフロー管10の上端から上方に棒状などの支持部を延設し、この支持部の一部から横向きに遮蔽板14を延設させればよい。この形態の場合にも、遮蔽板14の上面に落下した植栽用水Wが確実に貯水部8に供給されるように、遮蔽板14の前記支持部を除く周縁部から上向きに立設された案内壁部を設けることが可能である。
【0063】
(2)また、オーバーフロー管10を上端が閉じられた円筒状に形成し、このオーバーフロー管10の側面の一部に形成した貫通孔をオーバーフロー用の流出孔としてもよい。
【0064】
(3)先の各実施形態では、植栽床材Aを載置する載置面を貯水部8の中央底壁3aと前方底壁3bと後方底壁3cとにより形成した例を示したが、例えば貯水部8の後端から前端まで水平に延出された平坦な底壁3によって構成し、その底壁3の前方寄りの位置に、載置面形成部材としての複数の傾斜リブを設ける方法で、植栽床材Aを載置する載置面が、植栽用空間2aの開口部側ほど上方に位置し開口部から遠ざかる側ほど下方に位置する傾斜角αを有する傾斜面に形成することもできる。そのような複数の傾斜リブは、底壁3と一体化することも、また、別体に構成して底壁3に固定することもできる。傾斜リブを前方底壁3bと別体にする場合には、傾斜角αの異なる複数種類の傾斜リブを予め準備しておいて選択使用することもできる。
【0065】
(4)先の各実施形態では、オーバーフロー管10と案内筒12とをそれぞれ仕切り壁6と一体化して設けた例を示したが、オーバーフロー管10と案内筒12を仕切り壁6から離して、仕切り壁6の後方などに設けてもよい。
【0066】
(5)先の各実施形態では、仕切り壁6により植栽用空間2を左右に並置された複数の単位植栽用空間2aに区画した例を示したが、仕切り壁6により植栽用空間2を単位植栽用空間2aに区画することなく、単一の植栽用空間2を有する状態で実施することもでき、さらに、仕切り壁6を設ける場合に区画する単位植栽用空間2aの個数については任意であり、2個以上の単位植栽用空間2aに区画して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、所定高さを超える植栽用水を排水するオーバーフロー管が貯水部に設けてある植栽容器をより使い易い形に改良するための技術として利用可能な発明である。
【符号の説明】
【0068】
A 植栽床材
W 植栽用水
1 植栽容器本体(植栽容器)
2 植栽用空間
2a 単位植栽用空間
6 仕切り壁
8 貯水部
10 オーバーフロー管
14 遮蔽板
15a 接続部(前側)
15b 接続部(後側)
16 案内壁部
30 蓋部材(植栽容器)
30a 開口部
31a 凸状片(係止手段)
32a 凸状片(係止手段)
33 係止突起(係止手段)
40 ポンプ(給水手段)
60 目隠し板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、
所定高さを超える植栽用水を排水するオーバーフロー管が前記貯水部に設けてあり、
前記オーバーフロー管の上端よりも上方に、前記オーバーフロー管の軸心と交差する遮蔽板が設けられている植栽容器。
【請求項2】
互いに横方向で隣接する植栽用空間どうしを仕切る仕切り板が設けられており、前記遮蔽板は前記仕切り板の側面から横向きに突出形成されている請求項1に記載の植栽容器。
【請求項3】
前記オーバーフロー管の上端から前記遮蔽板へと延出する接続部と、前記遮蔽板の前記接続部を除く周縁部から上向きに立設された案内壁部とが設けられている請求項1または2に記載の植栽容器。
【請求項4】
前記植栽容器の上端と、前記植栽容器の上方空間を閉じる蓋部材との間に、前記蓋部材の前記植栽容器に対する前面側から後方に向かう摺動移動によって両部材どうしを連結可能な係止手段が設けられており、
植栽用水を前記蓋部材の上方から前記貯水部に供給するための上部供給管を受け入れる開口部が、前記蓋部材の後端に向けて開放されたスリット状に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の植栽容器。
【請求項5】
給水手段によって供給される植栽用水を貯留可能な貯水部と、吸水性の植栽床材を載置可能な植栽用空間とを備え、
前記貯水部の手前側から前記植栽用空間の背面側上端付近に向かって斜めに延出される目隠し板が着脱自在に設けられている植栽容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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