説明

植栽用土嚢及び同植栽用土嚢を配置した屋根の緑化構造並びに壁面の緑化構造

【課題】屋根にかかる重量を可及的に低減しながら屋根を緑化することのできる植栽用土嚢及び屋根の緑化構造を提供する。また、壁面の緑化構造についても提供する。
【解決手段】本発明に係る植栽用土嚢では、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土を、不織布にて縫製された袋内に収容してなることとした。また、本発明に係る屋根の緑化構造では、屋根に配置した植栽用土嚢に給水する給水手段と、給水手段から給水された水を、植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとした。また、本発明に係る壁面の緑化構造では、壁面に配設した植栽用土嚢に給水する給水手段と、給水手段から給水された水を、植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽用土嚢、及び、同植栽用土嚢を配置した屋根の緑化構造、並びに、壁面の緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面や法面、屋根などで緑化したい領域(以下、被緑化領域という。)を緑化するための植栽用の土嚢が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この植栽用土嚢によれば、被緑化領域に敷き詰めて、同植栽用土嚢の内部に収容した培養土に所望の植物を播種したり移植して育成させることで、被緑化領域を容易に緑化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−165014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の植栽用土嚢は、袋内に収容した土が重いため、被緑化領域が屋根である場合には、屋根に大きな重量負担を強いることとなっていた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、屋根にかかる重量を可及的に低減しながら屋根を緑化することのできる植栽用土嚢を提供する。また、本発明ではさらに、屋根にかかる重量を可及的に低減することのできる屋根の緑化構造についても提供する。また、壁にかかる重量を可及的に低減することのできる壁面の緑化構造についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の植栽用土嚢では、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土を、不織布にて縫製された袋内に収容してなることとした。
【0008】
また、請求項2に記載の植栽用土嚢では、請求項1に記載の植栽用土嚢において、前記袋は、植物の移植の際に切開される植栽面と、同植栽面に対向する設置面とを備え、同植栽面と前記設置面とを縫い合わせて当該袋内部を仕切る少なくとも一つの縫着部が形成され、前記培養土を収容したときに、谷状となる前記縫着部の周りに山状の培養土収納区画部が形成されるようにしたことに特徴を有する。
【0009】
また、請求項3に記載の植栽用土嚢では、請求項2に記載の植栽用土嚢において、前記袋は、平面視略矩形状に形成すると共に、前記縫着部は、前記袋の各辺に平行な十字状に縫い合わせて形成したことに特徴を有する。
【0010】
また、請求項4に記載の植栽用土嚢では、請求項3に記載の植栽用土嚢において、前記縫着部は、前記袋の平面視における略中央に設けたことに特徴を有する。
【0011】
また、請求項5に記載の屋根の緑化構造では、請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を屋根に配置した屋根の緑化構造であって、屋根に配置した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとした。
【0012】
また、請求項6に記載の屋根の緑化構造では、請求項5に記載の屋根の緑化構造において、前記屋根は陸屋根であり、前記底面灌水装置は、前記陸屋根の被緑化領域に敷設した防水シートと、前記被緑化領域の外縁に沿って前記防水シート上に配設され、水源に連通連結した給水配管と、この給水配管を周壁として前記被緑化領域内に水を貯留可能に形成された貯水空間内に敷き詰められた軽石と、により構成し、前記軽石上に配置された前記植栽用土嚢の設置面に、前記貯水空間内に貯留した水を供給可能としたことに特徴を有する。
【0013】
また、請求項7に記載の屋根の緑化構造では、請求項5に記載の屋根の緑化構造において、前記屋根は勾配屋根であり、前記底面灌水装置は、バーリング加工が施された多数の孔を有するパンチングメタルの前記孔の立ち上がり部が形成された面を上にして、前記勾配屋根の被緑化領域に敷設した導水板と、同導水板の勾配の上手側に設けられ、水源に連通連結した給水配管と、により構成し、前記パンチングメタル上に配置された前記植栽用土嚢の設置面に、前記パンチングメタルに穿設された孔の合間を縫って流下する水を供給可能に構成したことに特徴を有する。
【0014】
また、請求項8に記載の壁面の緑化構造では、請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を壁面に配設した壁面の緑化構造であって、壁面に配設した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の植栽用土嚢によれば、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土を、不織布にて縫製された袋内に収容してなることとしたため、屋根にかかる重量を可及的に低減しながら屋根を緑化することのできる植栽用土嚢を提供することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の植栽用土嚢によれば、袋は、植物の移植の際に切開される植栽面と、植栽面に対向する設置面とを備え、植栽面と設置面とを縫い合わせて袋内部を仕切る少なくとも一つの縫着部が形成され、培養土を収容したときに、谷状となる縫着部の周りに山状の培養土収納区画部が形成されるようにしたため、できるだけ少ない培養土の量で、植栽した根の伸延を可及的に阻害することなく、植栽用土嚢の厚み、すなわち、植栽できる培養土の深さを確保することができる。
【0017】
また、請求項3に記載の植栽用土嚢によれば、袋は、平面視略矩形状に形成すると共に、縫着部は、袋の各辺に平行な十字状に縫い合わせて形成したため、培養土収容区画部を平面視矩形状とすることができ、被緑化領域の形状に合わせやすい植栽用土嚢袋とすることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の植栽用土嚢によれば、縫着部は、袋の平面視における略中央に設けたため、植栽用土嚢に形成された各培養土収容区画部の内容積をそれぞれ略同じにすることができ、各培養土収容区画部に植栽した植物の生育をできるだけそれぞれ一様にすることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の屋根の緑化構造によれば、請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を屋根に配置した屋根の緑化構造であって、屋根に配置した植栽用土嚢に給水する給水手段と、給水手段から給水された水を、植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとしたため、植栽した植物に供給する水の屋根に対する重量負担を可及的に低減しつつ、植物に対して十分な水分を供給することができる。
【0020】
また、請求項6に記載の屋根の緑化構造によれば、屋根は陸屋根であり、底面灌水装置は、陸屋根の被緑化領域に敷設した防水シートと、被緑化領域の外縁に沿って防水シート上に配設され、水源に連通連結した給水配管と、この給水配管を周壁として被緑化領域内に水を貯留可能に形成された貯水空間内に敷き詰められた軽石と、により構成し、軽石上に配置された植栽用土嚢の設置面に、貯水空間内に貯留した水を供給可能としたため、陸屋根に対しても植物に供給する水の屋根に対する重量負担を可及的に低減しつつ、植物に対して十分な水分を供給することができる。
【0021】
また、請求項7に記載の屋根の緑化構造によれば、屋根は勾配屋根であり、底面灌水装置は、バーリング加工が施された多数の孔を有するパンチングメタルの孔の立ち上がり部が形成された面を上にして、勾配屋根の被緑化領域に敷設した導水板と、同導水板の勾配の上手側に設けられ、水源に連通連結した給水配管と、により構成し、パンチングメタル上に配置された植栽用土嚢の設置面に、パンチングメタルに穿設された孔の合間を縫って流下する水を供給可能に構成したため、勾配屋根に対しても植物に供給する水の屋根に対する重量負担を可及的に低減しつつ、植物に対して十分な水分を供給することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の壁面の緑化構造によれば、請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を壁面に配設した壁面の緑化構造であって、壁面に配設した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとしたため、壁面にかかる重量を可及的に低減しながら壁面を緑化することのでき、また、植栽した植物に対して十分な水分を供給して緑化を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る植栽用土嚢の外観及び断面を示した説明図である。
【図2】植栽用土嚢を構成する植栽用土嚢袋を示した説明図である。
【図3】植栽用土嚢の使用例を示した説明図である。
【図4】植栽用土嚢の変形例を示した説明図である。
【図5】陸屋根における屋根の緑化構造を示した説明図である。
【図6】陸屋根における屋根の緑化構造の断面を示した説明図である。
【図7】勾配屋根における屋根の緑化構造を示した説明図である。
【図8】勾配屋根における屋根の緑化構造の断面を示した説明図である。
【図9】壁面の緑化構造を示した説明図である。
【図10】植栽用土嚢の構成及び取付方法を示した説明図である。
【図11】緑化構造に使用する波状板の変形例を示した説明図である。
【図12】緑化構造における底面灌水装置の変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態に係る植栽用土嚢は、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土を、不織布にて縫製された袋内に収容して構成したものである。
【0025】
ここで、パーライトは、火山岩として産出されるパーライトや、黒曜石を高温で熱処理した発泡体を用いることができ、直径約5〜10mm程度のものを好適に使用することができる。このパーライトは、軽量でかつ空気を多く含むため、嵩増しをするための素材として混入される。また、植物の生育に必要な水分を保持するための素材としても機能する。
【0026】
バーミキュライトは、蛭石を600〜1000℃で焼成処理して膨張させたものであり、園芸用に市販されているものを好適に用いることができる。このバーミキュライトは、植物の生育に必要な養分を保持するための素材として機能するものである。
【0027】
植物繊維は、植物の繊維質を乾燥させたものである。例えば、サトウキビ繊維、竹繊維、樹皮、籾殻、ピートモス、おがくず等を用いることができるが、好適には、成熟果ココナッツの表面繊維である。植物繊維をサトウキビ繊維や竹繊維、成熟果ココナッツの表面繊維とした場合、その繊維長は例えば3〜20cm程度とするのが好ましい。このような長さの植物繊維(以下、長繊維ともいう。)は、培養土内でバネのような役割を果たし、培養土の嵩増しを行うと共に、他の素材を押しのけて素材間の間隙を大きくし、培養土の所定体積当たりのボイドボリュームを大きくすることができる。
【0028】
そして、上述のパーライト、バーミキュライト、植物繊維(以下、これらの素材を総称して「配合土構成素材」という。)を、それぞれ10〜80重量%となるように混合して配合土を調製する。特に、パーライト、バーミキュライト、植物繊維を、それぞれ30〜40重量%となるように混合することにより、さらに好適な配合土とすることができる。
【0029】
培養土は、配合土を90〜100重量%含有させるのが好ましい。すなわち、培養土の全体が配合土にて構成されていても良いが、培養土の少なくとも90重量%を配合土が占めるようにし、残余を肥料や腐葉土などで構成するようにしても良い。
【0030】
残余分が培養土全体の10重量%を上回ると、培養土の重量が増加して、植栽用土嚢を屋根に載置した際に、屋根への重量負担が増えることとなるため好ましくない。
【0031】
このようにして調製した培養土は、植物の生育に必要な水分を保持しながらも、過剰に供給された水や雨水(以下、「余剰水」という。)は効率的に排出することができ、植物の根部に起こりがちな根腐れや蒸れを効果的に防止することができる。
【0032】
特に、本実施形態に係る培養土は、配合土構成素材間の空隙が多く、植物の根部に十分な空気(酸素)を供給できる点に特徴を有している。本発明者は、植物の根に酸素を多く供給してやることにより、植物が良好に育成できることを見出しており、このような培養土は、植物の生育を助長することができる。
【0033】
しかも、培養土は、十分な保水を可能としながらも、水はけが非常に良いため、一旦、配合土構成素材間の空隙が余剰水で満たされた場合でも、余剰水は速やかに排出され、余剰水と外気が置換され、空隙は再び新鮮な空気で満たされることとなる。
【0034】
すなわち、降雨などにより余剰水が発生する毎に、余剰水が排出された後は新鮮な空気が根部に供給されることとなるため、植物の繁茂を助長し、被緑化領域の緑化を促進させることができる。
【0035】
そして、このようにして調製した培養土を、不織布にて縫製した袋内に収容することで植栽用土嚢を形成することができる。
【0036】
不織布は、毛細管現象によって水分を植栽用土嚢に移動させることができるものであれば特に限定されるものではない。好適には例えば、九州ネネットより販売されている品番E-1140(厚み約1mm,目付け140g/m2,ポリエステル製,熱圧着加工,エンボス加工)を用いることができる。
【0037】
袋の大きさや形状は特に限定されるものではないが、例えば、培養土を収容した際に、長さ50cm×幅50cm×厚み10cm程度となるような矩形状としても良い。このような構成とすることにより、やや複雑な形状の被緑化領域においても、比較的柔軟に植栽用土嚢の外形を変形させてきれいに配置することができる。
【0038】
また、植栽用土嚢は、中央部を谷状に凹ませる一方、その周辺部に培養土を偏らせて膨大部を形成するのが好ましい。
【0039】
換言すれば、不織布で形成した植栽用土嚢袋の表裏両面を略中央部で縫着し、培養土を収容したときに、縫着部を谷状としつつ、その周りに山状の培養土収納区画部が形成されるようにして膨大部を形成する。植物は、この膨大部に植栽する。
【0040】
このような構成とすることにより、少ない培養土の量、換言すれば、使用する培養土の重量を減らしつつ、植栽した植物の根が伸長するのに十分な培養土の深さを確保することができ、重量を可及的に低減しながら被緑化領域を緑化することのできる植栽用土嚢を提供することができる。
【0041】
植栽用土嚢に植栽する植物は特に限定されるものではないが、例えば、ミューレンベッキア属に属するMuehlenbeckia axillarisや、Muehlenbeckia complexa等の所謂ワイヤープランツが好適である。これらのワイヤープランツは、匍匐性の常緑小低木(矮小灌木)として知られており、日照りや寒さ、乾燥に強いという特徴がある。
【0042】
このように形成した植栽用土嚢は、地面や法面、壁面、屋根など場所を問わず極めて効果的な緑化を行うことができるが、特に、屋根や壁面における緑化に効果を発揮する。
【0043】
本実施形態に係る屋根の緑化構造では、このように形成した植栽用土嚢を整然と配置して構成するものである。
【0044】
具体的には、植栽用土嚢を屋根に配置した屋根の緑化構造であって、屋根に配置した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えている。
【0045】
給水手段は、植栽用土嚢に水分を供給することのできるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、井戸水、河川や湖の水、貯留雨水等を供給するものであっても良い。
【0046】
これらの水は、植栽用土嚢に対して上方から散布しても良いが、本実施形態に係る植栽用土嚢の大きな特徴の一つとして、底面から水分を補給することができるため、底面灌水方式を採用するのが好適である。
【0047】
植栽用土嚢の上方より水を散布する方法は数多く提案されているが、設備が複雑化する傾向がある。特に屋根上では、できるだけ重量を軽く抑えるのが好ましいため、重量の嵩む複雑な設備は避ける必要がある。
【0048】
その一方、底面灌水方式によれば、広範に亘る被緑化領域に水をくまなく散布する設備が不要となるため、屋根への重量負担を軽減することが可能となる。
【0049】
例えば屋根が陸屋根の場合、底面灌水装置は、陸屋根の被緑化領域に敷設した防水シートと、前記被緑化領域の外縁に沿って前記防水シート上に配設され、水源に連通連結した給水配管と、この給水配管を周壁として被緑化領域内に水を貯留可能に形成された貯水空間内に敷き詰められた軽石と、により構成し、軽石上に配置された前記植栽用土嚢の設置面に、前記貯水空間内に貯留した水を供給可能に構成しても良い。
【0050】
ここで陸屋根は、必ずしも地面に完全に水平な屋根のみを示すものではない。一般的な陸屋根には、雨水を排水するために若干の傾斜を設けてあり、そのような屋根もまた本明細書における陸屋根に含むものである。
【0051】
また、例えば屋根が勾配屋根の場合、底面灌水装置は、バーリング加工が施された多数の孔を有するパンチングメタルの前記孔の立ち上がり部が形成された面を上にして、勾配屋根の被緑化領域に敷設した導水板と、同導水板の勾配の上手側に設けられ、水源に連通連結した給水配管と、により構成し、パンチングメタル上に配置された植栽用土嚢の設置面に、パンチングメタルに穿設された孔の合間を縫って流下する水を供給可能に構成しても良い。
【0052】
ここでパンチングメタルは、金属板にパンチ加工を施して穿孔した板であり、しかも、バーリング加工が施されることで孔の周囲に立ち上がり部が形成されたものとしている。パンチングメタルを構成する金属は、パンチ加工及びバーリング加工を施すことのできる金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムやステンレスで構成するようにしても良い。
【0053】
このような構成とすることにより、パンチングメタル上を流下する水が少量である場合には、流下する水を孔から漏出させることなく植栽用土嚢に必要な水を供給うすることができ、流下する水が多量である場合には、立ち上がり部を乗り越えた余剰水を孔から漏出させて、植栽用土嚢に供給する水を適正量に保つことができる。
【0054】
すなわち、パンチングメタルの立ち上がり部は、その高さによってパンチングメタル上を流下する水量を調整する役割を担っている。パンチングメタル上に形成された多数の孔の立ち上がり部の高さは、いずれも一様としてもよく、また、場所に応じて高さを変更するようにしても良い。
【0055】
例えば、勾配屋根の傾斜面の上手側、すなわち、勾配屋根の上流側では、上流部に配置された植栽用土嚢に供給する水に加えて、下流側の植栽用土嚢に供給するための水も含まれるため水量が多くなるので、立ち上がり部の高さを高めに設定し、下流側に向かうに従い、水量が減少するため、立ち上がり部の高さを漸次低く設定するよう構成しても良い。
【0056】
以下、本実施形態に係る植栽用土嚢、及び、同植栽用土嚢を用いた屋根の緑化構造について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る植栽用土嚢Aの外観及び断面を示した説明図であり、図2は植栽用土嚢Aを構成する植栽用土嚢袋10を示した説明図である。
【0057】
〔植栽用土嚢の構造〕
図1に示すように植栽用土嚢Aは、袋状の植栽用土嚢袋10(図2参照)内に培養土11を収容して形成しており、平面視略正方形状の培養土収容部12と、植栽用土嚢袋10の端部を折り曲げて形成した閉塞部13とを備えている。
【0058】
培養土11は、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占めるものであり、本実施形態では、33重量%のパーライトと、33重量%のバーミキュライトと、34%の成熟果ココナッツの表面繊維とよりなる配合土を95重量%含み、残り5重量%を肥料とした培養土11としている。
【0059】
培養土収容部12は、植物の移植の際に切開される植栽面15と、同植栽面15に対向する設置面16とを備えており、略中央部に形成した十字状の縫着部17により膨出させて形成された4つの山状の膨大部18が形成されている。なお、本実施形態では、植物は、日照りや乾燥に強いワイヤープランツ20としている。
【0060】
ワイヤープランツ20は、この膨大部18にそれぞれ植栽されている。具体的には、膨大部18の植栽面15の一部を切開し、露出した培養土11にワイヤープランツ20を植栽するようにしている。
【0061】
ワイヤープランツ20を生育させるのに必要な水は、後述の底面灌水装置によって供給される。供給された水は、不織布により構成された設置面16の毛細管現象により、植栽用土嚢袋10全体を湿潤させ、更に培養土11を潤すこととなる。
【0062】
縫着部17は、図2に示すように、培養土11を収容する植栽用土嚢袋10に予め形成している。特に本実施形態において縫着部17は、植栽用土嚢袋10の側辺21に平行な縦縫い部22と、底辺23に平行な横縫い部24とよりなる十字状としており、植栽用土嚢袋10の内部を中央で4つの区画に仕切って、4つの培養土収納区画部19を形成している。ただし、ここで縫着部17により形成される仕切は、4つの培養土収納区画部19を完全に独立させて仕切るものではなく、隣り合う培養土収納区画部19間の連通状態を保ちつつ、培養土11を収容した際にくびれが形成される程度の仕切としている。
【0063】
このような構成とすることにより、培養土収納区画部19に培養土11が収容されることで膨大部18が形成された際に、縦縫い部22及び横縫い部24の伸延方向にくびれを形成することができ、図1(b)に示すように、このくびれを挟んで両側に膨大部18を形成して、植栽用土嚢Aの厚みの確保を行うことができる。なお、図1(b)は、図1(a)におけるX−X断面図である。
【0064】
したがって、ワイヤープランツ20の根を比較的深い位置まで伸延させることができ、ワイヤープランツ20の生育を良好とすることができ、緑化を促進させることができる。
【0065】
しかも、ワイヤープランツ20の根は、植栽された膨大部18のみならず、隣接する他の膨大部18内へ向けて伸延することができるため、ワイヤープランツ20の生育を可及的阻害することなく、被緑化領域の緑化を更に促進させることができる。
【0066】
なお、図2に示したように、本実施形態において植栽用土嚢袋10は、1枚の不織布を折畳み、底辺23と背中部とを縫製して袋状とし、縫い代が袋の内側に現れるよう反転させて形成しているがこれに限定されるものではなく、縫い代が露出するよう構成しても良い。
【0067】
また、植栽用土嚢袋10内に収容する培養土11の量は、必ずしも4つの膨大部18が形成される程度に収容する必要はない。例えば、図3に示すように、2つの膨大部18が形成される程度の培養土11を収容し、植栽用土嚢袋10の一部を設置面16側に折り畳んで植栽用土嚢Aを形成するようにしても良い。この場合、後述する底面灌水装置により供給された水は、毛細管現象により、折り返した部分を介して設置面16まで浸透し、培養土11に至ることとなる。
【0068】
このように形成することで、植栽用土嚢Aをよりコンパクトなものとすることができ、被緑化領域の形状に合わせてくまなく植栽用土嚢Aを敷設することができる。
【0069】
なお、植栽用土嚢袋10内に収容する培養土11の量は、膨大部18の厚さが5〜10cm程度となるように収容するのが良い。
【0070】
5cmを下回ると、ワイヤープランツ20の根の伸長を阻害してしまい、ワイヤープランツ20の良好な生育を妨げるおそれがある。また、10cmを上回る量の培養土11を収容しても、ワイヤープランツ20の生育をさらに良好なものとするのは困難であるばかりでなく、植栽用土嚢Aの重量が大きくなるため好ましくない。
【0071】
植栽用土嚢Aは、図2に示した植栽用土嚢袋10の開口部14から、培養土11を収容し、開口部14を折り畳んで縫合して閉塞部13を形成することで構成する。
【0072】
また、図1(a)に示すように、植栽用土嚢Aの角部には連結リング25が配設されている。この連結リング25は、複数の植栽用土嚢Aを相互に連結する際に使用するものである。この連結リング25を用いて植栽用土嚢Aを互いに連結することにより、風などによって植栽用土嚢Aが動いてしまうことを防止するようにしている。
【0073】
また、図1〜図3にて示した植栽用土嚢Aは、植栽用土嚢袋10の略中央部に、十字状の縫着部17を一つ形成して、4つの山状の膨大部18を形成することとしたが、これに限定されるものではない。
【0074】
例えば、図4(a)に示すように、植栽用土嚢袋10の底辺23から開口部14(閉塞部13)にかけて適宜の間隔をあけながら、縫着部17としての横縫い部24を複数(図4では3つ)形成し、植栽用土嚢袋10の内部を底辺23から開口部14にかけて4つの培養土収納区画部19に仕切って、4つの膨大部18を形成しても良い。
【0075】
また、図4(b)に示す例では、植栽用土嚢袋10の各四隅を頂点とする三角形の底辺に沿って縫着部17としての斜め縫い部26をそれぞれ形成し、植栽用土嚢袋10の内部を各四隅と中央部との5つの区画に仕切って、三角形状の4つの培養土収納区画部19と、1つの略菱形の培養土収納区画部19とを形成している。
【0076】
このように植栽用土嚢袋10を形成することにより、植栽用土嚢袋10内に培養土11を収容すれば、5つの膨大部18にそれぞれ植栽を行うことができる。
【0077】
また、図4(c)に示す例では、植栽用土嚢袋10の底辺23から開口部14にかけて適宜の間隔をあけながら、十字状の縫着部17を2つ形成して、6つの山状の膨大部18を形成している。
【0078】
このような植栽用土嚢袋10を形成することによっても、植栽用土嚢袋10内に培養土11を収容すれば、6つの膨大部18にそれぞれ植栽を行うことができる。
【0079】
なお、図4に示したいずれの植栽用土嚢Aにおいても、縫着部17により形成される仕切は、各培養土収納区画部19を完全に独立させて仕切るものではなく、隣り合う培養土収納区画部19間の連通状態を保ちつつ、培養土11を収容した際にくびれが形成される程度の仕切とすべきである。
【0080】
本実施形態に係る植栽用土嚢Aは、上述のような構成としたため、軽量化を図りながらも、屋根にかかる重量を可及的に低減しながら屋根を緑化することのできる植栽用土嚢を提供することができる。
【0081】
〔陸屋根における屋根の緑化構造〕
次に、この植栽用土嚢Aを用いた屋根の緑化構造について、図面を参照しながら説明する。図5は陸屋根における屋根の緑化構造を示した説明図であり、図6は緑化構造の断面を示した説明図である。
【0082】
図5に示す緑化構造Bは、ビルディング30の屋上部を形成する陸屋根31の被緑化領域32内に、多数の植栽用土嚢Aを敷き詰めて形成している。なお、図5に示す緑化構造Bでは、被緑化領域32を陸屋根31の一部としているが、陸屋根31の全部を被緑化領域32としても良いのは勿論である。すなわち、被緑化領域32は所望の形状に変更可能である。
【0083】
緑化構造Bは、図6に示すように、防水シート33と、給水配管34と、軽石35と、植栽用土嚢Aとを備えている。
【0084】
防水シート33は、陸屋根31上の被緑化領域32に敷設しており、給水配管34から供給される水の漏出を防止するとともに、植栽用土嚢Aに植栽したワイヤープランツ20の根が陸屋根31に侵入するのを防止する役割を担うものである。
【0085】
給水配管34は、水道管などの図示しない水源に連通連結されており、敷設した防水シート33上に被緑化領域32の外周に沿って配設している。これら水源と給水配管34は、給水手段としての役割を担うものである。また、給水配管34は、防水シート33との間に隙間が生じないよう、コーキング材36により水密状態で防水シート33上に固定されており、給水配管34を周壁として給水配管34で囲まれた領域内に水を貯留する貯水空間Vとしている。
【0086】
また、給水配管34の貯水空間V側には給水口37が穿設しており、給水配管34内部を流通する水を貯水空間Vへ供給し、貯水空間Vに水を貯留してプール状とすることができるように構成している。
【0087】
また、貯水空間Vには、軽石35が敷き詰められている。この軽石35は、植栽用土嚢Aの設置面16に接触させることで、貯水空間V内に貯留された水を植栽用土嚢Aに供給する働きを有している。なお、本実施形態では軽石35を用いることとしているが、直径5〜15mm程度の軽量な粒体であれば特に限定されるものではない。なお、この軽石35と、上述した防水シート33と、給水配管34とは、植栽用土嚢Aの設置面16側から供給する灌水手段として機能し、同灌水手段と前述の給水手段とで底面灌水装置を構成している。
【0088】
緑化構造Bを上述のような構成とすることにより、陸屋根31の被緑化領域32を、軽量かつ容易に緑化することができる。また、このような緑化を行うことにより、太陽からの照り付けによる陸屋根31の過熱を防止して、ビルディング30内の室内温度を緑化しない場合に比して低下させることができる。
【0089】
また、このような緑化構造Bによれば、一旦貯水空間Vに水を貯留できれば、給水手段による給水量は僅かでよいため、ワイヤープランツ20の育成に使用する水量、すなわち、被緑化領域32を緑化するために必要な水量を飛躍的に削減することができる。
【0090】
〔勾配屋根における屋根の緑化構造〕
次に、植栽用土嚢Aを用いた他の屋根の緑化構造について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は勾配屋根における屋根の緑化構造Cを示した説明図であり、図8は緑化構造Cの断面を示した説明図である。
【0091】
図7に示す緑化構造Cは、建屋40の屋上部を形成する勾配屋根41の被緑化領域42内に、多数の植栽用土嚢Aを敷き詰めて形成している。なお、図7に示す緑化構造Cでは、被緑化領域42を勾配屋根41の全部としているが、勾配屋根41の一部を被緑化領域42としても良いのは勿論である。また、図7に示す勾配屋根41は、金属板材を断面視略台形状に折曲させて形成した、所謂折板屋根としているが、これに限定されるものではなく、断面を略三角形状や滑らかな波状に形成したものであっても良い。
【0092】
緑化構造Cは、勾配屋根41の被緑化領域42よりも高い位置、すなわち、上流側に給水配管44を配設している。
【0093】
給水配管44は、建屋40に備えられた給水装置45に給水管46を介して接続しており、給水装置45より供給される水を、給水配管44に送給可能に構成している。なお、この給水配管44、給水装置45、給水管46は、本勾配屋根における屋根の緑化構造Cの給水手段として機能する。
【0094】
また、給水配管44には、勾配屋根41の低い位置、すなわち下流側へ向けて給水口47が複数設けられており、同給水配管44よりも下流側へ向けて吐水可能に構成している。
【0095】
給水配管44より吐水された水は、被緑化領域42に配設された植栽用土嚢Aを潤しながら植栽用土嚢Aの裏面側を徐々に流下し、建屋40に配設された雨樋48を通じて排出される。
【0096】
植栽用土嚢Aの裏面側には、給水配管44から給水された水を、植栽用土嚢Aの設置面側から供給する灌水手段が設けられている。この灌水手段について、図8を参照しながら更に説明する。
【0097】
図8は勾配屋根41の構造を一部切り欠いて示した説明図である。図8にも示すように、勾配屋根41の波板50上には、灌水手段として機能するパンチングメタル51が配設されており、同パンチングメタル51上に植栽用土嚢Aが載置されている。本勾配屋根における屋根の緑化構造Cでは、このパンチングメタル51と前述の給水手段とで、底面灌水装置を構成している。なお、パンチングメタル51の勾配屋根41への取付けは、例えば勾配屋根41が折板屋根である場合、屋根面の上方へ向けてボルトが複数本突出している場合が多く、パンチングメタル51をこのボルトに挿通させて、ナット等で固定するようにしても良い。また、雨漏り等に十分留意して施工するのであれば、勾配屋根41にパンチングメタル51を載置した状態で、パンチングメタル51の表面から勾配屋根41へ向けてネジ止めし固定するようにしても良い。すなわち、パンチングメタル51の勾配屋根41への取付けは、適当な締結部材を用いて公知の方法により行うことができる。
【0098】
このパンチングメタル51は、バーリング加工が施されて立ち上がり部52が形成された多数の孔53を有している。
【0099】
このような構成を有する緑化構造Cにおいて、給水配管44から被緑化領域42へ水が供給されると、水は、パンチングメタル51上を流下し始める。
【0100】
植栽用土嚢Aの裏面に達した水は、設置面16から吸収されて、培養土11を潤し、ワイヤープランツ20の根に至ることとなる。
【0101】
また、上流側の植栽用土嚢Aにて吸収されなかった水は、パンチングメタル51上をさらに流下して、下流側に敷設された植栽用土嚢Aに吸収される。
【0102】
そして、いずれの植栽用土嚢Aにも吸収されなかった水は、最終的に雨樋48により回収されて、屋根上から排出されることとなる。
【0103】
また、雨天時には、多量の雨水が被緑化領域42に降り注ぐこととなるが、このような余剰水は、植栽用土嚢Aからパンチングメタル51にしたたり落ちて、パンチングメタル51上を流下して雨樋48より排出される。
【0104】
また、パンチングメタル51の立ち上がり部52の高さdよりも多くの水がパンチングメタル51上に流れた時は、孔53より排出されて、波板50上に至り、同波板50上を流下して雨樋48より排出されることとなる。
【0105】
緑化構造Cを上述のような構成とすることにより、勾配屋根41の被緑化領域42を、軽量かつ容易に緑化することができる。また、このような緑化を行うことにより、太陽からの照り付けによる勾配屋根41の過熱を防止して、建屋40内の室内温度を緑化しない場合に比して低下させることができる。
【0106】
また、このような緑化構造Cによれば、一旦植栽用土嚢A全部を潤したあとは、給水手段による給水量は僅かでよいため、ワイヤープランツ20の育成に使用する水量、すなわち、被緑化領域42を緑化するために必要な水量を飛躍的に削減することができる。
【0107】
なお、本勾配屋根における屋根の緑化構造Cでは、灌水手段としてパンチングメタル51を使用したが、これに限定されるものではない。例えば、一般に屋根などに用いられる樹脂製の波板を、同波板の畝の伸延方向が傾斜方向と略直交する状態で配設し、波板上の水が複数の段差を乗り越えて流下するように構成しても良い。
【0108】
このような構成とすることにより、波板の谷部に水を貯留しつつ、山部を前述の孔の立ち上がり部52のように機能させることができ、更に安価に勾配屋根における屋根の緑化構造を構成することができる。
【0109】
〔壁面における緑化構造〕
次に、植栽用土嚢Aを用いた壁面の緑化構造について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は壁面の緑化構造Eを示した説明図であり、図10は緑化構造Eに用いる植栽用土嚢Aの構造や取付方法を示した説明図である。なお、図9は説明の便宜上、緑化構造Eの一部を示し、また、さらに一部を切り欠いて示している。
【0110】
図9に示す緑化構造Eは、図示しない建屋の一部を構成する壁面60の被緑化領域61内に、複数の植栽用土嚢Aを取り付けて形成している。具体的には、緑化構造Eは、壁面60に取り付けられる波状板54と、同波状板54に沿って水を流下可能に配設した給水配管62と、波状板54に取り付けた植栽用土嚢Aとで構成している。
【0111】
波状板54の表面は、図9の拡大図にも示すように、壁面60に対して略直交するように形成された水平部55と、同水平部55がオーバーハング状となるように形成された斜部56との繰り返しによる波状面としており、水66が水平部55にて滞留しつつ、斜部56を伝いながら波状板54を流下するようにしている。水平部55は、植栽用土嚢Aの設置面16に近接しているため、滞留した水の一部は植栽用土嚢Aに吸収されて培養土11を潤すこととなる。この波状板54は、本緑化構造Eの灌水手段として機能する。
【0112】
また、波状板54には、同波状板54の面に対して垂直に、土嚢取付片63が突設されている。この土嚢取付片63は、植栽用土嚢Aを係止するためのものであり、図9では、上下方向に植栽用土嚢Aの1個分の間隔を隔てて突設されており、取付ナット64と螺合可能な雄ネジが形成されている。
【0113】
給水配管62は、波状板54に沿って水66を流下させて植栽用土嚢Aに対して底面灌水を行うための給水手段として機能するものであり、図示しない水源からの水66を受け入れ可能に構成している。また、給水配管62は、断面視略三角形状としており、給水配管62の下端に穿設された給水口65から吐出される水66を、できるだけ波状板54に沿って供給できるようにしている。また、この給水手段としての給水配管62と、前述の灌水手段としての波状板54とで、本緑化構造Eの底面灌水装置を構成している。
【0114】
植栽用土嚢Aは、前述の波状板54に、土嚢取付片63及び取付ナット64によって取り付けられており、植物として、匍匐性を有する蔓性の蔦67(ツタ)が植栽されている。
【0115】
ここで、緑化構造Eにおける植栽用土嚢Aは、図10(a)に示すように、前述の緑化構造Bや緑化構造Cにおいて使用した植栽用土嚢Aとほぼ同様の構造としているが、縫着部17にハトメ68を取り付けて、植栽用土嚢Aの表裏を補強しながら貫通させている点で構造を異にしている。なお、図10(a)では、蔦67は省略して示している。
【0116】
そして、波状板54に植栽用土嚢Aを取り付ける際には、ハトメ68に土嚢取付片63を挿通させ、必要に応じてワッシャーを介して取付ナット64を螺合させて締め付ける。このようにして、緑化構造Eを形成することができる。
【0117】
なお、本緑化構造Eでは、中央部に十字状の縫着部17を形成した植栽用土嚢Aを用いて構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、図10(b)に示すように、植栽用土嚢Aに複数(図10(b)では2箇所)設けた各縫着部17に植栽用土嚢Aを貫通する状態でハトメ68を取り付けて、1つの植栽用土嚢Aを複数箇所で波状板54に固定するよう構成しても良い。なお、この場合、波状板54上には、配置する植栽用土嚢Aの各ハトメ68と対応する箇所に土嚢取付片63を立設しておく。
【0118】
また、本緑化構造Eにおいて植栽用土嚢Aの波状板54への取付は、波状板54上に立設した土嚢取付片63にハトメ68を挿通し、取付ナット64を締結することで行ったが、これに限定されるものではない。
【0119】
例えば、図10(c)に示すように、植栽用土嚢Aの縫着部17に取り付けたハトメ68部分に平ワッシャー71を配置し、同平ワッシャー71とハトメ68とにタッピングネジ70を挿通して、その先端を波状板54にねじ込んで固定するようにしても良い。このような取付構成においても、壁面60を緑化することができる。
【0120】
また、上下左右に隣接する植栽用土嚢A同士を連結リング25を用いて互いに接続することにより、植栽用土嚢Aの折れ曲がり等を防止しつつ、植栽用土嚢Aを整然と配設することができ、外観の美しい緑化を行うことができる。
【0121】
また、波状板54に代えて、図11に示すような板材72を使用してもよい。この板材72は、平板状の主板材73の表面に複数の帯板材74を所定間隔を空けながら配置固定したものであり、帯板材74により前述の水平部55が形成されることとなるため、植栽用土嚢Aに対して灌水を行うことができる。
【0122】
また、前述の緑化構造Eにおいて、波状板54と植栽用土嚢Aの設置面16との間に、パンチングメタル51を介設するよう構成しても良い(図12参照。)。このような構成とすることによっても、植栽用土嚢Aに対して効率的に水66を供給することができ、植栽した植物を良好に生育させることができる。また、この図12に示す構造において、パンチングメタル51に代えて厚手の不織布を介設するように構成しても良い。
【0123】
上述してきたように、本実施形態に係る植栽用土嚢Aによれば、10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維(例えば、成熟果ココナッツの表面繊維)とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土11を、不織布にて縫製された袋(例えば、植栽用土嚢袋10)内に収容してなることとしたため、屋根にかかる重量を可及的に低減しながら屋根を緑化することのできる植栽用土嚢Aを提供することができる。
【0124】
また、植栽用土嚢(例えば、植栽用土嚢A)を屋根に配置した屋根の緑化構造であって、屋根に配置した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることとしたため、植栽した植物に供給する水の屋根に対する重量負担を可及的に低減しつつ、植物に対して十分な水分を供給することができる。
【0125】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0126】
本実施形態に係る緑化構造Eにおいて、植栽用土嚢Aは、土嚢取付片63と取付ナット64とにより固定することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、先端を上方へ向けたL字状のフックを波状板54の表面に突設し、このフックに植栽用土嚢Aのハトメ68を挿通させて、植栽用土嚢Aを係止するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0127】
10 植栽用土嚢袋
11 培養土
12 培養土収容部
15 植栽面
16 設置面
17 縫着部
18 膨大部
19 培養土収納区画部
20 ワイヤープランツ
31 陸屋根
32 被緑化領域
34 給水配管
35 軽石
41 勾配屋根
42 被緑化領域
44 給水配管
51 パンチングメタル
52 立ち上がり部
53 孔
A 植栽用土嚢
B 緑化構造
C 緑化構造
E 緑化構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜80重量%のパーライトと、10〜80重量%のバーミキュライトと、10〜80重量%の植物繊維とよりなる配合土が所定重量当たり90重量%以上を占める培養土を、不織布にて縫製された袋内に収容してなる植栽用土嚢。
【請求項2】
前記袋は、
植物の移植の際に切開される植栽面と、同植栽面に対向する設置面とを備え、同植栽面と前記設置面とを縫い合わせて当該袋内部を仕切る少なくとも一つの縫着部が形成され、前記培養土を収容したときに、谷状となる前記縫着部の周りに山状の培養土収納区画部が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の植栽用土嚢。
【請求項3】
前記袋は、平面視略矩形状に形成すると共に、前記縫着部は、前記袋の各辺に平行な十字状に縫い合わせて形成したことを特徴とする請求項2に記載の植栽用土嚢。
【請求項4】
前記縫着部は、前記袋の平面視における略中央に設けたことを特徴とする請求項3に記載の植栽用土嚢。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を屋根に配置した屋根の緑化構造であって、
屋根に配置した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることを特徴とする屋根の緑化構造。
【請求項6】
前記屋根は陸屋根であり、
前記底面灌水装置は、
前記陸屋根の被緑化領域に敷設した防水シートと、前記被緑化領域の外縁に沿って前記防水シート上に配設され、水源に連通連結した給水配管と、この給水配管を周壁として前記被緑化領域内に水を貯留可能に形成された貯水空間内に敷き詰められた軽石と、により構成し、
前記軽石上に配置された前記植栽用土嚢の設置面に、前記貯水空間内に貯留した水を供給可能としたことを特徴とする請求項5に記載の屋根の緑化構造。
【請求項7】
前記屋根は勾配屋根であり、
前記底面灌水装置は、
バーリング加工が施された多数の孔を有するパンチングメタルの前記孔の立ち上がり部が形成された面を上にして、前記勾配屋根の被緑化領域に敷設した導水板と、
同導水板の勾配の上手側に設けられ、水源に連通連結した給水配管と、により構成し、
前記パンチングメタル上に配置された前記植栽用土嚢の設置面に、前記パンチングメタルに穿設された孔の合間を縫って流下する水を供給可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の屋根の緑化構造。
【請求項8】
請求項1〜4に記載の植栽用土嚢を壁面に配設した壁面の緑化構造であって、
壁面に配設した前記植栽用土嚢に給水する給水手段と、前記給水手段から給水された水を、前記植栽用土嚢の設置面側から供給する灌水手段とを具備する底面灌水装置を備えることを特徴とする壁面の緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−115196(P2012−115196A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266871(P2010−266871)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(596025180)株式会社福瑛舎 (3)
【Fターム(参考)】