説明

植栽用土嚢袋

【課題】草刈り後の雑草の再繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した植栽用土嚢袋等を提供する。
【解決手段】本発明に係る植栽用土嚢袋では、では、方形状に形成され、土砂を収容する網状の袋本体と、この袋本体に取り付けられた不織布とからなる植栽用土嚢袋であって、前記袋本体は、前記土砂に植栽した植物の茎部が成長して突出する表面部と、前記不織布が取り付けられるとともに、前記植物の根部が成長して突出する底面部とを有し、前記底面部に前記不織布を貫通させ、当該不織布を前記袋本体外部から前記袋本体内部にかけて配置することにより、当該不織布の毛管現象によって前記袋本体外部の水分を前記袋本体内部の土砂に供給することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り後の雑草の再繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した植栽用土嚢袋等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の中央分離帯や公園などでは、土壌が露出している場所に繁茂した雑草を除去する草刈りが行われている。
【0003】
ところが、雑草は生育が早く、場合によっては年に数回草刈りを行うなどして、多大な労力や費用を費やしている。
【0004】
そこで、この草刈りの労力を削減するために、土壌表面にブロックを敷設し、雑草が根付かないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この土壌表面にブロックを敷設する方法によれば、草刈りに要する労力や費用を節減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−243750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の土壌表面にブロックを敷設する方法では、雑草以外の他の植物を、人為的に植栽することができない。
【0008】
それゆえ、ブロックが敷設された場所は著しく無機的な平面となり、景観を損なうこととなっていた。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、土壌表面の雑草の繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した土嚢袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明では、方形状に形成され、土砂を収容する網状の袋本体と、この袋本体に取り付けられた不織布とからなる植栽用土嚢袋であって、前記袋本体は、前記土砂に植栽した植物の茎部が成長して突出する表面部と、前記不織布が取り付けられるとともに、前記植物の根部が成長して突出する底面部とを有し、前記底面部に前記不織布を貫通させ、当該不織布を前記袋本体外部から前記袋本体内部にかけて配置することにより、当該不織布の毛管現象によって前記袋本体外部の水分を前記袋本体内部の土砂に供給することを特徴とすることとした。
【0011】
また、請求項2に係る発明では、請求項1に記載の植栽用土嚢袋において、方形状に形成された前記袋本体は、その一辺の少なくとも一部が開口されており、この開口を含む辺端部を複数回折り返して、前記開口を前記土砂の投入口とした投入部を形成したことに特徴を有する。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載の植栽用土嚢袋において、前記不織布は、前記袋本体内部に配置される筒部と、当該筒部にその一端がそれぞれ連結され、前記袋本体外部に配置される左右一対の平板部とを備えることに特徴を有する。
【0013】
また、請求項4に係る発明では、請求項3に記載の植栽用土嚢袋において、前記筒部の延伸方向に、前記土砂を流入させる流入開口を所定間隔をあけて複数個形成したことに特徴を有する。
【0014】
また、請求項5に係る発明では、請求項4に記載の植栽用土嚢袋において、前記筒部は、前記筒部の周面に形成された各流入開口に向かって前記土砂を流入させるガイド部を、前記各流入開口に対応させて設けたことに特徴を有する。
【0015】
また、請求項6に係る発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋において、前記不織布は、前記表面部側から見たときに、前記底面部の面積の1/2以下の面積であることに特徴を有する。
【0016】
また、請求項7に係る発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋に土砂を収容して形成した植栽用土嚢を土壌面に敷設し、同植栽用土嚢の表面部に匍匐性植物を植栽してなる植栽用土嚢の配設構造とした。
【0017】
また、請求項8に係る発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋の製造方法であって、方形状の網状シートの対向する縁辺同士を縫合して筒状の網体を形成する第1工程と、前記筒状の網体の開口辺の一方を縫合し、一辺が開口する袋状の網体を形成する第2工程と、前記袋状の網体の開口部分を含む端部を複数回折り返し、中央部を除く両縁部を縫合して、前記土砂の投入口を形成する第3工程と、を有し、前記第1工程において、前記縁辺間に前記不織布を介在させた後に前記縁辺を縫合して、前記筒状の網体内部と前記筒状の網体外部とに跨って前記不織布を配設したことを特徴とすることとした。
【0018】
また、請求項9に係る発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋に土砂を収容して植栽用土嚢を形成する土嚢形成工程と、前記植栽用土嚢を草刈り後の土壌面に配設する土嚢配設工程と、配設した植栽用土嚢に匍匐性の植物を移植する植栽工程と、を備えることを特徴とする植栽用土嚢の敷設方法とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、草刈り後の雑草の再繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した土嚢袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋が設置場所を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋の製造方法を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋における土砂の充填方法を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋の設置方法を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の植栽用土嚢袋を示す断面図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、土壌表面の雑草の繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した植栽用土嚢袋を提供するものである。
【0022】
本実施形態に係る植栽用土嚢袋によれば、内部に土砂を収容して植栽用土嚢とし、雑草の繁茂を防ぎたい土壌表面、特に草刈り後の土壌表面に敷設することにより、雑草が生い茂るのを可及的防止することができる。
【0023】
しかも、敷設した植栽用土嚢の表面部を一部切開し、そこから露出する土砂に所定の植物を移植することにより、移殖した植物を育成させることができる。
【0024】
すなわち、本実施形態に係る植栽用土嚢袋によれば、雑草の繁茂を防ぐのみではなく、移植した植物の育成を助長することができて、敷設した場所の景観を良好に保つことができるのである。
【0025】
また、雑草と言えども、大気中のCO2の固定という観点から言えば、環境負荷を低減するものといえるが、草刈りによって刈られた雑草を焼却処理すると、雑草により固定されたCO2を再び大気中へ還元してしまうこととなる。
【0026】
その点、本実施形態に係る植栽用土嚢袋にて形成した植栽用土嚢によれば、雑草を抑制して草刈りを可及的不要とし、しかも、所定の植物の育成を助長してCO2の固定を促進させることができるため、CO2による環境負荷を低減することができる。
【0027】
本明細書における土壌表面は、草刈り後の土壌表面であってもよく、また、新たに道路を敷設した際に形成した路肩のように、雑草が生える前の土壌表面であっても良い。また、土壌表面とは、完全に土が露出している面に限定されるものではなく、背丈の低い(例えば、10cm程度の)雑草が多少生えている面も含まれる概念である。
【0028】
また、移植する所定の植物は、木本植物や草本植物など特に限定されるものではないが、本実施形態に係る植栽用土嚢袋に移植して育成させるのに適した植物の一つとして、匍匐性の植物、具体的には、クマツヅラ科イワダレソウ属の植物を挙げることができる。特に、イワダレソウ属の植物は、排他的なアレロパシーを生起するため、雑草の繁茂をさらに抑制することができて好ましい。
【0029】
また、イワダレソウ属の植物は少雨や日照に強く、繁殖力が旺盛で、高さ方向への伸びが少なく、繁茂すると芝生状に広がり、しかも、春から秋にかけて小さな紫色の花を咲かせるという特徴がある。
【0030】
そのため、道路の植樹帯や、法面での生育に適していると言えるが、本実施形態に係る植栽用土嚢に移植して育成させることにより、競合する雑草の繁殖を抑えつつ、好適な条件下で育成させることができる。
【0031】
すなわち、植栽用土嚢袋の構成について言及すると、本実施形態に係る植栽用土嚢袋は、土砂を収容する網状の袋本体と、この袋本体に取り付けられた毛管現象を生起可能な布体、例えば不織布とから形成される。
【0032】
また、袋本体は、植物を移植するとともに、植栽した植物の茎部が成長して突出する表面部と、前記布体(例えば、不織布)が取り付けられるとともに、植物の根部が成長して袋本体内部から土壌方向へ突出する底面部とを有している。
【0033】
ここで袋本体の形状は、平面視においていかなる形状ともすることができるが、敷設面に隙間無く敷設することのできる略方形状とするのが好ましい。方形状であれば、正方形や長方形など特に限定されるものではないが、実用的には土砂を収容しない状態で平面視略60cm×60cm、土砂を収容して厚みを約10cm程度とした際に平面視略50cm×50cm程度とすることで、できるだけ広い面積を覆い、且つ、人力によっても運搬可能な植栽用土嚢とすることができる。
【0034】
収容する土砂は、特に限定されるものではないが、真砂土50〜70容量部に対して、バークチップ及び/または腐葉土を30〜50容量部混合した混合土を用いることにより、比較的軽量で、しかも、雨水などにより網目から土砂が流出するのを防止することができる。
【0035】
また、植栽用土嚢袋に収容する土砂はできるだけ軽い方が、すなわち、嵩比重が小さい方が植栽用土嚢の敷設作業を楽にすることができるが、本発明者らの鋭意研究により、重い土砂(嵩比重の大きい土砂)を収容するほど、布体からの水の給水効率が良いことが分かっている。
【0036】
換言すれば、植栽用土嚢袋に収容する土砂があまりにも軽いと、布体による土壌面からの水分の吸収効率が低下してしまうこととなる。
【0037】
それゆえ、この点から見ても、前述の真砂土とバークチップ及び/または腐葉土との混合土を、植栽用土嚢袋に収容する土砂として用いることは、作業性を阻害せず、しかも、布体からの水の供給を促進することのできる適度な重さとすることができるため好ましい。
【0038】
袋本体を構成する素材は、特に限定されるものではないが、例えば、可撓性を有する樹脂製のメッシュ生地を挙げることができる。
【0039】
また、袋本体の網目は、内部に収容する土砂がほぼ流出せず、しかも、雑草の種子が袋本体内に侵入しない程度の大きさとしており、0.5mm四方〜2.0mm四方程度の網目が好ましい。
【0040】
このような網目とすることにより、雨水は容易に浸入させながらも、雑草の種子が袋本体内に侵入するのを防止して、雑草が繁茂するのを可及的防止することができる。
【0041】
また、袋本体内に収容した土砂に雑草の種子が紛れていた場合や、万一雑草の種子が網目をすり抜けて袋本体内に侵入した場合であっても、表面部を介して袋本体内部へ入射する太陽光の光量を少なくして、雑草の生育を抑制してひ弱なものとすることができる。
【0042】
また、ひ弱ながらも成長して表面部から突出した雑草についても、茎の太さが網目以上とはならないため、いわゆる首締め効果を生起して、雑草の繁茂を抑制することができる。
【0043】
また、植栽用土嚢を沿岸部などに敷設する場合には、表面部が網状であるため、潮風による植栽した植物への塩害を防止する効果もある。
【0044】
併せて、植栽した植物が匍匐性の植物である場合、特にイワダレソウ属の植物である場合には、伸びた茎の中途に節を形成し、その節の部分から葉と根が生じるというように、次々に足場を形成しながら繁茂する性質を有するが、この節から生じた根が、網目を介して土砂に至ることとなるため、植栽した匍匐性の植物の生育を阻害するおそれがない。
【0045】
網目の大きさが2.0mm四方を越えると、土砂の流出を留めるのが困難となり、また、雑草の種子等が袋本体内部の土壌に侵入し易くなるとともに、表面部を介して袋本体内部へ入射する太陽光の光量が増加したり、首締め効果が低くなるため、好ましくない。また、潮風による塩害の防止効果も減衰する。
【0046】
網目の大きさが0.5mm四方未満であると、植栽した匍匐性植物の茎の中途の節から生じた根が、表面部を介して袋本体内部に侵入することができなくなり好ましくない。また、植栽した植物の根が、底面部の網目を介して土壌に伸延するのを阻害することとなり好ましくない。
【0047】
そして、底面部に布体を貫通させ、布体を前記袋本体外部から前記袋本体内部にかけて配置することにより、当該不織布の毛管現象によって前記袋本体外部の水分を前記袋本体内部の土砂に供給可能に構成している。
【0048】
従って、植栽用土嚢の表面部を一部切開して、所望の植物を植栽用土嚢内に収容した土砂に移植することにより、所定の植物を育成させることができ、しかも、毛管現象を生起する布体が土壌表面から水分を吸収して、植栽用土嚢内部の土砂に水分を供給するため、移植した植物の育成を助長することができる。
【0049】
ところで、方形状に形成された袋本体は、その一辺の少なくとも一部が開口されており、この開口を含む辺端部を複数回折り返して、開口を土砂の投入口とした投入部を形成するのが好ましい。
【0050】
この折り返し回数や、折り返し方向は特に限定されるものではないが、折り返し回数は例えば2〜4回が適当であり、また、折り返し方向は、内巻きに折り返したり、Z字状に折り返したり、蛇腹状に折り返しても良い。
【0051】
このような構成とすることにより、植栽用土嚢袋内に土砂を容易に受け入れることができると共に、土砂の受け入れ後には、容易に投入口を閉塞して土砂が投入口から流出するのを防止できる。
【0052】
また、毛管現象を生起する布体(例えば、不織布)は、袋本体内部に配置される筒部と、当該筒部にその一端がそれぞれ連結され、袋本体外部に配置される左右一対の平板部とを備えるように構成しても良い。
【0053】
このような構成とすることにより、平板部にて土壌表面から吸収した水分を筒部に供給して、筒部から土砂へ水分を拡散させることができ、しかも、植栽用土嚢袋内に土砂を入れる際に、投入口から入れられた土砂は、筒部内方にも流入することとなり、筒部をできるだけ表面部に近い位置へ立ち上げることができて、給水効率を更に高めることができる。
【0054】
また、前記筒部の延伸方向に、前記土砂を流入させる流入開口を所定間隔をあけて複数個形成しても良い。
【0055】
このような構成とすることにより、筒部内部に土砂をより流入し易くすることができ、植栽用土嚢内部の土砂への給水効率をより向上させることができる。
【0056】
また、前記筒部は、前記筒部の周面に形成された各流入開口に向かって前記土砂を流入させるガイド部を、前記各流入開口に対応させて設けるようにしても良い。
【0057】
このような構成とすることにより、更に筒部内部に土砂をより流入し易くすることができ、植栽用土嚢内部の土砂への給水効率をより向上させることができる。
【0058】
また、毛管現象を生起する布体は、表面部側から見たときに、前記底面部の面積の1/2以下の面積とするのが好ましい。
【0059】
このような構成とすることにより、移植した植物の根が底面部の網目を介して土壌中へ伸延するのを阻害することがなく、移植した植物の生育をより助長することができる。
【0060】
また、上述してきた植栽用土嚢袋に土砂を収容して形成した植栽用土嚢を土壌表面に敷設し、同植栽用土嚢の表面部に匍匐性植物を植栽してなる植栽用土嚢の配設構造を形成することにより、公園や道路の中央分離帯、路肩、法面などの土壌表面に雑草が繁茂するのを防止することができ、しかも、所定の植物を植栽可能に形成することができる。
【0061】
また、上述してきた植栽用土嚢袋は、方形状の網状シートの対向する縁辺同士を縫合して筒状の網体を形成する第1工程と、前記筒状の網体の開口辺の一方を縫合し、一辺が開口する袋状の網体を形成する第2工程と、前記袋状の網体の開口部分を含む端部を複数回折り返し、中央部を除く両縁部を縫合して、前記土砂の投入口を形成する第3工程と、を有し、前記第1工程において、前記縁辺間に前記不織布を介在させた後に前記縁辺を縫合して、前記筒状の網体内部と前記筒状の網体外部とに跨って布体を配設して製造するのが好ましい。
【0062】
このような方法とすることにより、土壌表面の雑草の繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成した土嚢袋を安価で、容易に製造することができる。
【0063】
また、上述してきた植栽用土嚢袋に土砂を収容して植栽用土嚢を形成する土嚢形成工程と、前記植栽用土嚢を草刈り後の土壌面に配設する土嚢配設工程と、配設した植栽用土嚢に匍匐性の植物を移植する植栽工程と、を備える植栽用土嚢の敷設方法により施工することで、公園や道路の中央分離帯、路肩、法面などの土壌表面に雑草が繁茂するのを防止することができ、しかも、所定の植物を植栽可能に形成することができる。
【0064】
以下、本実施形態に係る植栽用土嚢袋Aについて、図面を参照しながら更に詳細に説明する。なお、以下の説明では、説明を容易とするために、植栽した植物を匍匐性植物しているが、これに限定されるものではない。
【0065】
図1は、本実施形態に係る植栽用土嚢袋Aに土砂を収容してなる植栽用土嚢Bを敷設した道路1を示す説明図である。なお、この図1に示す植栽用土嚢袋Aの使用形態は、理解を容易とするための一例である。
【0066】
図1に示す道路1では、基礎2上にアスファルトやコンクリートなどの舗装3を施して、自動車4が通行可能な状態としている。
【0067】
また、道路1の左右略中央部には、中央分離帯5が形成されており、対向車同士を隔てている。
【0068】
中央分離帯5には、自動車4の走行方向へ沿って配設された縁石6,6と、同縁石6,6上に配設された防護柵7,7とが備えられており、両縁石6,6の間には、植栽帯8が形成されている。
【0069】
植栽帯8には、土壌9に樹木10が植えられており、さらにこの土壌9の表面には、植栽用土嚢Bが敷き詰められている。また、この植栽用土嚢Bには匍匐性植物11が植栽されている。
【0070】
このように、図1に示す道路1では、植栽帯8の土壌9表面に植栽用土嚢Bを敷設することにより、雑草の繁茂を防止するとともに、匍匐性植物11を育成させて美観を保つようにしている。
【0071】
次に、この植栽用土嚢B及び植栽用土嚢Bを形成する植栽用土嚢袋Aについて説明する。
【0072】
図2は、植栽用土嚢Bの構成を示す斜視図である。植栽用土嚢Bは、植栽用土嚢袋Aに土砂15を収容することで形成されており、図2(a)に示すように、植栽用土嚢Bの表面部31の略中央部を切開して切開部17を形成し、同切開部17から露出した土砂15内に匍匐性植物11が移植されている。
【0073】
また、切開部17の切れ端部分は、それぞれ互いにクリップ18,18…にて止められており、切開部17の拡大や、雑草の種が内部の土砂に侵入するのを防ぐようにしている。
【0074】
また、植栽用土嚢袋Aは、図2(b)に示すように、方形状に形成され、土砂15を収容する網状の袋本体12と、同袋本体12の底面部13に取り付けられた布体14とで構成している。
【0075】
換言すれば、植栽用土嚢袋Aは、布体14が取り付けられた底面部13と、同底面部13に対向し匍匐性植物が移植される表面部31と、を備えたメッシュ袋状に形成している。
【0076】
袋本体12は、0.8mm四方の網目を有するポリエステル製のメッシュシートで一端に投入部16を設けた可撓性を有する袋状に形成している。このようなメッシュシートとしては、例えば、平岡織染株式会社製のターポスクリーン(登録商標)#2039を用いることができる。なお、この袋本体12(植栽用土嚢袋A)を形成する手順については、後に図4を用いて説明する。
【0077】
布体14は、袋本体12外部から前記袋本体12内部にかけて跨るように底面部13に縫製して取り付けており、土壌9表面の水分を底面部13を介して植栽用土嚢袋A内部の土砂15に供給可能としている。
【0078】
このような構成を備える植栽用土嚢袋Aによれば、図3に示すように、内部に土砂15を収容して植栽用土嚢Bとし、底面部13を土壌9に対面させて配設することにより、土壌9の表面から雑草が生えるのを防止することができる。
【0079】
例えば、雑草が繁茂していた草刈り後の土壌9の表面であれば、その土壌9表面が植栽用土嚢Bで覆われることとなるため、本来雑草に供給されるべき日光が遮断されると共に重量物(植栽用土嚢B)による重圧がかかることとなり、雑草の再繁茂が抑制される。
【0080】
また、土壌9の表面の水分を袋本体12の外部に突出させた布体14で吸収し、毛管現象により袋本体12内部に挿入されている布体14部分へ移送して、土砂15中に拡散させて、匍匐性植物11の生育を助長することができる。
【0081】
また、切開部17に移植した匍匐性植物11の親株53からは茎部50が伸延し、この茎部50の中途に形成された節部51からは根部52と葉部54が生じて子株55が形成される。
【0082】
子株55の根部52は切開部17から外れた場所にあるが、表面部31の網目を介して植栽用土嚢B内に収容している土砂に到達し、水分や養分を得ることとができる。
【0083】
ところで、植栽用土嚢B内の土砂15に、土壌9の表面からできるだけ多くの水を供給するのであれば、例えば、植栽用土嚢袋Aの底面部13の全面を布体14を構成する生地、例えば不織布で形成する方法が考えられる。
【0084】
しかしながら、不織布のように毛管現象を生起可能な布体にあっては、繊維が非常に密に集合された状態となっており、匍匐性植物11の生育が進んだ場合、一部の根部52が成長して底面部13に到達すると、それ以上深い場所へは伸延することができなくなって、更なる生育を阻害してしまうおそれがある。
【0085】
特に、日照りや乾燥の多い場所に配設されている場合には、土嚢内の乾燥が著しい。
【0086】
一方、本実施形態に係る植栽用土嚢袋Aでは、底面部13を根部52が突出可能な網目を有するメッシュシートで形成しているため、根部52は土壌9中へさらに伸びてゆくことができる。
【0087】
それゆえ、植栽した植物の育成を阻害せず、しかも、日照続きで土砂が乾燥した場合でも、土壌中の根部52から水分を得ることができて、植物の育成を助長することができる。
【0088】
しかも、布体14は、断面視において底面部に対し交差させた状態で配設しているため、植栽用土嚢Bの土砂15の中心部にまで水分を効率よく供給することができる。
【0089】
次に、図4を用いて、植栽用土嚢袋Aの製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、原反20の網状シート22を所定長さに切断し、得られた方形状の網状シート22の対向する縁辺21,21同士を向かい合わせる(図4(b)参照)。
【0090】
ここで、縁辺21,21には所定幅の縫代部23,23をとり、この縫代部23,23間に布体14を介在させ、次いで、縫代部23,23に沿って縁辺21,21を縫合して、表裏反転させて縫合した縫代部23,23を筒状網体24の内方として、図4(c)に示すように、筒状の網体24を形成する。この際、布体14は、筒状網体24の内部と外部とに跨って配設されるように縫合する(第1工程)。なお、本工程では、外観を良好とするために筒状網体24表裏反転させることで、縫合後の縫代部23を内方としたが、縫代部23を外方に向けたままであっても良い。
【0091】
次に、図4(d)に示すように、筒状網体24の開口辺25,25の一方を縫合して閉塞して、他方が開口する袋状網体26を形成する(第2工程)。
【0092】
そして、袋状網体26の開口27を含む端部を複数回(本実施形態では2回)折り返し、中央部を除く両縁部を縫合して、前記土砂の投入部16を形成し、図4(e)に示すような植栽用土嚢袋Aとする(第3工程)。なお、この際、投入部16には、両縁部を縫合することにより把持部29,29が形成され、また、縫合しなかった中央部には投入口28形成される。
【0093】
このような製造方法により、本実施形態に係る植栽用土嚢袋Aを安価且つ容易に製造することができる。
【0094】
また、植栽用土嚢袋Aに土砂を収容して封をする手順については、まず、図5(a)に示すように、植栽用土嚢袋Aの投入部16の略中央部分の折り返しをめくりあげて投入口28を開口させた状態とし、予め土砂を貯留したホッパー30から土砂を流下させ、植栽用土嚢袋A内に土砂を収容する。
【0095】
次に、作業者は、図5(b)に示すように、所定量の土砂15を収容した植栽用土嚢袋Aの把持部29,29を把持し、左右方向へ引っ張ることにより、投入口28を閉塞して簡単に封をすることができる(土嚢形成工程)。
【0096】
そして、図6に示すように、形成した植栽用土嚢Bを土壌9の表面に並べながら敷設する(土嚢配設工程)ことで、敷設した部位の土壌9から雑草が繁茂するのを防止することができる。
【0097】
しかも、この敷設の際に、投入部16に他の植栽用土嚢Bの底面部13を重畳しながら並べることにより、植栽用土嚢B同士の隙間から雑草が伸びてくるのを防ぎ、また、内部に収容した土砂15が投入口28から流出するのを可及的防止することができる。
【0098】
その後、配設した植栽用土嚢Bに、前述の匍匐性の植物(例えば、イワダレソウ属の植物)を移植する(植栽工程)ことにより、植栽用土嚢Bの表面部を植栽した植物で覆わせて景観を整えることができる。
【0099】
次に、他の実施形態に係る植栽用土嚢袋Cについて図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前述の植栽用土嚢袋Aや植栽用土嚢Bと同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0100】
他の実施形態に係る植栽用土嚢袋Cは、前述の植栽用土嚢袋Aと基本的な構成を同じくしているが、図7(a)に示すように、布体40の形状を断面視略Ω(オメガ)状としている点で構造を異にしている。
【0101】
具体的には、図7(a)及び(b)に示すように、植栽用土嚢袋Cの布体40は、袋本体12の内部に配置される筒部41と、当該筒部41にその一端がそれぞれ連結され、袋本体12の外部に配置される左右一対の平板部42,42とを備える。
【0102】
また、筒部41には、土砂を流入させる流入開口43が延伸方向に所定間隔をあけて複数個形成されている。
【0103】
さらに筒部41は、同筒部41の周面に形成された各流入開口43に向かって土砂15を流入させるガイド部44を、各流入開口43に対応させて設けている。
【0104】
このガイド部44は、図7(c)に示すように、筒部41の伸延方向に対して直交する方向へ向けて、筒部41の高さの約半分程度まで切込み45を入れ、図7(c)中に白抜きの矢印で示す方向、すなわち、筒部41の内方へ斜めに傾けながら押し込むことで形成することができる。
【0105】
このような構成とすることにより、図7(b)中に白抜きの矢印で示すように、植栽用土嚢袋Cに土砂15を収容する際に、土砂15が筒部41内方へ流れ込み、筒部41が土砂15で充填されることによって、図7(a)に示すように、植栽用土嚢D内で、布体40を上方(表面部31方向)へ立ち上げることができ、水分の拡散性を向上させることができる。
【0106】
換言すれば、植栽用土嚢袋C内に土砂15を収容する際に、布体40が流入した土砂15によって底面部13に押しつけられて、土砂15内部への水分の拡散性が悪化してしまうことを防止できる。
【0107】
上述してきたように、本実施形態に係る植栽用土嚢袋によれば、方形状に形成され、土砂を収容する網状の袋本体と、この袋本体に取り付けられた不織布とからなる植栽用土嚢袋であって、前記袋本体は、前記土砂に植栽した植物の茎部が成長して突出する表面部と、前記不織布が取り付けられるとともに、前記植物の根部が成長して突出する底面部とを有し、前記底面部に前記不織布を貫通させ、当該不織布を前記袋本体外部から前記袋本体内部にかけて配置することにより、当該不織布の毛管現象によって前記袋本体外部の水分を前記袋本体内部の土砂に供給することとしたため、草刈り後の雑草の再繁茂を抑制し、しかも、所定の植物を植栽可能に形成することができる。
【0108】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0109】
例えば、本実施形態に係る植栽用土嚢袋A,Cは、土砂を収容して道路1の中央分離帯5に敷設することとしたが、これに限定されるものではなく、公園や道路の路肩、法面など、雑草の繁茂を抑制したい場所に適宜敷設することができるのは言うまでもない。
【0110】
また、本実施形態では、植栽用土嚢袋A,Cに土砂15を収容して略正方形の形状として土壌9の表面に配設したが、これに限定されるものではなく、収容する土砂の量を減らし、余分な部分は底面部13側に折り返して土壌9表面に配設するようにしても良い。
【0111】
このような方法を行うことにより、植栽用土嚢Bを様々な形状とすることができる。例えば、立木の幹元部分を回避して植栽用土嚢Bを敷設することができる。
【0112】
また、本実施形態に係る植栽用土嚢袋A,Cに植栽する植物は特に限定されるものではないが、匍匐性植物を植栽するために特化させた匍匐性植物用植栽用土嚢袋として使用しても良い。
【0113】
また、図2(a)で示した植栽用土嚢Bは、表面部31に十字状の切開部17を形成して土砂を露出させ植栽することとしたが、これに限定されるものではなく、植栽する植物の苗ポッドの断面視形状と略同形状に植栽用土嚢Bの表面部31を切開し、そこに植物の苗を植栽するようにしても良い。
【0114】
また、上述してきた実施形態において、植栽用土嚢B,Dに植栽する植物の親株53は1株としていたが、複数株を植栽しても良いのは勿論である。また、複数の植栽用土嚢B,Dを土壌面に敷設した場合、必ずしも全ての植栽用土嚢B,Dに植栽する必要はなく、2つに1つや3つに1つなど、複数の植栽用土嚢B,Dに対して所定の割合で植栽するようにしても良い。
【符号の説明】
【0115】
9 土壌
11 匍匐性植物
12 袋本体
13 底面部
14 布体
15 土砂
16 投入部
17 切開部
18 クリップ
20 原反
21 縁辺
22 網状シート
23 縫代部
24 筒状網体
25 開口辺
26 袋状網体
27 開口
28 投入口
29 把持部
31 表面部
40 布体
41 筒部
42 平板部
43 流入開口
44 ガイド部
45 切込み
50 茎部
51 節部
52 根部
53 親株
54 葉部
55 子株
A 植栽用土嚢袋
B 植栽用土嚢
C 植栽用土嚢袋
D 植栽用土嚢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状に形成され、土砂を収容する網状の袋本体と、この袋本体に取り付けられた不織布とからなる植栽用土嚢袋であって、
前記袋本体は、前記土砂に植栽した植物の茎部が成長して突出する表面部と、前記不織布が取り付けられるとともに、前記植物の根部が成長して突出する底面部とを有し、
前記底面部に前記不織布を貫通させ、当該不織布を前記袋本体外部から前記袋本体内部にかけて配置することにより、当該不織布の毛管現象によって前記袋本体外部の水分を前記袋本体内部の土砂に供給することを特徴とする植栽用土嚢袋。
【請求項2】
方形状に形成された前記袋本体は、その一辺の少なくとも一部が開口されており、この開口を含む辺端部を複数回折り返して、前記開口を前記土砂の投入口とした投入部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の植栽用土嚢袋。
【請求項3】
前記不織布は、前記袋本体内部に配置される筒部と、当該筒部にその一端がそれぞれ連結され、前記袋本体外部に配置される左右一対の平板部とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽用土嚢袋。
【請求項4】
前記筒部の延伸方向に、前記土砂を流入させる流入開口を所定間隔をあけて複数個形成したことを特徴とする請求項3に記載の植栽用土嚢袋。
【請求項5】
前記筒部は、前記筒部の周面に形成された各流入開口に向かって前記土砂を流入させるガイド部を、前記各流入開口に対応させて設けたことを特徴とする請求項4に記載の植栽用土嚢袋。
【請求項6】
前記不織布は、前記表面部側から見たときに、前記底面部の面積の1/2以下の面積であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋に土砂を収容して形成した植栽用土嚢を土壌面に敷設し、同植栽用土嚢の表面部に匍匐性植物を植栽してなる植栽用土嚢の配設構造。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋の製造方法であって、
方形状の網状シートの対向する縁辺同士を縫合して筒状の網体を形成する第1工程と、
前記筒状の網体の開口辺の一方を縫合し、一辺が開口する袋状の網体を形成する第2工程と、
前記袋状の網体の開口部分を含む端部を複数回折り返し、中央部を除く両縁部を縫合して、前記土砂の投入口を形成する第3工程と、を有し、
前記第1工程において、前記縁辺間に前記不織布を介在させた後に前記縁辺を縫合して、前記筒状の網体内部と前記筒状の網体外部とに跨って前記不織布を配設したことを特徴とする植栽用土嚢袋の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の植栽用土嚢袋に土砂を収容して植栽用土嚢を形成する土嚢形成工程と、
前記植栽用土嚢を草刈り後の土壌面に配設する土嚢配設工程と、
配設した植栽用土嚢に匍匐性の植物を移植する植栽工程と、を備えることを特徴とする植栽用土嚢の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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