説明

植毛装置

【課題】植毛パターンが制限されることなく、異なる穴径の植毛穴に対して1台で植毛でき、設備投資の増大を抑制しつつ高い生産性を備えた植毛装置を提供する。
【解決手段】用毛10の毛束12を二つ折りにし、その間に挟みこまれた平線45をブラシの植毛穴104に打ち込むことによって毛束12を植毛する植毛装置1において、毛束12を案内する毛束供給路50が形成され、植毛穴104に対向配置された植毛ヘッド5と、平線45を植毛ヘッド5に供給する平線供給機構4と、毛束12を植毛ヘッド5に供給する毛束供給機構4とを備え、毛束供給機構4は、前記の供給する毛束12の用毛数が可変可能とされ、植毛ヘッド5には、毛束供給路50に平線45で毛束12を二つ折りにしつつ先端へ送り出す植毛針60と、毛束供給路50の幅を拡縮する拡縮手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用毛の毛束を二つ折りにし、その間に挟み込まれた平線をブラシの植毛穴に打ち込むことによって毛束を植毛する植毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは、ヘッド部の植毛面に設けられた複数の植毛穴に、用毛の毛束を順次植毛していくことにより製造される。植毛穴に毛束を植毛する際は、ヘッド部の植毛穴に対して接離可能な方向に移動動作される植毛ヘッドを備えた平線式の植毛装置が用いられている。
【0003】
この植毛装置は、平線と呼ばれる抜止め具を挟んで二つ折りにした毛束を植毛ヘッドの先端から送り出し、植毛穴に打ち込むことによって、毛束を植毛するものである。植毛ヘッドにはその軸線方向にわたってガイド溝が設けられており、このガイド溝には、平線を押圧しながら、平線により二つ折りにされた毛束を植毛ヘッドの先端へと送り出す植毛針がスライド可能に支持されている。
【0004】
近年、歯ブラシには、歯ブラシの機能向上を図るため、穴径の異なる植毛穴が設けられ、植毛穴に応じて用毛本数の異なる毛束(異なる径の毛束)が植毛されたものがある。このような歯ブラシの製造には、穴径毎に植毛装置を用意し、各植毛装置によって対応した穴径に個別に植毛する多工程植毛を行うのが一般的である。
このような多工程植毛には、次のような問題がある。
(1)一台の平線式の植毛装置は、単一の穴径の植毛穴にしか植毛できないため、穴径毎に植毛装置を設置する必要があり、設備投資の増大や生産性の低下を招く。
(2)複雑な植毛パターンとした場合には、毛分け作業装置による対応が困難であり、植毛パターンの設計仕様に制限が生じる。
(3)植毛装置は単位時間当たりの植毛速度(毛束数/秒)と、穴径毎に用意した各植毛装置への歯ブラシハンドルの供給能力とのバランスがとれず、生産性の低下を招く。
【0005】
こうした問題に対し、例えば、特許文献1には、複数台の植毛機と、植毛機間に配置され、任意の植毛機から他の植毛機に向けて歯ブラシハンドルを移送するX−Yテーブルとを備えた植毛装置が開示されている。特許文献1の植毛装置は、植毛機間の歯ブラシハンドルの授受をなくし、歯ブラシハンドルの供給設備の削減、生産性の向上を図っている。
また、特許文献2には、植毛ヘッドに毛束を供給するピッカーに用毛ストッパーを設けた植毛装置が開示されている。特許文献2の植毛装置は、1台の植毛装置により、ヘッド部に植毛する毛束の用毛数を可変可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−120359号公報
【特許文献2】特開2003−169719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の植毛装置は、穴径毎に植毛機を必要とするため、上記の(1)〜(3)の問題を十分に解消できない。加えて、所定の植毛穴に植毛した後の植毛機は、他の植毛機が植毛している間、停止することとなり、生産効率が低下する。また、特許文献2の植毛装置では、(1)、(3)の問題を解決できるものの、供給される平線の長さが一定であること、二つ折りにされた毛束の幅が植毛ヘッドのガイド溝に依存するため、大小の穴径に合わせた植毛ができず、植毛パターンに制限が生じるという問題がある。
そこで、本発明は、植毛パターンが制限されることなく、異なる穴径の植毛穴に対して1台で植毛でき、設備投資の増大を抑制しつつ高い生産性を備えた植毛装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植毛装置は、用毛の毛束を二つ折りにし、その間に挟みこまれた平線をブラシの植毛穴に打ち込むことによって毛束を植毛する植毛装置において、前記毛束を案内する毛束供給路が形成され、前記植毛穴に対向配置された植毛ヘッドと、前記平線を前記植毛ヘッドに供給する平線供給機構と、前記毛束を前記植毛ヘッドに供給する毛束供給機構とを備え、前記毛束供給機構は、前記の供給する毛束の用毛数が可変可能とされ、前記植毛ヘッドには、前記毛束供給路内に前記平線で前記毛束を二つ折りにしつつ先端へ送り出す植毛針と、前記毛束供給路の幅を拡縮する拡縮手段とが備えられていることを特徴とする。
前記毛束供給機構は、外周縁部に形成された用毛かき取り溝により前記毛束を確保すると共に、前記の確保した毛束を前記毛束供給路に供給するピッカーを備え、前記植毛ヘッドには、前記ピッカーが前記の確保した毛束を前記毛束供給路に供給する時の前記用毛かき取り溝に対応する位置に、前記の確保した毛束が挿入される毛束挿入口が形成されていることが好ましい。
前記植毛針は、前記毛束供給路に沿って形成されたガイド溝に案内される長尺状の平板部と、該平板部の両面に軸線上に沿って直交して設けられたリブを有し、前記リブは、先端に向かって前記平板部に近づく方向の傾斜面が形成され、前記植毛ヘッドには、前記リブを案内するリブガイド溝が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の植毛装置は、毛束供給路の幅が可変可能とされているため、植毛パターンが制限されることなく、異なる穴径の植毛穴に対して1台で植毛でき、設備投資の増大を抑制しつつ生産性の向上が図れる。
本発明の植毛装置は、植毛ヘッドに毛束を挿入する毛束供給口が形成されているため、毛束供給路の幅を変更するための駆動部を簡略化できる。
本発明の植毛装置は、植毛針に補強用のリブが設けられ、かつ該リブを案内するリブガイド溝が形成されているため、植毛穴の正確な位置に平線を安定的に打ち込むことができる。加えて、該リブが先端に向かって前記平板部に近づく方向の傾斜面が形成されているため、平線で毛束を二つ折りする際の障害となることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一例である植毛装置の斜視図である。
【図2】本発明の植毛ヘッドの天面図である。
【図3】(a):図2(a)のA−A断面図である。(b):図2(b)のB−B断面図である。
【図4】毛束供給機構と植毛ヘッドとの位置関係を説明する部分断面図である。
【図5】本発明の植毛装置により製造される歯ブラシの一例を示す平面図である。
【図6】本発明の植毛装置により製造される歯ブラシの一例を示す平面図である。
【図7】本発明の植毛装置により製造される歯ブラシの一例を示す平面図である。
【図8】本発明の一例である植毛装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の植毛装置について、以下に図面を参照して説明する。図1は、植毛装置1の斜視図であり、説明の便宜上、天面補助器具57が外された状態で図示されている。図1に示すように、本発明の植毛装置1は、ブラシ保持機構2と、毛束供給機構3と、平線供給機構4と、植毛ヘッド5とを備えるものである。
【0012】
符号100は、硬質樹脂材料等により成形されたブラシハンドル101を備え、このヘッド部102の一面(植毛面)103に複数の植毛穴104が形成され、該植毛穴104に毛束12が植毛された歯ブラシを示す。植毛穴104の穴径(直径)は、特に限定されないが、例えば0.5〜3.0mmとされる。また、植毛穴104の穴径は個々に異なっていてもよく、例えば穴径の差が0.2〜2.0mmであることが好ましく、0.3〜1.5mmであることがより好ましい。本発明においては、異なる穴径の植毛穴104が形成された歯ブラシ100において、顕著な効果を発揮できる。
【0013】
ブラシ保持機構2は、ブラシハンドル101のヘッド部102を掴んで固定する固定具20と、植毛の間、固定具20に固定されたヘッド部102の位置がずれないようにブラシハンドル101を保持するチャック機構22とを備えるものである。
固定具20は、植毛面103を植毛ヘッド5の先端に対向するように配置されている。また、固定具20は、移動テーブル(不図示)に取り付けられており、この移動テーブルにより毛束12の供給方向と直交する方向に移動操作される。これにより、植毛ヘッド5に対するヘッド部102の位置を変え、複数の植毛穴104の中の植毛対象となる任意の植毛穴104に毛束12を植毛可能とされている。
【0014】
植毛ヘッド5は、平線供給機構4から供給される平線45を植毛針60により植毛穴104に打ち込むことにより、毛束12を平線45で二つ折りにして植毛穴104に植毛するものである。
【0015】
植毛ヘッド5について、図1〜3を用いて説明する。図2(a)、(b)は、植毛ヘッド5の先端側の天面図である。説明の便宜上、天面補助器具57は除いた状態で示されている。図3(a)は、図2(a)のA−A断面図であり、図3(b)は図2(b)のB−B断面図である。なお、図3において、説明の便宜上、毛束12は図示されていない。
図1〜3に示すように、植毛ヘッド5の先端側には、天面補助器具57と底面補助器具58と間に、第一の側面補助器具51と第二の側面補助器具52とが離間して設けられ、第一の側面補助器具51と第二の側面補助器具52との間には毛束供給路50が形成されている。第一の側面補助器具51には、位置決め穴153が形成され、位置決め穴153は、底面補助器具58に設けられた位置決めピン155と係合されている。第二の側面補助器具52には、位置決め穴154が形成され、位置決め穴154は、底面補助器具58に設けられた位置決めピン156と係合されている。第一の側面補助器具51は、第一の駆動部151と接続され、第二の側面補助器具52は、第二の駆動部152と接続されている。第一の駆動部151としては、例えばエアシリンダー、サーボモーター、ステッピングモーター等が挙げられ、中でも高精度で設定柔軟性が高いサーボモーター又はステッピングモーターが好ましい。第二の駆動部152は、第一の駆動部151と同様である。
こうして、「拡縮手段」は、第一の側面補助器具51、第二の側面補助器具52、第一の駆動部151及び第二の駆動部152で構成され、植毛ヘッド5は、前記拡縮手段により毛束供給路50の幅がW1(図2(a)参照)〜W2(図2(b)参照)の間で可変とされている。「W2−W1」で表される可変幅は、植毛穴104の穴径を勘案して決定でき、例えば0.2〜2.0mm程度とされる。
【0016】
図2に示すように、第一の側面補助器具51には、毛束供給路50に沿って第一のガイド溝56aが形成され、第二の側面補助器具52には、毛束供給路50に沿って第二のガイド溝56bが形成されている。
図3に示すように、天面補助器具57には、毛束供給路50に沿って第一のリブガイド溝55aが形成され、底面補助器具58には、毛束供給路50に沿って第二のリブガイド溝55bが形成されている。また、天面補助器具57には、毛束12が挿入される毛束挿入口54aが形成され、底面補助器具58には、毛束12が挿入される毛束挿入口54bが形成されている。
【0017】
植毛針60は、毛束12の供給方向に伸びる平板状の平板部62と、平板部62の両面に軸線上に沿って直交して設けられたリブ64とを備えるものであり、断面が略十字状とされている。リブ64は、毛束供給方向、即ち先端に向かって平板部62に近づく方向の傾斜面であるテーパーが形成され、植毛針60の先端は、平板部62のみで構成されている。平板部62の幅は、植毛穴104の穴径を勘案して決定でき、例えば、植毛穴104の中で最も小径の穴径の−0.1〜0mm程度とされる。
【0018】
植毛針60は、平板部62が第一のガイド溝56a及び第二のガイド溝56bに案内されるように保持されると共に、リブ64が第一のリブガイド溝55a及び第二のリブガイド溝55bに案内されるように保持されている。
第一のガイド溝56aの深さは、特に限定されないが、例えば0.2〜0.5mmと程度とされる。第二のガイド溝56bの深さは、第一のガイド溝56aの深さと同様である。
第一のリブガイド溝55aの深さは、例えば0.2〜0.5mm程度とされる。このような深さであれば、植毛針60を正確に案内できる。第二のリブガイド溝の深さは、第一のリブガイド溝の深さと同様である。
【0019】
図1に示すとおり、毛束供給機構3は、図示されない用毛移送機により供給される用毛10群から、指定量の用毛10を毛束12としてかき取るためのピッカー30と、ピッカー30によりかき取られる用毛10の量を調整するための用毛ストッパー36と、ピッカー30の外周縁部に沿って設けられたガイド部14とを備えるものである。
ピッカー30は、その外周縁部に用毛かき取り溝31が形成されており、用毛かき取り溝31は、用毛10の進入を容易とすると共に、後述の用毛ストッパー36による溝面積の調整を容易とするため、用毛10の進入方向に細長い溝形状とされている。ピッカー30は、図示されない駆動機構により、支持軸32を支点としてY方向に回動自在とされており、用毛10群から毛束12を確保した位置(毛束確保位置)と毛束挿入口54aの上方との往来が可能とされている。
用毛10としては、ナイロン製等の樹脂製の毛、獣毛又はテーパー毛等の加工毛等が挙げられる。
【0020】
用毛ストッパー36は、ピッカー30の外周縁部の形状に沿った円弧状の板体からなり、ピッカー30の上面側に位置して用毛かき取り溝31を覆うように設けられている。用毛ストッパー36は、支持軸37を支点としてZ方向に回動自在とされており、図示されない駆動機構で回動位置が制御されることにより、用毛かき取り溝31の溝面積を変化させるものである。
【0021】
平線供給機構4は、リール42に巻き取られた帯状の平線44を毛束供給路50の幅の拡縮に同期しカッター(不図示)で切断すると共に、切断した平線45を植毛ヘッド5の側面から供給するものである。平線45の長さは、植毛穴104の穴径に応じて決定でき、例えば、1.0〜3.5mm程度とされる。
【0022】
図4は、植毛装置1の部分断面図であり、図4(a)は毛束12が植毛ヘッド3に供給される直前の状態を示し、図4(b)は毛束12が植毛ヘッド3に供給された状態を示す。
図4(a)に示すように、植毛装置1には、ピッカー30により毛束挿入口54aの位置に持来された毛束12を毛束挿入口54aに挿入するプッシャー130が設けられている。さらに、植毛ヘッド5の毛束挿入口54bに対応する位置には、毛束挿入口54aから挿入された毛束12を受け止め、所定の位置に保持する位置決め部材132が設けられている。
【0023】
次に、植毛装置1を用いた歯ブラシ100の製造方法について説明する。説明に当たっては、図5に示す歯ブラシ100aの植毛パターンを例として説明する。なお、説明の便宜上、図5は、毛束12が不図示とされている。
歯ブラシ100aは、第一の植毛穴104aと、第一の植毛穴104aの穴径よりも大きい穴径の第二の植毛穴104bとがヘッド部102aに形成されたブラシハンドル101aを備えるものである。この植毛パターンは、複数個の第二の植毛穴104bが植毛面の略中央部に長手方向に並んで形成された中央植毛部107と、中央植毛部107の外側の一方に複数の第一の植毛穴104aが形成された第一外側植毛部106と、他方に複数の第一の植毛穴104aが形成された第二外側植毛部108とを備えるものである。
【0024】
図示されないブラシハンドル供給装置にてブラシハンドル101aをブラシ保持機構2に供給し、ヘッド部102aを固定具20に固定する。
まず、第一植毛操作として、以下の操作により、第一外側植毛部106へ毛束12を植毛する。
図2(a)及び図3(a)に示すように、第一の駆動部151を作動させて第一の側面補助器具51を内側にスライドさせると共に、第二の駆動部152を作動させて第二の側面補助器具52を内側にスライドさせる。こうして、毛束供給路50を第一の植毛穴104aに適応する幅W1に調整する。
用毛10を毛束供給機構3に供給し、用毛10を用毛かき取り溝31で毛束12として確保する。この時、第一の植毛穴104aに適応する用毛本数をかき取るために、用毛ストッパー36を回動制御し、用毛かき取り溝31の一部を用毛ストッパー36で覆い用毛かき取り溝31の溝面積を狭めて、用毛かき取り溝31で確保できる用毛10の本数を規制する。
【0025】
図4(a)に示すように、用毛かき取り溝31で毛束12を確保した後、用毛かき取り溝31が用毛挿入口54aと対応する位置となるようにピッカー30を回動させる。次いで、図4(b)に示すように、プッシャー130により毛束12を押し出し、毛束12はその長さ方向に毛束挿入口54aへ挿入される。挿入された毛束12は、その一方の端部が毛束挿入口54bから突出して位置決め部材132に受け止められ、所定の姿勢で保持される。こうして、毛束12は、植毛ヘッド5に供給される。
【0026】
平線供給機構4は、リール42から平線44を毛束供給路50内に繰り出し、図示されないカッターが用毛供給路50の幅W1に合わせて移動し、平線44を切断して平線45とする。平線45の長さは、第一のガイド溝56a及び第二のガイド溝56bとで支持される長さ、即ち植毛対象である第一の植毛穴104aの穴径に適応する長さとされる。平線45の長さは、ブラシハンドル101aの材質等を勘案して決定でき、例えばブラシハンドル101aがポリプロピレン製である場合、平線45の長さは、植毛対象である第一の植毛穴104aの穴径+0.5mm程度とされる。平線45の長さが第一の植毛穴104aの穴径に対して短いと、毛束12が抜けやすくなり、平線45の長さが第一の植毛穴104aの穴径に対して長すぎると、ヘッド部102aに割れを生じさせたり、白化を生じさせたりするおそれがある。
【0027】
植毛ヘッド5に供給された平線45は、植毛針60により押圧され、第一のガイド溝56a及び第二のガイド溝56bに支持された状態で、毛束供給路50内を第一の植毛穴104aに向かって送られる。この間、平線45は、毛束挿入口54aと毛束挿入口54bとで保持された毛束12を二つ折りにしながら、植毛ヘッド5の先端から押し出される。そして、平線45は、二つ折りにされた毛束12と共に所定の第一の植毛穴104aに打ち込まれる。
【0028】
第一植毛操作を繰返し、第一外側植毛部106に毛束12を植毛した後、第二植毛操作により第二の植毛穴104bに毛束を植毛する。
第二植毛操作では、図2(b)及び図3(b)に示すように、第一の駆動部151を作動させて第一の側面補助器具51を外側にスライドさせると共に、第二の駆動部152を作動させて第二の側面補助器具52を外側にスライドさせる。こうして、毛束供給路50を植毛穴104bに適応する幅W2に調整する。この際、植毛針60は、平板部62が第一のガイド溝56a及び第二のガイド溝56bと離間されるものの、リブ64が第一のリブガイド溝55a及び第二のリブガイド溝55bとで支持されているため(図3(b))、正確な位置に平線45を打ち込むことができる。
用毛10を毛束供給機構3に供給し、用毛10を用毛かき取り溝31で毛束12として確保する。この時、第二の植毛穴104bに適応する用毛本数をかき取るために、用毛ストッパー36を回動制御し、用毛かき取り溝31の溝面積を広げて用毛かき取り溝31で確保できる用毛10の本数を規制する。
【0029】
次いで、第一植毛工程と同様にして、毛束12を毛束挿入口54aに挿入し、植毛ヘッド5に供給する。
平線供給機構4は、リール42から平線44を毛束供給路50内に繰り出し、図示されないカッターが用毛供給路50の幅W2に合わせて移動し、平線44を切断して平線45とする。平線45の長さは、第二の植毛穴104bの穴径に合わせた長さとされ、例えば第二の植毛穴104bの穴径+0.5mm程度とされる。
【0030】
植毛ヘッド5に供給された平線45は、植毛針60により押圧され、毛束挿入口54aと毛束挿入口54bとで保持された毛束12を二つ折りにしながら、植毛ヘッド5の先端から押し出される。そして、平線45は、二つ折りにされた毛束12と共に所定の第二の植毛穴104bに打ち込まれる。
【0031】
第二植毛操作を繰返し、中央植毛部107に毛束12を植毛した後、第三植毛操作により第二外側植毛部108の第一の植毛穴104aに毛束を植毛する。第三植毛操作は、第一植毛操作と同様にして行われる。
こうして得られる歯ブラシ100aには、中央植毛部107に用毛数が多い毛束(毛束径が太い)群と、第一外側植毛部106及び第二外側植毛部108に、中央植毛部107の毛束よりも用毛数が少ない毛束(毛束径が細い)群とが形成される。
【0032】
従来、穴径の異なる植毛穴を形成した植毛パターンの歯ブラシを製造するには、穴径毎に植毛装置を用意する必要があった。例えば、歯ブラシ100aの製造は、任意の植毛装置で第一植毛操作を行い、その後、他の植毛装置で第二植毛操作を行い、さらに前記の任意の植毛装置で第三植毛操作を行っていた。この製造方法では、少なくとも2台の植毛装置を用意し、第一植毛操作から第二植毛操作及び第二植毛操作から第三植毛操作の間では、ブラシハンドル101aを固定しなおす必要がある。あるいは、任意の植毛装置を用いて、第一植毛操作と第三植毛操作とを行った後、他の植毛装置にブラシハンドルを付け替えると共に、毛分け機を用いて図5の矢印F1のように毛分けをしながら第二植毛操作を行っていた。
本発明の植毛装置は、用毛ストッパーを備える毛束供給機構を備えるため、植毛穴の穴径に応じて必要な用毛数の毛束を植毛ヘッドに供給できる。加えて、植毛ヘッドが拡縮機構を備えるため、毛束供給路の幅を植毛穴に応じて調整し、植毛穴の穴径に応じて平線の長さを調整できる。このため、ブラシハンドルを付け替えることなく、1台の植毛装置によって植毛対象となる植毛穴の穴径に応じた毛束の径を調整すると共に、適切な長さの平線を植毛穴に打ち込んで歯ブラシを製造できる。そして、1台の植毛装置で異なる穴径の植毛穴に植毛できるため、設備投資の増大を抑制できる。
【0033】
加えて、本発明の植毛装置は、植毛針にリブが設けられていると共に、該リブが第一のリブガイド溝及び第二のリブガイド溝に支持されているため、大きな穴径の植毛穴に植毛する場合であっても、植毛穴の適切な位置へ平線を正確に打ち込むことができる。さらに、植毛針のリブは、先端方向においてテーパーが形成されているため、植毛針の剛性を確保すると共に、毛束を二つ折りにする際の障害とならない。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の植毛装置を適用する歯ブラシは、ヘッド部に中央植毛部、第一外側植毛部、第二外側植毛部の3つの植毛部が形成されたものに限られず、図6の歯ブラシ200に示すように4以上の植毛部が形成されたものでもよい。また、例えば、図7の歯ブラシ300のように、3種の穴径の異なる植毛穴が混在して形成されたものでもよい。本発明の植毛装置は、このような複雑な植毛パターンの歯ブラシの製造に適用すると、従来の植毛装置に比べて生産性の向上が顕著となる。
【0035】
歯ブラシ200は、第一の植毛穴204aと、第一の植毛穴204aの穴径よりも大きい穴径の第二の植毛穴204bとがヘッド部202に形成されたブラシハンドル201を備えるものである。この植毛パターンは、複数個の第二の植毛穴204bが植毛面の略中央部に長手方向に並んで形成された中央植毛部214と、中央植毛部214の外側に複数の第一の植毛穴204aが形成された第一中間植毛部212及び第二中間植毛部216と、さらに第一中間植毛部212及び第二中間植毛部216の外側に複数の第二の植毛穴204bが形成された第一外側植毛部210及び第二外側植毛部218とを備えるものである。
例えば、従来の植毛装置による歯ブラシ200の製造方法としては、第一の植毛穴204aに適応する植毛装置(第一植毛装置)と、第二の植毛穴204bに適応する植毛装置(第二植毛装置)とを交互に用い、第一外側植毛部210、第一中間植毛部212、中央植毛部214、第二中間植毛部216、第二外側植毛部218との順に植毛する方法がある(多工程植毛法)。あるいは、第二植毛装置を用い第一外側植毛部210、中央植毛部214、第二外側植毛部218に植毛した後、毛分け機を用いて矢印F2のように毛分けをしながら第一植毛装置で第一中間植毛部212、第二中間植毛部216に植毛する方法がある(毛分け植毛法)。
多工程植毛法では、第一植毛装置での植毛と、第二植毛装置での植毛との間に、ブラシハンドルを付け替える必要がある。毛分け植毛法では、ブラシハンドル201を付け替える回数は減るものの、第一植毛装置と第二植毛装置での処理能力差による低生産性を解消できない。
【0036】
歯ブラシ300は、第一の植毛穴304aと、第一の植毛穴304aの穴径よりも大きい穴径の第二の植毛穴304bと、第一の植毛穴304aの穴径よりも小さい穴径の第三の植毛穴304cとがヘッド部302に形成されたブラシハンドル301を備えるものである。この植毛パターンは、第一の植毛穴304aと第二の植毛穴304bと第三の植毛穴304cとが混在して配置されたものである。このような植毛パターンを形成するには、ブラシハンドル301の先端303側から任意の数の領域に分割し、分割した領域毎に各穴径に対応する植毛装置にて植毛する方法がある。毛分け機は、略直線上に並んだ植毛穴に植毛された毛束に適用できるものの、歯ブラシ300のような植毛パターンへの適用が困難である。
本発明の植毛装置であれば、歯ブラシ200や歯ブラシ300のような複雑な植毛パターンであっても、1台の植毛装置で歯ブラシを製造できる。
【0037】
毛束供給機構は、ピッカーと用毛ストッパーとを備えたものに限られず、植毛穴の穴径に応じて毛束の用毛数を可変可能に供給できるものであればよい。
【0038】
上述の実施形態は、所定の長さに切断された平線が第一のガイド溝及び第二のガイド溝(総じて、ガイド溝という)により案内される。しかしながら、例えば、第一の側面補助器具及び第二の側面補助器具に、ガイド溝とは別に平線を支持しながら案内する平線ガイド溝を設けてもよい。
【0039】
毛束の供給方法は、毛束挿入口からの供給に限られず、例えば、図8の植毛装置500のような植毛ヘッドの側面から供給するものとしてもよい。なお、図8には植毛装置1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略し、植毛装置1と異なる点を主に説明する。
植毛装置500は、天面補助器具557と底面補助器具558との間に第一の側面補助器具551と第二の側面補助器具552が離間して設けられ、第一の側面補助器具551と第二の側面補助器具552との間に毛束供給路550が形成された植毛ヘッド505を有するものである。第一の側面補助器具551には、スリット554が形成されており、先端部材555と中央部材553とに分割されている。先端部材555、中央部材553、第二の側面補助器具552には、それぞれ駆動部(不図示)が接続され、植毛装置1と同様に毛束供給路550の幅が可変可能とされている。即ち「拡縮手段」は、先端部材555、中央部材553、第二の側面補助器具552及びこれらに接続された駆動部により構成されている。
毛束供給機構3から供給される毛束12は、その幅方向にスリット554へ挿入され植毛ヘッド505に供給される。即ち、植毛装置500は、毛束12が側面から供給される点で、植毛装置1と異なる。
植毛装置500は、先端部材555、中央部材553及び第二の側面補助器具552のそれぞれに駆動部を接続する必要があり、かつ駆動部の設置位置が制限される。このため、拡縮手段の簡易化の観点からは、植毛装置1のように、植毛ヘッドの上部から毛束12を供給するものが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1、500 植毛装置
3 毛束供給機構
4 平線供給機構
5、505 植毛ヘッド
10 用毛
12 毛束
30 ピッカー
31 用毛かき取り溝
44、45 平線
50、550 毛束供給路
55a 第一のリブガイド溝
55b 第二のリブガイド溝
56a 第一のガイド溝
56b 第二のガイド溝
60 植毛針
62 平板部
64 リブ
104、104a、104b、204a、204b、304a、304b、304c 植毛穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用毛の毛束を二つ折りにし、その間に挟みこまれた平線をブラシの植毛穴に打ち込むことによって毛束を植毛する植毛装置において、
前記毛束を案内する毛束供給路が形成され、前記植毛穴に対向配置された植毛ヘッドと、前記平線を前記植毛ヘッドに供給する平線供給機構と、前記毛束を前記植毛ヘッドに供給する毛束供給機構とを備え、
前記毛束供給機構は、前記の供給する毛束の用毛数が可変可能とされ、
前記植毛ヘッドには、前記毛束供給路内に前記平線で前記毛束を二つ折りにしつつ先端へ送り出す植毛針と、前記毛束供給路の幅を拡縮する拡縮手段とが備えられていることを特徴とする植毛装置。
【請求項2】
前記毛束供給機構は、外周縁部に形成された用毛かき取り溝により前記毛束を確保すると共に、前記の確保した毛束を前記毛束供給路に供給するピッカーを備え、
前記植毛ヘッドには、前記ピッカーが前記の確保した毛束を前記毛束供給路に供給する時の前記用毛かき取り溝に対応する位置に、前記の確保した毛束が挿入される毛束挿入口が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の植毛装置。
【請求項3】
前記植毛針は、前記毛束供給路に沿って形成されたガイド溝に案内される長尺状の平板部と、該平板部の両面に軸線上に沿って直交して設けられたリブを有し、
前記リブは、先端に向かって前記平板部に近づく方向の傾斜面が形成され、
前記植毛ヘッドには、前記リブを案内するリブガイド溝が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の植毛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−56190(P2011−56190A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212247(P2009−212247)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】