説明

植物の根系活性度定量測定法及び測定試薬

【課題】植物根の活性を定量的に測定し、作物の生育状況を即座に判定する目的で、切断した植物根とメチレンブルーを含むCK反応試薬を接触するだけで、迅速に、簡便に、定量的に測定する方法と反応液を提供するものである。
【解決手段】呼吸緩衝液である燐酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム緩衝液、呼吸気質の琥珀酸ナトリウムと極めて希薄なメチレンブルーからなるCK反応試薬へ、植物の切断根の一定量を浸漬して色調の変化、色の濃さの比較により放出された水素量を測定することにより根の有する琥珀酸脱水素酵素活性から植物根の活性度定量測定する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は植物根の活性を定量的に測定し、作物の生育状況の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
根の活性測定には、根量、形状、根の色を見る方法、炭酸ガス測定装置で根の呼吸量を測定する方法があり、メチレンブルーやクロロテトラゾリウムブルー等で根の琥珀酸脱水素酵素の活性を観る方法などの手段がある。
しかし、いずれの方法も定性的で、生体の生きたままの自然な状態での定量的な測定法ではなく、仕掛けも煩雑な手法であった。
そこで簡便で根の活性を確実に定量できる測定法が要望されている。
【0003】
メチレンブルーを用い、根の琥珀酸脱水素酵素の活性を定性的に観る方法では、メチレンブルーの色が脱水素酵素による水素の放出によって脱色することは判っていたが、空中の酸素の影響を考慮して、通常は無酸素条件をつけるためツンベルク管を使用し、脱色時間の長さで酵素活性の強弱を判断し、定量的な精密さはなかった。
また、極めて薄いメチレンブルーを用いる場合に微小容量の容器内では組織の発生する水素の影響が支配的になることも知られていなかった。
【問題を解決するための手段】
【0004】
前記の問題を解決するために、発明者はメチレンブルー1分子と水素ガス1分子が結合してメチレンブルーが脱色する原理とメチレンブルーを極めて希薄な状態にした場合に根の活性が強く現われ溶存酸素があまり影響しないことを利用して、根の琥珀酸脱水素酵素活性の変化から根の活性を定量的に測定する方法を提案した。
【0004】
分析方法の全容は、比色可能な透明キューベット容器内で、作物根と定濃度のメチレンブルーを含むCK反応試薬を接触反応させるだけで測定できる簡便な方法である。
基準溶液は、容積3mlの比色可能で透明な微小溶液を容れる容器群を用意し、これに標準濃度の1〜50×10 Mのメチレンブルー溶液を容れて濃度基準を作成する。
次ぎに、同じく容積3mlの比色可能で透明な微小溶液を容れる透明キューベット容器群を用い、琥珀酸脱水素酵素反応容器とする。
透明キューベット反応容器内では注射器でCK反応試薬と作物根を入れて琥珀酸脱水素酵素を作用させ、CK反応試薬に含まれるメチレンブルーを脱色して濃度基準と比較する。CK反応試薬は、作物の根の活性度に合わせ、10、20、又は50×10 Mのメチレンブルーを含み、反応基質の琥珀酸塩溶液、緩衝能を高めるクエン酸塩溶液、呼吸酵素を活性化するリン酸塩溶液から成っている。
【0005】
測定に必要な器材
▲1▼ 分光光度計または比色計
▲2▼ 上皿天秤
▲3▼ 透明キューベット=セミミクロデイスポセル サイズ3.0ml 20個
▲4▼ セルラック サイズ209×70×35 1台▲5▼ 注射器
▲6▼ カッターナイフ
▲7▼ ハサミ
▲8▼ ピンセット
【0006】
CK反応試薬
▲1▼ 基質緩衝液の調整
2.5×10−3M Na−succinate、10−2M Na−citrate、0.8−M Na2HPO4の調整。
Na−succinatを0.270g秤量し、結晶Na−citrate0.371gを秤量し、Na2HPO4粉末5.85gを秤量し、およそ80mlの水に溶かしてpH7〜8に調整し、容量を100mlにする。
▲2▼ メチレンブルーの調整
作物の酵素活性の強さに応じてメチレンブルー濃度を変更する。
濃度は10−4M methylen blue、4×10−5M methylen blue、2×10−5M methylen blueの3段階を設ける。
10−2M methylen blueはmethylen blue 0.374gを秤量し、水に溶かして100mlにする。
10−4M methylen blueは10−2M methylen blueを10ml採って100mlに薄め、更に10ml採って100mlに薄める。
5×10−5M methylen blueは10−4M methylen blueを50ml採って100mlに薄め使用する。
2×10−5M methylen blueは10−4M methylen blueを20ml採って100mlに薄め使用する。
10−5M methylen blueは10−4M methylen blueを10ml採って100mlに薄め使用する。
▲3▼ CK反応試薬の調整
反応試薬は作物の酵素活性の強さに応じてmethylen blue濃度を選び、
10×10−6MCK反応試薬は基質緩衝液100mlと2×10−5M methylen blue100ml、
2×10−5M CK反応試薬は基質緩衝液100mlと4×10−5M methylen blue100ml、
5×10−5MCK反応試薬は基質緩衝液100mlと1×10−4M methylen blue100ml
をそれぞれ混合して冷蔵庫に貯蔵する。
【0007】
メチレンブルー比色標準液 (時間の経過によって変色することはない)
1×10−6M methylen blue、2×10−6M methylen blue、3×10−6M methylen bluc、
4×10−6M methylen blue、5×10−6M methylen blue、6×10−6M methylen blue、
7×10−6M methylen blue、8×10−6M methylen blue、9×10−6M methylen blue、
10×10−6M methylen blue、15×10−6M methylen
blue、20×10−6M methylen blue、
25×10−6M methylen blue、30×10−6M methylen
blue、35×10−6M methylen blue、
40×10−6M methylen blue、45×10−6M methylen
blue、50×10−6M methylen blue、
のシリーズで低濃度の場合は、10−5M methylen blueをそれぞれ10ml、20ml、30ml、40ml、50ml、60ml、70ml、80ml、90ml、を採取して100mlに希釈する。
高濃度の場合は、10−4M methylen blueをそれぞれ10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、40ml、50mlを採取して100mlに希釈する。
これらを標準液として比色に供し、デヒドロゲナーゼ活性を測定する。
【0008】
測定方法
透明キューベットに予め定温にしたCK反応試薬を2ml注射器で注入する。
この反応試薬へ先に用意した植物切片0.1gを加え、温度センサーで温度を確認しながら、5分から10分で一定時間振盪浸漬し、反応する。
デヒドロゲナーゼによるメチレンブルーの脱色の後、一定時間後に色相を比較調査する。色相調査は、透明キューベットにmethylen blue標準液0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50×10
Mの溶液2mlを注射器で注入し、比色標準とする。
低濃度は現場で肉眼比色、高濃度は比色計で精密比色する。
【実施例】
【0009】
サニーレタスを水耕栽培し、根の活性に相違を生ずる様に、一方を通常的な通気をさせるためにエジェクターで空気の泡通気を行い、一方を非常に効率の高いマイクロバブル通気を行い、根の活性を比較した。

結果、本根系活性度定量測定法による測定の結果、琥珀酸脱水素酵素活性を定量的に比色測定することにより、微細な量の根の呼吸量も数値として捕捉された。すなわち、マイクロバブル通気区がエジェクター通気区の2倍活性が高いことが測定された。
【0010】
以上述べたように、本技術では透明なキューベットにCK反応液と試験用の切断根を入れ、温度を確認しながら、緩やかに振るだけで、還元反応が進み、開始5〜10分には根の活性を定量的に測定することを可能とした。
【発明の効果】
【0011】
農業は作物根系の活性の相違によって、生育、収量、品質、耐病性に相違がある。従って、圃場において作物の根系が今どの様な状態にあるかを正確に把握することが重要である。
本根系活性度定量測定法は、圃場において簡便に作物の根系の呼吸状態を定量的に測って、どの様な栽培対策を取れば良いかを圃場で即座に判断する材料を与えることを可能としている。
また、従来は植物の根系の活性の正確な測定法がなかったので、本方法とCK反応液を用いれば、植物の根の活性が、植物の種類、栽培法、樹齢または生育のステージ、気象の影響等でどの様な相違があるのか、従来誰も手を付けられなかった未知の事象を科学的に、学問的に解明することを可能としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物根の活性はその呼吸の大小で判定することができるが、呼吸の大きさを、根の有する琥珀酸脱水素酵素の強弱によって定量的に測定するため、呼吸促進緩衝液であるpH7の8×10−2M燐酸ナトリウム、1×10−2Mクエン酸ナトリウム緩衝液と呼吸基質の2.5×10−3M琥珀酸ナトリウム溶液と1〜20×10−6Mの極めて希薄なメチレンブルーから成るCK反応試薬へ、別に用意した植物の根の先端から10〜15mmの新鮮な切断根の一定量を浸漬し、空中からの溶存酸素の影響があっても大きな影響を受けず、根の放出する極めて少量の水素に反応させ、色調の変化を示し、色の濃さの比較によって、放出された水素量を測定することによって、根の有する琥珀酸脱水素酵素活性を、植物根とCK反応試薬を接触するだけで、極めて簡便に定量的に比色測定することを特徴とする植物根の活性度定量測定方法。
【請求項2】
「請求項1」の植物根の活性度定量測定方法において、最終的な濃度が、空中からの溶存酸素の影響があっても大きな影響を受けず根の放出する極めて少量の水素に反応させ、色調の変化を示すため、メチレンブルーの濃度を極めて希薄な1〜20×10−6Mの範囲になるように定め、8×10−2M燐酸ナトリウムと1×10−2Mクエン酸ナトリウムの緩衝液と呼吸基質の2.5×10−3M琥珀酸ナトリウム溶液を混和させ、基質と緩衝液と発色薬が1溶液の中に全部含まれる脱気したpH7の発色液で、植物根の活性度定量に当たって、根の先端から10〜15mmの新鮮な切断根の一定量を浸潰するだけで色の変化が起って、根の活性度が測定できることを特徴とする根の活性度測定用CK反応試薬。

【公開番号】特開2006−34275(P2006−34275A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243029(P2004−243029)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(398053550)有限会社情報科学研究所 (16)
【Fターム(参考)】