説明

植物の氷酢酸抽出による抗菌組成物

【課題】ウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して、十分な抗菌効果を与えると同時に、人間やペットが誤って口にしてしまっても致命的にならず、かつ製造方法が極めて単純で安価な、消臭効果と芳香性を持つ抗菌組成物を提供すること。
【解決手段】緑茶や紅茶や杉の葉茶や松の葉茶などやその原料となるの少なくとも1種類の抗菌性植物の酢酸抽出成分3重量%から5重量%にニガリもしくは海水から水分を蒸発させた時に残るミネラルとクエン酸を添加させた抗菌組成物である。この抗菌組成物は、例えば杉の青葉など抗菌性のある植物のエキスを酢酸で抽出し、天然塩とクエン酸を加えて攪拌し、最後に適量のゲルまたは寒天でかため室内に置いても使用できるが抗菌組成物を構成する成分が、いずれも自然界から得られ最終的に自然界に帰るという、エコロジーな抗菌組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間やペットに極めて安全であると共に自然界にも優しく、且つウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して抗菌作用を持つ、エコロジーな抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学的な抗菌組成物としては、ウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して有効であるとして広く使用されている二酸化塩素を主成分とする抗菌組成物が、最近では良く知られている。また、人体に対してより優しい天然物から作製される抗菌組成物としては、木酢液や竹酢液が良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−015722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の二酸化塩素を主成分とする抗菌組成物は、人体に対する安全性が天然の抗菌組成物よりも劣る上、人を不快にさせる塩素臭があるため、これを広範囲の、人の生活空間に放出させるにはあまり向いていない。また、天然物から作られる木酢液や竹酢液は、一般的に化学的に合成される抗菌組成物よりも、人体に対する安全性は比較的高いものの、作製方法によっては必ずしも安全とは言えない。さらに、木酢液や竹酢液を用いて広範囲の人の生活空間を抗菌したいと考えても、それらの臭気に満ちた空間は、とても人が心地良く生活できる環境とは言えない。加えて、上述の各抗菌組成物は製造が複雑なため非常に高価であり、ウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して、広範囲の生活空間を日常的に抗菌するには無理がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、ウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して、十分な抗菌効果を与えると同時に、人間やペットが誤って口にしてしまっても致命的な危倹を伴わず、広範囲の生活空間に放出しても人に不快感を与えず、かつ製造方法が極めて単純な安価な抗菌組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者ちは、まず安全性の観点と人に不快感を与えないとの観点から、原料を人が飲食可能で人に心地良い芳香を与える植物に絞り、何百通りもの組合せで、ウイルスよりも強力なカビ(真菌)を用いて、抗菌作用の大きさについて各種試験を実施した。その結果、少なくとも、抗菌組成物の成分として、お茶としても嗜好される煎茶、玉露、てん茶、釜炒り製玉露茶、番茶、焙じ茶、玄米茶、半発酵茶、紅茶、ウーロン茶、杉の葉茶、松の葉茶などの原料となる抗菌性植物の成分を酢酸で抽出した抽出液を、水に一定量含ませることにより、密閉空間及び開放空間の近隣箇所において細菌やカビ(真菌)の胞子を飛散阻止することができることがわかった。すなわち、本願発明にかかる抗菌組成物を細菌やカビ(真菌)に直接接触させるか、またはカビ(真菌)の近隣に置くことにより、細菌やカビ(真菌)の胞子を不活化させることができることが判明した。
【0007】
ここで、特に重要なことは、上述の杉などを精油として得た場合には、芳香成分はかなり残留するものの、大半の抗菌成分が水分と共に失われてしまうことである。したがって、杉の精油を酢酸に添加しただけでは、本願発明に係る抗菌組成物と同等の効果を有する抗菌組成物を得ることはできない。例えば、杉を用いた場合、抗菌力と芳香力を高めるために、杉の青葉の酢酸抽出液に杉の精油、ヒノキの精油などを適量添加するとより効果的である。
【0008】
本発明の一つの観点に係る抗菌組成物は、少なくとも、緑茶、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶など嗜好飲料としても使用される植物のグループから選択される少なくとも1種類の抗菌性植物の酢酸抽出成分3重量%から25重量%にニガリもしくは海水から水分を蒸発させて得られる海洋ミネラルとリンゴ酸を加えたものである。酢酸と海洋ミネラルに抗菌性植物の様々な成分を含ませることにより、酢酸と海洋ミネラルの抗菌力と植物の持つ抗菌力の相乗効果が生まれ、カビ(真菌)しいては様々なウイルス、細菌等に対する抗菌性を高めると同時に、消臭効果を発揮し人を心地良くさせる環境を維持する事が出来る。また、その植物の一部の成分が酢酸と反応し、他の抗菌成分に比較して環境空間への気化速度の速い酢酸の気化速度を遅延制御することができる。
【0009】
本発明の抗菌組成物は液体のまま使用する事も出来るが、高分子吸収剤や寒天で固めて使用する事も出来る。、高分子吸収剤で固める場合の添加量は、5重量%から10重量%が適量で、もっとも安定したのが7重量%であった。寒天で固める場合は、1重量%から3重量%が適量で、もっとも安定したのが1.2重量%であった。これよりも少ないとゲル状の抗菌剤にならないし、これよりも多いと全体が凝固して抗菌剤が蒸発し難くなる。しかし、抗菌力を増大させるため天然塩を5重量%から10重量%添加した抗菌剤の場合には、全体をゲル状にするためには、高分子吸収剤の場合でも10重量%の量を添加する必要がある。天然塩は10重量%以上加えても良いが、塩の量が多くなると、抗菌組成物をゲル状態にさせるため、添加するゲルや寒天の量が増大し、安価な抗菌組成物を提供できなくなる。また、塩を多く加えても、環境への放出量は限られ、そのほとんどがゲルや寒天とともに残渣として残るため意味がない。この意味からも海塩の量は5重量%程度が最適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗菌組成物は、ほぼ70重量%〜90重量%以上が水で、残りは人がお茶としても飲食可能な植物の酢酸抽出液と食品添加物なので、子供などが万一誤って飲んでしまっても、人体にほとんど有害な影響を与えることがなく、従来の抗菌組成物に比較して極めて安全である。また、本願発明に係る抗菌組成物は、ゲル状態に加工した場合、転倒しても零れ難い上、抗菌消臭成分をゲルから徐々に自然放出する構造のため、病院、保育所など6歳以下の子供がいる場所でも安全に使用できるし、電気的な除菌装置が使用できない、湿気の強い場所、電源のない場所、火気厳禁の場所などでも使用できる。さらに、抗菌組成物の固形物の形状や容器の形状を様々に変更して、ゲルど大気との接触面積を調整することによって、リビングやキッチンなどの広い空間からトイレや浴室などの比較的狭い空間まで、場所を選ばずに使用できる。
【0011】
さらに、本発明に係る抗菌組成物は、原料が安価である上、浸漬、攪拌、混合などの簡単な操作で作製できるので、従来の抗菌組成物に比較して極めて安価に製造することができる。また、原料として、緑茶、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶などに使用される植物や酢酸や天然塩やクエン酸などの食品添加物などを使用しているため、そのまま廃棄しても自然に帰るため、極めて地球に優しいエコロジーな製品である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
約8リットルの本願発明品を作成するためには、100グラムの緑茶を、500ミリリットルの氷酢酸に5時間以上漬け込み、緑茶の成分が氷酢酸に溶け込んだことが確認出来たら、氷酢酸と茶葉を分離し、緑茶の成分が溶け込んだ酢酸を400ミリリットルほどを1番容器に取り分ける。続いて、2番容器に、海水から水分を蒸発させて作成した海塩を400グラム、クエン酸を80グラムを3400ミリリットルの精製水で完全に溶かす。また、鍋に4リットルの精製水をいれ寒天120グラムの寒天を加え、拡散しながら80度までゆっくりと熱し、その後直ちに過熱をやめ3番容器に移し65度になるまで冷やす。その後、1番容器の中身と2番容器の中身を混ぜ、65度に冷えた3番容器の中身を混ぜる。こうして出来上がった本願発明にかかわる固まる前の寒天を容器や袋に入れて冷やして固め完成する。茶葉として、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶を用いるときには上記方法で緑茶の部分と入れ替えて行うことにより作成する事が出来る。つまり、本願発明品の製造方法は、緑茶、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶などを氷酢酸に漬け込んだ後のお茶の成分を含んだ酢酸を5重量%を1番容器に取り分け。2番容器に、海水から水分を蒸発させて作成した海塩5重量%、クエン酸1重量%と精製水39重量%を混ぜ撹拌し完全に溶かす。加熱可能な容器に精製水50重量%と、寒天1.5重量%入れ、80度まで拡散しながら温め、その65度まで3番容器に移して冷やす。その後、1番容器の中身と2番容器の中身を混ぜた後、65度まで冷えた3番容器の中身を混ぜ、容器や袋に一定量計り分け、好みの容器や袋に好みの量を入れ冷えたら完成する。寒天を使用せず高分子吸収剤を使用する場合は緑茶、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶などを氷酢酸に漬け込んだ後のお茶の成分を含んだ酢酸を5重量%を1番容器に取り分け。2番容器に、海水から水分を蒸発させて作成した海塩5重量%、クエン酸1重量%と精製水89重量%を混ぜ撹拌し完全に溶かした後に、1番容器の中身と2番容器の中身を混ぜ、その後高分子吸収剤と混合し好みの容器か袋に取り分けることにより作成する事が出来る。
【0013】
いずれの例でも、取扱の便宜上、抗菌組成物は寒天に含ませて使用したが、原液のままでも良い。原液のままの場合には、抗菌組成物の環境への放出速度が高くなるので、さらに短期間に同一の抗菌効果が得られる。
【実施例1】
【0014】
本発明を実施例、試験例により更に詳しく説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
(抗菌組成物実施例)
下記、表1に従って、本発明の実施例1について説明する。直径78mm、高さ51mmの円柱形の容積は244cmのプラスチック容器内に、検体10gとジャガイモをすりおろし寒天で固めたものと、カビの生えた食パンを入れ密閉してカビの生えたパンからジャガイモをすりおろして寒天で固めたものへのカビの転移を肉眼で観察した。いずれも検体と食パンを入れた時の容器内の温度は30℃で、湿度は85%であり、この容器内で実施例1と比較例1〜5による抗菌組成物比較データを得た。尚、培養期間と食パン表面の菌の発育の評価は、1が全く菌が発育していない。2が10%以下の発育、3が10〜30%以下の発育、4が30〜60%以下の発育、5が60%以上の完全発育を表している。なお、氷に示す配合は全て重量%である。
【0015】
実施例1には、全くカビが生えなかったのに対し、比較例2と比較例3にカビが生えたことから、お茶の酢酸抽出液と海洋ミネラルとクエン酸を混ぜることにより菌に対する不活化作用が強いことが理解できる。
【0016】
実施例1には、全くカビが生えなかったのに対し、比較例1にカビが生えたことから、酢酸よりも茶葉成分を含んだ酢酸の方が菌に対する不活化作用が強いことが理解できる。
【実施例2】
【0017】
下記、表2に従って、本発明の実施例2について説明する。実施例2は、杉の葉による本願発明にかかわる液体10マイクロリットルを、滅菌した直径13ミリメートルの円形ろ紙に含浸させて試験片とし、本願発明にかかわる液体の抗菌力をJIS LI902に準じたハロー試験法により評価した。
試験培地は、普通寒天培地(栄研)である。使用菌株は、Escherichia coli(NBRC−3972),Stapylococcus aureus(NBRC−12732),Pseudomonas aeruginosa(NBRC−12689),Methicillin resistant Staphylococcus aureus(IID−1677)を使用した。
【0018】
実施例2により、杉の葉による本願発明品は、Echerichia coli(NBRC−3972)、Stapylococcus aureus(NBRC−12732)、Pseudomonas aeruinosa(NBRC−12689)、Methicillin resistant Staphylococcus aureus(IID−1677)に対する不活化作用があることが理解できる。
【実施例3】
【0019】
下記、表3に従って、本発明の実施例3について説明する。実施例3は、本願発明にかかわる液体の最小発育阻止濃度を測定したものである。
【0020】
実施例3により、杉の葉による本願発明にかかわる液体はごく微量で菌類に影響を与えることが理解できる。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
カビ(真菌)は各種ウイルスよりもサイズが大きく、細胞組織としても強力であることから、また、これまで各種研究機関で試験を行った結果によれば、カビ(真菌)に効果のある抗菌組成物は、ウイルスに対しても同様の効果を示したことから、本願発明に係る抗菌組成物は、各種のウイルスや、それに対して開発された各種ワクチンに対して耐性を持ってしまったウイルスに対しても有効であると推測される。
【0025】
上述の説明では、抗菌力に加えて芳香力を最大に維持するために、茶葉に使用される植物の酢酸抽出液に0.01重量%程度の芳香性植物の精油を添加し香りを楽しむことも出来る。
【0026】
カビ(真菌)は各種ウイルスよりもサイズが大きく、細胞組織としても強力であることから、また、これまで各種研究機関で試験を行った結果によれば、カビ(真菌)に効果のある抗菌組成物は、インフルエンザウイルスに対しても同様の効果を示したことから、本願発明に係る抗菌組成物は、最近のA型インフルエンザウイルスや、それに対して開発された各種ワクチンに対して耐性を持ってしまったウイルスに対しても有効であると推測される。
【産業上の利用の可能性】
【0027】
人体、ペット、植物に対し極めて安全な抗菌成分を揮発させる組成物であるため、様々な場所での使用が予想できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶、紅茶、杉の葉茶、松の葉茶や、その原料として使用される少なくとも1種類の飲食可能な植物を氷酢酸によって抽出した抽出液1重量%から25重量%に、ニガリもしくは海水から水分を蒸発させて得られる海洋ミネラルとを含むことから成る抗菌組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌組成物にさらに1重量%から40重量%の範囲のクエン酸もしくはクエン酸塩を添加した抗菌組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の抗菌組成物にさらに1重量%から40重量%の範囲の塩化カリウムを添加した抗菌組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の植物活性効果を有する抗菌組成物を、0.5重量%から5重量%の寒天で固めた組成物
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の植物活性効果を有する抗菌組成物を、1重量%から20重量%のカルボキシメチルセルロースと混ぜたゲル状の組成物

【公開番号】特開2011−201845(P2011−201845A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90847(P2010−90847)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510101055)
【Fターム(参考)】