植物リグニン含量の修飾
モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、DNA構築物を用いて、植物においてリグニン含量を減少させるかまたは調節することも可能である。いくつかの態様において、DNA構築物は、4CL、C3H、CCR、C4H、Cald5H、SADまたはCCoAOMTの遺伝子の少なくとも部分を含む。維管束優先的プロモーターおよび恒常的プロモーターを用いて、構築物の発現を駆動することも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
本出願は、どちらも参照により本明細書に組み入れられる、2004年9月22日に出願された米国出願第10/946,650号および2004年9月22日に出願された米国出願第10/946,644号に優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、リグニン生合成経路の操作を通じて、植物、特に樹木を遺伝的に修飾することに関し、かつより詳細には、4CL、C3H、CCR、C4H、Cald5H、SADまたはCCoAOMTの下方制御を通じて、植物を遺伝的に修飾して、リグニン含量の改変を達成することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
複雑なフェノール性ポリマーであるリグニンは、二次木質部の細胞壁の主な構成要素である。一般的に、リグニンは、木材の乾燥重量の25%を構成し、セルロースに次いで、地上で二番目に最も豊富な有機化合物となっている。リグニンは、茎に強度および剛性を与え、かつ微小繊維を物理的、化学的および生物学的攻撃から保護するが、木材を紙に変換するプロセスを妨害する。紙の製造のために木材繊維を遊離させるには、プロセシングした木材チップから、リグニンの大部分を取り除かなければならない。木材繊維からリグニンを抽出するのは、困難で、かつ費用がかかるプロセスであり、作用が強い(harsh)化学薬品を伴い、かつ毒性廃棄物を生じる。
【0004】
その結果、研究者らは、より費用効率的で、かつ環境に優しく、木材製品中のリグニン含量を減少させる方法を検索してきた。1つの代替法は、リグニンの生合成経路を遺伝的に修飾する工程を伴う。例えば、Chiangらは、植物のモノリグノール生合成経路を遺伝的に修飾することによって、植物におけるリグニン含量を減少させることを試みた。WO 02/20717を参照されたい。この方法は、酵素4-クマル酸-CoAリガーゼ(4CL)、コニフェリルアルデヒド5-ヒドロキシラーゼ(Cald5H)、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)依存性5-ヒドロキシコニフェルアルデヒド、O-メチルトランスフェラーゼ(AldOMT)、コニフェリルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)およびサインウィ(sinewy)アルコールデヒドロゲナーゼ(SAD)などの、モノリグノール生合成経路中の重要なリグニン調節部位を含む、フェニルプロパノイド経路由来の多数の遺伝子で植物を形質転換することを伴う。一方、他の研究者らは、これらの遺伝子のコピーを植物ゲノム内に個々に導入することによって、リグニン含量を減少させるように試みてきた。例えばWO 00/58489(Scald);WO 99/24561(4CL)を参照されたい。研究者らはまた、アンチセンス戦略において、これらの遺伝子を使用して、リグニン生合成を調節してきた。例えばWO 99/24561を参照されたい。これらの方法のいくつかは、リグニン合成の下方制御に成功したが、リグニンの下方制御は、植物表現型に有害であり得る。Anterola et al., Phytochemistry, 61:221-294 (2002)。したがって、リグニン発現を調節するための改善法が必要とされる。
【0005】
先の技術に対する強力な代替法として、mRNAレベルで、遺伝子発現をサイレンシングさせる方法が、最近、現れた。RNA干渉(RNAi)は、配列特異的方式で、遺伝子サイレンシングを導く二本鎖RNA(dsRNA)の導入によって誘発される、転写後プロセスである。C.エレガンス(C. elegans)におけるRNA干渉の最初の発見(Fire et al., Nature, 391:806-811 (1998)および米国特許第6,506,559号)があり、dsRNAを導入すると、配列特異的なサイレンシング効果を誘導可能である、多くの生物の例が続いた。例えば、線虫類、トリパノソーム、植物、真菌および動物に渡るほど多様な生物において、RNAiが天然に存在すると報告されている。天然には、RNAiは、ウイルスから生物を保護し、トランスポゾン活性を調節し、かつ異常な転写産物を取り除くために働いている可能性が最も高い。
【0006】
ショウジョウバエ、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)における研究によって、RNAiが2段階機構であることが示唆されている(Elbashir et al., Genes Dev., 15(2): 188-200 (2001))。まず、ダイサーとして公知である酵素によって、長いdsRNAが低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる21〜23リボヌクレオチド (nt) 断片になる。次いで、siRNAが、リボヌクレアーゼ複合体(RNA誘導性サイレンシング複合体を表すRISCと称する)と会合し、この複合体が相補的mRNAをターゲットとするようにする。次いで、RISCが、相補的siRNAと反対側の、ターゲットとされるmRNAを切断し、mRNAを他のRNA分解経路に対して感受性にする。
【0007】
RNAiは、リグニン合成を調節する、先行法の代替法を提供可能である。しかし、潜在的な能力が達成可能となる前に、リグニン合成の背景において、RNAiプロセスを開始し得るDNA構築物を開発しなければならない。
【発明の開示】
【0008】
概要
1つの態様において、リグニン関連遺伝子の発現を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。別の態様において、植物におけるリグニンの発現を調節する方法を提供する。さらに、リグニン関連遺伝子の発現を調節するのに有用なDNA構築物を含む組換え植物を産生する。
【0009】
1つの態様において、DNA構築物は、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。いくつかの態様において、モノリグノール生合成経路における遺伝子は、4CL、C3H、CCR、C4H、Cald5H、SADまたはCCoAOMTからなる群より選択される。
【0010】
別の態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。こうした構築物の使用を含む、植物におけるリグニンの発現を調節し、阻害し、かつ/または減少させる方法もまた、提供する。
【0011】
さらに別の態様において、植物細胞におけるリグニンの発現を阻害する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む構築物を該植物細胞のゲノム内に組み込む工程、ならびに該植物細胞を増殖させる工程を含む。こうしたプロセスによって産生される植物および植物細胞もまた提供し、それらに由来する紙および木材製品もまた提供する。こうしたトランスジェニック植物に由来するパルプおよびパルプ由来製品もまた提供する。別の局面において、こうしたトランスジェニック植物に由来する固形木材製品を提供する。木材製品には、例えば、材木、製材および複合材が含まれる。
【0012】
さらに別の態様において、5’から3’方向に、プロモーター、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞を産生する。第一のDNAセグメントに機能可能であるように連結されているプロモーターは、植物細胞ゲノムに対して、内因性であっても、また外因性であってもよい。他の態様において、第一のDNAセグメントが、C3H、C4H、CCRまたはCCoAOMT遺伝子の少なくとも部分に対応する、植物細胞を産生する。
【0013】
植物において、LIMタンパク質は、木材を開発するのに非常に重要な、リグニン生合成経路中のいくつかの遺伝子を調節することが立証されてきた(Kawaoka A, Ebinuma H 2001 Transcriptional control of lignin biosynthesis by tobacco LIM protein. Phytochemistry 57:1149-1157, Kawaoka et al. Plant J. 22: 289-301 (2000))。したがって、さらに別の態様において、5’から3’方向に、プロモーター、LIM遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞を産生する。
【0014】
別の態様において、木材を作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該木材を得る工程を含む。
【0015】
別の局面において、木材パルプを作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該木材パルプを得る工程を含む。
【0016】
さらに別の態様において、紙を作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該紙を得る工程を含む。
【0017】
別の局面において、DNA構築物は、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されており、かつモノリグノール生合成経路中の該遺伝子は4CL遺伝子であり、かつ該DNA構築物は、pARB1202、pARB675およびpARB599からなる群より選択される。
【0018】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412である。
【0019】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物はpARB368である。
【0020】
他の局面において、DNA構築物は、CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB1203、pARB1205、pARB675、pARB661、pARB662およびpARB374からなる群より選択される。
【0021】
さらに別の態様において、DNA構築物は、SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB486、pARB487およびpARB488からなる群より選択される。
【0022】
1つの局面において、本発明は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を、植物ゲノム内に組み込む工程を含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法を提供する。別のものにおいて、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を、植物ゲノム内に組み込む工程を含む。さらに、またはあるいは、こうした方法は、CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を使用してもよい。他の局面において、植物におけるリグニン発現を阻害する方法は、SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を伴う。
【0023】
こうした方法によって産生される植物および植物細胞もまた提供し、それらに由来する紙および木材製品もまた提供する。こうしたトランスジェニック植物に由来するパルプおよびパルプ由来製品もまた提供する。別の局面において、こうしたトランスジェニック植物に由来する固形木材製品を提供する。木材製品には、例えば、材木、製材および複合材が含まれる。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点が、以下の詳細な説明から明らかであろう。詳細な説明および特定の実施例は、好ましい態様を示すものの、例示のみのために提供し、これは、本発明の精神および範囲内の多様な変化および修飾が、この詳細な説明から、当業者には明らかになるであろうためである。さらに、実施例は、本発明の原理を立証し、かつ先行技術の当業者に対して、明らかに有用であろうすべての例に対する本発明の適用を具体的に例示すると期待することは不可能である。
【0025】
詳細な説明
1つの態様において、ターゲットとされる遺伝子の発現を抑制するためにDNA構築物を用いてもよい。本明細書記載の構築物および方法は、インビトロまたはインビボで個々の細胞において使用可能である。一般的に、構築物は、二本鎖RNA(dsRNA)をコードし、かつRNA干渉(RNAi)を開始することによってターゲット遺伝子を選択的に抑制する。好ましい態様において、DNA構築物を用いて、植物におけるリグニン含量を減少させる。
【0026】
1つの局面において、植物のリグニン含量を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。1つの態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。したがって、DNA構築物は、転写されると、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のRNAセグメント、スペーサーRNAセグメント、および第一のRNAセグメントに相補的な第二のRNAセグメントを含むRNA分子を生じる。C3H、C4H、CCoAOMT、コニフェリルアルデヒド5-ヒドロキシラーゼ(フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ(F5H)としても知られる)およびCCRのDNAセグメントを含む構築物は、類似の方式で作用する。
【0027】
本発明が作用する機構は完全には理解されておらず、かつ本発明者らは、任意の特定の理論に本発明を限定することを望まないものの、生じるRNA分子の第一および第二のRNAセグメントがステム・ループを形成すると考えられる。ステムループのdsRNAは、分解されて、長さ約21〜23ヌクレオチドの低分子干渉RNA(siRNA)になる可能性がある。次いで、siRNAが、リボヌクレアーゼ複合体(RNA誘導性サイレンシング複合体を表すRISCと称する)と会合し、この複合体が相補的mRNAをターゲットとするようにする。次いで、RISCが、相補的siRNAと反対側の、ターゲットとされるmRNAを切断し、mRNAを他のRNA分解経路に対して感受性にする。
【0028】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。さらに別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。他の態様において、DNA構築物は、CAld5H遺伝子またはSAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。
【0029】
定義
句「ターゲット遺伝子」および「関心対象の遺伝子」は、本明細書において交換可能に用いられる。ターゲット遺伝子は、現在の状況で理解される際、調節または抑制のため、特定される遺伝子を意味する。ターゲットとされる遺伝子は、例えば、転写因子結合部位またはエンハンサーなどの制御要素を含有しても、またはしなくてもよい。抑制のために選択され得る遺伝子には、細胞壁タンパク質などの構造タンパク質、または転写因子および受容体などの制御タンパク質をコードする遺伝子、ならびに他の機能遺伝子が含まれる。さらに、この用語は、ポリペプチドのコード領域だけでなく、DNA中に存在するイントロン、制御要素、プロモーターおよび転写ターミネーターも含むよう意味する。したがって、「ターゲット遺伝子の少なくとも部分」は、関心対象の遺伝子の、転写された配列の少なくとも部分および/またはプロモーターの少なくとも部分および/またはターミネーターの少なくとも部分を含むよう意味する。
【0030】
本明細書記載のDNA構築物は、最も基本的なレベルで、プロモーター、1つまたは複数のDNAセグメントおよび転写ターミネーターを含む。本明細書において、「DNAセグメント」は、少なくともいくつかの隣接塩基で構成されるデオキシリボ核酸分子を指すよう意味する。ターゲット遺伝子に対応するDNAセグメントは、長さ30塩基対(bp)以上、好ましくは少なくとも50bpかつ2000bp未満、かつより好ましくは少なくとも100bpかつ750bp未満である。DNAセグメントは一本鎖でもまた二本鎖でもよい。本発明の状況内で、DNAセグメントには、遺伝子もしくはcDNA、またはそれらの部分が含まれてもよいし、あるいはプロモーターもしくは制御要素、またはそれらの部分が含まれてもよい。
【0031】
用語「RNAセグメント」は、少なくともいくつかの隣接塩基で構成されるリボ核酸分子を指す。RNAセグメントは、転写物、すなわち全ポリペプチドをコードするmRNA分子であってもよいし、またはその部分であってもよい。さらに、RNAセグメントは、本明細書に定義するRNAセグメントの性質を満たす限り、ポリペプチドまたはその任意の部分をコードする必要はない。例えばRNAセグメントは、ペプチドをコードしない、イントロン、5’-UTR、または3’-UTRを含んでもよい。RNAセグメントはまた、プロモーター、制御要素、または非遺伝子配列を含むDNAセグメントが転写される際にも産生される。
【0032】
用語「スペーサー」は、2つのDNAまたはRNAセグメントを分離する、一連の隣接ヌクレオチドを指す。1つの例において、「スペーサーDNAセグメント」は、2つのRNAセグメントを分離する「スペーサーRNAセグメント」をコードする。スペーサーの長さは、10塩基対(bp)〜2000bpまたはそれより多くの、広い範囲に渡って多様である可能性もある。DNAの非常に長い相補的セグメントが、短いスペーサーによって分離される場合、構築物は不安定になり得る。したがって、好ましくは、スペーサーは、分離するセグメントの長さの1/4〜2倍の間でなければならない。例えば、160bpの相補的DNAセグメントが存在する場合、これらの間のスペーサー・セグメントは、好ましくは40〜320bpの間であろう。スペーサーは、生じるスペーサーRNAが、転写物の相補的DNAセグメントより、はるかに短くなるように、転写物からスプライシング・アウトされるイントロンをコードすることも可能である。
【0033】
「相補的」RNAまたはDNAセグメントは、互いに特異的に結合するであろうセグメントである。好ましくは、2つの相補的セグメントの配列は、互いに少なくとも80%相補的であるべきである。より好ましくは、相補性は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%でさえあるべきである。互いに相補的であるDNAセグメントは、長さ30塩基対(bp)以上であり、好ましくは少なくとも50bpかつ2000bp未満、かつより好ましくは少なくとも100bpかつ750bp未満であってもよい。
【0034】
95%相補性によって、例えば、相補的RNAまたはDNAセグメントのヌクレオチドは、一方のRNAまたはDNAセグメントが、このRNAまたはDNAセグメントの他方の相補鎖の100塩基あたり、5つまでの点突然変異を含有することも可能であることを除いて、正確に塩基同士の方式で、互いに結合するであろう。点突然変異は、塩基欠失の形であっても、または塩基置換の形であってもよい。さらに、参照配列のこれらの突然変異は、相補ヌクレオチド配列の一方の5’もしくは3’末端位に存在してもよいし、あるいは参照配列におけるヌクレオチド配列の中に、個々に点在するか、または参照配列内の1つもしくは複数の隣接基の状態で点在するかいずれかであってもよい。
【0035】
実際問題として、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて、配列情報を比較することによって、相補性パーセント、ならびに同一性パーセントを決定してもよい。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch (1970)の並列法を利用する。簡潔には、GAPプログラムは、類似である、並列した記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を、2つの配列のうち、より短い配列における記号の総数によって割ったものとして、類似性を定義する。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、ならびにGribskovおよびBurgess(1986)の加重アミノ酸比較マトリックス、(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらなる0.10のペナルティ;ならびに(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。あるいは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて相補性パーセントを評価してもよい。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最適セグメントを見出す。Bestfitまたは任意の他の配列並列プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明記載の参照配列に95%同一であるかどうかを決定する際には、もちろん、参照ヌクレオチド配列の全長に渡って同一性パーセントを計算し、かつ参照配列中のヌクレオチドの総数の5%まで、相同性中のギャップを認めるように、パラメータを設定する。
【0036】
反対のDNA鎖上に類似かまたは同一の配列を有する2つのDNAセグメントは、「逆方向反復」と称される。逆方向DNA反復を持つ領域を通じた転写は、互いに「相補的」なRNAセグメントを生じる。RNAの2つの相補的セグメントを含む転写物は、二本鎖領域を持つ、単一のRNA分子を形成し得る。こうした二本鎖領域はときに、「ステム・ループ」または「ヘアピン」と呼ばれる。
【0037】
「転写ターミネーター」によって、RNAポリメラーゼが転写を停止するかまたは遅延させるようにする、RNA転写物の3’端をコードするDNAのセグメントを意味する。大部分の真核生物mRNAは、その3’端に付加されたポリ(A)セグメントを有するため、大部分の転写ターミネーターは、アデノシル残基が付加される単数または複数の塩基を特定する。したがって、転写ターミネーターは、ポリ(A)テールが付加されるヌクレオチド(単数または複数)にすぐ隣接し、かつそのヌクレオチドを含む、mRNAの3’-UTRの少なくとも部分をコードするDNAを含み得る。転写ターミネーターは、さらに、転写停止部位のより完全なDNAコンテクストを提供する、ポリアデニル化部位(単数または複数)直後のDNA配列の少なくとも部分を含み得る。転写ターミネーターはまた、ヒストン遺伝子またはリボソームRNA遺伝子の転写ターミネーターなどの、ポリアデニル化のためのターミネーター以外の転写を停止するセグメントも含む。
【0038】
DNA構築物は、本明細書において、ベクターもまた含む。用語「ベクター」は、宿主細胞における自律複製が可能なDNA分子を指す。当業者に公知であるように、ベクターには、限定されるわけではないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルスベクター、ファージベクター、酵母ベクター、哺乳動物ベクター等が含まれる。典型的には、ベクターには、薬剤耐性マーカーをコードする遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子または栄養要求株を補完する遺伝子が含まれるであろう。ベクターを含有する宿主細胞クローンの選択を補助する目的のため、多様な抗生物質耐性遺伝子がベクターに取り込まれている。例えば、細菌宿主細胞への導入が意図されるベクターに取り込まれた抗生物質耐性遺伝子には、限定されるわけではないが、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、ネオマイシン、G418、ブラストサイジンSおよびクロラムフェニコールからなる群より選択される抗生物質に対する耐性を与える遺伝子が含まれる。栄養要求株を補完する遺伝子は、プリン、ピリミジン、アミノ酸(例えばリジン、トリプトファン、ヒスチジン、ロイシン、システイン)、またはスフィンゴ脂質など、宿主による栄養的構成要素または機能的構成要素の使用を促進する酵素またはタンパク質をコードする遺伝子である。
【0039】
さらに、ベクターには、特定の宿主細胞の複製起点(レプリコン)が含まれるであろう。例えば、多様な原核生物レプリコンが当業者に公知であり、かつ原核宿主細胞における組換え分子の自律複製および維持を指示するように機能する。
【0040】
用語「機能可能であるように連結された」は、DNA配列がRNAセグメントに転写されるのに適した配向で、プロモーター−DNA配列の組み合わせが形成されるような、DNAの化学的融合、連結、または合成を指す。プロモーター−DNA配列からの転写は、プロモーターによって制御可能であり、場合によって、他の制御要素と組み合わされることも可能である。あるいは、プロモーター−DNAセグメントからの転写は、そのプロモーターによって制御されないことも可能である。プロモーター−DNA配列の組み合わせの構築において、一般的に、プロモーターおよび天然設定においてそのプロモーターが調節するセグメントの間の距離と、ほぼ同じ距離で、DNAセグメントの開始コドン上流に、プロモーターを配置することが好ましい。しかし、当技術分野に公知であるように、プロモーター機能の喪失を伴わず、距離の実質的な変動に適応することも可能である。
【0041】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに結合して転写を開始することが可能な、天然または合成のヌクレオチド配列を示す。こうしたプロモーターは当業者に公知であり、かつ細菌、ウイルス、真菌、植物、哺乳動物、または他の真核生物プロモーターを含むことも可能であり、その選択は、形質転換される宿主細胞または生物に応じる。ターゲット遺伝子と同じ組織で、抑制性構築物が転写される場合に、ターゲット遺伝子のサイレンシングが最も有効であろうと予期される。サイレンシングシグナルが、植物の離れた部分に転位置しうるという証拠がある(例えばPalauqui and Vaucheret, 1998, PNAS 95: 9675-9680.)が、いくつかの細胞は、こうしたシグナルを受け取ることが不可能である可能性もある。例えば、成長中のシュートの最先端でのGFP発現は、ウイルス抑制性構築物によってサイレンシングされなかった(Dalmay et al., 2000, Plant Cell 12: 369-379.)。多くの細胞種で発現される遺伝子のサイレンシングを達成するためには、少なくとも中程度の強度の恒常的プロモーターが好ましい。植物において作用する恒常的プロモーターの例は、CaMV 35SもしくはFiMVなどのウイルスプロモーター(Sanger et al., 1990. Plant Mol. Biol. 14: 433-443)、ノパリン・シンターゼ(nos)もしくはマンノピン・シンターゼ(mas)などの細菌プロモーター、またはシロイヌナズナ属(Arabidopsis)ACTIN2もしくはUBIQUITIN10遺伝子由来のものなどの植物プロモーター(An et al., 1996, Plant J. 10: 107-121; Norris et al., 1993, Plant Mol. Biol. 21 : 895-906)である。抑制構築物を駆動する恒常性プロモーターを用いて、限定された発現パターンのターゲット遺伝子をサイレンシングすることもまた可能である。しかし、サイレンシングされる表現型に必要なものを超えた、抑制構築物の発現を回避することが望ましいこともあり得る。ターゲット遺伝子のものと類似の発現パターンを有する、抑制構築物用のプロモーターを用いてもよい。例えば、木質部で発現されるターゲットのサイレンシングを計画している場合、パセリ(parsley)4CL遺伝子由来のプロモーター(Hauffe et al., 1993, Plant J. 4: 235-253)を用いてもよいし、または成長点特異的遺伝子をターゲットとする場合、シロイヌナズナ属PROLIFERAプロモーター(Springer et al., 1995, Science 268: 877-880)を用いてもよい。1つの態様において、同一プロモーター配列間の相互作用を回避するため、プロモーターは、形質転換しようとする種とは異なる種に由来する。真核細胞における発現のための多様な他のプロモーターが当技術分野に知られ、限定されるわけではないが、SV40後期プロモーターおよびRSVプロモーターのような、ウイルスまたはウイルス様の基本的プロモーター、ならびに真菌または哺乳動物細胞性プロモーターが含まれる(例えば、Larsen et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23:1223-1230; Donis et al., 1993, BioTechniques 15:786-787; Donda et al., 1993, Mol. Cell. Endocrinol. 90:R23-26;およびHuper et al., 1992, In Vitro Cell Dev. Biol. 28A:730-734を参照されたい)。真核宿主細胞において、レプリコンの一部である組換え分子の複製および維持を指示するように、真核細胞中で機能する、多様なレプリコンが当業者に公知である。
【0042】
用語「制御要素」は、DNA転写またはmRNA翻訳の特異性または効率に影響を及ぼす核酸配列を指し、限定されるわけではないが、転写因子、エンハンサー、ならびに転写または翻訳開始および終止シグナルが含まれる。エンハンサー配列は、すぐ近くのDNAセグメントに関する位置および配向とは比較的独立した方式で、転写効率を増加させるように見えるDNA要素である。したがって、DNA構築物に応じて、エンハンサーは、特定のDNAセグメントの上流または下流いずれかに配置され、転写効率を増加させることも可能である。当技術分野に公知である組換えDNA法を用いて、こうした制御要素を構築物DNA配列内に挿入してもよい。他の制御要素には、限定されるわけではないが、RNAセグメント上の5’非翻訳領域(5’UTR)ならびにRNAセグメント上の3’UTR(すなわちポリ(A)テールを含む)が含まれ、これらは、RNAセグメントまたは転写物の安定性および効率的な翻訳に必要である。
【0043】
本明細書において、「カセット」は、プロモーター、転写ターミネーター、およびこれらの間に挿入されたDNAセグメントを含むDNA構築物の種類である。カセットを用いて、プロモーターが活性である宿主細胞または生物において、DNAまたはRNAセグメントの発現を駆動することも可能である。
【0044】
用語「実質的な配列同一性」は、2以上のヌクレオチド配列の関連性を記載する。好ましくは、上記のように計算した際、配列は、少なくとも80%互いに同一である。より好ましくは、同一性は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%でさえあるべきである。
【0045】
「約」は、一般の当業者によって理解されるであろうし、かつこの用語を用いる状況に応じて、ある程度多様であろう。使用される状況を考慮して、一般の当業者に明らかでない、この用語の使用があった場合、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味するであろう。
【0046】
考察
本発明の1つの局面において、植物におけるリグニン含量を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。1つの態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。
【0047】
P.ラディアタ(P. radiata)(参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,380,459号)由来のスーパーユビキチンなどの恒常性プロモーターを用いて、ターゲット4CLまたは他のリグニン生合成遺伝子の発現を駆動してもよい。別の態様において、本発明のDNA構築物は、木質部に特異的な発現を導くプロモーターを含む。P.タエダ(P. taeda)において4CL遺伝子上流の領域から単離されたプロモーター断片(参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第6,252,135号)が、強い木質部優先的な発現を示すプロモーターの一例である。本明細書に記載する実験的証拠によって、本発明のDNA構築物において4CLプロモーターを使用すると、植物の高さに不都合に影響を及ぼさずに、リグニン含量が効果的に減少することが立証される。
【0048】
本発明の構築物の第一および第二のDNAセグメントは、任意の4CL遺伝子に由来してもよい。好ましい態様において、マツ(pine)またはユーカリ(eucalyptus)樹木のリグニン含量を修飾する際、第一および第二のDNAセグメントは、ピナス・ラディアタ(Pinus radiata)(マツ)由来の4CL遺伝子(米国特許出願公報第20030131373号)またはE.グランディス(E. grandis)由来の4CL遺伝子(米国特許第6,410,718号)に由来する。同様に、本発明の構築物の第一および第二のDNAセグメントは、4CL遺伝子の任意の部分に由来してもよい。例えば、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpまたは1000bpの断片を用いてもよい。本明細書に示す他の例示的な長さには、189bp、327bp、334bp、373bp、389bpおよび668bpが含まれる。好ましい態様において、第一のDNAセグメントは、図のSEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24、33および48に示す配列から選択される断片を含む。
【0049】
第一のDNAセグメントは、4CL遺伝子のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに由来してもよい。第二のDNAセグメントは、第一のDNAセグメントに相補的であり、かつしたがって反対の鎖に由来するため、第一のDNAセグメントの鎖選択は、必然的に第二のDNAセグメントの供給源に影響を及ぼす。
【0050】
上述のように、スペーサーDNAセグメントは、他のRNAセグメントを分離するように働く、スペーサーRNAセグメントをコードする。スペーサーRNAセグメントは、本発明において、本発明の構築物のDNAカセットの転写から生じるステム・ループ中のループとして機能する。スペーサーDNAセグメントは、完全に合成であっても、または天然DNA配列に由来してもよい。1つの態様において、スペーサーDNAセグメントは、イントロンに由来する。例示的なスペーサーDNAセグメントを図1に示す。
【0051】
当技術分野に周知の核酸分子の操作のために設計された方法および技術を用いて、先に同定された関心対象の遺伝子、またはその一部もしくはプロモーターを単離してもよい。例えば、核酸分子の単離、精製およびクローニングのための方法、ならびに真核および原核宿主細胞の使用、ならびにこうした細胞における核酸およびタンパク質発現を説明する方法および技術が、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989、およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Frederick M. Ausubel et al. Eds., John Wiley & Sons, Inc., 1987に記載され、これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
関心対象の遺伝子またはプロモーターの少なくとも部分を含むDNA構築物を、宿主細胞内に導入してもよく、こうした細胞は、前述の通り、個々の細胞、培養中の細胞、宿主生物の一部としての細胞、受精卵母細胞もしくは配偶体または胚細胞であってもよい。用語「導入された」は、ターゲット宿主細胞に組換えベクターDNAを送達するための、当技術分野に公知の標準法を指す。こうした方法には、限定されるわけではないが、トランスフェクション、感染、形質転換、自然取り込み、エレクトロポレーション、微粒子銃およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)が含まれる。アグロバクテリウムは、ポプラ(poplar)(Leple, J.C. et al. 1992. Plant Cell Rep. 11 : 137-141.)、ユーカリ(Tournier, V. et al. 2003. Transgenic Res. 12: 403-411.)およびマツ(米国特許第6,518,485号(微粒子銃)および米国公開特許出願第20020100083号)を含む、多様な種において、成功裡に用いられてきている。アグロバクテリウムは、トランスジェニック・テーダマツ(loblolly pine)、トウヒ(Norway spruce)(Wenck, A.R. et al. 1999. Plant Mol. Biol. 39: 407-416.)、イネ(rice)(Hiei, Y. et al. 1997. Plant Mol. Biol. 35: 205-218.; Cheng, X. et al. 1998. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95: 2767-2772.)、コムギ(wheat)(Cheng, M. et al. 1997. Plant Physiol. 115: 971-980.)およびトウモロコシ(maize)(Ishida, Y. et al. 1996. Nat Biotechnol. 14: 745-750.)の再生植物を得るのに成功した、唯一の公開されている方法である。オオムギ(barley)(Tingay, S. et al. 1997. Plant J. 11: 1369-1376.)、サトウキビ(sugarcane)(Arencibia, A.D. et al. 1998. Transgenic Research 7: 1-10; Enriquez-Obregon, G.A. et al. 1998. Plant 206: 20- 27.)、バナナ(banana)(May, G.D. et al. 1995. Bio/Technology 13: 486-492.)、アスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)(Delbreil, B. et al. 1993. Plant Cell Rep. 12: 129-132.)およびアガパンサス・プラエコクス(Agapanthus praecox)(Suzuki, S. et al. 2001. Plant Sci. 161 : 89-97.)などの種で、形質転換が利用されている。
【0053】
リグニン含量を調節する際のDNA構築物の有効性を多様な方法で測定可能である。例えば、US Dairy Forage Research Center, Madison, Wisconsinで用いられている方法にしたがって、抽出物不含粉末試料に対して、臭化アセチル・リグニン定量を行ってもよい(Fukushima, R.S. and Hatfield, R.D., J. Ag. Food Chem., 49(7):3133 (2001))。熱分解分子ビーム質量分析もまた、使用可能である。この方法は、不活性ヘリウム大気中、500℃で、試料(0.1g)を迅速に加熱することからなる。サンプリング開口部を通じて膨張させ、続いて分子ビームを形成することによって、生成された熱分解産物を、リアルタイムで直接サンプリングして、迅速な試料急冷を提供し、かつ試料凝縮を阻害する。質量分析装置は、サンプリングされたすべての産物の普遍的な検出を提供し、かつ分子ビームサンプリングは、元来の分子から代表的な産物が検出されることを確実にする(Magrini et al., Environmental Pollution, 116: 255-268 (2002))。別の例において、核磁気共鳴(NMR)を用いて、リグニン構造を分析してもよい。NMRは、磁場の影響下で核による高周波電磁放射の吸着を測定することによって、原子内情報および構造情報を検出することも可能な分析法である。典型的には、Li, S.およびK. Lundquist (Nordic Pulp and Paper Research J., 3. 191- 195)の方法にしたがって、誘導体化されていないリグニンを性質決定するために用いられる2つの主な核は、1Hおよび13Cである。
【0054】
樹木のリグニン・レベルの減少、および場合によってこれに関連したCHOレベルの増加は、パルプ産業にとって経済的利点および環境的利点の両方となりうる。樹木におけるリグニンの減少は、パルプを作製するのに必要な化学薬品の減少、および場合によってはパルプを漂白するのに必要な化学薬品量の減少さえ導くはずである。
【0055】
以下の例は、本発明の多様な態様を例示するように働き、かついかなる意味でも、本発明の範囲を限定すると見なしてはならない。
【0056】
実施例
実施例1. cDNAライブラリーの構築
P.ラディアタおよびE.グランディスのデータベースにおいて、モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子候補を同定するため、公有配列(SWISS-PROT/TrEMBL IDによる)にcDNA配列を比較して、マツおよびユーカリのデータベース(コンティグによる非冗長、期待値<1.0e-2)に対して検索した。
【0057】
次いで、これらのヒットに関して、コンティグ・コンセンサスDNAおよびタンパク質配列を得て、かつ重複配列を同定した。次いで、タンパク質配列を用いて、多数の並列を行った。シロイヌナズナ属メンバーとともに、残りのマツおよびユーカリ配列を用いて、タンパク質並列を生成した。タンパク質並列から、樹状図を生成した。プライマー・ウォーキングによって、これらの配列を分析して、全長配列を提供した(全長配列のために分析したコンティグからの最適HT選択)。
【0058】
トウモロコシ、ワタ(cotton)、イネ、およびポプラ由来の公有モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子配列もまた抽出し、かつマツおよびユーカリのデータベースに対してblast分析を行った。完全にプライマーウォーキングしたマツおよびユーカリ配列をまた、ownseqに対してもblast分析し、かつ上位500ヒットを採用した。マツおよびユーカリのこうした配列を用いてさらに検索し、かつシロイヌナズナ属スーパーファミリーを用いることによって、マツおよびユーカリのデータベースにおいて、見逃したものがまったくないことを確実にし得るように行った。この検索によって、以前の検索では見出されなかった、さらなる4つの配列が生じた。次いで、これらの配列もまた、プライマーウォーキングした全長配列に送った。
【0059】
プライマーウォーキング後に少数のさらなる重複物を取り除いた後、マツおよびユーカリのプライマーウォーキングしたモノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合スーパーファミリーメンバーを同定した。ClustalXを用いた並列、対応する樹状図、およびMEME/MAST分析によって、これらの配列の分類を確認した。
【0060】
cDNAライブラリーにおいて、部分的cDNA配列の5’または3’のさらなる配列を同定するため、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech Laboratories, Palo Alto, Calif.)を用いて、cDNA端の5’および3’迅速増幅(RACE)を行った。一般的に、この方法は、まず、ポリ(A)mRNAを単離する工程、第一鎖および第二鎖cDNA合成を行って二本鎖cDNAを生成する工程、cDNA端を平滑化する工程、および次いでSMART RACEアダプターをcDNAに連結して、アダプターが連結されたds cDNAのライブラリーを形成する工程を含む。5’および3’ RACE反応両方のため、アダプター特異的プライマーとともに、遺伝子特異的プライマーを設計した。5’および3’ RACE反応を用いて、5’および3’ RACE断片を得て、配列決定し、かつクローニングした。全長遺伝子の5’および3’端が同定されるまで、プロセスを反復してもよい。末端から末端のPCRによって、遺伝子の5’および3’端に特異的なプライマーを用いたPCRにより、全長cDNAを生成してもよい。
【0061】
例えば、第一鎖cDNAから遺伝子の失われた5’領域を増幅するため、テンプレート配列の反対鎖から、かつテンプレート配列の〜100〜200bpの間の領域から、5’→3’にプライマーを設計した。増幅が成功すれば、テンプレートの5’端およびPCR産物の間で、〜100bpのDNA配列の重複が生じるはずである。
【0062】
Concert試薬プロトコル(Invitrogen, Carlsbad, CA)ならびに標準的単離および抽出法を用いて、4つのマツ組織、すなわち実生、木質部、師部および構造上の根からRNAを抽出した。次いで、10U/μlのDNアーゼI(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いて、生じたRNAをDNアーゼ処理した。RNA 100μgに対して、9μlの10x DNアーゼ緩衝液(Invitrogen, Carlsbad, CA)、10μlのRoche DNアーゼI、および90μlのRNアーゼ不含水を用いた。次いで、RNAを室温で15分間インキュベーションし、かつ1/10体積の25mM EDTAを添加する。RNA精製のため、製造者のプロトコルにしたがって、RNeasyミニキット(Qiagen, Venlo, The Netherlands)を用いた。
【0063】
cDNAを合成するため、木質部、師部、実生および根から抽出したRNAを用い、かつ製造者のプロトコルによって、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech Laboratories Inc, Palo Alto, CA)にしたがった。RACE PCRのため、4つの組織種由来のcDNAを合わせた。木質部、師部、根および実生組織由来の同体積のcDNAを合わせることによって、PCRのマスターミックスを生成した。96ウェルPCRプレート中で、対応するウェル位置に対して、プライマー希釈プレート(10mM)から1mlのプライマーを用いて、PCR反応を行った。プライマーを含むPCRプレートに、49mlのマスターミックスをアリコットする。以下のパラメータで、GeneAmp 9700(Applied Biosystems, Foster City, CA)上で、熱サイクリングを開始した:
94℃(5秒間)、
72℃(3分間)、5周期;
94℃(5秒間)、
70℃(10秒間)、
72℃(3分間)、5周期;
94℃(5秒間)、
68℃(10秒間)、
72℃(3分間)、25周期。
【0064】
標準法にしたがって、アガロースゲル上で、cDNAを分離した。ゲル断片を切り出して、かつ製造者の指示にしたがって、Qiagen 96ウェルゲル溶出キットを用いることによって、ゲルから溶出させた。
【0065】
以下の指定にしたがって、96ウェルプレート中、PCR産物をpGEMTeasy(Promega, Madison, WI)内に、一晩、連結した:60〜80ngのDNA、5μlの2x迅速連結緩衝液、0.5μlのpGEMT easyベクター、0.1μlのDNAリガーゼ、10μlまで水で満たし、かつ一晩インキュベーションする。
【0066】
標準法にしたがって、各クローンを大腸菌(E. coli)に形質転換し、かつ標準プロトコルにしたがうことによって、摘み取った12のクローンからDNAを抽出した。DNA抽出およびDNA品質を1%アガロースゲル上で検証した。標準的実験室法にしたがって、制限エンドヌクレアーゼEcoRIを用いた制限消化、およびゲル電気泳動によって、各クローンの正しいサイズの挿入物の存在を決定した。
【0067】
実施例2. マツ4CL発現ベクターの構築
テーダマツ由来の4CL遺伝子の少なくとも部分を含む一連の組換え構築物を調製し、かつ植物におけるリグニン含量を減少させる能力に関して評価した。一般的に、各DNA構築物は、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。4CL遺伝子ピナス・ラディアタ(図5)の異なる断片および異なるプロモーターを用いて、11の構築物を設計し、かつ調製した。構築物の一般的な設計を図7〜9に示す。スーパーユビキチン・プロモーター(米国特許第6,380,459号、Ranjan J Perera et al., Plant & Animal Genome VIII Conference (2000))を恒常的プロモーターとして用い、一方、P.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)を維管束優先的プロモーターとして用いた。アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のYABBY遺伝子由来のイントロン(SEQ ID NO:64)(Foster T M et al., Plant Cell, 14 (7): 1497-1508 (2002))をスペーサーDNAセグメントとして用いた。この構築物は、図5に示すP.ラディアタ由来の4CL遺伝子の部分を利用した。図6A〜6Bは、この構築物中で利用した4CL RNAi断片(A〜H)の核酸配列(SEQ ID NO:18〜24および48)を提供する。
【0068】
プラスミドpBluescript(BRL Gibco Life Technologies, Gaithersburg MD)のマルチクローニング部位に、さらなる制限エンドヌクレアーゼ部位を付加することによって、主鎖ベクターを調製した。元来のpBluescriptベクターをNotIおよびSstIで消化し、かつKlenowおよびT4ポリメラーゼ(Invitrogen Corp., Carlsbad CA)を用いて末端を埋めることによって、このプラスミドベクター中のNotIおよびSstI部位を破壊した。平滑端連結によって、このプラスミドを環状化し、かつ次いで、制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびHindIIIで消化して、リンカーのクローニングを可能にした。さらなる制限部位を含有するリンカー(5’端でリン酸化されている)(SEQ ID NO:1および2に示す)を一緒にアニーリングし、かつEcoRI/HindIIIで消化したpBluescriptベクター内に連結した。
【0069】
P.ラディアタ・スーパーユビキチン遺伝子(米国特許第6,380,459号)由来の3’ UTRをプラスミドpBI-121(Jefferson et al., EMBO J. 6:3901-3907, 1987)内にクローニングした。まず、標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:3および4に示すプライマーを用いて、遺伝子の3’ UTRの断片を増幅した。これらのプライマーは、SstIで消化したプラスミドpBI-121内にクローニングするため、SstI制限部位を提供する、さらなるヌクレオチドを含有した。次いで、nosターミネーターを含有する3’ UTR断片をpBluescriptプラスミドに移した。SEQ ID NO:5および6に示すプライマーを用いたPCRで、pBI-121の3’ UTRおよびnosターミネーター断片を増幅し、KpnIおよびClaIで切断し、かつKpnIおよびClaIで消化した修飾pBluescript内にクローニングした。
【0070】
この構築物に、イントロンを含むP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を付加した。標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:7および8のプライマーを用いて、米国特許第6,380,459号で同定されたP.ラディアタ・スーパーユビキチン配列から、プロモーター/イントロン配列をまず増幅した。次いで、XbaIおよびPstI制限消化を用いて、基本ベクター内に、増幅された断片を連結した。
【0071】
標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:10および11のプライマーを用いて、P.ラディアタcDNA由来のP.ラディアタ4CLイントロン配列(SEQ ID NO:9)を増幅し、次いで、Tテール化連結を用いて、XcmIで消化したベクター主鎖内にクローニングした。
【0072】
E.グランディスおよびP.ラディアタから、モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子、ならびにモノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合様遺伝子を単離し、かつ性質決定するため、植物組織から総RNAを抽出した(Chang et al., Plant Mol. Biol. Rep. 11 :113-116 (1993)のプロトコルを用いる)。師部(P)、形成層(C)、拡張中の木質部(X1)、および分化しかつリグニン化しつつある木質部(X2)から、植物組織試料を得た。
【0073】
ポリ(A)Quik mRNA単離キット(Stratagene, La Jolla, CA)またはDynalビーズOligo(dT)25(Dynal, Skogen, Norway)のいずれかを用いて、総RNA調製物からmRNAを単離した。逆転写酵素合成後、製造者のプロトコルの使用にしたがって、ZAP Express cDNA合成キット(Stratagene)を用いて、生じたcDNAクローンをLambda ZAP内に挿入することによって、精製mRNAからcDNA発現ライブラリーを構築した。ライブラリーに応じて、5mL連結反応からのアリコット(1〜5μL)を用い、Gigapack II Packaging Extract(Stratagene)を用いて、生じたcDNAをパッケージングした。ExAssistヘルパーファージ(Stratagene)とともに、XL1-Blue MRF’細胞およびXLOLR細胞(Stratagene)を用いて、ライブラリーの集団切除を行った。切除したファージミドをNZYブロス(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)で希釈し、かつX-galおよびイソプロピルチオ−ベータ−ガラクトシド(IPTG)を含有するLB-カナマイシン寒天プレート上にプレーティングした。
【0074】
DNAミニプレップ用にプレーティングし、かつ選択したコロニーのうち、99%が、配列決定に適した挿入物を含有した。カナマイシンを含むNZYブロス中で陽性コロニーを培養し、かつアルカリ溶解およびポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって、cDNAを精製した。1%のアガロースゲルを用いて、染色体混入に関して、配列決定テンプレートをスクリーニングした。製造者のプロトコルにしたがって、Turbo Catalyst 800装置(Perkin Elmer/Applied Biosystems Division, Foster City, CA)を用いて、色素プライマー配列を調製した。
【0075】
Perkin Elmer/ Applied Biosystems Division Prism 377配列決定装置を用いて、陽性クローンのDNA配列を得た。まず5’端からcDNAクローンを配列決定し、かついくつかの場合、3’端からも配列決定した。いくつかのクローンに関しては、エキソヌクレアーゼIII欠失分析を用いるか、pBK-CMV中のサイズが異なるサブクローンのライブラリーを生じるか、または関心対象の遺伝子の同定した領域に対して設計した遺伝子特異的プライマーを用いて直接配列決定することによるか、いずれかで、内部配列を得た。
【0076】
実施例1に記載する方法を用いて、木質部からピナス・ラディアタcDNA発現ライブラリーを構築し、かつスクリーニングした。Perkin Elmer/Applied Biosystems Prism 377配列決定装置上で、順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いて、陽性クローンのDNA配列を得て、かつ決定した配列を、上述のように、EMBLデータベース中の公知の配列と比較した。他の植物種由来の公知の配列に対する類似性に基づいて、4CL(SEQ ID NO:18〜24および48)およびカフェオイルCoAメチルトランスフェラーゼ(SEQ ID NO:44)をコードするものとして、単離したDNA配列を同定した。
【0077】
標準的PCR技術ならびにプライマーSEQ ID NO:12および13を用いて、P.ラディアタ4CL cDNAクローンから、断片を増幅した。増幅断片の両端にPstIおよびClaI制限部位を付加するように、プライマーを設計した。増幅断片のヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:24として提供する。センス配向でP.ラディアタ4CL断片をクローニングするため、制限酵素PstIで増幅断片を切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつ平滑端ClaI部位で、主鎖ベクター内にクローニングした。アンチセンス配向でP.ラディアタ4CL断片をクローニングするため、PstIで増幅断片を消化し、かつPstI消化した主鎖ベクター内にクローニングした。
【0078】
Pr4CLおよびPDKイントロン配列に関する上記のものと同様に設計したプライマーを用いて、yabbyイントロン配列(Foster et al. 2002, Plant Cell. 14 (7): 1497-1508)を増幅し、かつ上述のようなベクター主鎖内にクローニングした。増幅断片両端にSmaI制限部位を付加するようにSEQ ID NO:18用のプライマーを設計し、増幅断片両端にEcoRIおよびHindIII制限部位を付加するようにSEQ ID NO:19用のプライマーを設計し、増幅断片両端にPstI制限部位を付加するようにSEQ ID NO:22用のプライマーを設計したことを例外として、SEQ ID NO:24に関して用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、6つのさらなる断片(SEQ ID NO:18〜23)を増幅した。増幅断片の一方の端にSmaI制限部位を付加し、かつ他方の端にEcoRIおよびHindIII制限部位を付加するように、SEQ ID NO:23用のプライマーを設計した。上述のように、または列挙する制限酵素を用いることによって、センスおよびアンチセンス方向で、7つの断片すべてを、主鎖ベクター内にクローニングした。プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを、上述のようにpBluescriptプラスミドから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART27またはpART29(NotIで消化)内にクローニングした。バイナリーベクターpART29は、nos5’プロモーターの代わりにアラビドプシス・タリアナ・ユビキチン3(UBQ3)プロモーターを含有し、かつlacZ配列を含有しない、修飾pART27ベクター(Gleave, Plant Mol. Biol. 20:1203-1207, 1992)である。
【0079】
NotI制限消化によって、pBluescriptプラスミドから、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセット(SEQ ID NO:14)を取り除き、かつ標準的クローニング技術を用い、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングして、最終ベクターpARB513を生じた。
【0080】
NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクター内に挿入することによって、マツにおいて使用するため、構築物を再操作した。制限酵素NotIを用いて、表1の「以下から操作」列中に列挙する各ベクターから、プロモーター::4CL RNAiカセットを取り除いた。制限酵素NotIを用いてベクターpWVR31を直線化し、かつSAP処理して、自身に再アニーリングするのを防いだ。NotI部位で、各断片をpWVR31内に連結して、表1に列挙するベクターを生じた。
【0081】
(表1)
【0082】
構築物pWVK154、pWVK143、pWVC46およびpWVC40は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつそれぞれ、ATCCアクセッション番号PTA-6229、PTA-6228、PTA- 6227、およびPTA-6226を与えられた。
【0083】
それぞれ、P.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)およびP.ラディアタ由来のスーパーユビキチン遺伝子(米国特許第6,380,459号)を、GUS(イントロン)遺伝子(参照)と一緒に、ベクターpWVR31内にクローニングすることによって、対照ベクターpWVC41およびpWVK159を発展させた。主鎖ベクターpWVR5は、35SプロモーターGUS配列が取り除かれ、かつNOSプロモーターが、シロイヌナズナ属由来のUBQ10プロモーター(Sun, C. W & Callis, J (1997) Plant J., 11 :101-111)で置換されたpBI121ベクター(Clontech laboratories, Palo Alto CA)である。ベクターpWVR8を作製するため、Actin IIプロモーター(MEAGHER, Int. Rev. Cytol., 125:139-163(1991))を増幅し、かつGUSに加えてイントロン遺伝子と一緒に、pWVR5ベクター内にクローニングした(Ohta et al., Plant Cell Physiol, 31:805-813(1990))。
【0084】
ベクターpWVR8(シロイヌナズナ属Actin II::GUSINT、UBQ10::NPTII)から、主鎖ベクターpWVR31を操作した。プライマーを用いたPCRによって、シロイヌナズナ属由来のUBQ11プロモーター(Norris SR, et al. (1993) Plant Mol Biol. 21(5):895-906)を増幅して、かつこれを用いてpWVR8由来のActin IIプロモーターを置換して、ベクターpWVR31を作製した。
【0085】
さらに、上述するとおりであるが、以下の配列:プロモーターおよび/またはバイナリーベクターの、少なくとも一方における修飾を伴って、表2に列挙するベクターを構築した。最終ベクター内に、表2に列挙するような異なるプロモーターをクローニングするため、P.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター・イントロン・ベクターをSmaIおよびSstI制限酵素で消化し、かつ標準的技術を用いて、P.タエダ由来の4CLプロモーター、ユーカリプタス・グランディス(Eucalyptus grandis)由来のCOMTプロモーター、またはP.ラディアタ由来のLIMプロモーターのいずれかを含有するBluescriptベクター内に、この断片をクローニングした。上述のイントロンとともに、P.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を増幅するのに用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、P.タエダ4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)、E.グランディスCOMTプロモーター(米国特許第10/703,091号)、およびP.ラディアタLIMプロモーター(米国特許出願第10/717,897号)をすべて増幅し、かつ次いで、上述のような基本Bluescriptベクター内に連結した。NotI制限消化によって、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットをpBluescriptプラスミドから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART29またはpWVK147(NotIで消化)内にクローニングした。pWVK147ベクターは、35SプロモーターGUS配列が取り除かれ、かつnptII遺伝子を駆動するため、NOSプロモーターが、シロイヌナズナ属由来のUBQ10プロモーター(Sun, C. W & Callis, J (1997) Plant J., 11 :101-111)で置換された、pBI121ベクター(Clontech laboratories, Palo Alto CA)である。ApaIおよびKpnI部位で連結されるアダプターを付加することによって、ユニークなHpaI制限部位をベクターに付加した。
【0086】
(表2)
【0087】
標準的PCR技術を用い、PDKイントロン配列(Wesley et al., Plant J. 27:581-590, 2001)(SEQ ID NO:15)を増幅するために、プライマーSEQ ID NO:16および17を用いたことを例外として、上述のものと同じ方法を用いて、表3に列挙するベクターを構築した。各構築物に関して、発現カセット中で発現される遺伝子は、4CL断片G(SEQ ID NO:24)である。
【0088】
(表3)
【0089】
実施例3.ユーカリプタス属(Eucalyptus)4CL発現ベクターの構築
4CL遺伝子の少なくとも部分を含む一連の組換え構築物を上述のように調製し、かつ植物におけるリグニン含量を減少させる能力に関して評価した。一般的に、各DNA構築物は、ユーカリプタス・グランディス由来の4CL遺伝子(米国特許第6,410,718号)の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。まず、異なる断片長の4CL遺伝子および異なるプロモーターを用いて、3つの構築物を調製した。表16を参照されたい。構築物の一般的な設計を図7に示す。スーパーユビキチン・プロモーター(米国特許第6,380,459号; Ranjan J Perera et al., Plant & Animal Genome VIII Conference(2000))を恒常的プロモーターとして用い、一方、P.タエダ中の4CL遺伝子由来のプロモーターSEQ ID NO:77を維管束優先的プロモーターとして用いた。アラビドプシス・タリアナ由来のYABBY遺伝子由来のイントロン(Foster T M et al., Plant Cell, 14 (7): 1497-1508 (Plant Cell))をスペーサーDNAセグメントとして用いた。図2Aおよび2Bは、4CL RNAi 200bp断片(SEQ ID NO:33)および4CL RNAi 600bp断片(SEQ ID NO:34)の核酸配列を提供する。
【0090】
主鎖ベクターの構築は、実施例2に示すとおりであった。標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:25および26に示すプライマーを用いて、E.グランディス4CL cDNAクローン由来の断片(米国特許第6,410,718号)を増幅した。増幅断片の両端にPstIおよびClaI制限部位を付加するように、プライマーを設計した。増幅断片のヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:27に示す。センス配向で4CL断片をクローニングするため、制限酵素PstIで増幅断片を切断し、かつ主鎖ベクター内にクローニングした。アンチセンス配向で4CL断片をクローニングするため、ClaIで増幅断片を消化し、かつ主鎖ベクター内にクローニングした。
【0091】
プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセット(SEQ ID NO:32)を、NotI制限消化によって、pBluescriptプラスミドから取り除き、かつ実施例2に記載するように、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングして、最終ベクターpAB583を生じた。
【0092】
上記の実施例における断片に関して用いたものと同様に設計したプライマーで、4つのさらなる断片(SEQ ID NO:28〜31)を増幅することによって、表4に列挙する最終ベクターを構築した。上述のように、完全RNAiカセットをpART29にクローニングする前に、上述のように、主鎖ベクター内にセンスおよびアンチセンス方向で、5つの断片すべてをクローニングした。
【0093】
(表4)
【0094】
PDKイントロン配列(Wesley et al., Plant J. 27:581-590, 2001)(SEQ ID NO:15)を増幅するために、プライマーSEQ ID NO:16および17を用いたことを例外として、上述のものと同じ方法を用い、標準的PCR技術を用いて、表5に列挙するベクターを構築した。
【0095】
(表5)
【0096】
以下の変化を伴って、実施例2に記載するように、表6に列挙するベクターを構築した。Pr4CLおよびPDKイントロン配列に関するものと同様に設計したプライマーを用いて、yabbyイントロン配列(Foster et al. 2002, Plant Cell. 14 (7): 1497-1508)を増幅し、かつ実施例2に記載するように、ベクター主鎖内にクローニングした。上記実施例において、断片SEQ ID NO:27〜31に関して用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、断片挿入物、SEQ ID NO:33および34を増幅した。以下の表6に示した場合、実施例2に記載するように、P.タエダ4CLプロモーターに対して、イントロンを加えたピナス・ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター由来のプロモーターの置換を行った。完全RNAiカセットをpART27内にクローニングする前に、実施例2に上述するように、列挙する断片挿入物およびプロモーターを最終ベクター内にクローニングした。各構築物において、スペーサーとしてyabbyイントロン(SEQ ID NO:64)を用いた。
【0097】
(表6)
【0098】
NotI制限消化によって、上に列挙するpARB345(SEQ ID NO:89)最終ベクターから、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを取り除き、かつ標準的クローニング技術を用い、バイナリーベクターpARB1002またはpARB1005(NotIで消化)内のいずれかにクローニングすることによって、表7に列挙する最終ベクターを構築した。
【0099】
(表7)
【0100】
同様に、pARB599由来の開花遺伝子を欠失させることによって、ベクターpARB1202を生成した。したがって、pARB1202は、ピナス・タエダ4CLプロモーター(SEQ ID NO:77)、センスEuc.4CL 200bp断片(SEQ ID NO:33)、yabbyイントロン(SEQ ID NO:64)、およびアンチセンスEuc. 4CL 200bp断片(SEQ ID NO:33)を含有するRNAiカセットを含む。pARB1202の概略図を図24に提供する。
【0101】
ユーカリプタス属植物におけるリグニン含量を調節するため、多様な組み合わせのプロモーター、第一のDNAセグメントおよびイントロンを含む構築物を用いてもよい。研究者は、選択すべきものから構築物を選ぶことで、リグニン含量および成長の望ましい量を伴う植物を得ることも可能である。これに関連して、米国特許公報第20040146904号および第20040163146号は、多様な維管束優先的プロモーターを開示し、かつ参照により本明細書に組み入れられる。表8は、これに関連して有用な多様な構築物を提供する。
【0102】
(表8)
【0103】
構築物pARB339、pARB345およびpARB599は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつそれぞれ、ATCCアクセッション番号PTA-6222、PTA-6223、およびPTA- 6225を与えられた。
【0104】
実施例4:E.グランディスCCoAOMT、C3H、C4HおよびCCRのcDNAの単離
2つのユーカリプタス・グランディスcDNA発現ライブラリー(単一の樹木由来の多様な組織の混合物由来のもの、および単一の樹木の葉由来のもの)を以下のように構築し、かつスクリーニングした。
【0105】
重要でない修飾を加えて、Changら(Plant Molecular Biology Reporter 11 :113-116, 1993)のプロトコルを用いて、植物組織からmRNAを抽出した。具体的には、CPC-RNAXB(100 mM Tris-Cl、pH 8,0;25 mM EDTA;2.0 M NaCl;2% CTAB;2% PVPおよび0.05%スペルミジン*3 HCl)に試料を溶解し、かつクロロホルム:イソアミルアルコール、24:1で抽出した。mRNAをエタノールで沈殿させ、かつポリ(A) Quik mRNA単離キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、総RNA調製物を精製した。逆転写酵素合成後、製造者のプロトコルにしたがって、ZAP Express cDNA合成キット(Stratagene)を用いて、生じたcDNAクローンをラムダZAP中に挿入することによって、精製したmRNAからcDNA発現ライブラリーを構築した。5μlの連結混合物から1μlの試料DNAを使用して、Gigapack II Packaging Extract(Stratagene)を用いて、生じたcDNAをパッケージングした。XLl -Blue MRF'細胞およびXLOLR細胞(Stratagene)を、ExAssistヘルパーファージ(Stratagene)とともに用いて、ライブラリーの集団切除を行った。切除したファージミドを、NZYブロス(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)で希釈し、かつX-galおよびイソプロピルチオ−ベータ−ガラクトシド(IPTG)を含有するLB−カナマイシン寒天プレート上にプレーティングした。
【0106】
DNAミニプレップ用にプレーティングし、かつ選択したコロニーのうち、99%が、配列決定に適した挿入物を含有した。カナマイシンを含むNZYブロス中で陽性コロニーを培養し、かつアルカリ溶解およびポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって、cDNAを精製した。1%のアガロースゲルを用いて、染色体混入に関して、配列決定テンプレートをスクリーニングした。製造者のプロトコルにしたがって、Turbo Catalyst 800装置(Perkin Elmer/Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、色素プライマー配列を調製した。
【0107】
Perkin Elmer/Applied Biosystems Prism 377配列決定装置を用いて、陽性クローンのDNA配列を得た。まず5’端からcDNAクローンを配列決定し、かついくつかの場合、3’端からも配列決定した。いくつかのクローンに関しては、サブクローニングした断片を用いて、内部配列を得た。制限マッピングおよびpBluescript II SK+ベクターへのサブクローニングの標準法を用いて、サブクローニングを行った。
【0108】
1996年2月のFASTAアルゴリズム(バージョン2.0.4)(インターネットのftpサイトftp://ftp.virginia.edu/pub/fasta/で入手可能)またはBLASTNアルゴリズム、バージョン2.0.4 [1998年2月24日]、またはバージョン2.0.6 [1998年9月16日]を用いて、EMBLデータベース(リリース46、1996年3月)中の公知のcDNA配列に比較した。冗長配列の多数の並列を用いて、信頼性があるコンセンサス配列を構築した。他の植物種由来の公知の配列に対する類似性に基づいて、本発明の単離ポリヌクレオチドを、特定する酵素をコードするとして同定した。
【0109】
上述の方法を用いて、以下のポリペプチドをコードする、ユーカリプタス・グランディス・ライブラリー由来のcDNA配列を単離した:カフェオイルCoAメチルトランスフェラーゼ(米国特許第6,410,718号);桂皮酸-4-ヒドロキシラーゼ(C4H)(米国特許第6,410,718号);p-クマル酸-3 -ヒドロキシラーゼ(C3H)(米国特許第5,981,837号)およびCCR(米国特許第6,410,718号)。
【0110】
実施例5.ピナス・ラディアタLIM発現ベクターの構築
表9に列挙する最終ベクターを、以下の修飾を伴って、実施例2に記載するように構築した;異なる断片、プロモーターおよび/またはイントロンの使用。標準的PCR技術、および実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、P.ラディアタLIM cDNAクローン(特許出願WO 00/53724)由来の2つの断片、SEQ ID NO:38および39を増幅した。実施例2で記載するように、センス配向およびアンチセンス配向両方で、主鎖ベクター内に、P.ラディアタLIM断片をクローニングした。実施例2に記載するものと同様に、プロモーターを修正することによって、主鎖ベクター中に含有されるものと異なるプロモーターを含有する、表9中の最終ベクターを構築した。実施例2に記載する方法を用いて、yabbyイントロン(SEQ ID NO:64)を最終ベクター内に挿入した。実施例1および2に記載するように、pART27またはpART29内に、完全RNAiカセットをクローニングした。
【0111】
(表9)
【0112】
マツにおいて、pART27に基づくベクターを利用するには、構築物を再操作して、選択カセットnos::nptIIを取り除かなければならない。実施例2に記載するように、NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクターに挿入してもよい。ベクターpWVR31を新規の基本ベクターとして用いてもよい。
【0113】
実施例6.ユーカリプタス・グランディスLIM発現ベクターの構築
主鎖プラスミドの構築は、実施例2に記載するとおりであった。標準的PCR技術、ならびに増幅断片の両端にEcoRIおよびXbaI制限部位を付加するように設計したプライマーを用いて、E.グランディスLIM cDNAクローン(特許出願WO00/53724)から2つの断片(SEQ ID NO:40および41)を増幅した。センス配向で、LIM断片をクローニングするため、増幅断片を制限酵素EcoRIおよびXbaIで切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつyabbyイントロンおよびP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列(実施例2に記載)を含有する主鎖ベクター内の平滑端化したClaI部位にクローニングした。アンチセンス配向で、LIM断片をクローニングするため、増幅断片を制限酵素EcoRIおよびXbaIで切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつ標準的クローニング技術を用いて、同じ主鎖ベクター内の平滑端化したPstI部位にクローニングした。
【0114】
プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを、NotI制限消化によって、主鎖ベクターから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングした。表10に列挙するような異なるプロモーターを含有する最終ベクター用に、実施例2に記載する方法を用いて、プロモーター配列を置換した。この方法を用いて、表10に列挙するベクターを構築した。
【0115】
(表10)
【0116】
実施例7.マツCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、マツCCo-OMT(カフェオイル補酵素O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:42)クローンから断片を増幅し、かつ実施例2に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例2に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例2に記載する方法を用いた、yabbyイントロンの付加、およびpART27バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0117】
(表11)
【0118】
マツにおいて、ベクターを利用するには、構築物を再操作して、選択カセットnos::nptIIを取り除かなければならない。実施例2に記載するように、NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクターに挿入してもよい。ベクターpWVR31を新規の基本ベクターとして用いてもよい。
【0119】
実施例8.さらなるマツCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例4で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、マツCCoAOMT(カフェオイル補酵素A O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:43)クローン(実施例4で単離)から断片を増幅し、かつ実施例4に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、上述の方法を用いた、PDKイントロンの付加、イントロンを伴うP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーターまたはP.タエダ4CLプロモーターいずれかの使用、およびpWVK147バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0120】
(表12)
【0121】
実施例9. E.グランディスCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例3で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスCCoAOMT(カフェオイル補酵素A O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:44)クローン(WO98/11205に部分配列として提出された、実施例4で単離したもの)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例3記載の方法を用いた、PDKイントロンまたはユーカリプタス属木質部イントロン、E.グランディスCOMT 485bpプロモーター(SEQ ID NO:78)の付加、およびpART29バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0122】
(表13)
【0123】
実施例10. E.グランディスCCR発現ベクターの構築
実施例3で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスCCR(シンナモイルCoAレダクターゼ)クローン(SEQ ID NO:45)(実施例4で単離)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例3記載の方法を用いた、PDKイントロンまたはユーカリプタス属木質部イントロン、E.グランディスCOMTプロモーター485bp(SEQ ID NO:78)の付加、およびpART29バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0124】
(表14)
【0125】
実施例11. E.グランディスC3HおよびC4H発現ベクターの構築
実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスC3Hクローン(実施例4で単離)(SEQ ID NO:46)またはE.グランディスC4H(SEQ ID NO:47)クローン(実施例4で単離;WO00/22099に部分配列として提出)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。これらのベクターにおいては、E.グランディス由来のアラビノガラクタン・プロモーター(SEQ ID NO:35)またはP.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)のいずれかを用いた。BamHI制限酵素でP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター・イントロン・ベクターを消化して、かつ標準的技術を用いて、P.タエダ由来の4CLプロモーター(BamHIで消化)、またはE.グランディス由来のアラビノガラクタン・プロモーター(ClaIで消化)のいずれかを含有するBluescriptベクター内にクローニングした。P.タエダ4CLプロモーターおよびE.グランディス・アラビノガラクタン・プロモーターを、どちらも、イントロンを伴うP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を増幅するのに用いるものと同様に設計したプライマーを用いて増幅し、かつ次いで、実施例3に記載するように、基本のBluescriptベクター内に連結した。実施例3に記載する方法を用いて、Pr4CLイントロンの付加、およびpARB1002バイナリーベクターの使用によってもまた、最終ベクターを修飾した。
【0126】
(表15)
【0127】
実施例12.ユーカリプタス属における4CL構築物の評価
以下の方法を用いて、2つの異なる長さのRNAi断片を含有する3つの異なる構築物、pARB339、pARB341およびpARB345(表16を参照されたい)をユーカリプタス・グランディスに形質転換した。
【0128】
(表16)
伸長培地-(1μM BAP、20g/lスクロースおよび7g/l寒天を含むMS)上の培養中で微量増殖させた、クローン性ユーカリプタス・グランディスの葉の外植片を、形質転換に用いた。参照により本明細書に組み入れられる、Burrelら、国際公報第WO00/12715号に記載されるように形質転換を行った。
【0129】
NAAが省かれ、かつ培地が50mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有することを除いて、WO00/12715に記載されるように、トランスジェニック外植片を選択した。外植片は、この培地上で2週間生き残り、かつ次いで、これを、2週間後、100mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する培地に移し、かつさらに2週間後、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する培地に移した。次いで、健康な単一のシュートが収集可能になるまで、培養物を毎月、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する新鮮な培地に移した。単一のシュートを、伸長培地上に置き、推定上のトランスジェニック組織を増殖させた。増殖組織から、およそ200mgの組織が収集可能になったら、PCR分析のため、初代外植片からこれを取り除いた。製造者の指示にしたがって、PuRe Taq Ready-To-Go(商標) PCRビーズ(Amersham Biosciences)を用いて、プロモーターおよび選択遺伝子の両方の存在に関して、PCR分析を行った。
【0130】
次いで、陽性PCR結果が出た組織を、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する伸長培地上でさらに増殖させ、かつストック培養物として維持した。
【0131】
さらなる試験のためにトランスジェニック植物を生成するため、いくつかのシュートを伸長培地上に置いた。シュートは、およそ2〜3cmの高さになるまで、この培地上で生き残った。これに、1ヶ月より長くかかる場合は、シュートを毎月間隔で新鮮な培地上に置いた。シュートが2〜3cmの高さになったら、単一のシュートを取り除き、かつ発根培地内に入れた。発根培地中に10日間置いた後、植物を温室に移した。植物形質転換および植物組織培養の技術分野の当業者は、多くの異なる培地および間隔を、本発明の植物を再生させるのに適合させ得ることを認識するであろう。
【0132】
適切な湿度措置および真菌増殖を調節する殺真菌剤を用いて、鉢用混合土(potting mixture)中、植物を温室で6ヶ月間成長させた。キャピラリー散水を用い、周囲温度で、メッシュ仕切りにおいて植物を増殖させた。徐放肥料を補い、土壌を用いないピートに基づく配合土中、5Lのポリ袋に植物を植えた。
【0133】
総リグニン分析のため、およそ6ヶ月齢の植物を破壊してサンプリングした。
【0134】
高さ測定
表17は、pARB339、pARB341またはpARB345で形質転換したユーカリプタス属植物の、カナマイシンを使用して選択し、6ヵ月後に土中で生き残った、微量増殖植物の割合、土中に植えた20週間後に観察された矮小化植物の割合、および土中に植えた22週間後の植物の平均の高さを列挙する。
【0135】
pARB341で形質転換した植物の生存データは、pARB339またはpARB345で形質転換した植物のものよりはるかに低かった。pARB341で形質転換して生存したすべての植物のうち、82%は矮小化しており、DNAベクターpARB341が、他の2つのベクター(pARB339およびpARB345)よりも高い度合いで、植物の高さおよび生存率に影響を及ぼすことを示唆した。
【0136】
(表17)
【0137】
図3および4Aに示すデータは、植物の高さに対する各構築物の見かけの効果を示す。pARB345およびpARB339で形質転換した植物の各セット中で最も背が高い個々の植物の高さは近い(それぞれ159cmおよび168cm)が、最も背が低いpARB339植物(53cm、64cm)は、最も背が低いpARB345植物(91cm、96cm)よりはるかに低い。この図には、分析のためにプールした、矮性pARB341試料の平均の高さは含まれていない。矮性pARB341植物の平均の高さは13cmであった。
【0138】
リグニン分析
リグニン分析のため、先の実施例に記載するように生成した、およそ6ヶ月齢のトランスジェニック・ユーカリプタス属樹木をサンプリングした。分析しようとするすべての試料から、茎の下側20cmを収集した。剥ぎ取ることによって、茎から、樹皮、師部および一次皮層を取り除き、かつ次いで、茎試料を液体窒素中で迅速凍結した。製造者の指示にしたがって、Flexi-Dryマイクロプロセッサ制御腐蝕耐性凍結乾燥装置(Stone Ridge, New York, USA)中、凍結試料を凍結乾燥した。Wiley製粉装置(Arthur H. Thomas Co.; Philadelphia, U.S.A.)中で試料を粉末化し、かつ次いで、リングミル中で再び粉末化した。次いで、粉末試料を55℃で最低1日乾燥させ、かつ使用するまでこの温度で保管した。溶媒または溶液中に粉末材料を懸濁する工程、超音波クリーナーを用いて抽出する工程、遠心分離する工程、および次いで、上清をデカントする工程によって、一連の段階で、試料から細胞壁材料を単離した。抽出には、以下の順序を用いた:2つの濃度のNaCl、水性エタノール;CHCl3:MeOH;およびアセトン。デンプンを取り除くため、抽出した細胞壁材料を洗浄し、tris-酢酸緩衝液中で加熱して、デンプンをゼラチン化し、かつ次いで、α−アミラーゼで処理した。酵素処理後、懸濁物を遠心分離して、かつ生じた沈殿物をエタノールおよびアセトンで洗浄して、一晩静置し、かつ次いで55℃で乾燥させた。Fukushima, R. S. and Hatfield, R.D. (2001) J. Ag. Food Chem. 49(7):3133-9に記載される方法を用い、単離した細胞材料を小規模リグニン測定に用いた。結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0139】
pARB341中のRNAiカセットは、形質転換植物すべてのうちの82%の矮小化を生じた。これらの植物をプールした試料は、これらが正常レベルのおよそ80%まで減少したリグニンレベルを有することを示した。このベクターは、試験した他の2つのベクターに比較した際、植物の高さに最大の効果を有し、かつリグニンレベルの減少に対しても大きな効果を有した。リグニン減少序列の極端な結果は、矮小表現型を特徴とするが、この研究で同定されたすべてのうちで最低のリグニン形質転換系統(transline)であるpARB345形質転換系統は、適度に正常な高さを有する。したがって、pARB341形質転換体の多くに見られる矮性は、二次木質部をリグニン化する際に発現される4CL遺伝子以外の遺伝子、例えば植物の他の部分で発現される4CL遺伝子または4CLに部分的相同性を持つ遺伝子の抑制によって引き起こされる、別個の現象である可能性もある。
【0140】
pARB345中のRNAiカセットは、有意に減少したリグニンを伴う表現型の産生に、pARB339中より有効であることが見出された。pARB345中の200bp RNAiカセットは、pARB341中の同じプロモーターによって駆動される600bp RNAiカセットによる多くの形質転換体において誘導される矮小化効果の誘発もまた伴わずに、最大-25%のリグニン減少を誘導することが可能である。
【0141】
上記のリグニン分析から、pARB345で形質転換された9つの植物を選択し、かつ、方法の比較のため、熱分解分子ビーム質量分析の使用および固相13C NMRによって、第一のものの上から採取した第二の20cmの茎試料をリグニン含量測定に供した。3つの方法はすべて、リグニン減少に関して、ほぼ同じ値を生じた。
【0142】
熱分解分子ビーム質量分析のため、各試料を石英ボート中で重量測定し、かつ5L/分(STPで)のヘリウム流動を伴って、石英管(内径2.5cm)からなる反応装置中で熱分解した。分子ビーム質量分析装置のサンプリング開口部が石英反応装置の端の内部になるように、反応装置の管を置いた。Evans & Milne(1987)(Energy & Fuels, 1 : 123-37)に記載されるような熱分解蒸気分析に、Extrel(商標)モデルTQMS C50質量分析装置を用いた分子ビーム質量分析装置を用いた。反応装置を電気的に加熱し、かつその温度を550℃に維持した。総熱分解時間は90秒であったが、熱分解反応は50秒未満で完了した。反応装置熱分解ゾーンにおける熱分解蒸気の滞留時間は、〜75msと概算されており、かつ石英反応装置における二次クラッキング反応が最小であるには十分に短い。22eV電子衝撃イオン化を用い、Teknivent Vector 2(商標)データ獲得システム上で、20〜450Daのマススペクトルデータを獲得した。このシステムを用いて、軽いガスおよび重いタールの両方を、同時に、かつリアルタイムでサンプリングした。熱分解蒸気のマススペクトルは、分子断片の迅速で半定量的な描写を提供する。
【0143】
m/z 50〜200の間のマス範囲を用いたpyMBMSスペクトルの主成分分析は、リグニンおよび炭水化物由来の熱分解産物を強調する一方、小さい熱分解断片および電子衝撃断片(m/z 50未満)ならびに抽出物(m/z 200を超える)を最小にした。
【0144】
リグニン含量のNMR測定のため、Bruker Avance 200MHz分光計において、交差分極(CP)およびマジック角回転(MAS)を伴い、4.7Tで、高分解能固相13C NMRスペクトルを収集した。多様な振幅の交差分極(交差分極期間に渡る1db直線ランプ)を用いて、より高いMAS回転率で、Hartmann-Hahnミスマッチに感受性である、非プロトン化芳香族炭素の変動を最小限にした(S. O Smith, I. Kustanovich, X. Wu, O. B. Peersen, Journal of Magenetic Resonance (1994) 104: 334-339)。1Hおよび13C場は53.6kHzでマッチし、かつマッチ期間中、プロトンr.f.に1dBランプを適用した。獲得時間は0.033秒であり、かつスイープ幅は31.3kHzであった。7000Hzの速度でマジック角回転を行った。2msの接触時間および1.0秒のパルス反復率を用いて、平均2000〜4000のスキャンを行った。相対ピーク強度および積分面積で観察される相違を用いて、類似の試料間の相違を同定することも可能である。Hawら、1984(J.F. Haw., G. E. Maciel., H. A. Schroder, Analytical Chemistry 56: 1323)の方法を用いて、芳香族(110ppm〜160ppm)および炭水化物(40ppm〜100ppm)領域の積分面積から、重量リグニン%値を計算した。
【0145】
Unscrambler、バージョン7.8ソフトウェアプログラム(CAMO A/S, Trondheim, Norway)を用いて、データ分析を行った。一度に1つのみのY変数を取り扱う、潜在的構造に対する射影(PLS-1)アルゴリズムを用いて、マツ試料のリグニン含量を予測するモデルを構築した。XマトリックスとしてpyMBMSスペクトル(310変数(50〜360の間のm/z値))を用い、かつYマトリックスとして固相NMRによって測定されるリグニン値を用いて、リグニン含量予測モデルを発展させた。分析前に、マススペクトルを総イオン電流に対して標準化した。データから体系的に1つの試料を取り除き、残りの試料を用いたモデルを確立し、かつ次いで、データセットから取り除かれた試料のY変数の値を予測するためにそのモデルを用いる、完全交差検証を用いて、モデル検証を行った。Yマトリックスからすべての試料が取り除かれ、かつ予測されるまで、このプロセスを続ける。最適モデルを選択するのに用いる基準は、適合度(すなわち高い相関係数)および最小残差であった。
【0146】
NMRリグニン値およびpyMBMSスペクトルから、リグニン含量を予測するPLS1モデルを構築した。NMR分析のため、同じ系統から1より多い樹木をサンプリングした場合、樹木由来の対応するマススペクトルを平均して、かつモデルを構築するのに用いた。50〜360のm/z値の範囲を用いて、PLSモデルを構築した。完全交差検証モデルの相関係数に基づいて、最適モデルを提供するために、この範囲を経験的に決定した。
【0147】
表18は、9つの選択した試料のNMR結果の比較を示す。選択した試料に関して、PC1スコアとNMR重量リグニン%値を比較すると、PC1スコアがテーダマツ試料におけるリグニン量を正確に反映し、かつPC1スコアを用いて、異なる構築物のリグニン含量を順位付けし得ることが示される。NMRで決定したリグニン含量、および上述のように臭化アセチルによって決定されるような含量の間にもまた、優れた相関関係がある。
【0148】
(表18)
【0149】
本発明のDNA構築物を含有するトランスジェニック植物の側枝から採取した徒手切片に、フロログルシノール/HClを用いてコニフェルアルデヒド単位を検出する、リグニンの組織化学的試験を適用した。フロログルシノールはまた、Weisner試薬としても知られる、リグニンの染色液であり(Pomar et al., Protoplasma, 220(1 -2): 17-28 (2002))、かつMaule染色液を用いて、特異的にシリンギルリグニンサブユニットを検出する(Lewis et al., Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol, 41 :455-496 (1990))。pARB339およびpARB345で形質転換したトランスジェニック植物は、対照の非形質転換植物に対して観察可能な相違を示さなかった。正常の高さのpARB341植物もまた、対照植物に対して観察可能な相違を持たず、一方、矮性pARB341植物は、減少した量のフロログルシノール染色を有し、これらの試料において、リグニンレベルが非常に減少することが示唆された。矮性pARB341形質転換系統の検査によって、形質転換系統間の変動があることが示された。特に極端な解剖学的表現型を持つ、1つの矮性形質転換系統の2つのラミートは、外見が非常に一致しており、リグニン沈着および解剖学において観察された混乱が、(形質転換)遺伝子に基づくことが示唆された。また、矮性および正常サイズのpARB341植物の徒手切片を、Maule染色液でも染色した。この染色は、シリンギルリグニンのサブユニットに特異的である(Strivastava LM. 1966. Histochemical studies on lignin. Tappi Journal 49:173-183)。
【0150】
フロログルシノールで染色した切片と同様、「正常」植物以外の矮性植物で観察されるリグニンは劇的により少なく、かつ矮性植物の茎では、維管束分化の欠如が明らかであった。
【0151】
矮性pARB341植物はまた、ピンク色の木材を有するため、背が高い対応物とは表現型的にも異なった。茎を剥ぎ取ると、これが観察された。これらの植物の茎はまた、背の高い植物に比較して、やわらかく、かつ弾性があった。興味深いことに、背が高い/「正常」表現型を有するいくつかのpARB345植物もまた、樹皮、師部および一次皮層を剥ぎ取ると、ピンクの木材を有した。
【0152】
共焦点顕微鏡によって、2つの野生型試料および10のトランスジェニック試料を調べた。調べた10のトランスジェニック試料には、1つがピンクの木材を有する、5つのpARB339植物、どちらもピンクの木材を有する、2つの矮性pARB341植物、および2つがピンクの木材を有する、3つのpARB345植物が含まれた。2〜3cmの長さの茎セグメントをホルマリン・アセトアルコール(FAA)中で固定した。水中で試料を洗浄し、かつスレッジ・ミクロトームを用いて、30〜60mmの厚さの切片を作製した。共焦点顕微鏡を用いた解剖学的分析のため、サフラニンおよびフロログルシノール/HClを用いて、切片を染色した。トルイジンブルー染色を用いて、いくつかの試料を調べた。
【0153】
すべての試料は、しばしば茎の片側のみの区画に存在する、多量かつ多様な量の引っ張りあて材(tension wood)を含有した。これは、多かれ少なかれ非リグニン化された二次壁を持つ、非常に厚い壁がある繊維によって特徴付けられた。すべての試料の引っ張りあて材において、フロログルシノール/HClによる赤色呈色の減少およびサフラニン染色での緑色蛍光の増加によって、かつトルイジンブルーでのピンクの染色によって、リグニン化の減少が確認された。引っ張りあて材効果とトランスジェニック表現型を区別するため、すべての試料において、サフラニン染色とともに共焦点顕微鏡を用い、かつまたフロログルシノール/HCl染色も用いて、引っ張りあて材に典型的な染色パターンを示さない、正常な木材である茎の領域を調べた。大部分の試料において、正常繊維または導管の細胞壁組成が改変された、明らかな指標はなかった。pARB341トランスジェニック樹木由来の2つの試料は、細胞壁組成が改変された指標となる解剖学的表現型:導管直径の有意な減少および導管細胞壁の波状外観を示した。これらの試料のうち少なくとも1つはまた、木質部の外(髄中のリグニン化組織)にも変化を示した。しかし、上で同定した非矮性低リグニン試料由来の試料は、共焦点顕微鏡によって検出可能な解剖学的異常を示さなかったことが注目される。結果によって、本発明の構築物が、高さの成長、リグニン含量減少、および解剖学的表現型改変の多様な組み合わせを生じ得ることが立証される。したがって、開示する方法は、パルプ製造または他の木材由来製品のために最も望ましい組み合わせを示すトランスジェニック樹木の生成および選択を可能にする。
【0154】
実施例13.テーダマツにおける4CL構築物の評価
PyMBMSを用いたリグニン評価
米国特許第5,856,191号に記載される方法を用いて、個々の未成熟大配偶体の接合胚から、テーダマツ(ピナス・タエダ)および雑種マツ(P.タエダx P.リジダ(P. rigida))胚形成性細胞株を開始し、かつ米国特許第5,506,136号に記載される方法を用いて維持した。
【0155】
維持培地上での1〜3ヶ月の培養後、組織培養物を凍結保存し、最長数年の期間保存し、かつ次いで、米国特許第6,682,931号の方法を用いて回収した。植物組織培養の当業者は、他の凍結保存および回収プロトコルが本方法に適用可能であり、かつこの実施例の詳細は、方法の適用を制限すると見なしてはならないことを認識するであろう。
【0156】
米国特許第5,491,090号の方法にしたがって、各1gの組織を250ml Nepheloサイドアームフラスコ(Kontes Chemistry and Life Sciences Products)に接種することによって、遺伝的に異なる組織培養株各々に由来する均一な懸濁培養物を確立した。液体培地中の細胞を含有するフラスコを、23℃±2℃の温度で、培養暗室中、100rpmの旋回シェーカー上に置いた。1週間後、培養フラスコに15mlの新鮮な培地を注ぎ込み、かつ回転させて細胞を均一に分布させることによって、各フラスコ中の液体を35mlにした。細胞および培地をフラスコのサイドアーム部分にデカントし、細胞を30分間定着させ、かつ次いで、定着した細胞の体積(SCV)を測定することによって、サイドアーム中で細胞増殖を測定した。SCVが最大SCV(フラスコの体積の50%が植物細胞によって占められた)の半分以上になったら、トータルで80mlの細胞および培地を含有する500mlのサイドアームフラスコに各培養物を移し、かつ移した培養物を、同じ条件下で維持した。
【0157】
遺伝子導入の準備をするため、ポリエステル膜支持体をオートクレーブすることによって滅菌し、かつ別個の無菌ブフナー漏斗内に入れて、かつ細胞株あたり各6つの複製プレートに関して、胚形成性組織が均一に分布するように、1〜3ミリリットルのマツ胚形成性懸濁物を、各支持体上にピペッティングした。組織から液体培地を吸引し、かつ米国特許公報第20020100083号に記載する方法にしたがって、胚形成性組織を所持する各支持体を、アグロバクテリウム(Agrobacterium)接種のためのゲル状調製培地上に置いた。具体的には、当業者に周知の技術によって、バイナリー構築物、pWVC60、pWVC62、pWVK158、pWVK154、pWVK157、pWVK155、pWVK143、pWVC46、pWVC40、pWVC43、およびpWVC44を各々、異なる単離体アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に導入し、かつ一般的に用いられる技術によって、アセトシリンゴンを投与して、病原性を誘導して、その際、誘導したアグロバクテリウム単離体各々を、植物材料の別個の複製物と混合した。暗所中、22℃±2℃でおよそ72時間、細胞を共培養した。
【0158】
共培養後、米国特許公報第20020100083号に記載される方法にしたがって、培養物からアグロバクテリウムを根絶した。次いで、ポリエステル膜支持体上に生じた細胞を2週間間隔で新鮮な選択培地上に移した。選択培地上の活発な増殖は、多くのペトリ皿上、いくつかの隔絶されたセクターで生じた。選択剤の存在下でのこうした活発な増殖は、通常、増殖中の組織が、染色体内に選択遺伝子を組み込み、かつ安定して形質転換されている指標である。活発な増殖のこれらの領域を独立の形質転換事象として扱い、かつこれ以降、推定上のトランスジェニックサブ系統と称する。増殖中のトランスジェニックセクターを、それぞれの選択剤を補った、新鮮な半固体維持培地に移すことによって、推定上のトランスジェニック胚形成組織を増殖させた。
【0159】
推定上の形質転換サブ系統がおよそ2gに達した後、標準的技術を用いて、導入遺伝子の存在の検証のため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために選択した。
【0160】
(表19)PCR用のプライマー対(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:68〜75)
【0161】
また、各サブ系統由来の材料を、GUS染色および顕微鏡検査にも供した。GUS染色に関しては、植物形質転換の技術分野に周知の技術にしたがって、Inalcoに市販されている発色性グルクロニダーゼ酵素基質「X-gluc」に曝露した際、トランスジェニック系統の各々由来の細胞の藍色染色によって、組織培養細胞中で発現するβ−グルクロニダーゼ酵素をコードする、挿入uidA遺伝子を検出した。顕微鏡検査によって、細胞分裂が再開したことが立証され、かつuidA導入遺伝子が一過性発現されることによって、これらの攻撃(bombardment)が正常な頻度であることが示される。
【0162】
発芽可能(germinable)胚を以下のように産生した。選択培地上で培養された細胞の塊が、少なくとも1グラムまで増殖した後、各々を、再び、液体培地中に別個に再懸濁した。細胞懸濁物が均一な(最大の半分の)SCVになったら、米国特許第5,506,136号に記載されるような発生/成熟培地上に置くため、等量の懸濁培養細胞を、無菌膜支持体上にピペッティングして、高品質採取可能段階3(子葉)の胚を発生させた。プレートを、23±2℃の暗い成長チャンバー中でインキュベーションした。3週間ごとに、新鮮な培地を含有する新しいペトリ皿に、膜支持体を移した。第9週、発芽品質に関して、段階3(子葉)の胚を視覚的に分析し、かつ米国特許第5,506,136号に記載されるような培地上の布支持体上に採取し、かつ暗所中、4℃±2℃の温度で、約4週間インキュベーションした。次に、布支持体上の胚を、暗所中、25℃±2℃の温度で、密封容器中の水上で、約3週間インキュベーションした。上記2つの処理後、布支持体上の胚を、発芽培地に移し、かつ暗所中、25℃±2℃の温度で、約3日間インキュベーションした。次いで、布支持体から胚を取り除き、かつ新鮮な発芽培地の表面上に置いた。25℃±2℃の温度で、明所中、発芽を行った。約4週間の期間に渡って、発芽プレートを毎週調べ、かつ発芽している胚を、小植物に変換するため、100mlの発芽培地を含有するMAGENTA(登録商標)ボックスに移した。発生中の小植物を含有するMAGENTA(登録商標)ボックスを、約8〜12週間、25℃±2℃で、明所中でインキュベーションした。
【0163】
小植物が上胚軸(およそ2〜4cmの新たに形成されたシュート)を形成したら、鉢用混合土[2:1:2 ピート:パーライト:バーミキュライト、602g/m3のOSMOCOTE肥料(18-6-12)、340g/m3のドロマイト石灰および78g/m3のMICRO-MAX微量栄養素混合物(Sierra Chemical Co.)を含有する]を満たした容器に移した。遮光した温室で小植物を成長させ、かつ約2週間、不定期に霧吹きした。順応させるため、霧吹きせずに約4週間、温室に置いた。次いで、完全に日光条件に移す前に、最終順応のため、約6週間、小植物を、戸外の陰に移した。次いで、フィールドに植える条件が整うまで、容器中で成長させた。
【0164】
上述のようなRNAiベクターで形質転換された5ヶ月のテーダマツ樹木の高さを測定し、かつ結果を記録した(表20)。高さのデータに対して、Duncan多重範囲検定を行って、かつpWVK157、pWVK155、pWVC40、pWVC43およびpWVC44のRNAiカセットを含有するベクターで形質転換された植物が、GUS対照植物(pWVC41)に比較して、高さにおいて有意な相違がまったくない一方、すべての他の形質転換系統は、対照に対して高さに有意な相違を有したことが見出された。単一の非形質転換対照もまた、21.1cmの高さと測定されたが、これが単一の結果であり、かつ多数の試料の平均でなかったため、この試料について統計解析は行わなかった。形質転換樹木および対照樹木のすべてに関して、5ヶ月の時点の根の乾燥重量もまた測定したが、対照およびトランスジェニック間で有意な相違は観察されなかった。
【0165】
7ヶ月齢で、各茎からおよそ20mgの組織を切断することによって、上記の形質転換樹木または対照非形質転換樹木から、およそ200試料を収集した。石英ボート中で各試料の重量を測定し、かつ5L/分(STPで)のヘリウム流動を伴って、石英管(内径2.5cm)からなる反応装置中で熱分解した。分子ビーム質量分析装置のサンプリング開口部が石英反応装置の端の内部になるように、反応装置の管を置いた。Evans & Milne(1987)(Energy & Fuels, 1 : 123-37)に記載されるような熱分解蒸気分析に、Extrel(商標)モデルTQMS C50質量分析装置を用いた分子ビーム質量分析装置を用いた。反応装置を電気的に加熱し、かつその温度を550℃に維持した。総熱分解時間は90秒であったが、熱分解反応は50秒未満で完了した。反応装置熱分解ゾーンにおける熱分解蒸気の滞留時間は、〜75msと概算されており、かつ石英反応装置における二次クラッキング反応が最小であるには十分に短い。22eV電子衝撃イオン化を用い、Teknivent Vector 2(商標)データ獲得システム上で、20〜450Daのマススペクトルデータを獲得した。このシステムを用いて、軽いガスおよび重いタールの両方を、同時に、かつリアルタイムでサンプリングした。熱分解蒸気のマススペクトルは、分子断片の迅速で半定量的な描写を提供する。
【0166】
テーダマツ試料セットの2つ組マススペクトルおよび標準を、ブロック様式で、2日連続で収集し、1日ごとの分光計のドリフトから生じ得る、データ分析に関連する問題が軽減されるようにした。両日に収集したマススペクトルの組み合わせ分析によって、分光計のドリフトが最小限にしか生じなかったことが示された。
【0167】
スペクトルの検査によって、トランスジェニック試料のマススペクトルが、対照の物と異なることが決定された。トランスジェニックおよび対照テーダマツ試料由来の熱分解産物のpyMBMSスペクトル例を図14に示す。
【0168】
m/z 50〜200の間のマス範囲を用いたテーダマツpyMBMSスペクトルの主成分分析は、リグニンおよび炭水化物由来の熱分解産物を強調する一方、小さい熱分解断片および電子衝撃断片(m/z 50未満)ならびに抽出物(m/z 200を超える)を最小にした。リグニンに関するより多くの情報を含み、かつ抽出物に関してより少ない情報を含むマス範囲を選択することによって、構築物間に有意な相違があることが明らかになった。図15Aは、分析したすべてのトランスジェニックのm/z 50〜200のマス範囲を用いて収集したマススペクトルのPC1スコア対PC2スコアのスキャッタープロットを示す。このスキャッタープロットから、本発明者らは、いくつかのベクターで形質転換された植物が、マススペクトルおよびPCローディングの分析から決定されるように、リグニン量の相違によって、対照非形質転換植物に対して、明らかな区別を示す一方、他のものは示さないと結論付け可能である。図15B、16Aおよび16Bは、さらなる洞察を提供する。pWVC41で形質転換された樹木は、GUS対照トランスジェニックであり、かつ対照非形質転換樹木との相違を示さなかった。pWVC40およびpWVK154で形質転換された樹木はどちらも、マツ4CL断片Dコード配列(SEQ ID NO:21)を含有し、かつpWVC46およびpWVK158で形質転換された樹木はどちらも、マツ4CL断片C(SEQ ID NO:20)コード配列を含有した。これらの形質転換体は各々、スキャッタープロット上の対照試料とは区別され、トランスジェニックおよび対照間のリグニン量の相違が示された。
【0169】
図17は、図16Aで選択した試料、対照、トランスジェニックpWVC40およびpWVK154の拡大したマススペクトル領域を示す。リグニンの熱分解から生じるピークが、炭水化物および抽出物に割り当て可能な他のピークに比較して、減少していることが明らかである(表21を参照されたい)。他の構築物のマススペクトルの類似の分析によって、PC1が、各試料中のリグニン濃度を反映することが示される。図15〜16の右側の試料は、最も高いリグニン含量を有し、かつ左側の試料は、はるかにより低いリグニン含量を有する。
【0170】
pWVK158、pWVK154、pWVC46およびpWVC40で形質転換された7ヶ月齢のテーダマツ樹木は、非形質転換対照およびGUS形質転換対照と比較した際、リグニン含量の最大の減少を示した。pWVK158、pWVK154およびpWVC42で形質転換した樹木は、非形質転換樹木およびGUS形質転換樹木より有意により低く、一方、pWVC40で形質転換した樹木は、有意なリグニン減少を有したが、高さの有意な減少は示さなかった。
【0171】
核磁気共鳴分光法を用いたリグニン評価
Bruker Avance 200MHz分光計において、交差分極(CP)およびマジック角回転(MAS)を伴い、4.7Tで、高分解能固相13C NMRスペクトルを収集した。多様な振幅の交差分極(交差分極期間に渡る1db直線ランプ)を用いて、より高いMAS回転率で、Hartmann-Hahnミスマッチに感受性である、非プロトン化芳香族炭素の変動を最小限にした(S. O Smith, I. Kustanovich, X. Wu, O. B. Peersen, Journal of Magenetic Resonance (1994) 104: 334-339)。1Hおよび13C場は53.6kHzでマッチし、かつマッチ期間中、プロトンr.f.に1dBランプを適用した。獲得時間は0.033秒であり、かつスイープ幅は31.3kHzであった。7000Hzの速度でマジック角回転を行った。2msの接触時間および1.0秒のパルス反復率を用いて、平均2000〜4000のスキャンを行った。相対ピーク強度および積分面積で観察される相違を用いて、類似の試料間の相違を同定することも可能である。Hawら、1984(J.F. Haw., G. E. Maciel., H. A. Schroder, Analytical Chemistry 56: 1323)の方法を用いて、芳香族(110ppm〜160ppm)および炭水化物(40ppm〜100ppm)領域の積分面積から、重量リグニン%値を計算した。
【0172】
PC1スコアに基づいて、12の試料を選択し、かつ固相13C NMRを用いて、リグニン含量を決定した。いくつかの場合、NMR分析に十分な多量の試料を得るため、同じ系統由来のいくつかの試料を合わせた。図18は、対照系統(2つの試料を合わせた)および形質転換系統pWVK154(4つの試料を合わせた)のNMRスペクトルの比較を示す。NMRスペクトルは、pWVK154トランスジェニックが、対照系統よりもはるかにより低いリグニン含量を有するという、pyMBMS分析の結果を確認した。芳香族および炭水化物領域の積分と、リグニンおよび炭水化物構造のいくつかの仮定を組み合わせることによって、重量リグニン%を決定した(Haw et al.,(1984) Analytical Chemistry 56: 1323を参照されたい)。選択した12の試料の結果を表22に示す。選択した試料に関して、PC1スコアとNMR重量リグニン%値を比較すると、PC1スコアがテーダマツ試料におけるリグニン量を正確に反映し、かつPC1スコアを用いて、異なる構築物のリグニン含量を順位付けし得ることが示される。
【0173】
多変数データ分析を用いたリグニン評価
Unscrambler、バージョン7.8ソフトウェアプログラム(CAMO A/S, Trondheim, Norway)を用いて、データ分析を行った。一度に1つのみのY変数を取り扱う、潜在的構造に対する射影(PLS-1)アルゴリズムを用いて、マツ試料のリグニン含量を予測するモデルを構築した。Xマトリックス(310変数(50〜360の間のm/z値))としてpyMBMSスペクトルを用い、かつYマトリックスとして固相NMRによって測定されるリグニン値を用いて、リグニン含量予測モデルを発展させた。分析前に、マススペクトルを総イオン電流に対して標準化した。データから体系的に1つの試料を取り除き、残りの試料を用いたモデルを確立し、かつ次いで、データセットから取り除かれた試料のY変数の値を予測するためにそのモデルを用いる、完全交差検証を用いて、モデル検証を行った。Yマトリックスからすべての試料が取り除かれ、かつ予測されるまで、このプロセスを続ける。最適モデルを選択するのに用いる基準は、適合度(すなわち高い相関係数)および最小残差であった。
【0174】
NMRリグニン値およびpyMBMSスペクトルから、リグニン含量を予測するPLS1モデルを構築した。NMR分析のため、同じ系統から1より多い樹木をサンプリングした場合、樹木由来の対応するマススペクトルを平均して、かつモデルを構築するのに用いた。50〜360のm/z値の範囲を用いて、PLSモデルを構築した。完全交差検証モデルの相関係数に基づいて、最適モデルを提供するために、この範囲を経験的に決定した。図19に示す最終完全交差検証モデルは、0.9のRMSEPおよび0.94のr2値を有した。
【0175】
National Renewable Energy Laboratory(Golden, Colorado)によって開発されたNMRに基づくモデルを用いて、形質転換系統各々に関して、リグニンレベルを決定した。表20は、各RNAi構築物に関して、非形質転換対照に比較したリグニンの割合を示す。すべての形質転換体は、対照植物に比較して減少したリグニンを示したが、異なる系統は、異なる量のリグニンを所持した。断片CまたはDを含む構築物を含む形質転換体が、最大のリグニン減少を示した。
【0176】
(表20)リグニンレベルに対するRNAi構築物の影響
【0177】
図10は、各形質転換体に関して得たリグニン値を示すグラフを提供する。x軸の平均の高さの順に、構築物を列挙する。したがって、結果は、マツにおいて、断片CおよびDが、増殖ならびにリグニンの平均減少と関連したことを示す。断片Eは成長を減少させないが、リグニンもあまり減少させなかった。平均成長減少が伴わない、最適なリグニン減少が、断片A(いずれかのプロモーターによって駆動)または断片F(4CLプロモーターによって駆動)で見られた。これらの構築物は、林業適用に適した表現型を構成する。
【0178】
表21は、テーダマツ木材試料の熱分解分子ビーム質量分析と関連するマススペクトルピークの割り当てを提供する(Evans et al, Energy & Fuels, 1 : 123-137(1987))。
【0179】
(表21)
1断片イオン。
【0180】
(表22)NMRによって決定される重量リグニン%値
【0181】
実施例14.マツ形質転換体のフィールド試験
乱塊法計画で、総数およそ1000の樹木ストックを植えるため、16の構築物の各々に関しておよそ同数の系統を含む、122系統の各々から、フィールド植林のため、4〜8の遺伝的に同一な珠芽(ラミート)を根付かせた。4CLプロモーター駆動構築物およびスーパーユビキチン・プロモーター駆動構築物で形質転換した系統を、それぞれの対照とともに、各々およそ500の樹木ストックの別個のブロックに植えた。
【0182】
表23でアスタリスクで特定する構築物は、少なくともいくつかの矮小化形質転換体を生じた。表から明らかであるように、スーパーユビキチン・プロモーター駆動構築物を含む形質転換体は、矮小化をより示しやすかった。一方、高さの測定にDuncanの多重範囲検定を適用する、以下の表23で見られ得るように、4CLプロモーター駆動構築物は、有意な矮小化を伴わずにリグニン減少を示す可能性がより高かった。表23において、維管束優先的プロモーターによって駆動される構築物を含有する形質転換体は、主に、より背が高いクラスに示されることが観察可能である。したがって、組織優先的プロモーターを含む構築物が好ましい。
【0183】
(表23)フィールド試験で植えた4CL RNAi形質転換樹木および対照樹木
トランスジェニック樹木の平均の高さ(8ヶ月齢で測定)および根の質量(12ヶ月齢、すなわちフィールド部位に植える時点で測定)
高さおよび根の質量の統計に対して、Duncanの多重範囲検定を行った。
【0184】
実施例15.炭水化物レベルの評価
二次木質部(木材)は、主に、セルロース(グルコースの直鎖ポリマー)、ヘミセルロース(セルロースと会合して見出される直鎖へテロ多糖;裸子植物において、主な構成要素糖はマンノースである)およびリグニン(加水分解によって脱重合不能なフェノール性ポリマー)で構成される。変化するレベルの炭水化物(CHO)およびリグニンは、パルプ化などのプロセスにおける樹木の有用性に影響を及ぼし得る。セルロースは、パルプ収量の主な構成要素であり、かつ収量はまた、セルロースと会合するヘミセルロースの量および種類によってもまた、影響を受け得る。さらに、木材のセルロース含量は、パルプ由来および固形木材製品の両方に重要である、強度に正に相関する。
【0185】
Hardingら(1999)(Nat Biotechnol. 17(8):808-12)は、リグニンレベルが減少したトランスジェニック・アスペン樹木が、上昇したCHOレベルを示すことを見出した。Hardingらは、CHOレベルの上昇が、リグニンレベルが減少した樹木の植物構造上の完全性の保持に関与する可能性もあり、かつこうした樹木が、パルプ化のため、増進した有用性を示すであろうと主張する。
【0186】
総リグニン量に関して試験したトランスジェニック植物材料を、存在するセルロースおよびヘミセルロース量の測定値として、炭水化物(CHO)に関して試験してもよい。抽出物不含の粉末試料に対して、炭水化物分析を行う。これらの試料を、72%硫酸を用いて、まず室温で1/2時間インキュベーションし、次いで120℃で1時間インキュベーションすることによって、2段階で加水分解し、デカントし、かつイオンクロマトグラフィーによって分析する。クロマトグラムから、アラビナン、ガラクタン、グルカン、キシランおよびマンナンの乾燥木材重量(DWW)パーセントを決定する。
【0187】
Huら(1999)(Nature Biotechnology 17: 808 - 812)は、4CL遺伝子を下方制御したトランスジェニック・アスペン樹木が、リグニン含量の最大45%の減少およびセルロース含量の15%の増加を示すことを立証した。実施例15でリグニンに関して試験したトランスジェニック樹木の炭水化物レベルを評価することによって、これらの構築物が、リグニン含量減少およびセルロース含量増加の間の相関を示すかどうかが決定されるであろう。
【0188】
トランスジェニック樹木のCHO測定の結果によって、形質転換樹木において、どの構築物が、セルロースまたはヘミセルロース含量の変化と相関するか決定する。これらの結果は、これらの構築物が、パルプ収量と相関し、かつパルプ繊維および固形木材製品の強度と相関する、セルロース含量を調節可能であることを立証する。
【0189】
構築物は、形質転換樹木において、セルロースまたはヘミセルロース含量を改変する。形質転換樹木のリグニンレベルの減少およびCHOレベルの増加は、パルプ産業に対して経済学的および環境的利点を提供する。特に、リグニン含量の減少は、パルプ化および漂白プロセスにおいて、化学薬品の減少を導くはずである。
【0190】
実施例16.
リグニン含量を分析するためのさらなる方法
本実施例では、6ヶ月齢の植物およびおよそ18ヶ月齢の植物の間で、トランスジェニック植物中の細胞構造およびリグニン含量を比較するため、実施例13で先に試験した樹木の遺伝的クローンの、より老齢の試料の解剖学的分析を行う。さらに、実施例11および13で、それぞれ、総リグニン量、CHO量に関して試験し、かつ微量パルプ化したトランスジェニック植物材料を、共焦点顕微鏡によって検査して、存在する細胞構造を観察する。
【0191】
ホルマリン・アセトアルコール(FAA)中で試料を固定する。水中で試料を洗浄し、かつスレッジ・ミクロトームを用いて、30〜60mmの厚さの切片を作製する。サフラニン染色を用いて、切片を染色し、かつ共焦点顕微鏡を用いて調べた。
【0192】
フロログルシノール/HClを用いてコニフェルアルデヒド単位を検出する、リグニンの組織化学試験もまた、試料に適用する。いくつかの試料はまた、リグニンに関するさらなる染色として、トルイジンブルー染色でも調べる。この解剖学的分析によって、存在する反応木材の量、およびトランスジェニック植物の材木(木質部)細胞が、対照植物に対して何らかの相違を示すかどうかが同定される。
【0193】
これらの結果は、実施例12および13において、減少したリグニンレベルを有することが示されたが、正常の形態を示す、トランスジェニック樹木の細胞構造が、「正常の」/より高いリグニンレベルを持つ非トランスジェニック樹木に対して、有意な相違を持たないことを立証する。これらの結果は、6ヶ月齢の樹木で観察される細胞構造が、18ヶ月齢の樹木由来の試料での観察と一致することをさらに立証する。
【0194】
実施例17.リグニンが減少した樹木のプロセシング
リグニン含量の減少が、パルプ化プロセスの改善につながるかどうかを決定するため、実施例のトランスジェニック樹木を、微量パルプ化に供してもよい。クラフト紙パルプ化用の木材供給源の適切性を決定するために重要なパラメータは、パルプ収量、パルプ化率、アルカリ消費量、繊維品質およびパルプ漂白可能性である。木材試料を風乾し、チップ化し、かつ次いで105℃で少なくとも2日間、かつ定重量に達するまで、オーブン乾燥した。Stalsvetの多消化槽パルプ化装置(Stalsvets, Sweden)の回転アームに装着した150mLのステンレススチール反応装置中で、クラフト紙パルプ化を行う。12.5kWの総容量を有し、かつOmron制御装置(Omron Corporation, Illinois, USA)によって制御される電気ヒーターによって加熱されるポリエチレン槽を通じて、反応装置を回転させる。典型的なパルプ化条件は:
有効アルカリチャージ:14%(Na2Oとして)
溶液硫化度:30%
溶液:木材比:6:1
最高パルプ化温度:170℃
最高温度までの時間:90分間
H係数:170℃での時間を変化させることによって決定
【0195】
パルプ製造の当業者は、本発明の樹木の木材のパルプ化可能性を試験するため、微量パルプ化条件の多くの他の組み合わせが利用可能であることを認識するであろう。反応装置を冷水中で急冷し、かつ加熱したチップをブフナー漏斗上でろ過する。残渣アルカリ分析のため、ろ液を保持する。加熱したチップを水道水で徹底的に洗浄し、かつ次いで、標準的British粉砕装置中で15分間混合する。生じたパルプをブフナー漏斗上でろ過し、かつろ液が透明になるまで水で洗浄する。パルプパッドを60℃で一晩乾燥させ、かつ重量測定によって総収量を決定した。
【0196】
最初の変曲点までの0.5M塩酸での滴定によって、残渣アルカリを決定する(Milanova, E. and Dorris, G.M., Nordic Pulp and Paper Research Jl., 9(1), 4-9 (1994))。アルカリ消費量は、チップに対する有効アルカリチャージおよび黒液中の残渣アルカリ間の相違であり、オーブン乾燥チップの割合として表す(Na2Oとして)。
【0197】
Appita Standard 201m-86(AS/NZS 1301.201s:2002)の1/2スケール修飾によって、パルプ・カッパー価を決定する。既定の加熱時間に達するカッパー価として、パルプ化率を計算する。
【0198】
以下のようなD-Eo-D順序を用いて、10%コンシステンシーで、パルプを漂白することによって、パルプ漂白可能性を決定する(Kibblewhite et al., Appita, 51(2), 1145-121 (1998)):D段階:0.25活性塩素倍数、100%工業用二酸化塩素、50℃、60分間。Eo段階:2% NaOH、0.25mPa O2、70℃、60分間。D段階:1% ClO2、70℃、180分間。漂白後、pH 4〜5.5で5gの輝度パッドを用意し、かつL & W Elrepho(Lorentzen & Wettre, Kista, Sweden)を用いて、23℃/50% RHでの平衡後、輝度を決定する。Kaman Fiberglas system(Mets Automation, Kaman, Finland)を用いて、平均繊維長、幅、およびルーメンサイズ、ならびに標準偏差などの繊維品質を分析する。
【0199】
結果は形質転換で用いた構築物の種類に相関し、かつ、構築物がクラフト紙パルプ化の木材供給源の適切性を有効に調節することを立証する。
【0200】
実施例18.アンチセンス構築物
アンチセンス転写物を生じる発現構築物を用いて、植物におけるリグニン含量を修飾することも可能である。これに関連して、本明細書に開示する任意のプロモーターを、本明細書に開示する任意の遺伝子由来の配列と組み合わせて、アンチセンス転写物を生じる組換え構築物を産生することも可能である。E.グランディス由来の4CL遺伝子を利用する、いくつかの例示的な発現カセットを表24に提供する。pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412のベクターマップを、それぞれ、図20、21、および27に提供する。
【0201】
構築物pARB598は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつATCCアクセッション番号PTA-6224を与えられた。
【0202】
(表24)
【0203】
実施例19. 4CLのセンス構築物
また、本明細書に開示する任意のプロモーターを、センス転写物を生じるように配向させた4CL遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、ターゲット遺伝子の発現を抑制可能な高レベルの4CLセンス転写物を生じる。例示的な構築物は、図25に示すpARB368である。この構築物の発現カセットは、米国特許第6,410,718号に記載されるように単離された、ユーカリプタス・グランディス由来の全長4CL cDNA(SEQ ID NO:84)に機能可能であるように連結されたピナス・ラディアタ4CLプロモーター(SEQ ID NO:77)を含む。
【0204】
実施例20. Cald5Hを含む構築物
本明細書に開示する任意のプロモーターを、Cald5H遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、形質転換体におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾することによって、トランスジェニック植物におけるリグニン組成を改変することも可能である。いくつかの例示的な発現カセットを表25に提供する。こうしたベクターのプラスミドマップを図20〜22、24および28に提供する。これらの構築物各々は、Cald5Hを過剰発現して、かつそれによって、形質転換植物におけるシリンギル含量が上昇するように設計された。米国特許第6,252,135号に記載されるように、モミジバフウ(sweetgum)木質部cDNAライブラリーから、これらの構築物中で用いたCald5H遺伝子(SEQ ID NO:83)を単離した。
【0205】
(表25)
【0206】
実施例21. SADを含む構築物
本明細書に開示する任意のプロモーターを、SAD遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、形質転換体におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾することによって、トランスジェニック植物におけるリグニン組成を改変することも可能である。いくつかの例示的な発現カセットを表26に提供する。こうしたベクターのプラスミドマップを図25〜26に提供する。これらの構築物各々は、SADを過剰発現して、かつそれによって、形質転換植物におけるシリンギル含量が上昇するように設計された。成熟シュート芽(shoot bud)から産生したE.グランディスcDNAライブラリーから、構築物中で用いたEGBA SAD遺伝子(SEQ ID NO:85)を単離した。ユーカリプタス属由来の発生中の散形花序(inflorescence umble)(非開花散形花序のつぼみ(unopened umbel buds))から産生したcDNAライブラリーから、構築物中で用いたEHUA SAD遺伝子(SEQ ID NO:86)を単離した。こうしたcDNAライブラリーを実施例2に記載するように調製してもよい。
【0207】
(表26)
【0208】
表27は、本明細書記載のポリヌクレオチドおよびDNA構築物の多くの核酸配列を提供する。
【0209】
(表27)
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1A】本明細書に記載するいくつかのDNA構築物を作製するのに用いたプライマーおよび構成要素を提供する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:5、6、7、8、15、9、および64)。
【図1B】本明細書に記載するいくつかのDNA構築物を作製するのに用いたプライマーおよび構成要素を提供する(SEQ ID NO:16、17、10、11、12および13)は、。
【図2A】本明細書に記載するDNA構築物の構成要素を提供する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:65、25、および26)。
【図2B】本明細書に記載するDNA構築物の構成要素を提供する(SEQ ID NO:34および33)。
【図3】トランスジェニック・ユーカリプタス属樹木の生じた高さを示す、棒グラフを提供する。
【図4A】トランスジェニック・ユーカリプタス属樹木の生じた高さを示す棒グラフを提供する。
【図4B】トランスジェニック樹木の平均リグニン含量を示す。
【図5】マツ4CL遺伝子の核酸配列(SEQ ID NO:66)を提供する。
【図6A】いくつかのマツ4CL断片の核酸配列を同定する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:18、19、20、および21)。
【図6B】いくつかのマツ4CL断片の核酸配列を同定する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:22、23、24、および48)。
【図7】本発明のDNA構築物の一般的な設計を提供する。
【図8】マツ樹木におけるリグニンを調節するのに使用するためのいくつかの4CL DNA構築物の概略図を提供する。
【図9】マツ樹木におけるリグニンを調節するのに使用するためのいくつかの4CL DNA構築物の概略図を提供する。
【図10】4CL RNAi構築物による、リグニンレベルの調節をグラフで示す。リグニン値はNMRで測定した際の細胞壁材料中のリグニンパーセントである。
【図11】ユーカリプタス属4CL構築物pARB345のプラスミドマップである。
【図12】ユーカリプタス属4CL構築物pARB339のプラスミドマップである。
【図13】ユーカリプタス属4CL構築物pARB341のプラスミドマップである。
【図14】テーダマツ試料のマススペクトルを提供する。2000c=対照;1268b=DNA構築物pARB585を含むトランスジェニック樹木。
【図15】Aは、トランスジェニック・テーダマツ試料のm/z 50〜200のマス範囲を用いて収集したマススペクトルのPC2スコアに対するPC1スコアのスキャッタープロットである。Bは、構築物pWVC41および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。
【図16】Aは、構築物pWVK154、pWVC40および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。Bは、構築物pWVK158、pWVC46および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。
【図17】図16Aで選択した構築物由来のテーダマツ試料のマススペクトルである。対照スペクトルの上部に、リグニンピークに割り当てられる熱分解断片を示す。
【図18】pWVK154で形質転換されたトランスジェニック・テーダマツの系統および非形質転換対照の13C CP/MASスペクトルである。スペクトルによって、対照系統に比較して、トランスジェニック系統では、炭水化物領域に比較して、芳香族およびメトキシル炭素の減少が示される(〜60〜110ppm)。
【図19】2つの主成分を用いたPLSモデルの完全クロス検証によって決定される、NMR測定リグニン値、およびPLS予測リグニン値のスキャッタープロットである。
【図20】リグニン構築物pARB1201およびpARB1203のプラスミドマップを提供する。
【図21】リグニン構築物pARB675およびpARB598のプラスミドマップを提供する。
【図22】リグニン構築物pARB661およびpARB662のプラスミドマップを提供する。
【図23】リグニン構築物pARB599のプラスミドマップを提供する。
【図24】リグニン構築物pARB1205およびpARB1202のプラスミドマップを提供する。
【図25】リグニン構築物pARB368およびpARB486のプラスミドマップを提供する。
【図26】リグニン構築物pARB487およびpARB488のプラスミドマップを提供する。
【図27】リグニン構築物pARB411およびpARB412のプラスミドマップを提供する。
【図28】リグニン構築物pARB374のプラスミドマップを提供する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
本出願は、どちらも参照により本明細書に組み入れられる、2004年9月22日に出願された米国出願第10/946,650号および2004年9月22日に出願された米国出願第10/946,644号に優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、リグニン生合成経路の操作を通じて、植物、特に樹木を遺伝的に修飾することに関し、かつより詳細には、4CL、C3H、CCR、C4H、Cald5H、SADまたはCCoAOMTの下方制御を通じて、植物を遺伝的に修飾して、リグニン含量の改変を達成することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
複雑なフェノール性ポリマーであるリグニンは、二次木質部の細胞壁の主な構成要素である。一般的に、リグニンは、木材の乾燥重量の25%を構成し、セルロースに次いで、地上で二番目に最も豊富な有機化合物となっている。リグニンは、茎に強度および剛性を与え、かつ微小繊維を物理的、化学的および生物学的攻撃から保護するが、木材を紙に変換するプロセスを妨害する。紙の製造のために木材繊維を遊離させるには、プロセシングした木材チップから、リグニンの大部分を取り除かなければならない。木材繊維からリグニンを抽出するのは、困難で、かつ費用がかかるプロセスであり、作用が強い(harsh)化学薬品を伴い、かつ毒性廃棄物を生じる。
【0004】
その結果、研究者らは、より費用効率的で、かつ環境に優しく、木材製品中のリグニン含量を減少させる方法を検索してきた。1つの代替法は、リグニンの生合成経路を遺伝的に修飾する工程を伴う。例えば、Chiangらは、植物のモノリグノール生合成経路を遺伝的に修飾することによって、植物におけるリグニン含量を減少させることを試みた。WO 02/20717を参照されたい。この方法は、酵素4-クマル酸-CoAリガーゼ(4CL)、コニフェリルアルデヒド5-ヒドロキシラーゼ(Cald5H)、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)依存性5-ヒドロキシコニフェルアルデヒド、O-メチルトランスフェラーゼ(AldOMT)、コニフェリルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)およびサインウィ(sinewy)アルコールデヒドロゲナーゼ(SAD)などの、モノリグノール生合成経路中の重要なリグニン調節部位を含む、フェニルプロパノイド経路由来の多数の遺伝子で植物を形質転換することを伴う。一方、他の研究者らは、これらの遺伝子のコピーを植物ゲノム内に個々に導入することによって、リグニン含量を減少させるように試みてきた。例えばWO 00/58489(Scald);WO 99/24561(4CL)を参照されたい。研究者らはまた、アンチセンス戦略において、これらの遺伝子を使用して、リグニン生合成を調節してきた。例えばWO 99/24561を参照されたい。これらの方法のいくつかは、リグニン合成の下方制御に成功したが、リグニンの下方制御は、植物表現型に有害であり得る。Anterola et al., Phytochemistry, 61:221-294 (2002)。したがって、リグニン発現を調節するための改善法が必要とされる。
【0005】
先の技術に対する強力な代替法として、mRNAレベルで、遺伝子発現をサイレンシングさせる方法が、最近、現れた。RNA干渉(RNAi)は、配列特異的方式で、遺伝子サイレンシングを導く二本鎖RNA(dsRNA)の導入によって誘発される、転写後プロセスである。C.エレガンス(C. elegans)におけるRNA干渉の最初の発見(Fire et al., Nature, 391:806-811 (1998)および米国特許第6,506,559号)があり、dsRNAを導入すると、配列特異的なサイレンシング効果を誘導可能である、多くの生物の例が続いた。例えば、線虫類、トリパノソーム、植物、真菌および動物に渡るほど多様な生物において、RNAiが天然に存在すると報告されている。天然には、RNAiは、ウイルスから生物を保護し、トランスポゾン活性を調節し、かつ異常な転写産物を取り除くために働いている可能性が最も高い。
【0006】
ショウジョウバエ、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)における研究によって、RNAiが2段階機構であることが示唆されている(Elbashir et al., Genes Dev., 15(2): 188-200 (2001))。まず、ダイサーとして公知である酵素によって、長いdsRNAが低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる21〜23リボヌクレオチド (nt) 断片になる。次いで、siRNAが、リボヌクレアーゼ複合体(RNA誘導性サイレンシング複合体を表すRISCと称する)と会合し、この複合体が相補的mRNAをターゲットとするようにする。次いで、RISCが、相補的siRNAと反対側の、ターゲットとされるmRNAを切断し、mRNAを他のRNA分解経路に対して感受性にする。
【0007】
RNAiは、リグニン合成を調節する、先行法の代替法を提供可能である。しかし、潜在的な能力が達成可能となる前に、リグニン合成の背景において、RNAiプロセスを開始し得るDNA構築物を開発しなければならない。
【発明の開示】
【0008】
概要
1つの態様において、リグニン関連遺伝子の発現を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。別の態様において、植物におけるリグニンの発現を調節する方法を提供する。さらに、リグニン関連遺伝子の発現を調節するのに有用なDNA構築物を含む組換え植物を産生する。
【0009】
1つの態様において、DNA構築物は、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。いくつかの態様において、モノリグノール生合成経路における遺伝子は、4CL、C3H、CCR、C4H、Cald5H、SADまたはCCoAOMTからなる群より選択される。
【0010】
別の態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。こうした構築物の使用を含む、植物におけるリグニンの発現を調節し、阻害し、かつ/または減少させる方法もまた、提供する。
【0011】
さらに別の態様において、植物細胞におけるリグニンの発現を阻害する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む構築物を該植物細胞のゲノム内に組み込む工程、ならびに該植物細胞を増殖させる工程を含む。こうしたプロセスによって産生される植物および植物細胞もまた提供し、それらに由来する紙および木材製品もまた提供する。こうしたトランスジェニック植物に由来するパルプおよびパルプ由来製品もまた提供する。別の局面において、こうしたトランスジェニック植物に由来する固形木材製品を提供する。木材製品には、例えば、材木、製材および複合材が含まれる。
【0012】
さらに別の態様において、5’から3’方向に、プロモーター、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞を産生する。第一のDNAセグメントに機能可能であるように連結されているプロモーターは、植物細胞ゲノムに対して、内因性であっても、また外因性であってもよい。他の態様において、第一のDNAセグメントが、C3H、C4H、CCRまたはCCoAOMT遺伝子の少なくとも部分に対応する、植物細胞を産生する。
【0013】
植物において、LIMタンパク質は、木材を開発するのに非常に重要な、リグニン生合成経路中のいくつかの遺伝子を調節することが立証されてきた(Kawaoka A, Ebinuma H 2001 Transcriptional control of lignin biosynthesis by tobacco LIM protein. Phytochemistry 57:1149-1157, Kawaoka et al. Plant J. 22: 289-301 (2000))。したがって、さらに別の態様において、5’から3’方向に、プロモーター、LIM遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞を産生する。
【0014】
別の態様において、木材を作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該木材を得る工程を含む。
【0015】
別の局面において、木材パルプを作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該木材パルプを得る工程を含む。
【0016】
さらに別の態様において、紙を作製する方法は、5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに該紙を得る工程を含む。
【0017】
別の局面において、DNA構築物は、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されており、かつモノリグノール生合成経路中の該遺伝子は4CL遺伝子であり、かつ該DNA構築物は、pARB1202、pARB675およびpARB599からなる群より選択される。
【0018】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412である。
【0019】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物はpARB368である。
【0020】
他の局面において、DNA構築物は、CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB1203、pARB1205、pARB675、pARB661、pARB662およびpARB374からなる群より選択される。
【0021】
さらに別の態様において、DNA構築物は、SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、該DNA構築物は、pARB486、pARB487およびpARB488からなる群より選択される。
【0022】
1つの局面において、本発明は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を、植物ゲノム内に組み込む工程を含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法を提供する。別のものにおいて、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を、植物ゲノム内に組み込む工程を含む。さらに、またはあるいは、こうした方法は、CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を使用してもよい。他の局面において、植物におけるリグニン発現を阻害する方法は、SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含むDNA構築物を伴う。
【0023】
こうした方法によって産生される植物および植物細胞もまた提供し、それらに由来する紙および木材製品もまた提供する。こうしたトランスジェニック植物に由来するパルプおよびパルプ由来製品もまた提供する。別の局面において、こうしたトランスジェニック植物に由来する固形木材製品を提供する。木材製品には、例えば、材木、製材および複合材が含まれる。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点が、以下の詳細な説明から明らかであろう。詳細な説明および特定の実施例は、好ましい態様を示すものの、例示のみのために提供し、これは、本発明の精神および範囲内の多様な変化および修飾が、この詳細な説明から、当業者には明らかになるであろうためである。さらに、実施例は、本発明の原理を立証し、かつ先行技術の当業者に対して、明らかに有用であろうすべての例に対する本発明の適用を具体的に例示すると期待することは不可能である。
【0025】
詳細な説明
1つの態様において、ターゲットとされる遺伝子の発現を抑制するためにDNA構築物を用いてもよい。本明細書記載の構築物および方法は、インビトロまたはインビボで個々の細胞において使用可能である。一般的に、構築物は、二本鎖RNA(dsRNA)をコードし、かつRNA干渉(RNAi)を開始することによってターゲット遺伝子を選択的に抑制する。好ましい態様において、DNA構築物を用いて、植物におけるリグニン含量を減少させる。
【0026】
1つの局面において、植物のリグニン含量を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。1つの態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。したがって、DNA構築物は、転写されると、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のRNAセグメント、スペーサーRNAセグメント、および第一のRNAセグメントに相補的な第二のRNAセグメントを含むRNA分子を生じる。C3H、C4H、CCoAOMT、コニフェリルアルデヒド5-ヒドロキシラーゼ(フェルラ酸-5-ヒドロキシラーゼ(F5H)としても知られる)およびCCRのDNAセグメントを含む構築物は、類似の方式で作用する。
【0027】
本発明が作用する機構は完全には理解されておらず、かつ本発明者らは、任意の特定の理論に本発明を限定することを望まないものの、生じるRNA分子の第一および第二のRNAセグメントがステム・ループを形成すると考えられる。ステムループのdsRNAは、分解されて、長さ約21〜23ヌクレオチドの低分子干渉RNA(siRNA)になる可能性がある。次いで、siRNAが、リボヌクレアーゼ複合体(RNA誘導性サイレンシング複合体を表すRISCと称する)と会合し、この複合体が相補的mRNAをターゲットとするようにする。次いで、RISCが、相補的siRNAと反対側の、ターゲットとされるmRNAを切断し、mRNAを他のRNA分解経路に対して感受性にする。
【0028】
別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。さらに別の態様において、DNA構築物は、DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。他の態様において、DNA構築物は、CAld5H遺伝子またはSAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含む。
【0029】
定義
句「ターゲット遺伝子」および「関心対象の遺伝子」は、本明細書において交換可能に用いられる。ターゲット遺伝子は、現在の状況で理解される際、調節または抑制のため、特定される遺伝子を意味する。ターゲットとされる遺伝子は、例えば、転写因子結合部位またはエンハンサーなどの制御要素を含有しても、またはしなくてもよい。抑制のために選択され得る遺伝子には、細胞壁タンパク質などの構造タンパク質、または転写因子および受容体などの制御タンパク質をコードする遺伝子、ならびに他の機能遺伝子が含まれる。さらに、この用語は、ポリペプチドのコード領域だけでなく、DNA中に存在するイントロン、制御要素、プロモーターおよび転写ターミネーターも含むよう意味する。したがって、「ターゲット遺伝子の少なくとも部分」は、関心対象の遺伝子の、転写された配列の少なくとも部分および/またはプロモーターの少なくとも部分および/またはターミネーターの少なくとも部分を含むよう意味する。
【0030】
本明細書記載のDNA構築物は、最も基本的なレベルで、プロモーター、1つまたは複数のDNAセグメントおよび転写ターミネーターを含む。本明細書において、「DNAセグメント」は、少なくともいくつかの隣接塩基で構成されるデオキシリボ核酸分子を指すよう意味する。ターゲット遺伝子に対応するDNAセグメントは、長さ30塩基対(bp)以上、好ましくは少なくとも50bpかつ2000bp未満、かつより好ましくは少なくとも100bpかつ750bp未満である。DNAセグメントは一本鎖でもまた二本鎖でもよい。本発明の状況内で、DNAセグメントには、遺伝子もしくはcDNA、またはそれらの部分が含まれてもよいし、あるいはプロモーターもしくは制御要素、またはそれらの部分が含まれてもよい。
【0031】
用語「RNAセグメント」は、少なくともいくつかの隣接塩基で構成されるリボ核酸分子を指す。RNAセグメントは、転写物、すなわち全ポリペプチドをコードするmRNA分子であってもよいし、またはその部分であってもよい。さらに、RNAセグメントは、本明細書に定義するRNAセグメントの性質を満たす限り、ポリペプチドまたはその任意の部分をコードする必要はない。例えばRNAセグメントは、ペプチドをコードしない、イントロン、5’-UTR、または3’-UTRを含んでもよい。RNAセグメントはまた、プロモーター、制御要素、または非遺伝子配列を含むDNAセグメントが転写される際にも産生される。
【0032】
用語「スペーサー」は、2つのDNAまたはRNAセグメントを分離する、一連の隣接ヌクレオチドを指す。1つの例において、「スペーサーDNAセグメント」は、2つのRNAセグメントを分離する「スペーサーRNAセグメント」をコードする。スペーサーの長さは、10塩基対(bp)〜2000bpまたはそれより多くの、広い範囲に渡って多様である可能性もある。DNAの非常に長い相補的セグメントが、短いスペーサーによって分離される場合、構築物は不安定になり得る。したがって、好ましくは、スペーサーは、分離するセグメントの長さの1/4〜2倍の間でなければならない。例えば、160bpの相補的DNAセグメントが存在する場合、これらの間のスペーサー・セグメントは、好ましくは40〜320bpの間であろう。スペーサーは、生じるスペーサーRNAが、転写物の相補的DNAセグメントより、はるかに短くなるように、転写物からスプライシング・アウトされるイントロンをコードすることも可能である。
【0033】
「相補的」RNAまたはDNAセグメントは、互いに特異的に結合するであろうセグメントである。好ましくは、2つの相補的セグメントの配列は、互いに少なくとも80%相補的であるべきである。より好ましくは、相補性は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%でさえあるべきである。互いに相補的であるDNAセグメントは、長さ30塩基対(bp)以上であり、好ましくは少なくとも50bpかつ2000bp未満、かつより好ましくは少なくとも100bpかつ750bp未満であってもよい。
【0034】
95%相補性によって、例えば、相補的RNAまたはDNAセグメントのヌクレオチドは、一方のRNAまたはDNAセグメントが、このRNAまたはDNAセグメントの他方の相補鎖の100塩基あたり、5つまでの点突然変異を含有することも可能であることを除いて、正確に塩基同士の方式で、互いに結合するであろう。点突然変異は、塩基欠失の形であっても、または塩基置換の形であってもよい。さらに、参照配列のこれらの突然変異は、相補ヌクレオチド配列の一方の5’もしくは3’末端位に存在してもよいし、あるいは参照配列におけるヌクレオチド配列の中に、個々に点在するか、または参照配列内の1つもしくは複数の隣接基の状態で点在するかいずれかであってもよい。
【0035】
実際問題として、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて、配列情報を比較することによって、相補性パーセント、ならびに同一性パーセントを決定してもよい。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch (1970)の並列法を利用する。簡潔には、GAPプログラムは、類似である、並列した記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を、2つの配列のうち、より短い配列における記号の総数によって割ったものとして、類似性を定義する。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、ならびにGribskovおよびBurgess(1986)の加重アミノ酸比較マトリックス、(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらなる0.10のペナルティ;ならびに(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。あるいは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて相補性パーセントを評価してもよい。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最適セグメントを見出す。Bestfitまたは任意の他の配列並列プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明記載の参照配列に95%同一であるかどうかを決定する際には、もちろん、参照ヌクレオチド配列の全長に渡って同一性パーセントを計算し、かつ参照配列中のヌクレオチドの総数の5%まで、相同性中のギャップを認めるように、パラメータを設定する。
【0036】
反対のDNA鎖上に類似かまたは同一の配列を有する2つのDNAセグメントは、「逆方向反復」と称される。逆方向DNA反復を持つ領域を通じた転写は、互いに「相補的」なRNAセグメントを生じる。RNAの2つの相補的セグメントを含む転写物は、二本鎖領域を持つ、単一のRNA分子を形成し得る。こうした二本鎖領域はときに、「ステム・ループ」または「ヘアピン」と呼ばれる。
【0037】
「転写ターミネーター」によって、RNAポリメラーゼが転写を停止するかまたは遅延させるようにする、RNA転写物の3’端をコードするDNAのセグメントを意味する。大部分の真核生物mRNAは、その3’端に付加されたポリ(A)セグメントを有するため、大部分の転写ターミネーターは、アデノシル残基が付加される単数または複数の塩基を特定する。したがって、転写ターミネーターは、ポリ(A)テールが付加されるヌクレオチド(単数または複数)にすぐ隣接し、かつそのヌクレオチドを含む、mRNAの3’-UTRの少なくとも部分をコードするDNAを含み得る。転写ターミネーターは、さらに、転写停止部位のより完全なDNAコンテクストを提供する、ポリアデニル化部位(単数または複数)直後のDNA配列の少なくとも部分を含み得る。転写ターミネーターはまた、ヒストン遺伝子またはリボソームRNA遺伝子の転写ターミネーターなどの、ポリアデニル化のためのターミネーター以外の転写を停止するセグメントも含む。
【0038】
DNA構築物は、本明細書において、ベクターもまた含む。用語「ベクター」は、宿主細胞における自律複製が可能なDNA分子を指す。当業者に公知であるように、ベクターには、限定されるわけではないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルスベクター、ファージベクター、酵母ベクター、哺乳動物ベクター等が含まれる。典型的には、ベクターには、薬剤耐性マーカーをコードする遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子または栄養要求株を補完する遺伝子が含まれるであろう。ベクターを含有する宿主細胞クローンの選択を補助する目的のため、多様な抗生物質耐性遺伝子がベクターに取り込まれている。例えば、細菌宿主細胞への導入が意図されるベクターに取り込まれた抗生物質耐性遺伝子には、限定されるわけではないが、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、ネオマイシン、G418、ブラストサイジンSおよびクロラムフェニコールからなる群より選択される抗生物質に対する耐性を与える遺伝子が含まれる。栄養要求株を補完する遺伝子は、プリン、ピリミジン、アミノ酸(例えばリジン、トリプトファン、ヒスチジン、ロイシン、システイン)、またはスフィンゴ脂質など、宿主による栄養的構成要素または機能的構成要素の使用を促進する酵素またはタンパク質をコードする遺伝子である。
【0039】
さらに、ベクターには、特定の宿主細胞の複製起点(レプリコン)が含まれるであろう。例えば、多様な原核生物レプリコンが当業者に公知であり、かつ原核宿主細胞における組換え分子の自律複製および維持を指示するように機能する。
【0040】
用語「機能可能であるように連結された」は、DNA配列がRNAセグメントに転写されるのに適した配向で、プロモーター−DNA配列の組み合わせが形成されるような、DNAの化学的融合、連結、または合成を指す。プロモーター−DNA配列からの転写は、プロモーターによって制御可能であり、場合によって、他の制御要素と組み合わされることも可能である。あるいは、プロモーター−DNAセグメントからの転写は、そのプロモーターによって制御されないことも可能である。プロモーター−DNA配列の組み合わせの構築において、一般的に、プロモーターおよび天然設定においてそのプロモーターが調節するセグメントの間の距離と、ほぼ同じ距離で、DNAセグメントの開始コドン上流に、プロモーターを配置することが好ましい。しかし、当技術分野に公知であるように、プロモーター機能の喪失を伴わず、距離の実質的な変動に適応することも可能である。
【0041】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに結合して転写を開始することが可能な、天然または合成のヌクレオチド配列を示す。こうしたプロモーターは当業者に公知であり、かつ細菌、ウイルス、真菌、植物、哺乳動物、または他の真核生物プロモーターを含むことも可能であり、その選択は、形質転換される宿主細胞または生物に応じる。ターゲット遺伝子と同じ組織で、抑制性構築物が転写される場合に、ターゲット遺伝子のサイレンシングが最も有効であろうと予期される。サイレンシングシグナルが、植物の離れた部分に転位置しうるという証拠がある(例えばPalauqui and Vaucheret, 1998, PNAS 95: 9675-9680.)が、いくつかの細胞は、こうしたシグナルを受け取ることが不可能である可能性もある。例えば、成長中のシュートの最先端でのGFP発現は、ウイルス抑制性構築物によってサイレンシングされなかった(Dalmay et al., 2000, Plant Cell 12: 369-379.)。多くの細胞種で発現される遺伝子のサイレンシングを達成するためには、少なくとも中程度の強度の恒常的プロモーターが好ましい。植物において作用する恒常的プロモーターの例は、CaMV 35SもしくはFiMVなどのウイルスプロモーター(Sanger et al., 1990. Plant Mol. Biol. 14: 433-443)、ノパリン・シンターゼ(nos)もしくはマンノピン・シンターゼ(mas)などの細菌プロモーター、またはシロイヌナズナ属(Arabidopsis)ACTIN2もしくはUBIQUITIN10遺伝子由来のものなどの植物プロモーター(An et al., 1996, Plant J. 10: 107-121; Norris et al., 1993, Plant Mol. Biol. 21 : 895-906)である。抑制構築物を駆動する恒常性プロモーターを用いて、限定された発現パターンのターゲット遺伝子をサイレンシングすることもまた可能である。しかし、サイレンシングされる表現型に必要なものを超えた、抑制構築物の発現を回避することが望ましいこともあり得る。ターゲット遺伝子のものと類似の発現パターンを有する、抑制構築物用のプロモーターを用いてもよい。例えば、木質部で発現されるターゲットのサイレンシングを計画している場合、パセリ(parsley)4CL遺伝子由来のプロモーター(Hauffe et al., 1993, Plant J. 4: 235-253)を用いてもよいし、または成長点特異的遺伝子をターゲットとする場合、シロイヌナズナ属PROLIFERAプロモーター(Springer et al., 1995, Science 268: 877-880)を用いてもよい。1つの態様において、同一プロモーター配列間の相互作用を回避するため、プロモーターは、形質転換しようとする種とは異なる種に由来する。真核細胞における発現のための多様な他のプロモーターが当技術分野に知られ、限定されるわけではないが、SV40後期プロモーターおよびRSVプロモーターのような、ウイルスまたはウイルス様の基本的プロモーター、ならびに真菌または哺乳動物細胞性プロモーターが含まれる(例えば、Larsen et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23:1223-1230; Donis et al., 1993, BioTechniques 15:786-787; Donda et al., 1993, Mol. Cell. Endocrinol. 90:R23-26;およびHuper et al., 1992, In Vitro Cell Dev. Biol. 28A:730-734を参照されたい)。真核宿主細胞において、レプリコンの一部である組換え分子の複製および維持を指示するように、真核細胞中で機能する、多様なレプリコンが当業者に公知である。
【0042】
用語「制御要素」は、DNA転写またはmRNA翻訳の特異性または効率に影響を及ぼす核酸配列を指し、限定されるわけではないが、転写因子、エンハンサー、ならびに転写または翻訳開始および終止シグナルが含まれる。エンハンサー配列は、すぐ近くのDNAセグメントに関する位置および配向とは比較的独立した方式で、転写効率を増加させるように見えるDNA要素である。したがって、DNA構築物に応じて、エンハンサーは、特定のDNAセグメントの上流または下流いずれかに配置され、転写効率を増加させることも可能である。当技術分野に公知である組換えDNA法を用いて、こうした制御要素を構築物DNA配列内に挿入してもよい。他の制御要素には、限定されるわけではないが、RNAセグメント上の5’非翻訳領域(5’UTR)ならびにRNAセグメント上の3’UTR(すなわちポリ(A)テールを含む)が含まれ、これらは、RNAセグメントまたは転写物の安定性および効率的な翻訳に必要である。
【0043】
本明細書において、「カセット」は、プロモーター、転写ターミネーター、およびこれらの間に挿入されたDNAセグメントを含むDNA構築物の種類である。カセットを用いて、プロモーターが活性である宿主細胞または生物において、DNAまたはRNAセグメントの発現を駆動することも可能である。
【0044】
用語「実質的な配列同一性」は、2以上のヌクレオチド配列の関連性を記載する。好ましくは、上記のように計算した際、配列は、少なくとも80%互いに同一である。より好ましくは、同一性は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%でさえあるべきである。
【0045】
「約」は、一般の当業者によって理解されるであろうし、かつこの用語を用いる状況に応じて、ある程度多様であろう。使用される状況を考慮して、一般の当業者に明らかでない、この用語の使用があった場合、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味するであろう。
【0046】
考察
本発明の1つの局面において、植物におけるリグニン含量を調節するのに有用なDNA構築物を提供する。1つの態様において、DNA構築物は、4-クマル酸補酵素Aリガーゼ(4CL)遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。
【0047】
P.ラディアタ(P. radiata)(参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,380,459号)由来のスーパーユビキチンなどの恒常性プロモーターを用いて、ターゲット4CLまたは他のリグニン生合成遺伝子の発現を駆動してもよい。別の態様において、本発明のDNA構築物は、木質部に特異的な発現を導くプロモーターを含む。P.タエダ(P. taeda)において4CL遺伝子上流の領域から単離されたプロモーター断片(参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第6,252,135号)が、強い木質部優先的な発現を示すプロモーターの一例である。本明細書に記載する実験的証拠によって、本発明のDNA構築物において4CLプロモーターを使用すると、植物の高さに不都合に影響を及ぼさずに、リグニン含量が効果的に減少することが立証される。
【0048】
本発明の構築物の第一および第二のDNAセグメントは、任意の4CL遺伝子に由来してもよい。好ましい態様において、マツ(pine)またはユーカリ(eucalyptus)樹木のリグニン含量を修飾する際、第一および第二のDNAセグメントは、ピナス・ラディアタ(Pinus radiata)(マツ)由来の4CL遺伝子(米国特許出願公報第20030131373号)またはE.グランディス(E. grandis)由来の4CL遺伝子(米国特許第6,410,718号)に由来する。同様に、本発明の構築物の第一および第二のDNAセグメントは、4CL遺伝子の任意の部分に由来してもよい。例えば、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpまたは1000bpの断片を用いてもよい。本明細書に示す他の例示的な長さには、189bp、327bp、334bp、373bp、389bpおよび668bpが含まれる。好ましい態様において、第一のDNAセグメントは、図のSEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24、33および48に示す配列から選択される断片を含む。
【0049】
第一のDNAセグメントは、4CL遺伝子のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに由来してもよい。第二のDNAセグメントは、第一のDNAセグメントに相補的であり、かつしたがって反対の鎖に由来するため、第一のDNAセグメントの鎖選択は、必然的に第二のDNAセグメントの供給源に影響を及ぼす。
【0050】
上述のように、スペーサーDNAセグメントは、他のRNAセグメントを分離するように働く、スペーサーRNAセグメントをコードする。スペーサーRNAセグメントは、本発明において、本発明の構築物のDNAカセットの転写から生じるステム・ループ中のループとして機能する。スペーサーDNAセグメントは、完全に合成であっても、または天然DNA配列に由来してもよい。1つの態様において、スペーサーDNAセグメントは、イントロンに由来する。例示的なスペーサーDNAセグメントを図1に示す。
【0051】
当技術分野に周知の核酸分子の操作のために設計された方法および技術を用いて、先に同定された関心対象の遺伝子、またはその一部もしくはプロモーターを単離してもよい。例えば、核酸分子の単離、精製およびクローニングのための方法、ならびに真核および原核宿主細胞の使用、ならびにこうした細胞における核酸およびタンパク質発現を説明する方法および技術が、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989、およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Frederick M. Ausubel et al. Eds., John Wiley & Sons, Inc., 1987に記載され、これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
関心対象の遺伝子またはプロモーターの少なくとも部分を含むDNA構築物を、宿主細胞内に導入してもよく、こうした細胞は、前述の通り、個々の細胞、培養中の細胞、宿主生物の一部としての細胞、受精卵母細胞もしくは配偶体または胚細胞であってもよい。用語「導入された」は、ターゲット宿主細胞に組換えベクターDNAを送達するための、当技術分野に公知の標準法を指す。こうした方法には、限定されるわけではないが、トランスフェクション、感染、形質転換、自然取り込み、エレクトロポレーション、微粒子銃およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)が含まれる。アグロバクテリウムは、ポプラ(poplar)(Leple, J.C. et al. 1992. Plant Cell Rep. 11 : 137-141.)、ユーカリ(Tournier, V. et al. 2003. Transgenic Res. 12: 403-411.)およびマツ(米国特許第6,518,485号(微粒子銃)および米国公開特許出願第20020100083号)を含む、多様な種において、成功裡に用いられてきている。アグロバクテリウムは、トランスジェニック・テーダマツ(loblolly pine)、トウヒ(Norway spruce)(Wenck, A.R. et al. 1999. Plant Mol. Biol. 39: 407-416.)、イネ(rice)(Hiei, Y. et al. 1997. Plant Mol. Biol. 35: 205-218.; Cheng, X. et al. 1998. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95: 2767-2772.)、コムギ(wheat)(Cheng, M. et al. 1997. Plant Physiol. 115: 971-980.)およびトウモロコシ(maize)(Ishida, Y. et al. 1996. Nat Biotechnol. 14: 745-750.)の再生植物を得るのに成功した、唯一の公開されている方法である。オオムギ(barley)(Tingay, S. et al. 1997. Plant J. 11: 1369-1376.)、サトウキビ(sugarcane)(Arencibia, A.D. et al. 1998. Transgenic Research 7: 1-10; Enriquez-Obregon, G.A. et al. 1998. Plant 206: 20- 27.)、バナナ(banana)(May, G.D. et al. 1995. Bio/Technology 13: 486-492.)、アスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)(Delbreil, B. et al. 1993. Plant Cell Rep. 12: 129-132.)およびアガパンサス・プラエコクス(Agapanthus praecox)(Suzuki, S. et al. 2001. Plant Sci. 161 : 89-97.)などの種で、形質転換が利用されている。
【0053】
リグニン含量を調節する際のDNA構築物の有効性を多様な方法で測定可能である。例えば、US Dairy Forage Research Center, Madison, Wisconsinで用いられている方法にしたがって、抽出物不含粉末試料に対して、臭化アセチル・リグニン定量を行ってもよい(Fukushima, R.S. and Hatfield, R.D., J. Ag. Food Chem., 49(7):3133 (2001))。熱分解分子ビーム質量分析もまた、使用可能である。この方法は、不活性ヘリウム大気中、500℃で、試料(0.1g)を迅速に加熱することからなる。サンプリング開口部を通じて膨張させ、続いて分子ビームを形成することによって、生成された熱分解産物を、リアルタイムで直接サンプリングして、迅速な試料急冷を提供し、かつ試料凝縮を阻害する。質量分析装置は、サンプリングされたすべての産物の普遍的な検出を提供し、かつ分子ビームサンプリングは、元来の分子から代表的な産物が検出されることを確実にする(Magrini et al., Environmental Pollution, 116: 255-268 (2002))。別の例において、核磁気共鳴(NMR)を用いて、リグニン構造を分析してもよい。NMRは、磁場の影響下で核による高周波電磁放射の吸着を測定することによって、原子内情報および構造情報を検出することも可能な分析法である。典型的には、Li, S.およびK. Lundquist (Nordic Pulp and Paper Research J., 3. 191- 195)の方法にしたがって、誘導体化されていないリグニンを性質決定するために用いられる2つの主な核は、1Hおよび13Cである。
【0054】
樹木のリグニン・レベルの減少、および場合によってこれに関連したCHOレベルの増加は、パルプ産業にとって経済的利点および環境的利点の両方となりうる。樹木におけるリグニンの減少は、パルプを作製するのに必要な化学薬品の減少、および場合によってはパルプを漂白するのに必要な化学薬品量の減少さえ導くはずである。
【0055】
以下の例は、本発明の多様な態様を例示するように働き、かついかなる意味でも、本発明の範囲を限定すると見なしてはならない。
【0056】
実施例
実施例1. cDNAライブラリーの構築
P.ラディアタおよびE.グランディスのデータベースにおいて、モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子候補を同定するため、公有配列(SWISS-PROT/TrEMBL IDによる)にcDNA配列を比較して、マツおよびユーカリのデータベース(コンティグによる非冗長、期待値<1.0e-2)に対して検索した。
【0057】
次いで、これらのヒットに関して、コンティグ・コンセンサスDNAおよびタンパク質配列を得て、かつ重複配列を同定した。次いで、タンパク質配列を用いて、多数の並列を行った。シロイヌナズナ属メンバーとともに、残りのマツおよびユーカリ配列を用いて、タンパク質並列を生成した。タンパク質並列から、樹状図を生成した。プライマー・ウォーキングによって、これらの配列を分析して、全長配列を提供した(全長配列のために分析したコンティグからの最適HT選択)。
【0058】
トウモロコシ、ワタ(cotton)、イネ、およびポプラ由来の公有モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子配列もまた抽出し、かつマツおよびユーカリのデータベースに対してblast分析を行った。完全にプライマーウォーキングしたマツおよびユーカリ配列をまた、ownseqに対してもblast分析し、かつ上位500ヒットを採用した。マツおよびユーカリのこうした配列を用いてさらに検索し、かつシロイヌナズナ属スーパーファミリーを用いることによって、マツおよびユーカリのデータベースにおいて、見逃したものがまったくないことを確実にし得るように行った。この検索によって、以前の検索では見出されなかった、さらなる4つの配列が生じた。次いで、これらの配列もまた、プライマーウォーキングした全長配列に送った。
【0059】
プライマーウォーキング後に少数のさらなる重複物を取り除いた後、マツおよびユーカリのプライマーウォーキングしたモノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合スーパーファミリーメンバーを同定した。ClustalXを用いた並列、対応する樹状図、およびMEME/MAST分析によって、これらの配列の分類を確認した。
【0060】
cDNAライブラリーにおいて、部分的cDNA配列の5’または3’のさらなる配列を同定するため、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech Laboratories, Palo Alto, Calif.)を用いて、cDNA端の5’および3’迅速増幅(RACE)を行った。一般的に、この方法は、まず、ポリ(A)mRNAを単離する工程、第一鎖および第二鎖cDNA合成を行って二本鎖cDNAを生成する工程、cDNA端を平滑化する工程、および次いでSMART RACEアダプターをcDNAに連結して、アダプターが連結されたds cDNAのライブラリーを形成する工程を含む。5’および3’ RACE反応両方のため、アダプター特異的プライマーとともに、遺伝子特異的プライマーを設計した。5’および3’ RACE反応を用いて、5’および3’ RACE断片を得て、配列決定し、かつクローニングした。全長遺伝子の5’および3’端が同定されるまで、プロセスを反復してもよい。末端から末端のPCRによって、遺伝子の5’および3’端に特異的なプライマーを用いたPCRにより、全長cDNAを生成してもよい。
【0061】
例えば、第一鎖cDNAから遺伝子の失われた5’領域を増幅するため、テンプレート配列の反対鎖から、かつテンプレート配列の〜100〜200bpの間の領域から、5’→3’にプライマーを設計した。増幅が成功すれば、テンプレートの5’端およびPCR産物の間で、〜100bpのDNA配列の重複が生じるはずである。
【0062】
Concert試薬プロトコル(Invitrogen, Carlsbad, CA)ならびに標準的単離および抽出法を用いて、4つのマツ組織、すなわち実生、木質部、師部および構造上の根からRNAを抽出した。次いで、10U/μlのDNアーゼI(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いて、生じたRNAをDNアーゼ処理した。RNA 100μgに対して、9μlの10x DNアーゼ緩衝液(Invitrogen, Carlsbad, CA)、10μlのRoche DNアーゼI、および90μlのRNアーゼ不含水を用いた。次いで、RNAを室温で15分間インキュベーションし、かつ1/10体積の25mM EDTAを添加する。RNA精製のため、製造者のプロトコルにしたがって、RNeasyミニキット(Qiagen, Venlo, The Netherlands)を用いた。
【0063】
cDNAを合成するため、木質部、師部、実生および根から抽出したRNAを用い、かつ製造者のプロトコルによって、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech Laboratories Inc, Palo Alto, CA)にしたがった。RACE PCRのため、4つの組織種由来のcDNAを合わせた。木質部、師部、根および実生組織由来の同体積のcDNAを合わせることによって、PCRのマスターミックスを生成した。96ウェルPCRプレート中で、対応するウェル位置に対して、プライマー希釈プレート(10mM)から1mlのプライマーを用いて、PCR反応を行った。プライマーを含むPCRプレートに、49mlのマスターミックスをアリコットする。以下のパラメータで、GeneAmp 9700(Applied Biosystems, Foster City, CA)上で、熱サイクリングを開始した:
94℃(5秒間)、
72℃(3分間)、5周期;
94℃(5秒間)、
70℃(10秒間)、
72℃(3分間)、5周期;
94℃(5秒間)、
68℃(10秒間)、
72℃(3分間)、25周期。
【0064】
標準法にしたがって、アガロースゲル上で、cDNAを分離した。ゲル断片を切り出して、かつ製造者の指示にしたがって、Qiagen 96ウェルゲル溶出キットを用いることによって、ゲルから溶出させた。
【0065】
以下の指定にしたがって、96ウェルプレート中、PCR産物をpGEMTeasy(Promega, Madison, WI)内に、一晩、連結した:60〜80ngのDNA、5μlの2x迅速連結緩衝液、0.5μlのpGEMT easyベクター、0.1μlのDNAリガーゼ、10μlまで水で満たし、かつ一晩インキュベーションする。
【0066】
標準法にしたがって、各クローンを大腸菌(E. coli)に形質転換し、かつ標準プロトコルにしたがうことによって、摘み取った12のクローンからDNAを抽出した。DNA抽出およびDNA品質を1%アガロースゲル上で検証した。標準的実験室法にしたがって、制限エンドヌクレアーゼEcoRIを用いた制限消化、およびゲル電気泳動によって、各クローンの正しいサイズの挿入物の存在を決定した。
【0067】
実施例2. マツ4CL発現ベクターの構築
テーダマツ由来の4CL遺伝子の少なくとも部分を含む一連の組換え構築物を調製し、かつ植物におけるリグニン含量を減少させる能力に関して評価した。一般的に、各DNA構築物は、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。4CL遺伝子ピナス・ラディアタ(図5)の異なる断片および異なるプロモーターを用いて、11の構築物を設計し、かつ調製した。構築物の一般的な設計を図7〜9に示す。スーパーユビキチン・プロモーター(米国特許第6,380,459号、Ranjan J Perera et al., Plant & Animal Genome VIII Conference (2000))を恒常的プロモーターとして用い、一方、P.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)を維管束優先的プロモーターとして用いた。アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のYABBY遺伝子由来のイントロン(SEQ ID NO:64)(Foster T M et al., Plant Cell, 14 (7): 1497-1508 (2002))をスペーサーDNAセグメントとして用いた。この構築物は、図5に示すP.ラディアタ由来の4CL遺伝子の部分を利用した。図6A〜6Bは、この構築物中で利用した4CL RNAi断片(A〜H)の核酸配列(SEQ ID NO:18〜24および48)を提供する。
【0068】
プラスミドpBluescript(BRL Gibco Life Technologies, Gaithersburg MD)のマルチクローニング部位に、さらなる制限エンドヌクレアーゼ部位を付加することによって、主鎖ベクターを調製した。元来のpBluescriptベクターをNotIおよびSstIで消化し、かつKlenowおよびT4ポリメラーゼ(Invitrogen Corp., Carlsbad CA)を用いて末端を埋めることによって、このプラスミドベクター中のNotIおよびSstI部位を破壊した。平滑端連結によって、このプラスミドを環状化し、かつ次いで、制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびHindIIIで消化して、リンカーのクローニングを可能にした。さらなる制限部位を含有するリンカー(5’端でリン酸化されている)(SEQ ID NO:1および2に示す)を一緒にアニーリングし、かつEcoRI/HindIIIで消化したpBluescriptベクター内に連結した。
【0069】
P.ラディアタ・スーパーユビキチン遺伝子(米国特許第6,380,459号)由来の3’ UTRをプラスミドpBI-121(Jefferson et al., EMBO J. 6:3901-3907, 1987)内にクローニングした。まず、標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:3および4に示すプライマーを用いて、遺伝子の3’ UTRの断片を増幅した。これらのプライマーは、SstIで消化したプラスミドpBI-121内にクローニングするため、SstI制限部位を提供する、さらなるヌクレオチドを含有した。次いで、nosターミネーターを含有する3’ UTR断片をpBluescriptプラスミドに移した。SEQ ID NO:5および6に示すプライマーを用いたPCRで、pBI-121の3’ UTRおよびnosターミネーター断片を増幅し、KpnIおよびClaIで切断し、かつKpnIおよびClaIで消化した修飾pBluescript内にクローニングした。
【0070】
この構築物に、イントロンを含むP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を付加した。標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:7および8のプライマーを用いて、米国特許第6,380,459号で同定されたP.ラディアタ・スーパーユビキチン配列から、プロモーター/イントロン配列をまず増幅した。次いで、XbaIおよびPstI制限消化を用いて、基本ベクター内に、増幅された断片を連結した。
【0071】
標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:10および11のプライマーを用いて、P.ラディアタcDNA由来のP.ラディアタ4CLイントロン配列(SEQ ID NO:9)を増幅し、次いで、Tテール化連結を用いて、XcmIで消化したベクター主鎖内にクローニングした。
【0072】
E.グランディスおよびP.ラディアタから、モノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合遺伝子、ならびにモノリグノール合成、モノリグノール輸送、およびリグニン重合様遺伝子を単離し、かつ性質決定するため、植物組織から総RNAを抽出した(Chang et al., Plant Mol. Biol. Rep. 11 :113-116 (1993)のプロトコルを用いる)。師部(P)、形成層(C)、拡張中の木質部(X1)、および分化しかつリグニン化しつつある木質部(X2)から、植物組織試料を得た。
【0073】
ポリ(A)Quik mRNA単離キット(Stratagene, La Jolla, CA)またはDynalビーズOligo(dT)25(Dynal, Skogen, Norway)のいずれかを用いて、総RNA調製物からmRNAを単離した。逆転写酵素合成後、製造者のプロトコルの使用にしたがって、ZAP Express cDNA合成キット(Stratagene)を用いて、生じたcDNAクローンをLambda ZAP内に挿入することによって、精製mRNAからcDNA発現ライブラリーを構築した。ライブラリーに応じて、5mL連結反応からのアリコット(1〜5μL)を用い、Gigapack II Packaging Extract(Stratagene)を用いて、生じたcDNAをパッケージングした。ExAssistヘルパーファージ(Stratagene)とともに、XL1-Blue MRF’細胞およびXLOLR細胞(Stratagene)を用いて、ライブラリーの集団切除を行った。切除したファージミドをNZYブロス(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)で希釈し、かつX-galおよびイソプロピルチオ−ベータ−ガラクトシド(IPTG)を含有するLB-カナマイシン寒天プレート上にプレーティングした。
【0074】
DNAミニプレップ用にプレーティングし、かつ選択したコロニーのうち、99%が、配列決定に適した挿入物を含有した。カナマイシンを含むNZYブロス中で陽性コロニーを培養し、かつアルカリ溶解およびポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって、cDNAを精製した。1%のアガロースゲルを用いて、染色体混入に関して、配列決定テンプレートをスクリーニングした。製造者のプロトコルにしたがって、Turbo Catalyst 800装置(Perkin Elmer/Applied Biosystems Division, Foster City, CA)を用いて、色素プライマー配列を調製した。
【0075】
Perkin Elmer/ Applied Biosystems Division Prism 377配列決定装置を用いて、陽性クローンのDNA配列を得た。まず5’端からcDNAクローンを配列決定し、かついくつかの場合、3’端からも配列決定した。いくつかのクローンに関しては、エキソヌクレアーゼIII欠失分析を用いるか、pBK-CMV中のサイズが異なるサブクローンのライブラリーを生じるか、または関心対象の遺伝子の同定した領域に対して設計した遺伝子特異的プライマーを用いて直接配列決定することによるか、いずれかで、内部配列を得た。
【0076】
実施例1に記載する方法を用いて、木質部からピナス・ラディアタcDNA発現ライブラリーを構築し、かつスクリーニングした。Perkin Elmer/Applied Biosystems Prism 377配列決定装置上で、順方向プライマーおよび逆方向プライマーを用いて、陽性クローンのDNA配列を得て、かつ決定した配列を、上述のように、EMBLデータベース中の公知の配列と比較した。他の植物種由来の公知の配列に対する類似性に基づいて、4CL(SEQ ID NO:18〜24および48)およびカフェオイルCoAメチルトランスフェラーゼ(SEQ ID NO:44)をコードするものとして、単離したDNA配列を同定した。
【0077】
標準的PCR技術ならびにプライマーSEQ ID NO:12および13を用いて、P.ラディアタ4CL cDNAクローンから、断片を増幅した。増幅断片の両端にPstIおよびClaI制限部位を付加するように、プライマーを設計した。増幅断片のヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:24として提供する。センス配向でP.ラディアタ4CL断片をクローニングするため、制限酵素PstIで増幅断片を切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつ平滑端ClaI部位で、主鎖ベクター内にクローニングした。アンチセンス配向でP.ラディアタ4CL断片をクローニングするため、PstIで増幅断片を消化し、かつPstI消化した主鎖ベクター内にクローニングした。
【0078】
Pr4CLおよびPDKイントロン配列に関する上記のものと同様に設計したプライマーを用いて、yabbyイントロン配列(Foster et al. 2002, Plant Cell. 14 (7): 1497-1508)を増幅し、かつ上述のようなベクター主鎖内にクローニングした。増幅断片両端にSmaI制限部位を付加するようにSEQ ID NO:18用のプライマーを設計し、増幅断片両端にEcoRIおよびHindIII制限部位を付加するようにSEQ ID NO:19用のプライマーを設計し、増幅断片両端にPstI制限部位を付加するようにSEQ ID NO:22用のプライマーを設計したことを例外として、SEQ ID NO:24に関して用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、6つのさらなる断片(SEQ ID NO:18〜23)を増幅した。増幅断片の一方の端にSmaI制限部位を付加し、かつ他方の端にEcoRIおよびHindIII制限部位を付加するように、SEQ ID NO:23用のプライマーを設計した。上述のように、または列挙する制限酵素を用いることによって、センスおよびアンチセンス方向で、7つの断片すべてを、主鎖ベクター内にクローニングした。プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを、上述のようにpBluescriptプラスミドから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART27またはpART29(NotIで消化)内にクローニングした。バイナリーベクターpART29は、nos5’プロモーターの代わりにアラビドプシス・タリアナ・ユビキチン3(UBQ3)プロモーターを含有し、かつlacZ配列を含有しない、修飾pART27ベクター(Gleave, Plant Mol. Biol. 20:1203-1207, 1992)である。
【0079】
NotI制限消化によって、pBluescriptプラスミドから、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセット(SEQ ID NO:14)を取り除き、かつ標準的クローニング技術を用い、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングして、最終ベクターpARB513を生じた。
【0080】
NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクター内に挿入することによって、マツにおいて使用するため、構築物を再操作した。制限酵素NotIを用いて、表1の「以下から操作」列中に列挙する各ベクターから、プロモーター::4CL RNAiカセットを取り除いた。制限酵素NotIを用いてベクターpWVR31を直線化し、かつSAP処理して、自身に再アニーリングするのを防いだ。NotI部位で、各断片をpWVR31内に連結して、表1に列挙するベクターを生じた。
【0081】
(表1)
【0082】
構築物pWVK154、pWVK143、pWVC46およびpWVC40は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつそれぞれ、ATCCアクセッション番号PTA-6229、PTA-6228、PTA- 6227、およびPTA-6226を与えられた。
【0083】
それぞれ、P.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)およびP.ラディアタ由来のスーパーユビキチン遺伝子(米国特許第6,380,459号)を、GUS(イントロン)遺伝子(参照)と一緒に、ベクターpWVR31内にクローニングすることによって、対照ベクターpWVC41およびpWVK159を発展させた。主鎖ベクターpWVR5は、35SプロモーターGUS配列が取り除かれ、かつNOSプロモーターが、シロイヌナズナ属由来のUBQ10プロモーター(Sun, C. W & Callis, J (1997) Plant J., 11 :101-111)で置換されたpBI121ベクター(Clontech laboratories, Palo Alto CA)である。ベクターpWVR8を作製するため、Actin IIプロモーター(MEAGHER, Int. Rev. Cytol., 125:139-163(1991))を増幅し、かつGUSに加えてイントロン遺伝子と一緒に、pWVR5ベクター内にクローニングした(Ohta et al., Plant Cell Physiol, 31:805-813(1990))。
【0084】
ベクターpWVR8(シロイヌナズナ属Actin II::GUSINT、UBQ10::NPTII)から、主鎖ベクターpWVR31を操作した。プライマーを用いたPCRによって、シロイヌナズナ属由来のUBQ11プロモーター(Norris SR, et al. (1993) Plant Mol Biol. 21(5):895-906)を増幅して、かつこれを用いてpWVR8由来のActin IIプロモーターを置換して、ベクターpWVR31を作製した。
【0085】
さらに、上述するとおりであるが、以下の配列:プロモーターおよび/またはバイナリーベクターの、少なくとも一方における修飾を伴って、表2に列挙するベクターを構築した。最終ベクター内に、表2に列挙するような異なるプロモーターをクローニングするため、P.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター・イントロン・ベクターをSmaIおよびSstI制限酵素で消化し、かつ標準的技術を用いて、P.タエダ由来の4CLプロモーター、ユーカリプタス・グランディス(Eucalyptus grandis)由来のCOMTプロモーター、またはP.ラディアタ由来のLIMプロモーターのいずれかを含有するBluescriptベクター内に、この断片をクローニングした。上述のイントロンとともに、P.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を増幅するのに用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、P.タエダ4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)、E.グランディスCOMTプロモーター(米国特許第10/703,091号)、およびP.ラディアタLIMプロモーター(米国特許出願第10/717,897号)をすべて増幅し、かつ次いで、上述のような基本Bluescriptベクター内に連結した。NotI制限消化によって、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットをpBluescriptプラスミドから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART29またはpWVK147(NotIで消化)内にクローニングした。pWVK147ベクターは、35SプロモーターGUS配列が取り除かれ、かつnptII遺伝子を駆動するため、NOSプロモーターが、シロイヌナズナ属由来のUBQ10プロモーター(Sun, C. W & Callis, J (1997) Plant J., 11 :101-111)で置換された、pBI121ベクター(Clontech laboratories, Palo Alto CA)である。ApaIおよびKpnI部位で連結されるアダプターを付加することによって、ユニークなHpaI制限部位をベクターに付加した。
【0086】
(表2)
【0087】
標準的PCR技術を用い、PDKイントロン配列(Wesley et al., Plant J. 27:581-590, 2001)(SEQ ID NO:15)を増幅するために、プライマーSEQ ID NO:16および17を用いたことを例外として、上述のものと同じ方法を用いて、表3に列挙するベクターを構築した。各構築物に関して、発現カセット中で発現される遺伝子は、4CL断片G(SEQ ID NO:24)である。
【0088】
(表3)
【0089】
実施例3.ユーカリプタス属(Eucalyptus)4CL発現ベクターの構築
4CL遺伝子の少なくとも部分を含む一連の組換え構築物を上述のように調製し、かつ植物におけるリグニン含量を減少させる能力に関して評価した。一般的に、各DNA構築物は、ユーカリプタス・グランディス由来の4CL遺伝子(米国特許第6,410,718号)の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントに、機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている。まず、異なる断片長の4CL遺伝子および異なるプロモーターを用いて、3つの構築物を調製した。表16を参照されたい。構築物の一般的な設計を図7に示す。スーパーユビキチン・プロモーター(米国特許第6,380,459号; Ranjan J Perera et al., Plant & Animal Genome VIII Conference(2000))を恒常的プロモーターとして用い、一方、P.タエダ中の4CL遺伝子由来のプロモーターSEQ ID NO:77を維管束優先的プロモーターとして用いた。アラビドプシス・タリアナ由来のYABBY遺伝子由来のイントロン(Foster T M et al., Plant Cell, 14 (7): 1497-1508 (Plant Cell))をスペーサーDNAセグメントとして用いた。図2Aおよび2Bは、4CL RNAi 200bp断片(SEQ ID NO:33)および4CL RNAi 600bp断片(SEQ ID NO:34)の核酸配列を提供する。
【0090】
主鎖ベクターの構築は、実施例2に示すとおりであった。標準的PCR技術ならびにSEQ ID NO:25および26に示すプライマーを用いて、E.グランディス4CL cDNAクローン由来の断片(米国特許第6,410,718号)を増幅した。増幅断片の両端にPstIおよびClaI制限部位を付加するように、プライマーを設計した。増幅断片のヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:27に示す。センス配向で4CL断片をクローニングするため、制限酵素PstIで増幅断片を切断し、かつ主鎖ベクター内にクローニングした。アンチセンス配向で4CL断片をクローニングするため、ClaIで増幅断片を消化し、かつ主鎖ベクター内にクローニングした。
【0091】
プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセット(SEQ ID NO:32)を、NotI制限消化によって、pBluescriptプラスミドから取り除き、かつ実施例2に記載するように、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングして、最終ベクターpAB583を生じた。
【0092】
上記の実施例における断片に関して用いたものと同様に設計したプライマーで、4つのさらなる断片(SEQ ID NO:28〜31)を増幅することによって、表4に列挙する最終ベクターを構築した。上述のように、完全RNAiカセットをpART29にクローニングする前に、上述のように、主鎖ベクター内にセンスおよびアンチセンス方向で、5つの断片すべてをクローニングした。
【0093】
(表4)
【0094】
PDKイントロン配列(Wesley et al., Plant J. 27:581-590, 2001)(SEQ ID NO:15)を増幅するために、プライマーSEQ ID NO:16および17を用いたことを例外として、上述のものと同じ方法を用い、標準的PCR技術を用いて、表5に列挙するベクターを構築した。
【0095】
(表5)
【0096】
以下の変化を伴って、実施例2に記載するように、表6に列挙するベクターを構築した。Pr4CLおよびPDKイントロン配列に関するものと同様に設計したプライマーを用いて、yabbyイントロン配列(Foster et al. 2002, Plant Cell. 14 (7): 1497-1508)を増幅し、かつ実施例2に記載するように、ベクター主鎖内にクローニングした。上記実施例において、断片SEQ ID NO:27〜31に関して用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、断片挿入物、SEQ ID NO:33および34を増幅した。以下の表6に示した場合、実施例2に記載するように、P.タエダ4CLプロモーターに対して、イントロンを加えたピナス・ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター由来のプロモーターの置換を行った。完全RNAiカセットをpART27内にクローニングする前に、実施例2に上述するように、列挙する断片挿入物およびプロモーターを最終ベクター内にクローニングした。各構築物において、スペーサーとしてyabbyイントロン(SEQ ID NO:64)を用いた。
【0097】
(表6)
【0098】
NotI制限消化によって、上に列挙するpARB345(SEQ ID NO:89)最終ベクターから、プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを取り除き、かつ標準的クローニング技術を用い、バイナリーベクターpARB1002またはpARB1005(NotIで消化)内のいずれかにクローニングすることによって、表7に列挙する最終ベクターを構築した。
【0099】
(表7)
【0100】
同様に、pARB599由来の開花遺伝子を欠失させることによって、ベクターpARB1202を生成した。したがって、pARB1202は、ピナス・タエダ4CLプロモーター(SEQ ID NO:77)、センスEuc.4CL 200bp断片(SEQ ID NO:33)、yabbyイントロン(SEQ ID NO:64)、およびアンチセンスEuc. 4CL 200bp断片(SEQ ID NO:33)を含有するRNAiカセットを含む。pARB1202の概略図を図24に提供する。
【0101】
ユーカリプタス属植物におけるリグニン含量を調節するため、多様な組み合わせのプロモーター、第一のDNAセグメントおよびイントロンを含む構築物を用いてもよい。研究者は、選択すべきものから構築物を選ぶことで、リグニン含量および成長の望ましい量を伴う植物を得ることも可能である。これに関連して、米国特許公報第20040146904号および第20040163146号は、多様な維管束優先的プロモーターを開示し、かつ参照により本明細書に組み入れられる。表8は、これに関連して有用な多様な構築物を提供する。
【0102】
(表8)
【0103】
構築物pARB339、pARB345およびpARB599は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつそれぞれ、ATCCアクセッション番号PTA-6222、PTA-6223、およびPTA- 6225を与えられた。
【0104】
実施例4:E.グランディスCCoAOMT、C3H、C4HおよびCCRのcDNAの単離
2つのユーカリプタス・グランディスcDNA発現ライブラリー(単一の樹木由来の多様な組織の混合物由来のもの、および単一の樹木の葉由来のもの)を以下のように構築し、かつスクリーニングした。
【0105】
重要でない修飾を加えて、Changら(Plant Molecular Biology Reporter 11 :113-116, 1993)のプロトコルを用いて、植物組織からmRNAを抽出した。具体的には、CPC-RNAXB(100 mM Tris-Cl、pH 8,0;25 mM EDTA;2.0 M NaCl;2% CTAB;2% PVPおよび0.05%スペルミジン*3 HCl)に試料を溶解し、かつクロロホルム:イソアミルアルコール、24:1で抽出した。mRNAをエタノールで沈殿させ、かつポリ(A) Quik mRNA単離キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、総RNA調製物を精製した。逆転写酵素合成後、製造者のプロトコルにしたがって、ZAP Express cDNA合成キット(Stratagene)を用いて、生じたcDNAクローンをラムダZAP中に挿入することによって、精製したmRNAからcDNA発現ライブラリーを構築した。5μlの連結混合物から1μlの試料DNAを使用して、Gigapack II Packaging Extract(Stratagene)を用いて、生じたcDNAをパッケージングした。XLl -Blue MRF'細胞およびXLOLR細胞(Stratagene)を、ExAssistヘルパーファージ(Stratagene)とともに用いて、ライブラリーの集団切除を行った。切除したファージミドを、NZYブロス(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)で希釈し、かつX-galおよびイソプロピルチオ−ベータ−ガラクトシド(IPTG)を含有するLB−カナマイシン寒天プレート上にプレーティングした。
【0106】
DNAミニプレップ用にプレーティングし、かつ選択したコロニーのうち、99%が、配列決定に適した挿入物を含有した。カナマイシンを含むNZYブロス中で陽性コロニーを培養し、かつアルカリ溶解およびポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって、cDNAを精製した。1%のアガロースゲルを用いて、染色体混入に関して、配列決定テンプレートをスクリーニングした。製造者のプロトコルにしたがって、Turbo Catalyst 800装置(Perkin Elmer/Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、色素プライマー配列を調製した。
【0107】
Perkin Elmer/Applied Biosystems Prism 377配列決定装置を用いて、陽性クローンのDNA配列を得た。まず5’端からcDNAクローンを配列決定し、かついくつかの場合、3’端からも配列決定した。いくつかのクローンに関しては、サブクローニングした断片を用いて、内部配列を得た。制限マッピングおよびpBluescript II SK+ベクターへのサブクローニングの標準法を用いて、サブクローニングを行った。
【0108】
1996年2月のFASTAアルゴリズム(バージョン2.0.4)(インターネットのftpサイトftp://ftp.virginia.edu/pub/fasta/で入手可能)またはBLASTNアルゴリズム、バージョン2.0.4 [1998年2月24日]、またはバージョン2.0.6 [1998年9月16日]を用いて、EMBLデータベース(リリース46、1996年3月)中の公知のcDNA配列に比較した。冗長配列の多数の並列を用いて、信頼性があるコンセンサス配列を構築した。他の植物種由来の公知の配列に対する類似性に基づいて、本発明の単離ポリヌクレオチドを、特定する酵素をコードするとして同定した。
【0109】
上述の方法を用いて、以下のポリペプチドをコードする、ユーカリプタス・グランディス・ライブラリー由来のcDNA配列を単離した:カフェオイルCoAメチルトランスフェラーゼ(米国特許第6,410,718号);桂皮酸-4-ヒドロキシラーゼ(C4H)(米国特許第6,410,718号);p-クマル酸-3 -ヒドロキシラーゼ(C3H)(米国特許第5,981,837号)およびCCR(米国特許第6,410,718号)。
【0110】
実施例5.ピナス・ラディアタLIM発現ベクターの構築
表9に列挙する最終ベクターを、以下の修飾を伴って、実施例2に記載するように構築した;異なる断片、プロモーターおよび/またはイントロンの使用。標準的PCR技術、および実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、P.ラディアタLIM cDNAクローン(特許出願WO 00/53724)由来の2つの断片、SEQ ID NO:38および39を増幅した。実施例2で記載するように、センス配向およびアンチセンス配向両方で、主鎖ベクター内に、P.ラディアタLIM断片をクローニングした。実施例2に記載するものと同様に、プロモーターを修正することによって、主鎖ベクター中に含有されるものと異なるプロモーターを含有する、表9中の最終ベクターを構築した。実施例2に記載する方法を用いて、yabbyイントロン(SEQ ID NO:64)を最終ベクター内に挿入した。実施例1および2に記載するように、pART27またはpART29内に、完全RNAiカセットをクローニングした。
【0111】
(表9)
【0112】
マツにおいて、pART27に基づくベクターを利用するには、構築物を再操作して、選択カセットnos::nptIIを取り除かなければならない。実施例2に記載するように、NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクターに挿入してもよい。ベクターpWVR31を新規の基本ベクターとして用いてもよい。
【0113】
実施例6.ユーカリプタス・グランディスLIM発現ベクターの構築
主鎖プラスミドの構築は、実施例2に記載するとおりであった。標準的PCR技術、ならびに増幅断片の両端にEcoRIおよびXbaI制限部位を付加するように設計したプライマーを用いて、E.グランディスLIM cDNAクローン(特許出願WO00/53724)から2つの断片(SEQ ID NO:40および41)を増幅した。センス配向で、LIM断片をクローニングするため、増幅断片を制限酵素EcoRIおよびXbaIで切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつyabbyイントロンおよびP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列(実施例2に記載)を含有する主鎖ベクター内の平滑端化したClaI部位にクローニングした。アンチセンス配向で、LIM断片をクローニングするため、増幅断片を制限酵素EcoRIおよびXbaIで切断し、Klenowを用いて平滑端化し、かつ標準的クローニング技術を用いて、同じ主鎖ベクター内の平滑端化したPstI部位にクローニングした。
【0114】
プロモーター::センス断片::イントロン::アンチセンス断片::3’UTR::nosターミネーター構築物を含有する完全RNAiカセットを、NotI制限消化によって、主鎖ベクターから取り除き、かつ標準的クローニング技術を用いて、バイナリーベクターpART29(NotIで消化)内にクローニングした。表10に列挙するような異なるプロモーターを含有する最終ベクター用に、実施例2に記載する方法を用いて、プロモーター配列を置換した。この方法を用いて、表10に列挙するベクターを構築した。
【0115】
(表10)
【0116】
実施例7.マツCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、マツCCo-OMT(カフェオイル補酵素O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:42)クローンから断片を増幅し、かつ実施例2に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例2に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例2に記載する方法を用いた、yabbyイントロンの付加、およびpART27バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0117】
(表11)
【0118】
マツにおいて、ベクターを利用するには、構築物を再操作して、選択カセットnos::nptIIを取り除かなければならない。実施例2に記載するように、NotI断片を取り除き、かつこれらを、NotI部位、ならびにPCRを伴わずに形質転換の検証を可能にする恒常的プロモーター発現GUS、およびシロイヌナズナ属Ubq10プロモーターによって駆動されるnptIIを含む選択可能マーカーカセットを有する基本ベクターに挿入してもよい。ベクターpWVR31を新規の基本ベクターとして用いてもよい。
【0119】
実施例8.さらなるマツCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例4で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、マツCCoAOMT(カフェオイル補酵素A O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:43)クローン(実施例4で単離)から断片を増幅し、かつ実施例4に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、上述の方法を用いた、PDKイントロンの付加、イントロンを伴うP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーターまたはP.タエダ4CLプロモーターいずれかの使用、およびpWVK147バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0120】
(表12)
【0121】
実施例9. E.グランディスCCoAOMT発現ベクターの構築
実施例3で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスCCoAOMT(カフェオイル補酵素A O-メチルトランスフェラーゼ)(SEQ ID NO:44)クローン(WO98/11205に部分配列として提出された、実施例4で単離したもの)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例3記載の方法を用いた、PDKイントロンまたはユーカリプタス属木質部イントロン、E.グランディスCOMT 485bpプロモーター(SEQ ID NO:78)の付加、およびpART29バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0122】
(表13)
【0123】
実施例10. E.グランディスCCR発現ベクターの構築
実施例3で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスCCR(シンナモイルCoAレダクターゼ)クローン(SEQ ID NO:45)(実施例4で単離)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。また、実施例3記載の方法を用いた、PDKイントロンまたはユーカリプタス属木質部イントロン、E.グランディスCOMTプロモーター485bp(SEQ ID NO:78)の付加、およびpART29バイナリーベクターの使用によっても、最終ベクターを修飾した。
【0124】
(表14)
【0125】
実施例11. E.グランディスC3HおよびC4H発現ベクターの構築
実施例2で用いたものと同様に設計したプライマーを用いて、E.グランディスC3Hクローン(実施例4で単離)(SEQ ID NO:46)またはE.グランディスC4H(SEQ ID NO:47)クローン(実施例4で単離;WO00/22099に部分配列として提出)から断片を増幅し、かつ実施例3に記載するものにしたがった方法で用いるという修飾を伴って、実施例3に記載するように、以下のベクターをクローニングした。これらのベクターにおいては、E.グランディス由来のアラビノガラクタン・プロモーター(SEQ ID NO:35)またはP.タエダ由来の4CLプロモーター(米国特許第6,252,135号)のいずれかを用いた。BamHI制限酵素でP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター・イントロン・ベクターを消化して、かつ標準的技術を用いて、P.タエダ由来の4CLプロモーター(BamHIで消化)、またはE.グランディス由来のアラビノガラクタン・プロモーター(ClaIで消化)のいずれかを含有するBluescriptベクター内にクローニングした。P.タエダ4CLプロモーターおよびE.グランディス・アラビノガラクタン・プロモーターを、どちらも、イントロンを伴うP.ラディアタ・スーパーユビキチン・プロモーター配列を増幅するのに用いるものと同様に設計したプライマーを用いて増幅し、かつ次いで、実施例3に記載するように、基本のBluescriptベクター内に連結した。実施例3に記載する方法を用いて、Pr4CLイントロンの付加、およびpARB1002バイナリーベクターの使用によってもまた、最終ベクターを修飾した。
【0126】
(表15)
【0127】
実施例12.ユーカリプタス属における4CL構築物の評価
以下の方法を用いて、2つの異なる長さのRNAi断片を含有する3つの異なる構築物、pARB339、pARB341およびpARB345(表16を参照されたい)をユーカリプタス・グランディスに形質転換した。
【0128】
(表16)
伸長培地-(1μM BAP、20g/lスクロースおよび7g/l寒天を含むMS)上の培養中で微量増殖させた、クローン性ユーカリプタス・グランディスの葉の外植片を、形質転換に用いた。参照により本明細書に組み入れられる、Burrelら、国際公報第WO00/12715号に記載されるように形質転換を行った。
【0129】
NAAが省かれ、かつ培地が50mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有することを除いて、WO00/12715に記載されるように、トランスジェニック外植片を選択した。外植片は、この培地上で2週間生き残り、かつ次いで、これを、2週間後、100mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する培地に移し、かつさらに2週間後、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する培地に移した。次いで、健康な単一のシュートが収集可能になるまで、培養物を毎月、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する新鮮な培地に移した。単一のシュートを、伸長培地上に置き、推定上のトランスジェニック組織を増殖させた。増殖組織から、およそ200mgの組織が収集可能になったら、PCR分析のため、初代外植片からこれを取り除いた。製造者の指示にしたがって、PuRe Taq Ready-To-Go(商標) PCRビーズ(Amersham Biosciences)を用いて、プロモーターおよび選択遺伝子の両方の存在に関して、PCR分析を行った。
【0130】
次いで、陽性PCR結果が出た組織を、150mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lチメンチンを含有する伸長培地上でさらに増殖させ、かつストック培養物として維持した。
【0131】
さらなる試験のためにトランスジェニック植物を生成するため、いくつかのシュートを伸長培地上に置いた。シュートは、およそ2〜3cmの高さになるまで、この培地上で生き残った。これに、1ヶ月より長くかかる場合は、シュートを毎月間隔で新鮮な培地上に置いた。シュートが2〜3cmの高さになったら、単一のシュートを取り除き、かつ発根培地内に入れた。発根培地中に10日間置いた後、植物を温室に移した。植物形質転換および植物組織培養の技術分野の当業者は、多くの異なる培地および間隔を、本発明の植物を再生させるのに適合させ得ることを認識するであろう。
【0132】
適切な湿度措置および真菌増殖を調節する殺真菌剤を用いて、鉢用混合土(potting mixture)中、植物を温室で6ヶ月間成長させた。キャピラリー散水を用い、周囲温度で、メッシュ仕切りにおいて植物を増殖させた。徐放肥料を補い、土壌を用いないピートに基づく配合土中、5Lのポリ袋に植物を植えた。
【0133】
総リグニン分析のため、およそ6ヶ月齢の植物を破壊してサンプリングした。
【0134】
高さ測定
表17は、pARB339、pARB341またはpARB345で形質転換したユーカリプタス属植物の、カナマイシンを使用して選択し、6ヵ月後に土中で生き残った、微量増殖植物の割合、土中に植えた20週間後に観察された矮小化植物の割合、および土中に植えた22週間後の植物の平均の高さを列挙する。
【0135】
pARB341で形質転換した植物の生存データは、pARB339またはpARB345で形質転換した植物のものよりはるかに低かった。pARB341で形質転換して生存したすべての植物のうち、82%は矮小化しており、DNAベクターpARB341が、他の2つのベクター(pARB339およびpARB345)よりも高い度合いで、植物の高さおよび生存率に影響を及ぼすことを示唆した。
【0136】
(表17)
【0137】
図3および4Aに示すデータは、植物の高さに対する各構築物の見かけの効果を示す。pARB345およびpARB339で形質転換した植物の各セット中で最も背が高い個々の植物の高さは近い(それぞれ159cmおよび168cm)が、最も背が低いpARB339植物(53cm、64cm)は、最も背が低いpARB345植物(91cm、96cm)よりはるかに低い。この図には、分析のためにプールした、矮性pARB341試料の平均の高さは含まれていない。矮性pARB341植物の平均の高さは13cmであった。
【0138】
リグニン分析
リグニン分析のため、先の実施例に記載するように生成した、およそ6ヶ月齢のトランスジェニック・ユーカリプタス属樹木をサンプリングした。分析しようとするすべての試料から、茎の下側20cmを収集した。剥ぎ取ることによって、茎から、樹皮、師部および一次皮層を取り除き、かつ次いで、茎試料を液体窒素中で迅速凍結した。製造者の指示にしたがって、Flexi-Dryマイクロプロセッサ制御腐蝕耐性凍結乾燥装置(Stone Ridge, New York, USA)中、凍結試料を凍結乾燥した。Wiley製粉装置(Arthur H. Thomas Co.; Philadelphia, U.S.A.)中で試料を粉末化し、かつ次いで、リングミル中で再び粉末化した。次いで、粉末試料を55℃で最低1日乾燥させ、かつ使用するまでこの温度で保管した。溶媒または溶液中に粉末材料を懸濁する工程、超音波クリーナーを用いて抽出する工程、遠心分離する工程、および次いで、上清をデカントする工程によって、一連の段階で、試料から細胞壁材料を単離した。抽出には、以下の順序を用いた:2つの濃度のNaCl、水性エタノール;CHCl3:MeOH;およびアセトン。デンプンを取り除くため、抽出した細胞壁材料を洗浄し、tris-酢酸緩衝液中で加熱して、デンプンをゼラチン化し、かつ次いで、α−アミラーゼで処理した。酵素処理後、懸濁物を遠心分離して、かつ生じた沈殿物をエタノールおよびアセトンで洗浄して、一晩静置し、かつ次いで55℃で乾燥させた。Fukushima, R. S. and Hatfield, R.D. (2001) J. Ag. Food Chem. 49(7):3133-9に記載される方法を用い、単離した細胞材料を小規模リグニン測定に用いた。結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0139】
pARB341中のRNAiカセットは、形質転換植物すべてのうちの82%の矮小化を生じた。これらの植物をプールした試料は、これらが正常レベルのおよそ80%まで減少したリグニンレベルを有することを示した。このベクターは、試験した他の2つのベクターに比較した際、植物の高さに最大の効果を有し、かつリグニンレベルの減少に対しても大きな効果を有した。リグニン減少序列の極端な結果は、矮小表現型を特徴とするが、この研究で同定されたすべてのうちで最低のリグニン形質転換系統(transline)であるpARB345形質転換系統は、適度に正常な高さを有する。したがって、pARB341形質転換体の多くに見られる矮性は、二次木質部をリグニン化する際に発現される4CL遺伝子以外の遺伝子、例えば植物の他の部分で発現される4CL遺伝子または4CLに部分的相同性を持つ遺伝子の抑制によって引き起こされる、別個の現象である可能性もある。
【0140】
pARB345中のRNAiカセットは、有意に減少したリグニンを伴う表現型の産生に、pARB339中より有効であることが見出された。pARB345中の200bp RNAiカセットは、pARB341中の同じプロモーターによって駆動される600bp RNAiカセットによる多くの形質転換体において誘導される矮小化効果の誘発もまた伴わずに、最大-25%のリグニン減少を誘導することが可能である。
【0141】
上記のリグニン分析から、pARB345で形質転換された9つの植物を選択し、かつ、方法の比較のため、熱分解分子ビーム質量分析の使用および固相13C NMRによって、第一のものの上から採取した第二の20cmの茎試料をリグニン含量測定に供した。3つの方法はすべて、リグニン減少に関して、ほぼ同じ値を生じた。
【0142】
熱分解分子ビーム質量分析のため、各試料を石英ボート中で重量測定し、かつ5L/分(STPで)のヘリウム流動を伴って、石英管(内径2.5cm)からなる反応装置中で熱分解した。分子ビーム質量分析装置のサンプリング開口部が石英反応装置の端の内部になるように、反応装置の管を置いた。Evans & Milne(1987)(Energy & Fuels, 1 : 123-37)に記載されるような熱分解蒸気分析に、Extrel(商標)モデルTQMS C50質量分析装置を用いた分子ビーム質量分析装置を用いた。反応装置を電気的に加熱し、かつその温度を550℃に維持した。総熱分解時間は90秒であったが、熱分解反応は50秒未満で完了した。反応装置熱分解ゾーンにおける熱分解蒸気の滞留時間は、〜75msと概算されており、かつ石英反応装置における二次クラッキング反応が最小であるには十分に短い。22eV電子衝撃イオン化を用い、Teknivent Vector 2(商標)データ獲得システム上で、20〜450Daのマススペクトルデータを獲得した。このシステムを用いて、軽いガスおよび重いタールの両方を、同時に、かつリアルタイムでサンプリングした。熱分解蒸気のマススペクトルは、分子断片の迅速で半定量的な描写を提供する。
【0143】
m/z 50〜200の間のマス範囲を用いたpyMBMSスペクトルの主成分分析は、リグニンおよび炭水化物由来の熱分解産物を強調する一方、小さい熱分解断片および電子衝撃断片(m/z 50未満)ならびに抽出物(m/z 200を超える)を最小にした。
【0144】
リグニン含量のNMR測定のため、Bruker Avance 200MHz分光計において、交差分極(CP)およびマジック角回転(MAS)を伴い、4.7Tで、高分解能固相13C NMRスペクトルを収集した。多様な振幅の交差分極(交差分極期間に渡る1db直線ランプ)を用いて、より高いMAS回転率で、Hartmann-Hahnミスマッチに感受性である、非プロトン化芳香族炭素の変動を最小限にした(S. O Smith, I. Kustanovich, X. Wu, O. B. Peersen, Journal of Magenetic Resonance (1994) 104: 334-339)。1Hおよび13C場は53.6kHzでマッチし、かつマッチ期間中、プロトンr.f.に1dBランプを適用した。獲得時間は0.033秒であり、かつスイープ幅は31.3kHzであった。7000Hzの速度でマジック角回転を行った。2msの接触時間および1.0秒のパルス反復率を用いて、平均2000〜4000のスキャンを行った。相対ピーク強度および積分面積で観察される相違を用いて、類似の試料間の相違を同定することも可能である。Hawら、1984(J.F. Haw., G. E. Maciel., H. A. Schroder, Analytical Chemistry 56: 1323)の方法を用いて、芳香族(110ppm〜160ppm)および炭水化物(40ppm〜100ppm)領域の積分面積から、重量リグニン%値を計算した。
【0145】
Unscrambler、バージョン7.8ソフトウェアプログラム(CAMO A/S, Trondheim, Norway)を用いて、データ分析を行った。一度に1つのみのY変数を取り扱う、潜在的構造に対する射影(PLS-1)アルゴリズムを用いて、マツ試料のリグニン含量を予測するモデルを構築した。XマトリックスとしてpyMBMSスペクトル(310変数(50〜360の間のm/z値))を用い、かつYマトリックスとして固相NMRによって測定されるリグニン値を用いて、リグニン含量予測モデルを発展させた。分析前に、マススペクトルを総イオン電流に対して標準化した。データから体系的に1つの試料を取り除き、残りの試料を用いたモデルを確立し、かつ次いで、データセットから取り除かれた試料のY変数の値を予測するためにそのモデルを用いる、完全交差検証を用いて、モデル検証を行った。Yマトリックスからすべての試料が取り除かれ、かつ予測されるまで、このプロセスを続ける。最適モデルを選択するのに用いる基準は、適合度(すなわち高い相関係数)および最小残差であった。
【0146】
NMRリグニン値およびpyMBMSスペクトルから、リグニン含量を予測するPLS1モデルを構築した。NMR分析のため、同じ系統から1より多い樹木をサンプリングした場合、樹木由来の対応するマススペクトルを平均して、かつモデルを構築するのに用いた。50〜360のm/z値の範囲を用いて、PLSモデルを構築した。完全交差検証モデルの相関係数に基づいて、最適モデルを提供するために、この範囲を経験的に決定した。
【0147】
表18は、9つの選択した試料のNMR結果の比較を示す。選択した試料に関して、PC1スコアとNMR重量リグニン%値を比較すると、PC1スコアがテーダマツ試料におけるリグニン量を正確に反映し、かつPC1スコアを用いて、異なる構築物のリグニン含量を順位付けし得ることが示される。NMRで決定したリグニン含量、および上述のように臭化アセチルによって決定されるような含量の間にもまた、優れた相関関係がある。
【0148】
(表18)
【0149】
本発明のDNA構築物を含有するトランスジェニック植物の側枝から採取した徒手切片に、フロログルシノール/HClを用いてコニフェルアルデヒド単位を検出する、リグニンの組織化学的試験を適用した。フロログルシノールはまた、Weisner試薬としても知られる、リグニンの染色液であり(Pomar et al., Protoplasma, 220(1 -2): 17-28 (2002))、かつMaule染色液を用いて、特異的にシリンギルリグニンサブユニットを検出する(Lewis et al., Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol, 41 :455-496 (1990))。pARB339およびpARB345で形質転換したトランスジェニック植物は、対照の非形質転換植物に対して観察可能な相違を示さなかった。正常の高さのpARB341植物もまた、対照植物に対して観察可能な相違を持たず、一方、矮性pARB341植物は、減少した量のフロログルシノール染色を有し、これらの試料において、リグニンレベルが非常に減少することが示唆された。矮性pARB341形質転換系統の検査によって、形質転換系統間の変動があることが示された。特に極端な解剖学的表現型を持つ、1つの矮性形質転換系統の2つのラミートは、外見が非常に一致しており、リグニン沈着および解剖学において観察された混乱が、(形質転換)遺伝子に基づくことが示唆された。また、矮性および正常サイズのpARB341植物の徒手切片を、Maule染色液でも染色した。この染色は、シリンギルリグニンのサブユニットに特異的である(Strivastava LM. 1966. Histochemical studies on lignin. Tappi Journal 49:173-183)。
【0150】
フロログルシノールで染色した切片と同様、「正常」植物以外の矮性植物で観察されるリグニンは劇的により少なく、かつ矮性植物の茎では、維管束分化の欠如が明らかであった。
【0151】
矮性pARB341植物はまた、ピンク色の木材を有するため、背が高い対応物とは表現型的にも異なった。茎を剥ぎ取ると、これが観察された。これらの植物の茎はまた、背の高い植物に比較して、やわらかく、かつ弾性があった。興味深いことに、背が高い/「正常」表現型を有するいくつかのpARB345植物もまた、樹皮、師部および一次皮層を剥ぎ取ると、ピンクの木材を有した。
【0152】
共焦点顕微鏡によって、2つの野生型試料および10のトランスジェニック試料を調べた。調べた10のトランスジェニック試料には、1つがピンクの木材を有する、5つのpARB339植物、どちらもピンクの木材を有する、2つの矮性pARB341植物、および2つがピンクの木材を有する、3つのpARB345植物が含まれた。2〜3cmの長さの茎セグメントをホルマリン・アセトアルコール(FAA)中で固定した。水中で試料を洗浄し、かつスレッジ・ミクロトームを用いて、30〜60mmの厚さの切片を作製した。共焦点顕微鏡を用いた解剖学的分析のため、サフラニンおよびフロログルシノール/HClを用いて、切片を染色した。トルイジンブルー染色を用いて、いくつかの試料を調べた。
【0153】
すべての試料は、しばしば茎の片側のみの区画に存在する、多量かつ多様な量の引っ張りあて材(tension wood)を含有した。これは、多かれ少なかれ非リグニン化された二次壁を持つ、非常に厚い壁がある繊維によって特徴付けられた。すべての試料の引っ張りあて材において、フロログルシノール/HClによる赤色呈色の減少およびサフラニン染色での緑色蛍光の増加によって、かつトルイジンブルーでのピンクの染色によって、リグニン化の減少が確認された。引っ張りあて材効果とトランスジェニック表現型を区別するため、すべての試料において、サフラニン染色とともに共焦点顕微鏡を用い、かつまたフロログルシノール/HCl染色も用いて、引っ張りあて材に典型的な染色パターンを示さない、正常な木材である茎の領域を調べた。大部分の試料において、正常繊維または導管の細胞壁組成が改変された、明らかな指標はなかった。pARB341トランスジェニック樹木由来の2つの試料は、細胞壁組成が改変された指標となる解剖学的表現型:導管直径の有意な減少および導管細胞壁の波状外観を示した。これらの試料のうち少なくとも1つはまた、木質部の外(髄中のリグニン化組織)にも変化を示した。しかし、上で同定した非矮性低リグニン試料由来の試料は、共焦点顕微鏡によって検出可能な解剖学的異常を示さなかったことが注目される。結果によって、本発明の構築物が、高さの成長、リグニン含量減少、および解剖学的表現型改変の多様な組み合わせを生じ得ることが立証される。したがって、開示する方法は、パルプ製造または他の木材由来製品のために最も望ましい組み合わせを示すトランスジェニック樹木の生成および選択を可能にする。
【0154】
実施例13.テーダマツにおける4CL構築物の評価
PyMBMSを用いたリグニン評価
米国特許第5,856,191号に記載される方法を用いて、個々の未成熟大配偶体の接合胚から、テーダマツ(ピナス・タエダ)および雑種マツ(P.タエダx P.リジダ(P. rigida))胚形成性細胞株を開始し、かつ米国特許第5,506,136号に記載される方法を用いて維持した。
【0155】
維持培地上での1〜3ヶ月の培養後、組織培養物を凍結保存し、最長数年の期間保存し、かつ次いで、米国特許第6,682,931号の方法を用いて回収した。植物組織培養の当業者は、他の凍結保存および回収プロトコルが本方法に適用可能であり、かつこの実施例の詳細は、方法の適用を制限すると見なしてはならないことを認識するであろう。
【0156】
米国特許第5,491,090号の方法にしたがって、各1gの組織を250ml Nepheloサイドアームフラスコ(Kontes Chemistry and Life Sciences Products)に接種することによって、遺伝的に異なる組織培養株各々に由来する均一な懸濁培養物を確立した。液体培地中の細胞を含有するフラスコを、23℃±2℃の温度で、培養暗室中、100rpmの旋回シェーカー上に置いた。1週間後、培養フラスコに15mlの新鮮な培地を注ぎ込み、かつ回転させて細胞を均一に分布させることによって、各フラスコ中の液体を35mlにした。細胞および培地をフラスコのサイドアーム部分にデカントし、細胞を30分間定着させ、かつ次いで、定着した細胞の体積(SCV)を測定することによって、サイドアーム中で細胞増殖を測定した。SCVが最大SCV(フラスコの体積の50%が植物細胞によって占められた)の半分以上になったら、トータルで80mlの細胞および培地を含有する500mlのサイドアームフラスコに各培養物を移し、かつ移した培養物を、同じ条件下で維持した。
【0157】
遺伝子導入の準備をするため、ポリエステル膜支持体をオートクレーブすることによって滅菌し、かつ別個の無菌ブフナー漏斗内に入れて、かつ細胞株あたり各6つの複製プレートに関して、胚形成性組織が均一に分布するように、1〜3ミリリットルのマツ胚形成性懸濁物を、各支持体上にピペッティングした。組織から液体培地を吸引し、かつ米国特許公報第20020100083号に記載する方法にしたがって、胚形成性組織を所持する各支持体を、アグロバクテリウム(Agrobacterium)接種のためのゲル状調製培地上に置いた。具体的には、当業者に周知の技術によって、バイナリー構築物、pWVC60、pWVC62、pWVK158、pWVK154、pWVK157、pWVK155、pWVK143、pWVC46、pWVC40、pWVC43、およびpWVC44を各々、異なる単離体アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に導入し、かつ一般的に用いられる技術によって、アセトシリンゴンを投与して、病原性を誘導して、その際、誘導したアグロバクテリウム単離体各々を、植物材料の別個の複製物と混合した。暗所中、22℃±2℃でおよそ72時間、細胞を共培養した。
【0158】
共培養後、米国特許公報第20020100083号に記載される方法にしたがって、培養物からアグロバクテリウムを根絶した。次いで、ポリエステル膜支持体上に生じた細胞を2週間間隔で新鮮な選択培地上に移した。選択培地上の活発な増殖は、多くのペトリ皿上、いくつかの隔絶されたセクターで生じた。選択剤の存在下でのこうした活発な増殖は、通常、増殖中の組織が、染色体内に選択遺伝子を組み込み、かつ安定して形質転換されている指標である。活発な増殖のこれらの領域を独立の形質転換事象として扱い、かつこれ以降、推定上のトランスジェニックサブ系統と称する。増殖中のトランスジェニックセクターを、それぞれの選択剤を補った、新鮮な半固体維持培地に移すことによって、推定上のトランスジェニック胚形成組織を増殖させた。
【0159】
推定上の形質転換サブ系統がおよそ2gに達した後、標準的技術を用いて、導入遺伝子の存在の検証のため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために選択した。
【0160】
(表19)PCR用のプライマー対(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:68〜75)
【0161】
また、各サブ系統由来の材料を、GUS染色および顕微鏡検査にも供した。GUS染色に関しては、植物形質転換の技術分野に周知の技術にしたがって、Inalcoに市販されている発色性グルクロニダーゼ酵素基質「X-gluc」に曝露した際、トランスジェニック系統の各々由来の細胞の藍色染色によって、組織培養細胞中で発現するβ−グルクロニダーゼ酵素をコードする、挿入uidA遺伝子を検出した。顕微鏡検査によって、細胞分裂が再開したことが立証され、かつuidA導入遺伝子が一過性発現されることによって、これらの攻撃(bombardment)が正常な頻度であることが示される。
【0162】
発芽可能(germinable)胚を以下のように産生した。選択培地上で培養された細胞の塊が、少なくとも1グラムまで増殖した後、各々を、再び、液体培地中に別個に再懸濁した。細胞懸濁物が均一な(最大の半分の)SCVになったら、米国特許第5,506,136号に記載されるような発生/成熟培地上に置くため、等量の懸濁培養細胞を、無菌膜支持体上にピペッティングして、高品質採取可能段階3(子葉)の胚を発生させた。プレートを、23±2℃の暗い成長チャンバー中でインキュベーションした。3週間ごとに、新鮮な培地を含有する新しいペトリ皿に、膜支持体を移した。第9週、発芽品質に関して、段階3(子葉)の胚を視覚的に分析し、かつ米国特許第5,506,136号に記載されるような培地上の布支持体上に採取し、かつ暗所中、4℃±2℃の温度で、約4週間インキュベーションした。次に、布支持体上の胚を、暗所中、25℃±2℃の温度で、密封容器中の水上で、約3週間インキュベーションした。上記2つの処理後、布支持体上の胚を、発芽培地に移し、かつ暗所中、25℃±2℃の温度で、約3日間インキュベーションした。次いで、布支持体から胚を取り除き、かつ新鮮な発芽培地の表面上に置いた。25℃±2℃の温度で、明所中、発芽を行った。約4週間の期間に渡って、発芽プレートを毎週調べ、かつ発芽している胚を、小植物に変換するため、100mlの発芽培地を含有するMAGENTA(登録商標)ボックスに移した。発生中の小植物を含有するMAGENTA(登録商標)ボックスを、約8〜12週間、25℃±2℃で、明所中でインキュベーションした。
【0163】
小植物が上胚軸(およそ2〜4cmの新たに形成されたシュート)を形成したら、鉢用混合土[2:1:2 ピート:パーライト:バーミキュライト、602g/m3のOSMOCOTE肥料(18-6-12)、340g/m3のドロマイト石灰および78g/m3のMICRO-MAX微量栄養素混合物(Sierra Chemical Co.)を含有する]を満たした容器に移した。遮光した温室で小植物を成長させ、かつ約2週間、不定期に霧吹きした。順応させるため、霧吹きせずに約4週間、温室に置いた。次いで、完全に日光条件に移す前に、最終順応のため、約6週間、小植物を、戸外の陰に移した。次いで、フィールドに植える条件が整うまで、容器中で成長させた。
【0164】
上述のようなRNAiベクターで形質転換された5ヶ月のテーダマツ樹木の高さを測定し、かつ結果を記録した(表20)。高さのデータに対して、Duncan多重範囲検定を行って、かつpWVK157、pWVK155、pWVC40、pWVC43およびpWVC44のRNAiカセットを含有するベクターで形質転換された植物が、GUS対照植物(pWVC41)に比較して、高さにおいて有意な相違がまったくない一方、すべての他の形質転換系統は、対照に対して高さに有意な相違を有したことが見出された。単一の非形質転換対照もまた、21.1cmの高さと測定されたが、これが単一の結果であり、かつ多数の試料の平均でなかったため、この試料について統計解析は行わなかった。形質転換樹木および対照樹木のすべてに関して、5ヶ月の時点の根の乾燥重量もまた測定したが、対照およびトランスジェニック間で有意な相違は観察されなかった。
【0165】
7ヶ月齢で、各茎からおよそ20mgの組織を切断することによって、上記の形質転換樹木または対照非形質転換樹木から、およそ200試料を収集した。石英ボート中で各試料の重量を測定し、かつ5L/分(STPで)のヘリウム流動を伴って、石英管(内径2.5cm)からなる反応装置中で熱分解した。分子ビーム質量分析装置のサンプリング開口部が石英反応装置の端の内部になるように、反応装置の管を置いた。Evans & Milne(1987)(Energy & Fuels, 1 : 123-37)に記載されるような熱分解蒸気分析に、Extrel(商標)モデルTQMS C50質量分析装置を用いた分子ビーム質量分析装置を用いた。反応装置を電気的に加熱し、かつその温度を550℃に維持した。総熱分解時間は90秒であったが、熱分解反応は50秒未満で完了した。反応装置熱分解ゾーンにおける熱分解蒸気の滞留時間は、〜75msと概算されており、かつ石英反応装置における二次クラッキング反応が最小であるには十分に短い。22eV電子衝撃イオン化を用い、Teknivent Vector 2(商標)データ獲得システム上で、20〜450Daのマススペクトルデータを獲得した。このシステムを用いて、軽いガスおよび重いタールの両方を、同時に、かつリアルタイムでサンプリングした。熱分解蒸気のマススペクトルは、分子断片の迅速で半定量的な描写を提供する。
【0166】
テーダマツ試料セットの2つ組マススペクトルおよび標準を、ブロック様式で、2日連続で収集し、1日ごとの分光計のドリフトから生じ得る、データ分析に関連する問題が軽減されるようにした。両日に収集したマススペクトルの組み合わせ分析によって、分光計のドリフトが最小限にしか生じなかったことが示された。
【0167】
スペクトルの検査によって、トランスジェニック試料のマススペクトルが、対照の物と異なることが決定された。トランスジェニックおよび対照テーダマツ試料由来の熱分解産物のpyMBMSスペクトル例を図14に示す。
【0168】
m/z 50〜200の間のマス範囲を用いたテーダマツpyMBMSスペクトルの主成分分析は、リグニンおよび炭水化物由来の熱分解産物を強調する一方、小さい熱分解断片および電子衝撃断片(m/z 50未満)ならびに抽出物(m/z 200を超える)を最小にした。リグニンに関するより多くの情報を含み、かつ抽出物に関してより少ない情報を含むマス範囲を選択することによって、構築物間に有意な相違があることが明らかになった。図15Aは、分析したすべてのトランスジェニックのm/z 50〜200のマス範囲を用いて収集したマススペクトルのPC1スコア対PC2スコアのスキャッタープロットを示す。このスキャッタープロットから、本発明者らは、いくつかのベクターで形質転換された植物が、マススペクトルおよびPCローディングの分析から決定されるように、リグニン量の相違によって、対照非形質転換植物に対して、明らかな区別を示す一方、他のものは示さないと結論付け可能である。図15B、16Aおよび16Bは、さらなる洞察を提供する。pWVC41で形質転換された樹木は、GUS対照トランスジェニックであり、かつ対照非形質転換樹木との相違を示さなかった。pWVC40およびpWVK154で形質転換された樹木はどちらも、マツ4CL断片Dコード配列(SEQ ID NO:21)を含有し、かつpWVC46およびpWVK158で形質転換された樹木はどちらも、マツ4CL断片C(SEQ ID NO:20)コード配列を含有した。これらの形質転換体は各々、スキャッタープロット上の対照試料とは区別され、トランスジェニックおよび対照間のリグニン量の相違が示された。
【0169】
図17は、図16Aで選択した試料、対照、トランスジェニックpWVC40およびpWVK154の拡大したマススペクトル領域を示す。リグニンの熱分解から生じるピークが、炭水化物および抽出物に割り当て可能な他のピークに比較して、減少していることが明らかである(表21を参照されたい)。他の構築物のマススペクトルの類似の分析によって、PC1が、各試料中のリグニン濃度を反映することが示される。図15〜16の右側の試料は、最も高いリグニン含量を有し、かつ左側の試料は、はるかにより低いリグニン含量を有する。
【0170】
pWVK158、pWVK154、pWVC46およびpWVC40で形質転換された7ヶ月齢のテーダマツ樹木は、非形質転換対照およびGUS形質転換対照と比較した際、リグニン含量の最大の減少を示した。pWVK158、pWVK154およびpWVC42で形質転換した樹木は、非形質転換樹木およびGUS形質転換樹木より有意により低く、一方、pWVC40で形質転換した樹木は、有意なリグニン減少を有したが、高さの有意な減少は示さなかった。
【0171】
核磁気共鳴分光法を用いたリグニン評価
Bruker Avance 200MHz分光計において、交差分極(CP)およびマジック角回転(MAS)を伴い、4.7Tで、高分解能固相13C NMRスペクトルを収集した。多様な振幅の交差分極(交差分極期間に渡る1db直線ランプ)を用いて、より高いMAS回転率で、Hartmann-Hahnミスマッチに感受性である、非プロトン化芳香族炭素の変動を最小限にした(S. O Smith, I. Kustanovich, X. Wu, O. B. Peersen, Journal of Magenetic Resonance (1994) 104: 334-339)。1Hおよび13C場は53.6kHzでマッチし、かつマッチ期間中、プロトンr.f.に1dBランプを適用した。獲得時間は0.033秒であり、かつスイープ幅は31.3kHzであった。7000Hzの速度でマジック角回転を行った。2msの接触時間および1.0秒のパルス反復率を用いて、平均2000〜4000のスキャンを行った。相対ピーク強度および積分面積で観察される相違を用いて、類似の試料間の相違を同定することも可能である。Hawら、1984(J.F. Haw., G. E. Maciel., H. A. Schroder, Analytical Chemistry 56: 1323)の方法を用いて、芳香族(110ppm〜160ppm)および炭水化物(40ppm〜100ppm)領域の積分面積から、重量リグニン%値を計算した。
【0172】
PC1スコアに基づいて、12の試料を選択し、かつ固相13C NMRを用いて、リグニン含量を決定した。いくつかの場合、NMR分析に十分な多量の試料を得るため、同じ系統由来のいくつかの試料を合わせた。図18は、対照系統(2つの試料を合わせた)および形質転換系統pWVK154(4つの試料を合わせた)のNMRスペクトルの比較を示す。NMRスペクトルは、pWVK154トランスジェニックが、対照系統よりもはるかにより低いリグニン含量を有するという、pyMBMS分析の結果を確認した。芳香族および炭水化物領域の積分と、リグニンおよび炭水化物構造のいくつかの仮定を組み合わせることによって、重量リグニン%を決定した(Haw et al.,(1984) Analytical Chemistry 56: 1323を参照されたい)。選択した12の試料の結果を表22に示す。選択した試料に関して、PC1スコアとNMR重量リグニン%値を比較すると、PC1スコアがテーダマツ試料におけるリグニン量を正確に反映し、かつPC1スコアを用いて、異なる構築物のリグニン含量を順位付けし得ることが示される。
【0173】
多変数データ分析を用いたリグニン評価
Unscrambler、バージョン7.8ソフトウェアプログラム(CAMO A/S, Trondheim, Norway)を用いて、データ分析を行った。一度に1つのみのY変数を取り扱う、潜在的構造に対する射影(PLS-1)アルゴリズムを用いて、マツ試料のリグニン含量を予測するモデルを構築した。Xマトリックス(310変数(50〜360の間のm/z値))としてpyMBMSスペクトルを用い、かつYマトリックスとして固相NMRによって測定されるリグニン値を用いて、リグニン含量予測モデルを発展させた。分析前に、マススペクトルを総イオン電流に対して標準化した。データから体系的に1つの試料を取り除き、残りの試料を用いたモデルを確立し、かつ次いで、データセットから取り除かれた試料のY変数の値を予測するためにそのモデルを用いる、完全交差検証を用いて、モデル検証を行った。Yマトリックスからすべての試料が取り除かれ、かつ予測されるまで、このプロセスを続ける。最適モデルを選択するのに用いる基準は、適合度(すなわち高い相関係数)および最小残差であった。
【0174】
NMRリグニン値およびpyMBMSスペクトルから、リグニン含量を予測するPLS1モデルを構築した。NMR分析のため、同じ系統から1より多い樹木をサンプリングした場合、樹木由来の対応するマススペクトルを平均して、かつモデルを構築するのに用いた。50〜360のm/z値の範囲を用いて、PLSモデルを構築した。完全交差検証モデルの相関係数に基づいて、最適モデルを提供するために、この範囲を経験的に決定した。図19に示す最終完全交差検証モデルは、0.9のRMSEPおよび0.94のr2値を有した。
【0175】
National Renewable Energy Laboratory(Golden, Colorado)によって開発されたNMRに基づくモデルを用いて、形質転換系統各々に関して、リグニンレベルを決定した。表20は、各RNAi構築物に関して、非形質転換対照に比較したリグニンの割合を示す。すべての形質転換体は、対照植物に比較して減少したリグニンを示したが、異なる系統は、異なる量のリグニンを所持した。断片CまたはDを含む構築物を含む形質転換体が、最大のリグニン減少を示した。
【0176】
(表20)リグニンレベルに対するRNAi構築物の影響
【0177】
図10は、各形質転換体に関して得たリグニン値を示すグラフを提供する。x軸の平均の高さの順に、構築物を列挙する。したがって、結果は、マツにおいて、断片CおよびDが、増殖ならびにリグニンの平均減少と関連したことを示す。断片Eは成長を減少させないが、リグニンもあまり減少させなかった。平均成長減少が伴わない、最適なリグニン減少が、断片A(いずれかのプロモーターによって駆動)または断片F(4CLプロモーターによって駆動)で見られた。これらの構築物は、林業適用に適した表現型を構成する。
【0178】
表21は、テーダマツ木材試料の熱分解分子ビーム質量分析と関連するマススペクトルピークの割り当てを提供する(Evans et al, Energy & Fuels, 1 : 123-137(1987))。
【0179】
(表21)
1断片イオン。
【0180】
(表22)NMRによって決定される重量リグニン%値
【0181】
実施例14.マツ形質転換体のフィールド試験
乱塊法計画で、総数およそ1000の樹木ストックを植えるため、16の構築物の各々に関しておよそ同数の系統を含む、122系統の各々から、フィールド植林のため、4〜8の遺伝的に同一な珠芽(ラミート)を根付かせた。4CLプロモーター駆動構築物およびスーパーユビキチン・プロモーター駆動構築物で形質転換した系統を、それぞれの対照とともに、各々およそ500の樹木ストックの別個のブロックに植えた。
【0182】
表23でアスタリスクで特定する構築物は、少なくともいくつかの矮小化形質転換体を生じた。表から明らかであるように、スーパーユビキチン・プロモーター駆動構築物を含む形質転換体は、矮小化をより示しやすかった。一方、高さの測定にDuncanの多重範囲検定を適用する、以下の表23で見られ得るように、4CLプロモーター駆動構築物は、有意な矮小化を伴わずにリグニン減少を示す可能性がより高かった。表23において、維管束優先的プロモーターによって駆動される構築物を含有する形質転換体は、主に、より背が高いクラスに示されることが観察可能である。したがって、組織優先的プロモーターを含む構築物が好ましい。
【0183】
(表23)フィールド試験で植えた4CL RNAi形質転換樹木および対照樹木
トランスジェニック樹木の平均の高さ(8ヶ月齢で測定)および根の質量(12ヶ月齢、すなわちフィールド部位に植える時点で測定)
高さおよび根の質量の統計に対して、Duncanの多重範囲検定を行った。
【0184】
実施例15.炭水化物レベルの評価
二次木質部(木材)は、主に、セルロース(グルコースの直鎖ポリマー)、ヘミセルロース(セルロースと会合して見出される直鎖へテロ多糖;裸子植物において、主な構成要素糖はマンノースである)およびリグニン(加水分解によって脱重合不能なフェノール性ポリマー)で構成される。変化するレベルの炭水化物(CHO)およびリグニンは、パルプ化などのプロセスにおける樹木の有用性に影響を及ぼし得る。セルロースは、パルプ収量の主な構成要素であり、かつ収量はまた、セルロースと会合するヘミセルロースの量および種類によってもまた、影響を受け得る。さらに、木材のセルロース含量は、パルプ由来および固形木材製品の両方に重要である、強度に正に相関する。
【0185】
Hardingら(1999)(Nat Biotechnol. 17(8):808-12)は、リグニンレベルが減少したトランスジェニック・アスペン樹木が、上昇したCHOレベルを示すことを見出した。Hardingらは、CHOレベルの上昇が、リグニンレベルが減少した樹木の植物構造上の完全性の保持に関与する可能性もあり、かつこうした樹木が、パルプ化のため、増進した有用性を示すであろうと主張する。
【0186】
総リグニン量に関して試験したトランスジェニック植物材料を、存在するセルロースおよびヘミセルロース量の測定値として、炭水化物(CHO)に関して試験してもよい。抽出物不含の粉末試料に対して、炭水化物分析を行う。これらの試料を、72%硫酸を用いて、まず室温で1/2時間インキュベーションし、次いで120℃で1時間インキュベーションすることによって、2段階で加水分解し、デカントし、かつイオンクロマトグラフィーによって分析する。クロマトグラムから、アラビナン、ガラクタン、グルカン、キシランおよびマンナンの乾燥木材重量(DWW)パーセントを決定する。
【0187】
Huら(1999)(Nature Biotechnology 17: 808 - 812)は、4CL遺伝子を下方制御したトランスジェニック・アスペン樹木が、リグニン含量の最大45%の減少およびセルロース含量の15%の増加を示すことを立証した。実施例15でリグニンに関して試験したトランスジェニック樹木の炭水化物レベルを評価することによって、これらの構築物が、リグニン含量減少およびセルロース含量増加の間の相関を示すかどうかが決定されるであろう。
【0188】
トランスジェニック樹木のCHO測定の結果によって、形質転換樹木において、どの構築物が、セルロースまたはヘミセルロース含量の変化と相関するか決定する。これらの結果は、これらの構築物が、パルプ収量と相関し、かつパルプ繊維および固形木材製品の強度と相関する、セルロース含量を調節可能であることを立証する。
【0189】
構築物は、形質転換樹木において、セルロースまたはヘミセルロース含量を改変する。形質転換樹木のリグニンレベルの減少およびCHOレベルの増加は、パルプ産業に対して経済学的および環境的利点を提供する。特に、リグニン含量の減少は、パルプ化および漂白プロセスにおいて、化学薬品の減少を導くはずである。
【0190】
実施例16.
リグニン含量を分析するためのさらなる方法
本実施例では、6ヶ月齢の植物およびおよそ18ヶ月齢の植物の間で、トランスジェニック植物中の細胞構造およびリグニン含量を比較するため、実施例13で先に試験した樹木の遺伝的クローンの、より老齢の試料の解剖学的分析を行う。さらに、実施例11および13で、それぞれ、総リグニン量、CHO量に関して試験し、かつ微量パルプ化したトランスジェニック植物材料を、共焦点顕微鏡によって検査して、存在する細胞構造を観察する。
【0191】
ホルマリン・アセトアルコール(FAA)中で試料を固定する。水中で試料を洗浄し、かつスレッジ・ミクロトームを用いて、30〜60mmの厚さの切片を作製する。サフラニン染色を用いて、切片を染色し、かつ共焦点顕微鏡を用いて調べた。
【0192】
フロログルシノール/HClを用いてコニフェルアルデヒド単位を検出する、リグニンの組織化学試験もまた、試料に適用する。いくつかの試料はまた、リグニンに関するさらなる染色として、トルイジンブルー染色でも調べる。この解剖学的分析によって、存在する反応木材の量、およびトランスジェニック植物の材木(木質部)細胞が、対照植物に対して何らかの相違を示すかどうかが同定される。
【0193】
これらの結果は、実施例12および13において、減少したリグニンレベルを有することが示されたが、正常の形態を示す、トランスジェニック樹木の細胞構造が、「正常の」/より高いリグニンレベルを持つ非トランスジェニック樹木に対して、有意な相違を持たないことを立証する。これらの結果は、6ヶ月齢の樹木で観察される細胞構造が、18ヶ月齢の樹木由来の試料での観察と一致することをさらに立証する。
【0194】
実施例17.リグニンが減少した樹木のプロセシング
リグニン含量の減少が、パルプ化プロセスの改善につながるかどうかを決定するため、実施例のトランスジェニック樹木を、微量パルプ化に供してもよい。クラフト紙パルプ化用の木材供給源の適切性を決定するために重要なパラメータは、パルプ収量、パルプ化率、アルカリ消費量、繊維品質およびパルプ漂白可能性である。木材試料を風乾し、チップ化し、かつ次いで105℃で少なくとも2日間、かつ定重量に達するまで、オーブン乾燥した。Stalsvetの多消化槽パルプ化装置(Stalsvets, Sweden)の回転アームに装着した150mLのステンレススチール反応装置中で、クラフト紙パルプ化を行う。12.5kWの総容量を有し、かつOmron制御装置(Omron Corporation, Illinois, USA)によって制御される電気ヒーターによって加熱されるポリエチレン槽を通じて、反応装置を回転させる。典型的なパルプ化条件は:
有効アルカリチャージ:14%(Na2Oとして)
溶液硫化度:30%
溶液:木材比:6:1
最高パルプ化温度:170℃
最高温度までの時間:90分間
H係数:170℃での時間を変化させることによって決定
【0195】
パルプ製造の当業者は、本発明の樹木の木材のパルプ化可能性を試験するため、微量パルプ化条件の多くの他の組み合わせが利用可能であることを認識するであろう。反応装置を冷水中で急冷し、かつ加熱したチップをブフナー漏斗上でろ過する。残渣アルカリ分析のため、ろ液を保持する。加熱したチップを水道水で徹底的に洗浄し、かつ次いで、標準的British粉砕装置中で15分間混合する。生じたパルプをブフナー漏斗上でろ過し、かつろ液が透明になるまで水で洗浄する。パルプパッドを60℃で一晩乾燥させ、かつ重量測定によって総収量を決定した。
【0196】
最初の変曲点までの0.5M塩酸での滴定によって、残渣アルカリを決定する(Milanova, E. and Dorris, G.M., Nordic Pulp and Paper Research Jl., 9(1), 4-9 (1994))。アルカリ消費量は、チップに対する有効アルカリチャージおよび黒液中の残渣アルカリ間の相違であり、オーブン乾燥チップの割合として表す(Na2Oとして)。
【0197】
Appita Standard 201m-86(AS/NZS 1301.201s:2002)の1/2スケール修飾によって、パルプ・カッパー価を決定する。既定の加熱時間に達するカッパー価として、パルプ化率を計算する。
【0198】
以下のようなD-Eo-D順序を用いて、10%コンシステンシーで、パルプを漂白することによって、パルプ漂白可能性を決定する(Kibblewhite et al., Appita, 51(2), 1145-121 (1998)):D段階:0.25活性塩素倍数、100%工業用二酸化塩素、50℃、60分間。Eo段階:2% NaOH、0.25mPa O2、70℃、60分間。D段階:1% ClO2、70℃、180分間。漂白後、pH 4〜5.5で5gの輝度パッドを用意し、かつL & W Elrepho(Lorentzen & Wettre, Kista, Sweden)を用いて、23℃/50% RHでの平衡後、輝度を決定する。Kaman Fiberglas system(Mets Automation, Kaman, Finland)を用いて、平均繊維長、幅、およびルーメンサイズ、ならびに標準偏差などの繊維品質を分析する。
【0199】
結果は形質転換で用いた構築物の種類に相関し、かつ、構築物がクラフト紙パルプ化の木材供給源の適切性を有効に調節することを立証する。
【0200】
実施例18.アンチセンス構築物
アンチセンス転写物を生じる発現構築物を用いて、植物におけるリグニン含量を修飾することも可能である。これに関連して、本明細書に開示する任意のプロモーターを、本明細書に開示する任意の遺伝子由来の配列と組み合わせて、アンチセンス転写物を生じる組換え構築物を産生することも可能である。E.グランディス由来の4CL遺伝子を利用する、いくつかの例示的な発現カセットを表24に提供する。pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412のベクターマップを、それぞれ、図20、21、および27に提供する。
【0201】
構築物pARB598は、2004年9月21日に、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, Virginia, USA, 20108に寄託され、かつATCCアクセッション番号PTA-6224を与えられた。
【0202】
(表24)
【0203】
実施例19. 4CLのセンス構築物
また、本明細書に開示する任意のプロモーターを、センス転写物を生じるように配向させた4CL遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、ターゲット遺伝子の発現を抑制可能な高レベルの4CLセンス転写物を生じる。例示的な構築物は、図25に示すpARB368である。この構築物の発現カセットは、米国特許第6,410,718号に記載されるように単離された、ユーカリプタス・グランディス由来の全長4CL cDNA(SEQ ID NO:84)に機能可能であるように連結されたピナス・ラディアタ4CLプロモーター(SEQ ID NO:77)を含む。
【0204】
実施例20. Cald5Hを含む構築物
本明細書に開示する任意のプロモーターを、Cald5H遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、形質転換体におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾することによって、トランスジェニック植物におけるリグニン組成を改変することも可能である。いくつかの例示的な発現カセットを表25に提供する。こうしたベクターのプラスミドマップを図20〜22、24および28に提供する。これらの構築物各々は、Cald5Hを過剰発現して、かつそれによって、形質転換植物におけるシリンギル含量が上昇するように設計された。米国特許第6,252,135号に記載されるように、モミジバフウ(sweetgum)木質部cDNAライブラリーから、これらの構築物中で用いたCald5H遺伝子(SEQ ID NO:83)を単離した。
【0205】
(表25)
【0206】
実施例21. SADを含む構築物
本明細書に開示する任意のプロモーターを、SAD遺伝子の少なくとも部分と組み合わせることによって、植物においてリグニンを調節するのに有用な構築物を調製してもよい。こうした構築物は、形質転換体におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾することによって、トランスジェニック植物におけるリグニン組成を改変することも可能である。いくつかの例示的な発現カセットを表26に提供する。こうしたベクターのプラスミドマップを図25〜26に提供する。これらの構築物各々は、SADを過剰発現して、かつそれによって、形質転換植物におけるシリンギル含量が上昇するように設計された。成熟シュート芽(shoot bud)から産生したE.グランディスcDNAライブラリーから、構築物中で用いたEGBA SAD遺伝子(SEQ ID NO:85)を単離した。ユーカリプタス属由来の発生中の散形花序(inflorescence umble)(非開花散形花序のつぼみ(unopened umbel buds))から産生したcDNAライブラリーから、構築物中で用いたEHUA SAD遺伝子(SEQ ID NO:86)を単離した。こうしたcDNAライブラリーを実施例2に記載するように調製してもよい。
【0207】
(表26)
【0208】
表27は、本明細書記載のポリヌクレオチドおよびDNA構築物の多くの核酸配列を提供する。
【0209】
(表27)
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1A】本明細書に記載するいくつかのDNA構築物を作製するのに用いたプライマーおよび構成要素を提供する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:5、6、7、8、15、9、および64)。
【図1B】本明細書に記載するいくつかのDNA構築物を作製するのに用いたプライマーおよび構成要素を提供する(SEQ ID NO:16、17、10、11、12および13)は、。
【図2A】本明細書に記載するDNA構築物の構成要素を提供する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:65、25、および26)。
【図2B】本明細書に記載するDNA構築物の構成要素を提供する(SEQ ID NO:34および33)。
【図3】トランスジェニック・ユーカリプタス属樹木の生じた高さを示す、棒グラフを提供する。
【図4A】トランスジェニック・ユーカリプタス属樹木の生じた高さを示す棒グラフを提供する。
【図4B】トランスジェニック樹木の平均リグニン含量を示す。
【図5】マツ4CL遺伝子の核酸配列(SEQ ID NO:66)を提供する。
【図6A】いくつかのマツ4CL断片の核酸配列を同定する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:18、19、20、および21)。
【図6B】いくつかのマツ4CL断片の核酸配列を同定する(それぞれ、出現順に、SEQ ID NO:22、23、24、および48)。
【図7】本発明のDNA構築物の一般的な設計を提供する。
【図8】マツ樹木におけるリグニンを調節するのに使用するためのいくつかの4CL DNA構築物の概略図を提供する。
【図9】マツ樹木におけるリグニンを調節するのに使用するためのいくつかの4CL DNA構築物の概略図を提供する。
【図10】4CL RNAi構築物による、リグニンレベルの調節をグラフで示す。リグニン値はNMRで測定した際の細胞壁材料中のリグニンパーセントである。
【図11】ユーカリプタス属4CL構築物pARB345のプラスミドマップである。
【図12】ユーカリプタス属4CL構築物pARB339のプラスミドマップである。
【図13】ユーカリプタス属4CL構築物pARB341のプラスミドマップである。
【図14】テーダマツ試料のマススペクトルを提供する。2000c=対照;1268b=DNA構築物pARB585を含むトランスジェニック樹木。
【図15】Aは、トランスジェニック・テーダマツ試料のm/z 50〜200のマス範囲を用いて収集したマススペクトルのPC2スコアに対するPC1スコアのスキャッタープロットである。Bは、構築物pWVC41および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。
【図16】Aは、構築物pWVK154、pWVC40および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。Bは、構築物pWVK158、pWVC46および対照のクラスタリングを強調するスキャッタープロットである。
【図17】図16Aで選択した構築物由来のテーダマツ試料のマススペクトルである。対照スペクトルの上部に、リグニンピークに割り当てられる熱分解断片を示す。
【図18】pWVK154で形質転換されたトランスジェニック・テーダマツの系統および非形質転換対照の13C CP/MASスペクトルである。スペクトルによって、対照系統に比較して、トランスジェニック系統では、炭水化物領域に比較して、芳香族およびメトキシル炭素の減少が示される(〜60〜110ppm)。
【図19】2つの主成分を用いたPLSモデルの完全クロス検証によって決定される、NMR測定リグニン値、およびPLS予測リグニン値のスキャッタープロットである。
【図20】リグニン構築物pARB1201およびpARB1203のプラスミドマップを提供する。
【図21】リグニン構築物pARB675およびpARB598のプラスミドマップを提供する。
【図22】リグニン構築物pARB661およびpARB662のプラスミドマップを提供する。
【図23】リグニン構築物pARB599のプラスミドマップを提供する。
【図24】リグニン構築物pARB1205およびpARB1202のプラスミドマップを提供する。
【図25】リグニン構築物pARB368およびpARB486のプラスミドマップを提供する。
【図26】リグニン構築物pARB487およびpARB488のプラスミドマップを提供する。
【図27】リグニン構築物pARB411およびpARB412のプラスミドマップを提供する。
【図28】リグニン構築物pARB374のプラスミドマップを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、該DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている、DNA構築物。
【請求項2】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項3】
プロモーターが恒常的プロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項4】
プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項5】
発現が植物の木質部で見られるような維管束優先的な方式で、プロモーターが発現を指示する、請求項4記載のDNA構築物。
【請求項6】
プロモーターがP. タエダ(P. taeda)由来の4CLプロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項7】
遺伝子の部分が、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpおよび1000bpからなる群より選択される断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項8】
遺伝子の部分が約200bpの断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項9】
遺伝子の部分が約334bpの断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項10】
モノリグノール生合成経路の遺伝子が4CL遺伝子である、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項11】
遺伝子の部分が、SEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24および178からなる群より選択される、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項12】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項13】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項14】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項15】
スペーサーDNAセグメントがイントロンの少なくとも部分である、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項16】
スペーサーDNAセグメントが、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:194からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項17】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項18】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項19】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項20】
pARB345、pWVK158、pWVK154、pWVK143、pWVC46、pWVC40およびpWVC44からなる群より選択される、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項21】
少なくとも1つのT-DNA境界をさらに含む、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項22】
LIM遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、該DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている、DNA構築物。
【請求項23】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を調節する方法。
【請求項24】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項25】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を減少させる方法。
【請求項26】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、ならびに該植物細胞を増殖させる工程を含む、植物細胞におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項27】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
遺伝子の部分が、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpおよび1000bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
遺伝子の部分が約200bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項30】
遺伝子の部分が約334bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項31】
モノリグノール生合成経路の遺伝子が4CLである、請求項26記載の方法。
【請求項32】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24および178からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
DNA構築物が、pARB345、pWVK158、pWVK154、pWVK143、pWVC46、pWVC40およびpWVC44からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項37】
組込みが、1より多いDNA構築物を用いて達成される、請求項26記載の方法。
【請求項38】
植物が裸子植物である、請求項26記載の方法。
【請求項39】
請求項1記載のDNA構築物を含む、植物。
【請求項40】
請求項1記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項41】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞。
【請求項42】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項41記載の植物細胞。
【請求項43】
プロモーターが植物細胞に対して内因性である、請求項41記載の植物細胞。
【請求項44】
請求項41記載の植物細胞を含む、植物。
【請求項45】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項46】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の固形木材製品。
【請求項47】
材木(timber)、製材(lumber)および複合材からなる群より選択される、請求項46記載の木材製品。
【請求項48】
請求項26記載の方法によって製造される、リグニン含量が減少した、植物。
【請求項49】
請求項48記載のトランスジェニック植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項50】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の、固形木材製品。
【請求項51】
材木、製材および複合材からなる群より選択される、請求項50記載の木材製品。
【請求項52】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項53】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
請求項52記載の方法によって得られる、木材。
【請求項55】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに木材パルプを得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項56】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
請求項55記載の方法によって得られる、木材パルプ。
【請求項58】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項59】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
請求項58記載の方法によって得られる、紙。
【請求項61】
モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されており、かつモノリグノール生合成経路中の該遺伝子は4CL遺伝子であり、かつ該DNA構築物は、pARB1202、pARB675およびpARB599からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項62】
pARB1202である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項63】
pARB675である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項64】
pARB599である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項65】
DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412である、DNA構築物。
【請求項66】
pARB1201である、請求項65記載のDNA構築物。
【請求項67】
pARB598である、請求項65記載のDNA構築物。
【請求項68】
DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB368である、DNA構築物。
【請求項69】
pARB1203である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項70】
pARB1205である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項71】
pARB675である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項72】
pARB661である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項73】
pARB662である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項74】
CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB1203、pARB1205、pARB675、pARB661、pARB662およびpARB374からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項75】
SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB486、pARB487およびpARB488からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項76】
請求項61記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項77】
請求項65記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項78】
請求項68記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項79】
請求項74〜78のいずれか1項記載の植物細胞を含む、植物。
【請求項80】
請求項79記載の植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項81】
請求項79記載の植物由来の、固形木材製品。
【請求項82】
材木、製材および複合材からなる群より選択される、請求項81記載の木材製品。
【請求項83】
請求項61〜67のいずれか1項由来のDNA構築物を、植物のゲノム内に組み込むことを含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項84】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を、植物のゲノム内に組み込むことを含む、植物におけるリグニン組成を改変する方法。
【請求項85】
リグニン組成の改変が、形質転換植物におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾する工程を含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項87】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項88】
請求項86または87記載の方法によって得られる、木材。
【請求項89】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項90】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項91】
請求項89または90記載の方法によって得られる、木材パルプ。
【請求項92】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項93】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項94】
請求項92または93記載の方法によって得られる、紙。
【請求項1】
モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、該DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている、DNA構築物。
【請求項2】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項3】
プロモーターが恒常的プロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項4】
プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項5】
発現が植物の木質部で見られるような維管束優先的な方式で、プロモーターが発現を指示する、請求項4記載のDNA構築物。
【請求項6】
プロモーターがP. タエダ(P. taeda)由来の4CLプロモーターである、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項7】
遺伝子の部分が、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpおよび1000bpからなる群より選択される断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項8】
遺伝子の部分が約200bpの断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項9】
遺伝子の部分が約334bpの断片長を有する、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項10】
モノリグノール生合成経路の遺伝子が4CL遺伝子である、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項11】
遺伝子の部分が、SEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24および178からなる群より選択される、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項12】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項13】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項14】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項15】
スペーサーDNAセグメントがイントロンの少なくとも部分である、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項16】
スペーサーDNAセグメントが、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:194からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項17】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項18】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項19】
プロモーターが維管束優先的プロモーターであり、かつ第一のDNAセグメントがSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項20】
pARB345、pWVK158、pWVK154、pWVK143、pWVC46、pWVC40およびpWVC44からなる群より選択される、請求項10記載のDNA構築物。
【請求項21】
少なくとも1つのT-DNA境界をさらに含む、請求項1記載のDNA構築物。
【請求項22】
LIM遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、該DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されている、DNA構築物。
【請求項23】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を調節する方法。
【請求項24】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項25】
請求項1記載のDNA構築物を植物内に導入する工程、および該植物を成長させる工程を含む、植物におけるリグニンの発現を減少させる方法。
【請求項26】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、ならびに該植物細胞を増殖させる工程を含む、植物細胞におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項27】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
遺伝子の部分が、約50bp、100bp、200bp、400bp、600bpおよび1000bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
遺伝子の部分が約200bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項30】
遺伝子の部分が約334bpの断片長を有する、請求項26記載の方法。
【請求項31】
モノリグノール生合成経路の遺伝子が4CLである、請求項26記載の方法。
【請求項32】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18、19、20、21、22、23、24および178からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
遺伝子の部分がSEQ ID NO:163のヌクレオチド配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
DNA構築物が、pARB345、pWVK158、pWVK154、pWVK143、pWVC46、pWVC40およびpWVC44からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項37】
組込みが、1より多いDNA構築物を用いて達成される、請求項26記載の方法。
【請求項38】
植物が裸子植物である、請求項26記載の方法。
【請求項39】
請求項1記載のDNA構築物を含む、植物。
【請求項40】
請求項1記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項41】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含む、植物細胞。
【請求項42】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項41記載の植物細胞。
【請求項43】
プロモーターが植物細胞に対して内因性である、請求項41記載の植物細胞。
【請求項44】
請求項41記載の植物細胞を含む、植物。
【請求項45】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項46】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の固形木材製品。
【請求項47】
材木(timber)、製材(lumber)および複合材からなる群より選択される、請求項46記載の木材製品。
【請求項48】
請求項26記載の方法によって製造される、リグニン含量が減少した、植物。
【請求項49】
請求項48記載のトランスジェニック植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項50】
請求項44記載のトランスジェニック植物由来の、固形木材製品。
【請求項51】
材木、製材および複合材からなる群より選択される、請求項50記載の木材製品。
【請求項52】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項53】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
請求項52記載の方法によって得られる、木材。
【請求項55】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに木材パルプを得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項56】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
請求項55記載の方法によって得られる、木材パルプ。
【請求項58】
5’から3’方向に、プロモーター、モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、スペーサーDNAセグメント、および第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメントを含むDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、ならびに紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項59】
モノリグノール生合成経路における遺伝子が、4CL、C3H、CCR、C4HおよびCCoAOMTからなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
請求項58記載の方法によって得られる、紙。
【請求項61】
モノリグノール生合成経路における遺伝子の少なくとも部分に対応する第一のDNAセグメント、
スペーサーDNAセグメント、および
第一のDNAセグメントに相補的な第二のDNAセグメント
に機能可能であるように連結されたプロモーターを含む、DNA構築物であって、第一および第二のDNAセグメントは、DNA構築物中で、それぞれ5’から3’方向に配置されており、かつモノリグノール生合成経路中の該遺伝子は4CL遺伝子であり、かつ該DNA構築物は、pARB1202、pARB675およびpARB599からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項62】
pARB1202である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項63】
pARB675である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項64】
pARB599である、請求項61記載のDNA構築物。
【請求項65】
DNAセグメントの転写物がアンチセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB1201、pARB598、pARB411およびpARB412である、DNA構築物。
【請求項66】
pARB1201である、請求項65記載のDNA構築物。
【請求項67】
pARB598である、請求項65記載のDNA構築物。
【請求項68】
DNAセグメントの転写物がセンス配向で産生されるように、4CL遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB368である、DNA構築物。
【請求項69】
pARB1203である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項70】
pARB1205である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項71】
pARB675である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項72】
pARB661である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項73】
pARB662である、請求項68記載のDNA構築物。
【請求項74】
CAld5H遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB1203、pARB1205、pARB675、pARB661、pARB662およびpARB374からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項75】
SAD遺伝子の少なくとも部分に対応するDNAセグメントに機能可能であるように連結されたプロモーターを含み、pARB486、pARB487およびpARB488からなる群より選択される、DNA構築物。
【請求項76】
請求項61記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項77】
請求項65記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項78】
請求項68記載のDNA構築物を含む、植物細胞。
【請求項79】
請求項74〜78のいずれか1項記載の植物細胞を含む、植物。
【請求項80】
請求項79記載の植物由来の、パルプおよびパルプ由来製品。
【請求項81】
請求項79記載の植物由来の、固形木材製品。
【請求項82】
材木、製材および複合材からなる群より選択される、請求項81記載の木材製品。
【請求項83】
請求項61〜67のいずれか1項由来のDNA構築物を、植物のゲノム内に組み込むことを含む、植物におけるリグニンの発現を阻害する方法。
【請求項84】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を、植物のゲノム内に組み込むことを含む、植物におけるリグニン組成を改変する方法。
【請求項85】
リグニン組成の改変が、形質転換植物におけるグアイアシル:シリンギルリグニン単量体比を修飾する工程を含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項87】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材を作製する方法。
【請求項88】
請求項86または87記載の方法によって得られる、木材。
【請求項89】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項90】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および木材を得る工程を含む、木材パルプを作製する方法。
【請求項91】
請求項89または90記載の方法によって得られる、木材パルプ。
【請求項92】
請求項61〜68のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項93】
請求項68〜73のいずれか1項由来のDNA構築物を植物細胞のゲノム内に組み込む工程、該植物細胞を増殖させる工程、および紙を得る工程を含む、紙を作製する方法。
【請求項94】
請求項92または93記載の方法によって得られる、紙。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2008−513025(P2008−513025A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532646(P2007−532646)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/033824
【国際公開番号】WO2006/036698
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(505450722)アーバージェン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/033824
【国際公開番号】WO2006/036698
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(505450722)アーバージェン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】
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