説明

植物圧縮梱包品の分離装置

【課題】植物圧縮梱包品を、回転刃により連続的に細断・分離し、軟らかな綿状に加工する分離装置を提供する。
【解決手段】フレーム(1)に回転刃ケース(2)を載置し、回転刃ケース内の回転軸(3)上に圧縮材料(12)の断面寸法(21)よりも大きい刃先円直径(6)を持つ回転刃(4)を、回転方向(17)に対し反対方向に倒伏可能にピン(20)を介して取り付け、回転軸(3)の一端に被動プーリ(5)を取り付ける。
回転刃ケース(2)の上部に投入口(11)を設け、ここから回転軸(3)寄りの位置に円弧状の格子(7)を設け、回転刃ケース(2)の下部に開口部(15)を有する。
フレーム(1)に原動機(8)を載置し、これの回転軸に駆動プーリ(9)をとりつけ、被動プーリ(5)との間をベルト(10)にて掛合し、回転刃(4)が回転することを特徴とした分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヤシ皮等の植物繊維を圧縮整形した梱包品、及び固形材料を細断し、軟らかな綿状あるいは、細かな粉砕状態に加工する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤシ皮繊維を立方体に圧縮整形し、袋に密封した圧縮梱包品が輸入されている。
【0003】
この植物圧縮梱包品(以下圧縮材料と呼ぶ。)を開梱してほぐしたものに、草の種子と結合剤とを混ぜ合わせ、傾斜地の斜面やダムの法面に吹き付けて草を成育させることにより、崩落を防ぐとともに、景観を良好に保とうという試みがなされている。
【0004】
この場合、ほぐした圧縮材料は草が成育するまでの間、ある程度長い繊維同士がからみあい結束することで、雨水などにより斜面が崩落することを防ぐと同時に種子の流失も防ぐ、つなぎの役割をしている。
【0005】
従来、この圧縮材料を混ぜ合わせるには、ある程度細かくほぐしてやる必要があるが、適当な装置がない為、手作業にてほぐすより他なく、膨大な労力を要していた。
【0006】
機械的加工手段としては、水平に軸着された円筒形の回転体の表面に、板状の切断刃を複数本取り付け、この回転体の上方より被加工材を投入し、回転する切断刃により切断、あるいは粉砕作業を行なうことを目的とする装置が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1の技術を本作業目的に応用した場合、圧縮材料の供給量を制限するものが無い為に、落下する力が衝撃粉砕機であるハンマーミルに直接加わることとなる。
【0008】
特許文献1の技術では、壁紙等の建材の加工を目的としているのに対して、本圧縮材料は、例えばヤシの実素材から取り出した状態の、基本的には切断加工されていない長い繊維素材を、強固に圧縮し一体化した立方体であり、硬さや密度に若干の個体差はあるが、壁紙等の建材とは比較にならないほどの耐破壊性を有しているのは明らかである。
【0009】
このため、加工が容易に進まないか、出来たとしても回転体を駆動させる為に、より強力な原動機が必要となることが想像できる。
【0010】
特許文献2の技術を本作業目的に応用した場合、回転する刃が主に切断することを目的とする為、回転軸に対して垂直で平面な板状であり、これにより当圧縮材料を加工した場合は、回転する刃は同じ切断跡を繰り返し通るだけで、回転軸と平行する方向への加工作業の広がりが期待できず、切断作業がほとんど進まないことが想像できる。
【0011】
また、この平面状の刃に替えて、例えば刃先がL字形を有したものを用いることで回転軸と平行する方向へ加工幅が広がり、全面的な加工が可能になったとしても、圧縮材料の供給量を制限するものが無い為、圧縮材料が下方に落下する力がそのまま回転する刃にかかる為、前記同様に圧縮材料が刃の回転を止めようとする強力な力が回転軸に伝わる。
【0012】
特許文献2の技術では、藁等の乾燥植物の切断作業を目的としており、本圧縮材料を加工する場合と比較して、小さい回転力の原動機での作業が可能なことが想像でき、本圧縮材料の加工に使用する場合には、より強力な回転力を発生する原動機が必要となり、装置自体も大掛かりなものとなる。
【0013】
特許文献1、特許文献2の双方に共通して、加工装置の処理能力に応じた圧縮材料の供給量制御ができれば、より小さい回転力の原動機での加工作業が可能となる。
【0014】
供給量を制限する方法の一つとして、何らかの手段で加工される材料を保持しつつ、強制的に裁断装置へ供給する方法が考えられるが、構造が複雑で高価なものとなる。
【0015】
この為、より低出力の原動機を用いた簡素な構造の、効率良い作業ができる分離装置の開発が望まれるところである。
【0016】
【特許文献1】特開平成11−197605号公報
【特許文献2】登録実用新案昭和54−42167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この圧縮材料を装置に供給し、回転刃により細断しながらほぐす事を目的とするのであるが、繊維質である上に固く圧縮されている為、回転刃に一度に多く供給すると、大きな負荷により回転が停止して作業が中断する状態となるなど、装置の原動機の回転出力不足により作業が継続出来ない状態に陥る。
【0018】
この状態を解決するために、圧縮材料の供給量を制限して細断量とのバランスを取ると共に、回転刃に加わる負荷を和らげることによって、安定した細断作業を実現しなければならないという問題があった。
【0019】
また、圧縮材料を装置の回転刃で加工する際、例えばハンマーのような鈍器の衝撃による分解作業では、細かな分離状態は期待できず、ある程度圧縮状態の塊が残る作業結果となり、使用目的の一例である法面崩落防止の吹き付け工事に利用する場合では、塊があるために均一に混ぜ合わせることができず、吹き付けた状態でも均一に混ぜられた場合と比べ、結束力にむらができるため良好な仕上がり常態とはならない。
【0020】
一方、回転刃を鋭利な刃付け加工を施した物とし、大きな衝撃力を用いなくても圧縮材料を細かく切断できる状態にした場合では、繊維そのものが短くなる為、十分なつなぎの役割を果たすことができない。
【0021】
この為、塊を残らせないと共に、繊維を切り過ぎない加工をしなければならないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の手段とするところは、フレーム(1)に回転刃ケース(2)を載置し、回転刃ケース内の回転軸(3)上に板状の回転刃(4)を複数本取り付け、回転軸(3)の一端に被動プーリ(5)を取り付ける。
【0023】
また、回転刃ケース(2)の上部には投入口(11)を設け、下部に開口部(15)を有する。
【0024】
さらに、フレーム(1)に原動機(8)を載置し、これの回転軸に駆動プーリ(9)をとりつけ、被動プーリ(5)との間をベルト(10)にて掛合し、回転刃(4)が回転するように構成したうえに、投入口(11)から回転軸(3)寄りの位置に、並列に円弧状の格子(7)を複数本設けたところにある。
【0025】
請求項2の手段とするところは、前記の格子(7)が並列している間の所に回転刃(4)を回転方向(17)に対し反対方向に倒伏可能にピン(20)を介して取り付けたところにある。
【0026】
請求項3の手段とするところは、細断される圧縮材料(12)の断面寸法(21)よりも、回転刃(4)の刃先円直径(6)が大きいところにある。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、圧縮材料が自然に滑り落ちる力で装置に供給し、格子により所定の位置に圧縮材料を制止させ、格子から外に出た回転刃が削る分だけ一定量の加工が進むので、一度に多く供給されることがなくなり、回転が止まることを防ぐ為、より低出力の原動機による作業ができる。
【0028】
また格子が円弧状であることと、回転刃の刃先円直径が圧縮材料の断面寸法よりも大きなことにより、格子から外に出た回転刃の突き出し長さが、圧縮材料に回転刃があたる部分の全面にわたって同じであるので、細断量と回転軸に伝わる負荷が共に安定し、回転運動が安定する為、連続的な加工作業ができ、効率良く分離した材料を作りだすことができる。
【0029】
本発明の回転刃は、作業時に負荷がかかれば回転方向とは反対の方向に、倒伏可能に取り付けられている。
【0030】
負荷を和らげる目的で、本発明のような回転刃が倒伏する構造自体は、すでに各分野の加工装置において、広く利用されている技術であるが、この技術のみを応用した場合では、背景技術でも述べたように、圧縮材料の供給量を制限するものが無い事に変わりは無い為に、圧縮材料の落下する力が回転刃取り付け部分に直接加わることとなり、回転を止めようとする力がそのまま回転軸に伝わる。
【0031】
本発明では、円弧状の格子が圧縮材料の供給を制限している為、圧縮材料は格子の位置より先には進むことはない。
【0032】
一方、回転刃は負荷が掛かってない状態で回転しているときは、遠心力により回転刃の先は外側に展開した状態を維持し、並列された円弧状の格子の間から刃先を突き出した状態で回転している。
【0033】
圧縮材料が供給され、負荷が回転刃に加わった状態では、回転刃が圧縮材料に反回転方向に押し倒されることで、回転刃が格子から突き出た量が少なくなり、回転刃の細断量が少なくなることで、回転軸に伝わる負荷を和らげる。
【0034】
さらに、大きな負荷がかかった場合では、回転刃の刃先は円弧状の格子の外径線よりも内径側に倒伏できる為、圧縮材料の負荷を直接うけることはなく、遠心力で外側に展開しようとする力のみで、刃先が圧縮材料を掻き取り、加工が進むので、回転軸に伝わる圧縮材料の負荷は、格子が無い場合と比べて各段に低いレベルで安定する為、前記同様、より低出力の原動機にて効率良く分離した材料を作りだすことができる。
【0035】
つまり本発明では、円弧状の格子と回転刃が倒伏する構造とを組み合わせることで、従来に無い新しい機能をつくりだしている。
【0036】
本発明は、圧縮材料を回転刃にて細断する事により、圧縮状態を解き、軟らかな綿状に分離した材料を作り出すのであるが、鈍器と、鋭利な刃物の中間的な板状の回転刃により、圧縮材料を掻き取るように細断作業を行なうので、例えば、使用目的の一例である法面崩落防止の吹き付け工事に利用する場合では、塊は残らず繊維も切り過ぎない状態で加工が進む為、理想的な状態で分離した材料を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
フレーム(1)に回転刃ケース(2)を載置するとともに、回転刃ケース(2)内に回転する回転軸(3)を水平に設ける。
【0038】
回転軸(3)上に複数本の回転刃ホルダー(18)を設置し、その外周の一定の回転径位置に、ピン(20)を介して回転刃ホルダー(18)と同数の回転刃(4)を取り付けるが、ピン(20)と回転刃(4)は摺動できる為、回転刃(4)は回動でき、倒伏位置(19)の方向に倒伏可能である。
【0039】
回転刃(4)は、図1に示すようにY字型の単体であるが、これは一例であり、回転軸(3)と平行する方向へ一定の細断幅を確保できれば、2枚以上を一組としてもよく、形状もこのY字型に限定されるものではない。
【0040】
回転軸(3)の端部に被動プーリ(5)を取り付ける。
【0041】
回転刃ケース(2)の上部には、回転軸(3)に向かって下方向に傾斜した投入口(11)を設け、圧縮材料(12)はこの投入口(11)に投入する。
【0042】
投入された圧縮材料(12)は、投入口(11)の傾斜を回転軸(3)に向かって滑り落ちる力により、回転刃(4)に供給される。
【0043】
投入口(11)から回転軸(3)寄りに回転刃(4)の刃先円直径(6)より小径位置に、円弧状の格子(7)を設ける。
【0044】
回転刃ケース(2)の下部に開口部(15)を設け、分離した材料(14)はここから排出される。
【0045】
フレーム(1)に原動機(8)を載置し、原動機(8)の回転軸に駆動プーリ(9)を取り付け、この駆動プーリ(9)と被動プーリ(5)とをベルト(10)にて掛合して、動力伝達ができる。
【実施例】
【0046】
以上のように構成したので、原動機(8)を起動して回転刃(4)を回転させることが出来る。
【0047】
投入口(11)に投入された圧縮材料(12)は、投入口(11)の傾斜面を回転軸(3)に向かって滑り落ち、円弧状の格子(7)に一旦受けとめられ細断前の材料(23)位置に停止するが、格子(7)の円弧外径より回転刃(4)の刃先円直径(6)が大きいため、格子(7)より外に出ている回転刃(4)の突き出し長さ(16)分だけ圧縮材料(12)が掻き取られ細断後の材料(24)の状態となる。
【0048】
つまり、格子(7)が圧縮材料(12)の供給量を制限する役目をしており、過剰な供給を防いでいる為、回転刃(4)にかかる圧縮材料(12)の負荷を一定に保ち、回転が停止するなどの問題点を防ぐ役目をしている。
【0049】
掻き取られた圧縮材料(12)は、細断後の材料(24)に示すように、格子(7)に掛かった残材部分(13)を一瞬残すのであるが、投入口(11)の傾斜面を回転軸(3)の方向に向かって滑り落ちる力に押されて、残材部分(13)は崩れ、圧縮材料(12)は回転軸(3)に向かって進み、再び細断前の材料(23)の状態となり、新たな部分が回転刃(4)に掻き取られることになり、供給、細断の工程を連続的に繰り返すこととなる。
【0050】
この投入口(11)の傾斜面の傾斜角度は、一定角度に維持されていれば、圧縮材料(12)が滑り落ちる力は変わらないのであるが、圧縮材料(12)が滑り落ちる力を変える為に、傾斜角度を変更できる構造にしてもよく、そうすれば圧縮材料(12)が格子(7)に押し当てられた時の、残材部分(13)を崩す力が変えられるとともに、材料(12)が回転刃(4)へ供給される力が変えられることになり、加工状態の選択幅が広がる。
【0051】
本発明は、圧縮材料(12)の供給を制限する格子(7)が円弧状であることと、回転刃(4)の刃先円直径(6)が圧縮材料(12)の断面寸法(21)よりも大きいことにより、回転刃(4)の突き出し長さ(16)が、圧縮材料(12)に回転刃(4)があたる部分の全面にわたって同じである為、一定量の細断を繰り返すと同時に、一度に多く供給されることがなくなり、課題である供給量の安定が実現した細断作業が出来るものである。
【0052】
この回転刃(4)の突き出し長さ(16)は、一定の長さに維持されていることにより、細断量を定量に保つのであるが、円弧状の格子(7)の位置を変位できる構造として、突き出し長さ(16)を変更できる構造にしてもよく、そうすれば加工状態、特に細断作業時間や、分離した材料(14)のほぐれ具合に調整幅を持たせることができると同時に、圧縮材料(12)の固さの違い、密度の違いに対しても最適の加工状態に調整することができる。
【0053】
この回転刃(4)はピン(20)を支点に、回転方向(17)に対して反対向きに回動して倒伏位置(19)の方向に倒伏可能であり、回転刃(4)に加わる圧縮材料(12)の負荷が変化することで倒伏量が変化し、格子(7)からの回転刃(4)の突き出し長さ(16)が変化する。
【0054】
この倒伏運動は、回転刃(4)に負荷が掛かってない状態で回転しているときは、遠心力により回転刃(4)の先は外側に展開した状態を維持しており、回転刃(4)にかかる圧縮材料(12)の負荷が大きければ反回転方向に大きく倒伏し、倒伏突き出し長さ(22)に示すように、突き出し長さ(16)が小さくなるので細断量は少なくなり、結果的に大きな負荷が和らげられる。反対に圧縮材料(12)の負荷が少なければ倒伏は少なく、突き出し長さ(16)はあまり変わらない為、負荷が大きい場合と比べて細断量は多くなる。
【0055】
つまり、回転刃(4)に加わる負荷の強弱に追従して、格子(7)からの回転刃(4)の突き出し長さ(16)が変化することで、自動的に負荷と細断量のバランスを取る構造である為、回転軸(3)に伝わる負荷は一定となり、安定した連続作業が出来る。
【0056】
尚、回転方向(17)を反対にしても同様の作業が可能であるが、この場合、回転刃(14)の倒伏可能な方向も反対にする必要がある。
【0057】
圧縮材料(12)は回転刃(4)に削り取られることにより、圧縮状態を解かれ柔らかな綿状に変化して回転刃ケース(2)内を通り、下部開口部(15)から分離した材料(14)として排出される。
【0058】
これらの行程を連続的に繰り返すので、圧縮材料(12)を細断、軟らかく分離した材料(14)を効率良く作ることが出来る。
【0059】
加えて、投入口(11)に圧縮材料(12)を次々投入すれば、さらに効率の良い作業が行なえるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の分離装置を、作業中の状態を上方から見た断面図。
【図2】本発明の分離装置を、作業前の状態を側方から見た断面図。
【図3】本発明の分離装置を、作業中の状態を側方から見た断面図。
【図4】本発明の分離装置を、作業中の状態を側方から拡大して見た断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 フレーム
2 回転刃ケース
3 回転軸
4 回転刃
5 被動プーリ
6 刃先円直径
7 格子
8 原動機
9 駆動プーリ
10 ベルト
11 投入口
12 圧縮材料
13 残材部分
14 分離した材料
15 開口部
16 突き出し長さ
17 回転方向
18 回転刃ホルダー
19 倒伏位置
20 ピン
21 断面寸法
22 倒伏突き出し長さ
23 細断前の材料
24 細断後の材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヤシ皮等の植物繊維を圧縮整形した梱包品を細断し、軟らかな綿状に加工する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤシ皮繊維を立方体に圧縮整形し、袋に密封した圧縮梱包品が輸入されている。
【0003】
この植物圧縮梱包品(以下圧縮材料と呼ぶ。)を開梱してほぐしたものに、草の種子と結合剤とを混ぜ合わせ、傾斜地の斜面やダムの法面に吹き付けて草を成育させることにより、崩落を防ぐとともに、景観を良好に保とうという試みがなされている。
【0004】
この場合、ほぐした圧縮材料は草が成育するまでの間、ある程度長い繊維同士がからみあい結束することで、雨水などにより斜面が崩落することを防ぐと同時に種子の流失も防ぐ、つなぎの役割をしている。
【0005】
従来、この圧縮材料を混ぜ合わせるには、ある程度細かくほぐしてやる必要があるが、適当な装置がない為、手作業にてほぐすより他なく、膨大な労力を要していた。
【0006】
機械的加工手段としては、水平に軸着された円筒形の回転体の表面に、板状の切断刃を複数本取り付け、この回転体の上方より被加工材料を投入し、回転する切断刃により切断、あるいは粉砕作業を行なうことを目的とする装置が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1の技術を本作業目的に応用した場合、圧縮材料の供給量を制限するものが無い為に、落下する力が衝撃粉砕機であるハンマーミルに直接加わることとなる。
【0008】
特許文献1の技術では、壁紙等の建材の加工を目的としているのに対して、本圧縮材料は、例えばヤシの実素材から取り出した状態の、基本的には切断加工されていない長い繊維素材を、強固に圧縮し一体化した立方体であり、硬さや密度に若干の個体差はあるが、壁紙等の建材とは比較にならないほどの耐破壊性を有しているのは明らかである。
【0009】
このため、加工が容易に進まないか、出来たとしても回転体を駆動させる為に、より強力な原動機が必要となることが想像できる。
【0010】
特許文献2の技術を本作業目的に応用した場合、回転する刃が主に切断することを目的とする為、回転軸に対して垂直で平面な板状であり、これにより本圧縮材料を加工した場合は、回転する刃は同じ切断跡を繰り返し通るだけで、回転軸と平行する方向への加工作業の広がりが期待できず、加工作業がほとんど進まないことが想像できる。
【0011】
また、この平面状の刃に替えて、例えば刃先がL字形を有したものを用いることで回転軸と平行する方向へ加工幅が広がり、全面的な加工が可能になったとしても、圧縮材料の供給量を制限するものが無い為、圧縮材料が下方に落下する力がそのまま回転する刃にかかる為、前記同様に圧縮材料が刃の回転を止めようとする強力な力が回転軸に伝わる。
【0012】
特許文献2の技術では、藁等の乾燥植物の切断作業を目的としており、本圧縮材料を加工する場合と比較して、小さい回転力の原動機での作業が可能なことが想像でき、本圧縮材料の加工に使用する場合には、より強力な回転力を発生する原動機が必要となり、装置自体も大掛かりなものとなる。
【0013】
特許文献1、特許文献2の双方に共通して、加工装置の処理能力に応じた圧縮材料の供給量制御ができれば、より小さい回転力の原動機での加工作業が可能となる。
【0014】
供給量を制限する方法の一つとして、何らかの手段で加工される材料を保持しつつ、強制的に裁断装置へ供給する方法が考えられるが、構造が複雑で高価なものとなる。
【0015】
この為、より低出力の原動機を用いた簡素な構造の、効率良い作業ができる分離装置の開発が望まれるところである。
【0016】
【特許文献1】特開平成11−197605号公報
【特許文献2】登録実用新案昭和54−42167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この圧縮材料を装置に供給し、回転刃により細断しながらほぐす事を目的とするのであるが、繊維質である上に固く圧縮されている為、回転刃に一度に多く供給すると、大きな負荷により回転が停止して作業が中断する状態となるなど、装置の原動機の回転出力不足により作業が継続出来ない状態に陥る。
【0018】
この状態を解決するために、圧縮材料の供給量を制限して細断量とのバランスを取ると共に、回転刃に加わる負荷を和らげることによって、安定した細断作業を実現しなければならないという問題があった。
【0019】
また、圧縮材料を装置の回転刃で加工する際、例えばハンマーのような鈍器の衝撃による分解作業では、細かな分離状態は期待できず、ある程度圧縮状態の塊が残る作業結果となり、使用目的の一例である法面崩落防止の吹き付け工事に利用する場合では、塊があるために均一に混ぜ合わせることができず、吹き付けた状態でも均一に混ぜられた場合と比べ、結束力にむらができるため良好な仕上がり常態とはならない。
【0020】
一方、回転刃を鋭利な刃付け加工を施した物とし、大きな衝撃力を用いなくても圧縮材料を細かく切断できる状態にした場合では、繊維そのものが短くなる為、十分なつなぎの役割を果たすことができない。
【0021】
この為、塊を残らせないと共に、繊維を切り過ぎない加工をしなければならないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の手段とするところは、フレーム(1)に回転刃ケース(2)を載置し、回転刃ケース内の回転軸(3)上に板状の回転刃(4)を複数本取り付け、回転軸(3)の一端に被動プーリ(5)を取り付ける。
【0023】
また、回転刃ケース(2)の上部には投入口(11)を設け、下部に開口部(15)を有する。
【0024】
さらに、フレーム(1)に原動機(8)を載置し、これの回転軸に駆動プーリ(9)をとりつけ、被動プーリ(5)との間をベルト(10)にて掛合し、回転刃(4)が回転するように構成したうえに、投入口(11)から回転軸(3)寄りの位置に、並列に円弧状の格子(7)を複数本設けたところにある。
【0025】
請求項2の手段とするところは、前記の格子(7)が並列している間の所に回転刃(4)を回転方向(17)に対し反対方向に倒伏可能にピン(20)を介して取り付けたところにある。
【0026】
請求項3の手段とするところは、細断される圧縮材料(12)の断面寸法(21)よりも、回転刃(4)の刃先円直径(6)が大きいところにある。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、圧縮材料が自然に滑り落ちる力で装置に供給し、格子により所定の位置に圧縮材料を制止させ、格子から外に出た回転刃が削る分だけ一定量の加工が進むので、一度に多く供給されることがなくなり、回転が止まることを防ぐ為、より低出力の原動機による作業ができる。
【0028】
また格子が円弧状であることと、回転刃の刃先円直径が圧縮材料の断面寸法よりも大きなことにより、格子から外に出た回転刃の突き出し長さが、圧縮材料に回転刃があたる部分の全面にわたって同じであるので、細断量と回転軸に伝わる負荷が共に安定し、回転運動が安定する為、連続的な加工作業ができ、効率良く分離した材料を作りだすことができる。
【0029】
本発明の回転刃は、作業時に負荷がかかれば回転方向とは反対の方向に、倒伏可能に取り付けられている。
【0030】
負荷を和らげる目的で、本発明のような回転刃が倒伏する構造自体は、すでに各分野の加工装置において、広く利用されている技術であるが、この技術のみを応用した場合では、背景技術でも述べたように、圧縮材料の供給量を制限するものが無い事に変わりは無い為に、圧縮材料の落下する力が回転刃取り付け部分に直接加わることとなり、回転を止めようとする力がそのまま回転軸に伝わる。
【0031】
本発明は、円弧状の格子が圧縮材料の供給を制限している為、圧縮材料は格子の位置より先には進むことはない。
【0032】
一方、回転刃は負荷が掛かってない状態で回転しているときは、遠心力により回転刃の先は外側に展開した状態を維持し、並列された円弧状の格子の間から刃先を突き出した状態で回転している。
【0033】
圧縮材料が供給され、負荷が回転刃に加わった状態では、回転刃が圧縮材料に反回転方向に押し倒されることで、回転刃が格子から突き出た量が少なくなり、回転刃の細断量が少なくなることで、回転軸に伝わる負荷を和らげる。
【0034】
さらに、大きな負荷がかかった場合では、回転刃の刃先は円弧状の格子の外径線よりも内径側に倒伏できる為、圧縮材料の負荷を直接うけることはなく、遠心力で外側に展開しようとする力のみで、刃先が圧縮材料を掻き取り、加工が進むので、回転軸に伝わる圧縮材料の負荷は、格子が無い場合と比べて各段に低いレベルで安定する為、前記同様、より低出力の原動機にて効率良く分離した材料を作りだすことができる。
【0035】
つまり本発明は、円弧状の格子と回転刃が倒伏する構造とを組み合わせることで、従来に無い新しい機能をつくりだしている。
【0036】
本発明は、圧縮材料を回転刃にて細断する事により、圧縮状態を解き、軟らかな綿状に分離した材料を作り出すのであるが、鈍器と、鋭利な刃物の中間的な板状の回転刃により、圧縮材料を掻き取るように細断作業を行なうので、例えば、使用目的の一例である法面崩落防止の吹き付け工事に利用する場合では、塊は残らず繊維も切り過ぎない状態で加工が進む為、理想的な状態で分離した材料を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
フレーム(1)に回転刃ケース(2)を載置するとともに、回転刃ケース(2)内に回転する回転軸(3)を水平に設ける。
【0038】
回転軸(3)上に複数本の回転刃ホルダー(18)を設置し、その外周の一定の回転径位置に、ピン(20)を介して回転刃ホルダー(18)と同数の回転刃(4)を取り付けるが、ピン(20)と回転刃(4)は摺動できる為、回転刃(4)は回動でき、倒伏位置(19)の方向に倒伏可能である。
【0039】
回転刃(4)は、図1に示すようにY字型の単体であるが、これは一例であり、回転軸(3)と平行する方向へ一定の細断幅を確保できれば、2枚以上を一組としてもよく、形状もこのY字型に限定されるものではない。
【0040】
回転軸(3)の端部に被動プーリ(5)を取り付ける。
【0041】
回転刃ケース(2)の上部には、回転軸(3)に向かって下方向に傾斜した投入口(11)を設け、圧縮材料(12)はこの投入口(11)に投入する。
【0042】
投入された圧縮材料(12)は、投入口(11)の傾斜を回転軸(3)に向かって滑り落ちる力により、回転刃(4)に供給される。
【0043】
投入口(11)から回転軸(3)寄りに回転刃(4)の刃先円直径(6)より小径位置に、円弧状の格子(7)を設ける。
【0044】
回転刃ケース(2)の下部に開口部(15)を設け、分離した材料(14)はここから排出される。
【0045】
フレーム(1)に原動機(8)を載置し、原動機(8)の回転軸に駆動プーリ(9)を取り付け、この駆動プーリ(9)と被動プーリ(5)とをベルト(10)にて掛合して、動力伝達ができる。
【実施例】
【0046】
以上のように構成したので、原動機(8)を起動して回転刃(4)を回転させることが出来る。
【0047】
投入口(11)に投入された圧縮材料(12)は、投入口(11)の傾斜面を回転軸(3)に向かって滑り落ち、円弧状の格子(7)に一旦受けとめられ細断前の材料(23)位置に停止するが、格子(7)の円弧外径より回転刃(4)の刃先円直径(6)が大きいため、格子(7)より外に出ている回転刃(4)の突き出し長さ(16)分だけ圧縮材料(12)が掻き取られ細断後の材料(24)の状態となる。
【0048】
つまり、格子(7)が圧縮材料(12)の供給量を制限する役目をしており、過剰な供給を防いでいる為、回転刃(4)にかかる圧縮材料(12)の負荷を一定に保ち、回転が停止するなどの問題点を防ぐ役目をしている。
【0049】
掻き取られた圧縮材料(12)は、細断後の材料(24)に示すように、格子(7)に掛かった残材部分(13)を一瞬残すのであるが、投入口(11)の傾斜面を回転軸(3)の方向に向かって滑り落ちる力に押されて、残材部分(13)は崩れ、圧縮材料(12)は回転軸(3)に向かって進み、再び細断前の材料(23)の状態となり、新たな部分が回転刃(4)に掻き取られることになり、供給、細断の工程を連続的に繰り返すこととなる。
【0050】
この投入口(11)の傾斜面の傾斜角度は、一定角度に維持されていれば、圧縮材料(12)が滑り落ちる力は変わらないのであるが、圧縮材料(12)が滑り落ちる力を変える為に、傾斜角度を変更できる構造にしてもよく、そうすれば圧縮材料(12)が格子(7)に押し当てられた時の、残材部分(13)を崩す力が変えられるとともに、圧縮材料(12)が回転刃(4)へ供給される力が変えられることになり、加工状態の選択幅が広がる。
【0051】
本発明は、圧縮材料(12)の供給を制限する格子(7)が円弧状であることと、回転刃(4)の刃先円直径(6)が圧縮材料(12)の断面寸法(21)よりも大きいことにより、回転刃(4)の突き出し長さ(16)が、圧縮材料(12)に回転刃(4)があたる部分の全面にわたって同じである為、一定量の細断を繰り返すと同時に、一度に多く供給されることがなくなり、課題である供給量の安定が実現した細断作業が出来るものである。
【0052】
この回転刃(4)の突き出し長さ(16)は、一定の長さに維持されていることにより、細断量を定量に保つのであるが、円弧状の格子(7)の位置を変位できる構造として、突き出し長さ(16)を変更できる構造にしてもよく、そうすれば加工状態、特に細断作業時間や、分離した材料(14)のほぐれ具合に調整幅を持たせることができると同時に、圧縮材料(12)の固さの違い、密度の違いに対しても最適の加工状態に調整することができる。
【0053】
この回転刃(4)はピン(20)を支点に、回転方向(17)に対して反対向きに回動して倒伏位置(19)の方向に倒伏可能であり、回転刃(4)に加わる圧縮材料(12)の負荷が変化することで倒伏量が変化し、格子(7)からの回転刃(4)の突き出し長さ(16)が変化する。
【0054】
この倒伏運動は、回転刃(4)に負荷が掛かってない状態で回転しているときは、遠心力により回転刃(4)の先は外側に展開した状態を維持しており、回転刃(4)にかかる圧縮材料(12)の負荷が大きければ反回転方向に大きく倒伏し、倒伏突き出し長さ(22)に示すように、突き出し長さ(16)が小さくなるので細断量は少なくなり、結果的に大きな負荷が和らげられる。反対に圧縮材料(12)の負荷が少なければ倒伏は少なく、突き出し長さ(16)はあまり変わらない為、負荷が大きい場合と比べて細断量は多くなる。
【0055】
つまり、回転刃(4)に加わる負荷の強弱に追従して、格子(7)からの回転刃(4)の突き出し長さ(16)が変化することで、自動的に負荷と細断量のバランスを取る構造である為、回転軸(3)に伝わる負荷は一定となり、安定した連続作業が出来る。
【0056】
尚、回転方向(17)を反対にしても同様の作業が可能であるが、この場合、回転刃(4)の倒伏可能な方向も反対にする必要がある。
【0057】
圧縮材料(12)は回転刃(4)に削り取られることにより、圧縮状態を解かれ柔らかな綿状に変化して回転刃ケース(2)内を通り、下部開口部(15)から分離した材料(14)として排出される。
【0058】
これらの行程を連続的に繰り返すので、圧縮材料(12)を細断、軟らかく分離した材料(14)を効率良く作ることが出来る。
【0059】
加えて、投入口(11)に圧縮材料(12)を次々投入すれば、さらに効率の良い作業が行なえるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の分離装置を、作業中の状態を上方から見た断面図。
【図2】本発明の分離装置を、作業前の状態を側方から見た断面図。
【図3】本発明の分離装置を、作業中の状態を側方から見た断面図。
【図4】本発明の分離装置を、作業中の状態を側方から拡大して見た断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 フレーム
2 回転刃ケース
3 回転軸
4 回転刃
5 被動プーリ
6 刃先円直径
7 格子
8 原動機
9 駆動プーリ
10 ベルト
11 投入口
12 圧縮材料
13 残材部分
14 分離した材料
15 開口部
16 突き出し長さ
17 回転方向
18 回転刃ホルダー
19 倒伏位置
20 ピン
21 断面寸法
22 倒伏突き出し長さ
23 細断前の材料
24 細断後の材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃の外径よりも小径位置に、被加工材料の供給を制限する複数本の円弧状の格子を設け、回転刃により植物圧縮梱包品、及び固形材料を細断する分離装置。
【請求項2】
回転刃を反回転方向に倒伏自在に取り付けた、請求項1記載の植物圧縮梱包品、及び固形材料の分離装置。
【請求項3】
請求項1に加えて、細断される被加工材料の断面寸法よりも、大きな回転径を有する回転刃を用いた、請求項1記載の植物圧縮梱包品、及び固形材料の分離装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃の外径よりも小径位置に、被加工材料の供給を制限する複数本の円弧状の格子を設け、回転刃により植物圧縮梱包品を細断する分離装置。
【請求項2】
回転刃を反回転方向に倒伏自在に取り付けた、請求項1記載の植物圧縮梱包品の分離装置。
【請求項3】
細断される被加工材料の断面寸法よりも、大きな回転径を有する回転刃を用いた、請求項1記載の植物圧縮梱包品の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−326425(P2006−326425A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150762(P2005−150762)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(390038977)株式会社ササオカ (9)
【出願人】(505191021)株式会社 グリーンテクノ (1)
【Fターム(参考)】