説明

植物性残渣油混合低炭素化石燃料

【課題】本発明は、本来、産業廃棄物として処分されていた残渣油を、A重油をはじめとする化石燃料に混合させ、如何にしてCO2発生量を削減する低炭素化石燃料が得られるかということである。
【解決手段】植物性残渣油を濾過し、固形不純物を除去・濾過後の残渣油の容量が10〜50%含むようにA重油に対し混合し、界面活性剤や乳化剤等の添加剤の介在なしに市販の混合槽で乳化しないようにやわらかく撹拌混合すれば分離することなく安定的な状態を維持し、且つ、A重油1号のJIS規格に適合した低炭素化石燃料が得られること見出した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用植物油の製造過程で副生する残渣油をA重油や灯油等の化石燃料に混合し、有用な低炭素化石燃料にしようとするものである。
【背景技術】
【0002】
菜種油や大豆油や米油等の食用植物油脂の製造において、これらの植物油は非可食成分が多いため、精製過程で多くの油脂類が副生する。副産物として薬品や化粧品のの原料に転用できるものを除き、製品や原料に転用できない非食用植物性残渣油(以下、残渣油と略記)は産業廃棄物として処分していた。
【0003】
また、一部の米油製造メーカーにおいては、米油の精製過程で副生した残渣油を洗浄処理をし、ボイラー用A重油の代替燃料として使用しているものの、A重油に比べカロリーが低く、燃焼効率も格段と低下していると思われる。また、洗浄過程で発生する排水は産業廃棄物として適切な処理が必要で、経済性にも問題がある。
【0004】
特許文献1には、食用として繰り返し使用した植物油廃油又は新規植物油を化石燃料と混合した低炭素化石燃料が記載されている。
【0005】
特許文献1には、植物油廃油又は新規植物油と、化石燃料の混合は乳化状に撹拌混合をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】 特開2009−7387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本来、産業廃棄物として処分されていた残渣油をA重油をはじめとする化石燃料に混合させ、如何にしてCO2発生量を削減する低炭素化石燃料が得られるかということである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここにおいて、本発明者は残渣油を濾過し、固形不純物を除去し、濾過後の残渣油の容量が10〜50%含むようにA重油に対し混合し、界面活性剤や乳化剤等の添加剤の介在なしに市販の混合槽で乳化しないようにやわらかく撹拌混合すれば分離することなく安定的な状態を維持し、且つ、A重油1号のJIS規格に適合した低炭素化石燃料が得られること見出した。
【0008】
このようにして得られた植物性残渣油混合低炭素化石燃料は従来の化石燃料の代替品として広範囲の用途が期待できるのであるが、特にA重油と混合した植物性残渣油混合低炭素化石燃料(以下、低炭素A重油と略記)は、蒸気もしくは温水ボイラー等の重油燃焼炉用の燃料としての用途を確立すべく当該残渣油の好適な配合割合を検討した。その結果、当該残渣油の混合割合を、製品中の容量が10〜50%としておくと好適であり、特に、容量が25%とした場合、重油燃焼炉の燃焼効率が優秀であり、従来のA重油に比べ、燃費が向上し、且つ、炉内の煤が低減することを見出した。
【0009】
ここで残渣油を定義するが、食用植物油脂の精製過程で、搾油された原油を脱酸し副生した油滓を分解して得られるダーク油や、脱酸後に脱蝋→脱色→脱臭工程を経て副生したガス油やスカム油、また、脱臭工程で蒸留後、ドレンに残留した脱臭ドレン油をさす。(図1)
【0010】
また、化石燃料とは、鉱物資源の一種である原油を精製し製造された炭化水素を主成分として、他に少量の硫黄・酸素・窒素などさまざまな物質を含む液状の油である。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、当該残渣油をA重油に混合し、その際に好適な混合割合を考慮した結果、植物性残渣油混合による悪影響は認められず、産業廃棄物としての残渣油が有効利用されることになり、且つ、植物由来であり、カーボンニュートラルであることから、CO2発生量を削減する低炭素化石燃料として、重油燃焼炉用燃料をはじめ広範囲の用途が期待できる有用な低炭素A重油が得られた。また、燃焼効率もA重油に比べ優秀であり、A重油の消費を押さえる省エネルギー燃料である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の精製工程フロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
残渣油とA重油とからなり、残渣油を濾過し固形不純物を除去してから、残渣油容量を10〜50%含むように、A重油と混合し、界面活性剤や乳化剤等の添加剤を添加することなく、市販の混合槽で、乳化させることなくやわらかい撹拌混合すれば、分離することのない安定的な状態を維持したA重油1号のJIS規格に適合した低炭素A重油が得られる。
【0014】
本発明の植物性残渣油混合低炭素化石燃料(低炭素A重油)の性状分析を専門の検定機関(日本海事検定協会)に依頼した試験結果と市販のA重油1号のJIS規格の品質規定値を表1に示しておく。
【0015】
【表1】

【実施例】
【0016】
実際に蒸気ボイラー(ミウラZボイラー EX750)での燃焼テストを行ったデータを表2、表3に示しておく。
なお、蒸気ボイラーの設定条件は、以下の通り。
▲1▼空気口…低燃焼時1.5、高燃焼時5
▲2▼蒸気…蒸気配管バルブを常時8分の1を閉口
▲3▼設定…サーモスタッドを0.5気圧で燃焼停止、0.3気圧で燃焼
【0017】
【表2】

【0018】
空気量、油圧などすべて同じ条件にして燃焼テストを行った結果、実質燃焼時間がA重油1号で1878秒に対し、低炭素A重油では1665秒と時間にして213秒、比率では11.3%の低炭素A重油の方が時間が短くなった。着火回数はともに18回で同じであった。油の使用量ではA重油1号が12.75Lに対し、植物油混では11.9Lと0.85L比率にして6.7%低炭素A重油の方が使用量が少なくなった。実質燃焼時間を油の使用量で割り、1秒当りの使用量をもとめた結果、A重油1号は0.0067L/秒に対し、低炭素A重油は0.0071L/秒と0.0004L/秒A重油の方が少なかった。水の蒸発に伴い給水される回数はA重油1号が10回で、低炭素A重油は11回と1回多く行った。
この結果、低炭素A重油はA重油1号よりも若干流量は多いものの、ボイラーでの燃焼がA重油1号よりも良いので、蒸気を作る時間が短くなりそれに伴い油の使用量も少なくなるという事が考えられる。また着火回数から見てともに18回づつだが、A重油1号では18回目は0.5気圧まで燃焼しているのに対し、低炭素A重油では18回目途中でテスト時間終了で燃焼を終わらせている。この結果、低炭素A重油の方が、保温力にも優れていると思われる。給水回数から見て、低炭素A重油の方が1回多いので、蒸気量も低炭素A重油の方が多いと考えられる。
【0019】
【表3】

【0020】
植物残渣油混合重油の植物残渣油混合割合を5%〜55%の間で5%刻みで実施した蒸気ボイラー(ミウラZボイラー EX750)での燃焼データを表3に示しておく。設定条件は表2のデータ収集時と同条件で使用量を計測した結果、混合割合が15%までは緩やかに使用量が減り、20%から大きく使用量が減る。25%でピークとなり、30%では、使用量がもどる傾向が現れる。30%を超えると空気調整等のボイラー機器の調整なしには正常な燃焼はしない。表3において、35%〜50%のデータは機器調整を実施して得たデータである。また、混合割合が55%では、火炎が不安定になり、機器の調整を実施しても不着火や失火が生じる。以上のことから、植物残渣油の混合割合は10%〜50%で使用することができ、20%〜30%の範囲で混合するのが効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
年間、相当な量を産業廃棄物として処分されている残渣油をA重油をはじめとする化石燃料と混合して得られた低炭素化石燃料のうち、特に、A重油1号と混合し得られた低炭素A重油は、従来のA重油1号の燃焼性能を上回るだけでなく、各種産業界におけるA重油使用量を削減でき、且つ、残渣油が植物由来であることから、混合した残渣油の質量%分のCO2がゼロカウント(カーボンニュートラル)となり、地球温暖化防止に大きく貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用植物油脂の製造過程で副生する残渣油を質量10%〜50%の範囲で化石燃料と混合させて得られる植物性残渣油混合低炭素化石燃料。
【請求項2】
残渣油は、植物油脂の精製過程で、搾油された原油を脱酸し副生した油滓を分解して得られるダーク油や、脱酸後に脱蝋、脱色、脱臭工程を経て副生したガス油やスカム油、また、脱臭工程で蒸留後、ドレンに残留した脱臭ドレン油である請求項1に記載の植物性残渣油混合低炭素化石燃料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−241366(P2011−241366A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125191(P2010−125191)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510152149)
【Fターム(参考)】