説明

植物成育用成形体

【課題】形態安定性にすぐれ、土地に植える際にも機械でのハンドリングがしやすく、また、苗を長期間安定に保存できる新たな苗木成育用成形体の提供を課題とする。
【解決手段】少なくとも古紙および肥料を含有してなる中空筒状の苗木成育用成形体であって、成形体が不織布で被覆されていることを特徴とする苗木成育用成形体の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再利用が求められている廃棄物である、古紙の利用に関するものであり、古紙の成形体を不織布で被覆した植物成育用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
古紙(古新聞紙、古雑誌、古段ボール、古本、使用済みコピー用紙等)は従来トイレットペーパー、ティッシュ、紙タオル、段ボール等に再生されてきたが、古紙を繰り返し製紙原料として使用するには製法上や価格上の限界があること(例えば、現状の技術で同じ白さの紙を古紙原料で製造するとパルプものより価格が高くなる)、包装の簡素化で段ボールの生産が伸び悩んでいること、事業系ごみが有料化されたことにより事務所などから大量の古紙が市場に流れ込んできたこと、自治体が古紙のリサイクルを熱心に進めていることなどから、供給が需要を大幅に上回っている。
また、一方古紙の焼却は炭酸ガスの排出を増大させ、またダイオキシン汚染等から法規制を受ける。
したがって、古紙の新たな利用法が種々検討されており、例えば古紙とフライアッシュまたはクリンカアッシュを含有する植物成育用成形体として特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3581557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の植物成育用成形体には次のような問題点があった。すなわち、古紙で出来ているため、水分を含むと崩れやすく、苗木を植えて、水やりをした場合には、成形体が崩れてしまう。また、苗木を輸送する際にも形態の安定性が保てない、土地に植える際にも、機械でのハンドリングが出来ないという問題点があった。また、これを解決するために、市販されているようなプラスチックのポットを併せて利用した場合には、形態の安定性は保てるが、苗木のままで保管する期間によっては苗の根が成長しすぎてポット内を回りすぎ、苗自体が衰弱してしまうという問題があった。
本発明は、上記とは異なる新たな古紙を再利用した植物成育用成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、驚くべきことに少なくとも古紙および肥料を含有してなる中空筒状の苗木成育用成形体を不織布で被覆することによって、上記問題点をすべて解決することができ、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
〔1〕少なくとも古紙および肥料を含有してなる中空筒状の苗木成育用成形体であって、成形体が不織布で被覆されていることを特徴とする苗木成育用成形体。
〔2〕さらに、鉄鋼スラグを含有する前記〔1〕に記載の苗木成育用成形体。
〔3〕鉄鋼スラグと古紙の重量比が、鉄鋼スラグ:古紙が4:6〜7:3であり、水の含有量が10重量%以下である前記〔1〕または〔2〕に記載の苗木成育用成形体。
〔4〕さらに、フライアッシュまたはクリンカアッシュを含有する前記〔1〕に記載の苗木成育用成形体。
〔5〕フライアッシュまたはクリンカアッシュと古紙の重量比が、フライアッシュまたはクリンカアッシュ:古紙が3:7〜7:3であり、水の含有量が10重量%以下である前記〔1〕または〔4〕に記載の苗木成育用成形体。
〔6〕肥料の含有量が古紙1重量部に対して0重量部より大で20重量部以下である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
〔7〕筒状の形状が、円筒である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
〔8〕筒状の形状が、四角柱である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
〔9〕成形体が、複数に分割されている前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体の中空部分に苗木を配置し、一定期間保存することを特徴とする山出し苗の長期保存安定化方法。
〔11〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の苗木成育用成形体の中空部分に苗木を配置し、一定期間養苗した後、植栽予定地に植栽し苗木を成育させることを特徴とする苗木の植樹方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、古紙を含む成形体であっても、成形体が崩れず、また、苗木を輸送する際にも形態の安定性を保つことができる。また、土地に植える際(植栽時)にも、機械でのハンドリングが容易に出来る。さらにまた、苗木のままで長期間保管しても、苗木の根が成長しすぎることがなく、水遣(や)りのみで、苗木の成長(状態)を維持するこができる。従って、苗木を出荷する時期と植栽時期を自由にコントロールすることができるという非常に大きな効果をもたらす。青少年の環境教育の面においても、夏季の条件下では、今まで不可能であった夏休み期間中の植栽が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の成形体に植物苗を植えて6ヶ月経過したときの根系観察結果を示す写真である。(a)根系、(b)植物全体
【図2】従来のビニールポットに植物苗を植えて6ヶ月経過したときの根系観察結果を示す写真である。
【図3−1】不織布で被覆した成形体(本発明)と被覆しない成形体に水を当てた場合の変化を示す写真である。(a)0分後、(b)10分後、(c)30分後。
【図3−2】不織布で被覆した成形体(本発明)と被覆しない成形体に水を当てた場合の変化を示す写真である。(d)60分後、(e)120分後。
【図4−1】鉄鋼スラグを古紙に比率を変えて混合した場合の植物の生長促進効果を試験した結果を示す図である。(a)は鉄鋼スラグを古紙に混合した試験結果である。上段は観察結果を示す写真であり、下段は成長量(mm)の測定結果を示すグラフである。
【図4−2】クリンカアッシュを古紙に比率を変えて混合した場合の植物の生長促進効果を試験した結果を示す図である。(b)はクリンカアッシュを古紙に混合した試験結果である。上段は観察結果を示す写真であり、下段は成長量(mm)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する古紙は古新聞紙、古雑誌(利用に供された週刊誌、コミック誌、月刊誌等)、古段ボール、古本、使用済みコピー用紙等を包含する。本発明で使用する古紙はさらに印刷・製本業における紙廃棄物、紙・パルプ製造業における紙もしくはセルロース含有汚泥をも包含するものとする。
【0009】
本発明で使用する不織布は、その成形体の形態を安定して保持できるものであればいずれでもよく、成形体が水分を含んだ際、あるいは乾燥した状態であっても機械等により土地への植え込みを行う際に成形体を維持できるものであることが必要である。また、不織布は成形体の形態保持機能以外に、苗(および苗木)を成形体の中空部分に配置して一定期間保存する際に酸素を透過させることで、苗(および苗木)の過度な生育を抑え、根の成長を抑制するという苗の維持機能をも担うことになる。このような性質を有するものであればいずれでもよく、耐久性は1年以上あることが望ましく、2年以上あることがさらに望ましい。また、本発明の成形体は土中に埋められて用いられるため、対環境性の意味から、土壌中で分解し、土に同化するものが望ましい。このような性質を有する不織布はすでに市販されているものもあることから、これを用いればよい。
【0010】
古紙以外に成形体に含有させる成分としては、肥料、鉄鋼スラグ、フライアッシュ、クリンカーアッシュなどが挙げられる。
【0011】
本発明で使用する肥料は特に制限されず、市販の肥料のいずれをも包含する。すなわち、植物に養分を与えるために土壌に施す物質であれば、成分(窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、複合肥料等)、物理的・化学的性質(酸性、中性またはアルカリ性肥料、無機質または有機質肥料、水溶性または水難溶性肥料、濃厚肥料等)、施肥時期(基肥、追肥等)、肥効速度(速効性または遅効性肥料)等を問わない。本発明で使用する肥料はさらに生ごみ、落ち葉、下水処理場から生じる活性汚泥等から製造した堆肥、腐葉土をも包含する。
本発明で使用する樹木の苗、草もしくは樹木の種子は特に制限されず、例えば、野菜、草花、芝草、花木、植林用の樹木、観葉植物等の種子を用いることができる。
本発明で使用する水は特に制限されず、水道水、地下水、河川・湖沼の水等を使用でき、また軟水、硬水も問わない。
【0012】
鉄鋼スラグは、銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分が、副原料の石灰石やコークス中の灰分と一緒に分離回収された高炉スラグを冷却して得られたものをいう。高炉スラグは天然の岩石に類似した成分を有し、銑鉄1t当たり約290kg生成します。高炉から取り出されたばかりのスラグは約1,500℃の溶融状態ですが、冷却の方法によって、粒状のものと岩石状のものがある。本発明で用いる鉄鋼スラグは、粒状のものが望ましく、岩石状あるいは粒状のものでも粒径が大きい場合には粉砕するなどして用いることが望ましい。
【0013】
フライアッシュ、クリンカッシュは、火力発電のためにまたはビル等の暖房のためにボイラー等で石炭や石油を燃焼させたときに生じる灰を包含するが、より狭義には主として火力発電所で発電のために石炭や石油を燃焼させたときに生じる灰、特に煙道ガス中の細かい灰を包含し、さらに狭義にはJIS A 6201(1958)に規定されるものを包含するものとする。JIS A 6201によるとフライアッシュ、クリンカアッシュは微粉炭燃焼ボイラーから集塵機で採取する微小な灰の粒子であって、シリカ45%以上、湿分1%以下、強熱減量5%以下、比表面積2700cm2/g以上、比重1.95以上、44μ標準篩いを75%以上が通過するものと規定されている。本発明で使用するフライアッシュ、クリンカッシュは上記のいずれであっても良いが、狭義になるほど好ましい。
【0014】
本発明の成形体の製造方法については特に制限はないが、通常、古紙、鉄鋼スラグ、フライアッシュまたはクリンカアッシュおよび水を混合し、必要に応じ脱水後、所望の形状に成形し、ついで乾燥して得ることができる。
各成分の使用量は乾燥物が前記した成分比率になるようにすれば良いが、混合の効率や容易性を考慮して水はかなり多めに使用するのが良い。
混合に先立ち、古紙は、それから異物(例えば雑誌等のホッチキス(ステンプル)針等の金属等)を除き、通常5cm以下、特に2cm以下の幅に切断するのが好ましい。切断幅は狭ければ狭い方が混合効率は良好である。各成分の混合順序についても特に制限はなく、全成分を一度に混合しても良いし、例えば古紙と水とを混合しスラリー化した後に鉄鋼スラグ又はフライアッシュを加えても良い。
混合は通常単なる混合や混練によって行われる。
【0015】
本発明の成形体の製造方法のうち、古紙、水、肥料、必要に応じて鉄鋼スラグ、フライアッシュまたはクリンカアッシュを混合して、スラリーとした後、スラリーをシート状に成形する場合について以下説明する。シートの厚さは、乾燥後の厚さとして0.1〜1cmであることが好ましい。シートの形状・大きさには全く制限はなく、需要に合わせて任意の形状・大きさとすることができる。このようにして得られたシートを中空円筒状に成形し、乾燥することによって本発明の成形体を得ることができる。
乾燥温度および乾燥方法には特に制限はなく、例えば、常温から150℃の温度範囲で、送風乾燥、加熱乾燥、自然乾燥等によって行うことができる。なお、上記はシート成形後に、中空円筒状に成形したが、前記スラリーを直接所望形状の型に流し込み、乾燥して中空筒状に成形してももちろんよい。
【0016】
本発明の成形体は、その表面が不織布で被覆されているため、形状が安定的に保持され、保存可能な期間に特に制限はなく、数年以上も保存しておくことができる。使用時には、十分に水分を吸収させてから用いる必要があり、成形体に苗を配置し、あるいは水分を吸収させた成形体に苗を植え、必要に応じて土壌その他の成分を添加して用いることができる。
このようにして得られた筒状の成形体は、出荷まで室内又は室外で保管される。保管期間は数ヶ月〜2年程度まで可能であり、この間、水やり、光照射等の植物生育条件下におくことが望ましい。
そして、保管後、移動して、いよいよ植栽予定地に植える場合は、土中に穴を掘り、成形体を立てて筒の頂部を土地の面と同じ程度として埋めることが考えられる。植え込みには、人手のほか、機械による操作も可能である。
【0017】
次に、成形体における各成分の使用比率に関しては、本発明の成形体が肥料を含有する場合、古紙1重量部に対し、鉄鋼スラグ、フライアッシュ、またはクリンカアッシュ1〜10重量部および肥料0重量部より大で20重量部以下を含有し、水の含有量がシート重量の10重量%以下であることが好ましく、古紙1重量部に対し、鉄鋼スラグ、フライアッシュまたはクリンカアッシュ5〜10重量部および肥料1〜5重量部を含有し、水の含有量が成形体重量の10重量%以下、特に6重量%以下であることがさらに好ましい。古紙1重量に対する鉄鋼スラグ、フライアッシュまたはクリンカアッシュの割合が1重量部未満であると保水性および遮光性が不十分となる恐れがあり、10重量部を超えると強度不足で取扱いが困難となる恐れがある。また、古紙が1重量に対する肥料の割合が20重量部を超えると強度不足で取扱いが困難となる恐れがある。草木を成育させる観点から、古紙1重量部に対する肥料の割合は1重量部以上であることが好ましい。また、成形体中の水の含有量が成形体重量の10重量%を超えると強度不足で取扱いが困難となる恐れがある。
ここで、古紙のみではなく、無機質素材として鉄鋼スラッグ、フライアッシュまたはクリンカアッシュを添加するのは、古紙のみでは植栽後、古紙が腐朽し植え穴に空隙が生じるところ、これを防止する為に無機質を添加する。なお、これら無機質素材の特徴は(i)水分条件下では固化剤となる(ii)肥料効果がある(iii)原料が高温材料のためバクテリア、シストなどの生物群不含有であること、が主である。このため2年にわたる長期育苗が実現可能と考えられる。
【0018】
成形体の形状・大きさには全く制限はなく、需要に合わせて任意の形状・大きさとすることができる。例えば、苗を配置する中空部分があれば、どのような筒形状でもよく、円柱、四角柱、三角柱などいずれでもよい。また、中空の形状と筒の形状が異なるものであってもよい。例えば、四角柱の内部が円筒でくりぬかれている場合なども本発明の範囲である。角柱、四角柱であれば、多数をダンボール等に梱包する場合に効率がよいというメリットがある。また、成形体は長手方向に複数に分割されていてもよい。分割されていると、成形体の中空部分が例え狭くても、苗を配置するのに都合がよいからである。すなわち、中空部分と苗の太さ・長さの関係から、苗を中空部分の奥まで入れにくい場合があるが、成形体が長手方向(苗の生長方向)に分割されたものであれば、苗を配置後、分割片と分割片を合わせることで苗を配置した成形体を簡単に得ることができる。
【0019】
成形体の中空部分に苗を配置する場合に、その中空部分の空間には、適宜土壌や必要な成分を添加することができる。また、土壌の代わりに、成形体と同じ成分を、水に溶かしてこれを中空部分に詰めることもできる。
【実施例】
【0020】
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。
〔試験例1〕成形体の作製
(1)成形体(A)の作製
ホッチキス針等の異物を除いた古雑誌10重量部を0.2cm幅に切断し、ミキサーに入れ、肥料2重量部、水500重量部を加え、羽根の高速回転により古雑誌をスラリー状にした。生じたスラリーをステンレス金網で脱水し、シート状に成形し、ついで110℃で熱風乾燥し、ついで切断して縦12cm、横15cm、厚さ約0.2cmのシートとした。これらのシートの水含量は約3重量%であった。これらのシートを巻いてロール状とし、直径10cm、高さ20cmの成形体とした。これに、市販の不織布により成形体全体を覆うように巻きつけ、本発明の成形体とした(成形体A)。
(2)成形体(B)の作製
上記成形体(A)の作製方法におけるスラリーにクリンカアッシュ(常磐火力産業株式会社製)50重量部を加えた以外は、同じ方法により成形体を作製した(成形体B)。
(3)成形体(C)の作製
上記成形体(B)のクリンカアッシュを鉄鋼スラグに変えた以外は同じ方法により成形体を作製した(成形体C)。
【0021】
〔実施例1〕苗木の保存試験
(1)苗木の生産
試験例1で得られた成形体AにHopea odolata(熱帯材の1種)の苗を植え、試験に供した。
(2)試験方法
水のみをやりながら室温下、太陽光のあたる実験室内で保管した。
(3)結果及び考察
本発明の成形体は、6ヶ月経過しても元の形状を保持していた(図1(b))。まず、本成形体の不織布より伸長した苗の根系は大気中に露出、乾燥のため外側の成長が制限された結果、6ヶ月という長期間にわたり、生育状態が維持されていることが観察された。さらに、成形体内部では適正な水分環境のため根系密度が上昇していた(図1(a))。根系密度は同等でも従来のビニールポットでは活着率向上に貢献する根系は少なく、根系は行き場をなくした状態であるのに対し(図2)、本成形体では活着率向上に貢献する根系が多くなる(図1(a))。
【0022】
〔実施例2〕成形体の形状安定性試験
(1)試験方法
本発明の成形体(A)及び、不織布を外し成形体の上端に平均16ml/cm2・分の水に当て、0分後、10分後、30分後、60分後、120分後の各成形体の状態変化を観察した。
(2)試験結果
結果を図3(a)〜(e)に示す。
不織布で被覆されている本発明の成形体は、120分後(図3(e))も0分後(図3(a))と同じ形態を維持していたが、不織布を外した成形体は、10分後(図3(b))からすでに形態がくずれ、120分後には、成形体の高さが約70%位に低下した。
【0023】
〔実施例3〕植物に対する鉄鋼スラグ、クリンカアッシュの生長促進効果確認試験
(1)試験方法
(i)成形体基材の調整方法
円筒ガラス容器に、成形体基材Bの調整方法に従い、鉄鋼スラグ:古紙が0:10、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、10:0となるように、鉄鋼スラグ、古紙、水を混合したスラリーを30ml添加して、本試験の成形体基材を得た。また、鉄鋼スラグをクリンカアッシュに代えた培養体も同様に作成した。
(ii)上記(i)で得られた成形体に、シバを播種し、11日後、成長の様子を観察した。
(iii)成長量の測定方法
10個体について地際から葉端までの長さの平均を求めた。
(2)試験結果
シバの成長の観察写真(図上段)と成長量測定結果(図下段)を図4(a)〜(b)に示す。
これより、鉄鋼スラグのみではシバは生長しないできないが、古紙パルプを加えると生長がよくなり、鉄鋼スラグ:古紙の割合は4:6〜7:3位が適切であることがわかった。また、クリンカアッシュのみでも成長するがそれに古紙を加えると根系環境が改善されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の苗木成育用成形体によれば、苗の出荷時期を自由にコントロールすることができるため、植えようとする土地の気候その他植えるためのさまざまな条件に合わせて、苗にとっても、また苗を植える作業に携わる人間にとっても、最適な環境を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも古紙および肥料を含有してなる中空筒状の苗木成育用成形体であって、成形体が不織布で被覆されていることを特徴とする苗木成育用成形体。
【請求項2】
さらに、鉄鋼スラグを含有する請求項1に記載の苗木成育用成形体。
【請求項3】
鉄鋼スラグと古紙の重量比が、鉄鋼スラグ:古紙が4:6〜7:3であり、水の含有量が10重量%以下である請求項1または2に記載の苗木成育用成形体。
【請求項4】
さらに、フライアッシュまたはクリンカアッシュを含有する請求項1に記載の苗木成育用成形体。
【請求項5】
フライアッシュまたはクリンカアッシュと古紙の重量比が、フライアッシュまたはクリンカアッシュ:古紙が3:7〜7:3であり、水の含有量が10重量%以下である請求項1または4に記載の苗木成育用成形体。
【請求項6】
肥料の含有量が古紙1重量部に対して0重量部より大で20重量部以下である請求項1〜5のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
【請求項7】
筒状の形状が、円筒である請求項1〜6のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
【請求項8】
筒状の形状が、四角柱である請求項1〜5のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
【請求項9】
成形体が、複数に分割されている請求項1〜8のいずれかに記載の苗木成育用成形体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の苗木成育用成形体の中空部分に苗木を配置し、一定期間保存することを特徴とする山出し苗の長期保存安定化方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の苗木成育用成形体の中空部分に苗木を配置し、一定期間養苗した後、植栽予定地に植栽し苗木を成育させることを特徴とする苗木の植樹方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2011−167093(P2011−167093A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31908(P2010−31908)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(596175201)株式会社環境測定サービス (5)
【Fターム(参考)】