説明

植物成長促進剤

【課題】海藻抽出物の効果が長期間持続する植物成長促進剤、及び、該剤を用いた植物成長促進方法を提供する。
【解決手段】海藻抽出物を多孔質担体に噴霧した粒剤では、海藻抽出物の流亡が抑制され、海藻抽出物の放出が長期間持続し、散布が容易になる。その結果、散布のコスト及び労力が削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物成長促進剤及び植物成長促進方法に関する。より詳細には、本発明は海藻抽出物及び多孔質担体を含む植物成長促進剤、及び、該剤を用いた植物成長促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクロニア・マキシマ等の海藻の抽出物がイネや果樹等の植物の成長を促進し、コメや果実の収量の増大及び品質の改善をもたらすことが報告されている(特許文献1を参照)。一般に海藻抽出物は液体であることが多く、乾燥して固化すると活性が失われることがある。そこで使用にあたっては、海藻抽出物を直接散布する方法や水で希釈して散布する方法が採られている。
【0003】
しかし、液剤として使用する場合、剤が流亡しやすく効果の持続が十分でない。そのため、施用を繰り返し行う必要があり、コスト及び労力の面で負担が大きい。さらに、液剤の散布には動力噴霧器が必要とされるが、水稲農家はこの様な噴霧器を持っていないのが現状である。そこで、海藻抽出物の効果が長期間持続し、簡便に散布できる剤形が特に水稲農家から望まれている。
【0004】
農薬及び肥料の分野では、効果を長期間持続させることを目的として、活性成分の放出を制御した徐放製剤の開発が進められている(例えば、特許文献2及び3を参照)。これらの徐放製剤は、ゴム及びワックスの難溶性被膜を形成する方法や活性成分をワックスと共に成型する方法により製造されている。しかし、これらの方法では土壌中にワックス由来の成分が残存することになり、環境保護という点で改善が必要である。
【0005】
そこで、海藻抽出物についても、環境にも配慮した徐放性の剤形が望まれている。
【特許文献1】特開2003-238324号公報
【特許文献2】特開2004-43436号公報
【特許文献3】特開2003-171207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであり、海藻抽出物の効果が長期間持続し環境への負荷が少ない植物成長促進剤、及び該剤を用いた植物成長促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、海藻抽出物及び多孔質
担体を含む植物成長促進剤では長期間効果が持続することを見出し、本発明を完成させた。本発明の植物成長促進剤ではワックスを使用する必要がなく、含浸や噴霧といった簡便な方法で製造できるという利点を有する。さらに、海藻抽出物を粒剤の形態で提供できるため、散粒器により又は手で散布することが可能となる。
【0008】
即ち本発明は、以下のものを提供する。
(1) 海藻抽出物及び多孔質担体を含む植物成長促進剤。
(2) 海藻が褐藻類である、(1)に記載の植物成長促進剤。
(3) 海藻がエクロニア属、アラリア属、ウンダリア属、ラミナリア属、マクロキスチス属、レッソニア属、ネレオキスチス属、アスコフィルム属、フカス属、ドゥルビレア属、サルガッサム属、又はこれらの組み合わせである、(1)に記載の植物成長促進剤。
(4) 使用対象植物が果樹、イネ、葉菜、根菜、果菜、麦類、豆類、芋類、花卉類、樹木、及び芝からなる群より選択される、(1)−(3)の何れかに記載の植物成長促進剤。
(5) 粒剤の形態にある(1)−(4)の何れかに記載の植物成長促進剤。
(6) 海藻抽出物及び多孔質担体を含む組成物を、植物が生育する土壌又は該土壌上の積雪に散布することを含む、植物の成長促進方法。
(7) 使用対象植物が果樹である(6)に記載の成長促進方法。
(8) 海藻抽出物及び多孔質担体を含む組成物を育苗期及び/又は本田期に散布することを含む、水稲の成長促進方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、使用対象植物には、果樹、イネ、葉菜、果菜、根菜、麦類、豆類、イモ類、花卉類、樹木、及び芝が含まれる。成長促進には、農作物の収穫量の増大、及び、収穫物の品質の向上も含まれる。
【0010】
本明細書において、海藻抽出物とは、海藻から分離された組成物を指す。分離方法に特に制限はなく、高圧破砕、冷凍破砕、溶媒抽出、及び薬品による細胞膜溶解等の従来公知の方法が挙げられる。海藻抽出物には、分離操作によって得られた組成物の濃縮物、乾燥物、及び発酵物も含まれる。さらに、海藻を粉砕して粉末としたものも含まれる。海藻抽出物には、海藻に由来する1以上の生理活性物質、それらの塩、又は誘導体が含まれる。
【0011】
高圧破砕及び冷凍破砕では、海藻の細胞壁及び細胞膜を破砕し、濾過して固形分を除去することにより、海藻抽出物を得る。濾過にはフィルター濾過や遠心濾過等の任意の公知の方法を用いることができる。海藻をそのまま圧搾し、液状の抽出物を得てもよい。
【0012】
溶媒抽出には、有機溶媒中に海藻を入れ室温で抽出する方法や、加熱して抽出する方法が挙げられる。抽出後、溶媒を留去してもよく、濾過などの精製や分画操作をさらに行って純度を高めてもよい。
【0013】
薬品による細胞膜溶解では、苛性ソーダ等の強アルカリ剤を用い海藻の細胞壁及び細胞膜を溶解し、酸で中和した後、濾過して固形分を除去する事により、海藻抽出物を得る。濾過には、フィルター濾過や遠心濾過等の任意の公知の方法を用いることができる。
【0014】
海藻としては、褐藻類(Brown algae)(ファエオフィセアエ綱(Phaeophyceae))に属するものを用いることができる。より詳細には、ラミナリアレス目(Laminariales)アラリアシアエ科(Alaraceae)エクロニア属(Ecklonia)、アラリア属(Alaria)及びウンダリア属(Undaria)、同目ラミナリアセアエ科(Laminariaceae)ラミナリア属(Laminaria)、同目レソニアセアエ科(Lessoniaceae)マクロキスチス属(Macrocystis)、レッソニア属(Lessonia)及びネレオキスチス属(Nereocystis)、並びにフカレス目(Fucales)フカセアエ科(Fucaceae)アスコフィルム属(Ascophyllum)及びフカス属(Fucus)、同目(Fucales)ドゥルビラエアセア科(Durvillaeaceae)ドゥルビレア属(Durvillaea)、及び同目(Fucales)サルガッサセアエ科(Sargassaceae)サルガッサム属(Sargassum)に属するものを用いることができる。
【0015】
さらに詳細には、エクロニア・ブックシナリス(Ecklonia buccinalis、別称:エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)、アラリア・エスキュレンタ(Alaria esculenta)、ラミナリア・デジタタ(Laminria digitata)、マクロキスチス・ピリフエラ(Macrocystis pyrifera)、レソニア・フラビカンス(Lessonia flavicans)、レソニア・ニグレッセンス(Lessonia nigrescens)、ネレオキスチス・ルトケナ(Nereocystis luetkeana)、ウンダリア・ピナティフィダ(Undaria pinnatifida)、アスコフィルム・ラエビガタム(Ascophyllum laevigatum、別称:アスコフィルム・ノドサム(Ascophyllum nodosum))、ドゥルビレア・ウチリス(Durvillaea utilis)、ザルガッサム・バシフエルム(Sargassum bacciferum)、フコス・ブェシキュロサス(Fucus vesiculosus)を用いることができる。
【0016】
海藻抽出物は、成長を促進するという点から、植物ホルモン、多糖類、アミノ酸、ミネラル、ビタミン等の生理活性成分及び/又は生理活性補助因子を含有することが好ましい。さらに、生産性の点から、藻体が大きいものが好ましい。かかる観点から、ラミナリアレス目・アラリアシアエ科・エクロニア属に属するエクロニア・ブックシナリス、ラミナリアレス目・レソニアセアエ科・マクロキスチス属に属するマクロキスチス・ピリフエラ、同目・レソニアセアエ科・レソニア属に属するレソニア・フラビカンス及びレソニア・ニグレッセンス、並びにフカレス目・フカセアエ科・アスコフィルム属に属するアスコフィルム・ノドサムが好ましい。
【0017】
本発明の植物促進剤は海藻抽出物及び多孔質担体を含む組成物であり、効果を長期間持続させるため、粒剤であることが好ましい。粒剤は、多孔質担体に海藻抽出物を噴霧、含浸、浸漬、塗布等の任意の公知の手法で添加することにより製造できる。
【0018】
多孔質担体とは、液体を吸収できる能力を有する担体であれば特に制限はなく、細孔中に海藻抽出物を液体のまま吸収して保持できる担体であることが好ましい。多孔質担体中に液体の海藻抽出物を保持することにより、取り扱い及び散布が容易になる。さらに、担体から海藻抽出物が持続的に放出され、流亡が抑制され、効果が長期間保持される。それに加え、本発明の植物促進剤は、ワックスによる被覆工程やワックスとの混練工程無しで簡便に製造できるという利点を有する。
【0019】
多孔質担体は、予め散布に適した形態に成形して海藻抽出物を添加してもよく、海藻抽出物を添加してから成形してもよい。ただし、成形過程で海藻抽出物が変性することを防ぐため、予め成形することが好ましい。ここで、成形には造粒が含まれる。
【0020】
多孔質担体に使用される材料に特に制限はなく、安全性及び価格の面から、Si及び/又はAlを主成分とする材料を用いることができる。Si及び/又はAlの含有量としては、
(換算SiO重量+換算Al重量)/(多孔質材料の重量)
で表される割合が20重量%以上、好ましくは50重量%以上である。ここで換算SiO重量とは、多孔質材料中のSiが全てSiOとして存在したと仮定した場合のSiOの重量を指す。換算Al重量とは、多孔質材料中のAlが全てAlとして存在したと仮定した場合のAlの重量を指す。Si/Al比に特に制限はなく、各種の粉体を利用することができる。
【0021】
Si及びAl以外の含有元素としては、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、例えばNa及びK等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Ti等の遷移金属、炭素、及びリンが挙げられる。
【0022】
多孔質担体の材料として、例えばゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、白土、アタパルジャイト、パーミキュライト、セライト、ハイドロタルサイト、及び活性炭が挙げられる。これらの中でも、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、及びシリカゲルが好ましい。植物性の粉体、例えば木質粉、籾殻、オガクズ等を使用することもできる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ゼオライトを使用する場合、その種類に特に制限はなく、X型、Y型、A型、モルデナイト、ZSM−5等の各種のゼオライトを使用することができ、Si及び/又はAlの一部をTi、Gaなどの元素で置換してもよい。また、HがNaやKといったカチオンで交換された材料を使用してもよい。さらに、アルミノリン酸塩(ALPO)やシリカアルミノリン酸塩(SAPO)といったゼオライト類縁体も用いることができる。
【0024】
モンモリロナイトとしては各種の置換体及び付加体を使用することができる。例えば、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト、バイデライト、ノントロン石、サポー石、ヘクトライト、及びソーコナイトである。モンモリロナイト中のカチオンとしてはK、Na、及びCa2+が挙げられる。モンモリロナイト以外の各種の粘土鉱物も使用することができる。
【0025】
多孔質材料の細孔構造に特に制限はなく、均一な細孔構造を有するマイクロポーラス及びメソポーラス材料であってもよく、シリカゲルといったアモルファス状の材料であってもよい。また、ゼオライトといった1次元、2次元、又は3次元のチャンネルを持つ材料であってもよく、モンモリロナイトといった層状構造の材料であってもよい。
【0026】
多孔質担体として、天然鉱物由来の担体を使用してもよく、合成品由来の担体を使用してもよい。経済的な観点からは、ゼオライト、モンモリロナイト、及び珪藻土については天然鉱物由来のものが好ましいが、合成ゼオライトを用いることもできる。シリカゲルについては、入手の容易さや性能面から合成品が好ましい。
【0027】
多孔質担体は、各種の材料を従来公知の方法で粉砕することにより所望の形状に成形することができる。例えば、乾式粉砕ではボールミルやジェットミルを使用することができ、湿式粉砕ではダイノーミルを使用することができる。また、市販の粉砕粉末を使用することもできる。粉砕して得られた粉末を造粒し、所望の形状にしてもよい。
【0028】
本発明の植物成長促進剤の平均粒径は、多孔質担体の平均粒径を反映する。該剤の平均粒径は、散布できれば特に制限はなく、散布態様に応じて適宜選択される。例えば散粒機により散布する場合、平均粒径は0.1mm以上、好ましくは0.8mm以上であり、20mm以下、好ましくは5.0mm以下である。人の手で散布する場合には、2mm以上、好ましくは5mm以上であり、10cm以下、好ましくは5cm以下である。
【0029】
使用される担体の比表面積は、50m/g以上、好ましくは100m/g以上、さらに好ましくは150m/g以上である。比表面積が小さすぎると、海藻抽出物の保持量が十分でないことがある。比表面積の上限に特に制限はないが、10000m/g以下、好ましくは5000m/g以下、さらに好ましくは2000m/g以下の担体は容易に入手できる。なお上記の比表面積は、BET法により窒素吸着を用いて測定される比表面積の値である。
【0030】
(海藻抽出物の重量)/(海藻抽出物の重量+多孔質担体の総重量)×100 (%)
で表される海藻抽出物の割合は、5重量%以上、好ましくは30重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。上記範囲未満では植物成長促進剤の散布量が増大し、上記範囲を超えると海藻抽出物が粒剤から漏出し、粒剤が散粒機の壁面に付着しやすくなる。なお、接触した物体に海藻抽出物が付着する半湿状の粒剤であっても、散布作業に支障がなければ本発明の用途に供することができる。
【0031】
本発明の植物促進剤は、多孔質担体及び海藻抽出物以外の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、デンプン、セルロース及びその誘導体、アラビアガム等の多糖類;クエン酸、リンゴ酸等の有機酸;カゼイン;ゼラチン;グルコース;スクロース;アミノ酸;等が挙げられる。ただし、ワックス類を含有しないことが好ましい。
【0032】
本発明の植物促進剤は、多量の水に曝される場合であっても液剤と比較して持続的な効果をもたらし、海藻抽出物の使用量を削減できるという利点を有する。例えば漏水田に使用する場合でも、本発明の植物促進剤では安定した効果が得られる。さらに、施用時に湛水状態でなくても後に湛水状態になると海藻抽出物が放出されるため、本発明の植物促進剤を予め施用しておくこともできる。例えば、果樹の場合には融雪前に雪上に散布しておくと、融雪とともに海藻抽出物が土壌に浸透する。このような使用態様では、液剤を散布する場合と比較して施用可能な時期が広がり、水で希釈する工程が省略できるという利点がある。また、イチゴやトマト等の農作物では、株元の表土に散布し又は鋤込むことにより、海藻抽出物の効果を確実なものとすることができる。この様に、本発明の植物成長促進剤を植物の生育する土壌又はその上の積雪に散布すると、その後の降雨や融雪により海藻抽出物が適宜放出される。その結果、液剤として散布する労力が削減される。
【0033】
本発明の植物促進剤を施用する時期及び回数は、植物の種類、海藻抽出物の種類、植物促進剤中の海藻抽出物の含有量、植物の生育条件等の因子に応じて適宜選択される。以下、海藻抽出物の含有量((海藻抽出物の重量)/(植物促進剤の重量)×100(%))が10〜50重量%であり、平均粒径が0.8mm〜6.0mmである剤を例に説明する。
【0034】
水稲に使用する場合、該剤を育苗期及び/又は本田期で使用する。育苗期中の何れの時期に使用してもよく、例えば田植の3〜1日前に使用してもよい。一回あたりの使用量は、170〜250個の種が播種された縦30cm×横60cm×深さ5cmの育苗箱1つについて、典型的には50〜60gである。本田期では、例えば田植から50日までの間に、10アールあたり0.5〜2.0kgを散布する。田植から50日以降に、同じ量を繰り返し散布してもよい。果樹に使用する場合、融雪前の雪上に1樹あたり100〜500gを散布する。これらの施用時期及び回数は例示的なものであり、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明が以下の実施例によって限定されるものではない。
<製造例1(海藻抽出物の製造)>
エクロニア・マキシマをセルバースト法により破砕し、濾過して固形物を除去し、海藻抽出物を得た。海藻抽出物の回収率( (得られた海藻抽出物の重量)/(原料から固形分を除いた重量)×100 (%) )は、ほぼ100%であった。得られた海藻抽出物は、1L中以下の成分を含んでいた。なお、セルバースト法とは、高圧を加えて細胞壁及び/又は細胞膜を破砕する方法である。
<製造例2(海藻抽出物の製造)>
アスコフィラム・ノドサムを冷凍粉砕法により破砕し、氷が溶けて水溶液状態になった時点で濾過し、固形物を除去し、海藻抽出物を得た。海藻抽出物の回収率( (得られた海藻抽出物の重量)/(原料から固形分を除いた重量)×100 (%) )は、ほぼ100%であった。
<製造例3(海藻抽出物の製造)>
アスコフィラム・ノドサムを苛性ソーダ液に浸漬し、水溶液状態になった時点で硫酸を加え中和し、濾過し、固形物を除去し、海藻抽出物を得た。海藻抽出物の回収率( (得られた海藻抽出物の重量)/(原料から固形分を除いた重量)×100 (%) )は、ほぼ100%であった。
<製造例4(海藻抽出物の製造)>
マクロキスチス・ピリフエラを冷凍粉砕法により破砕し、氷が溶けて水溶液状態になった時点で濾過し、固形物を除去し、海藻抽出物を得た。海藻抽出物の回収率( (得られた海藻抽出物の重量)/(原料から固形分を除いた重量)×100 (%) )は、ほぼ100%であった。
<製造例5(海藻抽出物の製造)>
レソニア・ニグレッセンスを苛性ソーダ液に浸漬し、溶解した時点で硫酸を加え中和し、濾過し、固形物を除去し、海藻抽出物を得た。海藻抽出物の回収率( (得られた海藻抽出物の重量)/(原料から固形分を除いた重量)×100 (%) )は、ほぼ100%であった。
【0036】
海藻抽出物の成分例 (エクロニア・マキシマ)
表1 有機/無機成分(1L=1000g中の含有量w/w)
【0037】
【表1】

表2 アミノ酸(1L=1000g中の含有量w/w)
【0038】
【表2】

表3 ビタミン(1L=1000g中の含有量w/w)
【0039】
【表3】

表4 植物ホルモン(1L=1000g中の含有量w/w)
【0040】
【表4】

<製造例6(植物成長促進剤の製造)>
製造例1、2、3、4、及び5で製造した海藻抽出物300gをそれぞれゼオライト(日東粉化工業社製:平均粒径0.8〜1.9mm、福島県飯坂町産鉱石を使用)900gに噴霧し、粒剤とした。海藻抽出物の含有量は33.3重量%であった。この粒剤の平均粒径は、0.8〜1.9mmであった。
製造例6で製造した各種粒剤の試料名称
試料A:エクロニア・マキシマの細胞膜を高圧破砕して得た抽出物300gをゼオライト900gに含浸させた剤。
【0041】
試料B:アスコフィラム・ノドサムを冷凍破砕し得た抽出物300gをゼオライト900gに含浸させた剤。
試料C:アスコフィラム・ノドサムを薬品で溶解し得た抽出物300gをゼオライト900gに含浸させた剤。
【0042】
試料D:マクロキスチス・ピリフェラを冷凍破砕し得た抽出物300gをゼオライト900gに含浸させた剤。
試料E:レソニア・ニグレッセンスを薬品で溶解し得た抽出物300gをゼオライト900gに含浸させた剤。
[実施例1(育苗終期のイネ(あきたこまち))]
縦30cm×横60cm×深さ5cmの育苗箱に平均210個の種子を播種し生育した。田植前日(5月21日)に、製造例6で製造した剤をそれぞれ育苗箱20枚に散布した。散布量は、育苗箱1個あたり60gとした。この田植前処理を行った苗は、処理を行わなかった苗と比較して、本田に植え付け後の植傷みが少なく、活着及び分蘖が促進された。
【0043】
田植後の生育状況を表5に示す。本発明の剤を使用することにより、イネの成長が促進されたことがわかる。
【0044】
【表5】

[実施例2(本田期のイネ(あきたこまち))]
田植後30日目(6月21日)に、製造例2で製造した植物成長促進剤を10アールあたり1.2kg散布した。10アールあたりの海藻抽出物の散布量は300gであった。
【0045】
収穫されたコメの特性を表6に示す。本発明の剤を使用することにより、コメの収穫量が増加し品質も向上したことがわかる。
【0046】
【表6】

[実施例3(サクランボ(佐藤錦))]
1樹あたり製造例2で製造した植物成長促進剤を1樹当たり300g、2月中旬に雪上に散布した。収穫された果実の特性を表7に示す。本発明の剤を使用することにより、果実の着色及び糖度が向上することがわかる。
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の植物成長促進剤では、海藻抽出物の効果が長期間持続する。該植物成長促進剤は、海藻抽出物を多孔質担体に添加するという簡便な方法で製造でき、粒剤の形態にあるため、散布も容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻抽出物及び多孔質担体を含む植物成長促進剤。
【請求項2】
海藻が褐藻類である、請求項1に記載の植物成長促進剤。
【請求項3】
海藻がエクロニア属、アラリア属、ウンダリア属、ラミナリア属、マクロキスチス属、レッソニア属、ネレオキスチス属、アスコフィルム属、フカス属、ドゥルビレア属、サルガッサム属、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の植物成長促進剤。
【請求項4】
使用対象植物が果樹、イネ、葉菜、根菜、果菜、麦類、豆類、芋類、花卉類、樹木、及び芝からなる群より選択される、請求項1−3の何れかに記載の植物成長促進剤。
【請求項5】
粒剤の形態にある請求項1−4の何れかに記載の植物成長促進剤。
【請求項6】
海藻抽出物及び多孔質担体を含む組成物を、植物が生育する土壌又は該土壌上の積雪に散布することを含む、植物の成長促進方法。
【請求項7】
使用対象植物が果樹である請求項6に記載の成長促進方法。
【請求項8】
海藻抽出物及び多孔質担体を含む組成物を育苗期及び/又は本田期に散布することを含む、水稲の成長促進方法。

【公開番号】特開2006−176435(P2006−176435A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370878(P2004−370878)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(300012826)ロイヤルインダストリーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】