説明

植物栽培用の照明装置

【課題】照明器をカバー材で覆い、カバー材の内部空間の内外を通気用の開放部で連通させた植物栽培用の照明装置において、該開放部からカバー材の内部空間に小昆虫が侵入するのを防止する。
【解決手段】植物栽培用の照明装置として、光源となる照明器4と、照明器4の上面側の全面を被覆し且つ小昆虫の侵入を阻止し得る性状の被覆材41と、照明器4の下方を覆うように設置された透光性のあるカバー材5とを有している一方、カバー材5は被覆材41に対してカバー材5の内部空間51の内外を連通させる開放部52を設けた状態で設置しているとともに、開放部52の全面にカバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目の通気ネット6を張設して構成していることにより、小昆虫がカバー材5の内部空間51内に侵入するのを確実に阻止し得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物を栽培する際にその植栽植物の上方位置から光を照射するための植物栽培用の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、植物の栽培形態として、ビニールハウスや建物内の栽培室等での室内栽培が普及している。
【0003】
ところで、植物を効率よく生育させるためには、植栽植物に対して十分に照光する(光を照射するという意味)ことが重要であるが、室内栽培においては人口照明(例えば蛍光灯)による照明装置を使用することがある。尚、ビニールハウスでは、昼間は太陽光により採光できるが、日照時間不足等により照光量が不足した場合は人口照明を利用して照光量を補充することが有効である。
【0004】
室内(ビニールハウスや栽培室)で効率よく植栽するには、一般に栽培容器を上下に所定間隔をもって多段状に配置して行われる場合があるが、その場合、各栽培容器に植栽される植物に照光するための照明装置が用いられている。
【0005】
本件出願人は、この種の多段式の栽培装置として、特開2009−34064号公報(特許文献1)に示されるものを既に特許出願している。この既出願の栽培装置では、上下多段状に配置した各栽培容器の上から照明器により照光するようにしているが、各段の照明器は栽培容器に植栽されている植物にかなり近い位置に設置される。尚、この照明器としては、一般的に蛍光灯が使用されているが、この蛍光灯は発熱する性質がある。
【0006】
そして、このように照明器により下段側の植栽植物に直接照光する場合は、該蛍光灯による発熱でその周囲の雰囲気温度が昇温するとともに、該蛍光灯からの放射熱も植物に照射されるので、それらの熱影響によって植物の生育環境が悪くなる(葉焼けが生じて商品価値が低下する)。
【0007】
そこで、上記既出願(特許文献1)の栽培装置では、栽培容器の下面側に照明器(蛍光灯)の下方を覆うようにして透光性のあるカバー材を設置した照明装置を用いている。尚、このカバー材は、熱の発生源である照明器の近傍の内部空間とその外側の空間とを区画して、該内部空間から外側への対流による熱伝達を阻止する(軽減させる)ものである。
【0008】
上記既出願の栽培装置では、上記カバー材で覆われた内部空間と栽培室内とは通気口を介して連通させていて、上記内部空間内に発生する熱を該通気口から栽培室内に放出し得るようにしている(内部空間内が過度に昇温しないようにしている)。尚、この通気口は開口面積が大きいほど暖気放出機能(空気入替え機能)が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−34064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、屋外に建てられたビニールハウス内や建物の栽培室には、蛾や蝿等の小昆虫が入り込んていることが多々ある。又、これらのビニールハウス内や建物の栽培室には、天敵防除や受粉の目的で積極的に有益な昆虫が放たれることがある。
【0011】
ところが、例えば上記特許文献1に示されるようなカバー材付き照明装置を使用した栽培装置では、照明器(蛍光灯)の下方を透光性のあるカバー材(植栽植物の葉焼け防止用)で覆っているとともに、該カバー材の内部空間と室内とを通気口(内部空間内の昇温防止用)で連通させているが、この通気口の開口面積は暖気放出(空気入替え)のためにかなり大きいものである。そして、ビニールハウスや栽培室等の室内に小昆虫がいると、小昆虫は光に集まる習性があるので、該小昆虫が上記通気口からカバー材の内部空間内に侵入して死んでしまうことが多々ある。このように、カバー材の内部空間内で小昆虫が死ぬと、腐敗により衛生面が悪化する一方、その死骸が堆積するとカバー材部分の透光性が悪くなるとともに、死骸掃除が面倒である(掃除がしにくい)という問題があった。又、小昆虫が有益な場合は、死ぬと経済的損失になるという問題もある。
【0012】
そこで、本願発明は、植栽植物の上方から照光するための照明装置として、葉焼け防止用のカバー材付きで且つ該カバー材の内部空間の内外に通気性を持たせるための開放部を設けたものにおいて、該開放部の通気性を確保した上で該開放部からカバー材の内部空間に小昆虫が侵入できないようにすることを主たる目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0014】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、例えばビニールハウスや建物内の栽培室に植栽される植物の上方から該植栽植物に対して照光させるための植物栽培用の照明装置を対象としている。尚、本願発明の名称は「植物栽培用の照明装置」であるが、以下の説明においては、本願発明の名称を単に「照明装置」と表現することがある。
【0015】
そして、本願請求項1の照明装置は、添付図面に例示するように、光源となる照明器4と、該照明器4の上面側の全面を被覆し且つ小昆虫の侵入を阻止し得る性状の被覆材41と、照明器4の下方を覆うように設置された透光性のあるカバー材5とを有している一方、該カバー材5は、上記被覆材41に対して、カバー材5の外縁部53と被覆材41の外縁部42との間にカバー材5の内部空間51の内外を連通させる開放部52を設けた状態で設置しているとともに、上記開放部52の全面に、カバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目の通気ネット6を張設していることを特徴としている。
【0016】
照明器4には例えば直管状の蛍光灯が採用できる。又、この照明器4は複数本(例えば3本)の蛍光灯を並列させた状態で使用できる。尚、この照明器4は、蛍光灯に代えてLED電球を使用してもよい。
【0017】
照明器4の上面側を被覆する被覆材41としては、蛍光灯の上部を被覆する薄い鉄板製の笠(反射板)が採用できる。尚、この被覆材41は、小昆虫の侵入を阻止し得る程度の多数の小孔を散在させたパンチング板であってもよい。
【0018】
カバー材5としては、例えば透明又は半透明のアクリル板(薄板のもの)やフイルム(肉厚のもの)が採用できる。そして、このカバー材5は、照明器4からの光を下方に通過させ得る一方、照明器4で発生する熱が下方に伝達されにくくする機能がある。
【0019】
通気ネット6は、小昆虫が通過できない程度の穴径(例えば直径が3〜5mm程度の網目)のものが採用される。尚、この通気ネット6は、小網目として多数のパンチング穴を設けたものでもよく、本願ではそれらを総称して通気ネット6と表現している。
【0020】
そして、本願請求項1の照明装置では、照明器4の全周囲が、上部の被覆材41と、下部のカバー材5と、被覆材41とカバー材5間の開放部52に張設された通気ネット6とで完全に覆われていて、カバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入できるほどの空間部(通路)は存在しない。
【0021】
ところで、本願発明の背景として次のことがある。即ち、この種の植物栽培用の照明装置は、植栽植物に対してその上部の比較的近い位置から照明器4で光を照射するものである。そして、その場合は、該照明器4からの発熱で植物に悪影響を及ぼすことがあるが(例えば葉焼けが生じる)、それを改善するのに照明器4の下方を透光性のあるカバー材5で覆うことが有効である。即ち、該カバー材5により内部空間51の内外(上下)を区画することで、光はカバー材5を通して下方に照射されるが照明器4からの熱は下方の植栽植物Pに伝わりにくくなる。ところが、このように照明器4の下方をカバー材5で覆うと、カバー材5の内部空間51が照明器4の発熱で昇温するので、該内部空間51を外部(栽培室内)に開放させておく必要がある(上記開放部52を設けておく)。
【0022】
他方、本願の照明装置が適用される植物植栽場所(例えば、ビニールハウスや栽培室等の室内)には、小昆虫(蛾、蝿等)が入り込んでいることが多々ある。又、該栽培用の室内には、天敵防除や受粉の目的で有益な昆虫を放つ場合もある。そして、それらの小昆虫は光に集まる習性があって、上記のように照明器4の下方をカバー材5で覆っていると、小昆虫が上記開放部52からカバー材5の内部空間51に侵入して、該小昆虫が該内部空間51内で死んでしまうことがある。
【0023】
そこで、本願発明では、照明器4の下方をカバー材5で覆ったものにおいて、カバー材5の外縁部53と被覆材41の外縁部41との間に通気用の開放部52を設けているとともに、該開放部52の全面にカバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目の通気ネット6を張設している。
【0024】
このようにカバー材外縁部53と被覆材外縁部42間の開放部52に通気ネット6を張設していると、栽培用の室内に小昆虫が存在していても、該小昆虫がカバー材5の内部空間51に侵入できない。
【0025】
又、上記通気ネット6は、その小網目を通してカバー材5の内部空間51の内外を通気させ得るので、内部空間51内が照明器4の発熱で昇温しても、その暖気を上昇気流として通気ネット6の網目から内部空間51外に放出できる。従って、内部空間51内が過度に昇温することがない。
【0026】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の照明装置において、カバー材5の底板部分に小昆虫が侵入できない程度の大きさの空気導入口5cを設けていることを特徴としている。
【0027】
この空気導入口5cは、カバー材5の内部空間51で発生する昇温空気を上記通気ネット6部分から放出する際に、カバー材5の下面側から内部空間51に外部空気を導入するためのものである。尚、この空気導入口5cは、小昆虫が侵入できない程度の大きさであれば、細幅のスリット状のものでも小径の円形穴でもよい。又、この空気導入口5cは、カバー材5の幅方向中央付近において、カバー材長さ方向に多数個散在させた状態で設けるとよい。
【0028】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の照明装置において、上記通気ネット6から所定間隔を隔てた外側方位置に、上下に所定幅を有したガイド側板7を縦向き姿勢で設置していることを特徴としている。
【0029】
このガイド側板7としては、薄板状のものでも、フイルム状の極薄のものでもよい。
【0030】
この請求項3のように、通気ネット6から所定間隔を隔てた外側方位置にガイド側板7を設けていると、該通気ネット6部分と該ガイド側板7間の空所Sが空気の上昇通路として機能するようになる。つまり、内部空間51内で昇温した空気(暖気)は、軽くなって通気ネット6の小網目を通って通気ネット6部分とガイド側板7間の空所Sを上昇移動するが、そのとき、該空所Sが通気ネット6から放出された暖気の上昇通路として機能するようになる(該暖気を上昇移動させるための促進機能が得られる)。
【0031】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項3の照明装置において、上記ガイド側板7として、上記通気ネット6に対面する側面に光反射機能を付与したものを使用していることを特徴としている。尚、以下の説明では、ガイド側板7における光反射機能を付与した側面を光反射側面71ということがある。
【0032】
ガイド側板7における上記光反射側面71は、例えば光反射効果のある上塗り塗装を施したり反射シートを貼設したりしたものを採用できる。尚、フイルム製のガイド側板7では、該光反射側面71として例えば銀色被膜材をラミネートしたものを採用できる。
【0033】
ところで、この請求項4のガイド側板7付き照明装置は、例えば栽培容器3に植栽されている植物Pの上部にかなり近づけて設置されるが、照明器4からの光は下方ばかりでなく通気ネット6部分を通して側方にも照射される。そして、照明器4からの光が側方に照射しても、その下方に植栽されている植物に直接当たらないので、照明効率が悪い(無駄になる光量が多くなる)という問題がある。
【0034】
そこで、この請求項4の照明装置では、通気ネット6の側方に設置しているガイド側板7の内面に光反射機能を付与している(光反射側面71としている)ことにより、照明器4から側方に照射した光の一部をガイド側板7(光反射側面71)により内方側(照明装置の下方にある植物植栽側)に反射させることができる。
【発明の効果】
【0035】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の照明装置は、光源となる照明器4と、照明器4の上面側の全面を被覆し且つ小昆虫の侵入を阻止し得る性状の被覆材41と、照明器4の下方を覆うように設置された透光性のあるカバー材5とを有している一方、カバー材5は被覆材41に対してカバー材5の内部空間51の内外を連通させる開放部52を設けた状態で設置しているとともに、上記開放部52の全面にカバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目の通気ネット6を張設していることを特徴としている。
【0036】
そして、この請求項1の照明装置は、植栽されている植物の所定上方位置に設置して、照明器4からの光を植栽植物に照射するものであるが、この照明装置には次のような効果がある。
【0037】
(1)照明器4の下方を光透過性のあるカバー材5で被覆しているので、該カバー材5で熱の発生源である照明器4の近傍の内部空間51とその下方の空間(植栽植物付近)とが区画されて両空間での空気対流が阻止され、該内部空間51で発生する熱による植栽植物に対する悪影響(例えば葉焼け)を軽減できる。
【0038】
(2)照明器4によりカバー材5の内部空間51内で発生した熱は、カバー材5の外縁部53と被覆材41の外縁部42との間に設けた開放部52(通気ネット6)から栽培室1内へ放出されるので、カバー材5の内部空間51が過度に昇温することがない。
【0039】
(3)上記開放部52には、その全面に小網目(小昆虫の侵入を阻止し得る)の通気ネット6を張設しているので、該通気ネット6によりカバー材5の内部空間51内に小昆虫が侵入するのを阻止できる。尚、このようにカバー材5の内部空間51への小昆虫の侵入を阻止できるようにすると、小昆虫が上記内部空間51内に侵入して死ぬことによる各種の問題(例えば、死骸腐敗による衛生面が悪化、死骸によるカバー材部分の透光性が悪化、死骸掃除が面倒等)を未然に解消できる。
【0040】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の照明装置において、カバー材5の底板部分に小昆虫が侵入できない程度の大きさの空気導入口5cを設けているので、カバー材5の内部空間51内で昇温した暖気が上記開放部52(通気ネット6部分)から外部に放出される際に空気導入口5cから内部空間51に外部空気を導入できるようになっている。
【0041】
従って、この請求項2の照明装置では、上記請求項1の効果に加えて、上記内部空間51内の空気の入れ替えがスムーズに且つ短時間で行われるという効果がある。
【0042】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の照明装置において、通気ネット6から所定間隔を隔てた外側方位置に、上下に所定幅を有したガイド側板7を縦向き姿勢で設置したものであるが、このガイド側板7は通気ネット6部分との間の空所Sを通気ネット6から放出される暖気の上昇通路を形成し得るものである。
【0043】
そして、内部空間51内で昇温した空気(暖気)は、通気ネット6を通過したときに通気ネット6部分とガイド側板7間の空所Sを上昇移動するが、そのとき、該空所Sが通気ネット6から放出された暖気の上昇通路として機能するようになる(いわゆる煙突機能が生じる)。
【0044】
従って、この請求項3の照明装置では、上記請求項1又は2の効果に加えて、ガイド側板7によりカバー材5の内部空間51内の暖気放出機能を促進させ得るという効果が得られる。
【0045】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項3の照明装置において、ガイド側板7として、上記通気ネット6に対面する側面に光反射機能を付与したもの(光反射側面71)を使用したものであるが、このようにガイド側板7の内面に光反射機能を付与していると、照明器4から側方に照射した光の一部をガイド側板7(光反射側面71)により内方側(植物植栽側)に反射させることができる。
【0046】
従って、この請求項4の照明装置では、上記請求項3の効果に加えて、ガイド側板7の光反射機能部分(光反射側面71)により、照明器4から側方に照射した光(無駄になる光量)の一部を植栽植物側に反射させることができるので、該照明器4から照射される光の有効利用率が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願実施例の植物栽培用の照明装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II断面相当図である。
【図3】図1のIII−III断面相当図である。
【図4】図2の照明装置を多段式栽培装置に使用した場合の説明図である。
【図5】図4のA部拡大図で、ガイド側板の機能説明図である。
【図6】図4のA部拡大図で、ガイド側板の光反射側面の機能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[実施例]
以下、添付の図面を参照して本願の実施例を説明すると、図1〜図3には本願実施例の植物栽培用の照明装置Yを示し、図4〜図6には図1〜図3(本願実施例)の照明装置Yを多段式栽培装置に使用した場合の使用例を示している。
【0049】
図1〜図3に示す本願実施例の照明装置Yは、光源となる照明器4と、該照明器4の上面側の全面を被覆し且つ小昆虫の侵入を阻止し得る性状の被覆材41と、照明器4の下方を覆うように設置された透光性のあるカバー材5とを有している。
【0050】
この実施例の照明装置Yでは、照明器4として図1及び図3に示すように3本の蛍光灯を採用しているとともに、該各蛍光灯4,4,4を被覆材41の下面側において所定間隔をもって並置・固定している。尚、この実施例では、照明器4として直管状の蛍光灯を採用しているが、該照明器4はLED電球であってもよい。
【0051】
各照明器(蛍光灯)4,4,4の上面側を被覆する被覆材41としては、該各照明器の上部を被覆する薄い鉄板製の笠(反射板)を採用している。尚、この被覆材41は、小昆虫の侵入を阻止し得る程度の多数の小孔を散在させたパンチング板であってもよい。
【0052】
カバー材5としては、例えば透明又は半透明のアクリル板(薄板のもの)やフイルム(肉厚のもの)が採用できる。このカバー材5は、図1〜図3に示すように、上記被覆材41の面積と略同面積の底板部5a(図2、図3)と、該底板部5aの長手方向両端部にそれぞれ所定小高さの立上がり部5b,5b(図3)とを有している。
【0053】
そして、このカバー材5は、図3に示すように両立上がり部5b,5bを被覆材41の長手方向両端部に固定することによって、各照明器(蛍光灯)4,4,4の下方に所定小高さの内部空間51を設けた状態で設置されている。
【0054】
このカバー材5の取付状態では、図2に示すようにカバー材5の幅方向の各外縁部53,53と被覆材41の幅方向の各外縁部42,42との間に内部空間51の内外を連通させる開放部52,52が設けられている。この各開放部52,52は、図2に示すように内部空間51のかなりの高さ範囲に亘って開放されているとともに、幅方向の両側の2箇所に設けられている。
【0055】
カバー材5の各開放部52,52には、それぞれその開口面積の全面に通気ネット6,6を張設している。この各通気ネット6,6には、カバー材5の内部空間51内に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目(例えば3〜5mm程度の網目)が全面に亘って形成されている。尚、この通気ネット6は、小網目として多数のパンチング穴を設けたものでもよく、本願ではそれらを含めて通気ネット6と総称している。
【0056】
カバー材5の底板部5a部分には、カバー材5の内部空間51に空気を流入させるための空気導入口5c(図2、図4〜図6参照)が形成されている。この空気導入口5cは、この実施例では小昆虫が侵入しない程度の小穴(例えば穴径が3〜5mm程度)が採用されていて、カバー材底板部5aの幅方向中央寄り位置において複数個の列(例えば図2に示す4列)で長手方向に多数形成している。尚、この空気導入口5cは、小穴に代えて細幅で長さのあるスリット状のものを採用してもよい。
【0057】
そして、この実施例の照明装置Yでは、照明器4,4,4の全周囲が、上部の被覆材41と、下部のカバー材5と、被覆材41とカバー材5間の開放部52に張設された通気ネット6とで完全に覆われていて、カバー材5の内部空間51に小昆虫が侵入できる空間部(通路)は存在しない。
【0058】
この実施例の照明装置Yには、各通気ネット6,6から所定間隔を隔てた外側方位置にそれぞれガイド側板7,7(左右一対を1組とする)を縦向き姿勢で設置している。
【0059】
この各ガイド側板7は、照明装置Y(被覆材41とカバー材5部分)の全体高さ幅より上下幅がやや大きく且つ該照明装置Yの長さとほぼ同じ長さのものが使用されている。又、このガイド側板7としては、薄板状のものでも、フイルム状の極薄のものでもよい。尚、ガイド側板7としてフイルム状のものを採用する場合は、該フイルムの周囲に枠材を設けて保形性を確保するとよい。
【0060】
そして、このガイド側板7は、通気ネット6から所定間隔(特に限定するものではないが例えば3〜10cm程度)だけ外側に離間した位置で、該通気ネット6に対面するように設置している。尚、この各ガイド側板7,7は、図1及び図2に示すように、被覆材41の上面部分に複数本の連結材70,70・・で支持されている。
【0061】
又、各ガイド側板7,7は、通気ネット6に対面する側面に光反射機能を付与したものを使用している。尚、以下の説明では、ガイド側板7における光反射機能を付与した側面を光反射側面71ということがある。
【0062】
ガイド側板7における光反射側面71は、例えば光反射効果のある上塗り塗装を施したり反射シートを貼着したりしたものを採用できる。尚、フイルム製のガイド側板7では、該光反射側面71として例えば銀色被膜材をラミネートしたものを採用できる。
【0063】
図1〜図3に示す本願実施例の照明装置Yは、例えば図4に示すような多段式の栽培装置で栽培される植栽植物Pに対する照光用として使用できる。
【0064】
図4に示す多段式栽培装置について説明すると、この栽培装置は栽培室1内で水耕栽培を行うものである。そして、図4の栽培装置は、所定高さを有する栽培棚20に、養液が貯留される栽培容器3を上下に複数段(図示例では4段)設置しているとともに、各栽培容器3,3・・の上方近傍位置にそれぞれ照明装置Y,Y・・を配置して構成されている。尚、図4の実施例では、栽培室1内に1つの栽培棚20しか記載していないが、実際には複数の栽培棚20が水平方向に所定間隔をもって並置される。
【0065】
栽培室1内は、空気調和機11によって植栽植物Pの育成に適した室温に調整されている。
【0066】
各栽培容器3,3・・は、栽培棚20の各段に設けた支持桟23,23・・上にそれぞれ載置されている。又、この栽培容器3は、矩形浅皿状の箱体30の上部開口部分に植栽ベッド31を載置したものである。植栽ベッド31には、幅方向及び長手方向にそれぞれ所定間隔をもって複数個の植栽部34,34・・を設けて、該各植栽部34,34・・にそれぞれ植物Pを植栽している。
【0067】
本願実施例の各照明装置Yは、各段の栽培容器3,3・・の上部に所定高さ間隔をもって配置されるが、図4の使用例では、各照明装置Y,Y・・は栽培棚20の各支持桟23,23・・の下面に取付けている。
【0068】
尚、図4の栽培装置では、図示していないが、各栽培容器3(4段)内にそれぞれ養液が供給(循環)されるが、この養液供給装置は、特許文献1に記載されているものと同様に、養液タンクに貯留された養液をポンプにより供給管を通して各栽培容器3の一端部に供給した後、各栽培容器3の他端部からそれぞれ還流管を通して養液タンクに戻すようになっている。
【0069】
ところで、本願実施例の照明装置Yを使用した図4の栽培装置には、次のような背景がある。
【0070】
図4の多段式栽培装置のように、栽培容器3に植栽される植物Pに対して、その上部の比較的近い位置から照明器4で光を照射するようにしたものでは、該照明器4からの発熱で植物に悪影響を及ぼすことがあるが(例えば葉焼けが生じる)、それを改善するのに照明器4の下方を透光性のあるカバー材5で覆うことが有効である。
【0071】
このように照明器4の下方をカバー材5で覆うと、カバー材5の内部空間51が照明器4の発熱で昇温するので、該内部空間51を栽培室1内に開放させておく必要がある(上記開放部52を設けておく)。
【0072】
他方、屋外に建てられたビニールハウス内や建物の栽培室には、蛾や蝿等の小昆虫が入り込んていることが多々ある。又、ビニールハウスや栽培室には、天敵防除や受粉の目的で積極的に有益な昆虫が放たれることもある。
【0073】
ところで、図4に示すように、カバー材付き照明装置を使用した栽培装置では、照明器(蛍光灯)4の下方を透光性のあるカバー材5(植栽植物の葉焼け防止用)で覆っているとともに、該カバー材5の内部空間51の内外を開放部52,52(内部空間51内の昇温防止用)で連通させている。そして、ビニールハウスや栽培室等の室内に小昆虫がいると、小昆虫は光に集まる習性があるので、開放部52が開放されたままであると、小昆虫が開放部52からカバー材5の内部空間51に侵入して死んでしまうことが多々ある。このように、カバー材5の内部空間51内で小昆虫が死ぬと、腐敗により衛生面が悪化する一方、その死骸が堆積するとカバー材5部分の透光性が悪くなるとともに、死骸掃除が面倒である(掃除がしにくい)という問題があった。又、小昆虫が有益な場合は、死ぬと経済的損失になるという問題もある。
【0074】
そこで、本願の照明装置Yを用いた栽培装置では、図4〜図6に示すように、カバー材5の外縁部53と被覆材41の外縁部42との間の各開放部52,52に通気ネット6,6を張設しているが、このように該開放部52,52に通気ネット6,6を張設していると、栽培室1内の小昆虫が該開放部52,52から内部空間51内に侵入するのを確実に阻止できる。尚、カバー材5の内部空間51は、開放部52,52(通気ネット6,6)以外の部分は閉塞されているので、小昆虫が内部空間51内に侵入する余地はない。
【0075】
又、通気ネット6は、その小網目を通してカバー材5の内部空間51と栽培室1内とを通気させ得るので、該内部空間51が過度に昇温することがない。即ち、カバー材5の内部空間51内の空気は照明器4の発熱で昇温し、その暖気(軽い)は図2及び図5に符号Wで示すように上昇気流となって通気ネット6の網目から放出される。このとき内部空間51内には、カバー材5の底板部5aに設けている空気導入口5cから矢印Waで示すように栽培室1内の通常温度の空気が流入するので、該内部空間51内が過度に昇温することがない。又、カバー材5の底板部5aに空気導入口5cを設けていると、内部空間51内の空気の入れ替えがスムーズに且つ短時間で行われ、延いては栽培室1内の空調された空気を植栽ベッド31上に呼び込むことになる。
【0076】
他方、この実施例の照明装置Yでは、通気ネット6から所定間隔を隔てた外側方位置にガイド側板7を設けているので、通気ネット6部分とガイド側板7間の空所Sが空気の上昇通路として機能するようになる。つまり、内部空間51内で昇温した空気(暖気)は、軽くなって通気ネット6を通って該通気ネット6部分とガイド側板7間の空所Sを矢印Wで示すように上昇移動するが、そのとき、該空所Sが通気ネット6から放出された暖気の上昇通路として機能するようになる(該空所Sがいわゆる煙突効果を発揮する)。
【0077】
ところで、各照明装置Y(照明器4)は、その下方の栽培容器3に植栽されている植物に光を照射するためのものであるが、照明器4からの光は下方ばかりでなく通気ネット6部分を通して側方にも照射される。そして、照明器4からの光が側方に照射しても、その下方に植栽されている植物に直接当たらないので、照明効率が悪い(無駄になる光量が多くなる)という問題がある。
【0078】
そこで、この実施例では、通気ネット6の側方に設置しているガイド側板7の内面に光反射機能を付与している(光反射側面71としている)ことにより、図2及び図6に矢印Lで示すように照明器4から側方に照射した光の一部をガイド側板7(光反射側面71)により内方側(植物植栽側)に反射させることができるようにしている。
【0079】
このように、通気ネット6から外部に照射された光(利用価値が小さい)を植物植栽側に反射させると、照明器4から照射される光の有効利用率が向上するという機能がある。
【0080】
尚、本願の照明装置Yは、上記図4〜図6の多段式栽培装置に使用するもののほかに、1段のみの植栽植物に対しての使用も可能であるとともに、太陽光による冬期栽培等での日照不足に対する補光用としても使用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1は栽培室、3は栽培容器、4は照明器、5はカバー材、6は通気ネット、7はガイド側板、41は被覆材、42は外縁部、51は内部空間、52は開放部、53は外縁部、71は光反射側面、Pは植栽植物、Yは照明装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽植物(P)の上方から該植栽植物(P)に対して照光させるための植物栽培用の照明装置であって、
光源となる照明器(4)と、該照明器(4)の上面側の全面を被覆し且つ小昆虫の侵入を阻止し得る性状の被覆材(41)と、上記照明器(4)の下方を覆うように設置された透光性のあるカバー材(5)とを有している一方、
上記カバー材(5)は、上記被覆材(41)に対して、上記カバー材(5)の外縁部(53)と上記被覆材(41)の外縁部(42)との間にカバー材(5)の内部空間(51)の内外を連通させる開放部(52)を設けた状態で設置しているとともに、
上記開放部(52)の全面に、カバー材(5)の内部空間(51)に小昆虫が侵入するのを防止し得る小網目の通気ネット(6)を張設している、
ことを特徴とする植物栽培用の照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記カバー材(5)の底板部(5a)に、小昆虫が侵入できない程度の大きさの空気導入口(5c)を設けている、
ことを特徴とする植物栽培用の照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記通気ネット(6)から所定間隔を隔てた外側方位置に、上下に所定幅を有したガイド側板(7)を縦向き姿勢で設置している、
ことを特徴とする植物栽培用の照明装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記ガイド側板(7)として、上記通気ネット(6)に対面する側面(71)に光反射機能を付与したものを使用している、
ことを特徴とする植物栽培用の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99261(P2013−99261A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244069(P2011−244069)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(391040973)徳寿工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】