説明

植物栽培装置及び植物栽培方法

【課題】列状に配置した栽培用プレートの取り外し作業及び植物の収穫作業の作業性を向上させ。
【解決手段】植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレート2を列状に配置して植物を栽培する植物栽培装置100であって、列方向の先端側に位置する栽培用プレート2に一端が接続されて、列方向に沿って基端側に延びる紐状体7を有し、複数の栽培用プレート2が列方向に沿って基端側に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性に優れた植物栽培装置及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の植物栽培装置としては、特許文献1に示すように、複数段の栽培棚を有するものがあり、この栽培棚上には、養液を貯留する貯留槽が設けられ、この貯留槽には複数の栽培用プレートが列状に配置されている。そして貯留槽と栽培用プレートとの間にはレール部材が設けられており、作業者は移動せずに、栽培用プレートを次から次に貯留槽上に載置させて送り出すことによって栽培用プレートを設置できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、貯留槽の上部に配置された栽培用プレートを取り外す場合又は栽培された植物を収穫する場合には、作業者が取り外す栽培用プレートの位置まで移動して取り外す又は収穫する必要があり、栽培用プレートの数が増えれば増えるほど、取り外し作業又は収穫作業に手間と労力が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−262750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、列状に配置した栽培用プレートの取り外し作業及び植物の収穫作業の作業性を向上させることをその主たる所期課題とするものである。
【0006】
すなわち本発明に係る植物栽培装置は、植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置して植物を栽培する植物栽培装置であって、列方向の先端側に位置する栽培用プレートに一端が接続されて、前記列方向に沿って基端側に延びる紐状体を有し、前記複数の栽培用プレートが前記列方向に沿って基端側に移動可能に構成されており、前記紐状体が基端側に引き寄せられることにより、前記複数の栽培用プレートが前記列方向に沿って基端側に移動することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、基端側の作業者が、紐状体を基端側に引き寄せることにより、栽培用プレートを順次基端側へ移動させることができるため、栽培した植物を一箇所で回収することが可能となる。その結果、作業効率を向上させることができる。また、栽培用プレートを上下複数段に配置した場合であっても、高所作業を安全に実施することができる。さらに、複数列の栽培用プレートを配置する場合には、各栽培用プレートを直接操作するための作業スペースが必要になるが、本発明では基端側に引き寄せることから前記作業スペースを不要にして各列を互いに密に並べることができる。これにより限られた栽培用スペースを有効活用でき多量の植物を栽培することができる。その上、引き寄せる際に植物の根の移動により当該植物が水耕されている養液槽の掃除もできる。
【0008】
前記列方向の先端側に位置する栽培用プレートの先端側縁部に着脱可能に装着される装着部材を有し、前記紐状体の一端が前記装着部材に接続されていることが望ましい。このように装着部材を介して紐状体を栽培用プレートに接続していることから紐状体からの引っ張り力を分散させることができ、栽培用プレートが例えば発砲性樹脂等の脆弱な材質からなるものであっても、破損を防止することができる。また装着部材が栽培用プレートの先端側縁部に着脱可能であることから、栽培用プレートは全て共通のものを使用することができる。さらに、紐状体は栽培用プレートから取り外してメンテナンス及び収納ができることから、取り扱い性に優れる。
【0009】
前記列状に配置された複数の栽培用プレートからなる栽培用プレート列を、当該列方向と直交する幅方向に2列以上有し、前記装着部材が、前記幅方向に並ぶ2以上の栽培用プレートに跨る長さを有し、前記2列以上の栽培用プレート列における列方向の先端側に位置する栽培用プレートの先端側縁部に装着されるものであることが望ましい。これならば、幅方向に2列以上に配置された栽培用プレート列を一度に引き寄せることができるので、作業性を向上させることができる。
【0010】
紐状体を基端側に引っ張る力は先端側の栽培用プレートに作用して、当該栽培用プレートが列方向の複数の栽培用プレートを順次基端側へ押圧することによって全体が基端側に移動することになる。しかしながら、各栽培用プレートには移動に対する抵抗が働くことから、隣り合う栽培用プレートの連接縁部が互いに上方向に持ち上がりスムーズに移動できない恐れがある。この問題を解決するためには、前記紐状体が、列方向に隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部の浮き上がりを防止する押さえ部を有することが望ましい。これならば、押さえ部によって隣り合う栽培用プレートの連接縁部の持ち上がりが防止されるので、列方向の栽培用プレートの姿勢が崩れることを防止して、紐状体の操作により基端側へのスムーズな移動が確保できる。なお、押さえ部を設ける位置は、先端側から複数枚(2〜5枚)目の連接縁部に設けることが望ましく、必要に応じて複数個所に押さえ部を設けることが好ましい。
【0011】
押さえ部の簡単な構成の具体例としては、前記紐状体が、前記複数の栽培用プレートの裏面側に配置されており、前記押さえ部が、前記隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部表面側に跨るように設けられたブリッジ体に、前記隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部において前記紐状体を装着することにより構成されていることが望ましい。ここで紐状体をブリッジ体に装着することには、紐状体をブリッジ体に直接接続すること、紐状体をブリッジ体に掛け回すこと、紐状体をブリッジ体に別部材を介して接続すること等が含まれる。
【0012】
複数の栽培用プレートを正確かつ確実に列状に配置させるためには、前記複数の栽培用プレートが、列方向に延びるレール部材上に載置されていることが望ましい。
【0013】
植物栽培装置の構成を簡単にするためには、前記複数の栽培用プレートが、養液に浮いて支持されていることが望ましい。
【0014】
また本発明に係る植物収穫方法としては、植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置し、これによって栽培した植物を収穫する植物収穫方法であって、列方向の先端側に位置する栽培用プレートに一端を固定して、前記列方向に沿って基端側に紐状体が延ばされており、前記紐状体を基端側に引き寄せることにより、前記複数の栽培用プレートを前記列方向に沿って基端側に移動させることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る植物栽培方法は、植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置して植物を栽培する植物栽培方法であって、植物定植工程において、1つの栽培用プレートに紐状体の一端を接続するとともに、当該栽培用プレートを先端側に押し出して次々と複数の栽培用プレートを列状に配置するとともに、植物収穫工程において、基端側の栽培用プレートを取り外して前記紐状体を基端側に引き寄せる作業を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成の本発明によれば、列状に配置した栽培用プレートの取り外し作業及び植物の収穫作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る植物栽培装置の構成を模式的に示す正面図。
【図2】同実施形態の植物栽培装置の構成を模式的に示す側面図。
【図3】同実施形態の栽培用プレートを示す平面図及びA−A線断面図。
【図4】同実施形態の栽培棚の詳細な構成を示す平面図及び側面図。
【図5】同実施形態の栽培棚の構成を模式的に示す断面図。
【図6】同実施形態の栽培用プレート設置工程を示す模式図。
【図7】同実施形態の栽培用プレート取り外し工程を示す模式図。
【図8】複数群に分けられた栽培用プレート及び紐状体を示す模式図。
【図9】変形実施形態のずれ防止機構を示す模式図。
【図10】変形実施形態の養液貯留容器を示す断面図。
【図11】変形実施形態の養液貯留容器を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る植物栽培装置100は、図1及び図2に示すように、栽培すべき植物を保持する単一形状をなす複数の栽培用プレート2と、当該複数の栽培用プレート2が設置される複数の栽培棚3とを有する。また、各栽培棚3には、植物に養液を供給するための養液供給機構4が設けられている。
【0020】
栽培用プレート2は、図3に示すように、平面視概略矩形板状をなすものであり、その一方の対をなす側辺部2a、2b(長手側辺部)には植物の茎部分が挿入されて、当該植物をプレート2に固定するためのスリット部21が形成されている。このスリット部21は、各長手側辺部2a、2bに複数個形成されており、両長手側辺部2a、2bに設けられたスリット部21が長手方向において互いに異なる位置に形成されている。なお、両長手側辺部2a、2bに設けられたスリット部21が長手方向において互いに同じ位置に形成されたものであっても良い。また、各長手側辺部2a、2bに設けるスリット部21の長さを異ならせるようにしても良い。
【0021】
この栽培用プレート2は、栽培棚3上に設けられた養液供給機構4の養液貯留容器41上に配置されるものであり、具体的には、長手方向両端部2c、2d(短手側辺部)が互いに接触するように一列に配置される。また栽培用プレート2の裏面には、後述するレール部材41Rに係合し、スライド移動するための凹部22が形成されている。
【0022】
栽培棚3は、図2及び図4に示すように、上下方向に多段に形成されており、各栽培棚3は略水平方向に延び設けられた概略長尺状をなすものである。この栽培棚3は、鉛直方向の立設された支柱6により支持されている。そして、この栽培棚3の上面に養液供給機構4が設けられるとともに、下面には、当該栽培棚の下側の栽培棚に光を照射するための光源5が設けられている(図2参照)。
【0023】
養液供給機構4は、栽培棚3上に設置されて養液を貯留する養液貯留容器41と、この養液貯留容器41に養液を供給又は循環させる養液供給部42とを有する。なお、養液供給部42は、養液タンク421と、当該養液タンク421内の養液を流通させる養液配管422と、当該養液配管422内に養液を送液するポンプ(不図示)とを有する。養液配管422は、養液タンク421と養液貯留容器41に接続されている。
【0024】
養液貯留容器41は、図4及び図5に示すように、前記栽培棚3と同様に長手方向に沿って設けられており、栽培棚3と略同一形状をなす概略長尺状の上部開口を有するものである。そして、この養液貯留容器41の上部開口を形成する一対の長手方向縁部41a、41bがレール部材41Rを構成する。このレール部材41Rが前記栽培用プレート2の裏面に形成された凹部22に係合する。なお本実施形態では、さらに養液貯留容器41の中央部に栽培用プレート2の中央部に接触して栽培用プレート2の湾曲又は折れ曲がりを防止する支持部411が形成されている。本実施形態では、この支持部411上面に形成された凹部内に紐状体7が配置される。
【0025】
そして、この植物栽培装置100では、長手方向に沿って一列に配置された複数の栽培用プレート2の列方向(長手方向)の最先端側(図4において左側)に位置する栽培用プレート2に紐状体7が接続されている。
【0026】
この紐状体7は、図4に示すように、一端が最先端の栽培用プレート2に接続されるとともに、列方向に沿って基端側に延び設けられている。紐状体2としては、例えばロープ、ワイヤー又はテグス等を用いている。
【0027】
紐状体7は、最先端の栽培用プレート2の先端側縁部2cに着脱可能に接続されており、列方向に沿って複数の栽培用プレート2の裏面側、つまり養液貯留容器41内を通って、列方向の基端側まで延び設けられている。
【0028】
そして本実施形態では、紐状体7を最先端の栽培用プレート2に接続するに際して装着部材8を介在させて接続している。具体的に紐状体7は、最先端の栽培用プレート2の先端側縁部2cに着脱可能に装着される装着部材8に固定されている。
【0029】
装着部材8は、図4に示すように、栽培用プレート2の短手側辺部2cと同等の長さ又はそれもよりも若干短い長さを有し、その長さ方向断面が概略コの字形状又は部分円弧形状をなすものである。そして、この装着部材8が栽培用プレート2の先端側縁部2cに装着される。
【0030】
そして、装着部材8が栽培用プレート2に装着された状態で、栽培用プレート2の先端側縁部2cに形成された凹部23の底部が表裏貫通する開口部を形成する。この開口部を通るように前記紐状体7が装着部材8に接続されている。本実施形態では、紐状体7の一端を、前記装着部材8が挿入される輪形状に形成された接続部71としている。そして、この輪形状をなす接続部71に装着部材8を挿入した後に、当該装着部材8を先端側縁部2cに装着することにより、紐状体7が最先端の栽培用プレート2に接続される。なお、紐状体7に輪形状をなす接続部71を設けることの他、紐状体を装着部材に結び付ける等の種々の接続態様をとることができる。また装着部材8と紐状体7を一体とすることも考えられる。
【0031】
このように、装着部材8を介して紐状体7を栽培用プレート2に固定していることから紐状体7からの引っ張り力が分散して栽培用プレート2に加わることになり、たとえ栽培用プレート2が発砲性樹脂等の脆弱な材質からなるものであっても、破損を防止することができる。また、装着部材8が栽培用プレート2の先端側縁部2cに着脱可能であることから、栽培用プレート2は全て共通のものを使用することができる。さらに、装着部材8により紐状体7が栽培用プレート2に対して着脱可能であることから、栽培用プレート2及び紐状体7の収納を容易にし、それらの洗浄作業等のメンテナンスも簡単にすることができる。
【0032】
そして、紐状体7には、図4に示すように、列方向に隣り合う2枚の栽培用プレート2の連接縁部2c、2dの浮き上がりを防止する押さえ部9が設けてある。
【0033】
この押さえ部9は、隣り合う2枚の栽培用プレート2の連接縁部2c、2dの表面側に跨るように設けられたブリッジ体91に、隣り合う2枚の栽培用プレート2の連接縁部2c、2dにおいて紐状体7を接続することにより構成されている。具体的には、概略棒形状をなすブリッジ体91を隣り合う2枚の栽培用プレート2の連接縁部2c、2dと略直交する又は傾斜させて配置して、このブリッジ体91に紐状体7を連接縁部2c、2dに形成された凹部23を介して紐状体7を表面側に通し、この紐状体7の下側を通るようにブリッジ体91を配置することにより形成されている。このように構成することで、紐状体7を引っ張ることにより、この引っ張り力がブリッジ体91に上から下に加わる押さえ力となり、連接縁部2c、2dが下側に押されて持ち上がることが防止される。したがって、列方向の栽培用プレート2の姿勢が崩れることを防止して、紐状体7の操作により基端側へのスムーズな移動が確保できる。なお、ブリッジ体91の形状としては、棒形状をなすものの他、十字形状、Y字形状、T字形状又はH字形状等の交差形状をなすもの等、隣接する栽培用プレートの両方に係合するものであればよい。
【0034】
特に、最先端の栽培用プレート2に紐状体7を接続して基端側に引き寄せた場合、最先端の栽培用プレート2から2枚目〜5枚目の栽培用プレート2の連接縁部が持ち上がってしまう傾向があることから、本実施形態では、最先端の栽培用プレート2から複数枚目(2枚から5枚目)の連接縁部2c、2dに押さえ部9を設けている。その他、押さえ部9は、複数の栽培用プレート2の各連接縁部2c、2d毎に設けても良いし、間欠的に設けても良い。
【0035】
次にこのように構成した植物栽培装置100を用いた植物栽培方法について図6及び図7を参照して説明する。具体的には植物定植工程(栽培用プレート設置工程)と植物収穫工程(栽培用プレート取り外し工程)とについて説明する。
【0036】
植物定植工程は、植物を取り付けた栽培用プレート2を栽培棚3、具体的には養液貯留容器41に設置して、植物を植物栽培装置100に定植する工程である。具体的にこの工程においては、図6に示すように、まず1つの栽培用プレート2の先端側縁部2cに装着部材8を介して紐状体7の一端を接続する。そして、その栽培用プレート2を養液貯留容器41の所定位置(具体的には養液貯留容器41の基端側)に載置する(図6の(A))。次に、別の栽培用プレート2を先に載置した栽培用プレート2を先端側に押し出しながら養液貯留容器41の基端側に載置する(図6の(B))。このように次々に栽培用プレート2を載置していき、先端側の栽培用プレート2が行き止まるまで複数の栽培用プレート2を載置する(図6の(C)〜(E))。なお、栽培用プレート2を載置する際に、紐状体7は各栽培用プレート2の下側に位置するようにし、さらに紐状体7の基端部が養液貯留容器41の基端側に位置するようにする。これにより複数の栽培用プレート2が養液貯留容器41上に列状に配置される。また、栽培用プレート2を順次載置していく段階で、最先端の栽培用プレート2から所定枚目(図6においては2枚目と3枚目の間、具体的には、2枚目の連接縁部2dと3枚目の連接縁部2c)には、押さえ部9を設けるようにしている(図6の(D))。
【0037】
列状に配置した後に、養液供給機構4及び光源5を用いて栽培用プレート2の植物を栽培する。
【0038】
そして植物が成長した後に、植物収穫工程を行う。この植物収穫工程は、成長した栽培用プレート2を栽培棚3、具体的には養液貯留容器41から取り外して植物を収穫する工程である。具体的にこの工程においては、図7に示すように、まず最基端側にある栽培用プレート2を取り外す(図7の(A))。そして、基端側にある紐状体7を基端側に引き寄せることにより(図7の(B))、養液貯留容器41上の残りの栽培用プレート2を基端側に移動させる(図7の(C))。次に、最基端側にある栽培用プレート2を取り外して紐状体7を基端側に引き寄せる(図7の(D)、(E))。このように最基端側にある栽培用プレート2を取り外し、紐状体7を引き寄せて栽培用プレート2を移動させるという作業を繰り返すことにより全ての栽培用プレート2を取り外す。
【0039】
このように構成した本実施形態に係る植物栽培装置100及び植物栽培方法によれば、基端側の作業者が、紐状体7を基端側に引き寄せることにより、栽培用プレート2を順次基端側へ移動させることができるため、栽培した植物を一箇所で回収することが可能となる。その結果、作業効率を向上させることができる。また、栽培用プレート2を上下複数段に配置した場合でも、高所作業を安全に実施することができる。さらに、複数列の栽培用プレート2を配置する場合には、各栽培用プレート2を直接操作するための作業スペースが必要になるが、本発明では基端側に引き寄せることから、前記作業スペースを不要にして各列を互いに密に並べることができ、限られた栽培用スペースを有効活用でき多量の植物を栽培することができる。その上、引き寄せる際に植物の根の移動により当該植物が水耕されている養液貯留容器41の掃除もできる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、栽培棚と養液供給機構(具体的には養液貯留容器)とを一体化して形成したものであっても良い。
【0041】
また、前記実施形態の植物栽培装置は、上下多段の栽培棚を有し、各段で栽培用プレートを一列に配置するものであったが、各段に複数列の栽培用プレートを配置するものであっても良い。なお、1段の栽培棚を有するものであっても良い。
【0042】
さらに、栽培用プレートをレール部材上にスライド可能に配置するほか、養液槽に貯留された養液の液面上に複数の栽培用プレートを浮かべるようにして列状に配置するものであっても良い。つまり、複数の栽培用プレートが養液に浮いて支持されていることより、複数の栽培用プレートを列方向に沿って基端側に移動可能に構成しても良い。
【0043】
その上、前記実施形態では、紐状体を最先端の栽培用プレートに連結するものであったが、栽培用プレートの枚数が増えるにしたがって、滑り抵抗が大きくなることから基端側に引き寄せる力が大きくなり、作業性が悪くなることが考えられる。このため、図8に示すように、一列に配置された複数の栽培用プレート2を複数群(図8ではA群〜D群)に分けて、各群の先端側に位置する栽培用プレート2a〜2d毎に個別に紐状体7a〜7dを接続するようにしても良い。これなれば、各紐状体7a〜7dにより基端側に位置する群から順に群毎に基端側に引き寄せることができ、栽培用プレート2を基端側に引き寄せる力が大きくなりすぎず、作業性を損なうことを防ぐことができる。
【0044】
加えて、前記実施形態では1本の紐状体を最先端の栽培用プレートに接続しているのが、その他の栽培用プレートにも接続するように構成しても良い。
【0045】
さらに加えて、複数の栽培用プレートを基端側に移動させる際に隣接する栽培用プレートが上下にずれることを防止するために、図9に示すように、ずれ防止機構Xを設けても良い。このずれ防止機構Xは、隣接する栽培用プレート2の連接縁部2c、2dの一方に設けられた凹部X1と他方に設けられた凸部X2とからなり、凹部X1及び凸部X2が係合するによって、隣接する栽培用プレート2が上下にずれることを防止する。
【0046】
また、図10に示すように、養液貯留容器41の一対の長手方向縁部41a、41bが、栽培用プレート2が載置される平面部412a、412bと当該平面部412a、412bの外側端部に設けられて載置された栽培用プレート2の外側に位置するガイド部413a、413bとを有するものであっても良い。これら平面部412a、412b及びガイド部413a、413bによりレール部材41Rが構成される。
【0047】
さらにレール部材41を平面部412a、412b及びガイド部413a、413bにより構成した場合、図11に示すように、押さえ部9を、ガイド部413a、413bの上部から内側に延出させることにより、栽培用プレート2の長手側辺部2a、2bの上部に位置して栽培用プレート2の連接縁部2c、2dの浮き上がりを防止するように構成しても良い。
【0048】
また、前記実施形態の植物栽培装置を用いた植物栽培方法では、定植から収穫までを行うものであったが、播種から育苗を行うものであっても良いし、播種から収穫までを行うものであっても良い。
【0049】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100 ・・・植物栽培装置
2 ・・・栽培用プレート
2c、2d・・・連接縁部
41R ・・・レール部材
7 ・・・紐状体
8 ・・・装着部材
9 ・・・押さえ部
91 ・・・ブリッジ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置して植物を栽培する植物栽培装置であって、
列方向の先端側に位置する栽培用プレートに一端が接続されて、前記列方向に沿って基端側に延びる紐状体を有し、
前記複数の栽培用プレートが前記列方向に沿って基端側に移動可能に構成されており、
前記紐状体が基端側に引き寄せられることにより、前記複数の栽培用プレートが前記列方向に沿って基端側に移動することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記列方向の先端側に位置する栽培用プレートの先端側縁部に着脱可能に装着される装着部材を有し、
前記紐状体の一端が前記装着部材に接続されている請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記列状に配置された複数の栽培用プレートからなる栽培用プレート列を、当該列方向と直交する幅方向に2列以上有し、
前記装着部材が、前記幅方向に並ぶ2以上の栽培用プレートに跨る長さを有し、前記2列以上の栽培用プレート列における列方向の先端側に位置する栽培用プレートの先端側縁部に装着されるものである請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記紐状体が、列方向に隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部の浮き上がりを防止する押さえ部を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記紐状体が、前記複数の栽培用プレートの裏面側に配置されており、
前記押さえ部が、前記隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部表面側に跨るように設けられたブリッジ体に、前記隣り合う2枚の栽培用プレートの連接縁部において前記紐状体を接続することにより構成されている請求項4記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記複数の栽培用プレートが、列方向に延びるレール部材上に載置されている請求項1乃至5のいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記複数の栽培用プレートが、養液に浮いて支持されている請求項1乃至5のいずれかに記載の植物栽培装置。
【請求項8】
植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置し、これによって栽培した植物を収穫する植物収穫方法であって、
列方向の先端側に位置する栽培用プレートに一端を固定して、前記列方向に沿って基端側に紐状体が延ばされており、
前記紐状体を基端側に引き寄せることにより、前記複数の栽培用プレートを前記列方向に沿って基端側に移動させることを特徴とする植物収穫方法。
【請求項9】
植物を保持する概略矩形板状の複数の栽培用プレートを列状に配置して植物を栽培する植物栽培方法であって、
植物定植工程において、1つの栽培用プレートに紐状体の一端を接続するとともに、当該栽培用プレートを先端側に押し出して次々と複数の栽培用プレートを列状に配置するとともに、
植物収穫工程において、基端側の栽培用プレートを取り外して前記紐状体を基端側に引き寄せる作業を繰り返すことを特徴とする植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−152174(P2012−152174A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15574(P2011−15574)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(505302502)株式会社フェアリープラントテクノロジー (11)
【Fターム(参考)】