説明

植物栽培装置

【課題】一対のスプロケットの間を繋ぐシャフトを省略しても、植物栽培容器を水平に保つことができる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置1の設置面から同じ高さの位置に、支持棒32の両端部に設けられた引っ掛け棒32aと接触するタイミング、または接触が解除されるタイミングを測定する一対のカウンタ60A、60Bと、タイミングに一定以上のずれがある場合にチェーン50A、50Bを回転させるモータ20A、20Bの回転速度を調整する水平保持手段70を設け、支持棒の傾きを是正して植物栽培容器30を水平に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省スペースで植物を栽培するための装置に関する。詳細には、複数の植物栽培容器を水平にした状態で垂直方向に回転される植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培するには、植物を植えるスペースと、光、水、植物の成長を促す栄養素などが必要とされる。特に、国土が狭く地価が高い我が国においては、植物を植える土地をいかに確保していくかは重要な課題である。そこで、従来より、出来るだけ省スペースで植物を育てることができる装置について開発されてきた。例えば、水平に伸びる複数の支持棒と、これら複数の支持棒それぞれの両端を保持する一対の環状チェーンと、これらの環状チェーンを垂直方向に回転させる回転手段と、を備える回転式植物栽培装置が提案されている(特許文献1および特許文献2)。特許文献1および2に開示された植物栽培装置では、複数の支持棒のそれぞれに植物栽培容器が吊り下げられる。複数の支持棒は、それぞれの両端が垂直方向に回転される一対の環状チェーンに保持されているので、複数の植物栽培容器は垂直方向に並べられ、環状チェーンを回転させることにより、垂直方向に移動可能とされている。これによれば、植物栽培容器を垂直方向に並べることができるため、所定数量の植物を栽培するのに必要とされる土地面積を減少させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−506079号公報
【特許文献2】特開平6−7038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転式植物栽培装置において、一対の環状チェーンを回転させるモータが環状チェーン毎に備えられている場合、それぞれの環状チェーンを回転させているうちに、一対の環状チェーンの回転速度にずれが生じて、その結果、支持棒が水平方向に傾いて植物栽培容器も傾いてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題に対する具体的な解決方法としては、一対の環状チェーンの一方が架けられこの環状チェーンを回転させる一対のスプロケットの一方と、このスプロケットと向かい合うスプロケットであって環状チェーンの他方が架けられる一対のスプロケットの一方との間をシャフトで繋げ、シャフトを回転させることが考えられる。このように、一対の環状チェーンのそれぞれを回転させるスプロケット同士をシャフトで繋げば、シャフトで接続されたスプロケットは同期して回転するため、上記問題を回避できる。
【0006】
しかしながら、別々の環状チェーンを回転させる一対のスプロケット同士を接続するシャフトは、複数の植物栽培容器が全体として垂直方向に環状になった軌跡を描くように回る際の障害となる。
【0007】
そこで、本発明は、一対のスプロケットの間をシャフトで繋げることなく、植物栽培容器を水平に保つ手段を有する植物栽培装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は、一対のスプロケットの間をシャフトで繋げなくても、一対の環状チェーンの一方に保持された支持棒の一端と、環状チェーンの他方に保持された前記支持棒の他端とが、それぞれ垂直方向のある高さを通過するタイミングを検知できると、植物栽培容器を水平に保てることを着想し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対の環状チェーンに保持される複数の支持棒に吊り下げられた植物栽培容器を回転させることにより、省スペースで植物を栽培することを可能にした植物栽培装置において、植物栽培容器を水平に保ちつつ、円滑に回転させることが可能となる。
【0010】
さらに、本発明によれば、ある支持棒の両端が垂直方向のある高さを通過するタイミングを、単純な構成のカウンタを利用してそれぞれ測定することにより前記支持棒の傾きを検知することで、傾き検知およびその修正に係る機構の構成を単純にすることができる。その結果、植物栽培装置の製造に要する費用も削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施態様の係る植物栽培装置の全体構成図である。
【図2】前記植物栽培装置の一部拡大図である。
【図3】前記植物栽培装置のカウンタの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施態様に係る植物栽培装置1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明にかかる植物栽培装置の一例を示しており、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【0013】
図1を参照すると、植物栽培装置1は、一対の環状チェーン50と、一対の回転手段と、複数の支持棒32と、複数の植物栽培容器30と、一対の枠体90と、一対のカウンタ60で構成されるタイミング測定手段と、水平保持手段70と、を有する。以下、一対の環状チェーン50のそれぞれを区別する場合、一方を第1環状チェーン50A、他方を第2環状チェーン50Bと称する。同様に、一対の回転手段10について、一方を第1回転手段10A、他方を第2回転手段10B、一対の枠体90について、一方を第1枠体90A、他方を第2枠体90Bと称する。
【0014】
回転手段10は、一対のスプロケットである第1スプロケット11および第2スプロケット12、並びに第1スプロケット11または第2スプロケット12の少なくとも一方を回転させるモータ20を有する。第1スプロケット11と第2スプロケット12とは、植物栽培装置1の設置面に対して垂直な同一平面上に垂直方向に起立した状態で並ぶように配置され、それぞれが枠体90に回転可能に保持されている。
【0015】
枠体90は、図1に示すように、棒状の部材によって構成された長方形枠であり、向かい合う一対の短辺の一方91を設置面に設置する脚として長手方向が設置面に対して垂直となるように設置されている。また、第1枠体90Aと第2枠体90Bとは、それぞれの中空の面同士が水平方向にある間隔をあけて対向するように配置されている。枠体90は、一方の短辺91と他方の短辺92との間に設けられてこれらの短辺と実質的に平行な保持辺93を有している。第1スプロケット11は、短辺の他方92に回転可能に保持され、第2スプロケット12は、保持辺93に回転可能に保持されている。
【0016】
枠体90は、スプロケット11、12を回転可能に保持するとともに、カウンタ60の一部、具体的には棒61の先端付近が支持棒32に設けられた引っ掛け棒32aと接するようにカウンタ60を保持する。かかる枠体90は、図1に示す長方形状の部材でなくてもよく、板状の部材、あるいは単なる棒状の部材でもよい。
【0017】
枠体90は、回転手段10、およびカウンタ60を設置面から垂直方向に一定の距離で固定するためのものであるため、枠体90を構成する部材は鉄やステンレスなどの一定の硬度を有する物質であることが望ましい。
【0018】
環状チェーン50はそれぞれ、第1スプロケット11と第2スプロケット12を繋ぐように取り付けられている。すなわち、回転手段10の第1スプロケット11と第2スプロケット12とは、環状チェーン50の内側にあって、環状チェーン50が細長い円形を描くように、垂直方向に互いに起立した状態で並ぶ。第1スプロケット11または第2スプロケット12の少なくとも一方(本実施態様では第2スプロケット12)は、駆動ベルト21を介してモータ20と接続されており、スプロケット(第2スプロケット12)が回転されることで、環状チェーン50は、スプロケット11、12によってガイドされて垂直方向に回転する。
【0019】
第1環状チェーン50Aには、複数の支持棒32の一端側が固定され、第2環状チェーン50Bには、複数の支持棒32の他端側がある程度動きうる余裕を持って取り付けられている。このように一対の環状チェーン50には、複数の支持棒32が取り付けられるので、支持棒32を保持するのに必要な硬度が要求される。このため、環状チェーン50は、鉄やステンレスなどから構成される環状チェーンであることが望ましい。同様に、スプロケット11、12は、環状チェーン50の軌道をガイドし、植物栽培容器30を支持する支持棒32を保持するのに十分な強度を有する材料で構成する。
【0020】
複数の支持棒32は、互いにほぼ同一の間隔で一対の環状チェーン50に保持されている。一対の環状チェーン50は、上述したとおり、それぞれが垂直方向に回転し、支持棒32の長さとほぼ同じか、これより短い距離で向かい合うように配置されている。このため、各支持棒32は、植物栽培装置1の設置面に対して実質的に水平になる。支持棒32には、植物栽培容器30がフック33によって吊り下げられている。支持棒32は、植物栽培容器30を支持するために十分な強度を有する材料で構成し、フック33は、植物栽培容器30を吊り下げて保持するために必要な強度を備え、例えば、先端がJ字形に曲げられた針金などを用いて構成すればよい。
【0021】
植物栽培容器30は、その中で植物が成長するために、上面が開口した容器で構成される。植物栽培容器30の横幅(x軸方向)は、環状チェーン50の回転に伴って植物栽培容器30が移動する際、特に、植物栽培容器30がスプロケット11、12の外周に沿って回る際(すなわち、環状チェーン50が第1スプロケット11に沿って回ることによって図1左側に位置する裏面から右側に位置する表面に移る際、または第2スプロケット12に沿って回ることによって表面から裏面に移る際)、植物栽培容器30がスプロケット11、12に接触しない幅にする。植物栽培容器30の縦幅(y軸方向)は、環状チェーン50の回転に伴って植物栽培容器30が移動する際、特に植物栽培容器30がスプロケット11、12の外周に沿って回る際、他の支持棒に支持される植物栽培容器30に接触しない幅にする。植物栽培容器30の高さ(z軸方向)は、植物栽培容器に植える植物の種類によって適宜調節すればよい。
【0022】
タイミング測定手段は、一対の枠体90のそれぞれに取り付けられた第1カウンタ60A、および第2カウンタ60Bで構成されている。より具体的には、第1カウンタ60Aは、第1枠体90Aの向かい合う一対の長辺の一方94Aに取り付けられ、第2カウンタ60Bは、第2枠体90Bの向かい合う一対の長辺の一方94Bに取り付けられている。第1カウンタ60Aと第2カウンタ60Bとは、それぞれ設置面から同じ高さの位置で向き合うように設置される。なお、本実施態様では支持棒32の傾きをより正確に検知するため、このような第1カウンタ60Aと第2カウンタ60Bとで構成されるタイミング測定手段が、垂直方向に異なる2箇所に設けられている。
【0023】
ここで図2および図3を参照してカウンタ60の作用について詳細に説明する。カウンタ60は、一本の棒61を備えており、この一本の棒61は、それ自身の延伸方向と直交する一方向に力が加えられると、力の向きに沿って倒れ、力が除かれると元の状態に戻るように、バネなどによって本体62に取り付けられている。本実施態様では、カウンタ60は、棒61が植物栽培装置1の設置面に対して水平に延びて支持棒32に設けられた引っ掛け棒32aと直交して接触するように枠体90に取り付けられている。そして棒61は、設置面に対して垂直方向下向き(すなわち、棒61の延伸方向である水平方向に対して直交する一方向)に力が加えられると下向きに傾斜するように構成されているため、棒61とある支持棒32、より正確にはある引っ掛け棒32aとの接触が生じるタイミング(以下、「接触タイミング」)、または接触が解除されるタイミング(以下、「接触解除タイミング」)が検出される。
【0024】
以下、より詳細に説明する。棒61は、環状チェーン50の回転に伴い、ある支持棒32が垂直方向へ動くことにより、図3(a)に示すように、まず引っ掛け棒32aと直交した状態でこれと接触する。この支持棒32がさらに垂直方向の一方向(本実施態様では、垂直方向下向き)に移動すると、棒61は当該引っ掛け棒32aに押し下げられて、図3(b)に示すように、垂直方向下向きに傾く。図2では、上下2段に取り付けられたカウンタ60、60´のうち、上側に位置するカウンタ60の棒61は引っ掛け棒32aとは接触していない一方、下側に位置するカウンタ60´の棒61´は、別の引っ掛け棒32´aに接触してこの引っ掛け棒32´aに押し下げられて垂直方向下向きに傾いている。
【0025】
このように引っ掛け棒32´aと接触し、垂直方向下向きに押し下げられて下向きに傾斜した棒61´は、最終的には元の位置から90度の角度で倒され、元の水平に延びる状態から垂直に延びる状態となる。棒61´と接触していた引っ掛け棒32´aは、棒61´がこのように垂直になった後もさらに垂直方向下向きに移動する。このため、棒61´が垂直になった直後に棒61´とこの引っ掛け棒32´aとの接触が解消され、棒61´はこれを押し下げる力が取り除かれることにより、図3(c)に示すように、元の状態、すなわち水平方向に延びる状態に戻る。
【0026】
このため、一対のカウンタ60を、それらの棒61が支持棒32の両端に設けられた引っ掛け棒32aのそれぞれと接触するように設けることで、支持棒32の傾きを検出することができる。すなわち、一方のカウンタ60Aにより、当該カウンタ60Aの棒61Aが任意の支持棒32、より正確には任意の引っ掛け棒32aの一端と接触するタイミング(またはこの引っ掛け棒32aとの接触が解除されて垂直に倒れた状態から水平に延びる状態に復帰するタイミング)が得られる。一方、このカウンタ60Aと垂直方向の同じ高さに設置された他方のカウンタ60Bにより、当該カウンタ60Bの棒61Bが任意の支持棒32、より正確には任意の引っ掛け棒32aの一端と接触するタイミング(またはこの引っ掛け棒32aとの接触が解除されて垂直に倒れた状態から水平に延びる状態に復帰するタイミング)が得られる。
【0027】
カウンタ60の本体62は、棒61と支持棒32、より正確には引っ掛け棒32aとの接触タイミングまたは接触解除タイミングを信号として水平保持手段70に出力する。水平保持手段70は、マイクロコンピュータ等で制御され、一方のカウンタ60Aと他方のカウンタ60Bとから送られた2つの接触タイミングを示す出力信号(または2つの接触解除タイミングを示す出力信号)を受信し、2つの接触タイミング同士(または2つの接触解除タイミング同士)を比較する。水平保持手段70は、2つの接触タイミング同士(または2つの接触解除タイミング同士)に一定以上のずれがある場合、これを支持棒32の傾きと判断して、第1回転手段10Aおよび第2回転手段10Bのいずれか一方、または両方のモータ20A、20Bの回転速度を調節する。なお、図1では、水平保持手段70とカウンタ60およびモータ20との電気的な接続関係を破線で示している。
【0028】
このように、本実施態様の植物栽培装置1は、ある方向に力を加えることによりその方向に傾いて、かつ、力が取り除かれると元の位置に復帰可能な棒状部材を備えるカウンタ60という、単純な構成の機器を利用することで、植物栽培容器30の回動を妨げる要因となるシャフトを不要として、支持棒32の水平を維持することができる。このため、シャフトを取り付けた場合に比べて植物栽培装置1を軽量化し、また、植物栽培容器30の回動を円滑にできる。さらに、植物栽培装置1の製造コストを下げることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 植物栽培装置
10 回転手段
11、12 スプロケット
20 モータ
30 植物栽培容器
32 支持棒
50 環状チェーン
60 カウンタ(タイミング測定手段)
70 水平保持手段
90 枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に所定の間隔をあけて対向配置される一対の環状チェーン、
前記一対の環状チェーンのそれぞれを垂直方向に回転させる一対の回転手段、
前記一対の環状チェーンに両端が保持された複数の支持棒、
および前記複数の支持棒のそれぞれに保持された植物栽培容器を備える植物栽培装置であって、
前記複数の支持棒のいずれかひとつの支持棒の両端が垂直方向のある高さをそれぞれ通過するタイミングを測定するタイミング測定手段と、
前記タイミング測定手段により測定されたタイミングに基づいて前記支持棒の傾きを検知して前記一対の環状チェーンの回転速度をそれぞれ調整して前記支持棒の水平を保持する水平保持手段と、をさらに備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記タイミング測定手段は、第1の方向に延びて当該第1の方向と直交する第2の方向への力を受けた場合に当該第2の方向に傾く棒状部材を有する一対のカウンタであり、
前記水平保持手段は、前記タイミング測定手段によって測定された前記ひとつの支持棒両端が垂直方向のある高さをそれぞれ通過する一対のタイミングに関する情報を受信し、
前記一対のタイミングを比較することによって前記支持棒の傾きを認識し、
前記認識に基づいて、前記支持棒が水平になるように、前記各回転手段に対してその回転速度を調節する信号を送信することを特徴とする前記請求項1記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−193731(P2010−193731A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39665(P2009−39665)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(594044406)司電機産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】