説明

植物栽培装置

【課題】栽培棚に格納されている栽培トレーの格納位置検出手段の数の削減によるコスト削減と、栽培トレーの格納位置の管理を容易化し、かつ栽培トレーの格納位置の検出精度を向上させる植物栽培装置の提供。
【解決手段】植物栽培装置は、移載方向A1に移動可能であるとともに栽培トレー110のフック117との係合状態で栽培棚との間で栽培トレー110を移載する係合ロッド147を有する移載機140と、移載機140に設けられて上下方向での移載機140の移動時に栽培トレー110における被接触部位であるフック117との接触を検出するリミットスイッチ181,182とを備える。リミットスイッチ181,182は、栽培棚に格納されている栽培トレー110の格納位置が、フック117と係合ロッド147とが係合可能な適正位置から外れた飛出し位置であるときに、フック117に接触する接触部186を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培される植物を保持する栽培トレーが格納される複数の栽培棚に対して、移載方向で栽培トレーの搬入出を行う移載機を備える植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置が、栽培するための植物を保持する栽培トレーと、栽培トレーが格納される複数の栽培棚と、栽培棚に対して栽培トレーの搬入出を行う移載機とを備え、該移載機が、栽培トレーが載置可能な移載棚と、移載方向に移動可能であるとともに栽培トレーの係合部との係合状態で栽培棚と移載棚との間で栽培トレーの移載を行う可動係合部とを有するものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−209970号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の植物栽培装置において、移載機の可動係合部が栽培トレーの係合部と係合するためには、栽培棚に格納されている状態(以下、「格納状態」という。)の栽培トレーが、可動係合部と係合部との係合が可能になる適正位置を占めている必要がある。しかしながら、栽培棚への搬入が正常に行われない場合や、栽培棚に振動が伝達された場合などに、栽培トレーが適正位置からずれることがある。
【0005】
例えば、栽培棚に格納されている栽培トレーの位置である格納位置が、適正位置以外の不適正位置、例えば、移載方向で適正位置よりも移載機寄りに飛び出している飛出し位置である場合には、移動する移載機と栽培トレーとの衝突や、可動係合部と栽培トレーにおいて係合部以外の部分と当接により、栽培トレーが傾斜するなどして、栽培トレー内の栽培水(例えば、培養液)や培地などが栽培トレーからこぼれるという問題があった。
【0006】
そこで、格納位置を検出するために、格納位置検出手段として、例えば光電センサが各栽培棚毎に設けられ、該光電センサが不適正位置にある栽培トレーにより覆われて、検出光が遮断されることを利用して、不適正位置を検出することが考えられる。しかしながら、格納位置検出手段が各栽培棚S毎に設けられる場合には、センサの数が多くなって、部品点数の増加により、植物栽培装置のコストが増加するという問題があった。
【0007】
また、格納位置検出手段として光電センサが使用される場合には、栽培トレーで栽培されている植物の、栽培トレーからはみ出した部分や、植物から落下した葉などが、光電センサに覆いかぶさって、光電センサが誤検出をすることがあり、格納位置の検出精度が低下するという問題があった。
【0008】
そして、栽培トレーからはみ出した部分により光電センサが覆われることによる誤検出を防止するために、栽培トレーから離れた位置に光電センサが配置される場合には、適正位置から僅かにずれている不適正位置を検出することができず、やはり格納位置の検出精度が低下するという問題があった。
【0009】
さらに、光電センサに、栽培トレーからこぼれた栽培水の付着や植物栽培装置内での高湿度に起因する結露が生じた場合や、光電センサに付着した培養液に苔などの付着植物が発生した場合には、誤検出の可能性が高まる。このような場合に、光電センサによる格納位置の所要の検出精度を確保するためには、光電センサを清掃するなどの作業が必要になって、植物栽培装置のメンテナンスの容易性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、栽培棚に格納されている栽培トレーの格納位置検出手段の数の削減によるコスト削減を可能としながら、栽培トレーの格納位置の管理を容易化し、かつ栽培トレーの格納位置の検出精度を向上させる植物栽培装置を提供することである。
そして、本発明の他の目的は、さらに、格納位置が不適正位置である栽培トレーの格納位置を矯正するための作業性を向上させる植物栽培装置を提供することである。
本発明の他の目的は、さらに、格納位置検出手段の位置の設定を容易化する植物栽培装置を提供することである。
本発明の他の目的は、さらに、格納位置検出手段との接触による植物の損傷の発生を抑制する植物栽培装置を提供することである。
本発明の他の目的は、さらに、メンテナンス作業を容易化する植物栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、栽培対象である植物を保持するトレー本体および前記トレー本体に設けられた係合部を有する複数の栽培トレーと、前記栽培トレーが格納される複数の栽培棚が配列方向に配置されて構成される栽培棚列と、前記配列方向に平行な移動方向に移動可能であるとともに前記栽培棚に対して移載方向で前記栽培トレーの搬入出を行う移載機とを備え、前記移載機が、前記栽培トレーを載置可能な移載棚と、前記移載方向に移動可能であるとともに前記係合部との係合状態で前記栽培棚と前記移載棚との間で前記栽培トレーを移載する移載動作を行う可動係合部とを有する植物栽培装置において、前記移載機に設けられるとともに前記移動方向での前記移載機の移動時に前記栽培トレーにおける被接触部位との接触を検出する接触センサを備え、前記接触センサが、前記栽培棚に格納されている前記栽培トレーの位置である格納位置が、前記係合部と前記可動係合部とが係合可能な適正位置であるときに、または前記適正位置以外の不適正位置であるときに、前記被接触部位に接触する検知部を有することにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、植物栽培装置が前記移載機を制御する制御装置を備え、前記制御装置が前記接触センサと、前記格納位置が前記適正位置であるか、または前記不適正位置であるかを判定する格納位置判定手段とを有し、前記制御装置が、前記格納位置判定手段により前記格納位置が前記不適正位置であると判定されたときに、前記移動方向での前記移載機の移動を停止することにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記不適正位置が、前記適正位置よりも前記移載方向で前記移載棚に向かう搬出方向に飛び出している飛出し位置であり、前記係合部が、前記トレー本体よりも前記搬出方向に突出しており、前記被接触部位は、前記飛出し位置にある前記栽培トレーの前記係合部であることにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の構成に加えて、前記移載機が前記移動方向で移載位置を占めるとき、前記可動係合部と前記飛出し位置にある前記栽培トレーとが、前記可動係合部が前記トレー本体に下方から当接して前記トレー本体を前記栽培棚から持ち上げるような位置関係にあることにより、前述した課題を解決したものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の構成に加えて、前記検知部が、前記移載方向で前記搬出方向とは反対の方向である搬入方向での先端を有し、前記適正位置における前記飛出し位置との境界位置を、前記移載動作を行う前記可動係合部と前記トレー本体とが接する前記格納位置であるとするとき、前記移載機における前記移載方向での前記先端の位置が、前記格納位置が前記境界位置であるときに前記先端が前記係合部と接する位置に設定されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記検知部の表面がゴム状弾性を有する弾性材料から形成されているか、または前記検知部が可撓性を有することにより、前述した課題を解決したものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記移動方向が上下方向であり、前記検知部が、上下方向に可撓性を有する弾性薄板により構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記接触センサが、スナップアクション式のリミットスイッチであることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0019】
そこで、本発明の植物栽培装置は、栽培対象である植物を保持するトレー本体およびトレー本体に設けられた係合部を有する複数の栽培トレーと、栽培トレーが格納される複数の栽培棚が配列方向に配置されて構成される栽培棚列と、配列方向に平行な移動方向に移動可能であるとともに栽培棚に対して移載方向で栽培トレーの搬入出を行う移載機とを備え、移載機が、栽培トレーを載置可能な移載棚と、移載方向に移動可能であるとともに係合部との係合状態で栽培棚と移載棚との間で栽培トレーを移載する移載動作を行う可動係合部とを有することにより、栽培棚列を構成する複数の栽培棚の配列方向に移動可能な移載機の可動係合部が、栽培トレーの係合部との係合状態で、栽培棚と移載棚との間で栽培トレーを移載する移載動作を行うことで、任意の栽培棚に対する栽培トレーの搬入出を効率よく行うことができるほかに、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0020】
すなわち、請求項1に係る発明の植物栽培装置によれば、該植物栽培装置が、移載機に設けられるとともに移動方向での移載機の移動時に栽培トレーにおける被接触部位との接触を検出する接触センサを備え、接触センサが、栽培棚に格納されている栽培トレーの位置である格納位置が、係合部と可動係合部とが係合可能な適正位置であるときに、または適正位置以外の不適正位置であるときに、被接触部位に接触する検知部を有することにより、栽培棚に格納されている栽培トレーの格納位置を検出する格納位置検出手段としての接触センサが移載機に設けられているので、格納位置検出手段が各栽培棚毎に設けられる場合に比べて、格納位置検出手段である接触センサの数の削減が可能になって、格納位置検出手段を備える植物栽培装置の部品点数が削減され、植物栽培装置のコストを削減することができる。
【0021】
しかも、栽培トレーの格納位置の検出は、任意の栽培棚に対する栽培トレーの搬入出を行うための移載機の移動を利用して行われるので、格納位置を検査するための作業が、移載機による搬入出とは別個に行われる場合に比べて、栽培トレーの格納位置の管理を容易化することができる。
【0022】
さらに、栽培トレーとの接触を検出する接触センサが、栽培棚に格納されている栽培トレーの位置である格納位置が、係合部と可動係合部とが係合可能な適正位置であるときに、または適正位置以外の不適正位置であるときに、栽培トレーの被接触部位に接触する検知部を有することにより、格納位置検出手段が栽培トレーとの接触を検出する接触センサであるので、栽培トレーで栽培されている植物に起因する誤検出(例えば、栽培トレーからのはみ出した植物が接触センサを覆うことによる誤検出。)が発生しにくいこと、植物栽培装置での栽培環境の影響(例えば、接触センサに対する栽培水の付着や水分の結露の影響。)を受けにくいこと、および、適正位置からの僅かに外れた不適正位置の検出が容易であることから、格納位置検出手段による格納位置の検出精度を向上させることができる。
【0023】
請求項2に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
植物栽培装置が移載機を制御する制御装置を備え、制御装置が前記接触センサと、格納位置が適正位置であるか、または不適正位置であるかを判定する格納位置判定手段とを有し、制御装置が、格納位置判定手段により格納位置が不適正位置であると判定されたときに、移動方向での移載機の移動を停止することにより、格納位置が不適正位置であることが検出された際には、移載機が停止するので、不適正位置にある栽培トレーの特定が容易になって、不適正位置にある栽培トレーの格納位置を矯正して適正位置に直すための作業性を向上させることができる。
【0024】
請求項3に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
不適正位置が、適正位置よりも移載方向で移載棚に向かう搬出方向に飛び出している飛出し位置であり、係合部が、トレー本体よりも搬出方向に突出しており、被接触部位は、飛出し位置にある栽培トレーの係合部であることにより、接触センサの検知部が、栽培棚に格納されている栽培トレーにおいて最も搬出方向に位置する係合部に当接するので、正規位置からの飛出し量が小さい段階で、飛出し位置を検出することができ、飛出し位置の検出精度を向上させることができる。
【0025】
請求項4に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項3に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
移載機が移動方向で移載位置を占めるとき、可動係合部と飛出し位置にある栽培トレーとが、可動係合部がトレー本体に下方から当接してトレー本体を栽培棚から持ち上げるような位置関係にあることにより、接触センサにより飛出し位置にある栽培トレーが検出されたときに、移載機の移動動が停止されるので、栽培トレーが飛出し位置にある場合に、トレー本体と可動係合部との衝突により、栽培トレーが持ち上げられることで発生し得る、トレー本体から培養液などの栽培水や培地がこぼれることを防止することができる。
【0026】
請求項5に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
検知部が、移載方向で搬出方向とは反対の方向である搬入方向での先端を有し、適正位置における飛出し位置との境界位置を、移載動作を行う可動係合部とトレー本体とが接する格納位置であるとするとき、移載機における移載方向での先端の位置が、格納位置が境界位置であるときに先端が係合部と接する位置に設定されていることにより、接触センサの検知部の先端の位置を、格納位置での境界位置にあるときに、先端と係合部とが接する位置とすればよいので、先端の位置の設定を容易化することができる。
【0027】
請求項6に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項5のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
検知部の表面がゴム状弾性を有する弾性材料から形成されているか、または検知部が可撓性を有することにより、植物に一部が栽培トレーからはみ出している場合、検知部が植物のはみ出し部分に接触したとしても、検知部の表面が弾性材料から形成され、または検知部が可撓性を有するので、検知部が植物に接触する際の衝撃が緩和されて、検知部との接触による植物の損傷の発生を抑制できる。
【0028】
請求項7に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
移動方向が上下方向であり、検知部が、上下方向に可撓性を有する弾性薄板により構成されていることにより、植物に一部が栽培トレーからはみ出している場合、検知部が植物のはみ出し部分に接触したとしても、検知部が上下方向に扁平であるので、検知部が植物に接触する際の衝撃が分散されること、しかも、検知部が可撓性を有するので前記衝撃が緩和されることから、検知部との接触による植物の損傷の発生を抑制することができる。
【0029】
請求項8に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項7のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
前記接触センサが、スナップアクション式のリミットスイッチであることにより、収納位置検出手段がスナップアクション式のリミットスイッチであるので、検出精度が栽培水の付着や水分の結露などの栽培環境の影響を受けにくく、収納位置検出手段のメンテナンス作業が容易化されて、植物栽培装置のメンテナンス作業を容易化することができ、また検知部による植物との接触および栽培トレーとの接触の区別を容易に設定できるので、検出精度が、栽培されている植物による影響を受けにくくなって、収納位置の検出精度を向上させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例である植物栽培装置の全体斜視図。
【図2】図1のII矢視での植物栽培装置の棚ユニットの図。
【図3】図1の植物栽培装置の移載機の要部斜視図。
【図4】図3の移載機の平面図および栽培トレーの平面図。
【図5】図2の要部拡大図であり、移載機の一部が断面で示される図。
【図6】格納位置が境界位置である栽培トレーと移載機の係合ロッドとの関連を説明する図5と同様の図。
【図7】格納位置が飛出し位置である栽培トレーと移載機の係合ロッドとの関連を説明する図5と同様の図。
【図8】図1の植物栽培装置の制御装置のブロック図。
【図9】図1の植物栽培装置のリミットスイッチの別の例を示す要部の部分断面図。
【図10】図1の植物栽培装置のリミットスイッチのさらに別の例を示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の植物栽培装置は、栽培対象である植物を保持するトレー本体および前記トレー本体に設けられた係合部を有する複数の栽培トレーと、前記栽培トレーが格納される複数の栽培棚が配列方向に配置されて構成される栽培棚列と、前記配列方向に平行な移動方向に移動可能であるとともに前記栽培棚に対して移載方向で前記栽培トレーの搬入出を行う移載機とを備え、前記移載機が、前記栽培トレーを載置可能な移載棚と、前記移載方向に移動可能であるとともに前記係合部との係合状態で前記栽培棚と前記移載棚との間で栽培トレーを移載する移載動作を行う可動係合部とを有し、前記移載機に設けられるとともに前記移動方向での前記移載機の移動時に前記栽培トレーにおける被接触部位との接触を検出する接触センサを備え、前記接触センサが、前記栽培棚に格納されている前記栽培トレーの位置である格納位置が、前記係合部と前記可動係合部とが係合可能な適正位置であるときに、または前記適正位置以外の不適正位置であるときに、前記被接触部位に接触する検知部を有することにより、栽培棚に格納されている栽培トレーの格納位置検出手段の数の削減によるコスト削減を可能としながら、栽培トレーの格納位置の管理を容易化し、かつ栽培トレーの格納位置の検出精度を向上させるものであれば、その具体的な態様は如何なるものであっても構わない。
【0032】
本発明の植物栽培装置における植物は、野菜、穀物、豆類、果実、観賞用植物等のいかなる植物であってもよく、また種、苗等のいかなる状態から生育を開始するもののでもよく、いかなる状態で生育を完了するものであってもよい。
本発明の植物栽培装置は、ビニールハウスや建物などの屋内および屋外のいずれに設置されるものであってもよい。
本発明の植物栽培装置の栽培トレーは、栽培対象である植物を植えられた培地が収容されている容器を保持するもののほかに、培地を直接保持するものでもよく、また、植えられた植物を保持可能な部材であれば、いかなる形状または構造のものであってもよい。
【実施例】
【0033】
本発明の実施例を、図1〜図10を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施例である植物栽培装置100は、設置部としての平面状の床101に設置される立体型植物栽培装置である。
図2を併せて参照すると、植物栽培装置100は、栽培対象である植物(図示されず)を保持可能な複数の栽培トレー110と、植物が保持された栽培トレー110が格納される複数の栽培棚Sを備える棚ユニット120と、栽培トレー110を自動的に搬送するとともに任意の栽培棚Sに対して自動的に移載方向A1で搬入出を行う移送装置Tと、後述するリミットスイッチ180(図3も参照)を含む検出部162(図8参照)の検出信号に応じて移送装置Tを制御する制御装置160(図1に模式的に示されている。)と、操作植物栽培装置100の運転・停止スイッチを有するとともに操作者により操作される制御盤B(図1に模式的に示されている。)とを備える。
【0034】
各栽培トレー110は、作業者により植物が植えられた培地を収容する容器であるプランター102(図5も参照)を保持するトレー本体111と、トレー本体111に設けられて移送装置Tの移載機140の係合ロッド147(図3,図4参照)と係合可能な係合部としての1対の係合要素であるフック117とを有する。
トレー本体111は、プランター102が載置される底壁112(図4,図5も参照。なお図4ではプランター102が省略されている。)と、格納状態の栽培トレー110(すなわち、栽培棚Sに格納されている栽培トレー110)において、移載方向A1で対向する1対の側壁113と、水平面上で移載方向A1に直交する直交方向A2で対向する別の1対の側壁114(図4,図5も参照)とを有する。
【0035】
一方のフック117は、移載方向A1で移載機140側の側壁113において、トレー本体111よりも搬出方向に突出して設けられ、他方のフック117は、移載方向A1で移載機140側とは反対側で、搬入方向に突出して設けられている。
各フック117は、下方に向かって開放しているとともに移載方向A1(すなわち、搬出方向および搬入方向)で、係合ロッド147と係合可能である。
【0036】
ここで、移載方向A1は、水平方向であって、各栽培棚Sと移載機140との間で栽培トレー110が移動する方向である。
また、搬出方向は、移載方向A1のうちで、栽培トレー110が栽培棚Sから搬出される方向であり、搬入方向は、搬出方向とは反対方向であって、栽培トレー110が栽培棚Sに搬入される方向である。
【0037】
棚ユニット120は、1以上の所定列数の、本実施例では、複数としての12の栽培棚列Cと、各栽培棚Sを支持する枠体123とを備えている。
棚ユニット120は、複数の栽培棚Sを有する1以上の所定ブロック数の、本実施例では複数としての2つの第1,第2棚列ブロック121,122を有する。
移載方向A1で互いに対向して配置されている第1,第2棚列ブロック121,122のそれぞれは、1以上の、本実施例では複数としての6つの栽培棚列Cから構成されている。
【0038】
1列である各栽培棚列Cは、配列方向としての上下方向に多段に配置された、複数である所定数の、本実施例では15の栽培棚Sから構成されて、同一の構造を有する。したがって、棚ユニット120の1列毎の栽培棚列Cは、前記所定数の段である15段の棚であり、各栽培棚列Cにおける同一段での栽培棚Sの上下方向での位置は同じである。
【0039】
植物栽培装置100は、格納状態の栽培トレー110の植物を生育させるための栽培環境を設定する栽培環境設定装置(図示されず)を備える。該栽培環境設定装置には、各栽培トレー110に栽培水を供給する栽培水供給装置、植物に光を照射する光源装置、温度や湿度を調整するとともに送風機能を有する空調装置などが含まれる。
ここで、栽培水は、培養液のほかに、肥料を含有していない水などを含み、植物の生育に必要な液体を意味する。
【0040】
図1,図2を参照すると、移送装置Tは、栽培トレー110を水平方向および上下方向に搬送する搬送機構130と、各栽培棚Sとの間で栽培トレー110を搬入出する移載機140とを備える。搬送機構130および移載機140は、制御装置160により制御されて自動的に作動する。
【0041】
移載機140により移載される栽培トレー110を移載機140とともに搬送する搬送機構130は、移載機140を第1移動方向としての上下方向に平行に昇降移動させる第1移動部である昇降部131と、昇降部131を移載機140とともに第2移動方向としての水平移動方向に移動させる第2移動部としての水平移動部136とを備える。
【0042】
昇降部131は、案内部材である4つの支柱132と、各支柱132に沿って上下方向に延びて設けられたチェーン(図示されず)と、移載機140の基台141に回転可能に支持されて前記チェーンに噛合するスプロケット133と、該スプロケット133を回転駆動する駆動部材134とを有する。
そして、スプロケット133が、制御装置160により制御される駆動部材134により駆動されることで、移載機140が、各栽培棚Sに対する栽培トレー110の搬入出が可能となるように予め設定された移載位置Q(図6参照)で停止可能に上下に移動する。
【0043】
水平移動部136は、支持板138と協働して支柱132を支持するとともに水平移動部136が有する回転駆動部材(図示されず)により駆動される可動台137と、可動台137(したがって、搬送機構130)の移動経路である水平移動経路を規定する案内部としての案内レール139とを備える。
案内レール139は、床101および枠体123の上部にそれぞれ設けられた直線状の第1,第2案内レール139b,139aにより構成される。そして、水平移動経路は直交方向A2に一直線状に延びている。
【0044】
第1棚列ブロック121の各栽培棚列Cおよび第2棚列ブロック122の各栽培棚列Cは、移載方向A1で案内レール139を挟んで配置され、かつ移載方向A1で第1,第2棚列ブロック121,122の栽培棚S同士が互いに対向するように、しかも水平移動経路上または水平移動方向で同じ位置に配置されている。
【0045】
図3,図4を中心に、必要に応じて図2を参照すると、搬送機構130に搭載されている移載機140は、直交方向A2で離隔している1対の第1,第2フレーム142,143および両フレーム142,143を連結する連結部材144を有する基台141と、基台141に支持されるとともに栽培トレー110を載置可能な移載棚145と、移載棚145に対して搬入出される栽培トレー110を移載方向A1に平行に案内する1対の案内部146と、移載方向A1に移動可能であるとともにフック117との係合状態で栽培棚Sと移載棚145との間で栽培トレー110を移載する動作である移載動作を行う可動係合部としての1対の可動係合要素である係合ロッド147と、各係合ロッド147を駆動するとともに基台141に取り付けられている移載用駆動部材151とを有する。
【0046】
移載棚145は、直交方向A2で離隔した状態で1対のフレーム142,143にそれぞれ支持される1対のローラ列145aを有する。
一方の係合ロッド147は、第1棚列ブロック121に属する栽培棚Sに格納されている栽培トレー110のフック117と係合可能であり、他方の係合ロッド147は、第2棚列ブロック122に属する栽培棚Sに格納されている栽培トレー110のフック117と係合可能である。
【0047】
移載用駆動部材151は、第1,第2フレーム142,143にそれぞれ支持される伝動機構としての1対のチェーン伝動機構152と、各チェーン伝動機構152を駆動する駆動源としての逆回転可能な電動モータ(図示されず)とを有する。
各係合ロッド147は、その両端部で1対のチェーン伝動機構152がそれぞれ有する無端のチェーン153に直交方向A2に平行な状態で結合されている。そして、各係合ロッド147は、チェーン153の走行に伴って、直交方向A2に平行な状態で、かつ、各チェーン伝動機構152が有する複数のスプロケットのうちの特定のスプロケット154により移動方向が変更されて移載方向A1および上下方向で往復運動する。
それゆえ、スプロケット154は、係合ロッド147の移動方向を変更する移動方向変更部材を構成する回転部材である。
【0048】
図5,図6を参照すると、各係合ロッド147は、各スプロケット154において上下方向に移動する過程でフック117との係合開始および係合解除を行う。
より具体的には、各係合ロッド147は、スプロケット154の周りで上方に移動する過程で、フック117との係合開始を行って係合状態になり、該係合状態で移載方向A1に移動して、移載動作を行う。
また、各係合ロッド147は、スプロケット154の周りで下方に移動する過程でフック117との係合解除を行って係合解除状態になり、該係合解除状態で移載方向A1に移動する。
【0049】
そして、フック117との係合状態にある係合ロッド147は、フック117に搬入方向側(図2,図4において右側)から当接した状態で搬出方向(図2,図4において左方)に移動することにより、第1棚列ブロック121の栽培棚Sから栽培トレー110を搬出して、移載棚145に移載する一方、フック117に搬出方向側(図2,図4において左側)から当接した状態で搬入方向(図2,図4において右方)に移動することにより、移載棚145に載置されている栽培トレー110を第1棚列ブロック121の栽培棚Sに搬入して、格納する。
【0050】
同様に、フック117との係合状態にある係合ロッド147は、フック117に搬入向側(図2,図4において左側)から当接した状態で搬出方向(図2,図4において右方)に移動することにより、第2棚列ブロック122の栽培棚Sから栽培トレー110を搬出して、移載棚145に移載する一方、フック117に搬出方向側(図2,図4において右側)から当接した状態で搬入方向(図2,図4において左方)に移動することにより、移載棚145に載置されている栽培トレー110を第2棚列ブロック122の栽培棚Sに搬入して、格納する。
【0051】
図6,図7を参照して、格納状態の栽培トレー110と係合ロッド147との相互の関連について説明する。
各栽培棚Sにおける格納状態の栽培トレー110の位置である格納位置Pは、フック117と係合ロッド147とが係合可能となる適正位置Pnと、該適正位置Pn以外の位置(すなわち、フック117と係合ロッド147とが係合可能でない位置)である不適正位置としての飛出し位置Pa(図7参照)とに分けられる。
【0052】
ここで、飛出し位置Paは、適正位置Pnよりも移載方向A1で移載棚145に向かう方向である搬出方向に飛び出している位置である。また、格納状態の栽培トレー110については、各栽培棚Sに設けられたストッパ(図示されず)により、搬入方向への栽培トレー110の移動が所定位置で阻止されている。そして、栽培トレー110は、該ストッパに当接している状態においては、適正位置Pnを占めている。
なお、図6には、搬入方向で前記ストッパ当接している栽培トレー110が二点鎖線で示されている。
【0053】
図7に示されるように、移載機140が移動方向で移載位置Q(図6も参照)を占めるとき、係合ロッド147と飛出し位置Paにある栽培トレー110とは、係合ロッド147がトレー本体111の底壁112に下方から当接してトレー本体111を栽培棚Sから持ち上げるような位置関係にある。
具体的には、移載位置Qを占める移載機140において、フック117との係合状態にあるときの係合ロッド147の最上部は、格納状態での栽培トレー110のトレー本体111の底壁112の下面よりも上方に位置する。
したがって、飛出し位置Paにある栽培トレー110には、図7に二点鎖線で示されるように、スプロケット154により下方から上方に移動する係合ロッド147が底壁112に下方から当接するために、栽培トレー110の移載機140側の部分が持ち上げられた状態で、栽培トレー110が傾斜し、栽培トレー110に収容されている培地や栽培液がこぼれることがある。
【0054】
図8を参照すると、制御装置160は、植物栽培装置100の状態を検出する検出部161と、制御盤Bから出力される操作信号および検出部161から出力される検出信号が入力される制御部171とを有する。
検出部161は、移載棚145に対する係合ロッド147の位置を検出する移載用位置検出手段162と、上下方向および水平移動方向での移載機140の位置を検出する移送用位置検出手段163と、栽培トレー110の格納位置Pを検出する格納位置検出手段としてリミットスイッチ180(以下、「スイッチ180」という。)とを含む。
【0055】
各位置検出手段162,163は、例えばエンコーダにより構成され、制御部171は、中央演算処理装置、入出力装置および記憶装置を備えるコンピュータにより構成されている。
制御盤Bから出力される操作信号には、移載機140を各格納棚Sに対応する移載位置Q(図6参照)に移動させるための移載位置指定信号が含まれる。
【0056】
図3〜図5を参照すると、スイッチ180は、移載機140が上下方向に移動する移動時(すなわち、移載機140の昇降時)に、栽培トレー110における被接触部位(すなわち、栽培トレー110において、スイッチ180と接触する部分)としてのフック117との接触を検出する接触センサである。
スイッチ180は、1列の栽培棚列Cに対して、1以上である設定数、本実施例では複数である2つ設けられる。したがって、移載機140には、第1,第2棚列ブロック121,122のそれぞれの栽培棚列Cに対応して、4つのスイッチ180である1対のスイッチ181および1対のスイッチ182が設けられる。
【0057】
各スイッチ181,182は、基台141の各フレーム142,143に、上下方向および移載方向A1での各スイッチ181,182の接触部186の位置調整が可能となるように、ロッド149aおよびブラケット149bを有する取付部材149を介して取り付けられている。
このため、1つの栽培棚列Cにおける栽培トレー110のフック117と接触可能な1対のスイッチ181,182が直交方向で離隔して設けられている。そして、各スイッチ181,182は、移載機140において、移載方向A1で栽培棚Sに最も近い部分である各フレーム142,143の端部寄りに位置する(図2も参照)。
【0058】
同一構造の4つのスイッチ181,182は、基台141に対する上下方向での位置が異なる2つ第1スイッチとしての上部スイッチ181と、2つの第2スイッチとしての下部スイッチ182とから構成される。
両上部スイッチ181は、第1フレーム142に設けられるとともに該第1フレーム142に対して上方に離隔して、しかも上下方向で同じ位置に配置され、両下部スイッチ182は、第2フレーム143に設けられるとともに該第2フレーム143に対して下方に離隔して、しかも上下方向で同じ位置に配置される。
【0059】
また、直交方向A2での上部スイッチ181および下部スイッチ182の間隔は、直交方向A2において、移載機140が水平移動方向(すなわち、直交方向A2)で隣接する栽培棚列C同士の間に位置するとき、上部スイッチ181および下部スイッチ182の一方により、栽培棚列C同士の一方の栽培棚列Cに格納されている栽培トレー110のフック117との接触が検出可能であり、上部スイッチ181および下部スイッチ182の他方により、栽培棚列C同士の他方の栽培棚列Cに格納されている栽培トレー110のフック117との接触が検出可能である値に設定されている。
これにより、隣接する栽培棚列C同士における各栽培トレー110の格納位置Pが適正位置Pnであるが飛出し位置Paであるのかを、1回の上下方向での移動により検出できるので、格納位置Pの検査の作業性を向上させることができる。
【0060】
図3,図4を参照すると、各スイッチ181,182は、例えば、ばねなどによるスナップアクションを利用したスナップアクション式のリミットスイッチにより構成され、格納状態の栽培トレー110と接触可能な検知部としての検知レバー185と、検知レバー185の動きに応じて検出信号としてのオン信号およびオフ信号を択一的に出力するセンサ本体188とを有する。
【0061】
スイッチ181,182におけるアクチュエータである検知レバー185は、スイッチ181,182が各フレーム142,143に取り付けられた状態で水平方向に平行に、かつ上下方向から見たとき(または、平面視で)フック117を指向して延びている。
検知レバー185は、可撓性および弾性を有するともに栽培トレー110に接触する接触部186と、センサ本体188に移動可能に支持されるとともに接触部186と結合される支持部187とを有する。支持部187は、接触部186よりも大きな剛性を有し、栽培トレー110との接触時に接触部186に作用する接触押圧力による接触部186の動きをセンサ本体188に伝達する。
【0062】
接触部186は、棒状の部材により構成され、例えば、金属、合成樹脂またはゴム状弾性を有する弾性部材(代表的にはゴム)である形成材料により形成されている。
また、接触部186の弾性による可撓性は、前記接触押圧力の作用による検知レバー185の動きによりスイッチ181,182が作動する程度に設定される一方、移載機140の初稿移動の際に、移載機140と一体に上下方向に移動しているスイッチ181,182の接触部186が、栽培トレー110からはみ出している植物と接触部186との接触に起因して、植物に発生し得る損傷を抑制する観点から設定されている。
植物に対するこのような損傷の発生抑制効果は、移動している接触部186からの植物への衝撃が、接触部186での可撓性により緩和されることによる。
【0063】
図5,図7に示されるように、接触部186は、上下方向での移載機140の移動時に、各栽培棚Sにおける格納状態の栽培トレー110の位置である格納位置Pが、フック117と係合ロッド147とが係合可能となる適正位置Pnであるときに、栽培トレー110と接触することがなく、該適正位置Pn以外の位置である不適正位置としての飛出し位置Paであるときに、フック117と接触する。
【0064】
また、接触部186は、搬入方向での先端186aを有する。先端186aは、スイッチ181,182において、最も搬入方向に位置する部分、または移載方向A1で最も栽培棚Sに近い部分であり、スイッチ181,182において、移載方向A1で最初に、格納状態の栽培トレー110に接触する部分である。
【0065】
そして、図6に示されるように、適正位置Pnにおける飛出し位置Pa(図7参照)との境界位置Pn1を、移載動作を行う係合ロッド147とトレー本体111とが接するときの、格納位置Pであるとするとき、移載機140における移載方向A1での先端186aの位置は、格納位置Pが境界位置Pn1であるときに先端186aがフック117と接する位置に設定されている。
適正位置Pnの1つの位置であるこの境界位置Pn1は、係合ロッド147とトレー本体111とが、移載動作を行うための係合ロッド147の移動軌跡とトレー本体111との接点で接触する位置であり、係合ロッド147がトレー本体111と接触した場合に、移動する係合ロッド147が栽培トレー110の格納位置Pを変更させない位置である。
【0066】
図8を参照すると、制御部171は、係合ロッド147の停止位置を制御する移載制御手段172と、水平移動方向および上下方向での移載機140の位置を制御する移送制御手段173と、格納位置Pが適正位置Pn(図5,図6参照)であるか、または飛出し位置Pa(図7参照)であるかを判定する格納位置判定手段174と、報知制御手段175とを有する。
移載制御手段172は、移載用位置検出手段162により検出される係合ロッド147の位置に基づいて移載機140の移載用駆動部材151(図3参照)を制御することにより、係合ロッド147の停止位置を制御する。
移送制御手段173は、移送用位置検出手段163の検出結果に基づいて、搬送機構130の昇降部131の駆動部材134および水平移動部136(図2参照)を制御することにより、水平移動方向および上下方向での移載機140の位置を制御する。
【0067】
さらに、移送制御手段173は、格納位置判定手段174による判定結果に応じて搬送機構130による移載機140の初稿移動を制御する。具体的には、格納位置判定手段174により、格納位置Pが飛出し位置Pa(図7参照)であると判定されたときに、上下方向での移載機140の移動を停止し、格納位置Pが適正位置Pn(図5,図6参照)であると判定されたときに、上下方向での移載機140の移動を継続する。
【0068】
また、報知制御手段175は、格納位置判定手段174により格納位置Pが飛出し位置Paであると判定されたときに、植物栽培装置100が備える報知装置190(例えば、報知発生機、報知灯)を作動させて、操作者に飛出し位置Paを占めている栽培トレー110が存在することを報知する。
【0069】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
植物栽培装置100において、栽培棚列Cを構成する複数の栽培棚Sの配列方向である上下方向に移動可能な移載機140係合ロッド147が、栽培トレー110のフック117との係合状態で、栽培棚Sと移載棚145との間で栽培トレー110を移載する移載動作を行うことで、任意の栽培棚Sに対する栽培トレー110の搬入出を効率よく行うことができる。
【0070】
また、栽培トレー110の格納位置Pを検出する格納位置検出手段としてのスイッチ181,182が移載機140に設けられているので、格納位置検出手段が各栽培棚S毎に設けられる場合に比べて、格納位置検出手段であるスイッチ181,182の数の削減が可能になって、格納位置検出手段を備える植物栽培装置100の部品点数が削減され、植物栽培装置100のコストを削減することができる。
しかも、栽培トレー110の格納位置Pの検出は、任意の栽培棚Sに対する栽培トレー110の搬入出を行うための移載機140の移動を利用して行われるので、格納位置Pを検査するための作業が、移載機140による搬入出とは別個に行われる場合に比べて、栽培トレー110の格納位置Pの管理を容易化することができる。
さらに、スイッチ181,182が、格納位置Pが飛出し位置Paであるときに、栽培トレー110のフック117に接触する検知レバー185を有する。
この構成により、格納位置検出手段が栽培トレー110との接触を検出する接触センサであるので、栽培トレー110で栽培されている植物に起因する誤検出(例えば、格納位置検出手段が光電センサである場合と比べて、栽培トレー110からのはみ出した植物がスイッチ181,182を覆うことによる誤検出。)が発生しにくいこと、植物栽培装置100での栽培環境の影響(例えば、格納位置検出手段が光電センサである場合と比べて、接触センサに対する栽培水の付着や水分の結露の影響。)を受けにくいこと、および、適正位置Pnからの僅かに外れた飛出し位置Paの検出が容易であることから、格納位置検出手段による格納位置Pの検出精度を向上させることができる。
【0071】
制御装置160が、格納位置Pが適正位置Pnであるか、または飛出し位置Paであるかを判定する格納位置判定手段174とを有し、格納位置判定手段174により格納位置Pが飛出し位置Paであると判定されたときに、移載制御手段172が移載機140の初稿移動を停止する。
この構成により、格納位置Pが飛出し位置Paであることが検出された際には、移載機140が停止するので、飛出し位置Paにある栽培トレー110の特定が容易になって、飛出し位置Paにある栽培トレー110の格納位置Pを矯正して適正位置Pnに直すための作業性を向上させることができる。
【0072】
栽培トレー110のフック117が、トレー本体111よりも搬出方向に突出しており、スイッチ181,182が栽培トレー110において接触する部位は、飛出し位置Paにあるフック117である。この構成により、スイッチ181,182の検知レバー185が、栽培棚Sに格納されている栽培トレー110において最も搬出方向に位置するフック117に当接するので、正規位置からの飛出し量が小さい段階で、飛出し位置Paを検出することができ、飛出し位置Paの検出精度を向上させることができる。
【0073】
移載機140が移動方向で移載位置Qを占めるとき、係合ロッド147と飛出し位置Paにある栽培トレー110とが、係合ロッド147がトレー本体111に下方から当接してトレー本体111を栽培棚Sから持ち上げるような位置関係にある。
この構造により、スイッチ181,182により飛出し位置Paにある栽培トレー110が検出されたときに、移載機140の初稿移動が停止されるので、栽培トレー110が飛出し位置Paにある場合に、トレー本体111と係合ロッド147との衝突により、栽培トレー110が持ち上げられて、栽培トレー110が傾斜することで発生し得る、トレー本体111から培養液などの栽培水や培地がこぼれることを防止することができる。
【0074】
スイッチ181,182の検知レバー185が、移載方向A1で搬出方向とは反対の方向である搬入方向での先端186aを有し、適正位置Pnにおける飛出し位置Paとの境界位置Pn1を、移載動作を行う係合レバー147とトレー本体111とが接する格納位置Pであるとするとき、移載機140における移載方向A1での先端186aの位置が、格納位置Pが境界位置Pn1であるときに先端186aがフック117と接する位置に設定されている。
この構成により、検知レバー185の先端186aの位置を、格納位置Pでの境界位置Pn1にあるときに、先端186aとフック117とが接する位置とすればよいので、先端186aの位置の設定を容易化することができる。
検知レバー185の接触部186が可撓性を有することにより、植物に一部が栽培トレー110からはみ出している場合、接触部186が植物のはみ出し部分に接触したとしても、接触部186が可撓性を有するので、接触部186が植物に接触する際の衝撃が緩和されて、接触部186との接触による植物の損傷の発生を抑制できる。
【0075】
スイッチ181,182が検知レバー185をアクチュエータとするスナップアクション式のリミットスイッチであることにより、飛出し位置Paの検出精度が栽培環境の影響(例えば、栽培水の付着や水分の結露などの影響。)を受けにくく、収納位置検出手段のメンテナンス作業が容易化されて、植物栽培装置100のメンテナンス作業を容易化することができ、また検知部による植物との接触および栽培トレー110との接触の区別を容易に設定できるので、検出精度が、栽培されている植物による影響を受けにくくなって、収納位置の検出精度を向上させことができる。
【0076】
スイッチ181,182が、移載機140において、上下方向で、互いに反対側である上方側および下方側に離隔して配置されることにより、スイッチ180が、上下宇高での一方側のみに配置される場合に比べて、1列の栽培棚列Cを構成するすべての栽培棚Sでの栽培トレー110の格納位置Pを検出するための移載機140の移動距離が短くなるので、植物栽培装置100のすべての栽培トレー110の格納位置Pの検査の作業性を向上させることができる。
【0077】
スイッチ181,182が、移載方向A1で、移載機140の両側に設けられていることにより、移載方向A1で対向する1対の栽培棚列Cにおける栽培トレー110の格納位置Pを検出するための移載機140の移動を1回の上下方向で済むので、植物栽培装置100が有するすべての栽培トレー110の格納位置Pの検査の作業性を向上させることができる。
【0078】
1つの栽培棚列Cにおける栽培トレー110のフック117と接触可能な1対のスイッチ181,182が直交方向A2で離隔して設けられていることにより、格納状態の栽培トレー110が、平面視で直交方向A2に対して傾斜している場合にも、1対のスイッチ181,182の一方により、栽培トレー110が飛出し位置Paにあることを検出できるので、この点でも、飛出し位置Paの検出精度を向上させることができる。
【0079】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
スイッチ180の検知レバー185の別の例として、図9に示されるように、接触部286および支持部185を有する検知レバー285において、検知レバー285の接触部286が、可撓性および弾性を有する金属製の棒状の芯材286bと、植物と接触する可能性がある範囲で芯材286bを被覆する被覆層286cとにより構成されていてもよい。検知レバー285の表面286sを形成する被覆層266cは、ゴム状弾性を有する弾性材料(例えば、ゴム)により形成され、ここでは芯材286bの全体を被覆しているが、その先端286e側から芯材286bの一部を被覆していてもよい。
このように、検知レバー285の接触部286の表面286sがゴム状弾性を有する弾性材料から形成されていることにより、植物に一部が栽培トレー110(図2参照)からはみ出している場合、接触部286が植物のはみ出し部分に接触したとしても、接触部286の表面286sが弾性材料から形成されているので、接触部286が植物に接触する際の衝撃が緩和されて、接触部286との接触による植物の損傷の発生を抑制できる。
【0080】
さらに、スイッチ180の検知レバー185の別の例として、図10に示されるように、接触部386および支持部185を有する検知レバー385において、接触部386は、上下方向に可撓性を有するとともに弾性を有する薄板(すなわち、弾性薄板)により構成されていてもよい。接触部386の上下方向での厚みは、接触部185(図3参照)と同様の可撓性および弾性を有するように設定される。
このように、検知レバー385の接触部386が、上下方向に可撓性を有する弾性薄板により構成されていることにより、植物に一部が栽培トレー110からはみ出している場合、検知部が植物のはみ出し部分に接触したとしても、接触部386が上下方向に扁平であるので、接触部386が植物に接触する際の衝撃が分散されること、しかも、接触部386が可撓性を有するので前記衝撃が緩和されることから、接触部386との接触による植物の損傷の発生を抑制することができる。
【0081】
栽培トレー110が、被接触部位として、格納位置Pが適正位置Pnであるときに接触センサと接触する適正位置指標部位を有していてもよい。この場合、格納位置判定手段174は、接触センサが被接触部位に接触したときに、格納位置Pが適正位置Pnであると判定する。
【0082】
例えば、係合部が、栽培トレー110において水平移動方向での側壁113,114に設けられる場合など、係合部、可動係合部および栽培棚Sの構造によっては、不適正位置が、移載方向A1での適正位置Pnからのずれでなく、前記水平移動方向または上下方向での適正位置Pnからのずれであってもよい。
栽培トレー110の係合部は、格納状態の栽培トレー110において、移載方向A1で移載機140側のみのフック117で構成されてもよい。また、フック117は、直交方向A2に並んだ複数の部材により構成されてもよい。
可動係合部は、1つの係合ロッド147により構成されてもよい。
1つの栽培棚列Cを構成する前記所定数の栽培棚Sの配列方向は、水平方向であってもよい。
【0083】
接触部186,286,386の表面は、低摩擦材料(例えば、フッ素樹脂)のコーティングで形成されていてもよく、この場合にも、接触部接触部186,286,386と植物との接触時の摩擦力が減少するので、植物の損傷の発生を抑制することができる。
係合ロッド147を駆動する移載用駆動部材は、チェーン伝動機構152以外の伝動機構または電動モータ以外のアクチュエータを有していてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100・・・植物栽培装置
110・・・栽培トレー
111・・・トレー本体
117・・・フック
120・・・棚ユニット
130・・・搬送機構
140・・・移載機
145・・・移載棚
147・・・係合ロッド
160・・・制御装置
174・・・格納位置判定手段
180〜182・・・リミットスイッチ
185・・・検知レバー
186・・・接触部
186a・・・先端
A1 ・・・移載方向
A2 ・・・直交方向、
S ・・・栽培棚
T ・・・移送装置
P ・・・格納位置
Pn ・・・適正位置
Pn1・・・境界位置
Pa ・・・飛出し位置
Q ・・・移載位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培対象である植物を保持するトレー本体および前記トレー本体に設けられた係合部を有する複数の栽培トレーと、前記栽培トレーが格納される複数の栽培棚が配列方向に配置されて構成される栽培棚列と、前記配列方向に平行な移動方向に移動可能であるとともに前記栽培棚に対して移載方向で前記栽培トレーの搬入出を行う移載機とを備え、前記移載機が、前記栽培トレーを載置可能な移載棚と、前記移載方向に移動可能であるとともに前記係合部との係合状態で前記栽培棚と前記移載棚との間で前記栽培トレーを移載する移載動作を行う可動係合部とを有する植物栽培装置において、
前記移載機に設けられるとともに前記移動方向での前記移載機の移動時に前記栽培トレーにおける被接触部位との接触を検出する接触センサを備え、
前記接触センサが、前記栽培棚に格納されている前記栽培トレーの位置である格納位置が、前記係合部と前記可動係合部とが係合可能な適正位置であるときに、または前記適正位置以外の不適正位置であるときに、前記被接触部位に接触する検知部を有することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記移載機を制御する制御装置を備え、
前記制御装置が前記接触センサと、前記格納位置が前記適正位置であるか、または前記不適正位置であるかを判定する格納位置判定手段とを有し、
前記制御装置が、前記格納位置判定手段により前記格納位置が前記不適正位置であると判定されたときに、前記移動方向での前記移載機の移動を停止することを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記不適正位置が、前記適正位置よりも前記移載方向で前記移載棚に向かう搬出方向に飛び出している飛出し位置であり、
前記係合部が、前記トレー本体よりも前記搬出方向に突出しており、
前記被接触部位は、前記飛出し位置にある前記栽培トレーの前記係合部であることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記移載機が前記移動方向で移載位置を占めるとき、前記可動係合部と前記飛出し位置にある前記栽培トレーとが、前記可動係合部が前記トレー本体に下方から当接して前記トレー本体を前記栽培棚から持ち上げるような位置関係にあることを特徴とする請求項3に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記検知部が、前記移載方向で前記搬出方向とは反対の方向である搬入方向での先端を有し、
前記適正位置における前記不適正位置との境界位置を、前記移載動作を行う前記可動係合部と前記トレー本体とが接する前記格納位置であるとするとき、前記移載機における前記移載方向での前記先端の位置が、前記格納位置が前記境界位置であるときに前記先端が前記係合部と接する位置に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記検知部の表面がゴム状弾性を有する弾性材料から形成されているか、または前記検知部が可撓性を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記移動方向が上下方向であり、
前記検知部が、上下方向に可撓性を有する弾性薄板により構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記接触センサが、スナップアクション式のリミットスイッチであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の植物栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217355(P2012−217355A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83857(P2011−83857)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】