説明

植物栽培装置

【課題】養液の劣化抑制を図りながら、消費電力量の低減化を図ることができる植物栽培装置を提供すること。
【解決手段】断熱筐体であるケース本体10の内部に画成された収納庫11に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ栽培対象となる植物を載置する載置棚12と、ケース本体10の内部において収納庫11の内部と外部との間で空気を循環させる空気循環手段20と、空間循環手段により循環される空気を冷却する蒸発器24とを備え、載置棚12に載置された植物を所望の温度状態で栽培するようにした植物栽培装置において、各段の載置棚12における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンク31に貯留された養液を循環させる複数の養液循環手段30を備え、養液循環手段30を構成する養液タンク31を空気循環手段20により循環する空気通路21にそれぞれ配設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関し、より詳細には、植物を所望の温度状態で栽培するようにした植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を所望の温度状態で栽培するようにした植物栽培装置として次のようなものが知られている。前面に開口が形成された断熱筐体であるケース本体の内部の収納庫に、複数の載置棚が上下方向に沿って複数段設けられており、それぞれの載置棚に植物が載置されている。また、ケース本体内であって収納庫外となる個所には、吸込口を通じて吸い込んだ収納庫内の空気の通路が形成してあり、この空気通路には蒸発器が配設されている。この空気通路を通過する空気は、蒸発器で冷却され、その後に収納庫の上部に設けられた吹出口より吹き出される。吹出口から吹き出された空気が収納庫を通過して吸込口に吸い込まれて循環することにより収納庫の内部が所望の温度に調整される。更に、ポンプの駆動により養液タンクに貯留された養液を最上段の載置棚から下方の載置棚に向けて順次流下させるようにしている。
【0003】
このような植物栽培装置においては、養液を各載置棚の全域に行き渡らせるよう循環させているために養液タンクの容量が過大なものとなり、かかる養液タンクをケース本体の内部に設けることができず、ケース本体の外部に配設していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−94624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したような植物栽培装置では、養液タンクをケース本体の外部に配設していたために、養液タンクに貯留される養液の温度が収納庫の庫内温度よりも高くなってしまうことがある。このような養液タンクに貯留された養液は、ポンプの駆動により収納庫内を通過するので、収納庫の熱負荷が過大なものとなり、収納庫の庫内温度を冷却するための消費電力量の増大化を招来する。また、養液タンクに貯留される養液の温度が上昇すると、養液自体の劣化が早まってしまう問題もあった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、養液の劣化抑制を図りながら、消費電力量の低減化を図ることができる植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る植物栽培装置は、前面に開口が形成された断熱筐体であるケース本体と、前記ケース本体の内部に画成された収納庫に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ栽培対象となる植物を載置する載置棚と、前記ケース本体の内部において前記収納庫の内部と外部との間で空気を循環させる空気循環手段と、前記空間循環手段により循環される空気を冷却する冷却手段とを備え、前記載置棚に載置された植物を所望の温度状態で栽培するようにした植物栽培装置において、各段の載置棚における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンクに貯留された養液を循環させる複数の養液循環手段を備え、前記養液循環手段を構成する養液タンクを前記空気循環手段により循環する空気の通路にそれぞれ配設したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る植物栽培装置は、上述した請求項1において、前記載置棚は、それぞれ前記区画毎に分割されて設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の植物栽培装置によれば、複数の養液循環手段が、各段の載置棚における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンクに貯留された養液を循環させるので、各養液タンクの容量の小型化を図ることができる。しかも、養液循環手段を構成する養液タンクを空気循環手段により循環する空気の通路にそれぞれ配設したので、養液タンクに貯留する養液を適度に冷却することができる。これにより、養液の劣化を抑制することができるとともに、収納庫の内部の熱負荷を低減させることができる。よって、養液の劣化抑制を図りながら、消費電力量の低減化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である植物栽培装置の内部構造を側方から見た場合を模式的に示す断面側面図である。
【図2】図2は、図1に示した植物栽培装置を正面から見た場合を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る植物栽培装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態である植物栽培装置の内部構造を側方から見た場合を模式的に示す断面側面図である。ここで例示する植物栽培装置は、ケース本体10を備えている。
【0013】
ケース本体10は、前面に開口10aが形成された略直方状の断熱筐体であり、その内部には収納庫11が画成してあるとともに、空気循環手段20が設けてある。また、ケース本体10の前面開口10aは、扉体1により開閉されるようになっている。
【0014】
収納庫11は、上記前面開口10aを臨む態様で画成された室であり、複数の載置棚12が上下方向に沿って複数段(図示の例では6段)並べて配設してある。載置棚12は、それぞれ栽培対象となる植物を載置するためのものである。この載置棚12の構成については後述する。
【0015】
空気循環手段20は、空気通路21と循環ファンFとを備えて構成してある。空気通路21は、吸込口22から吹出口23に至る空気の通路である。ここに吸込口22は、収納庫11の内部の空気を吸い込むための開口であり、収納庫11の左右方向に沿って延設してある。この吸込口22は、収納庫11の下側前方縁部、すなわちケース本体10の前面開口10a近傍の下部に配設してある。吹出口23は、収納庫11の内部に空気を吹き出すための開口である。この吹出口23は、収納庫11の左右方向に延設してあって、収納庫11の上側前方縁部に設けてある。
【0016】
このような空気通路21は、収納庫11外であってその下方にある下方ダクト21aと、収納庫11外であってその背面側にある背面ダクト21bと、収納庫11外であってその上方にある上方ダクト21cとを互いに連通した態様で構成してある。
【0017】
循環ファンFは、空気を循環させるものであり、背面ダクト21bと上方ダクト21cとの境界領域に配設してある。本実施の形態においては、循環ファンFは背面ダクト21bと上方ダクト21cとの境界領域に配設してあるが、本発明では、循環ファンFの配設位置は特に限定されるものではなく、後述する循環ファンFの機能を発揮することができる個所であればどこに配設しても構わない。
【0018】
このような空気循環手段20においては、循環ファンFが駆動することにより吸込口22を通じて収納庫11の内部にある空気(内部空気)を吸い込み、吸い込んだ空気が空気通路21を通過する態様で吹出口23まで送出し、吹出口23を通じて送出した空気を収納庫11の内部に吹き出すことにより、収納庫11の内部と外部との間で空気を循環させるものである。
【0019】
上記空気通路21の背面ダクト21bには、蒸発器(冷却手段)24が設けてある。蒸発器24は、図には明示しない圧縮機、凝縮器及び膨張機構とともに冷媒を循環させる冷媒循環手段を構成する。ここに圧縮機は、冷媒を圧縮するものであり、凝縮器は、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させるものである。膨張機構は、凝縮器で凝縮された冷媒を断熱膨張させて低温低圧の状態にさせるものである
【0020】
蒸発器24は、循環ファンFが駆動することにより背面ダクト21bを下方から上方に向けて通過する空気と、膨張機構で断熱膨張させた冷媒とを熱交換させるもの、より詳細には、冷媒を蒸発させることにより背面ダクト21bを通過する空気を冷却するものである。この蒸発器24で蒸発した冷媒は、再び圧縮機に戻り圧縮されることになる。
【0021】
図2は、図1に示した植物栽培装置を正面から見た場合を模式的に示す正面図であり、扉体1の図示を省略している。この図2に示すように、本実施の形態である植物栽培装置は、各段の載置棚12が左右2つに分割された構造を有しているとともに、複数(図示の例では2つ)の養液循環手段30を有している。
【0022】
各載置棚12には、対応する養液循環手段30により循環する養液が通過する溝12aが形成されている。そして、図には明示しないが、該溝12aを通過する養液に根が浸漬した状態で植物を載置、あるいは該溝12aを通過する養液を吸収可能に配設された培地に植え付けられた状態で植物を載置している。
【0023】
養液循環手段30は、左右2つに分割された各段の載置棚12に対応して左右に2つ設けてある。これら養液循環手段30は、養液タンク31と、送液パイプ32と、連結パイプ33と、帰還パイプ34とを備えて構成してある。
【0024】
養液タンク31は、養液を貯留するものであり、本実施の形態では、ケース本体10の内部であって下方ダクト21aに配設してある。送液パイプ32は、養液タンク31の養液を最上段の載置棚12に送出するためのものであり、一端が養液タンク31の養液に浸漬し、他端が最上段の載置棚12の溝12aに連通している。この送液パイプ32の途中にはポンプ32aが設けてある。連結パイプ33は、各段の載置棚12の溝12aを連結するものである。帰還パイプ34は、最下段の載置棚12から養液タンク31に養液を戻すためのものであり、一端が最下段の載置棚12の溝12aに連通し、他端が養液タンク31に進入している。
【0025】
以上のような構成による植物栽培装置においては、循環ファンF及び圧縮機が駆動することにより、収納庫11の庫内温度を所望の温度に保持することができる。
【0026】
循環ファンFの駆動により、収納庫11の内部の空気は、吸込口22を通じて吸い込まれ、下方ダクト21aを通過し、背面ダクト21bに進入する。背面ダクト21bに進入した空気は、蒸発器24を通過して冷却され、冷気となって上方ダクト21cを通過し、吹出口23より吹き出される。この吹出口23より吹き出された空気(冷気)は、吸込口22に向けて流れることにより、収納庫11の庫内温度を冷却することになる。
【0027】
そして、各養液循環手段30を構成するポンプ32aが駆動することにより、各養液タンク31に貯留される養液は次のように循環する。
【0028】
左側の養液循環手段30においては、養液タンク31に貯留された養液が送液パイプ32を通じて最上段の左側の載置棚12に送出される。最上段の左側載置棚12に送出された養液は、該載置棚12の溝12aを通過し、その後連結パイプ33を通じて下段の左側載置棚12の溝12aを順次通過する。そして、最下段の左側載置棚12の溝12aを通過した養液は、帰還パイプ34を通じて養液タンク31に戻り、以降これを繰り返すことで循環する。
【0029】
一方、右側の養液循環手段30においては、養液タンク31に貯留された養液が送液パイプ32を通じて最上段の右側の載置棚12に送出される。最上段の右側載置棚12に送出された養液は、該載置棚12の溝12aを通過し、その後連結パイプ33を通じて下段の右側載置棚12の溝12aを順次通過する。そして、最下段の右側載置棚12の溝12aを通過した養液は、帰還パイプ34を通じて養液タンク31に戻り、以降これを繰り返すことで循環する。
【0030】
このように養液循環手段30は、それぞれ各段の載置棚12における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンク31に貯留された養液を循環させている。
【0031】
以上説明したように本実施の形態である植物栽培装置においては、複数の養液循環手段30がそれぞれ各段の載置棚12における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンク31に貯留された養液を循環させているので、各養液タンク31の容量の小型化を図ることができ、しかも各養液タンク31をケース本体10の内部であって下方ダクト21aに配設、すなわち空気循環手段20により循環する空気通路21に配設してあるので、養液タンク31に貯留する養液を適度に冷却することができる。これにより、養液の劣化を抑制することができるとともに、収納庫11の内部の熱負荷を低減させることができる。
【0032】
従って、本発明の実施の形態である植物栽培装置によれば、養液の劣化抑制を図りながら、消費電力量の低減化を図ることができる。
【0033】
上記植物栽培装置によれば、各段の載置棚12を左右に分割しているので、左右の養液循環手段30で循環させる養液の種類を変更等することで各段における左右の載置棚12で植物の成長タイミングをずらしたり、各段の左右の載置棚12で異なる植物を育成したりすることが可能になる。
【0034】
尚、上記収納庫11においては、図には明示しないが、各載置棚12に載置された植物を成長させるための光源(例えばLEDや蛍光ランプ)が天井や載置棚12の下方部分に適宜配設してあってもよい。この各段の左右の載置棚12の光源の照度を変更することでも植物の成長タイミングを調整することができる。
【0035】
また、上記植物栽培装置によれば、養液タンク31の小型化を図るとともに、空気通路21に配設して養液タンク31に貯留する養液を適度に冷却するので、養液入れ替え時における養液の冷却を良好に行うことができ、これによっても消費電力量の低減させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0037】
上述した実施の形態では、各段の載置棚12を左右2つに分割していたが、本発明においては、各段の載置棚は必ずしも複数に分割されている必要がなく、各養液循環手段が各段の載置棚の決められた区画に養液を流下させるような構成を有していればよい。これによっても各区画毎に異なる植物を育成したり、植物の成長タイミングをずらしたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る植物栽培装置は、植物を栽培するのに有用である。
【符号の説明】
【0039】
10 ケース本体
10a 前面開口
11 収納庫
12 載置棚
12a 溝
20 空気循環手段
21 空気通路
21a 下方ダクト
21b 背面ダクト
21c 上方ダクト
22 吸込口
23 吹出口
24 蒸発器
30 養液循環手段
31 養液タンク
32 送液パイプ
32a ポンプ
33 連結パイプ
34 帰還パイプ
F 循環ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口が形成された断熱筐体であるケース本体と、
前記ケース本体の内部に画成された収納庫に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ栽培対象となる植物を載置する載置棚と、
前記ケース本体の内部において前記収納庫の内部と外部との間で空気を循環させる空気循環手段と、
前記空間循環手段により循環される空気を冷却する冷却手段と
を備え、前記載置棚に載置された植物を所望の温度状態で栽培するようにした植物栽培装置において、
各段の載置棚における決められた区画に上段側より順次流下させる態様で自身の養液タンクに貯留された養液を循環させる複数の養液循環手段を備え、
前記養液循環手段を構成する養液タンクを前記空気循環手段により循環する空気の通路にそれぞれ配設したことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記載置棚は、それぞれ前記区画毎に分割されて設けてあることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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