説明

植物栽培装置

【課題】植物栽培の工業化を図ったものであり、建物あるいはフレームの棚に配置された全部の栽培容器の積み上げ、積み下ろしが簡単にでき、かつ、全体として強度を備えた植物栽培用の昇降装置を提供する。
【解決手段】4本の柱からなるフレーム11と、そのフレームの固定ツメCに支持されて上下に配列される栽培ベッド12と、その栽培ベッド12と係合するアームAを有し、隣接する栽培ベッド間を上下動自在に駆動する昇降部材13と、隣接する上下の栽培ベッド13によって区切られた複数の栽培空間14とを備えた植物栽培装置10。固定ツメCは柱21内に収納可能に設けられており、収納した状態と突出した状態の間で駆動され、アームAは、昇降部材13内に収納可能に設けられており、収納した状態と突出した状態の間で駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物栽培の工業化に伴い、植物栽培を行う平面スペースを維持し、設置スペースを小さくした植物栽培装置が注目を浴びている。
例えば、特許文献1に示すように、支柱および横桟からなる固定式の棚フレームと、その棚フレームに取り出し自在に載置された栽培用の容器と、それぞれの容器の上方に配置された照明器具と、それぞれの容器に養分を供給する供給配管設備を備えた栽培棚が提案されている。この植物棚には、棚フレームの外側に設けられたリフター装置を用いて各段の棚に容器を積み上げたり、積み下ろしたりする。
一方、特許文献2には、栽培用ベッドと、その栽培用ベッドを載置できる複数段の昇降棚と、それらの昇降棚を支持するガイド杆とからなり、それぞれの昇降棚に連結されたチェーンによって昇降棚を昇降自在にした栽培用ベッドの昇降装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−135790号公報
【特許文献2】特開平9−23772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の栽培棚は、各段の栽培棚に配置されている栽培用の容器をユニット単位で積み上げ、積み下ろしするのには適しているが、各段の栽培棚の栽培用の容器の全部を積み上げたり、積み下ろしたりする場合は、手間がかかる。一方、特許文献2では、昇降棚単位で積み上げや積み下ろしができるが、それぞれの昇降棚はチェーン等で吊るしているだけであり、強度が弱い。
本発明は、植物栽培の工業化を図ったものであり、建物あるいはフレームの棚に配置された全部の栽培容器の積み上げ、積み下ろしが簡単にでき、かつ、全体として強度を備えた植物栽培用の昇降装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の植物栽培装置は、複数本の柱、または、柱ないし梁からなるフレームと、そのフレームの固定ツメに支持されて上下に配列される複数の栽培ベッドと、その栽培ベッドと係合するアームを有し、隣接する栽培ベッド間を上下動自在に駆動する昇降部材と、隣接する上下の栽培ベッドによって区切られた複数の栽培空間とを備えており、前記固定ツメは、栽培ベッドを支持する支持位置と、栽培ベッドを支持しない非支持位置との間で駆動され、前記アームは、栽培ベッドと係合する係合位置と、栽培ベッドと係合しない非係合位置との間で駆動されることを特徴としている。
このような植物栽培装置であって、固定ツメが前記柱および/または梁内に収納可能に設けられているもの、および、前記アームが昇降部材内に収納可能に設けられているものが好ましい。また、昇降部材が最上段の栽培空間より上方に移動可能である、あるいは、昇降部材が最下段の栽培空間より下方に移動可能であるものが好ましい。
このような植物栽培装置であって、昇降部材を複数有し、同一平面上にある複数のアームが連動して駆動されるものが好ましい。
また前記昇降部材が上下に延びており、アームが隣接する上下の栽培ベッドと係合できるように上下に設けられており、前記上下に設けられたアームが連動して駆動され、前記
上下に設けられた固定ツメが連動して駆動されるものが好ましい。
さらに最上段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームおよび/または最下段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームが、他の栽培空間の栽培ベッドを保持するアームと別駆動するものが好ましい。
そして、前記栽培空間が上下隣接した栽培ベッドによって密閉されているものが好ましい。
昇降アームが、ラック機構、チェーン機構またはシリンダー機構のいずれで駆動させてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の植物栽培装置は、複数本の柱、または、柱ないし梁からなるフレームと、そのフレームの固定ツメに支持されて上下に配列される複数の栽培ベッドと、その栽培ベッドと係合するアームを有し、隣接する栽培ベッド間を上下動自在に駆動する昇降部材と、隣接する上下の栽培ベッドによって区切られた複数の栽培空間とを備えており、前記固定ツメは、栽培ベッドを支持する支持位置と、栽培ベッドを支持しない非支持位置との間で駆動され、前記アームは、栽培ベッドと係合する係合位置と、栽培ベッドと係合しない非係合位置との間で駆動されるため、安定して栽培ベッドを移動することができる。特に、複数の栽培ベッドを安定して移動させることができる。また、移動するときとは別の固定ツメで栽培中の栽培ベッドを保持するため、正確に栽培ベッドを配置させることができる。
このような植物栽培装置であって、固定ツメが前記柱および/または梁内に収納可能に設けられている場合、および、前記アームが昇降部材内に収納可能に設けられている場合は、固定ツメおよびアームの出し入れが簡単であり、その構造も簡易化できる。
また昇降部材が最上段の栽培空間より上方に移動可能である場合、屋上等に栽培ベッドを運ぶことができる。
一方、昇降部材が最下段の栽培空間より下方に移動可能である場合、栽培空間より下方に栽培ベッドを運ぶことができる。
本発明の植物栽培装置であって、前記昇降装置が複数設けられており、同一平面上複数のアームが連動して駆動する場合、栽培ベッドを複数のアームで保持しながら昇降できるので、一層安定して栽培ベッドの昇降ができる。
本発明の植物栽培装置であって、前記昇降部材が上下に延びており、アームが隣接する上下の栽培ベッドと係合できるように上下に設けられており、前記上下に設けられたアームが連動して駆動され、前記上下に設けられた固定ツメが連動して駆動される場合、上下の栽培ベッドを同時に、そして正確に移動させることができる。
また、最上段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームおよび/または最下段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームが、他の栽培空間の栽培ベッドを保持するアームと別駆動である場合、最下段の栽培空間およびまたは最上段の栽培空間への栽培ベッドの搬入および搬出が、他の栽培ベッドの昇降とは独立して行える。
前記栽培空間が上下隣接した栽培ベッドによって密閉されている場合、栽培空間の環境を詳細に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の植物栽培装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図3aは図1のY−Y線断面図であり、図3bは図1のZ−Z線断面図である。
【図4】図1の栽培ベッドと柱の関係を示す一部拡大断面図である。
【図5】図1のアームユニットを示す平面断面図である。
【図6】図6aは図5のW−W線断面図であり、図6bはアームユニットの他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図1の固定ユニットを示す断面図である。
【図8】アームユニットのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の植物栽培装置の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す植物栽培装置10は、フレーム11と、そのフレームの固定ツメC(図2、3参照)に支持されて、上下に配列される栽培ベッド12と、その栽培ベッド12と係合するアームA(図2、3参照)を有し、かつ、上下移動自在に駆動する昇降部材13と、隣接する上下の栽培ベッド12によって区切られた複数の栽培空間14とを備えている。固定ツメCはフレーム11のフレームの柱内に収納自在に設けられており、収納した状態と突出した状態の間で駆動される。またアームAは昇降部材13内に収納自在に設けられており、収納した状態と突出した状態の間で駆動される。植物栽培装置10は、固定ツメCで栽培ベッド12を支持した状態で栽培空間14で植物の栽培を行い、アームAで栽培ベッド12を支持した状態で栽培ベッド12を昇降させるものである。ただし、固定ツメCとアームAの両方で保持させて使用してもよい。
それぞれの栽培空間14の温度、湿度、二酸化炭素濃度等の環境は、それぞれの栽培空間の段の長手方向両端に設けられた空調15aおよび/または換気15bによって制御される。後述するが図1の植物栽培装置10は、栽培空間14と栽培ベッド12内のダクト28を空気が循環するように構成されている。
【0009】
この図1〜3では、2つの植物栽培装置10を横に並ぶように建てられており、フレーム11の屋上(上面)11aに一方の植物栽培装置10から他方の植物栽培装置10へ栽培ベッド12を移動するための第1移動コンベア16aが設けられている。そして、一方の植物栽培装置10を栽培ベッド12の上昇用に用い、他方の植物栽培装置10を栽培ベッド12の下降用に用い、栽培ベッド12を循環できるように構成されている。しかし、栽培ベッドの移動軌跡は特に限定されるものではなく、栽培内容に応じて適宜変えてよい。第1ベルトコンベア16aの長さは例えば、栽培ベッドの幅より若干長くなるよう構成されている。第1ベルトコンベア16aは、屋上に搬送される栽培ベッド12と接触しないように、図3の矢印のように左右に移動可能となっている。しかし、2つの植物栽培装置10の間に十分な距離がある場合は、特に移動可能としなくてもよい。
【0010】
フレーム11は、直方体のものであり、長方形状に四方に配設される柱21と、その柱21同士を連結する梁22(縦梁22aおよび横梁22b)と、柱21の間に昇降部材13の昇降を支持する支柱31を備えている。この支柱31もフレーム11を構成する。支柱31は、断面が側面に凹部31aを有するものである。支柱31は横梁22bの内面に当接するように設けられている。その間にシール材を設けたり、両者を結合してもよい。また2本の支柱31が、凹部31aが相対するように隙間を開けて上下に延びる連結材32で連結されている(図5参照)。この支柱31の間に後述する昇降部材13が配置される。
図1のフレーム11は、栽培ベッド12を固定ツメCで固定する6段の栽培空間14と、その栽培空間の最下層に栽培ベッド12を搬送するための搬送空間17とからなる。フレーム11の天井部は、開閉自在となっている。これにより、栽培ベッド12を最上段の栽培空間14からさらに上のフレーム11の屋上に移動させて第1コンベア16aに搬送することができる。搬送空間17には、栽培ベッド12を搬送するための第2コンベア16b等が設けられる。また搬送空間17の端部には開閉自在のドア17aが設けられている。さらに、最上段の栽培空間14には、照明17bが別個設けられている。しかし、そのフレームの段数2以上であれば10以上であってもよく、特に限定されない。本発明は、特に段数が多くなっても安定して栽培ベッドを固定でき、正確に昇降させることができる。また、フレーム11の形状も特に限定されるものではない。
【0011】
またフレーム11の上下に並ぶ横梁22bの間には、側壁24が設けられている。側壁
24には、例えばガラス等を用いて透光性を持たせてもよい。これにより外部から栽培状態を確認することができる。上下に並ぶ縦梁22aの間は、前述した空調15aおよび/または換気15bと、フレーム11内とを連通している。そのため、特に壁を設ける必要はないが、開閉自在の前後壁としてもよい。
【0012】
栽培ベッド12は、図4に示すように、フレーム11の長手方向に延びる2つの型材26と、その間に挟まれ、上から順に配置される栽培桶27、ダクト28および照明29とからなる。また、それらの間に養液供給用の管30aや廃液用の溝30bが設けられている。養液供給用の管30aや廃液用の溝30bは、栽培方法に応じて適宜設けられる。
型材26は、長手方向に延びる複数の空間26aが形成しており、その空間には電気配線等を配置したり、空間に冷却水を流してもよい。このような型材としては、アルミ等の金属が用いられる。
【0013】
栽培桶27は、栽培容器を配列する空間であり、例えば水耕栽培とする場合、養液供給用の管30aや廃液用の溝30bと連通されており、養液が充填される。しかし、土壌栽培とする場合、土壌が充填されたり、直接栽培容器を配列し、養液を直接植物または栽培容器等に降りかかるようにしてもよい。図4では、養液供給用の管30aや廃液用の溝30bを別個設けているが、前記型材26の空間26aを代用してもよい。
ダクト28は、空調15aからの空気を換気15bに送り、かつ、照明29の熱を冷却する効果を有している。また、水耕栽培の場合、栽培桶27内の養液の温度も栽培桶27を介して調整する。ダクト28から換気15bに送られた空気は、換気から栽培桶27の上の栽培空間14を通して再度空調に戻される。このように栽培ベッドごとに空気を循環させることにより、各段の制御が容易にできる。
照明29は、基板およびその基板に配置される光源からなる。この基板としては、金属基板が好ましく用いられ、特に、アルミニウム基板が好ましい。これによりダクト28の冷気を確実に光源に伝えることができる。光源としては、その光源の種類は特に限定されないが、LEDが好ましい。
この栽培ベッド12のように、ダクト28を栽培桶27と照明29の間に設けることにより栽培桶27および照明29の両方を冷却することができるため、好ましい。
栽培ベッド12は、栽培桶27に栽培容器等を配列して、搬送空間11bから植物栽培装置10内に配置される。
【0014】
昇降部材13は、2本の支柱31の間に上下動自在に設けられた上下に延びた部材である。昇降部材13は、断面が両側面に突出部13aを備えており、支柱31の凹部31aに支持されて上下動する。また昇降部材13は、前面(栽培空間14側)に上下等間隔にアームAを出し入れ操作するアームユニット35を配置するための第1切欠き34が上下に形成されている。この第1切欠き34には、アームAの貫通を許す蓋34aが設けられる。この植物栽培装置10は、鉛直方向に並べた4つの昇降部材13を備えている。これにより4つのアームで栽培ベッド12を支持して昇降させるものである。しかし、昇降部材13の数は、栽培ベッド12の大きさに応じて適宜設定される。
図3に示すように昇降部材13は、6つのアームAを備えており、6段の栽培ベッド12を同時に保持できるように構成されている。昇降部材13の長さおよび第1切欠き34の数は、その栽培ベッド12の昇降方法によって適宜決めることができ、保持できる栽培ベッド12の数を栽培空間14の数より多くしても、少なくしてもよい。栽培空間14の数以上の場合は、搬送空間17や屋上へ栽培ベッド12を同時に運ぶことができ、少なくすることにより栽培ベッド12の移動の自由度が高くなる。また、支柱31の間の同軸上に2つ以上の昇降部材13を上下に設けてもよい。この場合、昇降部材13同士が衝突しないように制御する必要がある。
【0015】
この昇降部材13には、モータ等の駆動装置からなる昇降駆動ユニットD(図3参照)
が取り付けられており、その昇降駆動ユニットDにより上下する。昇降駆動ユニットDとしては、例えば、ループ状のチェーンと、そのチェーンを回転させる駆動装置とからなり、チェーンと昇降部材13とを連結させたものが挙げられる。この場合、昇降部材13を正確に昇降させることができる。他に、油圧または空圧シリンダーからなる駆動装置を用いた昇降駆動ユニットやモータ等の回転力を前後方向に変換するアクチュエータを用いた昇降駆動ユニットを用いても良い。
この昇降部材13は、所定の栽培ベッド12に対して隣接する上下の栽培ベッド12に行き来できるように構成されている。これにより、栽培ベッド12を搬送空間17aから最下段の栽培空間14への昇降や、最上段の栽培空間14から屋上への昇降が可能となる。しかし、昇降部材13の移動距離は特に限定されるものではなく、例えば、前述した昇降部材の長さおよびアームAの数に応じて適宜決定される。例えば、保持できる栽培ベッド12の数を栽培空間14の数より小さくした場合、その移動距離を長くすることによって、搬送空間17から屋上まで栽培ベッド12を搬送させることができる。
またこの実施形態では、昇降部材13が栽培ベッド12を囲むように4つ設けられている。それぞれの昇降部材13を連動させて昇降駆動ユニットを連結させてもよく、別々に駆動できるようにしてもよい。幅方向に延びる一方の線上(一方の縦梁22a)にある2つの昇降部材13同士を連動させ、他方の線上(他方の縦梁22a)にある2つの昇降部材13同士を連動させてもよい。これにより一方の線上にある2つの昇降部材13のみを昇降させることにより、栽培ベッド12を傾けることができる。このように傾けることにより、栽培桶中の養液の排出や、栽培ベッドの洗浄が容易になる。また長手方向の昇降部材13同士を連動させてもよい。このように一部の昇降部材13同士を連動させることにより、栽培ベッド12を傾斜できるようにしてもよい。
しかし、栽培ベッド12を保持して昇降できれば特にその数は限定されない。また、どの昇降部材13を連動させるかは、適宜設定すればよい。
【0016】
アームユニット35は、図5、6aに示すように、昇降部材13に連結され、かつ、上下に貫通する貫通孔36aを備えた第1ハウジング36と、その貫通孔36aを通して昇降部材13と平行に配置され、上下のアームユニット35を連結する第1縦ラック37と、その第1ハウジング内に回転自在に固定される第1スプロケット38と、その第1ハウジング内にフレーム内外方向(図1の表裏方向)に移動可能に設けられる第1横ラック39と、その第1横ラック39と結合されたアームAとからなる。また、図6aの符号Rは、それぞれアームA、第1横ラック39、第1縦ラック37の移動を支持するローラーである。
第1ハウジング36は、上下が開口した中空の直方体であり、その両側壁36bによって第1スプロケット38の軸38aが保持される。また前壁36cには、第1横ラック39の前方向(栽培空間14側方向)への移動を許す連通孔36dが形成されている。また第1ハウジング36の前壁36cは、昇降部材13の栽培空間14側の縁部13bより内側に配置されている。
第1縦ラック37と第1横ラック39とは、第1スプロケット38と嵌合しており、それぞれ連動している。また、第1縦ラック37にはモータ等の駆動装置が連結されている。また第1横ラック39の先端は、T字状に形成されており、この先端がアームAと係合する。
【0017】
アームAは、前記ハウジング36を覆うように設けられたカバー40aと、その下端に設けられた直方体状のアーム本体40bとからなり、カバー40aには第1横ラック39の先端と係合できるように構成されている。つまり、アームAの少なくとも一部が、第1切欠き34内であって、第1ハウジング36の前壁36cの連通孔36dの前方にあればよい。これにより、アームAは第1切欠き34に収容することができ、第1横ラック39が前方に移動することによってアームAは第1切欠き34から栽培空間14に突出させることができる。
【0018】
つまり、アームユニット35は、駆動装置を用いて第1縦ラック37を上方向に移動させると、スプロケット38が回転し、連動して第1横ラック39が前方向(栽培空間14側方向)へ移動し、それに伴い、アームAも前方向へ移動し、アームAが栽培空間14内に突出される。一方、第1縦ラック37を下方向に移動させると、連動してスプロケット38、横ラック39が逆方向(後方向、フレーム外側方向)に移動し、アームAは昇降部材13内に収納される。
ここで第1縦ラック37を設けることにより、昇降部材13内の上下にあるアームAを同期させて駆動させることができる。栽培空間14の段数が多い場合、上下のアームAを同期させると作業が効率よく行える。しかし、第1縦ラック37を2つ以上に分けて、上部のアームAと下部のアームAとを別々に周期的に駆動できるようにしてもよい。さらに、全てのアームAを別駆動とさせてもよい。全てのアームAを別駆動とさせる場合は、例えば、図6bのように第1縦ラック37を用いず第1スプロケット38を駆動装置D2で直接駆動させ、第1横ラック39を介してアームAを駆動させてもよい。さらに、第1縦ラック37の代わりに、上下の第1スプロケット43に連結し、第1スプロケットに回転力を与えることができるチェーン等を用いても良く、その他同様の機能を有する上下に延びる第1連動部材を用いても良い。アームユニット35としては、上下に移動する第1連動部材(チェーン、縦ラック等)の力を左右に移動するアームAの力に変換する機構を用いれば、上下に延びる第1連動部材を操作することにより上下にあるアームを連動させることができ、上下の栽培ベッドを安定に昇降させることができる。
またこの実施形態では、昇降部材13を4本備え、第1縦ラック37を4本備えているが、これらはシャフトで連結している。これにより同じ段にあるアームAを同期して駆動させることができる。しかし、その連結方法は特に限定されず、電子的に同期させてもよく、また逐次駆動するように連動させてもよい。
【0019】
最上段の栽培空間14の栽培ベッド12を保持するアームAおよび最下段の栽培空間14の栽培ベッド12を保持するアームAを図6bのように直接駆動装置で駆動させ、その間のアームAを第1縦ラック37で駆動させるのが好ましい。この場合、最上段および/または最下段のアームAのみを突出させた状態で、昇降部材13を昇降させることにより、搬送空間17から最下段の栽培空間14への取り入れや、最上段の栽培空間14の栽培ベッド12を屋上に送り出すことを独立に行うことができる。
【0020】
次に固定ツメCの出し入れを行う固定ツメユニット41の説明をする。
この固定ツメユニット40は、支柱35(昇降部材13と反対側)および柱21に形成された第2切欠きに設けられており、この第2切欠きは上下等間隔にアームユニット35と同じ高さに設けられている。この第2切欠きにも固定ツメCの貫通のみを許す蓋を設けるのが好ましい。この実施形態では、固定ツメユニット40は、各段12個設けられている。しかし、その個数は特に限定されるものではない。また、本実施形態では、支柱35および柱21に設けられているが、梁22に設けても良い。
【0021】
固定ツメユニット40は、支柱35内に設けられた上下に貫通する貫通孔41aを備えた第2ハウジング41と、その貫通孔41aを通して支柱35と平行に配置され、上下の固定ツメユニット40を連結する第2縦ラック42と、その第2ハウジング内に回転自在に固定される第2スプロケット43と、その第2ハウジング内に栽培空間14の内外方向(図1の表裏方向)に移動可能に設けられる第2横ラック44と、支柱35と支柱35の間または支柱35と柱21の間に梁22と平行に設けられた収容ブロック45と、その収容ブロック45に収容され、第2横ラック44の先端と結合されたT字状の固定ツメCとからなる。隣接する固定ツメCの間には角パイプ46が連結されており、角パイプ46も収容ブロック内に収容されている(図2参照)。収容ブロック45は、横梁22bまたは側壁24の内面に当接するように設けられている。これの間にシール材を設けたり、これ
らの当接部を結合してもよい。
第2ハウジング41は、上下が開口した中空の直方体であり、その両側壁41bによって第2スプロケット43の軸43aが保持される。また、前壁41cには、第2横ラック44を通す連通孔41dが形成されている。また第2ハウジング41の前壁41cは、支柱31の栽培空間14側の縁より内側に配置されている。
【0022】
このものも第2縦ラック42と第2横ラック44とは、第2スプロケット43と嵌合しており、それぞれ連動している。そして、第2縦ラック37にはモータ等の駆動装置が連結されている。また第2横ラック44は、先端がT字状に形成し、固定ツメCと係合しやすい形状となっている。しかし、この形状は特に限定されるものではない。
収容ブロック45は、栽培空間14側に固定ツメCおよび角パイプ46を収容する凹部を有するものである。
固定ツメCは、少なくとも一部が、第2切欠きであって、第2ハウジング41の前壁41aの連通孔41dの前方(栽培空間側)にあればよい。これにより、固定ツメCは、第2切欠き31a内に収容することができ、第2横ラック44が前方に移動することによって固定ツメCは第2切欠き31aから栽培空間14に突出させることができる。
【0023】
固定ツメユニット40は、このように構成されているため、第2縦ラック43を昇降させることにより、第2スプロケット44を介して第2横ラック45が前後方向(栽培空間14の内外方向)に移動する。それにより固定ツメCが角パイプ46と共に突出する。突出した固定ツメCおよび角パイプ46は、横梁22bとほぼ同じ長さの支持床となる。つまり、栽培ベッド12の長手方向に延びる角を全部支持でき、栽培ベッド12によって区切られる隣接した上下の栽培空間14の密閉性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態では、固定ツメユニット41の第2縦ラック43を同じ段で12個有することになるが、これらを全て同期させる、あるいは、一部を同期させることにより全てまたは一部の固定ツメ14の出し入れを同期させることができる。例えば、第2縦ラック43をシャフト等で連結することによりそのような同期駆動は可能である。しかし、電気的に同期させてもよく、周期的に連動させてもよい。第2縦ラック42を連動させることにより駆動装置の数も減らすことができる。
この場合も第1縦ラック37と同様に、第2縦ラック42を2つに分けて、上部の固定ツメCと下部の固定ツメCとを別々に駆動できるようにしてもよい。さらに、全ての固定ツメCを別駆動とさせてもよい。全ての固定ツメCを別駆動とさせる場合は、第1縦ラック37を用いず第2スプロケット43を駆動装置で直接駆動させてもよい。また、最上段の固定ツメCと最下段の固定ツメCのみを直接駆動装置D3で駆動させ、他の固定ツメCを第2縦ラック42で駆動するようにしてもよい。さらに、第2縦ラック42の代わりに、上下の第2スプロケット43に連結し、第2スプロケットに回転力を与えることができるチェーン等を用いても良い。その他同様の機能を有する上下に延びる第2連動部材を用いても良い。固定ツメユニット40としては、上下に移動する第2連動部材(チェーン、縦ラック等)の力を左右に移動する固定ツメの力に変換する機構を用いれば、上下にある第2連動部材を操作することにより上下にある固定ツメを同期させることができ、上下の栽培ベッドを安定に昇降させることができる。
さらに、この実施形態でも第2横ラック42で固定ツメCの出し入れを行っているが、固定ツメCに電動アクチュエータ、油圧アクチュエータ等またはループ状のチェーンと、そのチェーンを回転させる駆動装置とからなる駆動ユニットを直接連結させて固定ツメCの同期を行ってもよい。その場合、電子的に制御することによりアームの出し入れを同期させたり連動させてもよい。
【0025】
このように構成されているため、栽培ベッド12を固定させて栽培させるときは、固定ツメCをフレーム11内に突出させ、栽培ベッド12を支持する。一方、栽培ベッド12
を昇降させるときは、昇降部材13のアームAを突出させ、栽培ベッド12をアームAで支持させ、次いで、固定ツメCを収納させて昇降部材13を昇降させる。栽培ベッド12を所定の高さまで移動させた後は、固定ツメCを再度突出させ、アームAを収納させる。また昇降部材13も所定の高さに戻す。これにより、栽培ベッド12を各段自由に昇降させることができる。
【0026】
図1の栽培空間14は、側壁24、栽培ベッド12および空調15aまたは換気15bによって構成されている。そして側壁24と栽培ベッド12とは、栽培ベッド12と、長手方向を並ぶ柱21を連結する固定ツメCおよび角パイプ46とが係合することによって密閉されている。空調15aまたは換気15bとは、縦梁22aまたは空調15a等の床と栽培ベッド12とが当接することによって密閉されている。しかし、そのシール構造は特に限定されない。例えば、角パイプ46を用いない場合は、栽培ベッド12の側面にシール材を設け、側壁24または横梁22bと当接するようにしてもよく、反対に側壁24または横梁22bの内面にシール材を設けて当接するようにしてもよい。なお、空調および換気機構を設けない場合は、栽培空間14を密閉しなくてもよい。この場合、側壁24を省いてもよい。
【0027】
図1では、2つの植物栽培装置10を並列させているが、1つでもよく、3つ以上を並列させてもよい。図1のように上昇用の装置10と下降用の装置10とを組み合わせることにより栽培ベッド12を効率よく循環させることができる。
図1では、フレーム11は梁22を備えているが、梁を備えないで柱21に沿って側壁24を設けても良い。また図1の植物栽培装置10では、固定ツメCが柱21および支柱31に設けられているが、柱21のみ設けても、支柱31のみに設けてもよい。また、梁22に固定ツメCを設けてもよく、梁22のみに設けてもよい。固定ツメCは、固定されたフレームに設けられていれば、その配置箇所は特に限定されない。
最下段の栽培空間14の下方に搬送空間17を設けているが、搬送空間17を設けなくてもよい。さらに、屋上の移動コンベア16cもなくてもよい。フレーム11の構造は、栽培方法等によって適宜設定することができる。
【0028】
図1では、空調15aおよび換気15bを栽培空間14の長手方向の端部に設けているが、栽培空間14内に設けてもよく、栽培ベッド12の型材等に取り付けてもよい。その場合、前後壁を柱21の間に設けて栽培空間14の前後を閉じることになる。これら空調15aおよび換気15bの配置箇所は、特に限定されない。図1では、栽培空間14と栽培ベッド12内のダクトで空気が循環するように構成されているが、ダクトを設けず栽培空間14に一方向の空気を流すようにしてもよい。この場合、流す空気は外部に排出してもよく、また、隣接する上下の栽培空間14の間で空気が循環するようにしてもよい。さらに、ダクト28を省く場合、栽培桶27と照明29とを隣接させることにより、栽培桶27によって照明29を冷却することができる。
【0029】
図1の植物栽培装置10では、第1縦ラック39および第1横ラック37を備えたアームユニット35によってアームAの出し入れを行っているが、アームAに、チェーン機構、空圧式または油圧式のシリンダー機構、モータ等の回転力を前後方向の力に変換する電動アクチュエータ等を直接連結させてアームAの駆動を行ってもよい。その場合、電子的に制御することにより全アームあるいは特定のアームの出し入れを同期させたり周期的に連動させてもよい。
またアームAを図8のように、平板状または棒状のアームAの基端を第1スプロケット38の中心軸に連結し、アームAを回動させるようにしたアームユニット35aを用いてもよい。この場合も同様に第1縦ラック39またはチェーン等の上下に延びる第1連動部材によって他のアームと連動させることができる。また、この場合も上述した他の駆動装置を用いることにより別駆動とさせたり、電子的に制御して同期させてもよい。固定ツメ
Cについても図8のように回動して出し入れできるようにしてもよい。この場合は、上下に移動する第1連動部材(チェーン、縦ラック等)の力を回動するアームAの力に変換する機構を用いている。つまり、上下に延び、上下に移動する第1連動部材(チェーン、縦ラック等)を移動することによって、その第1連動部材に連結された上下のアームを駆動させることができる。
【0030】
図1の植物栽培装置10の昇降部材13に、下端からさらに下方に延びる第1延長脚51aおよび上端からさらに上方に延びる第2延長脚51bを設けてもよい。このような第1延長脚51aおよび第2延長脚51bは、昇降部材13の上下動とは別駆動で昇降部材13に収納自在に設けられている。さらに、それぞれ第1延長脚51aおよび第2延長脚51bは、それぞれアーム15と同じ方向に突出する第2アーム52をその端部に備えている。これにより昇降部材13の駆動とは関係なく、搬送空間17に送られてきた栽培ベッド12を最下層の栽培空間14に設置することができ、最上層の栽培空間14にある栽培ベッド12を第1コンベア16aまで運ぶことができ、また、その逆もできる。しかし、第1延長脚51aおよび第2延長脚51bに第2アーム52を設けずに、最上段のアームAおよび最下段のアームAが第1延長脚51aおよび第2延長脚51bの伸びとともに動くようにしてもよい。この場合、最上段のアームAおよび最下段のアームAとは、他のアームAと前述したように別駆動とするのが好ましい。しかし、連動させてもよい。このような第1延長脚51aおよび第2延長脚51bは、搬送空間17と最下段の栽培空間14の距離および最上段の栽培空間14と屋上の距離が隣接する栽培空間14の距離より長い場合好ましい。これにより昇降部材13に余分な昇降をさせなくて済む。
また搬送空間17と最下段の栽培空間14との間は、テーブルリフター等の昇降装置で栽培ベッド12を昇降させてもよい。さらには最上段の栽培空間14と屋上とは、クレーン等の昇降装置で栽培ベッド12を昇降させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
A アーム
C 固定ツメ
D 昇降駆動ユニット
R ローラー
10 植物栽培装置
11 フレーム
11a 屋上
12 栽培ベッド
13 昇降部材
13a 突出部
13b 縁部
14 栽培空間
15a 空調
15b 換気
16a 第1移動コンベア
16b 第2移動コンベア
17 搬送空間
17a ドア
17b 照明
21 柱
22 梁
22a 縦梁
22b 横梁
24 側壁
26 型材
26a 空間
27 栽培桶
28 ダクト
29 照明
39a 管
30b 溝
31 支柱
31a 凹部
32 連結材
34 第1切欠き
34a 蓋
35 アームユニット
35a アームユニット
36 第1ハウジング
36a 貫通孔
36b 両側壁
36c 前壁
36d 連通孔
37 第1縦ラック
38 第1スプロケット
38a 軸
39 第1横ラック
40 固定ツメユニット
40a カバー
40b アーム本体
41 第2ハウジング
41a 貫通孔
41b 側壁
41c 前壁
41d 連通孔
42 第2縦ラック
43 第2スプロケット
43a 軸
44 第2横ラック
45 収容ブロック
46 角パイプ
51a 第1延長脚
51b 第2延長脚
52 第2アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の柱、または、柱ないし梁からなるフレームと、
そのフレームの固定ツメに支持されて上下に配列される複数の栽培ベッドと、
その栽培ベッドと係合するアームを有し、上下に隣接する栽培ベッド間を上下動自在に駆動する昇降部材と、
上下に隣接する栽培ベッドによって区切られた複数の栽培空間とを備えており、
前記固定ツメは、栽培ベッドを支持する支持位置と、栽培ベッドを支持しない非支持位置との間で駆動され、
前記アームは、栽培ベッドと係合する係合位置と、栽培ベッドと係合しない非係合位置との間で駆動される、
植物栽培装置。
【請求項2】
前記固定ツメが前記柱および/または梁内に収納可能に設けられている、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記アームが昇降部材内に収納可能に設けられている、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記昇降部材が、最上段の栽培空間より上方に移動可能である、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記昇降部材が、最下段の栽培空間より下方に移動可能である、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記昇降部材を複数有し、
同一平面上の複数アームが同期して駆動される、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記昇降部材が上下に延びており、アームが隣接する上下の栽培ベッドと係合できるように上下に設けられており、
前記上下に設けられたアームが連動して駆動され、前記上下に設けられた固定ツメが連動して駆動される、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項8】
最上段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームおよび/または最下段の栽培空間の栽培ベッドを保持する固定ツメおよびアームが、他の栽培空間の栽培ベッドを保持するアームと別駆動である、
請求項7記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記栽培空間が上下に隣接した栽培ベッドによって密閉されている、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記昇降部材の昇降駆動機構が、ラック機構、チェーン機構またはシリンダー機構を備えている、
請求項1記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81422(P2013−81422A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223500(P2011−223500)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(508092163)
【Fターム(参考)】