植物栽培設備
【課題】誘引吊部材を用いる植物栽培について、簡易な取扱いと最小限のコストで植付け株の生育のきめ細かな管理ができ、栽培ハウス内における日射量や通風等の局所的な育生条件差を補って確実な育生制御を可能とする植物栽培設備を提供する。
【解決手段】植物栽培設備は、植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなるにおいて、上記栽培床(5)には、誘引吊部材(13)によって支持した複数の植物株(K)を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の外側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)とを設けたものである。
【解決手段】植物栽培設備は、植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなるにおいて、上記栽培床(5)には、誘引吊部材(13)によって支持した複数の植物株(K)を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の外側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)とを設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物株を植付ける栽培床にその上部吊り支持部材を備える植物栽培設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培に関し、植付け株の栽培床に冷熱を供給する冷水管を配設した例(特許文献1)や、その熱源効率を上げるために、植付け株をカバーするカーテンを設けた例(特許文献2)がある。このような栽培床の冷却制御により、植付け株の生育をグループ別に管理して植物の収穫時期調節や地域条件対応の精度を上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−272262号公報
【特許文献2】特開平11−289869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記冷却制御のみならず、寒冷期の暖房を含む幅広い温度制御に適用するためには、そのための暖房熱源と暖房用配管が必要となり、多大なコスト増を招くこととなる。また、誘引吊部材を用いるトマトのように上に高く延びる蔓状植物栽培においては、植付け株を覆う大きなカバーと温度管理のために大容量の熱源が必要となる上に、栽培ハウス内における日射量や通風等の局所的な育生条件差に伴う生育遅れや病害虫に対処するための煩雑な作業と多大なコスト負担が避けられないという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、誘引吊部材を用いる植物栽培について、簡易な取扱いと最小限のコストで植付け株の生育のきめ細かな管理ができ、栽培ハウス内における日射量や通風等の局所的な育生条件差を補って確実な育生制御を可能とする植物栽培設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、植付けた植物株を育成するための栽培床と、この栽培床に植付けた植物株を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材とからなる植物栽培設備において、上記栽培床には、誘引吊部材によって支持した複数の植物株を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する熱作用部と、この熱作用部の外側方をカバーする遮蔽カーテンとを設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、上記植物株(K)の生長点となる所定の高さ位置に冷暖熱を作用する第一の熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)と、同植物株(K)の根域となる部位に冷暖熱を作用する第二の熱作用部(52r)と、同植物株(K)の生育状態を検出するモニタリング部(51m,90,40,91)と、このモニタリング部(51m,90,40,91)の検出情報による植物株(K)の生育状態の診断結果に基づいて上記第一および第二の熱作用部(52,52r)を個別に温度管理する部位別温度制御部(51p)とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、栽培床に植付けた複数の植物株は、誘引吊部材によってそれぞれ設定高さ位置に支持されるとともに、局所的な熱作用部により植物株の所定高さ部位に冷暖熱が作用し、この熱作用は熱作用部の外側方をカバーする遮蔽カーテンの範囲内に限定される。したがって、熱作用部の位置に植物株の生長点が来るように誘引吊部材を設定して支持することにより、植物株の生育を効率よく制御することができ、複数の栽培床を互いに密接して配置した場合でも、隣接部相互の影響無しに個別の栽培制御が可能となることから、簡易な構成によって栽培ハウス内における日射量や通風等の部分的な育生条件差を補って病害虫の事前対処を含む確実な育生制御が可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記部位別温度制御部により、植物の生体情報を計測して生育状態を診断し、植物株の生育状態に応じた第一と第二の熱作用部による部位別の温度管理による効率の良い生育栽培が可能となることから、本システムにより、園芸温室や太陽光利用型植物工場温室の生産性向上において緊急の課題である、夏期の高温障害や冬期の低温障害による収穫量の減少と、温度制御のためのエネルギーコストの増大を同時に解決し、従来の方法(温室全体を温度制御する)と比べて、石油消費量の50%程度削減と夏期および冬期の収穫量増大(約1割)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温室を西側から見た側面図
【図2】温室を南側から見た側面図
【図3】栽培ベッドを示す断面図
【図4】誘引紐を使用して栽培する方法を判りやすく示す図
【図5】誘引紐ホルダを示す図
【図6】誘引ワイヤと誘引紐ホルダとの関係を示す図
【図7】茎受具を示す図
【図8】従来の茎受具を示す図
【図9】養液供給経路を示す図
【図10】遮光カーテン及び非開閉式カーテンを判りやすく示す温室の平面図
【図11】遮光カーテンを示す図
【図12】養液供給制御のフローチャート
【図13】暖房装置を判りやすく示す温室の平面図
【図14】通路上配管を示す図
【図15】栽培システムの正面断面図
【図16】配管部の拡大図
【図17】システム展開図
【図18】暖房構成の縦断側面図
【図19】正面断面図
【図20】要部斜視図
【図21】システム展開図
【図22】暖房の配管の部分縦断側面図
【図23】水耕養液の給液システム展開図
【図24】イチゴ用栽培ベッドの使用態様(a)(b)
【図25】組立型栽培ベッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(基本構成)
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、植物栽培ハウスとしての温室1を示したものであり、この温室1は、東西南北の四方の側壁2及び天井3を透明のガラスで構成し、ガラス張りになっている。前記温室の南北方向の中央には作業者、作業台車あるいは防除機等が通過することができる通路4を設けており、この通路4は、路面がコンクリ−トで構成されたコンクリ−ト通路で、温室の東端から西端まで東西方向に長く構成されている。通路4の南北に、栽培ベッド5を配置した栽培区域を構成している。通路4の両端部には、温室1への出入口6が構成されている。
【0012】
温室1内の上部の空間には、温室の南北方向に長く延びる支持具7が地面に並行に東西方向に複数本配置されている。一対の支持管8が支持具7の下に平行に配置され、複数の吊具9で支持具7に吊り下げられている。左右の耳部10aがそれぞれの支持管8に掛けられて容器10が地面から浮くように吊られている。容器10には、台形に曲げた受板11が底に入りロックウールで作った栽培ベッド5がその上に載っている。尚、1本の支持具7に対して通路4を挟んで南北に2個の栽培ベッド5が配置され、該栽培ベッド5は、南北の栽培区域においてそれぞれ南北方向に長く延びて東西方向に複数並列に配置された構成となっている。苗を移植したキューブ12が栽培ベッド5に左右2列に並んで載るようになっている。
【0013】
キューブ12から伸長する苗の茎kは、上方から吊り下げられた誘引紐13によって上方へ誘引される。誘引紐13は、誘引紐ホルダ14に糸巻状に巻き込まれており、該ホルダ14から引き出されるようになっている。誘引紐ホルダ14の上部には誘引フック14aを設けており、この誘引フック14aを温室1内の上部に栽培ベッド5のキューブ12の列に沿って南北方向に延びる誘引ワイヤ15にひっかけて誘引紐ホルダ14を吊る構成となっている。尚、誘引ワイヤ15は、栽培ベッド5のキューブ12の列の数に合わせて東西方向に複数並列に配置された構成となっている。図4に示すように、クリップ16により誘引紐13に作物の茎kを固定して栽培すると、茎kは誘引紐13をつたって上方へ伸長していく。そして、誘引ワイヤ15(誘引紐ホルダ14)の高さまで茎kが伸長すると、適宜、誘引紐ホルダ14から誘引紐13を繰り出しながら誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15に沿って南北方向の一方側へ栽培ベッド5に沿ってずらし、茎kが上方へ伸長するスペ−スをとって栽培する。尚、必要に応じて、適宜作物の茎kをクリップ16により誘引紐に固定していく。
【0014】
誘引ワイヤ15は、東西方向に延びる温室1内の複数のラチス17の上側で該ラチス17に支持される。従って、誘引紐ホルダ14の重みにより、誘引ワイヤ15は、ラチス17の間で下へ撓んだ状態となる。すると、誘引ワイヤ15の誘引フック14aが誘引ワイヤ15に沿って該誘引ワイヤ15の低位側へ移動しやすくなり、図6(a)に示すように各苗株の誘引紐ホルダ14が一箇所に集まるように移動し、誘引ワイヤ15の適正な位置に誘引紐ホルダ14を保持できなくなるおそれがある。ところが、前記誘引フック14aの誘引ワイヤ15への係止部には滑りにくい素材であるビニール材14bを接着剤で貼り付けており、誘引フック14aと誘引ワイヤ15との接触抵抗を大きくし、誘引フック14aが誘引ワイヤ15上で滑って移動するのを防止している。従って、各苗株の誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15上で等間隔で適正な位置に配置でき、各苗株の茎部が互いに近づいて密集するようなことを防止でき、各苗株が互いに成育を阻害せずに十分な太陽光を得ることができ、作物を良好に成育することができる。尚、誘引フック14aの誘引ワイヤ15への係止部を、ゴム材にして滑りにくい素材としてもよい。また、誘引ワイヤ15を滑りにくい素材としてもよい。
【0015】
図4に示すように、誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15に沿って移動させながら作物を栽培するので、茎kが長くなると茎kの下部がキューブ12より下に垂れ下がるおそれがある。そこで、栽培ベッド5の側方に所定間隔おきに茎受具18を設け、該茎受具18上に茎kを載せて茎kの下部が栽培ベッド5に沿って横方向に向くようにしている。この茎受具18は、中央部18aが低位となるように平板を折り曲げて構成され、容器10内にはめ込んだ後、上側に栽培ベッド5を載置して装着される。茎受具18の茎受け部分18bは、両端部に構成され栽培ベッド5の左右両側にそれぞれのキューブ12の列に対応して設けられている。尚、茎受具18の茎受け部分18bの外端には立ち上がり部18cを設け、この立ち上がり部18cにより茎受具18に載せた茎kが外方へ脱落しないようにしている。茎受具18は、図7に示すように、平板で構成されているので、前後方向(栽培ベッド5の方向)への回動が規制され、栽培ベッド5に対して茎受け部分18bを適正な位置に維持できる。従来の茎受具18は、図8に示すように、棒材で構成されているので、前後方向(栽培ベッド5の方向)へ無闇に回動するおそれがあり、栽培ベッド5に対する茎受け部分18bの位置が変化して適正に茎kを受けることができないおそれがある。
【0016】
容器10の下部で栽培ベッド5の下方の左右幅方向中央には、栽培ベッド5に養液を供給するための給液パイプ19を栽培ベッド5に沿って南北方向に延設している。給液パイプ19の上方で栽培ベッド5の下方の位置には、栽培ベッド5からの排液(余剰の養液)を受けて回収する排液ガ−タ−20を給液パイプ19と同様に南北方向に延設している。尚、容器10、栽培ベッド5及び排液ガ−タ−20はその長手方向(南北方向)に若干傾斜しており、排液ガ−タ−20で受けた排液が該ガ−タ−20の一端へ回収されるようになっている。給液パイプ19からそれぞれのキューブ12へ養液を供給するそれぞれのドリップホ−ス21を設け、キューブ12に移植した苗に養液を供給して作物を栽培するようになっている。
【0017】
従って、給液パイプ19を栽培ベッド5及び排液ガ−タ−20の下方に配置しているので、栽培ベッド5あるいは排液ガ−タ−20により影になって給液パイプ19へ太陽光が照射しないので、栽培ベッド5へ供給する養液が高温になるのを防止できる。特に、夏季に養液が異常な高温となるのを防止でき、栽培床となる栽培ベッド5が異常な高温になって栽培に悪影響を及ぼすことを防止できる。また、給液パイプ19が栽培ベッド5の側方に配置されていないので、温室1内の栽培面積を小さくできると共に、給液パイプ19が作業者あるいは作業車等による栽培ベッド5の側方からの作業や栽培作物の成育等の邪魔にならない。従来は、吊り下げ式の栽培ベッドの上部側方や栽培ベッドを載せる容器の上側側部の耳部に給液パイプを設けていたので、太陽光が照射により給液パイプの温度が上昇しやすく、栽培ベッドへ供給する養液が高温になることがあった。尚、栽培ベッドの上部側方に給液パイプを設けた場合は、給液パイプが栽培ベッドの側方からの作業の邪魔になったり成育する栽培作物と干渉してその成育を阻害したりするおそれがある。
【0018】
図9に示すように、養液を貯留するAタンク22並びにBタンク23及び酸タンク24からポンプユニット25を介して給液パイプ19へ養液が供給される構成となっている。尚、肥料成分の異なる養液をAタンク22とBタンク23とに貯留し、Aタンク22及びBタンク23からの肥料成分の異なる養液の混合割合をポンプユニット25で調整し、所望の肥料成分の養液を得るようになっている。そして、ポンプユニット25から各栽培ベッド5の給液パイプ19へ養液が分流される構成であり、作物を栽培しない容器10あるいは栽培ベッド5がある場合に各給液パイプ19への給液を停止できる給液停止バルブ26をそれぞれ設け、該給液停止バルブ26により無駄に養液を供給することを防止できる。これらの構成を備えて、養液供給装置が構成される。
【0019】
また、各排液ガ−タ−20で回収された排液が合流して排液回収タンク27ヘ貯留され、該排液回収タンク27から殺菌前タンク28を介して殺菌装置29へ供給され、該殺菌装置29により排液を殺菌する。殺菌装置29で殺菌された排液は、二次原水タンク30へ送られて原水に混合されて肥料濃度が調整され、ポンプユニット25へ供給して養液として再利用できる構成となっている。尚、原水を貯留する一次原水タンク31から前記二次原水タンク30へ原水を供給する構成となっている。これにより、二次原水タンク30で殺菌された排液と原水とを混合しながら肥料濃度が調整できるので、所望の肥料濃度に精度良く調整することができ、従来の排液再利用装置のように肥料濃度が高い養液(排液)をポンプユニット25を介して給液パイプ19ひいては栽培ベッド5へ供給してしまうことを防止でき、栽培する苗や作物に肥料焼けが生じるようなことを防止できる。尚、従来の排液再利用装置は、原水を貯留する一次原水タンク及び殺菌装置で殺菌された排液を貯留する殺菌後タンクから直接原水及び排液がポンプユニットへ供給される構成であったので、栽培過程や栽培状況等によって排液の肥料濃度がまちまちであるため、原水と排液との混合割合を調整してポンプユニットへ供給しようとしても排液の肥料濃度の変化が激しくて対応しきれず、再利用する養液の肥料濃度を所望の肥料濃度に精度良く調整することが困難であった。
【0020】
ポンプユニット25において、二次原水タンク30から栽培ベッド5へ養液を供給するポンプ32を並列に2個設けている。通常は、前記2個のポンプ32のうち、一方を使用して養液を供給する。そして、使用しているポンプ32が故障したとき、該ポンプ32を停止してその吸入口及び吐出口のバルブ33を閉じ、他方のポンプ32の吸入口及び吐出口のバルブ33を開いて該他方のポンプ32を駆動し、養液供給を継続することができる。これにより、前記ポンプ32の故障で栽培する植物(作物)が枯れてしまうようなことがなく、良好な栽培を維持することができる。故障しているポンプ32の吸入口及び吐出口のバルブ33を閉じているので、他方のポンプ32により養液供給を継続しながら、故障しているポンプ32を修理したり良品のポンプと交換したりすることができる。従来は、単一のポンプにより養液を供給するようになっていたので、そのポンプが故障すると養液供給が行えなくなり、植物(作物)の栽培に悪影響を与えるおそれがある。
【0021】
温室1の天井3部には、南北方向に複数の遮光カーテン34を所定間隔おきに設けている。この遮光カーテン34は、スプリング(図示せず)により該遮光カーテン34の南側に配置した巻取軸35に巻き取られて開くようになっている。温室1内の北端にはカーテン開閉モータ36を設けており、該モータ36の駆動によりカーテン開閉ワイヤ37を介して複数の遮光カーテン34を同時に巻取軸35から引き出す構成となっている。尚、この複数の遮光カーテン34により、温室1の天井部の全面を遮光することができる。カーテン開閉モータ36部には、該モータ36の回転位置により遮光カーテン34の開閉度(開閉量)を検出する遮光カーテン開閉センサ38を設けている。温室1内の側壁2部には、ある程度の光を遮るため開閉しない非開閉式カーテン39を装備している。
【0022】
温室1外の南側には、日射量センサ40を設けている。この日射量センサ40により検出される日射量に基づいて、遮光カーテン開閉センサ38の検出により遮光カーテン34が所望の開閉度となるよう、カーテン開閉モータ36を駆動制御して遮光カーテン34の開閉度を変更して制御し、日射量が大きいときは遮光カーテン34を大きく閉じて遮光率を上げるようになっている。
【0023】
図12に基づいて養液の供給制御について説明すると、日射量センサ40の検出により積算日射量を逐次演算し(ステップ1)、積算日射量が給液開始値に達するとポンプユニット25へ給液信号を出力して所定量の養液を供給するようになっている(ステップ2)。尚、ポンプユニット25へ給液信号が出力されると、積算日射量をクリアして0に戻す。また、前記給液開始値は、遮光カーテン開閉センサ38値より遮光カーテン34が完全に開いた状態(遮光率0)のときは予め設定した所定値となり(ステップ3)、遮光カーテン34が幾分でも閉じている状態のときは遮光カーテン開閉センサ38値に基づいて遮光カーテン34の開閉度に応じて前記予め設定した所定値から加算して補正し(ステップ4)、遮光カーテン34を閉じ量が大きいほど給液開始値を大きくして養液を供給回数が少なくなるようにしている。
【0024】
以上により、この栽培施設の養液供給制御装置は、カーテン開閉モータ36により遮光カ−テン34の開閉度を変更して調節可能で、積算日射量が給液開始値に達すると所定量の養液を供給するという所定の制御パタ−ンに基づいて自動的に植物へ養液を供給すると共に、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液供給の制御パタ−ンを補正して制御している。
【0025】
従って、この栽培施設の養液供給制御装置は、所定の制御パタ−ンに基づいて自動的に植物へ養液を供給する。そして、遮光カ−テン34の開閉度が変更されて調節されると、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液の供給制御が補正され、養液の供給量の適正化を図ることができる。よって、養液の供給の不適正により栽培する植物に生理障害が生じるのを防止して、植物を良好に栽培することができる。特に、トマトの栽培において、日射量の大きい4月〜6月に生理障害が生じるのを防止でき、良質の作物を栽培することができる。
【0026】
尚、養液供給の制御パタ−ンを、所定時間に養液を供給するようにし、積算日射量に基づいて養液の供給量を制御するパタ−ンとしてもよい。このときは、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液の供給量が補正される構成となる。
【0027】
尚、この養液供給制御においては、夜間には給液しないように1日のうちの給液可能時間帯を設定し、該給液可能時間帯にのみ養液を供給するようになっている。そして、給液可能時間帯を過ぎたとき(夕方等)、酸タンク24に貯留した酸を所定時間(5秒間)供給し、ドリップホ−ス21内を洗浄するようになっている。従来、夜間にドリップホ−ス21内に養液が貯留されたままになるのでドリップホ−ス21内に液肥が固結しやすく、ドリップホ−ス21に目詰まりが生じて翌日の養液供給を円滑に行えないことがあるが、ドリップホ−ス21内に酸を流して洗浄することにより、この不具合を解消できる。尚、前記酸は、重量濃度1%程度の硝酸等、植物の成育を阻害しない程度のものである。また、ドリップホ−ス21内に酸を流して洗浄した後に原水を流し、栽培ベッド5に酸が残らないようにして酸により植物の成育を阻害しないようにしてもよい。
【0028】
ところで、温室1には、冬期等の栽培のために暖房用の温水配管を備える暖房装置41を設けている。この暖房装置41は、ボイラー42からの温水を温室内の東端を介して南端及び北端へ供給する供給配管43と、該供給配管43に接続して各栽培ベッド5間で温水を往復させる支配管44と、該支配管44から温室1内の南端又は北端を介して東端に合流させて温水をボイラー42へ戻す戻配管45とを設けている。また、温室1内の東端の供給配管43から分岐して通路4上で温水を往復させる通路上配管46を2本設け、この通路上配管46からの戻り温水が前記戻配管45に合流する。この通路上配管46に供給配管43からの温水が直接供給されるので、コンクリ−ト通路4上も効率良く暖房することができ、温室内全体の温度むらを少なくして栽培を良好に行える。尚、通路上配管46を地面から2〜4mの高さに設けており、通路での移動に支障にならないようにしている。
【0029】
(部分冷暖房)
次に、部分冷暖房による植物の生育制御について説明する。
栽培ハウス1において、栽培床5に複数の植物株K…を列状に植え付け、その上部を上から吊る誘引吊部材13によって設定の高さに支持し、この植物株Kの列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する後述の熱作用部52と、この熱作用部52の外側方をカバーする遮蔽カーテン34とを設けた植物栽培設備を構成し、熱作用部52の位置に植物株Kの生長点Gが来るように誘引吊部材13を設定して支持するように構成する。
【0030】
このように構成することにより、栽培床5に植付けた複数の植物株K…は、誘引吊部材13…によってそれぞれ設定高さ位置に支持されるとともに、熱作用部52により植物株Kの所定高さ部位に冷暖熱が作用し、この熱作用は熱作用部52の外側方をカバーする遮蔽カーテン34の範囲内に限定される。したがって、熱作用部52の位置に植物株の生長点Gが来るように誘引吊部材13を設定して支持することにより、植物株Kの生育を効率よく制御することができ、複数の栽培床5…を互いに密接して配置した場合でも、隣接部相互の影響無しに個別の栽培制御が可能となることから、簡易な構成によって栽培ハウス内における日射量や通風等の部分的な育生条件差を補って病害虫の事前対処を含む確実な育生制御が可能となる。
【0031】
具体的には、図15の栽培システムの正面断面図に示すように、二次暖房兼用型細霧冷房システム51を付設し、冬季は生長点暖房として使用(必要により根圏用配管52rによる根圏暖房を含む)し、夏期は生長点冷房として生長点Gのみを冷却(必要により根圏用配管52rによる根圏冷却を含む)するように、カメラ51m等を備えるモニタリング部51m,90,40,91によって自動診断と部位別温度管理する制御部51pを設けて構成する。
【0032】
生長点付近の画像処理を行い、第1葉から第4葉までの葉間の伸長量と前回の生長点付近の茎径を計測し、茎径が一定範囲に保たれている場合は、伸長量により、基準範囲内なら部位別の設定温度を維持し、基準未満なら温度を下げ、また、茎径が基準値より太い場合は、設定温度を下げ、植物付近に好適温度を維持し効果的な植物部位のみの温度を制御する。また、養液の給液前と後の葉の投影面積を計測し、この投影面積比に基づいて給液前の葉の萎れが基準値より大きいと判断されるときは設定温度を下げ、給液前の葉の萎れが基準値より小さいと判断されるときは設定温度を上げるよう温度制御してもよい。
【0033】
また、モニタリング部51m,90,40,91には、生長点付近の温度(言い換えれば、遮蔽カーテン34でカバーされる範囲の温度)を測定する生長点温度センサ90と、日射量を測定する日射量センサ40と、生長点付近の湿度(言い換えれば、遮蔽カーテン34でカバーされる範囲の湿度)を測定する生長点湿度センサ91を設ける。
【0034】
日中において、栽培植物の葉の葉温を摂氏(Y)度とし、生長点温度センサ90により測定される生長点付近の温度を摂氏(X1)度とし、日射量センサ40により測定される単位面積1平方メートル当たりの日射量を(X2)kWとし、生長点湿度センサ91の測定から得られる生長点付近の絶対湿度と生長点付近における飽和水蒸気量との差(飽差)を(X3)mmHgとすると、次の演算式が成り立つ。
(Y)=1.016(X1)+13.04(X2)−0.0355(X3)−3.2
【0035】
尚、生長点付近における飽和水蒸気量は、生長点温度センサ90の測定する温度に基づいて演算される。生長点付近の絶対湿度は、生長点湿度センサ91が絶対湿度を測定するものであればよいが、生長点湿度センサ91が相対湿度を測定するものであっても、該相対湿度と生長点温度センサの測定する温度に基づいて得られるものである。
【0036】
従って、生長点温度センサ90、日射量センサ40及び生長点湿度センサ91で得られる測定値を使用し、この演算式に基づいて葉温を求め、該葉温が予め設定した設定葉温よりも高い場合、後述するノズル52aから冷水を噴霧して生長点付近を冷却する。尚、この冷水の噴霧が葉に付着することにより、気化熱により葉温を低下させる作用が働く。具体例として、設定葉温を20度としたとき、演算される葉温が設定葉温よりも3度以上高いと(葉温が23度以上になると)、ノズル52aにより生長点付近を冷却するようにすればよい。
【0037】
逆に、求められる葉温が予め設定した設定葉温よりも低い場合、後述するノズル52aから温水を噴霧して生長点付近を暖房する。具体例として、設定葉温を20度としたとき、演算される葉温が設定葉温よりも3度以上低いと(葉温が17度以下になると)、ノズル52aにより生長点付近を暖房するようにすればよい。
尚、夏場と冬場で、異なる設定葉温を各々設定してもよい。
【0038】
このように、部位別温度制御部により、植物の生体情報を計測して生育状態を診断し、植物株の生育状態に応じた第一と第二の熱作用部による部位別の温度管理による効率の良い生育栽培が可能となることから、本システムにより、園芸温室や太陽光利用型植物工場温室の生産性向上において緊急の課題である、夏期の高温障害や冬期の低温障害による収穫量の減少と、温度制御のためのエネルギーコストの増大を同時に解決し、従来の方法(温室全体を温度制御する)と比べて、石油消費量の50%程度削減と夏期および冬期の収穫量増大(約1割)を実現することができる。具体例として、生長点付近の温度を摂氏20度に制御するが、温室全体の温度(室温)を摂氏12度に制御することにより、暖房のエネルギーコストを抑えるようにすればよい。
従来は、温室全体を冷暖房し、温室全体の温度(室温)を制御していたので、エネルギーコストがかかっていた。
【0039】
一般に、植物栽培について、生長点暖房と細霧冷房システムは、ほぼ同じ配置とすることが可能であることから、個別設置のコストを要することなく冬季は暖房とし、夏期は冷却として生育に重要な冷暖房が可能で、生長点Gの冷却により栽培時期の延長による収量増収が可能となる。例えば、熱源をチラー51aにより構成し、また、熱作用部としての配管52には、図16の配管部の拡大図に示すように、噴霧方向Aと暖房時の噴霧不可方向Bについて方向設定可能なノズル52a,52aを設け、ボイラー51bによる温水暖房、動力噴霧機51cによる養液薬剤散布を含む細霧冷却を切替え可能に構成することができる。尚、ノズル52aを設けず、配管52に冷水又は温水を流すことにより冷暖房を行う構成としてもよい。
【0040】
また、根圏については、夏場と冬場で各々設定温度を設定し、該設定温度となるよう根圏用配管52rに冷水又は温水を流して温度制御すればよい。前記設定温度は、前述の求められる葉温に応じて、葉温が高いときに低く、葉温が低いときに高くなるよう、補正制御されるようにしてもよい。
【0041】
また、図17のシステム展開図に示すように、生長点暖房・冷却の各ラインに電磁弁52v…を設けてライン制御可能に構成し、ライン毎に生育に合わせて生長点環境を制御する。このようなライン別の制御により、生育の均一性を保つことができ、収量の増加が可能となる。
【0042】
二次暖房の配管54には、図22の部分縦断側面図に示すように、放熱保護用の筒状の断熱材による保護筒55を取付け、この保護筒55が自動的に移動可能に構成し、配管54に設けた磁気テープを利用してグループ化を行うことにより、生育に問題がないところを保護し、問題があるところを開放することにより、生育むらを解消することができる。
【0043】
なお、遮蔽カーテン34については、生長点の付近に温水を流したパイプを吊し、そのパイプからの自然対流熱伝達によって生長点付近のみを暖房する方式では、そのパイプから放熱された熱は植物工場全体に拡散して生長点の暖房としては効率が良くないことから、植物株の上に水平に展張される保温フィルムを垂れ下げることで、暖房効率を大幅に向上することができる。
【0044】
次に、二酸化炭素の施用については、二酸化炭素配管56をライン間に配置して二酸化炭素循環扇連動制御システムを設けるとともに、周辺空気と混合されて二酸化炭素濃度が十分でない可能性があるので、図21の要部配管系統図に示すように、ラインの両サイドも二酸化炭素配管56bにより同様に二酸化炭素を施用することで、目的のライン生育の遅れが解消されて生育の均一化が可能となる。
【0045】
(給液システム)
次に、水耕養液の給液システムについて説明する。
夏期においては養液配管内に滞留されている養液が日射や大気温度によって約40℃まで上昇し、この高温の養液を給液すると植物の根圏に悪影響を及ぼすという問題があり、その解決のために、水耕養液の給液システムは、図23のシステム展開図に示すように、給液用ポンプ61aによる養液装置から連通する養液の給液配管61について養液混合タンク62まで戻す還流管63を設置し、この還流管63に電磁弁64a、64bを設けるとともに、養液混合タンク62に循環用ポンプ65を設ける。
【0046】
給液時は、両電磁弁64a、64bを閉止して給液用ポンプ61aにより給液し、次の給液までの間は、両電磁弁64a、64bを開放して循環用ポンプ65により養液循環を行う。この循環用ポンプ65による循環動作は、ドリップチューブ66のドリッパーより養液が出ない程度の能力で運転することにより、配管内の温度を一定(約20℃)に保ち、植物の根圏環境を改善することができる。具体的には、収穫終期の6,7月は収量増収および生活障害の回避、7〜9月は育苗時の高温ストレスによる不着米、生育遅れの回避が可能となる。なお、給液用ポンプ61aと循環用ポンプ65は1台のポンプをインバータにより循環時に低速運転することにより同様に構成することができる。
【0047】
(培地温度制御)
次に、イチゴ用栽培ベッド71は、図24の2つの使用態様(a)、(b)に示すように、、寒冷期は培地の中にホースを配置し、その中に温水を流して培地を暖める加温用ホース72aとし、また、温暖期は培地の上位置にホースを引き上げてその中に冷水を流してクラウン部を冷却する冷却ホース72bとして構成する。このように培地加温用とイチゴ株のクラウン部冷却用のホース72a,72bを兼用することにより、イニシャルコストを半減することができる。
【0048】
(組立型栽培ベッド)
次に、組立型栽培ベッドについて説明する。
従来構成の栽培ベッドは、発泡スチロール内に排水溝を一体形成したものであり、その排水用の水準精度を確保して据付施工するために多くの手間を強いられるという問題があったことから、この問題を解消するために、栽培ベッドを以下のように組立型に構成する。
【0049】
すなわち、組立型栽培ベッドは、図25の断面図に示すように、袋培地81を側柱82,82と挿し込み式の桁材83によって受け、この桁材83の下方に排水を受ける排水樋84を排水金具85によって支持する。この排水金具85は、チョウボルトナット85a、85aによって桁材83に対して高さ調節可能に連結して構成することにより、チョウボルトナット85a、85aの操作のみで排水樋84の傾斜調節が随時可能となるので、袋培地81の架設の水準精度を問わない簡易な据付施工が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 温室(栽培ハウス)
5 栽培ベッド(栽培床)
13 誘引紐(誘引吊部材)
19 給液パイプ
34 遮光カーテン(遮蔽カーテン)
40 日射量センサ
41 暖房装置
44 支配管
45 戻配管
46 通路上配管
51 二次暖房兼用型細霧冷房システム
52 配管(熱作用部)
52a ノズル
52r 熱作用部
54 配管
90 生長点温度センサ
91 生長点湿度センサ
G 生長点
K 植物株
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物株を植付ける栽培床にその上部吊り支持部材を備える植物栽培設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培に関し、植付け株の栽培床に冷熱を供給する冷水管を配設した例(特許文献1)や、その熱源効率を上げるために、植付け株をカバーするカーテンを設けた例(特許文献2)がある。このような栽培床の冷却制御により、植付け株の生育をグループ別に管理して植物の収穫時期調節や地域条件対応の精度を上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−272262号公報
【特許文献2】特開平11−289869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記冷却制御のみならず、寒冷期の暖房を含む幅広い温度制御に適用するためには、そのための暖房熱源と暖房用配管が必要となり、多大なコスト増を招くこととなる。また、誘引吊部材を用いるトマトのように上に高く延びる蔓状植物栽培においては、植付け株を覆う大きなカバーと温度管理のために大容量の熱源が必要となる上に、栽培ハウス内における日射量や通風等の局所的な育生条件差に伴う生育遅れや病害虫に対処するための煩雑な作業と多大なコスト負担が避けられないという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、誘引吊部材を用いる植物栽培について、簡易な取扱いと最小限のコストで植付け株の生育のきめ細かな管理ができ、栽培ハウス内における日射量や通風等の局所的な育生条件差を補って確実な育生制御を可能とする植物栽培設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、植付けた植物株を育成するための栽培床と、この栽培床に植付けた植物株を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材とからなる植物栽培設備において、上記栽培床には、誘引吊部材によって支持した複数の植物株を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する熱作用部と、この熱作用部の外側方をカバーする遮蔽カーテンとを設けたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、上記植物株(K)の生長点となる所定の高さ位置に冷暖熱を作用する第一の熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)と、同植物株(K)の根域となる部位に冷暖熱を作用する第二の熱作用部(52r)と、同植物株(K)の生育状態を検出するモニタリング部(51m,90,40,91)と、このモニタリング部(51m,90,40,91)の検出情報による植物株(K)の生育状態の診断結果に基づいて上記第一および第二の熱作用部(52,52r)を個別に温度管理する部位別温度制御部(51p)とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、栽培床に植付けた複数の植物株は、誘引吊部材によってそれぞれ設定高さ位置に支持されるとともに、局所的な熱作用部により植物株の所定高さ部位に冷暖熱が作用し、この熱作用は熱作用部の外側方をカバーする遮蔽カーテンの範囲内に限定される。したがって、熱作用部の位置に植物株の生長点が来るように誘引吊部材を設定して支持することにより、植物株の生育を効率よく制御することができ、複数の栽培床を互いに密接して配置した場合でも、隣接部相互の影響無しに個別の栽培制御が可能となることから、簡易な構成によって栽培ハウス内における日射量や通風等の部分的な育生条件差を補って病害虫の事前対処を含む確実な育生制御が可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記部位別温度制御部により、植物の生体情報を計測して生育状態を診断し、植物株の生育状態に応じた第一と第二の熱作用部による部位別の温度管理による効率の良い生育栽培が可能となることから、本システムにより、園芸温室や太陽光利用型植物工場温室の生産性向上において緊急の課題である、夏期の高温障害や冬期の低温障害による収穫量の減少と、温度制御のためのエネルギーコストの増大を同時に解決し、従来の方法(温室全体を温度制御する)と比べて、石油消費量の50%程度削減と夏期および冬期の収穫量増大(約1割)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温室を西側から見た側面図
【図2】温室を南側から見た側面図
【図3】栽培ベッドを示す断面図
【図4】誘引紐を使用して栽培する方法を判りやすく示す図
【図5】誘引紐ホルダを示す図
【図6】誘引ワイヤと誘引紐ホルダとの関係を示す図
【図7】茎受具を示す図
【図8】従来の茎受具を示す図
【図9】養液供給経路を示す図
【図10】遮光カーテン及び非開閉式カーテンを判りやすく示す温室の平面図
【図11】遮光カーテンを示す図
【図12】養液供給制御のフローチャート
【図13】暖房装置を判りやすく示す温室の平面図
【図14】通路上配管を示す図
【図15】栽培システムの正面断面図
【図16】配管部の拡大図
【図17】システム展開図
【図18】暖房構成の縦断側面図
【図19】正面断面図
【図20】要部斜視図
【図21】システム展開図
【図22】暖房の配管の部分縦断側面図
【図23】水耕養液の給液システム展開図
【図24】イチゴ用栽培ベッドの使用態様(a)(b)
【図25】組立型栽培ベッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(基本構成)
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、植物栽培ハウスとしての温室1を示したものであり、この温室1は、東西南北の四方の側壁2及び天井3を透明のガラスで構成し、ガラス張りになっている。前記温室の南北方向の中央には作業者、作業台車あるいは防除機等が通過することができる通路4を設けており、この通路4は、路面がコンクリ−トで構成されたコンクリ−ト通路で、温室の東端から西端まで東西方向に長く構成されている。通路4の南北に、栽培ベッド5を配置した栽培区域を構成している。通路4の両端部には、温室1への出入口6が構成されている。
【0012】
温室1内の上部の空間には、温室の南北方向に長く延びる支持具7が地面に並行に東西方向に複数本配置されている。一対の支持管8が支持具7の下に平行に配置され、複数の吊具9で支持具7に吊り下げられている。左右の耳部10aがそれぞれの支持管8に掛けられて容器10が地面から浮くように吊られている。容器10には、台形に曲げた受板11が底に入りロックウールで作った栽培ベッド5がその上に載っている。尚、1本の支持具7に対して通路4を挟んで南北に2個の栽培ベッド5が配置され、該栽培ベッド5は、南北の栽培区域においてそれぞれ南北方向に長く延びて東西方向に複数並列に配置された構成となっている。苗を移植したキューブ12が栽培ベッド5に左右2列に並んで載るようになっている。
【0013】
キューブ12から伸長する苗の茎kは、上方から吊り下げられた誘引紐13によって上方へ誘引される。誘引紐13は、誘引紐ホルダ14に糸巻状に巻き込まれており、該ホルダ14から引き出されるようになっている。誘引紐ホルダ14の上部には誘引フック14aを設けており、この誘引フック14aを温室1内の上部に栽培ベッド5のキューブ12の列に沿って南北方向に延びる誘引ワイヤ15にひっかけて誘引紐ホルダ14を吊る構成となっている。尚、誘引ワイヤ15は、栽培ベッド5のキューブ12の列の数に合わせて東西方向に複数並列に配置された構成となっている。図4に示すように、クリップ16により誘引紐13に作物の茎kを固定して栽培すると、茎kは誘引紐13をつたって上方へ伸長していく。そして、誘引ワイヤ15(誘引紐ホルダ14)の高さまで茎kが伸長すると、適宜、誘引紐ホルダ14から誘引紐13を繰り出しながら誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15に沿って南北方向の一方側へ栽培ベッド5に沿ってずらし、茎kが上方へ伸長するスペ−スをとって栽培する。尚、必要に応じて、適宜作物の茎kをクリップ16により誘引紐に固定していく。
【0014】
誘引ワイヤ15は、東西方向に延びる温室1内の複数のラチス17の上側で該ラチス17に支持される。従って、誘引紐ホルダ14の重みにより、誘引ワイヤ15は、ラチス17の間で下へ撓んだ状態となる。すると、誘引ワイヤ15の誘引フック14aが誘引ワイヤ15に沿って該誘引ワイヤ15の低位側へ移動しやすくなり、図6(a)に示すように各苗株の誘引紐ホルダ14が一箇所に集まるように移動し、誘引ワイヤ15の適正な位置に誘引紐ホルダ14を保持できなくなるおそれがある。ところが、前記誘引フック14aの誘引ワイヤ15への係止部には滑りにくい素材であるビニール材14bを接着剤で貼り付けており、誘引フック14aと誘引ワイヤ15との接触抵抗を大きくし、誘引フック14aが誘引ワイヤ15上で滑って移動するのを防止している。従って、各苗株の誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15上で等間隔で適正な位置に配置でき、各苗株の茎部が互いに近づいて密集するようなことを防止でき、各苗株が互いに成育を阻害せずに十分な太陽光を得ることができ、作物を良好に成育することができる。尚、誘引フック14aの誘引ワイヤ15への係止部を、ゴム材にして滑りにくい素材としてもよい。また、誘引ワイヤ15を滑りにくい素材としてもよい。
【0015】
図4に示すように、誘引紐ホルダ14を誘引ワイヤ15に沿って移動させながら作物を栽培するので、茎kが長くなると茎kの下部がキューブ12より下に垂れ下がるおそれがある。そこで、栽培ベッド5の側方に所定間隔おきに茎受具18を設け、該茎受具18上に茎kを載せて茎kの下部が栽培ベッド5に沿って横方向に向くようにしている。この茎受具18は、中央部18aが低位となるように平板を折り曲げて構成され、容器10内にはめ込んだ後、上側に栽培ベッド5を載置して装着される。茎受具18の茎受け部分18bは、両端部に構成され栽培ベッド5の左右両側にそれぞれのキューブ12の列に対応して設けられている。尚、茎受具18の茎受け部分18bの外端には立ち上がり部18cを設け、この立ち上がり部18cにより茎受具18に載せた茎kが外方へ脱落しないようにしている。茎受具18は、図7に示すように、平板で構成されているので、前後方向(栽培ベッド5の方向)への回動が規制され、栽培ベッド5に対して茎受け部分18bを適正な位置に維持できる。従来の茎受具18は、図8に示すように、棒材で構成されているので、前後方向(栽培ベッド5の方向)へ無闇に回動するおそれがあり、栽培ベッド5に対する茎受け部分18bの位置が変化して適正に茎kを受けることができないおそれがある。
【0016】
容器10の下部で栽培ベッド5の下方の左右幅方向中央には、栽培ベッド5に養液を供給するための給液パイプ19を栽培ベッド5に沿って南北方向に延設している。給液パイプ19の上方で栽培ベッド5の下方の位置には、栽培ベッド5からの排液(余剰の養液)を受けて回収する排液ガ−タ−20を給液パイプ19と同様に南北方向に延設している。尚、容器10、栽培ベッド5及び排液ガ−タ−20はその長手方向(南北方向)に若干傾斜しており、排液ガ−タ−20で受けた排液が該ガ−タ−20の一端へ回収されるようになっている。給液パイプ19からそれぞれのキューブ12へ養液を供給するそれぞれのドリップホ−ス21を設け、キューブ12に移植した苗に養液を供給して作物を栽培するようになっている。
【0017】
従って、給液パイプ19を栽培ベッド5及び排液ガ−タ−20の下方に配置しているので、栽培ベッド5あるいは排液ガ−タ−20により影になって給液パイプ19へ太陽光が照射しないので、栽培ベッド5へ供給する養液が高温になるのを防止できる。特に、夏季に養液が異常な高温となるのを防止でき、栽培床となる栽培ベッド5が異常な高温になって栽培に悪影響を及ぼすことを防止できる。また、給液パイプ19が栽培ベッド5の側方に配置されていないので、温室1内の栽培面積を小さくできると共に、給液パイプ19が作業者あるいは作業車等による栽培ベッド5の側方からの作業や栽培作物の成育等の邪魔にならない。従来は、吊り下げ式の栽培ベッドの上部側方や栽培ベッドを載せる容器の上側側部の耳部に給液パイプを設けていたので、太陽光が照射により給液パイプの温度が上昇しやすく、栽培ベッドへ供給する養液が高温になることがあった。尚、栽培ベッドの上部側方に給液パイプを設けた場合は、給液パイプが栽培ベッドの側方からの作業の邪魔になったり成育する栽培作物と干渉してその成育を阻害したりするおそれがある。
【0018】
図9に示すように、養液を貯留するAタンク22並びにBタンク23及び酸タンク24からポンプユニット25を介して給液パイプ19へ養液が供給される構成となっている。尚、肥料成分の異なる養液をAタンク22とBタンク23とに貯留し、Aタンク22及びBタンク23からの肥料成分の異なる養液の混合割合をポンプユニット25で調整し、所望の肥料成分の養液を得るようになっている。そして、ポンプユニット25から各栽培ベッド5の給液パイプ19へ養液が分流される構成であり、作物を栽培しない容器10あるいは栽培ベッド5がある場合に各給液パイプ19への給液を停止できる給液停止バルブ26をそれぞれ設け、該給液停止バルブ26により無駄に養液を供給することを防止できる。これらの構成を備えて、養液供給装置が構成される。
【0019】
また、各排液ガ−タ−20で回収された排液が合流して排液回収タンク27ヘ貯留され、該排液回収タンク27から殺菌前タンク28を介して殺菌装置29へ供給され、該殺菌装置29により排液を殺菌する。殺菌装置29で殺菌された排液は、二次原水タンク30へ送られて原水に混合されて肥料濃度が調整され、ポンプユニット25へ供給して養液として再利用できる構成となっている。尚、原水を貯留する一次原水タンク31から前記二次原水タンク30へ原水を供給する構成となっている。これにより、二次原水タンク30で殺菌された排液と原水とを混合しながら肥料濃度が調整できるので、所望の肥料濃度に精度良く調整することができ、従来の排液再利用装置のように肥料濃度が高い養液(排液)をポンプユニット25を介して給液パイプ19ひいては栽培ベッド5へ供給してしまうことを防止でき、栽培する苗や作物に肥料焼けが生じるようなことを防止できる。尚、従来の排液再利用装置は、原水を貯留する一次原水タンク及び殺菌装置で殺菌された排液を貯留する殺菌後タンクから直接原水及び排液がポンプユニットへ供給される構成であったので、栽培過程や栽培状況等によって排液の肥料濃度がまちまちであるため、原水と排液との混合割合を調整してポンプユニットへ供給しようとしても排液の肥料濃度の変化が激しくて対応しきれず、再利用する養液の肥料濃度を所望の肥料濃度に精度良く調整することが困難であった。
【0020】
ポンプユニット25において、二次原水タンク30から栽培ベッド5へ養液を供給するポンプ32を並列に2個設けている。通常は、前記2個のポンプ32のうち、一方を使用して養液を供給する。そして、使用しているポンプ32が故障したとき、該ポンプ32を停止してその吸入口及び吐出口のバルブ33を閉じ、他方のポンプ32の吸入口及び吐出口のバルブ33を開いて該他方のポンプ32を駆動し、養液供給を継続することができる。これにより、前記ポンプ32の故障で栽培する植物(作物)が枯れてしまうようなことがなく、良好な栽培を維持することができる。故障しているポンプ32の吸入口及び吐出口のバルブ33を閉じているので、他方のポンプ32により養液供給を継続しながら、故障しているポンプ32を修理したり良品のポンプと交換したりすることができる。従来は、単一のポンプにより養液を供給するようになっていたので、そのポンプが故障すると養液供給が行えなくなり、植物(作物)の栽培に悪影響を与えるおそれがある。
【0021】
温室1の天井3部には、南北方向に複数の遮光カーテン34を所定間隔おきに設けている。この遮光カーテン34は、スプリング(図示せず)により該遮光カーテン34の南側に配置した巻取軸35に巻き取られて開くようになっている。温室1内の北端にはカーテン開閉モータ36を設けており、該モータ36の駆動によりカーテン開閉ワイヤ37を介して複数の遮光カーテン34を同時に巻取軸35から引き出す構成となっている。尚、この複数の遮光カーテン34により、温室1の天井部の全面を遮光することができる。カーテン開閉モータ36部には、該モータ36の回転位置により遮光カーテン34の開閉度(開閉量)を検出する遮光カーテン開閉センサ38を設けている。温室1内の側壁2部には、ある程度の光を遮るため開閉しない非開閉式カーテン39を装備している。
【0022】
温室1外の南側には、日射量センサ40を設けている。この日射量センサ40により検出される日射量に基づいて、遮光カーテン開閉センサ38の検出により遮光カーテン34が所望の開閉度となるよう、カーテン開閉モータ36を駆動制御して遮光カーテン34の開閉度を変更して制御し、日射量が大きいときは遮光カーテン34を大きく閉じて遮光率を上げるようになっている。
【0023】
図12に基づいて養液の供給制御について説明すると、日射量センサ40の検出により積算日射量を逐次演算し(ステップ1)、積算日射量が給液開始値に達するとポンプユニット25へ給液信号を出力して所定量の養液を供給するようになっている(ステップ2)。尚、ポンプユニット25へ給液信号が出力されると、積算日射量をクリアして0に戻す。また、前記給液開始値は、遮光カーテン開閉センサ38値より遮光カーテン34が完全に開いた状態(遮光率0)のときは予め設定した所定値となり(ステップ3)、遮光カーテン34が幾分でも閉じている状態のときは遮光カーテン開閉センサ38値に基づいて遮光カーテン34の開閉度に応じて前記予め設定した所定値から加算して補正し(ステップ4)、遮光カーテン34を閉じ量が大きいほど給液開始値を大きくして養液を供給回数が少なくなるようにしている。
【0024】
以上により、この栽培施設の養液供給制御装置は、カーテン開閉モータ36により遮光カ−テン34の開閉度を変更して調節可能で、積算日射量が給液開始値に達すると所定量の養液を供給するという所定の制御パタ−ンに基づいて自動的に植物へ養液を供給すると共に、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液供給の制御パタ−ンを補正して制御している。
【0025】
従って、この栽培施設の養液供給制御装置は、所定の制御パタ−ンに基づいて自動的に植物へ養液を供給する。そして、遮光カ−テン34の開閉度が変更されて調節されると、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液の供給制御が補正され、養液の供給量の適正化を図ることができる。よって、養液の供給の不適正により栽培する植物に生理障害が生じるのを防止して、植物を良好に栽培することができる。特に、トマトの栽培において、日射量の大きい4月〜6月に生理障害が生じるのを防止でき、良質の作物を栽培することができる。
【0026】
尚、養液供給の制御パタ−ンを、所定時間に養液を供給するようにし、積算日射量に基づいて養液の供給量を制御するパタ−ンとしてもよい。このときは、遮光カ−テン34の開閉度に基づいて養液の供給量が補正される構成となる。
【0027】
尚、この養液供給制御においては、夜間には給液しないように1日のうちの給液可能時間帯を設定し、該給液可能時間帯にのみ養液を供給するようになっている。そして、給液可能時間帯を過ぎたとき(夕方等)、酸タンク24に貯留した酸を所定時間(5秒間)供給し、ドリップホ−ス21内を洗浄するようになっている。従来、夜間にドリップホ−ス21内に養液が貯留されたままになるのでドリップホ−ス21内に液肥が固結しやすく、ドリップホ−ス21に目詰まりが生じて翌日の養液供給を円滑に行えないことがあるが、ドリップホ−ス21内に酸を流して洗浄することにより、この不具合を解消できる。尚、前記酸は、重量濃度1%程度の硝酸等、植物の成育を阻害しない程度のものである。また、ドリップホ−ス21内に酸を流して洗浄した後に原水を流し、栽培ベッド5に酸が残らないようにして酸により植物の成育を阻害しないようにしてもよい。
【0028】
ところで、温室1には、冬期等の栽培のために暖房用の温水配管を備える暖房装置41を設けている。この暖房装置41は、ボイラー42からの温水を温室内の東端を介して南端及び北端へ供給する供給配管43と、該供給配管43に接続して各栽培ベッド5間で温水を往復させる支配管44と、該支配管44から温室1内の南端又は北端を介して東端に合流させて温水をボイラー42へ戻す戻配管45とを設けている。また、温室1内の東端の供給配管43から分岐して通路4上で温水を往復させる通路上配管46を2本設け、この通路上配管46からの戻り温水が前記戻配管45に合流する。この通路上配管46に供給配管43からの温水が直接供給されるので、コンクリ−ト通路4上も効率良く暖房することができ、温室内全体の温度むらを少なくして栽培を良好に行える。尚、通路上配管46を地面から2〜4mの高さに設けており、通路での移動に支障にならないようにしている。
【0029】
(部分冷暖房)
次に、部分冷暖房による植物の生育制御について説明する。
栽培ハウス1において、栽培床5に複数の植物株K…を列状に植え付け、その上部を上から吊る誘引吊部材13によって設定の高さに支持し、この植物株Kの列方向に沿って所定の高さ部位に冷暖熱を作用する後述の熱作用部52と、この熱作用部52の外側方をカバーする遮蔽カーテン34とを設けた植物栽培設備を構成し、熱作用部52の位置に植物株Kの生長点Gが来るように誘引吊部材13を設定して支持するように構成する。
【0030】
このように構成することにより、栽培床5に植付けた複数の植物株K…は、誘引吊部材13…によってそれぞれ設定高さ位置に支持されるとともに、熱作用部52により植物株Kの所定高さ部位に冷暖熱が作用し、この熱作用は熱作用部52の外側方をカバーする遮蔽カーテン34の範囲内に限定される。したがって、熱作用部52の位置に植物株の生長点Gが来るように誘引吊部材13を設定して支持することにより、植物株Kの生育を効率よく制御することができ、複数の栽培床5…を互いに密接して配置した場合でも、隣接部相互の影響無しに個別の栽培制御が可能となることから、簡易な構成によって栽培ハウス内における日射量や通風等の部分的な育生条件差を補って病害虫の事前対処を含む確実な育生制御が可能となる。
【0031】
具体的には、図15の栽培システムの正面断面図に示すように、二次暖房兼用型細霧冷房システム51を付設し、冬季は生長点暖房として使用(必要により根圏用配管52rによる根圏暖房を含む)し、夏期は生長点冷房として生長点Gのみを冷却(必要により根圏用配管52rによる根圏冷却を含む)するように、カメラ51m等を備えるモニタリング部51m,90,40,91によって自動診断と部位別温度管理する制御部51pを設けて構成する。
【0032】
生長点付近の画像処理を行い、第1葉から第4葉までの葉間の伸長量と前回の生長点付近の茎径を計測し、茎径が一定範囲に保たれている場合は、伸長量により、基準範囲内なら部位別の設定温度を維持し、基準未満なら温度を下げ、また、茎径が基準値より太い場合は、設定温度を下げ、植物付近に好適温度を維持し効果的な植物部位のみの温度を制御する。また、養液の給液前と後の葉の投影面積を計測し、この投影面積比に基づいて給液前の葉の萎れが基準値より大きいと判断されるときは設定温度を下げ、給液前の葉の萎れが基準値より小さいと判断されるときは設定温度を上げるよう温度制御してもよい。
【0033】
また、モニタリング部51m,90,40,91には、生長点付近の温度(言い換えれば、遮蔽カーテン34でカバーされる範囲の温度)を測定する生長点温度センサ90と、日射量を測定する日射量センサ40と、生長点付近の湿度(言い換えれば、遮蔽カーテン34でカバーされる範囲の湿度)を測定する生長点湿度センサ91を設ける。
【0034】
日中において、栽培植物の葉の葉温を摂氏(Y)度とし、生長点温度センサ90により測定される生長点付近の温度を摂氏(X1)度とし、日射量センサ40により測定される単位面積1平方メートル当たりの日射量を(X2)kWとし、生長点湿度センサ91の測定から得られる生長点付近の絶対湿度と生長点付近における飽和水蒸気量との差(飽差)を(X3)mmHgとすると、次の演算式が成り立つ。
(Y)=1.016(X1)+13.04(X2)−0.0355(X3)−3.2
【0035】
尚、生長点付近における飽和水蒸気量は、生長点温度センサ90の測定する温度に基づいて演算される。生長点付近の絶対湿度は、生長点湿度センサ91が絶対湿度を測定するものであればよいが、生長点湿度センサ91が相対湿度を測定するものであっても、該相対湿度と生長点温度センサの測定する温度に基づいて得られるものである。
【0036】
従って、生長点温度センサ90、日射量センサ40及び生長点湿度センサ91で得られる測定値を使用し、この演算式に基づいて葉温を求め、該葉温が予め設定した設定葉温よりも高い場合、後述するノズル52aから冷水を噴霧して生長点付近を冷却する。尚、この冷水の噴霧が葉に付着することにより、気化熱により葉温を低下させる作用が働く。具体例として、設定葉温を20度としたとき、演算される葉温が設定葉温よりも3度以上高いと(葉温が23度以上になると)、ノズル52aにより生長点付近を冷却するようにすればよい。
【0037】
逆に、求められる葉温が予め設定した設定葉温よりも低い場合、後述するノズル52aから温水を噴霧して生長点付近を暖房する。具体例として、設定葉温を20度としたとき、演算される葉温が設定葉温よりも3度以上低いと(葉温が17度以下になると)、ノズル52aにより生長点付近を暖房するようにすればよい。
尚、夏場と冬場で、異なる設定葉温を各々設定してもよい。
【0038】
このように、部位別温度制御部により、植物の生体情報を計測して生育状態を診断し、植物株の生育状態に応じた第一と第二の熱作用部による部位別の温度管理による効率の良い生育栽培が可能となることから、本システムにより、園芸温室や太陽光利用型植物工場温室の生産性向上において緊急の課題である、夏期の高温障害や冬期の低温障害による収穫量の減少と、温度制御のためのエネルギーコストの増大を同時に解決し、従来の方法(温室全体を温度制御する)と比べて、石油消費量の50%程度削減と夏期および冬期の収穫量増大(約1割)を実現することができる。具体例として、生長点付近の温度を摂氏20度に制御するが、温室全体の温度(室温)を摂氏12度に制御することにより、暖房のエネルギーコストを抑えるようにすればよい。
従来は、温室全体を冷暖房し、温室全体の温度(室温)を制御していたので、エネルギーコストがかかっていた。
【0039】
一般に、植物栽培について、生長点暖房と細霧冷房システムは、ほぼ同じ配置とすることが可能であることから、個別設置のコストを要することなく冬季は暖房とし、夏期は冷却として生育に重要な冷暖房が可能で、生長点Gの冷却により栽培時期の延長による収量増収が可能となる。例えば、熱源をチラー51aにより構成し、また、熱作用部としての配管52には、図16の配管部の拡大図に示すように、噴霧方向Aと暖房時の噴霧不可方向Bについて方向設定可能なノズル52a,52aを設け、ボイラー51bによる温水暖房、動力噴霧機51cによる養液薬剤散布を含む細霧冷却を切替え可能に構成することができる。尚、ノズル52aを設けず、配管52に冷水又は温水を流すことにより冷暖房を行う構成としてもよい。
【0040】
また、根圏については、夏場と冬場で各々設定温度を設定し、該設定温度となるよう根圏用配管52rに冷水又は温水を流して温度制御すればよい。前記設定温度は、前述の求められる葉温に応じて、葉温が高いときに低く、葉温が低いときに高くなるよう、補正制御されるようにしてもよい。
【0041】
また、図17のシステム展開図に示すように、生長点暖房・冷却の各ラインに電磁弁52v…を設けてライン制御可能に構成し、ライン毎に生育に合わせて生長点環境を制御する。このようなライン別の制御により、生育の均一性を保つことができ、収量の増加が可能となる。
【0042】
二次暖房の配管54には、図22の部分縦断側面図に示すように、放熱保護用の筒状の断熱材による保護筒55を取付け、この保護筒55が自動的に移動可能に構成し、配管54に設けた磁気テープを利用してグループ化を行うことにより、生育に問題がないところを保護し、問題があるところを開放することにより、生育むらを解消することができる。
【0043】
なお、遮蔽カーテン34については、生長点の付近に温水を流したパイプを吊し、そのパイプからの自然対流熱伝達によって生長点付近のみを暖房する方式では、そのパイプから放熱された熱は植物工場全体に拡散して生長点の暖房としては効率が良くないことから、植物株の上に水平に展張される保温フィルムを垂れ下げることで、暖房効率を大幅に向上することができる。
【0044】
次に、二酸化炭素の施用については、二酸化炭素配管56をライン間に配置して二酸化炭素循環扇連動制御システムを設けるとともに、周辺空気と混合されて二酸化炭素濃度が十分でない可能性があるので、図21の要部配管系統図に示すように、ラインの両サイドも二酸化炭素配管56bにより同様に二酸化炭素を施用することで、目的のライン生育の遅れが解消されて生育の均一化が可能となる。
【0045】
(給液システム)
次に、水耕養液の給液システムについて説明する。
夏期においては養液配管内に滞留されている養液が日射や大気温度によって約40℃まで上昇し、この高温の養液を給液すると植物の根圏に悪影響を及ぼすという問題があり、その解決のために、水耕養液の給液システムは、図23のシステム展開図に示すように、給液用ポンプ61aによる養液装置から連通する養液の給液配管61について養液混合タンク62まで戻す還流管63を設置し、この還流管63に電磁弁64a、64bを設けるとともに、養液混合タンク62に循環用ポンプ65を設ける。
【0046】
給液時は、両電磁弁64a、64bを閉止して給液用ポンプ61aにより給液し、次の給液までの間は、両電磁弁64a、64bを開放して循環用ポンプ65により養液循環を行う。この循環用ポンプ65による循環動作は、ドリップチューブ66のドリッパーより養液が出ない程度の能力で運転することにより、配管内の温度を一定(約20℃)に保ち、植物の根圏環境を改善することができる。具体的には、収穫終期の6,7月は収量増収および生活障害の回避、7〜9月は育苗時の高温ストレスによる不着米、生育遅れの回避が可能となる。なお、給液用ポンプ61aと循環用ポンプ65は1台のポンプをインバータにより循環時に低速運転することにより同様に構成することができる。
【0047】
(培地温度制御)
次に、イチゴ用栽培ベッド71は、図24の2つの使用態様(a)、(b)に示すように、、寒冷期は培地の中にホースを配置し、その中に温水を流して培地を暖める加温用ホース72aとし、また、温暖期は培地の上位置にホースを引き上げてその中に冷水を流してクラウン部を冷却する冷却ホース72bとして構成する。このように培地加温用とイチゴ株のクラウン部冷却用のホース72a,72bを兼用することにより、イニシャルコストを半減することができる。
【0048】
(組立型栽培ベッド)
次に、組立型栽培ベッドについて説明する。
従来構成の栽培ベッドは、発泡スチロール内に排水溝を一体形成したものであり、その排水用の水準精度を確保して据付施工するために多くの手間を強いられるという問題があったことから、この問題を解消するために、栽培ベッドを以下のように組立型に構成する。
【0049】
すなわち、組立型栽培ベッドは、図25の断面図に示すように、袋培地81を側柱82,82と挿し込み式の桁材83によって受け、この桁材83の下方に排水を受ける排水樋84を排水金具85によって支持する。この排水金具85は、チョウボルトナット85a、85aによって桁材83に対して高さ調節可能に連結して構成することにより、チョウボルトナット85a、85aの操作のみで排水樋84の傾斜調節が随時可能となるので、袋培地81の架設の水準精度を問わない簡易な据付施工が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 温室(栽培ハウス)
5 栽培ベッド(栽培床)
13 誘引紐(誘引吊部材)
19 給液パイプ
34 遮光カーテン(遮蔽カーテン)
40 日射量センサ
41 暖房装置
44 支配管
45 戻配管
46 通路上配管
51 二次暖房兼用型細霧冷房システム
52 配管(熱作用部)
52a ノズル
52r 熱作用部
54 配管
90 生長点温度センサ
91 生長点湿度センサ
G 生長点
K 植物株
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、
上記栽培床(5)には、誘引吊部材(13)によって支持した複数の植物株(K)を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に局所的に冷暖熱を作用する熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の外側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)とを設けたことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、
上記植物株(K)の生長点となる所定の高さ位置に冷暖熱を作用する第一の熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)と、同植物株(K)の根域となる部位に冷暖熱を作用する第二の熱作用部(52r)と、同植物株(K)の生育状態を検出するモニタリング部(51m,90,40,91)と、このモニタリング部(51m,90,40,91)の検出情報による植物株(K)の生育状態の診断結果に基づいて上記第一および第二の熱作用部(52,52r)を個別に温度管理する部位別温度制御部(51p)とを設けたことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項1】
植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、
上記栽培床(5)には、誘引吊部材(13)によって支持した複数の植物株(K)を列状に配置し、この列方向に沿って所定の高さ部位に局所的に冷暖熱を作用する熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の外側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)とを設けたことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
植付けた植物株(K)を生育栽培するための栽培床(5)と、この栽培床(5)に植付けた植物株(K)を上から吊って設定の高さに支持する誘引吊部材(13)とからなる植物栽培設備において、
上記植物株(K)の生長点となる所定の高さ位置に冷暖熱を作用する第一の熱作用部(52)と、この熱作用部(52)の側方を仕切ってカバーする遮蔽カーテン(34)と、同植物株(K)の根域となる部位に冷暖熱を作用する第二の熱作用部(52r)と、同植物株(K)の生育状態を検出するモニタリング部(51m,90,40,91)と、このモニタリング部(51m,90,40,91)の検出情報による植物株(K)の生育状態の診断結果に基づいて上記第一および第二の熱作用部(52,52r)を個別に温度管理する部位別温度制御部(51p)とを設けたことを特徴とする植物栽培設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−19438(P2011−19438A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166429(P2009−166429)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人科学技術振興機構、重点地域研究開発推進プログラム委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人科学技術振興機構、重点地域研究開発推進プログラム委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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