説明

植物生育基盤の形成に用いる材料

【課題】植物の破砕片を含む流動体を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送できるようにし、植物生育基盤の耐侵食性及び安定性を低下させることがないようにすること。
【解決手段】植物生育基盤の形成に用いる材料は、土と、植物の破砕片と、水と、粘土鉱物とを含む流動体からなる。前記粘土鉱物は、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる。前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記土は約0.3mないし約0.7mであり、前記水は約0.1mないし約0.6mであり、前記粘土鉱物は約20kgないし約100kgである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生育基盤の形成に用いる材料に関する。
【背景技術】
【0002】
法面を緑化しまた保護するため、該法面に植物生育基盤を形成し、該植物生育基盤で植物を生育させる。前記法面に前記植物生育基盤を形成する従来の方法では、まず、管の一端部を前記法面の下方に位置する地盤の上に配置し、前記管の他端部を前記法面の上に配置する。次に、土と、植物の破砕片と、団粒剤とを混合して植物生育基盤材料を生成し、その後、該植物生育基盤材料を前記管に前記一端部から供給しつつ、該一端部において前記植物生育基盤材料に圧縮空気を加えて該植物生育基盤材料を前記管の前記他端部から前記法面へ放出する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−100318号公報
【0003】
前記土と前記団粒剤とを混合することにより、前記土に含まれている粘土粒子が凝集して複数の団粒からなる団粒構造が形成される。前記植物生育基盤材料は、前記団粒の間に、空気や水が通る大きな空隙を有し、通気性及び排水性に優れる。また、前記植物生育基盤材料は、前記団粒を構成する前記粘土粒子の間に、水を貯える小さな空隙を有し、保水性に優れる。このため、前記植物生育基盤材料は前記植物の生育に適している。
【0004】
前記植物の破砕片は前記団粒と絡み合って前記植物生育基盤を補強する。このため、前記植物生育基盤は耐侵食性及び安定性に優れ、前記植物生育基盤が崩れたり、雨により流されたりすることがない。
【0005】
ところで、前記法面の高さがより高い場合、前記管の前記他端部が前記法面の上におけるより高い位置に届くようにするため、前記管を長くしなければならない。しかし、前記管が長い場合、前記植物生育基盤材料を前記管から放出するときに該植物生育基盤材料が前記管から受ける摩擦力が大きく、前記植物生育基盤材料を前記管から放出することが困難である。このため、前記法面に前記植物生育基盤を形成することができない。
【0006】
法面に植物生育基盤を形成する他の方法として、土と、水と、植物の破砕片とを含む流動体にポンプにより圧力を加えて該流動体を管を経て搬送する間に、該管の中間部において前記流動体に団粒剤と圧縮空気とを加えて植物生育基盤材料を生成し、該植物生育基盤材料を前記圧縮空気により前記管から前記法面へ放出することが考えられる。この場合、管の一端部において植物生育基盤材料に圧縮空気を加えて該植物生育基盤材料を前記管から放出する場合と比べて、前記植物生育基盤材料を前記管から放出するときに該植物生育基盤材料が前記管から受ける摩擦力が小さく、前記管が長い場合においても前記植物生育基盤材料を前記管から放出することが困難ではない。このため、前記法面の高さがより高い場合においても該法面に植物生育基盤を形成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記流動体を搬送する間に、比重が比較的大きい前記植物の破砕片が沈み、該植物の破砕片が前記流動体から分離し、前記植物の破砕片を確実に搬送できないという問題が生じる。このため、前記植物生育基盤に前記植物の破砕片が十分に含まれず、前記植物生育基盤の耐侵食性及び安定性を低下させる恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、植物の破砕片を含む流動体を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送できるようにし、植物生育基盤の耐侵食性及び安定性を低下させることがないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流動体が、植物の破砕片と、粘土鉱物とを含み、前記流動体の粘性抵抗により前記植物の破砕片が沈むのを防ぐ。これにより、前記流動体を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送できるようにする。
【0010】
本発明に係る、植物生育基盤の形成に用いる材料は、土と、植物の破砕片と、水と、粘土鉱物とを含む流動体からなる。前記流動体が前記粘土鉱物を含むため、前記流動体が粘性を有し、該流動体の粘性抵抗により前記植物の破砕片が沈むのを防ぐことができる。これにより、前記流動体を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送することができ、前記植物生育基盤に前記植物の破砕片が十分に含まれるようにすることができる。このため、前記植物生育基盤の耐侵食性及び安定性を低下させることはない。
【0011】
前記粘土鉱物は、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる。仮に、前記粘土鉱物が、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトのような、水を加えて膨張する粘土鉱物からなる場合、前記流動体を管を経て搬送する間に前記粘土鉱物が膨張して前記管が詰まり、前記流動体を搬送できない恐れがある。前記粘土鉱物が、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなることにより、前記粘土鉱物が膨張して前記管が詰まることはなく、前記流動体を確実に搬送することができる。
【0012】
前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記土は約0.3mないし約0.7mであり、前記水は約0.1mないし約0.6mであり、前記粘土鉱物は約20kgないし約100kgである。
【0013】
本発明に係る、植物生育基盤の形成に用いる他の材料は、植物の破砕片と、水と、粘土鉱物とを含む流動体からなる。前記粘土鉱物は、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる。前記植物の破砕片と前記粘土鉱物との合計約1.0mにつき、前記粘土鉱物は約0.3mないし約0.7mであり、前記水は約0.1mないし約0.6mである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流動体が、植物の破砕片に加えて、粘土鉱物を含むため、前記流動体が粘性を有し、該流動体の粘性抵抗により前記植物の破砕片が沈むのを防ぐことができる。これにより、前記流動体を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送することができ、前記植物生育基盤に前記植物の破砕片が十分に含まれるようにすることができる。このため、前記植物生育基盤の耐侵食性及び安定性を低下させることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、法面10を緑化しまた保護するため、該法面に植物生育基盤12を形成し、該植物生育基盤で植物を生育させる。
【0016】
法面10に植物生育基盤12を形成するとき、まず、法面10の下方に位置する地盤13の上にホッパーのような容器14を配置する。次に、容器14から間隔を置いてポンプ16を地盤13の上に配置し、管18の一端部20をポンプ16に接続する。ポンプ16はピストンポンプである。
【0017】
管18は、その中間部22に設けられた、管18に圧縮空気を供給する第1供給管24が接続される少なくとも1つの第1接続口26と、該第1接続口から間隔を置いて中間部22に設けられた、管18に団粒剤を供給する第2供給管28が接続される第2接続口30とを有する。第1接続口26は第2接続口30から管18の一端部20側に間隔を置かれている。前記間隔は、例えば、約20cmないし約1mであるが、約20cmより短くてもよいし、約1mより長くてもよい。
【0018】
次に、管18から間隔を置いてコンプレッサー34と団粒剤供給装置36とを地盤13の上に配置する。その後、第1供給管24の一端部をコンプレッサー34に接続し、第1供給管24の他端部を管18の第1接続口26に接続し、第2供給管28の一端部を団粒剤供給装置36に接続し、第2供給管28の他端部を管18の第2接続口30に接続し、第2供給管28に圧縮空気を供給する第3供給管38の一端部をコンプレッサー34に接続し、第3供給管38の他端部を第2供給管28に接続する。その後、管18の他端部32を法面10の上に配置する。コンプレッサー34は圧縮空気を生成し、団粒剤供給装置36は団粒剤を収容する。
【0019】
図1に示した例では、管18の中間部22に2つの第1接続口26が設けられており、各第1接続口26に第1供給管24が接続されている。第1供給管24から管18に供給された圧縮空気が管18の中間部22から他端部32に向けての気流を生じさせるようにするため、第1供給管24の前記他端部と管18の中間部22とがなす角度は鋭角である。第1接続口26は、2つである図1に示した例に代え、1つでもよい。
【0020】
法面10の高さは比較的高く、管18は比較的長い。管18の一端部20から中間部22までの長さは約10mないし約250mであり、管18の中間部22から他端部32までの長さは約10mないし約50mである。管18の一端部20から中間部22までの長さ及び管18の中間部22から他端部32までの長さは、容器14から法面10までの距離、法面10の高さ、法面10の傾斜角度等に応じて任意に変更することができる。なお、管18の中間部22は、一端部20と他端部32との間にあればよく、管18の中央にあってもよいし、管18の中央以外の位置、すなわち管18の中央から一端部20側又は他端部32側に隔てられた位置にあってもよい。
【0021】
管18の他端部32を法面10の上に配置した後、土と、植物の破砕片と、水と、水を加えても膨張しない粘土鉱物と、接合剤とを容器14内で混合し、撹拌する。これにより、流動体40を生成する。次に、流動体40をダンプ、ベルトコンベヤー等(図示せず)により搬送し、該流動体をポンプ16に供給する。
【0022】
前記土は、法面10を形成するために掘削された地盤から得た現地発生土からなる。一般に、前記現地発生土には粘土粒子が含まれており、前記現地発生土に対する前記粘土粒子の質量比は約20%ないし約30%である。前記植物の破砕片は、樹木の幹、枝葉若しくは根の破砕片、草の破砕片又はこれらの混合物からなり、未腐熟である。前記粘土鉱物は、木節粘土のような、微細なアルミナ珪酸塩を主成分とする粘土鉱物からなる。図2に示す例では、前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記土は約0.5mであり、前記植物の破砕片は約0.5mであり、前記粘土鉱物は約30kgであり、前記接合剤は約4kgであり、前記水は約0.2mである。
【0023】
流動体40をポンプ16に供給した後、該ポンプにより流動体40に圧力を加えて該流動体を管18を経てその一端部20から中間部22へ搬送する間に、該中間部において流動体40に前記団粒剤と前記圧縮空気とを加えて植物生育基盤材料42を生成する。このとき、前記圧縮空気を第1供給管24を経て管18に供給しかつ第3供給管38を経て第2供給管28に供給すると同時に、第2供給管28に供給された圧縮空気とともに前記団粒剤を第2供給管28を経て管18に供給する。
【0024】
流動体40に前記団粒剤と前記圧縮空気とを加えることにより、流動体40及び前記団粒剤が撹拌され、該団粒剤の凝集作用により、前記土及び前記粘土鉱物に含まれている粘土粒子が凝集して団粒が形成される。このため、植物生育基盤材料42は団粒構造を有する。図2に示した例では、前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記団粒剤は約3kgである。
【0025】
前記植物の破砕片は前記団粒と絡み合って植物生育基盤12を補強する。このため、植物生育基盤12は耐侵食性及び安定性に優れ、植物生育基盤12が崩れたり、雨により流されたりすることがない。
【0026】
植物生育基盤材料42を生成した後、該植物生育基盤材料を前記圧縮空気により管18の他端部32から法面10へ放出する。これにより、法面10に植物生育基盤12が形成される。
【0027】
ところで、仮に、流動体40が前記粘土鉱物を含まない場合、流動体40をポンプ16により管18を経て搬送する間に、比重が比較的大きい前記植物の破砕片が沈み、該植物の破砕片が流動体40から分離することがある。このため、前記植物の破砕片を搬送できない恐れがある。これに対して、流動体40が前記粘土鉱物を含む場合、流動体40が粘性を有し、該流動体の粘性抵抗により、前記植物の破砕片が沈むのを防ぐことができ、該植物の破砕片が流動体40から分離するのを防止することができる。このため、流動体40を、該流動体から前記植物の破砕片を分離させることなく搬送することができる。これにより、前記植物生育基盤に前記植物の破砕片が十分に含まれるようにすることができ、前記植物生育基盤の耐侵食性及び安定性が低下するのを防止することができる。
【0028】
仮に、前記粘土鉱物が、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトのような、水を加えて膨張する粘土鉱物からなる場合、流動体40をポンプ16により管18を経て搬送する間に前記粘土鉱物が膨張して管18が詰まり、流動体40を搬送できない恐れがある。これに対して、前記粘土鉱物が、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる場合、前記粘土鉱物が膨張して管18が詰まることはなく、流動体40を確実に搬送することができる。
【0029】
前記現地発生土には、法面10が形成される場所に生育していた植物の種子が含まれている。このため、前記土が前記現地発生土からなることにより、植物生育基盤12に前記植物を生育させることができ、法面10の形成により破壊された生態系を復元することができる。
【0030】
前記現地発生土は、表土からなるものでもよいし、該表土の下に存在する風化土からなるものでもよい。前記表土及び前記風化土は、いずれも、粘土粒子を含み、植物生育基盤材料42の団粒構造の形成に寄与する。前記土は、前記現地発生土からなる上記の例に代え、法面10が形成された場所へ搬入された土でもよい。
【0031】
前記植物の破砕片は、法面10を形成するために伐採された樹木の破砕片であることが好ましい。これにより、伐採された樹木を廃棄することなく有効に利用することができる。
【0032】
管18の中間部22は鋼管からなる。管18の一端部20と中間部22との間の部分は、鋼管からなるものでもよいし、ホースのような柔軟な管部材からなるものでもよいし、鋼管とこれに接続された柔軟な管部材とからなるものでもよい。管18の中間部22と他端部32との間の部分は柔軟な管部材からなる。ポンプ16は、ピストンポンプである上記の例に代え、スクイーズポンプのような、粘性を有する流動体を搬送可能な他のポンプでもよい。
【0033】
図2に示した例では、前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記土が約0.5mであるが、これに代え、前記土の量は約0.3mないし約0.7mの範囲において任意の量とすることができる。この場合、前記植物の破砕片の量は、約1.0mから前記土の量を差し引いた量、すなわち約0.7mないし約0.3mであり、前記粘土鉱物は約20kgないし約100kgであり、前記団粒剤は約1kgないし約6kgであり、前記水は約0.1mないし約0.6mである。
【0034】
植物生育基盤材料42は、前記土と、前記植物の破砕片と、前記粘土鉱物と、前記団粒剤と、前記接合剤と、前記水とを含む図2に示した例に代え、図3に示すように、前記植物の破砕片と、前記粘土鉱物と、前記団粒剤と、前記接合剤と、前記水とを含み、前記土を含まないものとすることができる。図3に示した例では、前記植物の破砕片と前記粘土鉱物との合計約1.0mにつき、前記植物の破砕片は約0.5mであり、前記粘土鉱物は約0.5mであり、前記団粒剤は約3kgであり、前記接合剤は約4kgであり、前記水は約0.2mである。この場合、前記植物の破砕片と、前記粘土鉱物と、前記接合剤と、前記水とを混合し、撹拌することにより、流動体40を生成する。
【0035】
図3に示した例では、前記植物の破砕片と前記粘土鉱物との合計約1.0mにつき、前記粘土鉱物が約0.5mであるが、これに代え、前記粘土鉱物の量は約0.3mないし約0.7mの範囲において任意の量とすることができる。この場合、前記植物の破砕片の量は、約1.0mから前記粘土鉱物の量を差し引いた量、すなわち約0.7mないし約0.3mであり、前記団粒剤は約1kgないし約6kgであり、前記水は約0.1mないし約0.6mである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る植物生育基盤を形成する装置の概要図。
【図2】本発明の第1実施例に係る植物生育基盤材料の配合例。
【図3】本発明の第2実施例に係る植物生育基盤材料の配合例。
【符号の説明】
【0037】
12 植物生育基盤
40 流動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土と、植物の破砕片と、水と、粘土鉱物とを含む流動体からなる、植物生育基盤の形成に用いる材料。
【請求項2】
前記粘土鉱物は、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる、請求項1に記載の植物生育基盤の形成に用いる材料。
【請求項3】
前記土と前記植物の破砕片との合計約1.0mにつき、前記土は約0.3mないし約0.7mであり、前記水は約0.1mないし約0.6mであり、前記粘土鉱物は約20kgないし約100kgである、請求項2に記載の植物生育基盤の形成に用いる材料。
【請求項4】
植物の破砕片と、水と、粘土鉱物とを含む流動体からなる、植物生育基盤の形成に用いる材料。
【請求項5】
前記粘土鉱物は、水を加えても膨張しない粘土鉱物からなる、請求項4に記載の植物生育基盤の形成に用いる材料。
【請求項6】
前記植物の破砕片と前記粘土鉱物との合計約1.0mにつき、前記粘土鉱物は約0.3mないし約0.7mであり、前記水は約0.1mないし約0.6mである、請求項5に記載の植物生育基盤の形成に用いる材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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