説明

植物用容器

【課題】より安価に製造でき、スタック性に優れた植物用容器を提供する。
【解決手段】植物用容器である植物用容器10は、略筒状の型の外周囲を、熱収縮性シート12で覆ったうえで、当該熱収縮性シート12を熱収縮させて成形型に密着させることで形成される。熱収縮性シート12は、少なくとも、樹脂材料を発泡させた発泡層と、熱収縮性シート12の最外層に位置するとともに発泡層に隣接する層であって、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄のスキン層と、を備える。植物用容器10を成形する際には、熱収縮性シート12をスキン層が内側になるべく筒状にしたうえで、当該筒状の熱収縮性シート12を成形型に嵌める。かかる熱収縮性シート12を用いることで、植物用容器10の内側面および外側面に皺が形成され、スタック性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢や育苗ポット、植木鉢カバーのように、植物を収容するための植物用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を収容する植物用容器としては、例えば、植木鉢や育苗ポットなどが知られている。そして、現在、市場には、様々な形態の植物用容器が流通している。しかしながら、従来の植物用容器の多くは装飾性に乏しいという問題があった。例えば、陶器製の植木鉢は、その形状を特殊なものとすることで装飾性が付与されることが多い。しかし、植木鉢を特殊形状とした場合、比較的、高価になるという問題があった。また、陶器製の植木鉢は、形状に関しては様々な工夫が凝らされているが、印刷などによるデザイン装飾は殆ど施されていないという問題があった。また、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる育苗ポットは、陶器製の植木鉢に比して、比較的安価であるものの、画一的で単純な形態のものが殆どであり、かつ、印刷などによるデザイン装飾は殆どなされていないという問題があった。
【0003】
こうした問題を解決するために、植物用容器に装飾を施す装飾カバーを用いることも提案されている。例えば、特許文献1には、植木鉢の外周に巻き付けて使用するカバーであって、装飾が施された装飾カバーが開示されている。かかる装飾カバーを用いれば、安価な植木鉢の装飾性をある程度、向上させることが出来る。しかしながら、上記装飾カバーは、植物用容器に単に巻き付けているだけのため、植物用容器の運搬などの際に外れることがあった。また、装飾性を向上させるためには、この装飾カバーを各植木鉢に装着する必要があり非常に手間であり、結果として高コストになりがちであった。さらに、この装飾カバーは、あくまで、従来ある植物用容器に巻き付けて装飾性を向上させようとするものであり、それ自体が植物用容器としての機能を有するものではない。つまり、従来の技術では、安価でありながら装飾性に富んだ植物用容器を得ることは困難であった。
【0004】
また、従来の植物用容器は、上記のように装飾性に乏しいことに加えて断熱性が低いため、寒冷地や寒暖差の激しい地域で使用すると、植物や苗の育成に重大な悪影響を及ぼす場合があった。
【0005】
さらに、従来の植物用容器の問題として、そのスタック性の問題もあった。すなわち、植物用容器の多くは、使用しない場合には、互いに積み重ねた状態で収容される。ここで、合成樹脂などからなる育苗ポットのような安価な植物用容器の場合、低コストで製造するために、画一的で単純な形状が選択される場合が多く、植物用容器の内側面及び外側面が、殆ど凹凸がない滑らかな滑面であることが多い。内側面及び外側面が滑面の場合、積み重ねられた植物用容器同士が互いに密着してしまい、分離に要する力が大きくなるという問題があった。つまり、内側面及び外側面が滑面である従来の植物用容器では、複数の植物用容器を積み重ねたスタック体から、植物用容器を一つずつ分離して取り出しにくいという問題があった。
【0006】
また、内側面および外側面に凹凸を設けた植物用容器もあるが(例えば、特許文献2参照)、これらは、形態が複雑となることから特別な金型が必要となり、安価に製造することが難しかった。さらに、かかる植物容器を積み重ねた場合、内側面の凸部と外側面の凹部とが互いに嵌合し、結局、積み重ねられた植物用容器同士が互いに密着してしまう場合があった。つまり、特殊形態の金型を用いて、内側面および外側面に凹凸を設けたとしても、植物用容器を一つずつ分離して取り出しにくいという問題を解消することは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−46951号公報
【特許文献2】特開平09−000074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、より安価に製造でき、装飾性、断熱性およびスタック性に優れた植物用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の植物用容器は、熱収縮性を備えた合成樹脂シートである熱収縮性シートからなる植物用容器であって、前記熱収縮性シートは、少なくとも、樹脂材料を発泡させた発泡層と、前記熱収縮性シートの最外層に位置するとともに前記発泡層に隣接する層であって、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄のスキン層と、を備え、前記植物用容器は、前記熱収縮性シートを前記スキン層が内側面になるべく略筒状に形成したうえで、当該筒状の熱収縮性シートを成形型に被嵌した状態で周方向に熱収縮させて前記成形型に密着させることで成形される、ことを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記スキン層は、前記発泡層に比して熱収縮率が小さい。他の好適な態様では、前記熱収縮性シートは、さらに、前記発泡層のうち前記スキン層が設けられている面と反対側の面に積層され、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄の非発泡層を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物用容器は、グラビア印刷などによるデザイン装飾が容易な熱収縮性シートを略筒状に形成したうえで、当該筒状の熱収縮性シートを成形型に被嵌した状態で周方向に熱収縮させて前記成形型に密着させることで成形される。そのため、本発明によれば、植物用容器を安価に製造でき、かつ、グラビア印刷などによって従来にない装飾を容易に施すことができ、植物用容器の装飾性を大きく向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、熱収縮性シートは、発泡層に隣接した硬質かつ肉薄のスキン層を有しており、このスキン層が内側になるべく熱収縮性シートを筒状に形成している。そして、このスキン層が内側になった筒状の熱収縮性シートを、成形型に被嵌した状態で周方向に熱収縮させることにより、内側面に皺が生じた植物用容器を得ることができる。そして、この皺が存在することにより、積み重ねられた植物用容器同士の間に隙間が形成され、植物用容器同士の密着性を低下させることができる。その結果、植物用容器のスタック性をより向上できる。また、植物用容器の内側面に皺が生じることにより、植物用容器に用土を充填した際に、当該用土と内側面との間に隙間が形成されやすくなる。そして、かかる隙間が形成されることにより、充填された用土の内部への外気混入が促進され、植物の根の成長が促進される。
【0013】
また、本発明では、熱収縮性シートが発泡層を有しているため、優れた断熱性を有した植物用容器を得ることができる。さらに、既述したとおり、本発明では、前記皺に起因して用土と内側面との間に隙間が形成されやすい。この隙間と発泡層との相乗効果により、より高い断熱効果を得ることができる。
【0014】
また、発泡層に比して熱収縮率が小さいスキン層を用いれば、より深い皺が、植物用容器の内側面に形成されることになる。その結果、上述したスタック性、用土内部への外気混入の容易性、断熱性がより向上される。
【0015】
また、熱収縮性シートが、発泡層のうち前記スキン層が設けられている面と反対側の面に積層され、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄の非発泡層を備える場合、比較的強度の弱い発泡層が保護されることになる。その結果、より耐衝撃性に優れた植物用容器が得られる。また、非発泡層として、グラビア印刷などによって装飾を施した加飾フィルムを用いることで、より簡便に装飾性に優れた植物用容器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である植物用容器10の断面図である。この植物用容器10は、後に詳説する熱収縮性を備えた合成樹脂シート(以下「熱収縮性シート12」と呼ぶ)からなるもので、植物や土を充填した状態で自立でき得る程度の保形性を有している。
【0017】
この植物用容器10は、上面が完全開口された有底の略筒状となっている。植物用容器10の底面部の略中央には、水抜き孔11が形成されており、植物に注がれた水を、適宜、外部に排出できるようになっている。
【0018】
植物用容器10の側面には、上面に向かうにつれて植物用容器10の径が拡大するようなテーパが施されており、植物用容器10全体としては、逆円錐台のような形状となっている。そして、かかるテーパが施されることにより、この植物用容器10は、未使用の状態、すなわち、植木や土が充填されていない空の状態では、図4に図示するように、互いに積層して収納するスタック収納ができるようになっている。なお、本実施形態では、断面円形の植物用容器10を例示しているが、有底筒状の形状であるなら、他の形状、例えば、角筒形状などであってもよい。ただし、その場合であっても、スタック収納を可能にするために、側面にはテーパが施されていることが望ましい。
【0019】
植物用容器10の外側面には、所望の図柄が印刷されており、優れた装飾性が確保されている。この図柄印刷は、成形前の段階で、当該植物用容器10を構成する熱収縮性シート12に施される。また、本実施形態の植物用容器10の内側面および外側面は、多数の凹凸が全面に渡って均等、かつ、ランダムに存在する皺面となっている。かかる皺面を構成することで、空の植物用容器10が複数積層されたスタック体40から、植物用容器10を一つずつ分離して取り出す作業を容易化できるが、これについては、後に詳説する。
【0020】
次に、この植物用容器10を構成する熱収縮性シート12について図2を参照して説明する。図2は、本実施形態で用いる熱収縮性シート12の概略断面図である。
【0021】
この熱収縮性シート12は、主に一方向(以下「主収縮方向」という)に熱収縮し得る熱収縮性を有しており、その肉厚は、通常、0.1mm〜0.5mm、好ましくは0.2mm〜0.4mmとなっている。熱収縮性シート12は、大きく二種類のシート、すなわち、非発泡シート16と、断熱シート14と、を接着することで構成される。そして、植物用容器10を成形する際には、非発泡シート16が外側、断熱シート14が内側になるようにする。なお、この熱収縮性シート12の熱収縮率は、主収縮方向における熱収縮率(160℃に相当するグリセリンバスに5秒間浸漬)が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。また、この熱収縮性シート12は、他方向(主収縮方向に略直交する方向)にも若干、熱収縮する。この他方向における熱収縮率(160℃に相当するグリセリンバスに5秒間浸漬)が、約0.5%〜20%程度のものが例示される。なお、熱収縮率(%)=[{(収縮前の長さ)−(収縮後の長さ)}/(収縮前の長さ)]×100である。
【0022】
非発泡シート16は、後述する発泡層20のうちスキン層22が設けられている面と反対側の面に積層される非発泡層を構成するシートである。この非発泡シート16は、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、環状オレフィンなどのオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂から選ばれる1種単独、または、2種以上の混合物などを含む樹脂組成物を製模したシート(フィルムを含む)、および、これらシートを2層以上積層した積層シートを用いることができる。この非発泡シート16の厚みは、例えば、0.020mm〜0.070mm程度のものが好ましい。
【0023】
この非発泡シート16には、植物用容器10の装飾性を向上させるために、文字や図柄などの印刷17が施されていることが望ましい。この印刷17は、例えば、グラビア印刷などの公知の印刷技術により実現できる。また、印刷17を行う場合には、透明性を有した非発泡シート16を用いて、当該合成樹脂の裏面(断熱シート14側の面)に印刷17を施すことが望ましい。そして、このように予め非発泡シート16に印刷を施しておくことで、簡易、かつ、低コストで、最終的に得られる植物用容器10の装飾性を向上させることができる。
【0024】
断熱シート14は、発泡層20と、スキン層22と、が積層された積層シートである。発泡層20は、各種樹脂材料、例えば、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンなどのポリウレタン系樹脂などを、発泡させた層である。樹脂材料の発泡には、物理的発泡、化学的発泡など公知の発泡方法を採用することができる。発泡倍率としては、2〜10倍程度のものが断熱性に優れているので好ましい。また、これらの樹脂には、必要に応じて、各種フィラー、着色剤、可塑剤、安定剤などの添加剤を適宜添加することができる。
【0025】
スキン層22は、発泡層20に比して、硬質で、厚さが薄い層である。このスキン層22は、例えば、発泡層20と同じ樹脂材料から構成され、その樹脂材料の発泡倍率を発泡層20に比して低減、または、全く発泡させないことで構成される。また、スキン層22は、発泡層20と異なる材料で構成されてもよく、例えば、ポリスチレンフィルムなどから構成されてもよい。この場合、スキン層22(樹脂フィルム)は、公知の接着技術により発泡層20に接着され、一体化される。なお、スキン層22の厚さは、例えば、0.005mm〜0.020mmであり、好ましくは、0.010mm〜0.015mmである。断熱シートと非発泡シートは、公知の接着技術、例えば、ドライラミネートなどの接着技術により接着される。このとき、スキン層22が、最外層(外部に露出する層)になるようにする。換言すれば、発泡層と非発泡シートとが、接着層18を介して隣接するようにする。
【0026】
次に、この熱収縮性シート12から植物用容器10を製造する流れについて図3を参照して説明する。植物用容器10を製造する場合は、まず、帯状の熱収縮性シート12の両端を接合して、筒状体30を形成する。ここで、既述したとおり、本実施形態の熱収縮性シート12は、主に、一方向に熱収縮する性質を有している。筒状体30を形成する場合には、この熱収縮方向が周方向となるようにする。また、熱収縮性シート12のうち、スキン層22が筒状体30の内側面に、非発泡シート16が筒状体30の外側面になるように熱収縮性シート12の両端を接合する。
【0027】
筒状体30が形成されれば、続いて、当該筒状体30を、最終的に製造したい植物用容器10の形状に応じた長さに切断する。この筒状体30の長さは、植物用容器10の高さと、底面半径と、を考慮して決定する。具体的には、例えば、植物用容器10の高さをH、底面外周縁から水抜き孔11の周縁までの長さをrとした場合、筒状体30の長さは、およそH+r+αとする。ここで、αは、熱収縮による長さ変化などを考慮した値となる。
【0028】
筒状体30が適切な長さに切断されれば、続いて、当該切断された筒状体30を、予め用意された略筒状の成形型100に外嵌する。すなわち、成形型100の外周囲が、熱収縮性シート12で覆われるような状態にする。ここで、成形型100としては、植物用容器10を模した金型であってもよいし、磁器や陶器などの耐熱性材料からなる植物用容器そのものを成形型100として使用してもよい。いずれにしても、最終的に得たい植物用容器の形状を有しており、かつ、耐熱性を備えたものであれば、どのようなものを成形型100として利用してもよい。
【0029】
成形型100に筒状体30を外嵌した後は、この状態で、当該筒状体30を加熱する。この加熱により、筒状体30を構成する熱収縮性シート12が、周方向に熱収縮し、成形型100の外表面に密着する。なお、筒状態のうち、成形型100の端部から突出した部分は、内側に折れ込んで植物用容器10の底面を形成する。
【0030】
熱収縮性シート12が、成形型100の外表面に密着すれば、加熱を停止し、熱収縮性シート12を冷却する。そして、完全に冷却した熱収縮性シート12を、成形型100から取り出すことで、植物用容器10が完成となる。
【0031】
なお、ここでは、工業的に量産する場合の製法を説明したが、家庭で個人的に製造するようにしてもよい。この場合は、予め、植物用容器一個分の長さに切断した熱収縮性シート12、あるいは、熱収縮性シート12を筒状に接着した筒状体30を、植物用容器作成キットとして販売する。このキットを購入したユーザは、熱収縮性シート12からなる筒状体30を、手持ちの植物用容器などに嵌め込む。そして、その状態で、頭髪用ドライヤーやガス温風器などの家庭用温風器や、熱湯などの熱源を用いて、筒状体30を熱収縮させればよい。
【0032】
また、ここでは、植木鉢として使用する場合を想定して、筒状体30の長さを、水抜き孔11を考慮した長さとしている。しかし、植木鉢カバーとして使用する場合であって、水抜き孔11が不要な場合には、筒状体30の長さを、若干、長めにしておき、最終的に底面全体が熱収縮性シート12で閉塞されるようにしてもよい。
【0033】
ここで、既述したとおり、本実施形態の熱収縮性シート12は、植物用容器10の内側面にスキン層22があり、このスキン層22に隣接して発泡層20が位置している。かかる積層順序とした場合、植物用容器10の内側面に、多数のランダムな凹凸である皺が形成されるという効果がある。かかる皺が形成される理由としては、幾つか考えられるが、一つには、スキン層22の柔軟性の乏しさが挙げられる。スキン層22は、発泡層20に比して、硬質で柔軟性に乏しい。そのため、スキン層22は、発泡層20に比して、表面ストレス(熱収縮応力)が大きくなりがちで、熱収縮時に皺が発生しやすくなることが考えられる。
【0034】
また、スキン層22と発泡層20との間の熱収縮率が異なる場合には、当該収縮率の違いにより皺が生じるとも考えられる。例えば、発泡層20に比してスキン層22の熱収縮率が小さい場合には、加熱時における発泡層20の収縮変形にスキン層22が追従できず、皺が形成されると考えられる。
【0035】
また、本実施形態では、外側面にも皺が形成される。これは、内側面に形成された皺が外側面にまで影響を与えているものと考えられる。また、内側面に皺が形成される理由と同様に、非発泡シート16の表面ストレスや、発泡層20と非発泡シート16との熱収縮率の相違なども、外側面における皺の形成に影響を与えているものと推測される。
【0036】
いずれにしても、本実施形態によれば、特殊構成の熱収縮性シート12を加熱収縮させるだけで、自動的に、植物用容器10の内側面および外側面に皺面を形成することができる。かかる皺面は、植物用容器10のスタック性、特に、植物用容器10をスタックしたスタック体40の分離容易性を向上させる。
【0037】
すなわち、通常、未使用の植物用容器10は、その収納スペースを低減したり、搬送効率を向上させたりするために、図4に図示するように、積層され、スタック体40として取り扱われることが多い。そして、実際に植物用容器10を使用する必要があれば、このスタック体40から、所望の一つの植物用容器10を抜き出して使用する。
【0038】
このとき、各植物用容器10の内側面および外側面が、殆ど凹凸のない滑らかな滑面であったとする。この場合における図4におけるB部の拡大図を、図5(b)に示す。図5(b)に示すとおり、植物用容器10の内外側面が滑面であった場合、積層された植物用容器10は、互いに密着しがちとなり、分離するに当たって大きな力が必要となりがちであった。つまり、植物用容器10の内外側面が滑面の場合、スタック体40から所望の一つの植物用容器10を容易に、抜き出すことが困難であったといえる。
【0039】
かかる問題を解決するために、従来、図6に図示するように、植物用容器50の底面に、スタックハイト52と呼ばれる足部を形成し、積層された植物用容器50同士の密着を防止することも考えられている。しかし、スタックハイト52の形成は、成形型製造の手間やコストの増加を招くという問題があった。また、植物用容器50が不必要に高くなるという問題もあった。
【0040】
一方、本実施形態のように、内側面および外側面に皺面が形成されていたとする。この場合における図4におけるB部の拡大図を、図5(a)に示す。図5(a)に示すとおり、植物用容器10の内外側面が皺面であった場合、積層された植物用容器10の間には、微小な隙間が形成される。かかる微小隙間は、植物用容器10同士の密着を阻害し、スタック体40から一つの植物用容器10を分離する際の力を低減する。つまり、植物用容器10の内外側面が皺面の場合、スタック体40から所望の一つの植物用容器10を容易に抜き出すことができる。
【0041】
さらに、植物用容器10の内側面の皺は、植物の育成にも好影響を与える。これは、内側面に皺があることにより、当該植物用容器10に充填された土と内側面との間に隙間が生じ、当該土中への空気の進入率が高まることが原因と思われる。
【0042】
ところで、従来から、凹凸の形成された成形型を用いて射出成形したり、シート成形したりすることで、こうした皺面やシボ面のような凹凸のある面を形成する技術が知られている。こうした従来技術を用いれば、本実施形態の植物用容器10に類似した植物用容器を得ることも可能かもしれない。しかし、こうした特殊な加工を施した型は、コストや手間の増加要因となる。一方、本実施形態では、既述したとおり、特殊な積層順序を有した熱収縮性樹脂シートを用いるだけで、容易に皺面が形成できる。つまり、本実施形態によれば、極めて、低コスト、かつ、簡易に、スタック性に優れた植物用容器10を得ることができる。また、成形前の熱収縮性シートに印刷を施しておくことで、植物用容器10の装飾性を向上させることが出来る。また、本実施形態の植物用容器10は、発泡層20を備えているため断熱性に優れている。さらに、この発泡層と、既述の土と内側面との間の間隙と、の相乗効果により、断熱効果をより向上させることができる。その結果、寒さが、植物の生育に与える悪影響を効果的に低減できる。
【0043】
なお、上記で説明した熱収縮性シート12の構成は一例であり、少なくとも、最も外層に位置する硬質のスキン層22と、当該スキン層22に隣接する発泡層20と、があれば、その他の構成は適宜変更されてもよい。したがって、例えば、非発泡シート16(ひいては接着層18)を省略するようにしてもよい。また、発泡層20と、接着層18と、の間に、さらに、別のスキン層を設けるようにしてもよい。換言すれば、発泡層20の両面にスキン層を形成するようにしてもよい。かかる構成の熱収縮性シート12を用いた場合であっても、当該シートを加熱収縮させることで、植物用容器10の内側面に容易に皺を形成することができる。また、上記説明は、植木鉢として機能する植物用容器を中心に説明したが植物を収容する容器であれば、植木鉢を収容する植木鉢カバーなど、他の容器に応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態である植物用容器の断面図である。
【図2】植物用容器を構成する熱収縮性シートの構成を示す図である。
【図3】植物用容器の製造の流れを示す図である。
【図4】複数の植物用容器をスタック収容した際の断面図である。
【図5】(a)は、図4の植物用容器が本実施形態の植物用容器の場合におけるB部拡大図であり、(b)は、図4の植物用容器が滑面を有した植物用容器の場合におけるB部拡大図である。
【図6】従来の植物用容器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10,50 植物用容器、11 水抜き孔、12 熱収縮性シート、14 断熱シート、16 非発泡シート、18 接着層、20 発泡層、22 スキン層、30 筒状体、40 スタック体、52 スタックハイト、100 成形型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性を備えた合成樹脂シートである熱収縮性シートからなる植物用容器であって、
前記熱収縮性シートは、少なくとも、
樹脂材料を発泡させた発泡層と、
前記熱収縮性シートの最外層に位置するとともに前記発泡層に隣接する層であって、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄のスキン層と、
を備え、
前記植物用容器は、前記熱収縮性シートを前記スキン層が内側面になるべく略筒状に形成したうえで、当該筒状の熱収縮性シートを成形型に被嵌した状態で周方向に熱収縮させて前記成形型に密着させることで成形される、
ことを特徴とする植物用容器。
【請求項2】
請求項1に記載の植物用容器であって、
前記スキン層は、前記発泡層に比して熱収縮率が小さいことを特徴とする植物用容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の植物用容器であって、
前記熱収縮性シートは、さらに、前記発泡層のうち前記スキン層が設けられている面と反対側の面に積層され、前記発泡層より硬質、かつ、肉薄の非発泡層を備えることを特徴とする植物用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232748(P2009−232748A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83031(P2008−83031)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】