説明

植物病害防除組成物および植物病害防除方法

【課題】高い活性を有する植物病害防除組成物および植物病害を効果的に防除し得る方法を提供すること。
【解決手段】。
式(I)


で表される化合物と、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン等からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と、を有効成分として含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除組成物および植物病害の防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々植物病害防除剤が開発されてきたが、より高活性な植物病害防除剤が常に求められている。
【特許文献1】WO95/27693−A1パンフレット
【特許文献2】EP477631号公報
【特許文献3】特開2000−226374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は高い活性を有する植物病害防除組成物および植物病害を効果的に防除し得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる状況下、本発明者は鋭意検討した結果、下記の式(I)で表される化合物と特定の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)とを併用することにより、優れた植物病害防除効果が得られることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、
[1]下記式(I)で表される化合物(以下、化合物Iと記すことがある。)と、ジモキシストロビン(以下、化合物IIIと記すことがある。)、トリフロキシストロビン(以下、化合物IVと記すことがある。)、アゾキシストロビン(以下、化合物Vと記すことがある。)、ピラクロストロビン(以下、化合物VIと記すことがある。)および下記式(II)で表される化合物またはその塩(以下、化合物IIと記すことがある。)からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)(以下、本電子伝達系複合体III阻害剤と記すことがある。)と、を有効成分として含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物(以下、本発明組成物と記すことがある。)、
[2]下記式(I)で表される化合物と、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビンおよび下記式(II)で表される化合物またはその塩からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤とを、植物体、植物の種子または農耕地に対し併用することを特徴とする植物病害防除方法(以下、本発明防除方法と記すことがある。)
等を提供するものである。




「式(II)中、R1は、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基またはニトロ基を表し、
Qは、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロ環基、モノまたはジ置換メチレンアミノ基、置換されていてもよい(置換イミノ)メチル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換カルボニル基または置換スルホニル基を表し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよい水酸基を表し、
Yは、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、または置換されていてもよいアミノ基(ただし、R1が、置換されていない水酸基の場合、Yは、アルコキシ基ではない。)を表し、
Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、
Mは、酸素原子、S(O)(ここで、Iは、0、1または2の整数を表す。)、NR2(ここで、R2は、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。)または単結合を表し、
nは、0、1または2の整数を表す。」
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い活性を有する植物病害防除剤組成物および植物病害を効果的に防除し得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
化合物Iと混合しうる電子伝達系複合体III阻害剤の化合物は、(αE)-2-[(2,5-ジメチルフェノキシ)メチル]-α-(メトキシイミノ)-N-メチルベンゼンアセトアミノ(一般名;ジモキシストロビン)、メチル=(E)-メトキシイミノ-{(E)-α-[1-(α,α,α-トリフルオロ-m-トリル)エチリデンアミノオキシ]-o-トリル}アセテート(一般名;トリフロキシストロビン)、メチル=(E)-2-{2-[6-(2-シアノフェノキシ)ピリミジン-4-イルオキシ]フェニル}-3-メトキシアクリレート(一般名;アゾキシストロビン)、メチル=2-[[1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシメチル]フェニル](N-メトキシ)カーバメート(一般名;ピラクロストロビン)、または、式(II)




「式(II)中、R1は、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基またはニトロ基を表し、
Qは、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロ環基、モノまたはジ置換メチレンアミノ基、置換されていてもよい(置換イミノ)メチル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換カルボニル基または置換スルホニル基を表し、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよい水酸基を表し、
Yは、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、または置換されていてもよいアミノ基(ただし、R1が、置換されていない水酸基の場合、Yは、アルコキシ基ではない。)を表し、
Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、
Mは、酸素原子、S(O)(ここで、Iは、0、1または2の整数を表す。)、NR2(ここで、R2は、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。)または単結合を表し、
nは、0、1または2の整数を表す。」
で表される化合物またはその塩である。
【0008】
化合物Iは特開2000−226374号公報等に記載の化合物であり、化合物IIはWO95−27693−A1パンフレット等に記載の化合物であり、化合物IIIは、EP−0477631−A1号公報等に記載の化合物で、ジモキシストロビンの一般名として知られる化合物である。これらの化合物は、例えば、上記のそれぞれの文献に記載された方法等によって、合成することができる。
また、化合物IV〜VIはThe Pesticide manual Fourteenth edition中、それぞれ、化合物IV(1074p-1075p、methyl (E)-methoxyimino-{(E)-alpha-[1-(alpha,alpha,alpha-trifluoro-m-tolyl)ethylideneaminooxy]-o-tolyl}acetate)、化合物V(54p-56p、methyl(E)-2-{2-[6-(2-cyanophenoxy)pyrimidin-4-yloxy]phenyl}-3-methoxyacrylate)、または化合物VI(900p-901p、methyl (2-[[1-(4-chlorophenyl)-1H-pyrazol-3-yloxymethyl]phenyl](N-methoxy)carbamate)として記載されている。
【0009】
式(II)で表される化合物IIにおいて、R1で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素あるいはヨウ素が挙げられる。
【0010】
1で示される「置換されていてもよいアルキル基」の「アルキル基」としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
このうち、メチル基およびエチル基が特に好ましい。
ここで、前記「アルキル基」が置換されていても良い置換基としては例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくはフッ素)を有するハロアルキル基(例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、2,3−ジクロロプロピル基など);置換基として炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)を有するアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基など)などが挙げられる。
このうち、ハロアルキル基としてはトリフルオロメチル基が、アルコキシアルキル基としてはメトキシメチル基が好ましい。
【0011】
1で示される「置換されていてもよい水酸基」としては、例えば、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルケニルオキシ基、置換されていてもよいアルキニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、(アルキルチオ)カルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、モノあるいはジアルキル置換カルバモイルオキシ基、アリールオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基などが挙げられる。
ここで、前記「水酸基」が置換されていても良い置換基としては例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくはフッ素)を有するハロアルキル基(例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、2,3−ジクロロプロピル基など);置換基として炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)を有するアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基など)などが挙げられる。
【0012】
1で示される「アルキルチオ基」としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキルチオ基、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基が挙げられる。
このうち、メチルチオ基が好ましい。
【0013】
1で示される「アルキルスルフィニル基」としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基、具体的には、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基などが挙げられる。
このうち、メチルスルフィニル基が好ましい。
【0014】
1で示される「アルキルスルホニル基」としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基などが挙げられる。
このうち、メチルスルホニル基が好ましい。
【0015】
1で示される「置換されていてもよいアミノ基」としては、例えば、アミノ基、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基でモノまたはジ置換されているアミノ基(例えば、モノメチルアミノ、ジメチルアミノ、モノエチルアミノなど)、ホルミル基でモノ置換されているアミノ基、炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜4のアルキルカルボニル基でモノ置換されているアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ基など)などが挙げられる。このうち、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたものが好ましく、モノメチルアミノ基が特に好ましい。
【0016】
1の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロアルコキシ基、ハロアルケニルオキシ基、ハロアルキニルオキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、(アルキルチオ)カルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、モノあるいはジアルキル置換カルバモイルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基またはテトラヒドロピラニルオキシ基が挙げられる。さらに好ましくは、ハロゲン原子、C1−4アルコキシ基、C1−4ハロアルコキシ基または水酸基が挙げられる。このうちメトキシ基が特に好ましい。
【0017】
Qで示される「置換されていてもよいアリール基」としては、炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
これらアリール基が置換されている場合の置換基としては、低級(C1-8、好ましくはC1-6、さらに好ましくはC1-4;以下の置換基においても同意義を示す)アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、低級アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、クロチル基など)、低級アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、低級アルコキシ低級アルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基など)、低級アルカノイル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基など)、低級アルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基など)、ハロ(低級)アルキル基(例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、2,3−ジクロロプロピル基など)、ジ(低級)アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、フェニル基、フェニル(低級)アルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基など)、フェニル(低級)アルケニル基(例えば、スチリル基、シンナミル基など)、フリル(低級)アルキル基(例えば、3−フリルメチル基、2−フリルエチル基など)、フリル(低級)アルケニル基(例えば、3−フリルビニル基、2−フリルアリル基など)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基など)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基など)、ホルミル基、アミノ基、モノ(低級)アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基など)、
−OR
[式中、Rは、水素原子、低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、低級アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、クロチル基など)、低級アルキニル基(例えば、エチニル基、2−プロピニル基、3−ブチニルなど)、ハロ(低級)アルキル基(例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、2,3−ジクロロプロピル基など)、低級アルカノイル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、フェニル基、低級アルコキシフェニル基(例えば、3−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基など)、ニトロフェニル基(例えば、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基など)、フェニル(低級)アルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基など)、シアノフェニル(低級)アルキル基(例えば、3−シアノフェニルメチル基、4−シアノフェニルエチル基など)、ベンゾイル基、テトラヒドロピラニル基、ピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基、ピリミジニル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、ベンゾイル(低級)アルキル基(例えば、ベンゾイルメチル基、ベンゾイルエチル基など)、ベンゼンスルホニル基、または低級アルキルベンゼンスルホニル基(例えば、トルエンスルホニル基など)]、
−CH2−G−R’
[式中、Gは、−O−、−S−、または−NR’’−(ここで、R’’は、水素原子または低級アルキル基)であり、
R’は、フェニル基、ハロフェニル基(例えば、2−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基など)、低級アルコキシフェニル基(例えば、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基など)、ピリジル基、またはピリミジニル基である。]などが挙げられる。
これら置換基は、該環の置換可能ないずれの位置にあってもよい。該置換基は1〜5個、好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
Qで示される「置換されていてもよいアリール基」の好ましいものは、[ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基またはメトキシ基]で1個または複数置換されていてもよいフェニル基が挙げられ、特に好ましくは2,5-ジメチルフェニル基が挙げられる。
【0019】
Qで示される「置換されていてもよいヘテロ環基」としては、例えば、窒素、酸素および硫黄から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を環構成原子として含有する5〜7員ヘテロ環基が挙げられる。これらのヘテロ環基は、さらに別のヘテロ環またはベンゼン環と縮合環を形成していてもよい。
具体的には、それぞれ置換されていてもよいピリジル基(例えば、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基など)、ピリミジニル基(例えば、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−2−イル基など)、キノリル基(例えば、キノリン−4−イル基など)、キナゾリニル基(例えば、キナゾリン−4−イル基など)、ベンゾチアゾリル基(例えば、ベンゾチアゾール−2−イル基など)、ピラゾリル基(例えば、ピラゾール−5−イル基など)などが挙げられる。
このうち、置換されていてもよいピリジル基が好ましい。
【0020】
これらヘテロ環基が置換されている場合、その置換基としては、上記Qで示されるアリール基の置換基として例示した基が挙げられる。このうち、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはホルミル基が好ましく、塩素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
これら置換基は、該環の置換可能ないずれの位置にあってもよい。該置換基は1〜5個、好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
Qで示される「モノ置換またはジ置換メチレンアミノ基」は、例えば、式(a):

[式中、R12およびR13は、同一または異なって水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アシル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基、シクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロ環基を示すか、あるいはR12とR13が結合してヘテロ原子が含まれていてもよい単環または多環を形成していることを示す(ただし、R12およびR13が同時に水素原子である場合を除く)。]で表される。
【0022】
式(a)中、
12またはR13で示される「置換されていてもよいアルキル基」としては、例えば、上記R1で示される「アルキル基」または「置換アルキル基」と同様の基が挙げられる。このうち、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0023】
12またはR13で示される「アシル基」としては、例えば、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などが挙げられる。該アルキルカルボニル基としては、例えば、C1-6アルキル−カルボニル基、好ましくは、C1-4アルキル−カルボニル基、具体的には、例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。該アリールカルボニル基としては、例えば、C6-14アリール−カルボニル基、具体的には、例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基などが挙げられる。
【0024】
12またはR13で示される「アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基」としては、それぞれR1で示されるアルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基と同様の基が挙げられる。
【0025】
12またはR13で示される「シクロアルキル基」としては、炭素数3〜7、好ましくは炭素数5〜6のシクロアルキル基、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0026】
12またはRl3で示される「置換されていてもよいアリール基」としては、例えば、C6-14アリール基、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基(例えば、1−ナフチル基など)、フルオレニル基などが挙げられる。このうち、フェニル基が好ましい。
該アリール基は、これら環基の可能ないずれの位置で置換されていてもよく、置換基の数は1〜3個である。置換基の具体例としては、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、フェニル基、シアノ基などが挙げられる。
【0027】
12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0028】
12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基としての置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、上記R1で示される「置換されていてもよいアルキル基」と同様の基が挙げられる。このうち、アルキル基またはハロアルキル基が好ましく、特にメチル基またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0029】
12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基としての置換されていてもよい水酸基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
該アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。このうちメトキシ基が好ましい。
該アルケニルオキシ基としては、例えば、炭素数2〜8、好ましくは、炭素数2〜4のアルケニルオキシ基、具体的には、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、クロチルオキシ基などが挙げられる。このうち、アリルオキシ基が好ましい。
該アルキニルオキシ基としては、例えば、炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜4のアルキニルオキシ基、具体的には、エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基、ブチニルオキシ基などが挙げられる。このうち、プロパルギルオキシが好ましい。
該ハロアルコキシ基としては、上記アルコキシ基が少なくとも1個のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)で置換されたもの、具体的には、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基などが挙げられる。このうち、ジフルオロメトキシが好ましい。
該アリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリールオキシ基、具体的には、フェノキシ基、ナフトキシ基などが挙げられる。
【0030】
12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基としてのアルキルチオ基としては、例えば、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4、さらに好ましくは炭素数1〜2のアルキルチオ基が挙げられる。
具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などが挙げられる。このうち、メチルチオ基が好ましい。
12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基としての置換されていてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基でモノまたはジ置換されていているアミノ基(例えば、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基など)などが挙げられる。
【0031】
12またはR13で示される「置換されていてもよいヘテロ環基」としては、例えば、環内に1〜4個、好ましくは1〜2個のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄など)を含有するヘテロ環基が挙げられる。これらヘテロ環基は、該環の可能ないずれの位置に結合手を有していてもよい。該ヘテロ環基の具体例としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、ピリミジニル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、キナゾリニル基、ピラジニル基、モルホリノ基、ピペラジニル基などが挙げられる。このうち、フリル基(例えば、2−フリル基など)、チエニル基(例えば、2−チエニル基など)、ピリジル基(2−ピリジル基など)、ピラジニル基(例えば、2−ピラジニル基など)、ピリミジニル基(例えば、2−ピリミジニル基など)、モルホリノ基が好ましい。該ヘテロ環基は置換されていてもよく、置換基としては、R12またはR13で示される「置換されていてもよいアリール基」の置換基と同様の基が挙げられる。
【0032】
「R12とR13が結合して形成されるヘテロ原子が含まれていてもよい単環または多環」は、R12およびR13とこれらが結合する炭素原子と共に形成される、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄など)を含有していてもよい4〜8員環であり、該環は他の環と縮合環を形成していてもよい。該環の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]フランなどが挙げられる。これらの環は、その可能ないずれの位置に2価の結合手を有していてもよい。
【0033】
Qで示される「置換されていてもよい置換イミノメチル基」は、例えば、式(b):

[式中、R14およびR15は、それぞれ上記R12およびR13と同意義]で表される。
【0034】
Qで示される「置換されていてもよいアルキル基」のアルキル基としては、上記R1で示されるアルキル基が挙げられる。
【0035】
Qで示される「置換されていてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、例えば、炭素数2〜8、好ましくは炭素数3〜6のアルケニル基、具体的には、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基などが挙げられる。
【0036】
Qで示される「置換されていてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルキニル基、具体的には、プロパルギル基、エチニル基、ブチニル基などが挙げられる。これらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が置換されている場合の置換基としては、例えば、それぞれ上記R1として例示したハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されたアミノ基、それぞれ上記Qとして例示した置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいヘテロ環基などが挙げられる。
【0037】
Qで示される「置換カルボニル基」としては、例えば、(置換されていてもよいアルキル)カルボニル基、(置換されていてもよいフェニル)カルボニル基、(置換されていてもよいナフチル)カルボニル基、(置換されていてもよいヘテロ環基)カルボニル基などが挙げられる。
【0038】
Qで示される「置換スルホニル基」としては、例えば、(置換されていてもよいアルキル)スルホニル基、(置換されていてもよいフェニル)スルホニル基、(置換されていてもよいナフチル)スルホニル基、(置換されていてもよいヘテロ環基)スルホニル基などが挙げられる。
【0039】
これら「置換カルボニル基」または「置換スルホニル基」中の「置換されていてもよいアルキル基」としては上記R1で例示した基が、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいヘテロ環基としては各々上記Qとして例示した基が挙げられる。
【0040】
Qの好ましいものは、2,5-ジメチルフェニル基である。
【0041】
Xは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい水酸基を示すが、これは、上記式(II)中のフェニレン基が非置換の場合(すなわち、Xが水素原子の場合)のほか、フェニレン基がハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基および置換されていてもよい水酸基から選ばれる1〜3個の置換基で可能ないずれかの位置で置換されている場合を包含する意である。該置換基が2個または3個の場合、これらは同一または異なっていてもよい。
【0042】
Xで示される「ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基および置換されていてもよい水酸基」としては、それぞれ、上記R1で示されるこれらの基として例示した基が挙げられる。
【0043】
Xの好ましいものは、水素原子である。
【0044】
Yで示される「置換されていてもよい水酸基」および「アルキルチオ基」としては、それぞれ、上記R1で示されるこれらの基として例示した基が挙げられる。
このうち、メトキシ基が好ましい。
【0045】
Yで示される「置換されていてもよいアミノ基」は、例えば、式(III):
−NR56 (III)
[式中、R5は水素原子またはアルキル基;
6は水素原子、アルキル基またはヒドロキシルアルキル基を示す。]で表される。
5またはR6で示される「アルキル基」およびR6で示される「ヒドロキシルアルキル基」の「アルキル基」としては、上記R1で示されるアルキル基として例示した基が挙げられる。好ましくは、R5およびR6が同一または異なって、水素原子またはアルキル基(好ましくはメチル基)である。
【0046】
Yとして好ましくは、C1−3アルコキシ基または上記式(III)で表される基が挙げられ、さらに好ましくは、メトキシ基またはモノC1−3アルキルアミノ基(好ましくは、モノメチルアミノ基)が挙げられる。
【0047】
Zは、好ましくは酸素原子である。
【0048】
Mは、好ましくは酸素原子、硫黄原子またはNR2、さらに好ましくは、酸素原子である。
【0049】
2で示される「アルキル基」としては、例えば、上記R1で示されるアルキル基として例示した基が挙げられる。
このうち、メチル基が好ましい。
【0050】
2で示される「アシル基」としては、ホルミル基;炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を含有するアルキルカルボニル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など);ベンゾイル基などが挙げられる。
このうち、アセチル基が好ましい。
【0051】
nは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。
【0052】
本発明において、好ましい形態の化合物(II)としては、
上記式(II)において、
1が、ハロゲン原子、またはC1−4アルキル基もしくはC1−4ハロアルキル基で置換されていてもよい水酸基であり、
Qが、[ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基またはメトキシ基]で1個または複数置換されていてもよいフェニル基であり、
Xが、水素原子であり、
Yが、C1−3アルキル基で1個または複数置換されていてもよいアミノ基であり
Zが、酸素原子であり
Mが、酸素原子であり、かつ、
nが、1の整数
である化合物であり、
また、さらに好ましい形態としては、
上記式(II)において、
1がメトキシ基であり、
Qが2,5-ジメチルフェニル基であり、
Xが、水素原子であり、
Yが、メチルアミノ基であり
Zが、酸素原子であり
Mが、酸素原子であり、かつ、
nが、1の整数
である。
【0053】
式(II)で表される化合物またはその塩の各々は、不斉炭素原子および二重結合に基づく光学異性体、幾何異性体などの立体異性体を1種以上包含することもある。かかる異性体およびそれらの混合物も、すべて本発明の範囲に包含されるものである。
【0054】
式(II)で表される化合物またはその塩には、互変異性体、幾何異性体、立体異性体等の異性体が存在することもあるが、本発明においては、それらの異性体およびその混合物を含め、全て、式(II)で包含されるものである。
【0055】
式(II)で表される化合物またはその塩には、溶媒和物(例えば、水和物等)の形態をとるものがあるが、これらの形態のものも、本発明の範囲に包含されるものである。
【0056】
式(II)で表される化合物またはその塩には、結晶形態および/または非結晶形態の形態をとるものがあるが、これらの形態のものも、本発明の範囲に包含されるものである。
【0057】
以下、化合物II-iは、化合物IIのうち、R1がメトキシ基、Xが水素原子、Yがメチルアミノ基、Zが酸素原子、Mが酸素原子、Qが2,5-ジメチルフェニル基かつnが1の整数であるカーンインゴールドプレローグ規則によるR型の立体構造の化合物であり、下記式(IIa)で表される。


【0058】
また、化合物II-iiは、化合物IIのうち、R1がメトキシ基、Xが水素原子、Yがメチルアミノ基、Zが酸素原子、Mが酸素原子、Qが2,5-ジメチルフェニル基かつnが1の整数であるラセミ体の化合物であり、下記式(IIb)で表される。

【0059】
なお、化合物Iと混合しうる電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)は既に挙げた本発明組成物に使用されるものの他、例えば、フロキサストロビン((E)-{2-[6-(2-chlorophenoxy)-5-fluoropyrimidin-4-yloxy]phenyl}(5,6-dihydro-1,4,2-dioxazin-3-yl)methanone O-methyloxime)、メトミノストロビン((E)-2-methoxyimino-N-methyl-2-(2-phenoxyphenyl)acetamide)、ピリベンカルブなども有効である。
【0060】
本発明は、畑、水田、芝生、果樹園等の農耕地又は非農耕地用にて使用することができる。また、本発明は、以下に挙げられる「作物」等を栽培する農耕地等において、該作物等に対して薬害を与えることなく、当該農耕地の病害を防除するために使用することができる。
農作物;トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、ピーナッツ、ソバ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等、
野菜;ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ等、
花卉;
観葉植物;
果樹;仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ等、
果樹以外の樹;チャ、クワ、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)等。
【0061】
上記「作物」とは、イソキサフルトール等のHPPD阻害剤、イマゼタピル、チフェンスルフロンメチル等のALS阻害剤、EPSP合成酵素阻害剤、グルタミン合成酵素阻害剤、ブロモキシニル等の除草剤に対する耐性が、古典的な育種法、もしくは遺伝子組換え技術により付与された作物も含まれる。
古典的な育種法により耐性が付与された「作物」の例として、イマゼタピル等のイミダゾリノン系除草剤耐性のClearfield(登録商標)カノーラ、チフェンスルフロンメチル等のスルホニルウレア系ALS阻害型除草剤耐性のSTSダイズ等がある。また、遺伝子組換え技術により耐性が付与された「作物」の例として、グリホサートやグルホシネート耐性のトウモロコシ、ダイズ、ワタ、ナタネ品種等があり、RoundupReady(登録商標)およびLibertyLink(登録商標)等の商品名ですでに販売されている。
【0062】
上記「作物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、例えば、バチルス属で知られている選択的毒素等を合成する事が可能となった作物も含まれる。
この様な遺伝子組換え植物で発現される毒素として、バチルス・セレウスやバチルス・ポピリエ由来の殺虫性タンパク;バチルス・チューリンゲンシス由来のCry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1またはCry9C等のδ−エンドトキシン、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパク;線虫由来の殺虫タンパク;さそり毒素、クモ毒素、ハチ毒素または昆虫特異的神経毒素等動物によって産生される毒素;糸状菌類毒素;植物レクチン;アグルチニン;トリプシン阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、パタチン、シスタチン、パパイン阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤;リシン、トウモロコシ−RIP、アブリン、ルフィン、サポリン、ブリオジン等のリボゾーム不活性化タンパク(RIP);3−ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイド−UDP−グルコシルトランスフェラーゼ、コレステロールオキシダーゼ等のステロイド代謝酵素;エクダイソン阻害剤;HMG-COAリダクターゼ;ナトリウムチャネル、カルシウムチャネル阻害剤等のイオンチャネル阻害剤;幼若ホルモンエステラーゼ;利尿ホルモン受容体;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ等が挙げられる。
またこの様な遺伝子組換え作物で発現される毒素として、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1またはCry9C等のδ−エンドトキシンタンパク、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパクのハイブリッド毒素、一部を欠損した毒素、修飾された毒素も含まれる。ハイブリッド毒素は組換え技術を用いて、これらタンパクの異なるドメインの新しい組み合わせによって作り出される。一部を欠損した毒素としては、アミノ酸配列の一部を欠損したCry1Abが知られている。修飾された毒素としては、天然型の毒素のアミノ酸の1つまたは複数が置換されている。
これら毒素の例およびこれら毒素を合成する事ができる組換え植物は、EP-A-0 374 753、WO 93/07278、WO 95/34656、EP-A-0 427 529、EP-A-451 878、WO 03/052073等に記載されている。
これらの組換え植物に含まれる毒素は、特に、甲虫目害虫、双翅目害虫、鱗翅目害虫への耐性を植物へ付与する。
【0063】
また、1つもしくは複数の殺虫性の害虫抵抗性遺伝子を含み、1つまたは複数の毒素を発現する遺伝子組換え植物は既に知られており、いくつかのものは市販されている。これら遺伝子組換え植物の例として、YieldGard(登録商標)(Cry1Ab毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Rootworm(登録商標)(Cry3Bb1毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Plus(登録商標)(Cry1AbとCry3Bb1毒素を発現するトウモロコシ品種)、Herculex I(登録商標)(Cry1Fa2毒素とグルホシネートへの耐性を付与する為にホスフィノトリシン N−アサチルトランスフェラーゼ(PAT)を発現するトウモロコシ品種)、NuCOTN33B(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard I(登録商標)(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard II(登録商標)(Cry1AcとCry2Ab毒素とを発現するワタ品種)、VIPCOT(登録商標)(VIP毒素を発現するワタ品種)、NewLeaf(登録商標)(Cry3A毒素を発現するジャガイモ品種)、NatureGard(登録商標)Agrisure(登録商標)GT Advantage(GA21 グリホサート耐性形質)、Agrisure(登録商標) CB Advantage(Bt11コーンボーラー(CB)形質)、Protecta(登録商標)等が挙げられる。
【0064】
上記「作物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、選択的な作用を有する抗病原性物質を産生する能力を付与されたものも含まれる。
抗病原性物質の例として、PRタンパク等が知られている(PRPs、EP-A-0 392 225)。このような抗病原性物質とそれを産生する遺伝子組換え植物は、EP-A-0 392 225、WO 95/33818、EP-A-0 353 191等に記載されている。
こうした遺伝子組換え植物で発現される抗病原性物質の例として、例えば、ナトリウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル阻害剤(ウイルスが産生するKP1、KP4、KP6毒素等が知られている。)等のイオンチャネル阻害剤;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ;PRタンパク;ペプチド抗生物質、ヘテロ環を有する抗生物質、植物病害抵抗性に関与するタンパク因子(植物病害抵抗性遺伝子と呼ばれ、WO 03/000906に記載されている。)等の微生物が産生する抗病原性物質等が挙げられる。
【0065】
本発明により防除することができる植物病害としては例えば以下の病害をあげることができるが、これらに限定されるものではない。通常、本発明方法においては、本発明組成物が用いられる。
【0066】
イネのいもち病(Magnaporthe grisea)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi);
ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum, F. avenacerum, F. culmorum, Microdochium nivale)、さび病(Puccinia striiformis, P. graminis, P. recondita, P. hordei)、雪腐病(Typhula sp.,Micronectriella nivalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici, U. nuda)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、網斑病(Pyrenophora teres Drechsler);
カンキツ類の黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、果実腐敗病(Penicillium digitatum, P. italicum);
リンゴのモニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternata apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、炭そ病(Colletotrichum acutatum)、疫病(Phytophtora cactorum);
ナシの黒星病(Venturia nashicola, V. pirina)、黒斑病(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、疫病(Phytophtora cactorum);
モモの灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.);
ブドウの黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、べと病(Plasmopara viticola);
カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki, Mycosphaerella nawae);
ウリ類の炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora sp.)、苗立枯病(Pythium sp.);
トマトの輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans);
ナスの褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora parasitica);
ネギのさび病(Puccinia allii)、ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)、さび病( Phakopsora pachyrhizi)、茎疫病(Phytophthora sojae)
インゲンの炭そ病(Colletotrichum lindemthianum)
ラッカセイの黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii);
エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi);
ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、粉状そうか病(Spongospora subterranean f. sp. subterranea);
イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli);
チャの網もち病(Exobasidium reticulatum);白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis)
タバコの赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)、べと病(Peronospora tabacina)、疫病(Phytophthora nicotianae);
テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、黒根病(Aphanidermatum cochlioides);
バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa);
キクの褐斑病(Septoria chrysanthemi−indici)、白さび病(Puccinia horiana);
種々の作物のピシウム属菌によって引き起こされる病害(Pythium aphanidermatum, Pythium debarianum, Pythium graminicola, Pythium irregulare, Pythium ultimum)灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);ダイコンの黒斑病(Alternaria brassicicola);
シバのダラースポット病(Sclerotinia homeocarpa)、シバのブラウンパッチ病およびラージパッチ病(Rhizoctonia solani);
バナナのシガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、Mycosphaerella musicola、Pseudocercospora musae)。
【0067】
本発明は、前記した植物病害の中でも、各種作物の灰色かび病、菌核病、モニリア病、眼紋病、雲形病などに特に高い効果を示す。
【0068】
本発明組成物に含有される本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの重量比は、通常0.025:1〜20:1、好ましくは0.05:1〜5:1、さらに好ましくは0.05:1〜0.25:1である。
【0069】
本発明組成物は、他の何らの成分も加えられることなく、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとのみであってもよいが、通常はこれら有効成分を、固体担体、液体担体、ガス担体、界面活性剤等と混合し、必要により固着剤、分散剤、安定剤等の製剤用補助剤を添加して、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、粒剤、ドライフロアブル剤、乳剤、水性液剤、油剤、くん煙剤、エアゾール剤、マイクロカプセル剤等に製剤化されていてもよい。これらの製剤には、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとが合計で、通常0.1〜99重量%、好ましくは0.2〜90重量%含有される。
【0070】
固体担体としては、例えば、粘土類(例えば、カオリン、珪藻土、合成含水酸化珪素、フバサミクレー、ベントナイト、酸性白土)、タルク類、その他の無機鉱物(例えば、セリサイト、石英粉末、硫黄粉末、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ)等の微粉末あるいは粒状物が挙げられ、液体担体としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン)、脂肪族炭化水素類(例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサノン、灯油)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、イソブチルニトリル)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル)、酸アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素)等が挙げられる。
【0071】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類およびそのポリオキシエチレン化物、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘導体等が挙げられる。
【0072】
その他の製剤用補助剤としては、例えば固着剤や分散剤、具体的にはカゼイン、ゼラチン、多糖類(例えば、でんぷん、アラビヤガム、セルロース誘導体、アルギン酸)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類)PAP(酸性りん酸イソプロピル)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)、植物油、鉱物油、脂肪酸またはそのエステルなどが挙げられる。
【0073】
また、例えば、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとをそれぞれ上述の手法により別々に製剤化し、必要により更に水でそれぞれを希釈した後、該別々に調製された製剤または該別々に調製された希釈液を混合することにより本発明組成物を調製することもできる。
なお、本発明組成物の製剤形態は、乳剤、油剤、フロアブル剤等の液体製剤のみならず、水和剤、顆粒水和剤、粉剤、粒剤等の固体製剤であってもよい。
【0074】
本発明防除方法においては、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとを、植物体、植物の種子または当該植物の栽培地である農耕地に対して併用する際、両者を同時に施用する場合は、例えば本発明組成物を下記の方法にて施用することができる。本発明組成物を施用する方法としては、実質的に本発明組成物が施用され得る形態であればその方法は特に限定されないが、例えば、茎葉散布などの植物体への処理、土壌処理などの植物の栽培地である農耕地への処理、種子消毒などの種子への処理等が挙げられる。
【0075】
本発明組成物の施用量は、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの混合比、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、対象病害、対象作物などによっても異なるが、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの合計量で、10アールあたり、通常1〜500g、好ましくは2〜200gである。乳剤、水和剤、懸濁剤等は通常水で希釈して施用され、その濃度は本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの合計で、通常0.0005〜2重量%、好ましくは0.005〜1重量%であり、粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま施用される。種子への処理においては、種子1kgに対して本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの合計で通常0.001〜10g、好ましくは0.01〜1gの範囲で施用される。
【0076】
また、本発明防除方法においては、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとを、植物体、植物の種子または当該植物の栽培地である農耕地に別々に施用する場合、例えばそれぞれの化合物を種々の方法、例えば上記の方法にて順に施用すればよく、両化合物の施用順序は特に問わない。但し、両者の施用間隔は短いほうが好ましく、例えば1日以内を例示することができる。
施用量は、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの施用量比、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、対象病害、対象作物などによっても異なるが、本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iとの合計量で、10アールあたり、通常1〜500g、好ましくは2〜200gである。また、施用される本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と化合物Iは、重量比で通常0.125:1〜20:1、好ましくは0.25:1〜10:1である。
また、それぞれの化合物が施用される濃度は、乳剤、水和剤、懸濁剤等は通常水で希釈して施用される製剤型である場合には、それぞれ、通常0.0005〜1重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%であり、粉剤、粒剤等である場合は通常希釈することなくそのまま施用される。種子への処理においては、種子1kgに対して本電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)、化合物Iのそれぞれが通常0.001〜5g、好ましくは0.01〜0.5gの範囲で施用される。
【0077】
また、本発明組成物を他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料または土壌改良剤と混合して、または混合せずに同時に用いることもできる。
【実施例】
【0078】
以下、製剤例、試験例および比較例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を表す。
【0079】
製剤例1
化合物Iを3部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを2部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエ−テル14部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部およびキシレン75部をよく混合することにより各乳剤を得る。
【0080】
製剤例2
化合物Iを5部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを5部、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合1:1)35部および水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより各フロアブル製剤を得る。
【0081】
製剤例3
化合物Iを20部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを1部、ソルビタントリオレエ−ト1.5部およびポリビニルアルコ−ル2部を含む水溶液28.5部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中にキサンタンガム0.05部およびアルミニウムマグネシウムシリケ−ト0.1部を含む水溶液37.35部を加え、さらにプロピレングリコ−ル10部を加えて攪拌混合し各フロアブル製剤を得る。
【0082】
製剤例4
化合物Iを3部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを2部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部およびカオリンクレ−62部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより各粒剤を得る。
【0083】
製剤例5
化合物Iを8部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを40部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および合成含水酸化珪素45部をよく粉砕混合することにより各水和剤を得る。
【0084】
製剤例6
化合物Iを3部、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIを2部、カオリンクレ−85部およびタルク10部をよく粉砕混合することにより各粉剤を得る。
【0085】
試験例1
プラスチックポットに砂壌土を詰め、キュウリ(相模半白)を播種し、温室内で12日間生育させた。化合物Iのフロアブル剤と、化合物II-i、化合物II-ii、化合物III、化合物IV、化合物Vまたは化合物VIのフロアブル剤とをそれぞれ水で希釈した後タンクミックスし、それぞれ所定濃度としたタンクミックス液を調製した。該タンクミックス液を前記キュウリの葉面に充分付着するように茎葉散布した。散布後植物を風乾し、キュウリ菌核病菌の菌糸含有PDA培地をキュウリ葉面上に置いた。接種後12℃、多湿下に6日間置いた後、防除効果を調査した。
また、比較のために前記のそれぞれのフロアブル剤を水希釈して所定濃度とした化合物I〜VIの水希釈液を調整しそれぞれ、同様の防除試験を行い、防除効果を調査した。
防除価算出には、それぞれの処理区における発病面積率(調査葉面積に占める発病面積の割合)を調査した。
【0086】
式1より防除価を算出した。
「式1」
防除価(%)=100×(A−B)/A
A:無処理区の植物の発病面積率
B:処理区の植物の発病面積率
一般に、与えられた2種類の有効成分化合物を混合して処理した際に期待される防除効果、いわゆる防除価期待値は下記の式2のコルビーの計算式により求められる。
「式2」
E=X+Y−(X×Y)/100
X:有効成分化合物AをMppmで処理した時の防除価
Y:有効成分化合物BをNppmで処理した時の防除価
E:有効成分化合物AをMppmで、有効成分化合物BをNppmで処理した
時に期待される防除価(防除価期待値)
また、下記の式3により算出される値にて相乗効果を示した。
「式3」
相乗効果=100×(実際の防除効果)/(防除効果期待値

以上の結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、高い活性を有する植物病害防除組成物および植物病害を効果的に防除し得る方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

で表される化合物と、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビンおよび式(II)

[式中、R1は、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、置換されていてもよいアミノ基またはニトロ基を表し、Qは、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロ環基、モノまたはジ置換メチレンアミノ基、置換されていてもよい(置換イミノ)メチル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換カルボニル基または置換スルホニル基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよい水酸基を表し、Yは、置換されていてもよい水酸基、アルキルチオ基、または置換されていてもよいアミノ基(ただし、R1が、置換されていない水酸基の場合、Yは、アルコキシ基ではない。)を表し、Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、Mは、酸素原子、S(O)(ここで、Iは、0、1または2の整数を表す。)、NR2(ここで、R2は、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。)または単結合を表し、nは、0、1または2の整数を表す。]
で表される化合物またはその塩からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)と、
を有効成分として含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物。
【請求項2】
電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)が、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、式(IIa)

で表される化合物および式(IIb)

からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)である、請求項1に記載の植物病害防除剤組成物。
【請求項3】
式(I)で表される化合物と、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビンおよび式(II)で表される化合物またはその塩からなる群から選ばれる一種又はそれ以上の電子伝達系複合体III阻害剤(QoI阻害剤)とを、植物体、植物の種子または農耕地に対し併用することを特徴とする植物病害防除方法。

【公開番号】特開2009−235041(P2009−235041A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86238(P2008−86238)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】