説明

植物系堆肥および作物の栽培方法並びに作物

【課題】消毒工程を設けずに野菜本来の味や風味を損なうことなく加工できる作物を栽培するための植物系堆肥と、これを使用する作物の栽培技術を提供することにある。
【解決手段】少なくともトウモロコシ残幹と米糠とおからとを混合して発酵させた発酵物と、粉粒状の炭と、有用微生物群と、を主体とすることを特徴とし、少なくとも収穫後から圃場に播種する前または苗を移植する前に圃場に施用すること特徴とする。有用微生物群には、乳酸菌と、枯草菌または納豆菌と、酵母菌と、が含まれている。このような栽培方法で栽培された作物、特に加工用野菜を入荷した惣菜加工業者は、これを消毒することなく水洗いのみで加工することができ、味や風味を保った加工用野菜となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒工程を設けずに作物本来の味や風味を損なうことなく加工できる作物の栽培技術に関し、より詳しくは、施設圃場における加工用野菜の栽培技術に関する。
【背景技術】
【0002】
惣菜加工工場において、野菜は惣菜の主原料の一つとして使用されているが、野菜への腐敗菌等の付着量が多いと、短期間のうちに腐敗することが知られている。また、食中毒の原因となる病原菌による汚染対策も衛生管理上重要であり、病原菌としては、大腸菌群、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌等が知られている。野菜を原料として受け入れてカットした後にはこれらの腐敗菌や病原菌が蔓延しやすくなり、また、生産地においてすでにカット加工されて惣菜加工工場に入荷する場合には、入荷時点で腐敗菌や病原菌が蔓延している恐れもある。特に、野菜の用途としてサラダなどに使用する場合には、生の状態で製品中に入るため、その衛生管理は重要とされている。このような状況において、惣菜加工工場では、野菜を加工する前に消毒工程を設けて腐敗菌や病原菌の数を減少させている。
【0003】
消毒する方法としては、次亜塩素酸溶液等による薬剤処理を行ったり、熱湯浸漬による処理を行ったりする方法が知られている。しかしながら、消毒することによって衛生管理上の問題は解決できても、野菜本来の味や風味が損なわれてしまい、品質低下が起こるという問題がある。また、惣菜加工工場においては、消毒工程が必須となり、加工工程が煩雑となる。また、もともと腐敗菌や病原菌が付着していない健全な野菜においても消毒を行うこととなり、消毒工程の無駄となっている場合もある。
【0004】
一方、病原菌等を抑制し作物の生育を良好に管理する栽培技術が知られている。例えば、特許文献1には、嫌気性菌である少なくとも乳酸菌群と酵母群と光合成細菌群とを含む有用微生物群と海洋表層水等を配合することによって得られた植物活性資材が記載されている。この植物活性資材は、土壌へ灌水したり葉面散布したりして、作物の生育を促進するのに加え、病原菌を抑制することができるとしている。
【0005】
また、特許文献2には、磁気処理水を散布するしいたけの栽培方法が記載されている。この栽培方法によれば、しいたけの原木として使用する鋸屑(人工榾木)への雑菌汚染が抑制されるとしている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−60317号公報
【特許文献2】特開平3−127911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の植物活性資材は、トマトの葉面散布を行った試験ではトマトに対するウドンコ病の抑制効果はあるが、同じ試験において微生物処理区では、このウドンコ病の抑制効果は小さい結果となっている。このことにより、有用微生物群の単独使用による病原菌の抑制効果は小さいものと考えられる。また、トマト(可食部)に対する病原菌等の抑制効果は不明である。
【0008】
特許文献2に記載の人工榾木は、鋸屑:米糠が7:2であり、もともと生息している微生物数が少ない。このため、もともと土壌に生息する膨大な大腸菌群等の微生物に対しての効果は不明であり、さらに、しいたけ(可食部)に対する病原菌等の抑制効果も不明である。
【0009】
ところで、もともと圃場には大腸菌群や腐敗菌等の微生物が多く存在し、圃場に投入される動物糞由来の堆肥(家畜糞堆肥)にも多く含まれている。特に大腸菌群は衛生管理上の指標となるため、加工用野菜(可食部)においては大腸菌群の付着量が検査され、この付着量が多いと加工用野菜を消毒しなければならない。しかし特許文献1,2においては、生産される野菜(可食部)に対する大腸菌群や腐敗菌等を減少させることを想定していないため、このような技術をもってしても野菜(可食部)にこれらの微生物が付着する恐れがある。このように大腸菌群や腐敗菌等の微生物が付着した野菜を、消毒工程を設けないで加工すると不衛生であり食中毒となる恐れがある。また、消毒工程を設ければ、前述のように野菜本来の味や風味が損なわれてしまい、品質低下が起こるという問題がある。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、消毒工程を設けずに野菜本来の味や風味を損なうことなく加工できる作物を栽培するための植物系堆肥と、これを使用する作物の栽培技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の植物系堆肥は、少なくともトウモロコシ残幹と米糠とおからとを混合して発酵させた発酵物と、粉粒状の炭と、有用微生物群と、を主体とすることを特徴とする。
また、本発明の作物の栽培方法は、少なくとも収穫後から圃場に播種する前または苗を移植する前に、前記植物系堆肥を、圃場に施用することを特徴とする。
【0012】
本発明者は、前記発酵物と、炭と、有用微生物群とを組合せたものを主体とした、非動物糞由来である植物系堆肥を、少なくとも収穫後から播種前または苗移植前に圃場に施用することにより、作物、特に小ねぎのような生育量が小さい加工用野菜に腐敗菌や病原菌等の微生物(以下、悪玉菌と称すことがある)が付着しにくいことを発見し、本発明に至ったものである。すなわち、上記の構成とすることにより、生産者は、悪玉菌、特に、大腸菌群および黄色ブドウ球菌や腐敗菌が付着しにくい作物、特に加工用野菜を栽培、生産することができる。なお、本来、動物糞由来の堆肥(家畜糞堆肥)には大腸菌群が多く含まれるため、これを圃場に施用しないことが望ましいが、少量程度施用した場合であっても、悪玉菌等は作物に付着しにくいものと考えられる。従って、この加工用野菜を入荷した惣菜加工業者は、これを消毒することなく水洗いのみで加工することができ、消費者は、味や風味を保った本来の状態で加工用野菜を食することができる。
【0013】
ここで、加工用野菜に悪玉菌等が付着しにくい理由としては、以下が考えられる。発酵物の原料となるトウモロコシ残幹は、炭素率が30前後であり、繊維質が含まれながらも窒素が1.3%含まれるため、土壌の物理性の改善効果があるとともに、肥料効果をも有している。また、米糠やおからは、窒素、リン、カリウムがバランス良く含まれており、土壌微生物の栄養源として効果があるとともに、有機質肥料としての効果が期待できる。特に米糠はリン、おからは窒素の効果に優れている。
【0014】
さらに、トウモロコシ残幹と米糠とおからとを原料として発酵物とすれば、堆肥化することにより易分解性の有機物を分解して、多くの腐植を含むため、総合的な土壌改良材としての効果を発揮する。その効果として、この植物系堆肥は、肥料的効果、肥効増進効果、土壌の化学性改善、土壌の物理性の改善、土壌の微生物活性の改善、野菜の生理活性への効果、土壌緩衝能の改善等が期待できる。このような総合的な改善効果により、加工用野菜を栽培しているときに、土壌微生物の状態を良好に保つ地盤ができ、土壌病害を防止するとともに、加工用野菜の生育が良好になって、加工用野菜の対病害虫性も高まるものと考えられる。これにより、加工用野菜の表面には、悪玉菌等が付着しにくくなると考えられる。
【0015】
ここで、「付着しにくい」とは、水洗で洗浄すればそのまま生で食しても問題のない菌数であることを意味しており、必ずしも雑菌まで菌数をゼロにすることを意味するものではない。
【0016】
さらに、本発明においては、炭と、有用微生物群を施用している。炭は、多孔質かつ吸着性を有することから、土壌改良材として利用される他、微生物の住処として好適である。これにより、前述の発酵物との効果に加え、炭の効果により相乗効果が得られ、有用微生物群は良好な状態で生育することが可能となり、有用微生物群が悪玉菌に優性となって、悪玉菌が蔓延することを防止することができる。なお、「有用」とは、前記したように、土壌中の悪玉菌を抑制し、土壌中の微生物相を好適な状態とするために役に立つことを意味する。
【0017】
また、発酵物の原料には、トウモロコシ残幹が35容量%以上45容量%以下、米糠が25容量%以上35容量%以下、おからが25容量%以上35容量%以下とすることが望ましい。このような原料の配合割合とすれば、前述の土壌改良材としての効果を充分発揮することができる。
ここで、トウモロコシ残幹が35容量%未満の場合、発酵物中の繊維分が少なくなり、土壌物理性の改善効果が小さくなるとともに、微生物の窒素飢餓を生じる恐れがある。また、トウモロコシ残幹が45容量%を越えると、他の原料割合が減少して、肥料的効果が小さくなる。
【0018】
米糠が25容量%未満の場合、肥料成分、特にリンが減少し、肥料的効果が小さくなる。また米糠が35容量%を越えると、他の原料割合が減少し、その効果が小さくなる。
おからが25容量%未満の場合、肥料成分、特に窒素が減少し、肥料的効果が小さくなるとともに、微生物の窒素飢餓を生じる恐れがある。おからが35容量%を越えると、他の原料割合が減少し、その効果が小さくなる。
【0019】
また、有用微生物群は、乳酸菌と、枯草菌または納豆菌と、酵母菌と、を含むことが望ましい。ここで、乳酸菌は、堆肥等の有機物の分解を促進するのとともに、抗菌物質を出して悪玉菌の生育を防ぐことができる。枯草菌または納豆菌は、堆肥等の有機物の分解を促進し、酵母菌は、土壌中に有用な物質を合成して土壌中の状態を改良することができると考えられる。従って、これらの有用微生物を使用すれば、悪玉菌の蔓延を防止して、土壌環境を良好なものとし、土壌の微生物相を良好なものとすることができる。そして、発酵物が有用微生物の栄養源となったり土壌環境を改善したりし、さらに炭が上記の有用微生物の住処になったりさらに土壌環境を改善したりするため、有用微生物は、飛躍的にその生育環境が好適になって活性が高まることとなる。
以上のように、本発明においては、発酵物と、炭と、有用微生物を組み合わせれば、飛躍的に圃場を好適な状態にできる。また、作物の生育状況によっては、本発明の植物系堆肥を生育期間中にも使用することができる。
【0020】
ここで、発酵物の原料として他の原料を一部混合しても良いが、前述のように非動物糞由来とすることが望ましい。これにより、家畜などの動物の糞由来の大腸菌群が圃場に混入されることを防止することができるため、圃場中の大腸菌群などの悪玉菌の数は減少し、加工用野菜の表面に付着することを防止できる。
【0021】
一方、動物糞由来の堆肥、特に牛糞堆肥や豚糞堆肥には、水分調整剤として炭素率の高いオガクズが多量に含まれている。オガクズは炭素率が200以上と高いため、土壌中での分解が遅く、肥料効果は小さく、使用次第では微生物の窒素飢餓を引き起こす。このため、オガクズが使用されている堆肥は、植物系を主体とした前記発酵物と比較して、総合的な土壌の改善効果は小さい。
【0022】
さらに、本発明の作物の栽培方法は、作物の栽培期間中に、磁気処理水を作物全体に噴霧して灌水すれば、悪玉菌の菌数が増加することを防止することができる。また、加工用野菜の生育が良好となって、耐病害虫性を持たせることができるため、これが相乗効果をなして、さらに悪玉菌が付着しにくくなる。また、灌水した磁気処理水は、土壌に落ちて土壌中に吸収されため、前述の有用微生物群の働きがさらに活発となり、圃場において、土壌の状態と加工用野菜の生育とを総合的に改良することができる。
従って、上記の栽培方法によって栽培される作物、特に加工用野菜は、悪玉菌が付着しにくいため、殺菌工程を設ける必要がなく、野菜本来の味や風味を損なうことなく加工することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の植物系堆肥の特徴は、少なくともトウモロコシ残幹と米糠とおからとを混合して発酵させた発酵物と、粉粒状の炭と、有用微生物群と、を主体としたことにある。また、本発明の作物の栽培方法の特徴は、少なくとも収穫後から圃場に播種する前または苗を移植する前に、植物系堆肥を圃場に施用することにある。
以上のことにより、作物、特に加工用野菜の表面に悪玉菌が付着しにくくなり、この加工用野菜を入荷した惣菜加工業者は、これを消毒することなく水洗いのみで加工することができる。また消費者は、味や風味を保った本来の状態で加工用野菜を食することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に用いる作物としての加工野菜として、カットして食用に使用される小ねぎ(加工用ねぎ)を栽培した。以下、小ねぎの栽培工程について説明する。
【0025】
(1)施設圃場の準備
小ねぎを栽培する施設圃場において、小ねぎの収穫後、土壌中に堆肥を3〜10トン/10a/年となるように施用する。本発明の植物系堆肥は、トウモロコシ残幹と米糠とおからとを事前に混合して発酵させた発酵物を使用する。この発酵物の原料の配合割合は、トウモロコシ残幹が約40容量%、米糠が約30容量%、おからが約30容量%としている。なお、発酵物は、非動物糞由来であり、動物糞(家畜糞)が含まれる堆肥は施用しない。また、発酵物は、前記成分比となるようなえのき茸などの廃菌培地を使用することもでき、他の原料、例えば、コーヒー粕や麦糠等も一部使用しても良い。
【0026】
次に、前記発酵物に、土壌の状況を考慮しながら粉粒状の炭を数kg〜数十kg/10a/年となるよう投入して混合物を得る。なお、炭の施用量は、圃場の土壌の状態を考慮して決めることができる。
この混合物の成分値は、含水率19.1%、窒素全量2.11%、リン酸全量0.79%、加里全量1.34%であり、肥料成分がバランス良く含まれていた。また、炭素率が17であり、土壌微生物の窒素飢餓は起こさないものであった。
なお、微生物数を計測した結果、好気性細菌数(普通寒天培地)は8.7×107/gFW、好気性放線菌数(Waksmanのアルブミン寒天培地)は、1.5×105/gFW、糸状菌数(Martin&Johnsonのローズベンガル寒天培地)は、5.5×108/gFWであった。
【0027】
次に、前記混合物に土壌病害菌を減少させるための有用微生物群を混合し、本発明の植物系堆肥とする。有用微生物群としては、株式会社バイオエンジニアリング社製の商品名「エコサイン(商標)」を使用することができ、10kg/10a/年、または、10kg/10a/作、使用している。このエコサインには有用微生物群である乳酸菌と、枯草菌または納豆菌と、酵母菌とが含まれている。乳酸菌としては、Lactobacillus属、Enterococcus属、Lactococcus属、Pediococcus属、Streptococcus属が含まれている。また、枯草菌または納豆菌としてはBacillus属が含まれ、酵母菌としては、Kluyveromyces属、Saccharomyces属が含まれている。
なお、発酵物、炭、有用微生物の混合順序は、圃場に施用する前に一括で混合しておいても良く、或いは圃場で別個に混合しても良い。
【0028】
(2)整地、播種
植物系堆肥を圃場に施用した後に、トラクターで耕起して、これらを土壌と混合し、その後、平らな状態となるように整地する。整地した圃場に、小ねぎの種子を播種する。小ねぎの品種は、必要に応じて選定する。
【0029】
(3)栽培管理
灌水時に磁気処理水を加工用野菜の上方から噴霧して小ねぎ全体に灌水する。磁気処理水の製造装置としては、株式会社パノックス社製の磁場波動活水処理装置を使用することができる。ここで、小ねぎの大きさは、最大でも数十cmであるが、灌水は地表から2〜2.5mの高さから行い、小ねぎに満遍なくかかるように行う。また、灌水は、ノズルから霧状に噴霧して行う。これにより、噴霧された磁気処理水は、ノズルの中心から水平方向に円を描くように散水され、ノズルの中心から半径約4mほどの位置にまで達することができる。これにより、小ねぎの葉面に直接噴霧されることとなり、磁気処理水の殺菌効果が期待できる。
【0030】
ここで、小ねぎの形状は上下方向に細長く、またワックスが形成されるため、小ねぎの葉面に当接した磁気処理水は重力の影響を受けて葉面を伝わり、小ねぎの株元へと移行することとなる。このとき、小ねぎに当接した大部分の磁気処理水が葉面を上から下へと流れて小ねぎ全体に行き渡ることとなる。このように野菜全体に磁気処理水が行き渡ると殺菌効果が高くなる。なお、葉が横に広がったり重なったりするような他の形状の野菜においては、葉の隙間や裏側に磁気処理水が行き渡りにくく、野菜全体に磁気処理水が行き渡らないので、その効果は小さくなると考えられる。
また、小ねぎの株元へと移行した磁気処理水は、そのまま土壌に移行して、小ねぎの株元に集中することとなる。これにより、小ねぎの株元付近の土壌中の有用微生物群の活動が良好となるので、悪玉菌等が殺菌されやすい状態となるうえに、小ねぎの根の生育が旺盛になる。また、農薬の使用量は従来の半量程度で済む。
【0031】
(4)収穫
収穫に適した大きさ(長さ50〜60cm程度)になったら、小ねぎの株元から手作業により切って収穫する。年間4作前後の栽培を行うことができ、収穫量は、約5トン/10a/年である。時期による生育期間の変動もあり、夏季は60〜80日程度で収穫を行い、冬季は90〜120日程度で収穫を行う。収穫後、適宜出荷用に皮をむき、規格を調整して結束、箱詰めを行い、予冷(1〜5℃)後、「カットねぎ」として惣菜加工工場に出荷する。
【0032】
(実施例1)
次に、小ねぎに付着している微生物数について検査を行った。検査は、一年間で最も付着数の少ない時期と思われる1月(冬期)において行い、水洗した小ねぎ(原菜)と、これをカットし出荷したカットねぎに付着している現物試料1g当たりの菌数を計測し、表1に示した。表1に示すように、病原菌である大腸菌群および黄色ブドウ球菌は確認されなかった。また、一般生菌数については、確認はされたが、菌数としては少なく問題ないレベルであった。
【表1】

注:BACcT(バクート(商標)、日本細菌検査株式会社製)にて検査を行った。
【0033】
(実施例2)
次に、一年間で最も付着数の時期と思われる7月(夏期)において検査を行い、水洗した小ねぎ(原菜)と、これをカットしたカットねぎに付着している菌数を計測し、現物試料1g当たりの菌数を表2に示した。表2に示すように、病原菌である大腸菌群は陰性であり確認されなかった。また、一般生菌数については、実施例1(冬期)よりも10倍程度多かったが、加工用として問題ないレベルであった。
【表2】

【0034】
(実施例3)
また、実施例2のカットねぎを用いて、3日間に渡り10℃で培養試験を行い微生物の消長について調べた結果を、表3に示した。大腸菌群は、0〜3日後までは陰性であり確認されなかった。また、一般生菌数については、日数が経つに連れ増加したが、衛生上、問題とはならない菌数であることがわかった。
なお、一般性菌数には、善玉菌と悪玉菌が含まれるため、実際の悪玉菌はさらに表1〜3の数値よりも少ない。
【表3】

【0035】
以上により、本発明の加工野菜の栽培方法で栽培した小ねぎは、病原菌等(大腸菌、黄色ブドウ球菌)が付着しにくく、夏期においても少なくとも収穫後3日間くらいまでは10℃で保存すれば消毒する必要がなく、味や風味が良いままで食することができると思われる。なお、保存温度については、より好ましくは10℃以下が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、作物、特に加工用野菜に悪玉菌が付着しにくい堆肥および作物の栽培技術として広く利用することができる。また、栽培された作物は、総菜加工工場において広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトウモロコシ残幹と米糠とおからとを混合して発酵させた発酵物と、粉粒状の炭と、有用微生物群と、を主体とすることを特徴とする植物系堆肥。
【請求項2】
前記発酵物の原料割合は、トウモロコシ残幹が35容量%以上45容量%以下、米糠が25容量%以上35容量%以下、おからが25容量%以上35容量%以下である請求項1記載の植物系堆肥。
【請求項3】
前記有用微生物群には、乳酸菌と、枯草菌または納豆菌と、酵母菌と、が含まれている請求項1または2記載の植物系堆肥。
【請求項4】
少なくとも収穫後から圃場に播種する前または苗を移植する前に、請求項1から3のいずれかの項に記載の植物系堆肥を、前記圃場に施用することを特徴とする作物の栽培方法。
【請求項5】
作物の栽培期間中に、磁気処理水を前記作物全体に噴霧して灌水することを特徴とする請求項4記載の作物の栽培方法。
【請求項6】
請求項5記載の栽培方法により栽培されたことを特徴とする作物。

【公開番号】特開2007−169096(P2007−169096A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366806(P2005−366806)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(505470351)
【Fターム(参考)】