説明

植物育成用ミネラル材及びそれを配合した土壌改良材

【課題】 農作物の栽培に於いて化成肥料や有機質肥料を過剰に与えずに、根や葉が健全に生育し、収穫時の葉の色が濃い緑色を保持し、栽培時の病気に対する抵抗力を高め、また土壌が痩せず、収穫物の硝酸態窒素の含有量を減少させること。
【解決手段】 カルシウムとマグネシウムとの水酸化物に、原子状態の鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを、カルシウム:マグネシウム:鉄:マンガン:銅:亜鉛:ホウ素:モリブデン=38:5:5:3:0.2:2:1:0.01重量部の割合となるように包含させて複合水酸化物の粒体に形成し、これを植物育成用ミネラル材とし、この植物育成用ミネラル材を珪藻土60、活性白土20、ゼオライト10、カルシウムベントナイト5重量部を混合した中に5重量部を配合して土壌改良材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を健全に生育させ、病気に対する抵抗力を高め得る植物育成用ミネラル材及びそれを配合した土壌改良材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より農作物の生育には、窒素、リン酸、カリの3大栄養素が必要であることが知られている。そしてこれらの栄養素を農作物の種類に応じてバランス良く適切に付与すれば良い結果が得られる筈である。しかし生産者は、需要者に好まれる見栄えの良い農作物を短期間に収穫しようとして、これらの成分を農作物の生育に好適な比率に配合し化学合成された、所謂、化成肥料を過剰に与えがちとなって数々の弊害が生じてきている。
【0003】
通常、この化成肥料の中の窒素分は、アンモニア態窒素及び硝酸態窒素として畑などの土壌中に施用され、その内、直ちには植物によって吸収されないアンモニア態窒素は、いずれ徐々に土壌微生物である硝化菌によって硝酸態窒素に変換され、農作物に吸収されるにいたり、太陽光と二酸化炭素とによる光合成と相俟って農作物の栄養源となる。
【0004】
硝酸態窒素は、農作物の中で特に葉野菜のほうれん草や小松菜などの生育には欠かせないものである。しかし生産者はその生産性の向上から短期間に大きく生育させて収穫しようとし、更に収穫時に需要者の好む緑の濃い収穫物を得るため、葉野菜については、その出荷2週間程前に硝酸態窒素を多く含む化成肥料を追肥しがちとなっている。
【0005】
これによって葉野菜等は、硝酸態窒素を多量に吸収して緑色の濃いそれとなり、その点では申し分のないものとなる。しかし一方で、天候等の条件にもよるが、吸収された硝酸態窒素はかなりの量が葉野菜等の中に未消化のままに残留し、葉野菜等の農産物は多量の硝酸態窒素を蓄積させたままの状態で市場に出回る問題がある。
【0006】
硝酸態窒素は、葉野菜等の植物にとっては極めて重要な要素であり、蛋白質の合成に欠かせないものであるが、人間にとっては極めて有害な物質であり、これが残留する野菜を摂取することは、健康を維持するどころか、却って健康を害する虞の生じるものとなる。
【0007】
即ち、このような硝酸態窒素は、人体内では、亜硝酸態窒素に還元され、この亜硝酸態窒素が血漿中のヘモグロビンと反応し、これを酸素や二酸化炭素と結合しないメトヘモグロビンに変換させることから、硝酸態窒素を取り込んだ人に酸素欠乏症(メトヘモグロビン血症)を引き起こすとされている。特に乳幼児の胃腸内は酸度が弱いため、微生物による硝酸態窒素還元が生じやすく、メトヘモグロビン血症にかかり易いとされている。
【0008】
特許文献1は、多孔性の有機質繊維からなるサトウキビの内部柔組織を土壌改良材として用いるものであり、保水性の向上を目的とする。
特許文献2は、フザリウム・エクイセティ(Fusarium equiseti)SC−48株を有効成分として含有する土壌改良材であり、土壌伝染性植物病害を軽減しつつ効率的に植物を栽培することを目的とする。
また特許文献3は、縦並び状に配列された繊維集合体の該繊維相互が部分的に接着されてなる密度0.02g/cc以上の繊維集合体であって、該繊維集合体の表面が凹凸条を有する土壌改良材であり、良好な透水性と土締まり防止性、適度なクッション性を有する上に、優れた通気性と水分保持性とを確保することを目的とする。
【0009】
以上のように、特許文献1〜3は、いずれも前記のような野菜中に残留する硝酸態窒素の低減に寄与しようとするものではない。土壌改良材には、以上の外に非常に多くの提案があるが、いずれも同様に野菜中の硝酸態窒素の低減に資するものではない。また植物育成用ミネラル材については、先行する技術を見いだせなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2005−97392号公報
【特許文献2】特開2004−18622号公報
【特許文献3】特開2002−188087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、これらを使用することにより、農作物の栽培に於いて、特に収穫時期に近接して硝酸態窒素を含む化成肥料の追肥を行うことなく、収穫時の産物に需要者に好まれる濃い緑色を保持し、同時に硝酸態窒素の無用に多い残留を回避して安全性を確保し、更に栽培時の病気に対する抵抗力を高め、土壌が痩せてくることのない植物育成用ミネラル材及びそれを配合した土壌改良材の提供を解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1は、カルシウムとマグネシウムとの水酸化物に、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを原子状態で包含させ、複合水酸化物の粒体に形成した植物育成用ミネラル材である。
【0013】
本発明の2は、本発明の1の植物育成用ミネラル材に於いて、前記複合水酸化物に含む各ミネラルの配合比を、カルシウム:マグネシウム:鉄:マンガン:銅:亜鉛:ホウ素:モリブデン=35〜40重量部:4〜6重量部:4〜6重量部:2〜4重量部:0.1〜0.3重量部:1.5〜2.5重量部:0.7〜1.2重量部:0.007〜0.014重量部としたものである。
【0014】
本発明の3は、土壌改良用配合材の中に本発明の1又は本発明の2のいずれかの植物育成用ミネラル材を配合して構成した土壌改良材である。
【0015】
本発明の4は、本発明の3の土壌改良材において、前記土壌改良用配合材として、珪藻土55〜65重量部と活性白土18〜22重量部とゼオライト8〜12重量部とカルシウムベントナイト4〜6重量部との混合物を採用し、該混合物に配合する前記請求項1又は2のいずれかの植物育成用ミネラル材を1〜10重量部として構成した土壌改良材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1の植物育成用ミネラル材によれば、その適量を植物の培養土や水耕栽培の水等に添加して用いることによって、ミネラル分が植物の育成に好適な濃度で徐々に溶け出し植物が適量ずつ吸収されることとなる。また植物育成用ミネラル材が植物に適量ずつ吸収されることによってその植物の根や葉が健全に生育し、この過程で別に吸収した硝酸態窒素の代謝が良好に行われ、植物は濃い緑色を呈した健全な姿となって見栄えも良くなり、同時に病気に対する抵抗力が高まり、土壌は土焼けや土痩せを起こすことがなくなる。その結果、農作物はその味覚が向上し、かつ収穫量が増大するだけでなく、前述のように、対象の植物が活性化されることによって、当該植物に既に吸収されている硝酸態窒素が有効に消化され、硝酸態窒素の残留量が減少する。
【0017】
またこのミネラル材を用いて栽培し収穫した農作物は、云うまでもなく、それらのミネラルは人体にも有用なものであり、当然に安全でもある。
【0018】
従ってこの植物育成用ミネラル材の適量を植物の培土に添加することによって、その育成時に肥料分を必要以上に与える必要がなくなり、化成肥料を多量に用いた時の土壌の酸性化や土痩せを防ぐことができる。また特に葉野菜の出荷前に、その色を鮮やかな濃い緑色にする趣旨で行われることの多い硝酸態窒素を多く含む化成肥料の追肥の必要がなくなり、その追肥に起因する野菜中の硝酸態窒素の残留の問題を回避し、硝酸態窒素による人体への悪影響の危惧もなくすことができる。
【0019】
本発明2の植物育成用ミネラル材によれば、ミネラル分をこのような配合割合にすることで、植物の培養土や水耕栽培用の水等に添加して用いた際に、各ミネラル分は植物の育成に適した割合と濃度とになって溶け出しバランス良く吸収されるようになる。そしてこれによって、前述のように、植物の根や葉が健全に生育し、吸収してある硝酸態窒素の代謝が良好に行われ、関係部位が濃い緑色を呈するようになり、かつ病気に対する抵抗力を高め、他方、土壌については土焼けや土痩せを起こすこともない。それ故、農作物はその収穫量が増大するようになる。またこのように植物が活性化することによって、前記のように、既に吸収されている硝酸態窒素が有効に消化され、その結果として硝酸態窒素の含有量が減少したものになる。
【0020】
本発明3の土壌改良材によれば、従来からの土壌改良用配合材の効果に加えて本発明の1又は2の植物育成用ミネラル材の効果が上乗せされる。即ち、これを土壌に施用すると、土壌改良用配合材により、土壌に対する多孔性、通気性、保水性、排水性、保肥性等の改良効果が生じ得ると共に、これに配合された植物育成用ミネラル材のミネラル分がバランス良く適度な濃度で徐々に水に溶け出し、植物は長期間に渡ってこれを吸収できるようになる。それ故、本発明の1又は2の植物育成用ミネラル材の効果を全て備えた理想的な土壌改良材となる。
【0021】
本発明4の土壌改良材によれば、土壌改良用配合材の配合割合をより適切に設定したので、多孔性、通気性、保水性、排水性、保肥性及び適度の粘着性の観点からより適切な状態となり、前記植物育成用ミネラル材の効果と相まって理想的な土壌改良材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の植物育成用ミネラル材は、カルシウムとマグネシウムとの水酸化物に、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを原子状態で包含させ、複合水酸化物の粒体に形成したものである。ここで重要なことは各ミネラル分は原子状態で分散溶解し包含したことで、これによって各ミネラル分は水に徐放されるようになり植物の育成や土壌微生物に効果的に働くようになる。
【0023】
また前記複合水酸化物に含む各ミネラルの配合比は、カルシウム:マグネシウム:鉄:マンガン:銅:亜鉛:ホウ素:モリブデン=35〜40重量部:4〜6重量部:4〜6重量部:2〜4重量部:0.1〜0.3重量部:1.5〜2.5重量部:0.7〜1.2重量部:0.007〜0.014重量部とするのが好ましい。更にその配合比を、カルシウム:マグネシウム:鉄:マンガン:銅:亜鉛:ホウ素:モリブデン=38重量部:5重量部:5重量部:3重量部:0.2重量部:2重量部:1重量部:0.01重量部とするのがより好ましい。
【0024】
このようにミネラル分としては植物育成に比較的多量に必要とされるカルシウム、マグネシウム及び鉄を主体に配合し、これに比較的微量に必要とされるマンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを配合したもので、この複合水酸化物が水に徐放される際に各ミネラル分が最適な濃度となってバランスよく植物に吸収されるようになる。
【0025】
またこれら個々のミネラル分の植物の生育に対する働きは次のようなものである。
カルシウムは植物の細胞と細胞を強固に結びつける働きや根の正常な発育に欠かせないものであって、酸性土壌を中和させる働きがある。
マグネシウムは植物が光合成をする際に必要となる葉緑素の重要な構成成分であり、リン酸の働きを助ける。
【0026】
鉄は光合成をする際に必要となる葉緑素ができる過程で欠かせないものである。
マンガンは呼吸酵素や蛋白質合成酵素の構成要素となり、葉緑素やビタミンの合成に必要とされる。
銅は葉緑素を作る過程で必要とされる。
亜鉛は植物成長ホルモンの構成に密接に関係し新しい葉を作る作用がある。
ホウ素は新芽や根の成長を促進する働きがある。
モリブデンは窒素固定菌が活動するための触媒として必要とされ、またビタミンの合成にも係わるものである。
【0027】
この植物育成用ミネラル材は次のようにして形成する。
即ち、カルシウムとマグネシウムの水酸化物を最適比率に配合して水に分散させた中に、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを原子状態で前述のような最適比率に配合して分散溶解させ、これらのミネラルを包含した複合水酸化物とした上で、その水分を蒸発させて粒体に形成する。また粒体のサイズは、特定のサイズに限定する理由はないが、通常、粒径を1〜3mm程度に形成するのが適当である。
【0028】
またこの植物育成用ミネラル材は、これを直接に植物育成用の培土や水耕栽培用の水の中に添加して用いることもできるが、堆肥中に配合し、或いは土壌改良材中に配合して用いることも可能である。植物育成用ミネラル材は、以上の、例えば、植物育成用の培土や水耕栽培用の水に直接添加する場合は、土壌100重量部に対して1〜10重量部程度の割合で添加し、水耕栽培用の水100重量部に対して0.1〜0.5重量部程度に添加して用いるのが適当であるが、堆肥や土壌改良材中に配合する場合は、堆肥又は土壌改良用配合材中にその1〜10%程度の割合で配合して、植物育成用ミネラル材配合の土壌改良材又は堆肥として用いるのが好ましい。
【0029】
前記土壌改良材として用いる場合は、詳細には、各種の土壌改良用配合材である黒土、赤土、堆肥、腐葉土、珪藻土、活性白土、ゼオライト、カルシウムベントナイト等の1種又は複数種を混合した中に、この植物育成用ミネラル材を重量比で1〜10%程度に配合した土壌改良材とすることができる。より具体的には、例えば、
珪藻土:活性白土:ゼオライト:カルシウムベントナイト=55〜65:18〜22:8〜12:4〜6重量部に混合した中に前記植物育成用ミネラル材を1〜10重量部配合して品質良好な土壌改良材を構成することができる。珪藻土:活性白土:ゼオライト:カルシウムベントナイト=60:20:10:5重量部に混合した中に、前記植物育成用ミネラル材を5重量部配合するとすれば、より一層品質良好な土壌改良材を構成することができる。
【0030】
以上の土壌改良材は、これを植物育成用の主たる土(培土)に5〜10%程度に添加して用いることで、植物の根や葉を健全に生育させ、該当する部位の色を鮮やかな緑色を呈するものとなし得、かつ病気に対する抵抗力を高め、他方、土壌の土焼けや土痩せを生じないようにすることができる。またこの土壌改良材を用いて育成させた農作物は、その味覚が向上する一方で、収穫量が増大するようになり、更に農作物である植物自体が活性化されるため、既に吸収されている硝酸態窒素が有効に消費されその含有量を減少させることにもなる。
【実施例1】
【0031】
20℃の水10リットルに、水酸化カルシウム27g(Caとして14.6g)と水酸化マグネシウム5.045g(Mgとして2.10g)とを分散溶解させた中に、鉄2.10g、マンガン1.26g、銅0.084g、亜鉛0.84g、ホウ素0.42g及びモリブデン0.004gを加えて混合し、これらを水酸化カルシウム27gと水酸化マグネシウム中に分散溶解させた後、急速減圧法により急速に水分を蒸発させ、これらを分散させた水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムの結晶を得た。更にこれらの結晶を粒径2mm程度に揃えて植物育成用ミネラル材とした。
【実施例2】
【0032】
土壌改良用配合材として珪藻土600重量部、活性白土200重量部、ゼオライト100重量部、カルシウムベントナイト50重量部の割合で混合した中に、実施例1の植物育成用ミネラル材を50重量部添加混合して土壌改良材とした。
【実施例3】
【0033】
実施例2の土壌改良材を用い、これを育苗土に1%添加(実施例3−a)、5%添加(実施例3−b)してそれぞれを培養土とし、それぞれの培養土を、縦、横、深さ各10cmの角形プラスチック製ポットに充填して各培養土毎に10個づつ作成し、各々に発芽7日後の小松菜の苗を2本づつ植え付けてそれらの生育の度合いを観察した。
【実施例4】
【0034】
実施例2の土壌改良材を用いて、これを床土に5%添加(実施例4−a)、10%添加(実施例4−b)してそれぞれを培養土とし、それぞれの培養土を縦、横、深さ各10cmの角形プラスチック製ポットに充填して各培養土毎に10個づつ作成し、各々に発芽10日後のブロッコリーの苗を2本づつ植え付けてそれらの生育の度合いを観察した。
【実施例5】
【0035】
実施例2の土壌改良材を用いて、耕土に5%添加(実施例5−a)、10%添加(実施例5−b)してそれぞれを培養土とし、それぞれの培養土を縦、横、深さ各10cmの角形プラスチック製ポットに充填して各培養土毎に10個づつ作成し、各々に発芽10日後のグリーンレタスの苗を2本づつ植え付けてそれらの生育の度合いを観察した。
【0036】
<比較例1>
土壌改良材を添加しない点を除いては実施例3と同様に処理して比較例1としてその生育の度合いを観察した。
【0037】
<比較例2>
土壌改良材を添加しない点を除いては実施例4と同様に処理して比較例2としてその生育の度合いを観察した。
【0038】
<比較例3>
土壌改良材を添加しない点を除いては実施例5と同様に処理して比較例3としてその生育の度合いを観察した。
【0039】
<生育度合いの試験項目及び試験方法>
(1) 植えつけた苗の地上部の生育状態を、植え付け10日後に、茎の太さ、葉の色、葉の横への広がり、徒長の有無を視覚によって判定した。
(2) 植え付けた苗の地下部の生育状態を、植え付け10日後に、ポットの一つをほぐして、根の太さ、長さ、横への広がりを視覚によって判定した。
(3) 上記(2)の処理をしたポットの苗1本の地上部の重量を測定した。
(4) 前記(2)の処理をしたポットの苗の地下部に付着している培養土を落とし、苗1本の地下部の根の重量を測定した。
(5) 前記(2)の処理をしたポットの苗の地上部に含まれるクロロフィル量をクロロフィルテスターで測定した。
(6) 前記(2)の処理をしたポットの苗の地上部に含まれる糖度、Brix(%)を測定した。
(7) 前記(2)の処理をしたポットの苗の地上部に含まれる硝酸態窒素(ppm)をRQフレックスで測定した。
【0040】
<試験の結果>
実施例3と比較例1、実施例4と比較例2、実施例5と比較例3のそれぞれの対比における苗の生育度合いの試験結果を次の表1、表2、表3にまとめた。
【0041】
【表1】












【0042】
【表2】























【0043】
【表3】

【0044】
<実施例の試験結果からの考察>
(1) 実施例3と比較例1、実施例4と比較例2、実施例5と比較例3のそれぞれの対比に於ける苗の生育度合いの試験結果は、いずれの試験項目に於いても、実施例1で得た植物育成用ミネラル材を使用した実施例2の土壌改良材を主たる土に添加して植え付けた、実施例3、4、5の苗の方が良好な結果となっている。以下に各試験項目の傾向を示す。
(2) 苗の地上部の生育状態では、土壌改良材を添加した実施例のものは、いずれも葉の緑が濃く、茎もしっかりしていて葉の横への広がりも見られた。一方、土壌改良材を添加しなかった比較例ではいずれも葉の緑が薄く茎も貧弱で少し徒長傾向もみられた。
(3) 苗の地下部の生育状態では、土壌改良材を添加した実施例のものは、いずれもしっかりとした太くて長い根が広がってこれに数多くの毛根が見られた。一方土壌改良材を添加しなかった比較例ではいずれも貧弱な短い根で毛根も少なかった。
【0045】
(4) 苗1本の地上部の重量では、土壌改良材を添加した実施例ではいずれも成長が速く、添加しなかった比較例よりも土壌改良材1%の添加で約4.5%、5%添加で約12%、10%添加で約18%の重量の増加が見られた。
(5) 苗1本の地下部の重量では、土壌改良材を添加した実施例ではいずれも成長が速く、添加しなかった比較例よりも土壌改良材の1%添加で約5.2%、5%添加で約13〜28%、10%添加で約52〜59%の重量の増加が見られた。
【0046】
(6) クロロフィル量では、土壌改良材を添加した実施例ではいずれも無添加の比較例よりもテスター値が高くなっていて、土壌改良材の1%添加で約9.4%、5%添加で約10〜14%、10%添加で約16〜19%程比較例よりテスター値が高くなっていた。
(7) 糖度では、土壌改良材を添加した実施例ではいずれも無添加の比較例よりも値が高くなっていて、土壌改良材の1%添加で約3.7%、5%添加で約11〜12%、10%添加で約16〜27%程比較例より高くなっていた。
(8) 硝酸態窒素では、土壌改良材を添加した実施例ではいずれも無添加の比較例よりも値が低下しており、土壌改良材の1%添加で約54%、5%添加で約55〜60%、10%添加で約60〜61%程比較例より少なくなっていた。
【0047】
<考察のまとめ>
実施例の試験結果から本発明の植物育成用ミネラル材を配合した土壌改良材は、これを植物育成用の主たる土(培土)に重量比1〜10重量部に配合して用いることで、植物の育成に顕著な効果が発揮されると共に、地上部に含まれる硝酸態窒素の含有量を減少させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムとマグネシウムとの水酸化物に、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素及びモリブデンを原子状態で包含させ、複合水酸化物の粒体に形成した植物育成用ミネラル材。
【請求項2】
前記複合水酸化物に含む各ミネラルの配合比を、カルシウム:マグネシウム:鉄:マンガン:銅:亜鉛:ホウ素:モリブデン=35〜40重量部:4〜6重量部:4〜6重量部:2〜4重量部:0.1〜0.3重量部:1.5〜2.5重量部:0.7〜1.2重量部:0.007〜0.014重量部とした請求項1の植物育成用ミネラル材。
【請求項3】
土壌改良用配合材の中に請求項1又は2のいずれかの植物育成用ミネラル材を配合して構成した土壌改良材。
【請求項4】
前記土壌改良用配合材として、珪藻土55〜65重量部と活性白土18〜22重量部とゼオライト8〜12重量部とカルシウムベントナイト4〜6重量部との混合物を採用し、該混合物に配合する前記請求項1又は2のいずれかの植物育成用ミネラル材を1〜10重量部として構成した請求項3の土壌改良材。

【公開番号】特開2006−306683(P2006−306683A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134008(P2005−134008)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(591073898)常陸化工株式会社 (10)
【Fターム(参考)】