説明

植生マットの製造方法および製造装置ならびに植生マット

【課題】 全国何処ででも製造が可能で小回りのきく新規な植生マットの製造方法および製造装置ならびに植生マットを提供すること。
【解決手段】 複数のセル2を有するセルトレイ3の前記セル2内に、基盤材4と植物種子5および/または栄養繁殖体5aとを収容する工程と、前記セルトレイ3の上面uにネット6またはシート22を敷設する工程と、植物を生育させて、生育した植物Pと前記ネット6または前記シート22とを含む植生マット1を形成する工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植生マットの製造方法および製造装置ならびに植生マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生芝を用いた植生マットの製造方法として、下記特許文献1に示すように、整地された圃場へほぐした芝を撒き、その上へネットを展開し、ネットの存在下に芝根がネットに絡むまで芝を育成してから、ネットの下面側で根切りをし、ネットに芝を担持させて植生マットとしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2783756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記製造方法では、広大な敷地面積の圃場にて自然条件下で芝を生育させる必要があり、芝の生育に適した地域で且つ広い場所でなければ新規に製造拠点を設けることができなかった。また、天候等によって生育や出荷可能期が左右されてしまったり、生産地から消費者までの輸送距離が伸びてしまい輸送コスト増大にも繋がっていた。更には、製造できる植生マットの植物種類も少なく、少量生産などの融通性にも欠けていた。
【0005】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、全国何処ででも製造が可能で小回りのきく新規な植生マットの製造方法および製造装置ならびに植生マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の植生マットの製造方法は、複数のセルを有するセルトレイの前記セル内に、基盤材と植物種子および/または栄養繁殖体とを収容する工程と、前記セルトレイの上面にネットまたはシートを敷設する工程と、植物を生育させて、生育した植物と前記ネットまたは前記シートとを含む植生マットを形成する工程とを含むことを特徴としている(請求項1)。
【0007】
この発明における栄養繁殖体とは、球根、根、茎、葉など栄養繁殖により植物を生育させることが可能なものをいう。また、この発明に適用可能な植物としては、特に限定は無いものの、ハーブや芝(野芝、ティフブレアなど)、芝桜、セダム、イワダレソウ、ダイカンドラ等のグランドカバープランツを主として挙げることができる。匍匐性植物など栄養繁殖する植物の場合、複数のセル全てに播種せずに部分的に植物を点在させるのが好ましい。また、この発明で用いるシートとしては、不織布、織布などその形状が維持できる適宜の強度を備え、かつ、通気、通水、通芽等の植生対象植物の生育条件を満たすものであればよく、腐食性材料のものでも可能であり、更には部分的に植生対象植物の生育条件を満たすものの大部分は植物の通芽等を防止する防草シートを用いることも可能である。また、この発明で用いるネットとしては、生育する植物に応じて適宜の目合いを有し、その形状が維持できるものであればよい。
【0008】
また、この発明は別の観点から、複数のセルを有するセルトレイの前記セル内に、基盤材と植物種子および/または栄養繁殖体とを収容する手段と、前記セルトレイの上面からネットまたはシートを敷設する手段と、前記敷設後のセルトレイを生産場に搬入する手段と、前記生産場で植物を生育させて、生育した植物と前記ネットまたは前記シートとを含む植生マットを生産する手段と、前記植生マットを前記生産場から搬出する手段とを備えたことを特徴とする植生マットの製造装置を提供する(請求項2)。
【0009】
前記生産場は、屋内に設けるのが好ましく、敷設後のセルトレイを生産場に搬入する手段、植生マットを生産場から搬出する手段としてはローラーやコンベアあるいは台車等を挙げることができ、そのローラーやコンベアあるいは台車等を利用して生育段階に応じてセルトレイを移動させていくように構成するのが好ましい。なお、人力によりセルトレイを移動させてもよい。
【0010】
また、この発明では、請求項1に記載された植生マットの製造方法により製造した植生マットを提供する(請求項3)。
【0011】
また、この発明はさらに別の観点から、ネットまたはシートと、前記ネットまたは前記シートの下側に位置する下方程横断面面積が小となる形状の基盤材と、その基盤材内部から前記ネットまたは前記シートの上方にわたって生育した植物とよりなる植生マットを提供する(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、以下の効果を奏する。
(1)地域に係わり無く比較的小面積、かつローコストで植生マットを製造することができる。
(2)セル毎に違う種子を播種することで、複数の植物を組み合わせた植生マットも製造することができる。その際、植物に応じて基盤材の内容もセル毎に設定可能である。
(3)セルトレイの使用により、不用意に根同士が絡まることがない。
(4)季節や天候に関係なく一定品質の植生マットを製造・出荷することができる。
(5)植物を点在させるパターンの場合、植物の無い部分のセルに基盤材を充填させなければ、植物を生育させない箇所の裏面が生育基盤で汚れない。
(6)セルトレイを外すだけでマット化することができ、従来のように、カット作業が不要である。
(7)従来製品のように根本をカットせずにセルトレイを外すだけでマット化するので、従来製品よりも根を長くでき、根を傷付けることも無いため、植物の生長、活着率が良く植物にストレスを与えない。
(8)根の周りにのみ必要最小限の植生基盤が存在しているだけなので、マット全体として軽量化できる。
(9)セルトレイを付けたままの出荷も可能であり、施工現場でセルトレイを外して施工することも可能である。
(10)従来の全面基盤付き植生マットよりも切断加工が容易であり、現場形状に併せてマットを切断できる。
(11)自然界では種からの生育が困難な植物(野芝など)であっても、適切な生育環境下で生産できるため容易に製品化可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係る植生マットの製造装置の一実施形態を示す構成説明図である。
【図2】この発明に係る植生マットの製造方法の第1の実施形態における製造手順を示す構成説明図である。
【図3】上記第1の実施形態により製造した植生マットを示す図である。
【図4】上記第1の実施形態で用いるネットを示す一部切欠き斜視図である。
【図5】この発明に係る植生マットの製造方法の第2の実施形態で用いる絡み助長部材付きネットを示す斜視図である。
【図6】この発明に係る植生マットの製造方法の第3の実施形態で用いる防草シートを示す一部切欠き斜視図である。
【図7】この発明に係る植生マットの製造方法の第4の実施形態における製造手順を示す構成説明図である。
【図8】この発明に係る植生マットの製造方法の第5の実施形態における異なる製造手順を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について説明する。なお、この発明はそれによって限定されるものではない。図1〜図4はこの発明の第1の実施形態を示す。図1〜図4において、植生マット1の製造装置Dは、碁盤の目状に配置された複数(多数が好ましい)のセル(小室)2を有する平面視矩形のセルトレイ3の前記セル2内に、土、ピートモス、バーク堆肥、吸水材、保水材等の植生用の基盤材4と植物種子5および/または栄養繁殖体5aとを収容する手段と、前記セルトレイ3の上面uからネット6を敷設する手段と、前記敷設後のセルトレイ3を生産場(生育ゾーン)7に搬入する手段と、前記生産場7で植物を生育させて、生育した植物Pと前記ネット6を含む植生マット1を生産する手段と、前記植生マット1を前記生産場7から搬出する手段と、前記植生マット1を前記セルトレイ3から分離する手段とを主として備えている。セルトレイ3は軽量であり、例えば合成樹脂製である。前記セル2は、有底略漏斗状で、その横断面は例えば矩形(円形、楕円形等でもよい)であり、下部にセル内部に通じるコ字型の切込み部2aを有しており、セル2の上方開口aを形成する平面視矩形の区画部mが碁盤の目状に配置されている。
【0015】
前記生産場7は、屋内にあり、前記ローラーやコンベアあるいは台車等を利用して生育段階に応じてセルトレイ3を移動させていくように構成されている。生産場7には、後述する発芽室8と植生マット1の生産室9が配置されている。この実施形態では、前記搬入・搬出手段として移動可能な保持台10を用いており、保持台10に載置されたセルトレイ3のセル2内に基盤材4を収容するための基盤材ホッパー11と、同じく当該セル2内に植物種子5および/または栄養繁殖体5aを収容するための播種装置12が設けられており、基盤材ホッパー11と播種装置12とでセルトレイ3のセル2内に基盤材4と植物種子5および/または栄養繁殖体5aとを収容する手段が構成されており、その下流側には、基盤材4と植物種子5および/または栄養繁殖体5aが収容されたセル2を有するセルトレイ3の上面uからネット6を敷設する手段が設けられている。図2(C)はネット6を敷設した状態を示している。なお、人力でネット6を敷設してもよい。前記発芽室8は、ネット6が敷設されたセルトレイ3を収容する部屋で、温度・湿度、通水(水遣り)、通気等の発芽に必要な条件が管理されている構成のものであればよく、水耕栽培に使用するような高価な大型のものではなく、例えばビニールで覆われた極めて簡易な小型の箱体で構成してもよい。発芽室8の下流側には植生マット1の生産室9が配置されている。前記生産室9は、多数のセルトレイ3のセル2を一度に浸して水遣りするための照明9a付きのプール9bを有している。前記生産室9は、例えばビニールハウスの中に設けられており、プール9bは発芽室8から移動してきたネット6付きのセルトレイ3が載置される床を有し、セル2の下部に形成された前記切込み部2aを介してセル2内部に通水可能に構成されている。なお、水遣り時にセルトレイ3を支える装置を具備したり、さらにセル2への水遣りのために照明側にミスト等の水遣り器具を追加してもよい。そして、前記発芽室8と前記生産室9とで、生産場7で植物を生育させて、生育した植物Pとネット6を含む植生マット1を生産する手段が構成される。図2(D)は前記生産室9で生産されたセルトレイ3付きの植生マット1を示している。そして、植物Pの生育後、セルトレイ3付きの植生マット1は前記生産室9から保持台10に載置された状態で分離作業を行う場所に移動され、植生マット1はセルトレイ3から分離される。この分離作業は機械で行ってもよいし、人力で行ってもよい。図2(E)はセルトレイ3から分離された植生マット1を示す。なお、図1における3’は、空のセルトレイであり、1’は、ロール巻きにして出荷される植生マットである。また、この実施形態では、基盤材4や植物種子5および/または栄養繁殖体5aのセル2内への収容作業を行う場所と、植生マット1をセルトレイ3から分離する作業を行う場所は固定されており、両場所の途中に前記生産場(生育ゾーン)7が設けられている。なお、セルトレイ3と植生マット1とを分離せずにそのままトレイ状やロール巻き状にして出荷してもよく、この場合は施工現場等で適宜分離する。
【0016】
以下、植生マット1の製造方法について説明する。図2(A)に示すように、複数のセル2を有する単一のセルトレイ3と図4に示す一枚のネット6を用意する。ネット6の大きさはセルトレイ3の上面uを覆うためセルトレイ3の上面uの大きさと略同じである。また、生育する植物に応じてその都度適宜の目合nを有するネット6を用いている。そして、植生マット1の製造方法は、図2(B)に示すように、複数(多数が好ましい)のセル2を有するセルトレイ3の前記セル2内に、図2(C)に示すように、基盤材4と植物種子5または栄養繁殖体5aとを収容するとともに、図2(C)に示すように、前記セルトレイ3の上面uにネット6を敷設し、前記生産場(生育ゾーン)7で植物を生育させて、図2(D)に示すように、生育した植物Pと前記ネット6とを含み、ネット6と植物Pの根本(根茎)とが十分絡んでいる植生マット1を形成し、図2(E)に示すように、前記植生マット1を前記セルトレイ3から分離することを主として含んでいる。なお、P’は植物Pの根である。
【0017】
そして、図2(E)に示すように、生産された植生マット1は、ネット6と、前記ネット6の下側に位置する下方程横断面面積が小となる形状(例えば、角錐台形状、円錐台形状など)の基盤材4と、その基盤材4内部から前記ネット6の上方にわたって生育した植物Pとから構成されている。そして、従来製品のように根本をカットせずにセルトレイを外すだけでマット化するので、従来製品よりも根を長くでき、根を傷付けることも無いため、植物の生長、活着率が良く植物にストレスを与えない。図2(E)から、上記形状の基盤材4に根P’がしっかりと付いた状態の植生マット1であることが分かる。そして、施工現地では、これらすり鉢の形になった基盤材4の部分を例えば崩すことにより例えば法面に施工される。この場合、図2(E)に示す植生マット1の大きさを1単位とし、施工面積に応じて必要数だけこれを敷きつめることもできるし、必要に応じて植生マット1におけるセル2の区画部mに対応する部分M〔図2(E)参照〕を現場形状に併せて切断することができるとともに、この切断加工が容易であるという利点を有する。
【0018】
なお、セル2内に、基盤材4と植物種子5、または基盤材4と栄養繁殖体5aとを収容する工程と、前記セルトレイ3の上面uにネット6を敷設する工程は前後を問わない。また、植物種子5または栄養繁殖体5aの基盤材4内部の位置は、これらが生育した後の植物Pの根本とネット6が十分絡むよう、または、ネット6と植物Pの茎が十分絡むよう、ネット6にできるだけ近い方が好ましく、例えばセル2内に基盤材4を収容した後、基盤材4の上面をかき分けて植物種子5または栄養繁殖体5aを基盤材4内に収容し、植物種子5または栄養繁殖体5aに覆土をかける処理を施せばよい。また、水遣り作業は前記発芽室8や前記生産室9で施されるが、その水遣り時にセル2内部の基盤材4、植物種子5または栄養繁殖体5aが浮いてしまい、最悪ネット6の目合nから浮いた基盤材4、植物種子5または栄養繁殖体5aが流出する事態を回避するため、それらの流出を阻止するととともに、通芽可能な目合nを有するネット6を用いるのが好ましい。
【0019】
図5は、植物Pとネット6の絡みが少ない場合に好適なこの発明の第2の実施形態を示す。なお、図5において、図1〜図4に示した符号と同一のものは同一または相当物である。図5において、20は、植物Pとネット6の絡みが少ない場合に植物Pとネット6の絡みを多くするためネット6下部に配置した絡み助長部材である。その助長部材20は、例えば不織布や綿等よりなり、かつ、通気、通水、通芽等の生育条件を満たすマットである。助長部材20は、ネット6と同じ大きさで、適宜の連結手段を用いてネット6下部に配置されているので、覆土の代わりになり植物の生育を助長するとともに、助長部材20に植物Pの例えば根本(根茎)を十分絡ませることができる。また、根絡み以外に、上述した水遣り時にセル2内部の基盤材4、植物種子5または栄養繁殖体5aが浮き上がりネット6から流出していくのを防止する機能を助長部材20は有する。また、助長部材20として、マット以外に、水遣り時の前記浮き上がり防止可能で、通芽可能な目合を有するネットを用いることもできる。また、助長部材20を設けたことにより、以下の利点を有する。すなわち、播種装置12を用いた機械撒きを行うにあたり、図1に示す場合では、基盤材4をセル2内に収容した後、基盤材4上に例えば植物種子5が播かれるので、植物種子5上に土や基盤材4をかけない場合には、植物種子5が露出した状態にあり、そのため植生マット1を生産するときに水遣りしても不十分に発芽したり、光が必要以上に当たり植物の生育を阻害するおそれがあるが、助長部材20を設けたことにより、発芽に必要な水分を保ことができるとともに、光を遮断することができ、結果として、発芽が良好で生育の良い植物を得ることができる。
【0020】
図6は、図3に示すネット6の代わりにセルトレイ3の上面5に部分的に穴21を有する防草シート22を敷設するようにしたこの発明の第3の実施形態を示す。なお、図6において、図1〜図5に示した符号と同一のものは同一または相当物である。図6において、前記生産場(生育ゾーン)7で生育した植物Pと前記防草シート22とを含む植生マット1を、施工現地に植生したときに、植物P以外の植物の生育を防ぐために、ネット6の代わりにセルトレイ3の上面5に部分的に穴21を有する防草シート22を設けている。また、防草シート22は例えば織布よりなり、施工現地に植生したときに、現地の雑草の生育を防ぐとともに、飛来種子の侵入をも防ぐように構成されている。前記穴21は通芽可能な大きさを有するとともに、植物Pの根本(根茎)を十分絡ますことができるよう前記穴21には複数の例えば横糸23が並設されている。
【0021】
植生マット1を製造するには、まず、複数のセル2の全てに播種せずに、穴21が位置する直下のセル2のみに部分的に基盤材4と植物種子5または栄養繁殖体5aとを収容するとともに、セルトレイ3の上面5に防草シート22を敷設し、前記生産場(生育ゾーン)7で植物を生育させる。そのため、部分的に生育した植物Pを点在させることができるとともに、その植物Pと前記防草シート22とを含み、防草シート22の穴21の横糸23と植物Pの根本(根茎)とが十分絡んでいる植生マット1を形成することができ、前記植生マット1を前記セルトレイ3から分離する。このように本実施形態では、部分的に穴21を開けた防草シート22を用い、穴21の部分に該当するセル2で植物を生育させることで、選択した植物Pが既に生育し、施工現地においてはそれ以外の植物の生育を防ぐことができる植生マットの製造方法を提供することができる。
【0022】
図7は、例えば図2に示すセルトレイ3を上下に二分割し、これらでネット6を挟むように構成したこの発明の第4の実施形態を示す。なお、図7において、図1〜図6に示した符号と同一のものは同一または相当物である。図7において、セルトレイ30の下部分31は、碁盤の目状に配置された複数のセル2’と把手用フランジ32を有する平面視矩形のもので、セル2’は有底略漏斗状で、下部にセル内部に通じるコ字型の切込み部2aを有する。一方、セルトレイ30の上部分33は、碁盤の目状に配列された開口bを備えた本体34と把手用フランジ35を有する平面視矩形のもので、各開口bがセル2’に対応して位置している。この実施形態では、セル全てに播種せずに部分的に植物を点在させるように構成している。
【0023】
而して、図7(A)に示すように、複数のセル2’を有する上下に二分割可能な単一のセルトレイ30と図4に示す一枚のネット6を用意する。ネット6の大きさは下部分31の上面31aおよび上部分33の下面33aの大きさと略同じである。また、生育する植物に応じてその都度適宜の目合を有するネット6を用いている。そして、植生マット1の製造方法は、図7(B)に示すように、ネット6を下部分31と上部分33で挟むとともに、選択したセル2’内に、基盤材4と植物種子5または栄養繁殖体5aとを収容する。この際、植物種子5または栄養繁殖体5aはネット6上に位置する上部分33の内部に収容された基盤材4内に播種される。そして、前記生産場(生育ゾーン)7で植物を生育させて、図7(C)に示すように、上部分33を上方に取り外すことにより、生育した植物Pと前記ネット6とを含み、ネット6と植物Pの根P’とが絡んでいる植生マット1が形成される。この際、植物種子5または栄養繁殖体5aをネット6より上に位置させるので、ネット6と植物の根P’は十分絡まった状態になる。また、植物Pが小さいときに、すなわち、植物Pの上部が開口bよりも小さいときにネット6を介して上部分33を下部分31から取り外すのが好ましい。その方が取り外しやすくできる。その後、前記植生マット1を前記セルトレイ3から分離することにより、図7(D)に示すように、ネット6と、前記ネット6を挟んで上下に位置する下方程横断面面積が小となる形状(例えば、角錐台形状、円錐台形状など)の基盤材4と、その基盤材4内部から前記ネット6の上方にわたって生育した植物Pとから構成されている植生マット1を得ることができる。図7(D)から、下方程横断面面積が小となる形状(例えば、角錐台形状、円錐台形状など)になった基盤材4に根P’がしっかりと付いた状態の植生マット1であることが分かる。
【0024】
なお、この実施形態において、匍匐性植物など栄養繁殖する植物Pとネット6を含む植生マット1を形成する場合は以下の利点を有する。すなわち、匍匐性植物など栄養繁殖する植物Pの場合、セル全てに播種せずに部分的に植物を点在させるようにしても、植生マット施工後自然に横へ広がっていき最終的にき全面被覆されるようになり、製造コストの低減を実現することができる。
【0025】
図8は、上下二つに分割したセルトレイ30を用い、その上部分33上にネット6を敷設するように構成したこの発明の第5の実施形態を示す。なお、図8において、図1〜図7に示した符号と同一のものは同一または相当物である。図8(A)に示すように、複数のセル2’を有する上下に二分割可能なセルトレイ30と図4に示す一枚のネット6を用意する。ネット6の大きさは上部分33の上面33bの大きさと略同じである。また、生育する植物に応じてその都度適宜の目合を有するネット6を用いている。そして、植生マット1の製造方法は、図8(B)に示すように、複数のセル2’を有する下部分31の前記セル2’と上部分33の本体34内に、基盤材4と植物種子5または栄養繁殖体5aとを収容するとともに、上部分33の上面33bにネット6を敷設し、前記生産場(生育ゾーン)7で植物を生育させて、図8(C)に示すように、生育した植物Pと前記ネット6とを含み、ネット6と植物Pの根本(根茎)とが十分絡んでいる植生マット1を形成するとともに、その後、図8(C)に示すように、例えばカッター40を用いて下部分31と上部分33の境界に位置する根P’を含む基盤材4をカットする。その後、前記植生マット1を上部分33から分離することにより、図8(D)に示すような植生マット1を得る。そして、図8(D)に示すように、生産された植生マット1は、ネット6と、前記ネット6の下側に位置する下方程横断面面積が小となる形状(例えば、角錐台形状、円錐台形状など)の基盤材4と、その基盤材4内部から前記ネット6の上方にわたって生育した植物Pとから構成されている。一方、図8(C)および図8(E)に示す下部分31には、基盤材4と根P’が残っているので、図8(F)に示すように、下部分31の上面31aに上部分33を載せるとともに、上部分33に基盤材4を上面33bまで収容し、その上に新たなネット6を敷設し、この状態で前記生産場(生育ゾーン)7で植物を生育させて新たな植生マット1を生産することができる。
【0026】
なお、例えばハーブや花卉等は古から、暮らしの中で様々に利用されている植物であり、そのハーブや花卉等の楽しさを広げるため、この発明では、色や形等の違うハーブや花卉等をセル2毎に生育させることにより、消費者が希望する植物配置の植生マットを提供することができ、もって希望するお花畑等を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 植生マット
2 セル
3,30 セルトレイ
4 基盤材
5 植物種子
5a 栄養繁殖体
6 ネット
u 上面
P 生育した植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有するセルトレイの前記セル内に、基盤材と植物種子および/または栄養繁殖体とを収容する工程と、
前記セルトレイの上面にネットまたはシートを敷設する工程と、
植物を生育させて、生育した植物と前記ネットまたは前記シートとを含む植生マットを形成する工程とを含むことを特徴とする植生マットの製造方法。
【請求項2】
複数のセルを有するセルトレイの前記セル内に、基盤材と植物種子および/または栄養繁殖体とを収容する手段と、
前記セルトレイの上面からネットまたはシートを敷設する手段と、
前記敷設後のセルトレイを生産場に搬入する手段と、
前記生産場で植物を生育させて、生育した植物と前記ネットまたは前記シートとを含む植生マットを生産する手段と、
前記植生マットを前記生産場から搬出する手段とを備えたことを特徴とする植生マットの製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載された植生マットの製造方法により製造した植生マット。
【請求項4】
ネットまたはシートと、
前記ネットまたは前記シートの下側に位置する下方程横断面面積が小となる形状の基盤材と、
その基盤材内部から前記ネットまたは前記シートの上方にわたって生育した植物とよりなる植生マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211949(P2011−211949A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82524(P2010−82524)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】