説明

検体前処理装置

【課題】複数のモジュールを有する検体前処理装置において、オペレータの移動距離を最小限とすることで作業効率を低下させず、かつ使い易い方向に各モジュールを設置することができる検体前処理装置を提供する。
【解決手段】検体前処理装置は、検体に前処理工程を行うための8つのモジュール(検体投入モジュール201、開栓モジュール202、オンライン分注モジュール204、バーコード貼り付けモジュール205、オフライン分注モジュール206、閉栓モジュール207、検体分類モジュール208、検体収納モジュール209)構成に加え、前処理装置を設置する部屋のレイアウトに応じて検体前処理装置の設置時に各モジュール間の接続角度(中心角θ)を任意に変更可能な構成となっている4つの扇型ライン203a〜dを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検体前処理装置は、血液や尿などの分析の前処理工程を行う装置であり、検査前に必要な前処理を検体に施す処理モジュール(投入モジュール、遠心分離モジュール、開栓モジュール、分注モジュール、バーコードラベリングモジュール、閉栓モジュール、分類モジュール、収容モジュール等)及びこれら処理モジュールを繋ぐ搬送ラインを有し、複数の処理モジュールの組み合わせや、処理モジュールと搬送ラインの組み合わせ、また複数の搬送ラインの組み合わせから構築される。
【0003】
通常、検体前処理装置では、これらの複数のモジュールを横方向に直線状に並べることで装置を構成している。従って、装置の横方向の長さはモジュール数に依存し、モジュールが多くなるほど長くなる。
また、検体前処理装置に自動分析装置をオンライン接続する場合は、一般的には、検体前処理装置の後ろにそのまま接続している。
【0004】
この検体前処理装置の各モジュールの接続や、検体前処理装置と自動分析装置の接続には、一直線型、接続角度が90度や270度となる構成がある(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、オペレータは、ルーチン業務において検体の架設や検体の処理状況の確認のため、検体前処理装置の各モジュールや自動分析装置へアクセスする必要がある。このうち、オペレータが定期的にアクセスするのは、検体前処理装置への検体投入や、検体分類、検体収納と、自動分析装置への検体投入や検体収納の作業を行うときである。
そのため、オペレータは、検体投入、検体分類、検体収納を行う箇所の間を定期的に行き来することになる。
【0007】
しかし、上述のように装置の配置が直線的である場合、オペレータは作業中の箇所から目的の場所まで直線上を何回も行き来する必要があり、移動に時間を要することになり、作業効率の低下を招いていた。
また、検体前処理装置としてのレイアウトが固定されてしまうため、検査室内に収容できなくなる等の問題も生じていた。つまり、従来の検体前処理装置では、設置レイアウトに対する考慮が欠けているとの問題があった。
【0008】
本発明の目的は、複数の処理モジュールを有する検体前処理装置において、オペレータの移動距離を最小限とすることで検査の作業効率を低下させず、かつオペレータにとって使い易い方向に各モジュールを設置することができる検体前処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、血液や尿等の検体を分析する際に、この検体を分析するために必要な前処理工程を行うための検体前処理装置であって、前記前処理工程を実施するための複数のモジュールと、前記複数のモジュールとモジュールとの間を接続して前記検体の架設されたラックを前のモジュールから次のモジュールへと搬送するための、中心角が可変の扇形ラインとを備える。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば、複数のモジュールを有する検体前処理装置において、各モジュール間の接続角度を扇形ラインによって自由に変更できるため、検体前処理装置を使い易いように自由に設置することができ、オペレータのルーチン業務における移動距離を短縮でき、作業効率の低下を避けることができる。また、オペレータにとって使い易い方向に各モジュールを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】扇型ラインを備えた第1実施例の検体前処理装置の構成概略図である。
【図2】第1実施例の扇型ラインの一例を示す概略図である。
【図3A】第1実施例の扇型ラインのスイング機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【図3B】第1実施例の変形例における扇型ラインのスイング機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【図4】第1実施例の扇型ラインのスイング機構によるラック追い越し搬送の様子の概略を示した図である。
【図5A】第2実施例の扇型ラインのベルト回転機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【図5B】第2実施例の変形例の扇型ラインのベルト回転機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【図6A】第3実施例の扇型ラインのローラー機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【図6B】第3実施例の変形例の扇型ラインのローラー機構によるラック搬送の様子の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の幾つかの実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
<第1実施例>
(全体構成)
本発明の第1実施例について、図1〜図4を用いて説明する。
図1は、扇型ラインを組み込んだ第1実施例の検体前処理装置の概略を示す図である。
【0014】
図1に示すように、本実施例の検体前処理装置は、検体に前処理工程(自動分析装置212やオフラインの分析装置での分析のために検体を前処理する工程)を行うための8つのモジュール(検体投入モジュール201、開栓モジュール202、オンライン分注モジュール204、バーコード貼り付けモジュール205、オフライン分注モジュール206、閉栓モジュール207、検体分類モジュール208、検体収納モジュール209)構成に加え、4つの扇型ライン203a〜dを配置したものである。
【0015】
検体投入モジュール201は、ラック及びラックに搭載されている血液や尿などを収容するための検体容器(親検体)を検体前処理装置へ投入し、またこのラック及び検体容器に付されたバーコードを読み取って検体を認識するためのモジュールであり、投入されたラックを開栓モジュール202へ搬送する。
【0016】
開栓モジュール202は、検体容器の栓を自動的に抜き取り、廃棄するモジュールであり、開栓した検体容器を搭載したラックをオンライン分注モジュール204へ搬送する。
【0017】
オンライン分注モジュール204は、オンライン接続されている自動分析装置用や保存用に、検体容器(親検体)内の血液、尿等を、子検体ラック上の複数の容器にピペット等によって分注するモジュールである。このオンライン分注モジュール204で分注された子検体は、バーコード貼り付けモジュール205へ搬送される。
【0018】
バーコード貼り付けモジュール205は、オンライン分注モジュール204にて分注された子検体に対してバーコードラベルの貼り付けを行うモジュールであり、ラベルが張り付けられた子検体を含むラックをオフライン分注モジュール206へ搬送する。
【0019】
オフライン分注モジュール206は、検体前処理装置に接続された自動分析装置212とは異なるオフライン(オンラインシステムの外部)の分析装置や外部委託分析施設での分析用に、検体容器内の血液、尿等を、別容器(子検体)に分注するモジュールであり、閉栓モジュール207へラックを搬送する。このオフライン分注モジュール206で分注した別容器(子検体)は、人手によってオフライン分析装置等に搬送される。
【0020】
閉栓モジュール207は、オンライン分注モジュール204にて分注された保存用の容器に自動的に栓をするモジュールであり、閉栓後のラックを検体分類モジュール208へ搬送する。
【0021】
検体分類モジュール208は、オンライン分注モジュール204にて分注された子検体を用途別(検査目的に応じて)に分類収納するモジュールであり、分類収納されたラックを検体収容モジュール209へ搬送する。
【0022】
検体収納モジュール209は、前処理の終了した検体容器を収容するラックを収納するモジュールであり、搬送ライン210aを通して検体バッファユニット211へラックを搬送する。
【0023】
検体バッファユニット211は、前処理装置で前処理が完了した検体を自動分析装置212へ搬送する際に、自動分析装置212に搬送される分析待ちの検体を待機させるユニットである。この検体バッファユニット211から搬送ライン210bを通して自動分析装置212に検体を搬送する。
そして自動分析装置212では生化学分析・臨床検査等の検査が自動的に行われ、その検査結果が出力されるようになっている。
【0024】
扇形ライン203a〜dは、検体が架設されたラックを前のモジュールから次のモジュールへと搬送するために設けられている。扇形ライン203aは開栓モジュール202とオンライン分注モジュールとの間を接続し、扇形ライン203bはオンライン分注モジュール204とバーコード貼り付けモジュール205との間を接続し、扇形ライン203cは閉栓モジュール207と検体分類モジュール208との間を接続し、扇形ライン203dは検体収納モジュール209と検体バッファユニット211との間を接続する。扇形ライン203a〜d自体の構成について以下説明する。
【0025】
(扇形ラインの構成、動作と作用効果)
図2は、第1実施例の自動分析装置における扇型ラインの概略の一例を示す図である。
【0026】
図2に示すように、扇型ライン203は、ラックの搬入口101、ラックの分岐搬出口102、ラックの搬出口103を有している。また、扇形ライン203は、検体前処理装置の設置時に各モジュール間の接続角度(中心角θ)を任意に変更可能な構成となっており、使用環境(検体前処理装置を設置する部屋のレイアウト等)に応じて中心角θを適宜変更できるようになっている。
【0027】
ラックの搬入口101は、前のモジュールからラックを受け入れるための開口部であり、ラックの搬出口103は、次のモジュールへラックを受け渡すための開口部である。
ラックの分岐搬出部102は、検体を次のモジュールに送らずに扇形ラインから取り出すための開口部であり、中心角の大きさに合わせて円弧の所望の位置に配置できるように構成されている。このラックの分岐搬出部102は、主にオフライン分析装置で分析する検体を検体前処理装置から取り出すための分岐処理(詳しくは後述)に利用する。
【0028】
図3Aは、第1実施例の扇型ラインにおいて、ラックを搬送するための機構として、スイング機構を採用した形態の概略図である。
【0029】
図3Aに示す扇形ライン302では、前のモジュール301aから搬送されてきたラックを、搬入口において扇形ライン内に設けられたスイングアーム303上に乗せ、このスイングアーム303が取り付けられたスイングアーム回転軸304を回転させる。そしてスイングアームを303’の位置に移動させて搬出口から搬出することにより、ラックを前のモジュール301aから次のモジュール301bへ搬送する構成となっている。
図3Aに示すように、モジュール間の接続角度が小さい場合は、1つのスイングアーム303で搬送処理することができる。
【0030】
ここで、扇形ライン203dのように、扇形ラインを検体前処理装置の一番後ろ、すなわち自動分析装置212との接続箇所となる位置にも設けることによって、検体前処理装置と自動分析装置212との接続角度も任意とすることができ、より柔軟に室内のレイアウトに合わせて検体前処理装置や自動分析装置を配置することができるようになる。
【0031】
更に、扇型ライン203a〜dは、各モジュール間の接続角度や、分岐搬出角度に応じて最適化された動作パラメータを保持するために、例えば不揮発性の記憶装置213a〜dを備えることができる。
【0032】
このような扇型ライン203a〜dを備えることにより、本実施例の検体前処理装置は図1に示すようにC字状に配置できるように構成されており、検体投入モジュール201、検体分類モジュール208、検体収納モジュール209を可能な限り近づけたレイアウトを実現している。この配置によって、オペレータの移動距離を最小限にするとともに、使い易い方向に各モジュールを設置することができる。
【0033】
また、検体前処理装置を設置する検査室内で横一直線に並べる必要がなく、検査室内の形状に合わせて検体前処理装置を柔軟に配置することが可能となり、検体前処理装置の設置に必要な直線スペースを短縮でき、検査室のレイアウトに適した配置が可能となる。
【0034】
(第1実施例の変形例)
図3Bは、第1実施例の変形例における扇型ラインのスイング機構によるラック搬送の様子を示した概略図である。
【0035】
図3Bに示すように、モジュール間の接続角度が大きい場合は、扇形ライン306は、複数(4本)のスイングアーム307a〜dを有する構造となっている。この場合においても、回転軸308を中心にしてスイングアーム307a〜dが回転することにより、前のモジュール305aから次のモジュール305bへラックを搬送する。
【0036】
また、本実施例の扇形ライン306は、スイングアーム307a〜dが、分岐搬出用搬送ライン309へも接近できるように構成されており、この構成によってラックを扇形ライン外へも搬出することができる構成となっている。
【0037】
更には、扇形ライン306では、扇形の円弧の部分に分岐搬出用搬送ライン309を設けることができ、分岐搬出用搬送ライン309を設ける場合は、スイングアーム307a〜dが分岐搬出用搬送ライン309へも接近できるように構成する。これによって、必要な前処理が行われたラックを分岐処理によってオフライン分析装置用の検体を容易に取り出すことができるため、検体前処理装置での前処理を有効に利用しながらオフライン分析を容易に実施でき、柔軟な分析処理を実現することができる。
【0038】
図4は、第1実施例における扇型ラインのスイング機構によるラック追い越し搬送の様子を示した図である。
【0039】
扇形ラインに設けられたスイングアームの経路は、往路には緊急検体の搬送経路401と一般検体の搬送経路402の2種類があり、復路には空のスイングアームの搬送経路403がある。
【0040】
このような扇形ラインでは、扇形ラインの搬入口に設けられたバーコードリーダー214で読み取った情報や、外部から入力された情報によって、ラック搬入口から受け取ったラックに架設されている検体の緊急度を判断し、緊急度に応じて、往路を、一般検体の搬送経路402から緊急検体の搬送経路401へ、または緊急検体の搬送経路401から一般検体の搬送経路402へ切り替えてラックを搬送し、ラック搬出口から搬出する。例えば、一般検体のみが架設されたラックは一般検体の搬送経路402を通りラック搬出口に搬送され、次のモジュールへと搬送される。これに対し緊急検体の架設されたラックは、緊急検体の搬送経路401を通りラック搬出口に搬送され、一般検体のみが架設されたラックを追い越して次のモジュールへと搬送される。
【0041】
実際の病院や検査センター等においては、検体処理システムで前処理する検体には、特に緊急を要求さない一般検体と、診療スケジュールの変動や急診等によって一般検体に優先して分析しなければならない緊急検体がある。このような緊急検体が発生した場合、一般検体に対して優先して各モジュールによる前処理を終わらせ、早期に自動分析装置にかけることが求められる。
しかし、従来のような直線上に装置を配置する構成では、緊急検体に対して優先して各モジュールでの工程を行うために一般検体を追い抜くための構成をとることが十分できなかった。このため、オペレータが各モジュールで行う工程を別途に緊急検体に施す等の方法で対応していた。
これに対し本実施例のように扇形ラインにおいて緊急検体追い越し用の追い越し機構を設けることにより、一般検体を各モジュール間の扇形ライン内で追い越すことができる。特に、オンライン分注モジュール204の前に、上述のような緊急検体の追い越し機構を有する扇型ラインを配置することにより、緊急に処理になければならない検体の架設されたラックに対して一般検体のみのラックを追い越す処理を実施し、オンライン分注モジュール204へ早期に緊急検体を搬送することができ、緊急事態への対応が容易となり、より好適である。
【0042】
空となったスイングアームは、空のスイングアームの搬送経路403を通りラック搬入口に戻り、次のラックを搬送する。
【0043】
扇形ラインにおいては、本実施形態のように、ラック搬送の機構としてスイングアームを採用する場合、スイングアームのスイングする角度やスイングアームの本数を変更するのみで中心角の変更に対応できるとともに、緊急追い越し機構を設けることも容易である。
【0044】
また、検体容器又はラックには、一般的に、医師等の依頼内容に基づく識別情報(検体ID・検査項目・必要な前処理・検体種類(緊急/一般)等)が記録されたバーコード(不図示、バーコードは検体容器に直接印刷することもできる)やRC−IFタグ(不図示)(これらを総称して検体情報記録手段と称する)が貼付されているため、扇型ライン203a〜d,302,306に、このバーコードやRF−IDタグの情報を読み取るためのバーコードリーダー214a〜d(情報読み取り手段)を設けることができる。
このようなバーコードリーダーを設けることによって、扇形ラインでは、このバーコードリーダーで読み取った情報を基にして、緊急に処理する必要のある検体を含んだラックの追い越し処理を簡易に実施することができ、またオフライン分析装置で分析する検体を扇形ラインから取り出すための分岐処理を容易に実施することができる。
【0045】
更には、スイングアーム307a〜dは、ラックを保持した先端部を回転させるための回転機構を有し、搬出時のラックの進行方向に対する先頭ポジション(部位)をポジション1またはポジション5に変更できる機構(進行方向変更用回転機構)を有する。
例えば、検体前処理装置では5本ラックのポジション1を先頭にしてラックを搬入する方式が一般的である。また、分岐搬出先に接続されるほとんどの装置も、ポジション1を先頭にしてラックを搬入する方式であるため、通常はこのまま搬出・搬入を行えばよいものの、一部の装置はポジション5を先頭にして搬入するものがある。このタイプの装置がある場合は、従来は、一部の装置への分岐後の搬送ラインの途中に回転機構を付加して対応していた。しかし、本実施例のように、スイングアームの先端部にラックの進行方向を変える構成を設けることにより、ラックのポジションを搬出先の装置に合わせて適宜変更することができ、分岐後の搬送ラインに回転機構を別途追加する必要がなくなり、搬送ラインを複雑な機構とする必要がなくなるという利点を有する。
【0046】
<第2実施例>
本発明の第2実施例の検体前処理装置について、図5A,5Bを用いて説明する。本実施例における検体前処理装置は、扇形ライン内のラックを搬送するための機構が異なる場合のものであり、扇形ライン以外の構成は第1実施例の検体前処理装置と略同じであり、詳細は省略する。
【0047】
図5Aは、第2実施例の扇型ラインのベルト回転機構によるラック搬送の様子を示した図である。
【0048】
図5Aにおいて、本実施例の扇形ライン502は、ベルト回転機構503a〜cを有し、このベルト回転機構503a〜cのベルトを回転させることによりモジュール501aからベルト回転機構503a、503b、503cを介してモジュール501bへラック504を搬送する構成となっている。
【0049】
(第2実施例の変形例)
図5Bは、第2実施例の変形例の扇型ラインのベルト回転機構によるラック搬送の様子を示した図である。
【0050】
図5Bの扇形ライン506は、ベルト回転機構507a〜hを有し、このベルト回転機構507a〜hのベルトを回転させることによりモジュール505aからモジュール505bへラック508を搬送する点は図5Aに示す扇型ライン502と同じである。異なる点は、ベルト回転機構の数が8個(507a〜h)となっており、モジュール間の接続角度に応じてベルト回転機構の数を変更した構成となっている。搬送機構としてベルト回転機構を採用した場合は、扇形ラインの接続角度(中心角)が小さいときはベルト回転機構の数を減らし、大きいときはベルト回転機構の数を増やすことで対応する。
【0051】
また、ベルト回転機構507自体を回転させる機構を設けることによりラックの方向を変更する機能を設けることができ、ラックを分岐搬出用搬送ライン509へ搬出することが可能となる。このベルト回転機構507自体を回転させる機構は、ラックの前後を入れ替えるための進行方向変更用回転機構を兼ねるものとすることもできる。
【0052】
<第3実施例>
本発明の第3実施例の検体前処理装置について、図6A,6Bを用いて説明する。本実施例における検体前処理装置は、扇形ライン内のラックを搬送するための機構が異なる場合のものであり、扇形ライン以外の構成は第1実施例の検体前処理装置と略同じであり、詳細は省略する。
【0053】
図6Aは、第3実施例の扇型ラインのローラー機構によるラック搬送の様子を示した図である。
【0054】
図6Aの扇形ライン602は、ラックガイド605に取り付けられたローラー機構603を回転させることにより、ラックガイド605に沿って前のモジュール601aから次のモジュール601bへラック604を搬送する構成となっている。
【0055】
(第3実施例の変形例)
図6Bは、第3実施例の変形例の扇型ラインのローラー機構によるラック搬送の様子を示した図である。
【0056】
図6Bに示すように、扇形ライン606は、ラック609を、ラックガイド611に取り付けられたローラー機構607により、前のモジュール612aから次のモジュール612bへ搬送する点は、図6Aに示す扇形ライン602と同じである。本実施例では、ローラー機構の数を第3実施例に比べて増加させてある。搬送機構としてローラー機構を採用した場合は、接続角度に応じて、ローラー機構のローラーの数を変更可能な構成とすることで、接続角度の大小に対応する。
【0057】
また、搬送経路切り替え機構608をラックガイド611の途中に設けることによって、ラックの進行方向を搬送経路切り替え機構608の部分で分岐させる機能を持たせて、分岐搬出用搬送ライン609への搬出が可能となる。この搬送経路切り替え機構608は、ラックの搬送経路の分岐点に存在し、スライド機能により反対側の経路を塞ぐ役割とローラーによりラック搬送する機能を有する機構である。
【0058】
<その他>
なお、上述の各実施例やその変形例において、検体を保持するラックは、検体を5本収容することができる5本ラック、検体を1本収容する1本ラック、またはその他のいずれの態様も取ることができ、ラックの形態は特に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
101…ラックの搬入口、 102…ラックの搬出口、 103…ラックの分岐搬出口、
201…検体投入モジュール、 202…開栓モジュール、 203,203a〜203d…扇型ライン、 204…オンライン分注モジュール、 205…バーコード貼り付けモジュール、 206…オフライン分注モジュール、 207…閉栓モジュール、 208…検体分類モジュール、 209…検体収納モジュール、 210a〜210b…搬送ライン、 211…検体バッファユニット、 212…自動分析装置、 213,213a〜213d…不揮発性記憶装置、 214,214a〜214d…バーコード/RFIDリーダ、
301a〜301b,305a〜305b…モジュール、 302,306…扇型ライン、 303,307a〜307d…スイングアーム、 304,308…スイングアーム回転軸、309…分岐搬出用搬送ライン、
401…緊急検体の搬送経路、 402…一般検体の搬送経路、 403…空のスイングアームの搬送経路、
501a〜501b,505a〜505b…モジュール、 502,506…扇型ライン、 503a〜503c,507a〜507h…ベルト回転機構、 504,508…ラック、 509…分岐搬出用搬送ライン、
601a〜602b,612a〜612b…モジュール、
602,606…扇型ライン、 603,607…ローラー機構、 604,609…ラック、 608…搬送経路切り替え機構、 610…分岐搬出用搬送ライン、 605,611…ラックガイド、
θ…中心角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液や尿等の検体を分析する際に、この検体を分析するために必要な前処理工程を行うための検体前処理装置であって、
前記前処理工程を実施するための複数のモジュールと、
前記複数のモジュールとモジュールとの間を接続して前記検体の架設されたラックを前のモジュールから次のモジュールへと搬送するための、中心角が可変の扇形ラインとを備えたことを特徴とする検体前処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、緊急に前処理しなければならない検体が架設されたラックがあるときに、この緊急検体が架設されたラックを一般検体のみが架設されたラックを追い越させるための追い越し機構を更に備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記ラックを搬送するための機構として、回転軸と、この回転軸を中心としてスイングする少なくとも一つ以上のスイングアームとを備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記ラックを搬送するための機構として、少なくとも一本以上のベルトを回転させることによって前記ラックを搬送するベルト回転機構を備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記ラックを搬送するための機構として、ラックガイドと、このラックガイドに取り付けられた複数のローラーによって前記ラックを搬送するローラー機構とを備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記ラックを前記扇形ラインから取り出すための分岐機構を更に備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記ラックの進行方向を変更するための進行方向変更用回転機構を更に備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、複数個のラックを同時に保持できることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記検体の情報を記録するための前記ラックに設けられた検体情報記録手段内の情報を読み取るための情報読み取り手段を更に備えることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記検体を5本収容する5本ラックや、前記検体を1本収容する1本ラックを搬送できることを特徴とする検体前処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の検体前処理装置において、
前記扇形ラインは、前記複数のモジュール間の接続角度と、この接続角度に応じた前記検体の搬送動作を記憶するための記憶装置を更に備えることを特徴とする検体前処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate