説明

検体採取器具

【課題】本発明は採取部位に付着している検体を採取する検体採取器具に関するもので、検体採取部を被験者の採取部位に容易に出し入れできる検体採取器具を提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成する為に、本発明は検体を採取する検体採取部4と、前記検体が採取される採取部位の表面に前記検体採取部4を当接させた状態で略一定の当接荷重に制御する弾性結合体3と、前記検体採取部4と結合されており、前記検体採取部4に対して前記採取部位の表面と反対側の空間を覆う保護筒10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取部位に付着している検体を採取する検体採取器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検体採取器具の構成は以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、検体が付着した採取部位に押し当てて検体を採取する検体採取部を備え、この検体採取部を口腔内などの採取部位に挿入して回転や振動させることにより定量的に微生物の採取を行う構成となっている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2003−334059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例における課題は、検体採取器具の検体採取部を被験者の採取部位に容易に出し入れできないということであった。
【0005】
すなわち、特に口腔内の舌などから検体を採取するような場合、例えば意識が無い、あるいは混濁しているなど被検者の状態によって被験者に口を開け続けさせることは難しく、そのような口腔内に検体採取器具の検体採取部を出し入れすることは極めて困難を伴っていた。
【0006】
そこで本発明は、検体採取部を被験者の採取部位に容易に出し入れできる検体採取器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そしてこの目的を達成するために本発明は、検体を採取する検体採取部と、前記検体が採取される採取部位の表面に前記検体採取部を当接させた状態で略一定の当接荷重に制御する荷重制御部と、前記検体採取部と結合されており、前記検体採取部に対して前記採取部位の表面と反対側の空間を覆う保護部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、検体を採取する検体採取部と、前記検体が採取される採取部位の表面に前記検体採取部を当接させた状態で略一定の当接荷重に制御する荷重制御部と、
前記検体採取部と結合されており、前記検体採取部に対して前記採取部位の表面と反対側の空間を覆う保護部とを備えたものであるので、検体採取部を被験者の採取部位に容易に出し入れできる検体採取器具を提供することができる。
【0009】
すなわち、本発明においては、保護部によって採取部位の表面と反対側の空間を覆い、検体採取部が周辺の部位と接触しないように保護することができるので検体採取器具の採取部位を容易に採取部位に出し入れすることが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。ここでは口腔内の舌上における検体採取を例に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
本発明の一実施形態における検体採取器具の外観斜視図を図1に、検体を採取する状態を図2に示す。
【0012】
図1において1は本体であり、この本体1の一端には、検体を採取される部位である採取部位に押し当てられ、この押圧により採取部位の表面状態を一定の状態に保持する枠体2(状態保持部)が備えられている。そして、この本体1の枠体2に対する他端には採取者が掴んで検体採取器具全体を保持するための把持部6を備えている。
【0013】
ここで、枠体2の内方には、ブラシ、綿球などの検体を採取する要素で構成された検体採取部4が形成され、この検体採取部4の下端部は枠体2が囲む面と垂直方向に所定の距離だけ突出している。
【0014】
また、本実施形態の検体採取器具は固定部分と可動部分を有している。すなわち、図1に示すごとく、本体1の一端には状態保持部である枠体2とその他端の把持部6が一体に形成された固定部分と、検体採取部4を有する弾性結合体3と分離部5を介して結合されている可動体7で形成される可動部分から成る。荷重制御部である弾性結合体3は可動体7と検体採取部4とを弾性を有する状態で結合している。
【0015】
ここで、この弾性結合体3は、検体採取部4の下端部が所定の距離だけ押し上げられ、検体採取部4の下端部が枠体2で囲まれる面に到達するまで弾性結合体3が撓められた状態において、枠体2で囲まれる面内の領域に収納されるよう長さが決められ、かつ枠体2が囲む面と垂直方向に所定の荷重を生じるものであって、例えば弾性結合体3の断面形状や、その材質などによって上記の条件を満たすようにされているものである。
【0016】
また、固定部分は可動部分を可動自在な状態で保持する嵌合部を備え、可動部分は検体を採取する際に舌を擦過するために検体採取部4を移動させる方向である擦過方向Aに摺動自在に嵌合する。
【0017】
ここで、本実施形態では図1に示すように、固定部分と嵌合している部分における可動体7の断面を四角形とし、また、この可動体7の四角形断面部と組み合わされる固定部分である案内10a,10bの嵌合部を四角形の孔とすることで、可動部分を固定部分に対して回転不能に、かつ摺動可能に保持している。
【0018】
これにより、検体採取部4の所定の面、すなわち、本実施形態では検体採取部4の下面が確実に舌の表面に当接するようにできる。なお、可動部分を固定部分に対して回転不能に、かつ摺動可能に組み合わせる方法はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0019】
可動体7の分離部5と結合されている方向と反対側には採取者が掴んで摺動させることのできる操作部8が形成されている。そして、可動体7の中央部には柱状の凸部であるストッパ7aを設け、このストッパ7aは本体1の枠体2が形成されている側と反対側の端面10cの内壁面と、この内壁面側の案内10bの壁面との間で移動距離が規制された状態で擦過方向Aに摺動自在としている。これにより、検体採取部4を擦過方向Aに所定の長さだけ移動させることを可能としている。
【0020】
そして、図1に示すように、検体採取部4に対して採取部位の表面と反対側の空間を覆うように設けられ、検体採取部4を保護する保護部である保護筒10が形成されている。本実施形態では保護筒10は検体採取部4から把持部6に至るまでの領域を保護するように本体1と把持部6とともに一体形成されたものとしている。
【0021】
また、保護筒10の端部には、検体採取部4が突出するための開口部が設けられ、その開口部の縁が枠体2を形成しているのである。
【0022】
さらに、図2に示すように弾性結合体3の検体採取部4と分離部5の間に舌の表面方向に突出した突起であるカム3aを有し、保護筒10の内部底面側に設けられた突起である凸部10dを有している。
【0023】
このカム3aと凸部10dとは、図2(a)に示すごとく可動体7を所定の位置、すなわち本実施形態ではストッパ7aが保護筒10の端面10cの内壁面に当接するまで可動体7を図2(b)に示す採取者23側に移動させた位置で、カム3aが凸部10dに乗り上げ、弾性結合体3を舌面から遠ざかる方向に撓ませて検体採取部4の下面が枠体2の下端面より保護筒10の内方に格納されるように構成されている。(格納手段)
この保護部と格納手段については詳細に後述する。
【0024】
以下、この検体採取器具を用いて口腔内の舌上において検体を採取する状態に基づいて詳細を説明する。
【0025】
図2(a)は、本実施形態の検体採取器具を口腔内に挿入した状態を示す側面図であり、図2(b)は本実施形態の検体採取器具で検体を採取している状態を示す側面図である。
【0026】
図2に示すように検体の採取時、採取者23は把持部6を掴んで口腔内21に検体採取器具を挿入し、被験者20の舌22(採取部位)に対して検体採取器具が略水平になるように押し当てる。すなわち、本体1が垂直に下降して枠体2が舌22に当接し、押圧する。
【0027】
その後、操作部8を採取者23の手前方向と反対側に移動させることによって、枠体2が囲む面と垂直方向、すなわち舌の上面に対して垂直下方向に検体採取部4が所定の荷重(舌上への押圧)で押し当てられる。
【0028】
ここで、本体1、把持部6、枠体2、および保護筒10は、高い剛性を有するポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリカーボネイトなどの樹脂で一体で形成され、その断面は採取者23が把持部6を掴んで枠体2を被験者20の舌22に押し当てる荷重(一般的には50グラムから500グラム程度)に対する充分な剛性を有し、撓みにくい形状としている。
【0029】
また、弾性結合体3は検体採取部4の下端面が所定の距離だけ押し上げられることによって撓み、所定の荷重(一般的には5グラムから40グラム程度の舌上への押圧)が発生する形状としており、例えば可動体7と一体で形成される場合は、可動体7より小さな断面積と適切な長さとすることで、主に撓みが弾性結合体3のみで生じるような構成としている。
【0030】
一般に舌22の状態は各々の被験者によって異なり、舌22が口腔内に位置する場合と口腔外に突出させた状態では表面の硬さが異なる。特に舌22が口腔内21にある場合は筋肉の緊張が無い為に弛緩して柔らかい。
【0031】
本実施形態の検体採取器具は、枠体2が舌22を押圧することによって枠体2で囲まれた面内の領域の舌表面22aに張力を発生させて、舌表面22aを一定の硬度に保つことができるので、検体採取部4の舌22への埋没を防止できるだけでなく、検体採取部4と舌表面22aの接触面積が採取者23の技量によらず略一定を保つことができ、採取される検体の量が一定になるという効果が得られる。
【0032】
すなわち、枠体2を有しない場合のように、検体採取器具を舌22に当てても検体採取部4が舌22に深く埋没するため、採取者23の技量によって検体採取部4と舌22の接触面積が異なり、採取される検体の量にばらつきが生じることを防止できる。
【0033】
検体採取部4は、弾性結合体3の端部に接着剤を介して接合された綿糸や化繊に覆われた表面、あるいは静電植毛によって短い化繊を植接した表面などで構成されており、舌22に押し当てたり、図2(b)に示す矢印Aの方向に検体採取部4を移動させ、検体採取部4と舌表面22aを擦過させたりして検体を採取するので、舌22との接触面積の広さの違いによって検体の採取量に大きな違いが生じるのである。
【0034】
また、同時に、枠体2に押圧され張力を与えられて硬化した舌表面22aによって検体採取部4の下端面が押し上げられる所定の距離の精度を良くでき、これにより、弾性結合体3の撓みの精度を良くすることができる。したがって検体採取部4に安定して所定の荷重を付与できるため、さらに採取される検体の量をばらつきなく安定させることができるのである。
【0035】
この枠体2は、舌22を押さえることができる程度の大きさであればよく、検体採取部4の下端面が所定の距離だけ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に検体採取部4を枠内に収納できるに充分な広さであればよい。したがって、例えば一辺が2cm前後の矩形や直径2cm程度の円形や楕円形を成した形状が好ましい。
【0036】
さらに本実施形態では、図1に示すように弾性結合体3と可動体7との結合部の近傍に分離部5を有している。
【0037】
可動体7と弾性結合体3が一体で形成される場合、分離部5はノッチ形状(切り欠き)などの応力が集中する形状であればよい。そして、検体採取部4の下端面が所定の距離だけ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に生じる応力には十分に耐えることができる程度に強く、一方、弾性結合部3と可動体7との分離を意図するときは、検体採取部4の下端面が所定の距離だけ押し上げられて弾性結合体3が撓んだ際に生じる応力よりも大きな外力を加えることによって容易に折損し、弾性結合体3と可動体7とを容易に分離することができるように構成されている。
【0038】
なお、可動体7とは別の構成要素で弾性結合体3を構成することも可能である。この場合は弾性結合体3の材料として柔軟性の高いナイロンやポリプロピレン、および各種エラストマーを使うことが好ましく、材料の柔軟性と形状の選択によって、より繊細な荷重の設定が可能となる利点がある。
【0039】
この場合、分離部5はスナップフィットなどの圧入嵌合やねじなどで構成され、検体採取後は弾性結合体3を可動体7から抜去する構成とすると好適である。
【0040】
いずれの場合も分離部5で弾性結合部3と可動体7とを分離することで、検体の付着部分である検体採取部4と弾性結合体3のみに小さくすることができるので、検体採取器具によって検体を採取した後、検体採取器具の検体採取部4に付着した検体を検量するための検量機器に装着し易くでき、また検体を搬送する為のスピッツ管などへの装填が簡便になる効果が得られる。
【0041】
ここで、本発明の最大の特徴である保護部と格納手段について以下に詳細に説明する。
【0042】
図3(a)は、検体採取器具を口腔内に挿入する際、および口腔内から取出す際の状態を示す図であり、本実施形態の検体採取器具は、上述したように検体採取部4に対して採取部位の表面と反対側の空間を覆うように、検体採取部4を保護する保護部である保護筒10が形成され、保護筒10は検体採取部4から把持部6に至るまでの領域を保護するように本体1と把持部6とともに一体形成されたものとしている。
【0043】
図3(a)において、採取者は検体採取器具の把持部6を片手で保持する。そして、もう一方の手で操作部8を図に示すB方向に、ストッパ7aが保護筒10の端面10cの内壁面に当接するまで摺動させている。
【0044】
この状態においてカム3aは凸部10dに乗り上げた状態となり、弾性を有した状態で可動体7に分離部5を介して結合されている弾性結合体3が撓められる。
【0045】
この格納手段によって、弾性結合体3の先端に設けられている検体採取部4は保護筒10の一部である枠体2の下側端面(検体採取時に採取部位に当接させる面)で囲まれる面よりも内側に格納された状態となっている。ここで、カム3aと凸部10dの形状は、検体採取部4が保護筒10の一部である枠体2の下側端面で囲まれる面より内側まで移動した状態となるように、かつ弾性結合体3を撓めるのに必要な力を採取者が容易に操作できる程度の荷重にできるようにしている。
【0046】
すなわち、例えば本実施形態においては、操作部8をB方向、すなわち、採取者の手前方向に動かしてカム3aと凸部10dが当接し始める部分を斜面であるテーパ形状としている。これにより、カム3aが凸部10dに乗り上げるときに生じる荷重の変化を緩やかにしたり、カム3aと凸部10dの接触面間に生じる摩擦抵抗を軽減したりして、カム3aが凸部10dの水平面部まで容易に操作部8を移動させることができる。なお、本実施形態ではカム3aと凸部10dの当接面の形状はテーパ形状としているが、これに限定されるものはなく、操作部8を問題なく操作できる限りにおいて、例えば円弧状、階段状など種々の形状に変更することができることは言うまでもない。
【0047】
また、図3(a)に示すように操作部8を採取者の手前方向、すなわち図のB方向にストッパ7aが保護筒10の端面10cの内壁面に当接するまで移動させた状態においては、カム3aと凸部10dの互いに接触する面は水平面を成している。これにより、カム3aが凸部10dに乗り上げたとき、この状態を安定して維持することができ、すなわち、検体採取部4を保護筒10内に格納している状態を安定して維持できるのである。また、よりこの状態を安定して維持するため、カム3aと凸部10dの互いに接触する水平面に互いにかみ合う凹凸を設けても良い。
【0048】
次に図3(b)は、検体採取器具を被験者の口腔内に挿入した後、採取部位に検体採取部4を押し当てる直前の状態を示す図である。
【0049】
操作部8を図に示すC方向に摺動させると、カム3aと凸部10dが互いの水平面に乗り上げて検体採取部4を保護筒10の内部の枠体2から内方に所定の高さに停止させている状態からカム3aと凸部10dとが斜面で当接している状態を経て、その後カム3aと凸部10dとが離れるようにしている。
【0050】
そして、カム3aと凸部10dとが当接することによって撓められていた弾性結合体3に作用していた外力がなくなり、弾性結合体3は無負荷状態の形状に復元する。すなわち、弾性結合体3は可動体7と所定の角度をなして、採取部位である舌の表面に近づく形状としているので、弾性結合体3の先端に設けられている検体採取部4は、枠体2の下側端面で囲まれる面より所定の距離、すなわち図3(b)に示す距離δだけ外側に突出した状態となるのである。
【0051】
この検体採取部4が所定の距離δだけ枠体2の下側端面で囲まれる面より突出しながら摺動する状態は、操作部8をさらにC方向に摺動させてストッパ7aが本体1の内側に設けられている案内10bの壁面に当接するまでの間で維持されている。
【0052】
次に図3(c)は、検体採取器具を被験者の口腔内に挿入し、採取部位に検体採取部4を押し当てた後、検体を採取している状態を示す図である。
【0053】
図3(c)に示すように保護筒10の枠体2の下側端面を舌22の舌表面22aに押し当てると、舌表面22aは枠体2によって張りのある状態となり、その面と検体採取部4が所定の押圧荷重で接している。この押圧荷重は、検体採取部4が舌表面22aによって所定の距離、すなわち図3(b)に示す距離δだけ上方に押し上げられ、弾性結合体3が撓められることによって生じる力である。
【0054】
そして、ストッパ7aを案内10bの壁面と保護筒10の端面10cの内壁面との間で移動量を規制した状態で採取者が操作部8を図の矢印Dのように往復移動させると、検体採取部4は所定の押圧荷重で採取部位である舌表面22aに押し当てられた状態で、所定の距離を擦過することとなり、舌表面22aの略一定の面積から検体を採取できる。
【0055】
その後、再び操作部8を被験者の手前方向に移動させ、図3(a)に示す状態に戻して、検体採取部4を枠体2の下側端面で囲まれる面よりも内側に格納された状態にする。この状態で検体採取器具を被験者の口腔内から取り出すことで、上述したように検体をばらつきなく安定して採取した検体採取部4を検体採取が完了した後で口腔内から取り出すときに口腔内の他の部位に接触するなどして採取した検体量が変わってしまうことを防止できる。
【0056】
以上のように本発明では、保護部である保護筒10内部に検体採取部4を格納した状態で口腔内に検体採取器具を出し入れできるので、採取部位以外に検体採取部4が接触することを防止でき、よってばらつきなく、安定して採取部位である舌表面の検体のみを採取できる。
【0057】
また、意識が無い、あるいは混濁した被験者の口を開け続けさせることは極めて困難を伴うものであったが、そのような被験者の口腔内から検体を採取する場合においても、口を閉じられても保護筒10が検体採取部4および可動部を保護しているので、口を閉じたまま操作部8を摺動させて容易に検体を採取できるのである。
【0058】
なお、本実施形態では、操作部8を採取者の手前方向に移動させたときに検体採取部4が枠体2の下側端面で囲まれる面より保護筒10の内側に位置する構成としたがこれに限定されるものではない。操作部8を採取者の手前方向と反対側に移動させたときに検体採取部4が枠体2の下側端面で囲まれる面より保護筒10の内側に位置する構成としても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0059】
(他の実施の形態)
(A)
上記実施形態1では可動部分を有する構成としたがこれに限定されるものではなく可動体7を本体1と一体で構成しても良い。このように可動体7を本体1と一体で構成する場合には、舌表面22aを検体採取部4によって擦過して検体を採取するときに、枠体2によって検体が排除されないように枠体2の表面は滑らかな状態が好ましく、その端部にエッジを有しない形状が好ましい。
【0060】
さらに、このように可動体7を本体1と一体で構成する場合には、枠体2の下側端面において、検体を採取する際に舌を擦過するために検体採取器具を移動させる方向、すなわち図1の擦過方向Aと平行な面を、これと直交する面より舌を押圧する方向に突出させてもよい。
【0061】
すなわち、舌を擦過して検体を採取する際に、検体採取部4が擦過方向Aに移動するとき、枠体2の下側端面の擦過方向Aに直交する面が舌に当接することによって検体が排除されることの無いように、検体採取部4が擦過する経路に当接しない擦過方向Aと平行な面のみで舌を押圧し、舌表面に張力を発生させる。
【0062】
また、検体の採取時に枠体2の中央部に、検体採取部4が位置するように弾性結合体3の長さを決めている。これにより、採取部位である舌の表面の全周囲を枠体2で囲むことができないため舌表面の硬度ムラが発生したとしても、その影響を最も受けにくい位置、すなわち枠体2の中央部に検体採取部4を位置させることによって、その影響を緩和させている。
【0063】
また、枠体2の下側端面の擦過方向Aと平行な面をより長くすることでも、舌表面の硬度ムラを軽減することが可能である。
【0064】
以上により、簡易な構成の検体採取器具とすることができ、枠体2の下側端面の擦過方向Aと直交する面によって採取部位である舌の表面を擦過することがないので、採取部位に本来存在していた検体を採取することができる。これにより、採取量と実際に存在する検体の量に誤差が生じることを防止でき、本来、舌上に存在する検体の量を正確に採取できるので、舌上に存在する検体の量をばらつきなく採取できる。
【0065】
(B)
また、弾性結合体3の断面形状は採取部位の表面に直交する方向(=厚さ方向)に対して図1の擦過方向Aに直交する水平方向(=幅方向)を大きくしてもよい。
【0066】
すなわち、弾性結合体3を、その撓み方向と直交する方向に扁平な板状とすることで、弾性結合体3が撓んだ際に擦過方向Aに直交する水平方向への変形を生じにくくし、採取部位の表面に直交する方向のみの変形を起こし易くすることで、弾性結合体3の撓みによる押圧が正確に精度良く舌上に伝わるようにしている。
【0067】
これは検体採取器具で舌上を擦過して使用するときには極めて有効であり、舌上の摩擦の変動や舌の表面の凹凸などによって検体採取部4が撓み方向と直交する方向に振れて本来発生するべき舌上への押圧が撓み方向と直交する方向への変形の力に使われ、分散されて舌上への押圧が減少することを防ぐことができ、安定して舌を押圧する荷重をかけることができるので舌上に存在する検体の量をばらつきなく採取できるという効果を有する。
【0068】
なお、検体採取部4は、弾性結合体3の端部全周囲、あるいは舌と接する面のみを覆う場合でも良く、どちらも同等の効果を奏することができる。
【0069】
(C)
また、固定部分に対して可動部分が回動自在に嵌合させてもよい。
【0070】
すなわち、図1の可動体7の一端には採取者が掴んで回転させることのできる操作部8と、可動体7が回転した角度を確認できるように、把持部6の近傍に柱状の凸部である目印を備えている。そして、可動体7の断面形状と、これと嵌合する案内10a,10bの孔形状は互いに回転摺動が可能な形状とし、検体採取部4を一端に持つ弾性結合体3は、可動体7と同軸を成している。
【0071】
枠体2は、本体1との境界近傍に屈曲部を設けて本体1と所定の角度を成している。そして、枠体2の下側端面から検体採取部4を突出させている。このとき、この検体採取部4の下端部は枠体2の下側端面が囲む面と垂直方向に所定の距離だけ離れている。
【0072】
そして、操作部8を、目印を確認しながら所定量回転させることで、舌上に押し付けられた検体採取部4が所定の量、回転をして検体を採取できる。
【0073】
また、口腔内に検体採取器具を挿入するときや検体を採取した後は、操作部8を採取者の手前方向に移動させることにより、カム3aが凸部10dに乗り上げる格納手段によって検体採取部4を保護筒10の内部に格納でき、検体採取部4を被験者の採取部位に容易に出し入れできる。また、操作部8を回転させたときにカム3aが凸部10dに乗り上げて、検体採取部4を保護筒10の内部に格納できるように格納手段を構成しているカム3aと凸部10dの位置と形状を構成してもよい。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、以上のように構成することで、押圧荷重と回転する角度を所定の値に規制できるため、検体採取部4が被験者の舌上を回転方向に当接する面積が略一定となり、採取者の技量に関わらず、ばらつきなく安定した検体の採取ができるという効果を奏する。
【0075】
そして、枠体2を舌上に固定した状態で、検体採取部4で舌の表面を擦過することができ、枠体2を舌上で動かす必要がないので、舌上の張りや硬度の状態を一定に保持し易いという効果を奏する。
【0076】
さらに、検体採取部4が舌上を移動することなく一箇所で回転することから、枠体2の小型化が可能であり、器具の小型化を実現できるとともに、舌の小さな被験者に対して検体の採取が行い易いという効果を奏する。
【0077】
なお、回転量を規制する手段として目印を用いたがこれに限定されるものではない。可動体7が回転方向に一定量回転したときに固定部分と接触することによって回転を規制されるストッパを可動部分に設けることによって回転量を一定に規制することによっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0078】
(D)
また、図1の把持部6と枠体2の間において可動体7の一部に一体形成された、または別体を結合させて形成した操作部を有し、把持部6の一部に操作部を摺動可能に保持する孔を設け、採取者が片手で操作部を操作しながら把持部6も保持できるように把持部6の長さを伸長させてもよい。
【0079】
そして、採取者の片手で把持部6を掴み、その中の1本の指を操作部に当接させ、操作部に当接させた指を擦過方向Aに動かして操作部を摺動させると、可動体7と一体である検体採取部4が舌を擦過することで検体を採取させる。
【0080】
ここで操作部の擦過方向Aの両端面と操作部を摺動可能に保持する孔の擦過方向Aの両端面とで可動部分の移動量を規制しても良い。これにより可動部分の移動量を規制することができる。
【0081】
以上のように、枠体2で表面の硬度を保持した舌に検体採取部4が所定の押圧で当接し、規制された長さだけ擦過することで、略一定の面積から検体を採取できるので、採取者の技量に関わらず、ばらつきなく安定した検体の採取ができるという効果に加えて、採取を行う全ての工程が採取者の片手で実施できる。
【0082】
これにより検体採取器具で採取を行う際、他方の手で被験者の口腔を開けて保持できるため、検体を採取し易くなるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように本発明は、検体を採取する検体採取部と、前記検体が採取される採取部位の表面に前記検体採取部を当接させた状態で略一定の当接荷重に制御する荷重制御部と、前記検体採取部と結合されており、前記検体採取部に対して前記採取部位の表面と反対側の空間を覆う保護部とを備えるものであるので検体採取部を被験者の採取部位に容易に出し入れできる検体採取器具を提供することができる。
【0084】
すなわち、本発明においては、保護部によって採取部位の表面と反対側の空間を覆い、検体採取部が周辺の部位と接触しないように保護することができるので検体採取器具の採取部位を容易に採取部位に出し入れすることが可能となるのである。
【0085】
このため、近年、健康の指標として重要性が高まってきている口腔内ケアのための細菌数測定に活用でき、広く普及することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態における検体採取器具の外観斜視図
【図2】同検体採取器具で検体を採取する状態を示す側面図
【図3】同検体採取器具で検体を採取する状態を示す側面図
【符号の説明】
【0087】
1 本体
2 枠体(状態保持部)
3 弾性結合体(荷重制御部)
3a カム
4 検体採取部
5 分離部
6 把持部
7 可動体
8 操作部
10 保護筒
10d 凸部
20 被験者
21 口腔
22 舌
22a 舌表面
23 採取者
δ 距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を採取する検体採取部と、
前記検体が採取される採取部位の表面に前記検体採取部を当接させた状態で略一定の当接荷重に制御する荷重制御部と、
前記検体採取部と結合されており、前記検体採取部に対して前記採取部位の表面と反対側の空間を覆う保護部とを備えている検体採取器具。
【請求項2】
前記検体採取部を前記保護部に対して相対的に、前記採取部位の表面を所定の量、可動させる可動部を備えている請求項1に記載の検体採取器具。
【請求項3】
前記可動部の可動範囲において、少なくとも一方の動作端で前記検体採取部を前記採取部位の表面側に突出させないように前記保護部の内方に格納する格納手段を備えている請求項2に記載の検体採取器具。
【請求項4】
前記検体採取部の他方に設けた把持部と前記検体採取部の間に、指の動作によって前記可動部を操作する操作部を備えている請求項2または請求項3に記載の検体採取器具。
【請求項5】
前記保護部は、前記荷重制御部の荷重制御量を所定の範囲内に制限するとともに、前記採取部位の表面を所定の状態に保つ状態保持部を備えている請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項6】
前記状態保持部は、前記検体採取部と前記採取部位の表面とが当接する領域の周囲を略水平に囲う枠体を備え、前記荷重制御部は前記検体採取部と前記枠体とを結合している弾性結合体であって、前記検体採取部が前記枠体から前記採取部位の表面側に所定の量、突出している請求項5に記載の検体採取器具。
【請求項7】
前記検体採取部と前記保護部とを分離させる分離部を備えている請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の検体採取器具。
【請求項8】
前記採取部位は、口腔内部位である請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の検体採取器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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