説明

検体検出装置

【課題】 製造費用効率が高い、電極を具備する検体検出装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、液体中の検体を検出するための装置(17)であって、互いに絶縁され、液体に対して非透過性である非導電性プレート(10)の第1の面(12)に配置された多数個の電極(15)を有する装置に関する。電極(15)は、少なくとも部分的に、検体特異的塗膜または検体特異的分子を有する。プレート(10)中に伸びる導電体は、プレートの第2の面(14)から電気的接触接続および個別導出が可能である。塗膜または分子は、検体または検体の存在によって形成される物質に対する特異親和性を有する。また、装置は引き出し線を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれる検体を検出するための装置および測定装置に関する。検体は、溶解または懸濁形態で存在し得る。さらに、本発明は、上記装置の製造および電気的接触接続のための方法に関する。また、本発明は、上記検体検出装置の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体および気体有機化合物に用いられる流体センサが開示されている。同流体センサは、流体が浸透することによって導電率が変化する電気センサ抵抗を有する。このセンサ抵抗は、非導電性基板に設けられている。これは、流体が拡散可能な非導電体と、これに埋め込まれた炭素粒子とを含む。センサ抵抗は、上記基板のスルーホールで接触接続された電極により、基板背面の接触領域に接触接続が可能である。この接触領域は、複数の上記電極間に電気的接続を形成している。上記流体センサは、センサ抵抗の導電率を変化させる有機化合物の検出にのみ適している。これは、その他の検体の検出には適さない。
【0003】
非特許文献1は、溶液中の核酸を検出するための、電極装置を有するシリコンチップを開示している。検体に特異結合する捕捉分子は、中間層によって電極に固定化されている。上記電極は、配線によってチップ面に電気的に接触接続される。これらの配線は窒化ケイ素層により絶縁されている。電極に負または正の電位を印加することにより、帯電した検体が、捕捉分子を含む電極に引き寄せられ、捕捉分子に結合する。結合しなかった、あるいは非特異結合した検体は、極性を反転させることにより、電極領域から再び取り除くことができる。特異結合した検体は、蛍光を用いて検出される。
【0004】
また、モトローラ社からeSensor(登録商標)という製品名で販売されているバイオチップが公知であり、この場合は、表面に金電極が配列されている。金電極は、バイオチップの表面に横方向に接触接合されている。捕捉分子は、中間層により電極に固定化されている。捕捉分子によって1つの電極に結合した1つの検体は、この結合した検体に結合しかつ電気化学的に検知可能な標識を有するレポーター分子を用いて検出される。これらのレポーター分子の結合は、電気化学的に検出される。
【0005】
特許文献2には、液体試料の基質濃度を測定するためのバイオセンサが開示されている。このバイオセンサは、少なくとも1つの作用極と、対極とを有する電極系を含む絶縁性基板を具備する。酸化還元酵素を含み、液体を吸収可能であり、かつ上記電極系を用いて電気化学的に検出することのできる基質反応を誘発可能な酵素を含む多孔質基板により、上記電極系は被覆されている。同センサは、電子受容体をさらに有する。上記の酸化還元酵素および電子受容体は、いずれも液体試料に可溶である。
【0006】
特許文献3は、例えば特許文献2から公知である電極系を有するバイオセンサに関し、この電極系は主として炭素で構成され、少なくとも測定極の表面は吸着によりアルブミンまたはグルコースオキシダーゼで被覆されている。
【0007】
特許文献2および特許文献3から公知であるバイオセンサは、多孔質基板を測定ごとに交換しなければならない点および同バイオセンサが酸化還元酵素の基質ではない検体の濃度測定には適さないという点において不利である。さらに、このバイオセンサは小型化された基板において多数の異なる検体を測定するのには適さないという点で不利である。
【0008】
特許文献4は、液体中のグルコース濃度を測定するための膜電極に関する。この膜電極は、一方の面に少なくとも1つの貴金属電極が配置された基本膜と、基本膜と貴金属電極との上に配置されたプロトン選択性イオン膜と、このイオン膜上に配置された二重膜とを含み、これは、適当な媒質中にグルコースオキシダーゼを含む。この膜電極はグルコース濃度の測定にのみ適し、液体中のその他の検体の検出には適さない。
【0009】
特許文献5およびその優先出願である特許文献6には、バイオセンサチップが開示されている。このセンサは、絶縁体で形成される絶縁層に埋設された電極を有する。各電極上には、DNAプローブ分子が固定化されている。同センサは、シリコン系バイオセンサチップの一部を構成している。電極には、電極に印加される電位を供給可能な電極端子が接続されている。これらの電極端子は、チップ内の電気集積回路まで接続されている。この場合、バイオセンサチップは、単に一回使用のセンサチップとして用いるには製造コストが高すぎるという点において不利である。しかし、プローブ分子を腐食するまたは変化させる検体の場合、再生可能な測定のために必要な場合がある。
【0010】
特許文献7には、非導電性基板と、作用極と、作用極を被覆する半透過性膜とを有する多数回使用可能な電気化学固体センサが開示されている。作用極は、上記基板の一部に固定された導電性材料を含む。導電性材料の第1の部分は、電気絶縁性の誘電体塗膜によって被覆され、導電性物質の第2の部分は、活性膜によって被覆されている。活性膜は、活性層内に分散した白金メッキ炭素粉末粒子に担持された、触媒として有効な量の酵素を含む。電気化学固体センサは、構成が比較的複雑であるため、製造コストが高い。
【0011】
特許文献8には、交換可能な電気化学センサ装置を含む気体検出器が開示されている。交換可能な電気化学センサ装置と測定信号を検出するため評価ユニットとの間の電気的接触は、エラストマーコネクタにより形成される。この装置は、液体中の検体の検出には適さない。
【0012】
特許文献9には、酸化フェノール化合物で構成される表面塗膜を有する電極が開示されており、上記塗膜には、界面活性剤が混合されている。この界面活性剤は、洗剤に反応しやすい特定の検体の検出を妨げる可能性がある。したがって、この電極は、特定の検体の検出にしか用いることができない。
【0013】
特許文献10には、少なくとも2本の離間した配線を非導電性支持体上に含むバイオセンサが開示されている。界面活性物質で形成される導電性有機重合層が、上記配線と電気的に接触し、これらの配線間の表面を被覆している。さらに、上記電気接触を水との接触から保護するため、封止塗膜が嵌め込まれている。水性媒質からの相補分子が結合可能な有機分子で形成される層が、界面活性物質で形成される上記重合層に結合されている。
【0014】
特許文献11には、電気化学センサ用の厚膜導電体に用いられる組成物が開示されており、同組成物は、導電性金属粒子と、黒鉛と、熱可塑性ポリマーと、界面活性物質とを含む。この化合物は、電気化学バイオセンサ用の作用極を印刷するために用いることができる。しかし、特定の検体は界面活性物質に反応しやすいため、このようなセンサは、特定の検体の検出にのみしか適さない。
【0015】
上述の電極または電極装置は、製造が複雑である。これらを製造するには、一部リソグラフィー技術が必要となる。単に一回使用の電極または電極装置として用いるには、製造コストが高すぎる。電極密度が高い場合、いわゆる多層技術により、電極からの引き出し線を複数層に設ける必要がある。したがって、製造がかなり複雑でなければ、高い電極密度を達成することができない。電極につながる配線が検体を含んだ溶液と接触するのを防ぐためには、配線に保護層を施す必要がある。さらに、特定の用途、例えばマイクロ流体チャンバの底部に用いるためには、バイオチップは、平滑な表面を有する必要がある。したがって、配線によって生じる凹凸を補償するために、補償層を施さなければならない。
【特許文献1】独国特許発明第19708529号明細書
【特許文献2】欧州特許第0136362号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3687646号明細書(DE3687646T3)
【特許文献4】独国特許出願公開第19621241号明細書
【特許文献5】国際公開第01/75151号パンフレット
【特許文献6】独国特許出願公開第10015816号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0690134号明細書
【特許文献8】米国特許第5363690号明細書
【特許文献9】国際公開第01/13103号パンフレット
【特許文献10】欧州特許出願公開第0402917号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0987333号明細書
【非特許文献1】ソスノウスキ(Sosnowsky)ら、「プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイティド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci USA)」、米国、1997年、94号、1119〜1123頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、従来技術における不利点を克服することにある。特に、簡素であり、したがって製造費用効率が高い、電極を具備する検体検出装置を提供することを意図するものである。
【0017】
この目的は、請求項1、18〜22、35および38に記載の特徴により達成される。請求項2〜17、23〜34、36、37および39〜51に記載の特徴によって適宜の改善がなされる。
【0018】
本発明は、液体中の検体を検出するための装置であって、互いに絶縁され、かつ液体に対して非透過性である非導電性プレートの第1の面に配置された多数個の電極を有し、電極は、少なくとも部分的に、検体特異的塗膜または検体特異的分子を有し、プレート中に伸びる導電体によってプレートの第2の面から電気的接触接続および個別導出が可能な装置を提供する。塗膜または分子は、検体または検体の存在によって形成される物質、例えば検体の分解生成物に対する特異親和性を有するため検体特異的である。装置は、引き出し線を有しない。上記導電体は、上記プレートおよび上記電極に接続が可能である。「電極」という用語は、純粋に機能的な意味において理解される。上記液体中に電荷キャリアを伝導することが可能な導電体の一部を意味すると理解される。したがって、電極は、非導電性プレートの第1の面に位置する導電体の一部でありうる。しかし、電極は、上記プレート中に伸びる導電体に接続されたさらなる導電体であってもよい。この場合、プレートは、任意の、特に、第1および第2の面を有する平坦な基体を意味すると理解される。ここにおいて、またこれ以下において、「部分的に(in part)」は、個々の電極の部分および存在する電極全体の部分の両方が各機能を有することを意味する。
【0019】
本発明による上記装置は簡素であり、したがって製造費用効率が高い。液体と電極の給電線との間の接触を防止するための保護層を施す必要がない。さらに、上記プレートの平坦な表面を形成するために補償層を施す必要がない。横方向の引き出し線が不要となっているため、装置を、非常に費用効率の高い方法で、電極の外側の領域において完全に平坦な形状とすることが可能である。その結果、液体を吸収するチャンバの底部として装置を容易に用いることができ、この場合、液体封止材は問題とならない。本発明による装置のさらなる利点は、電極間に配線のための空きスペースを残す必要がないため、横方向に導出される電極に比べて高い電極密度が可能であることである。この高い電極密度は、複雑な多層技術を用いることなく達成できる。高電極密度と、少なくとも部分的に、異なる特異性を有する検体特異的塗膜または検体特異的分子と、個別導出可能な電極とを有する本発明による装置を用いることにより、多くの異なる検体を同時に検出するための装置を提供することができる。本発明による装置は、異なる検体または検体の組み合わせを検出するために、それぞれの場合において、電極に特定の分子または塗膜が付与された電極アレイとして提供してもよい。
【0020】
バイオセンサチップの開発における全体的な傾向は、より複雑なチップ構造の実現に向かっている。しかし、これらは製造が複雑であり、一般用センサ技術に用いるには、特に異なる検体に用いるには最終的に高価となりすぎる。シリコンをベースとして製造される公知のチップは、チップの一方の面に存在する電極が他方の面から導出可能となるようにチップ中に伸びる導電体を有さない。むしろ、シリコン支持体の少なくとも一部には穴があけられておらず、存在する電極は最終的に横方向に導出される。引き出し線をなくすと同時にプレートの第2の面からの接触接続を可能とすることにより、本発明による装置の構造が簡素となるため、同装置を一回使用に適するように高い費用効率で製造することができる。検体特異的塗膜または検体特異的分子が腐食される電極の場合、測定は一回使用の装置を用いてのみ再生可能に行うことができる。本発明による装置は、シリコン系チップの製造に必要なコストのほんの何分の1かのコストでチップとして製造することができる。したがって、同装置は、一般用センサ技術における躍進に貢献しうる。本発明による装置は、同装置を接触接続するために設けられる装置において使用することができる。信号の導出および測定に必要であって、本発明による装置により提供されない全ての部品は、この場合、この装置により提供される。したがって、より多くの高価な部品を再使用することできる。
【0021】
本発明のさらなる利点は、プレートの第2の面からの接触接続により、配線路を短くすることができることである。その結果、電極が横方向に導出される場合の比較的長い配線路に起因する電気ノイズを防止することが可能である。電気ノイズは、検出の感度を低下させ、それによって検体の検出をも妨げうる。有利な改善において、導電体は電極と一体に形成されている。電極および導電体は同一の材料で構成してもよい。これにより、第2の面からの良好な接触接続性および非常に費用効率の高い製造が達成される。電極と上記プレートの第1の面の導電体との間には、電気的接触を形成する必要はない。
【0022】
電極の塗膜または検体特異的分子は、それぞれの場合において、異なっていてもよく、したがって、異なる電極はこの点でそれぞれ互いに異なる。その結果、検体特異的塗膜または検体特異的分子は、異なる特異性を有し、異なる検体の検出、特に同時検出を可能にする。この場合、検出可能な検体は、上記の異なる塗膜または分子の特異性によって規定されたグループに含まれる。
【0023】
塗膜または検体特異的分子は、捕捉分子、特に電気化学的に不活性な捕捉分子を含んでもよい。この場合、捕捉分子は、上記検体または検体の存在により形成される物質、例えば上記検体の分解生成物が、上記液体から結合する分子である。検体を電気化学的に検出する際に信号を生じさせない場合、上記捕捉分子は電気化学的に不活性である。捕捉分子は、特に一本鎖の、核酸、核酸類似体、配位子,ハプテン、ペプチド、たんぱく質、糖、脂質またはイオン交換体であってもよい。捕捉分子は電極に共有結合および/または方向性結合されていてもよい。共有結合の利点は、捕捉分子が電極から拡散できないことである。本発明の装置によって可能である非常に小さな電極間隔の場合、捕捉分子が少し拡散するだけで、検出の妨害となりうる。方向性結合とは、捕捉分子が、それぞれの場合において、捕捉分子の特定の部位、例えば分子の一端によって電極に結合していることを意味すると理解される。これにより、検体の結合を担う捕捉分子の部位が当該捕捉分子の電極への結合によって影響を受けないことが確実となる。捕捉分子は、少なくとも部分的に、中間層、特に電気化学的にほぼ不活性な中間層により電極に結合されていてもよい。中間層はシランから形成されていてもよい。検体を電気化学的に検出する際に信号を生じさせない場合、上記中間層は電気化学的にほぼ不活性である。
【0024】
好ましい改善において、塗膜は電極の少なくとも1つの半透過性被膜を含んでもよい。半透過性被膜は、それぞれの場合において、異なる透過性を有していてもよく、したがって、異なる電極の被膜はこれらの透過性において異なっている。上記被膜は、特定の大きさまでの分子に対して選択的透過性を有していてもよい。この場合、分子篩作用を持つポリマーマトリクスを用いてもよい。その結果、例えば検体の特異分解により生じる微小分子のみを電極に透過させることが可能となるため、これらの分子のみが特異的に検出される。本発明によるこのような装置は、反応器中で起こる反応を追跡するための工程管理において用いることができる。
【0025】
導電体は、プレートの第2の面から第1の面に向かって、特に円錐状にテーパされている、プレートの穿孔内に配置されていてもよい。この場合、土導電体は、上記穿孔のテーパ形状によって形成された切り欠きのテーパ部分のみに配置してもよい。しかし、切り欠きから自由に突出してもよい。接触接続のために電極方向に導かれた導電体は、最初は切り欠き内に突き当たっているだけであっても電極まで導かれるため、切り欠きのテーパ形状により、上記第2の面からの電気的な接触接続が容易となる。
【0026】
プレートは、マイクロ流体チャンバの底部に配置されているか、またはマイクロ流体チャンバの底部を形成していてもよい。非常に平坦な実施形態の実現可能性およびこれに関連した良好な封止特性により、本発明による装置はこれに大変適している。
【0027】
装置はチップであってもよい。ここでは、必ずしも半導体材料を含まない、電子微細構造体を有する微小なプレートを意味する。この場合、電極は、電極アレイとして配置してもよい。
【0028】
プレートは、1cm2 当たり、10を超える、好ましくは20、40、80、100または160を超える、特に好ましくは1000を超える、特に10,000を超える電極を有していてもよい。電極は、少なくとも部分的に、粒子から形成されていてもよい。粒子は、検体特異的塗膜が施されているか、検体特異的分子を含んでいてもよい。この場合、粒子は、互いに緩やかにまたは強固に連結されていてもよい。緩やかな連結は、例えば、常磁性でありかつ上記電極または導電体の磁力によって保持されている粒子によって形成される。
【0029】
さらに、電極は、少なくとも部分的に、非金属導電体、特に炭素から形成されていてもよい。炭素含有電極は、生体分子の検出に特によく適している。電極は、少なくとも部分的に、鉛筆電極、ガラス状炭素電極、炭素繊維含有電極、炭素ペースト電極またはプラスチック複合体電極、好ましくは、炭素元素を、特に黒鉛またはカーボンブラックとして含む、ポリカーボネート電極であってもよい。カーボンブラックは、工業用カーボンブラックまたは人工カーボンブラックであってもよい。
【0030】
本発明は、さらに、電極が少なくとも1つの参照極と、少なくとも1つの対極と、および多数個の作用極とを含む本発明による装置を具備する測定装置に関する。測定装置は、電流/電圧変換器と、ポテンシオスタットと、作用極を流れる電流を測定するための手段とを含む。電極は、作用極と参照極との間に所定の電圧プロファイルを生成するためのポテンシオスタットと電気的に接続され、電流/電圧変換器のうち1つは、全ての作用極を同一の電位に保持するために各作用極の下流に接続されている。この場合、全ての作用極に同時に与えられる所定の同一の電圧プロファイルの作成に必要なポテンシオスタットは1つだけである。全ての作用極が同一の電位に保持されているため、例えば、作用極に流れる電流を平行して測定することが可能である。この目的のため、各作用極は、信号の個別測定のためのカレントフォロアによって回路の接地に実質的に接続されていてもよい。
【0031】
本発明は、本発明による装置を製造するための方法であって、
a)実質的に平行に配置された細長い電極材料と、電極材料を囲む絶縁性材料との複合体を作製し、複合体を、
−固体電極材料を硬化性絶縁材料によって被包するか、
−固体電極材料を、固体絶縁性材料の実質的に平行な切り欠きもしくは穿孔または塑性変形可能な絶縁性材料に導入するか、
−一体型の固体絶縁性材料または穿孔を一致させて積層されたプレート型絶縁性材料の、実質的に平行な切り欠きまたは穿孔に硬化性のペーストまたは液体電極材料を充填するか、
−絶縁性材料を含む被覆材を有する電極材料を、被覆材を溶融、ポッティングまたは接着接合することにより接続するか、あるいは
−絶縁性材料に囲まれた電極材料から形成された複合体を押しだすことによって作製する工程と、
b)切削、切断もしくは分離用円板を用いるか、または積層されたプレート型絶縁性材料を分解することにより、複合体を電極材料の長手方向に対して実質的に垂直に分離する工程とを含む方法に関する。
【0032】
上記固体電極材料は、例えば、平行に配置され、エポキシ樹脂で被包された複数の鉛筆芯であってもよい。上記塑性変形可能な絶縁性材料は、導入過程において電極材料の形状に適合させるかつ/または導入後に共に押圧することにより電極材料の形状に適合させてもよい。これにより、終端部分において確実に液体が封止される。ここにおいて、また以下において、電極材料の「硬化」とは、当初は液体またはペーストである電極材料が、時間が経つにつれて凝固する、すなわち、その硬度を増すことを意味する。これは、例えば、高温においてペースト状である電極材料を乾燥または冷却することによって重合することにより行われる。しかし、凝固後の電極材料の最終状態であっても、比較的に柔らかくすることが可能である。
【0033】
上記一体型の絶縁性材料は、射出成形法を用いて作製してもよい。積層されたプレート型絶縁性材料に電極材料を充填する際、積層された絶縁性材料の一方の面内に充填される電極材料が全ての穿孔を満たすように上記穿孔が配置される。電極材料は、例えば押し出しにより、穿孔内に圧入することができる。この目的で用いられる方法は、鉛筆芯の製造から公知である方法であってもよい。
【0034】
上記被覆材は、加熱するか、または例えば被覆材を初期に溶解する溶媒を加えることによって化学的に溶融することができる。
【0035】
絶縁性材料に囲まれた電極材料から形成される複合体を押し出すことによって上記複合体を作製する際、導電性電極材料および絶縁性材料はいずれも、両材料を複合体として一緒に押し出すことができるように塑性変形が可能である。これにより、非常に費用効率の高い製造が可能となる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明による装置を製造するための方法であって、
a)穿孔を有する非導電性プレートを設ける工程と、
b)プレートの第1の面に硬化性ペースト電極材料を塗布する工程と、
c)電極材料を穿孔に圧入する工程と、
d)当該電極材料が穿孔内に存在する電極材料を導電的に接続するように、穿孔間に存在する電極材料を除去する工程とを含む方法に関する。
【0037】
上記硬化は、例えば、重合、乾燥または冷却によって行うことができる。工程cは、工程bによる塗布と同時にまたはその後に行ってもよい。この方法は、インクの代わりに電極材料を塗布して、スクリーン印刷法のように行ってもよい。
【0038】
本発明は、さらに、本発明による装置を製造するための方法であって、
a)穿孔を有する非導電性プレートを設ける工程と、
b)少なくとも部分的に、穿孔に対応する孔を有するアパーチャマスク、または、少なくとも部分的に、穿孔に対応する透過性領域を有するスクリーン印刷用マスクを、孔または領域が、少なくとも部分的に、プレートの穿孔に一致するようプレートの第1の面に配置する工程と、
c)アパーチャマスクまたはスクリーン印刷用マスクに硬化性ペースト電極材料を塗布する工程と、
d)電極材料を孔または透過性領域を介して穿孔に圧入する工程と、
e)アパーチャマスクまたはスクリーン印刷用マスクをプレートから除去する工程とを含む方法に関する。
【0039】
上記方法は、工程eにより、余分な電極材料の除去が著しく簡素化されるという利点を有し、これにより、アパーチャマスクまたはスクリーン印刷用マスクの高さによって上記プレートの第1の面が高くなるため、より大きな電極面積が達成される。同様のプレートの場合、工程b〜工程eを繰り返し実施する際に、アパーチャマスクまたはスクリーン印刷用マスクによって異なる穿孔が覆われたり、開放されたままになることにより、異なる電極材料を穿孔に圧入することができる。特に、電極材料は、異なる検体特異的分子を有していてもよい。
【0040】
さらに、本発明は、本発明による装置を製造するための方法であって、
a)非導電性プレートを設ける工程と、
b)プレートに穿孔を形成する工程と、
c)プレート中に伸びる導電体を形成するためのビアを穿孔内に形成する工程と、
d)プレートの第1の面においてビアに硬化性ペースト電極材料を塗布する工程とを含む方法に関する。
【0041】
工程bにおいて、穿孔は、ボーリング、特にレーザ光線を用いたボーリングによって形成されてもよい。
【0042】
ビアは、ここでは非導電性プレートの第1および第2の面によって形成される2つの層の間の導電性接続である。一般に、ビアは、回路基板や集積回路に用いられる。ビアの形成方法は、一般に公知である。本発明による方法の場合、ビアは、上記プレートの第1の面によって形成される平面から突出しないように形成することが好ましい。ビアの横方向の大きさは、上記第1の面においてビアの端部に好ましくはスクリーン印刷方により設けられた電極の形状に影響を与えないよう十分に小さくなければならない。ビアは内部に管状の開口部を有することが多いため、このような影響が起こりうる。上記の開口部が大きすぎると、ビアに塗布されたペーストまたは液体電極材料が、開口部を封止する代わりに、これを貫通する場合があり、その結果、本発明によるプレートまたは装置が液体に対して透過性となりうる。ビアは、少なくとも、上記プレートの第1の面に位置する端部において、連続した、特に平滑な表面を有する、すなわち、開口部を有しないことが好ましい。
【0043】
ビアは、例えば、銅薄層を含んでもよい。工程cにおいて、ビアは、穿孔内での電着により形成されるか、または穿孔に各導電体を導入することにより形成されることが好ましい。電極材料はパッド印刷またはスクリーン印刷のような方法により塗布されることが好ましい。いずれの技術も、電極の製造用として基本的に公知である。ここでは、これらは、本発明による装置を特に高い費用効率で正確に製造することを可能にしている。パッド印刷の場合、所望の電極パターンに対応するパターン状に配置されたペースト電極材料がパッドによって吸着される。その後、パッドを押圧することにより、電極材料は、非導電性プレートに所定のパターン状に塗布される。スクリーン印刷のような方法によって形成された電極は、「スクリーン印刷電極」と称される。
【0044】
塗膜、特に、検体特異的塗膜が電極材料に塗布されてもよい。また、検体特異的分子が電極材料に導入されてもよい。これらの作業はいずれも、上記の工程前、工程後または工程中に行なってもよい。本発明における電極材料には、電極を形成する役割を持つ材料およびこれによって形成される電極の両方が含まれる。捕捉分子、特に電気化学的に不活性な捕捉分子が塗膜または検体特異的分子として電極材料に塗布されるか、または導入されてもよい。それぞれの場合において異なる塗膜が電極または電極材料に塗布されてもよい。それぞれの場合において異なる検体特異的分子が電極材料に導入されてもよい。使用される捕捉分子が、特に一本鎖の、核酸、核酸類似体、配位子、ハプテン、ペプチド、たんぱく質、糖、脂質またはイオン交換体であってもよい。捕捉分子が電極材料に共有結合および/または方向性結合されるか、または電極材料上に合成もしくは電気化学的に析出されてもよい。捕捉分子が、少なくとも部分的に、中間層、特に電気化学的にほぼ不活性な中間層により電極材料に結合されるか、または中間層上に合成されることが好ましい。中間層がシランから形成されることが好ましい。電極材料が少なくとも1つの半透過性被膜で覆われることが好ましい。捕捉分子によるコーティングに加えてこれを行なってもよい。電極材料または電極が、それぞれの場合において、異なる透過性を有する半透過性被膜で覆われてもよい。電極材料から形成される各電極は、異なる塗膜を有してもよい。
【0045】
本発明は、本発明による装置を電気的に接触接続する方法であって、個別導出可能な複数の導電体を装置のプレートの第2の面に接触させ、この場合電極が個別に導出可能となるように、導電体が少なくとも部分的に電極を接触接続する方法に関する。導電体を、ばね偏向を可能にするよう装着し、プレートの第2の面に接触させて、この場合これらがばね偏向を行なうことが好ましい。一例として、ばねピンを有する接触板をこの目的に用いてもよい。電気的接触接続は、エラストマーコネクタ、特にゼブラ(登録商標)エラストマーコネクタにより行なわれてもよい。エラストマーコネクタは、交互に積層された導電性エラストマーおよび非導電性エラストマー、特にシリコンエラストマーで構成される。エラストマーコネクタは、上記の層を表面に対して垂直にして、シート状に形成してもよい。例えば、銀、金または炭素で構成される導電性繊維または粒子が、上記導電層に添加される。ゼブラ(登録商標)エラストマーコネクタは、フジポリ・アメリカ社(Fujipoly America)(900 Milik Street P.O. Box 119、Carteret、NJ 07008、USA)により販売されている。上記プレートの第2の面にゼブラ(登録商標)エラストマーコネクタを付与し、プレートとゼブラ(登録商標)エラストマーコネクタとの間の接触領域に若干の圧力を加えることにより、電極が導電層に接触する。電極は、導電層を電気評価ユニットに接続することにより導出することができる。
【0046】
さらに、本発明は、液体中の少なくとも1つの検体を検出するための本発明による装置の用途であって、液体を、装置のプレートの第1の面の電極に接触させ、電極を、プレートの第2の面に電気的に接触接続させる用途に関する。この場合、検体または検体の存在により形成される物質、例えば検体の分解生成物が電極に存在する捕捉分子に結合する条件下で、液体を電極に接触させることが好ましい。捕捉分子に結合した検体または物質の検出は、例えば導電率測定により電気的に、電気化学的に、光学的にもしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて行なってもよい。上記の検出方法を組み合わせることによって検出を行なってもよい。電気化学的検出の場合、上記検体または物質と電極との直接接触を可能にできれば有利である。光学的検出の場合、電極において、例えば蛍光などの光信号を測定することが可能である。この場合、上記検体または物質は、蛍光性の検体または蛍光物質が捕捉分子によって特異結合される電極を、例えば光学的検出によって特定することにより特定される。電極を特定の捕捉分子に割り当てることができるため、上記検体または物質を特定することが可能である。この検出方法の場合、電極は、帯電した検体または物質を電気的に誘引するかつ/または反発させる機能を果たしている。対応する電位を電極に印加することにより、帯電した検体または帯電した物質を捕捉分子領域に電気的に移動させることができる。捕捉分子領域において上記検体または物質の濃度を高くすることにより、上記検体または物質に対する結合を加速することが可能である。検体または物質のうち、結合しなかったもの、あるいは結合が弱いものおよび非特異的に結合したものは、電極に反発電位を印加することにより電極から除去してもよい。この場合、上記検体または物質に対して不透過性である中間層により、捕捉分子を電極に固定化することができれば有利である。これにより、上記検体または物質が、電極と直接接触した際に電気化学的に変換されることを防ぐことができる。これにより、上記検体または物質を捕捉分子に高速に移動するために高電圧を印加することが可能となる。
【0047】
電極は、半透過性被膜で覆われてもよい。これにより、検体、検体の分解生成物または被膜を透過する物質のみを選択的に検出することが可能となる。この検出は、電気的、電気化学的、光学的もしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて行なってもよい。また、これらの検出方法を組み合わせることにより行なってもよい。それぞれの場合において、電極は、異なる透過性を有する半透過性被膜により覆われることが好ましい。
【0048】
検体は、生体分子、特に、核酸、たんぱく質、抗原、糖、脂質、細胞またはウイルスであってもよい。これは、標識物質を有していてもよい。標識物質は、例えば酵素または酸化還元活性を有する標識である。装置の用途において、酸化還元反応または触媒による水素の発生を電気化学的に検出してもよい。電気化学的検出は、例えば、差分パルスボルタンメトリー(DPV)、クロノポテンシオメトリによるストリッピング分析(CPSA)または抵抗もしくはインピーダンスの変化の検出によって行ってもよい。
【0049】
上記電気化学的検出は、
a)少なくとも1つの対極と、参照極と、および多数個の作用極とを有する本発明による装置を設ける工程と、
b)液体を、作用極と、対極と、参照極とに接触させる工程と、
c)作用極と参照極との間に所定の電圧プロファイルを同時に与える工程と、
d)測定中はすべての作用極を同一の電位に保った状態で、作用極を流れる電流を測定する工程とを含んでもよい。
【0050】
実質的に検体または物質だけが信号を生じさせる電位間隔が、電気化学的検出のための測定用に選択されることが好ましい。
【0051】
電極、特に炭素含有電極が、検体の検出に先立って洗剤で処理されることが好ましい。これは、検体を含む液体が電極に接触する前あるいは接触している間に行なってもよい。洗剤処理の代わりに電気化学的調整を行ってもよい。洗剤処理は、電気化学的調整よりも迅速かつ費用効率が高い。洗剤を含有する液体中に電極を保存し、例えば、この液体に入れたまま販売してもよい。洗剤はイオン洗剤であることが好ましい。洗剤は濃度0.1%w/v〜10%w/vで存在することが適宜である。洗剤は、10mmol/l未満、特に5mmol/l未満、好ましくは3mmol/lの臨界ミセル濃度を水中において有することが好ましい。洗剤はドデシル硫酸ナトリウムであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明の実施形態例について、図面を参照にしてより詳細に説明する。
【0053】
図1aは、第1の面12と第2の面14とを有する、塑性変形可能な電気絶縁性基体10を示す。図1bは、鉛筆芯で形成される4つの電極15を示す。図1cは、機械的な圧力により電極15が導入された基体10を示す。この場合、上記電極は、各電極が第1の面12および第2の面14から突出するように導入される。電極15を導入後、基体10を硬化してもよい。図1dは、その結果得られる検出装置示17の平面図を示し、図1eは、同装置の側面図を示す。図2aに示すように、装置17を、線16に沿って垂直に多数個に切断し、これにより、図2bに示す本発明の円板型装置に分割が可能である。この場合、各電極15は、円板の上面および下面のそれぞれと接触している。
【0054】
図3aに、絶縁性材料を含む被覆材18を有する電極15の断面図を示し、図3bにその平面図を示す。図3cおよび図3dは、このような電極の複合体の断面図および平面図を示し、上記複合体は、被覆材18を接続することによって得られる。矢印20は、複合体から本発明の円板型装置17を製造するために複合体を切断可能な位置を示す。
【0055】
図4aは、4つの平行な第1の穿孔22を有する電気絶縁性基体10を示す。基体10は、例えば、プラスチックを含み、射出成形法により形成してもよい。導電性電極材料15を含む組成物を、基体10の第1の穿孔22に圧入してもよい。これは、例えば、鉛筆芯の製造に通常用いられている押し出し法により行なってもよい。電極材料15は、鉛筆芯の製造に用いられる材料であってもよい。また、電極材料15が実際に硬化される前に、電極材料を充填した第1の穿孔22に対して垂直な矢印20で示される位置において、基体10を切断してもよい。これにより、図4cに斜視図、図4dに平面図を示した、本発明の円板型装置17が得られる。電極材料15と基体10とで構成される複合体を機械的に切断する代わりに、第1の穿孔22を有する多数の円板型基体10を、第1の穿孔22が一致するように順次積み重ねてもよい。この積層体の一方の端部において電極材料15を充填すると、円板型基体10の全ての第1の穿孔が充填される。積層体もまた、電極材料が硬化される前に分解するこができる。
【0056】
図5cは、第1の面12と第2の面14とを有する、プレート型基体10の断面図を示す。図5bは、この基体10の、第2の面14側からの平面図を示し、図5aは、同、第1の面12側からの平面図を示す。基体10は、第1の面12から第2の面14にかけて幅が広がっている円錐形の穿孔22を有する。図6aにおいて、プレート型基体10は、第1の面12において、アパーチャマスク24により被覆されており、このアパーチャマスクは、第1の面12の穿孔22と一致する孔26を有する。図6bは、アパーチャマスク24に塗布された導電性ペースト電極材料15を示す。図6cは、スクリーン印刷のような方法により孔26および穿孔22に圧入された後の電極材料15を示す。図6dは、アパーチャマスク24を除去した後の本発明の装置17を示す。
【0057】
図7aおよび図7bは、検出装置17を電気的に接触接続するための装置36を示す。この場合、電気的接触接続装置36は、絶縁性材料で構成される弾性マトリクス28を含む。導電ピン30が、このマトリクス28内において平行に配置され、マトリクスの下面の接点34と電気的に接続されている。これらのピンは、ばね32により弾性マトリクスから押し出される。ピン30は、接触接続用に設けられた面においてテーパされて先端が尖っていることが好ましい。図7bに示す、電気的接触接続装置36による検出装置17の接触接続は、これら2つの装置17、36を互いに押し付けることにより行なわれる。この場合、ピン30は、電極15と接触する。この場合、弾性マトリクス28は圧縮される。その結果、ピン30は、検出装置17の第1の面12に向かってテーパされている穿孔22を貫通し、この場合、電極15と接触することができる。テーパされて先端が尖ったピン30の形状と、テーパされている穿孔22と、電極15の形状とにより、ピン30と電極15との接触面積が拡大する。
【0058】
電極15を、例えばエポキシ樹脂等の絶縁性材料によって被包するための、外装材39と電極マウント40との構成の組み立て前の図を図8aに示し、組み立て後の図を図8bに示す。外装材39のうち1つは、上記絶縁性材料を充填するための開口部41を有する。電極と、上記絶縁性材料の重合により得られる絶縁性材料とで構成される複合体は、切断が可能であり、これにより、円板型検出装置17が4x4の電極を有するチップとして作製される。このような検出装置17を図9に示す。この場合、鉛筆芯は、電極材料としての機能を果たす。上記チップのうち1つのチップの電極を、pH4.6の0.1M酢酸ナトリウム緩衝剤中、1.2Vで1分間電気化学的に処理または調整した。上記チップの別のチップの電極を、10%SDSを用いて1分間処理した。電極をシラン化するため、これらのチップを、1%(v/v)3−(グリシジルオキシプロピル)−トリメトキシシラン(Fluka)と、1%(v/v)脱イオン水(Millipore)と、98%(v/v)エタノール(Merck)とを含む溶液中、微かに振りながら、室温で1時間インキュベートした。続いて、これらを80℃で30分間乾燥した。
【0059】
配列5’ cct icc cca atc cct tta tt 3’−アミノリンク(aminolink)(配列ID番号:1−アミノリンク)(iはイノシン部分を表す)のオリゴヌクレオチドTNF2を、シラン化された電極に捕捉分子としてカップリングさせた。上記オリゴヌクレオチドは、ヒト腫瘍壊死因αのc−DNAを含む配列であり、同配列にはアミノリンクが付与されている。カップリングのため、いずれの場合においても、pH9.5、0.1MのNa2Co3に150pmol/mlのオリゴヌクレオチドを含む溶液を1滴、チップの各電極に滴下した。その後、チップを、湿室中、室温で1時間インキュベートした。この場合、オリゴヌクレオチドの遊離アミノ基がシランと共有結合を形成する。共有結合を形成しなかったオリゴヌクレオチドを分離するため、チップを、2mlの10%SDS中、室温で1時間インキュベートした。残存する結合サイトを飽和させるため、チップを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)またはエタノールアミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、室温で1時間インキュベートした。
【0060】
電気化学的核酸検出の感度および再現性に対する電極処理の影響を調べるため、チップを、10nmol/mlの相補核酸TNF2k(配列ID番号:2)を溶解した、洗剤を含むハイブリダイゼーション緩衝液(Roche)中においてインキュベートし、結合した核酸TNF2kを、DPVにより測定した。いずれの場合も、電気化学的処理または洗剤処理された電極を用いた測定を10回行なった。洗剤処理を行なった場合、電気化学的処理を行った場合に比べて感度が10%以上高くなった。さらに、洗剤処理された電極を用いることによって、測定の再現性が向上した。洗剤処理された電極の測定の標準偏差は、電気化学処理と比べ、3倍低かった。
【0061】
図10は、図9に示す装置17を用いて平行に行なわれたDPV測定によって測定されたニシン精子DNAの2つのボルタンモグラムを示す。この目的のため、装置17の電極材料を、ばね接触ピンを用いて、この電極材料の第2の面から電子評価ユニットに接続した。電極のうち1つは、参照極として接続した。100μlの2μg/μlニシン精子DNAを溶解したTE緩衝液(10nMのTrisCl、1mMのEDTA、pH8)を装置の第1の面に塗布し、10分間インキュベートした。DPVを用い、グアニンおよびアデニンの酸化に基づいて、複数の電極において上記DNAを同時に検出した。この場合、位置的に一致したグアニンおよびアデニンの大きな酸化ピークが測定された。
【0062】
図11aは、多数個の電極15と、液体を通過させるための切り欠き46とを有する集合マイクロ流体チャンバ42の平面図を示し、図11bは、このマイクロ流体チャンバ42の上部44の平面図を示し、図11cは、本発明の装置17によって形成される、同チャンバの下部の平面図を示す。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、液体に含まれる検体を検出するための装置および測定装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による装置の製造方法の説明図を示す。
【図2】電極材料と絶縁性材料とで形成される複合体を切断することにより本発明による装置を製造する方法の説明図を示す。
【図3】平行に配置された細長い電極材料と絶縁性材料とで形成される複合体の製造方法の説明図を示す。
【図4】押し出しおよびそれによって作製された複合体を切断することにより本発明による検出装置を製造する方法の説明図を示す。
【図5】検出装置を製造するための基板を示す。
【図6】本発明による装置を製造するためのスクリーン印刷等の方法の説明図を示す。
【図7】本発明による検出装置を電気的に接触接続する方法および装置の説明図を示す。
【図8】4x4の電極を有するチップの製造方法の説明図を示す。
【図9】同チップの一例を示す。
【図10】同チップを用いて平行して行われた、ニシン精子DNAの2つのDPV測定の結果を示す。
【図11】本発明による上記検出装置を備えたマイクロ流体チャンバの説明図を示す。
【符号の説明】
【0065】
10 非導電性プレート
12 第1の面
14 第2の面
15 電極(材料)
17 装置
18 被覆材
22 穿孔
26 孔
30 導電体
42 マイクロ流体チャンバ









【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の検体を検出するための装置(17)であって、
互いに絶縁され、前記液体に対して非透過性である非導電性プレート(10)の第1の面(12)に配置された多数個の電極(15)を有し、
前記電極(15)は、少なくとも部分的に、検体特異的塗膜または検体特異的分子を有し、前記プレート(10)中に伸びる導電体により前記プレートの第2の面(14)から電気的接触接続および個別導出が可能であり、
前記塗膜または前記分子は、前記検体または前記検体の存在によって形成される物質に対する特異親和性を有するために検体特異的であり、
前記装置は引き出し線を有しない装置。
【請求項2】
前記導電体は前記電極(15)と一体に形成されている、請求項1に記載の装置(17)。
【請求項3】
前記電極(15)の前記塗膜または前記検体特異的分子がそれぞれの場合において異なる、請求項1または2に記載の装置(17)。
【請求項4】
前記塗膜または前記検体特異的分子が、捕捉分子、特に電気化学的に不活性な捕捉分子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項5】
前記捕捉分子が、特に一本鎖の、核酸、核酸類似体、配位子,ハプテン、ペプチド、たんぱく質、糖、脂質またはイオン交換体である、請求項4に記載の装置(17)。
【請求項6】
前記捕捉分子が前記電極(15)に共有結合および/または方向性結合されている、請求項4または5に記載の装置(17)。
【請求項7】
前記捕捉分子が、少なくとも部分的に、中間層、特に電気化学的にほぼ不活性な中間層により前記電極(15)に結合されている、請求項4〜6のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項8】
前記中間層がシランから形成されている、請求項7に記載の装置(17)。
【請求項9】
前記塗膜が前記電極(15)の少なくとも1つの半透過性被膜を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項10】
前記半透過性被膜が、それぞれの場合において異なる透過性を有する、請求項9に記載の装置(17)。
【請求項11】
前記導電体が、前記プレート(10)の前記第2の面(14)から前記第1の面(12)に向かって、特に円錐状にテーパされている、前記プレート(10)の穿孔(22)内に配置されている、請求項1〜10のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項12】
前記プレート(10)がマイクロ流体チャンバ(42)の底部に配置されているか、またはマイクロ流体チャンバの底部を形成している、請求項1〜11のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項13】
前記プレート(10)がチップである、請求項1〜12のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項14】
前記プレート(10)が、1cm2 当たり、10を超える、好ましくは20、40、80、100または160を超える、特に好ましくは1000を超える、特に10,000を超える電極を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項15】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、粒子から形成されている、請求項1〜14のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項16】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、非金属導電体、特に炭素から形成されている、請求項1〜15のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項17】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、鉛筆電極、ガラス状炭素電極、炭素繊維含有電極、炭素ペースト電極またはプラスチック複合体電極、好ましくは、炭素元素を、特に黒鉛またはカーボンブラックとして含む、ポリカーボネート電極である、請求項16に記載の装置(17)。
【請求項18】
前記電極(15)が少なくとも1つの参照極と、少なくとも1つの対極と、および多数個の作用極とを含む、請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を具備する測定装置であって
電流/電圧変換器と、ポテンシオスタットと、前記作用極を流れる電流を測定するための手段とを含み、
前記電極(15)は、前記作用極と前記参照極との間に所定の電圧プロファイルを生成するための前記ポテンシオスタットと電気的に接続され、
前記電流/電圧変換器のうち1つは、全ての作用極を同一の電位に保持するために各作用極の下流に接続されている、測定装置。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)実質的に平行に配置された細長い電極材料(15)と、前記電極材料(15)を囲む絶縁性材料との複合体を作製し、前記複合体を、
−固体電極材料(15)を硬化性絶縁材料によって被包するか、
−固体電極材料(15)を、固体絶縁性材料の実質的に平行な切り欠きもしくは穿孔(22)または塑性変形可能な絶縁性材料に導入するか、
−一体型の固体絶縁性材料または穿孔(22)を一致させて積層されたプレート型絶縁性材料の、実質的に平行な切り欠きまたは穿孔(22)にペーストまたは液体硬化性電極材料(15)を充填するか、
−絶縁性材料を含む被覆材(18)を有する電極材料(15)を、前記被覆材(18)を溶融、ポッティングまたは接着接合することにより接続するか、あるいは
−絶縁性材料(18)に囲まれた電極材料(15)から形成された複合体を押し出すことによって作製する工程と、
b)切削、切断もしくは分離用円板を用いるか、または前記積層されたプレート型絶縁性材料を分解することにより、前記複合体を前記電極材料(15)の長手方向に対して実質的に垂直に分離する工程とを含む、方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)穿孔(22)を有する非導電性プレート(10)を設ける工程と、
b)前記プレート(10)の第1の面(12)に硬化性ペースト電極材料(15)を塗布する工程と、
c)前記電極材料(15)を前記穿孔(22)に圧入する工程と、
d)当該電極材料(15)が前記穿孔内に存在する前記電極材料(15)を導電的に接続するように、前記穿孔(22)間に存在する前記電極材料(15)を除去する工程とを含む、方法。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)穿孔(22)を有する非導電性プレート(10)を設ける工程と、
b)少なくとも部分的に、前記穿孔(22)に対応する孔(26)を有するアパーチャマスク(24)、または、少なくとも部分的に、前記穿孔に対応する透過性領域を有するスクリーン印刷用マスクを、前記孔(26)または前記領域が、少なくとも部分的に、前記プレート(10)の前記穿孔(22)に一致するよう前記プレート(10)の前記第1の面(12)に配置する工程と、
c)前記アパーチャマスク(24)またはスクリーン印刷用マスクに硬化性ペースト電極材料を塗布する工程と、
d)前記電極材料(15)を、前記孔または透過性領域を介して前記穿孔(22)に圧入する工程と、
e)前記アパーチャマスク(24)またはスクリーン印刷用マスクを前記プレート(10)から除去する工程とを含む、方法。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)非導電性プレート(10)を設ける工程と、
b)前記プレート(10)に穿孔を形成する工程と、
c)前記プレート(10)中に伸びる前記導電体を形成するためのビアを前記穿孔内に形成する工程と、
d)前記プレート(10)の前記第1の面(12)において前記ビアに硬化性ペースト電極材料(15)を塗布する工程とを含む、方法。
【請求項23】
工程bにおいて、前記穿孔が、ボーリング、特にレーザ光線を用いたボーリングによって形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程cにおいて、前記ビアが、前記穿孔内での電着により形成されるか、または前記穿孔にそれぞれ導電体を導入することにより形成される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記電極材料がパッド印刷またはスクリーン印刷のような方法により塗布される、請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
検体特異的塗膜が前記電極材料(15)に塗布されるか、または検体特異的分子が前記電極材料(15)に導入される、請求項19〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
捕捉分子、特に電気化学的に不活性な捕捉分子が塗膜または検体特異的分子として塗布されるか、または導入される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
それぞれの場合において異なる塗膜が前記電極材料(15)に塗布されるか、またはそれぞれの場合において異なる検体特異的分子が前記電極材料(15)に導入される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
使用される前記捕捉分子が、特に一本鎖の、核酸、核酸類似体、配位子,ハプテン、ペプチド、たんぱく質、糖、脂質またはイオン交換体である、請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記捕捉分子が前記電極材料(15)に共有結合および/または方向性結合されるか、または前記電極材料(15)上に合成もしくは電気化学的に析出される、請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉分子が、少なくとも部分的に、中間層、特に電気化学的にほぼ不活性な中間層により前記電極材料(15)に結合されるか、または前記中間層上に合成される、請求項26〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記中間層がシランから形成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電極材料(15)が少なくとも1つの半透過性被膜で覆われる、請求項19〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記電極材料(15)が、それぞれの場合において、異なる透過性を有する半透過性被膜で覆われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜17のいずれかに記載の装置(17)を電気的に接触接続する方法であって、
個別導出可能な複数の導電体(30)を前記装置(17)の前記プレート(10)の前記第2の面(14)に接触させ、この場合前記電極(15)が個別に導出可能となるように、前記導電体(30)が少なくとも部分的に、前記電極(15)を接触接続する、方法。
【請求項36】
前記導電体(30)を、ばね偏向を可能にするように装着し、前記プレート(10)の前記第2の面(14)に接触させて、この場合にはこれらがばね偏向を行なう、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記電気的接触接続が、エラストマーコネクタ、特にゼブラ(登録商標)エラストマーコネクタにより行なわれる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
液体中の少なくとも1つの検体を検出するための請求項1から17のいずれかに記載の装置(17)の用途であって、
前記液体を、前記装置(17)の前記プレート(10)の前記第1の面(12)の電極(15)に接触させ、前記電極(15)を、前記プレートの前記第2の面(14)に電気的に接触接続する、用途。
【請求項39】
前記検体または前記検体の存在により形成される物質が前記電極(15)に存在する捕捉分子に結合する条件下で、前記液体を前記電極(15)に接触させ、前記捕捉分子に結合した前記検体またはこれらに結合した前記物質を、電気的、電気化学的、光学的もしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて、またはこれらの組み合わせによって検出する、請求項38に記載の用途。
【請求項40】
少なくとも1つの電極(15)が半透過性被膜で覆われ、検体、検体の分解生成物検体または前記被膜を透過する物質のみが、電気的、電気化学的、光学的もしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて、またはこれらの組み合わせにより選択的に検出される、請求項38または39に記載の用途。
【請求項41】
前記検体が、生体分子、特に、核酸、たんぱく質、抗原、糖、脂質、細胞またはウイルスである、請求項38〜40のいずれかに記載の用途。
【請求項42】
前記検体が標識物質を有する、請求項38〜41のいずれかに記載の用途。
【請求項43】
酸化還元反応または触媒による水素の発生が電気化学的に検出される、請求項38〜42のいずれかに記載の用途。
【請求項44】
前記電気化学的検出が、差分パルスボルタンメトリー(DPV)、クロノポテンシオメトリによるストリッピング分析(CPSA)または抵抗もしくはインピーダンスの変化の検出によって行なわれる、請求項38〜43のいずれかに記載の用途。
【請求項45】
請求項38〜44のいずれかに記載の用途であって、
前記電気化学的検出が、
a)少なくとも1つの対極と、参照極と、および多数個の作用極とを有する請求項1から17のいずれかに記載の装置を設ける工程と、
b)前記液体を、前記作用極と、対極と、参照極とに接触させる工程と、
c)前記作用極と前記参照極との間に所定の電圧プロファイルを同時に与える工程と、
d)測定中はすべての前記作用極を同一の電位に保った状態で、前記作用極を流れる電流を測定する工程とを含む、用途。
【請求項46】
実質的に前記検体または前記物質だけが信号を生じさせる電位間隔が、前記電気化学的検出のための測定用に選択される、請求項38〜45のいずれかに記載の用途。
【請求項47】
前記電極(15)、特に、炭素含有電極が、前記検体の前記検出に先立って洗剤で処理される、請求項38〜46のいずれかに記載の用途。
【請求項48】
前記洗剤がイオン洗剤である、請求項47に記載の用途。
【請求項49】
前記洗剤が濃度0.1%w/v〜10%w/vで存在する、請求項47または48に記載の用途。
【請求項50】
前記洗剤が、10mmol/l未満、特に5mmol/l未満、好ましくは3mmol/lの臨界ミセル濃度を水中において有する、請求項47〜49のいずれかに記載の用途。
【請求項51】
前記洗剤がドデシル硫酸ナトリウムである、請求項47〜50のいずれかに記載の用途。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の多数個の異なる検体を検出するための装置(17)であって、
互いに絶縁され、前記液体に対して非透過性である非導電性プレート(10)の第1の面(12)に配置された多数個の電極(15)を有し、
前記プレートは、第1および第2の面を有する平坦な基体として形成され、
前記電極(15)は、少なくとも部分的に、異なる特異性を少なくとも部分的に有する検体特異的塗膜または検体特異的分子を有し、前記プレート(10)中に伸びる導電体により前記プレートの第2の面(14)から電気的接触接続および個別導出が可能であり、
前記塗膜または前記分子は、前記検体または前記検体の存在によって形成される物質に対する特異親和性を有するために検体特異的であり、
前記装置は引き出し線を有さず、
前記プレート(10)は、チップとして形成され、
前記電極は、電極アレイとして配置されている、装置。
【請求項2】
前記プレート(10)が、1cm2 当たり、10を超える、好ましくは20、40、80、100または160を超える、特に好ましくは1000を超える、特に10,000を超える電極を有する、請求項に記載の装置(17)。
【請求項3】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、粒子から形成されている、請求項1または2に記載の装置(17)。
【請求項4】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、非金属導電体、特に炭素から形成されている、請求項1〜のいずれかに記載の装置(17)。
【請求項5】
前記電極(15)が、少なくとも部分的に、鉛筆電極、ガラス状炭素電極、炭素繊維含有電極、炭素ペースト電極またはプラスチック複合体電極、好ましくは、炭素元素を、特に黒鉛またはカーボンブラックとして含む、ポリカーボネート電極である、請求項に記載の装置(17)。
【請求項6】
前記電極(15)が少なくとも1つの参照極と、少なくとも1つの対極と、および多数個の作用極とを含む請求項1〜のいずれかに記載の装置(17)を具備する測定装置であって
電流/電圧変換器と、ポテンシオスタットと、前記作用極を流れる電流を測定するための手段とを含み、
前記電極(15)は、前記作用極と前記参照極との間に所定の電圧プロファイルを生成するための前記ポテンシオスタットと電気的に接続され、
前記電流/電圧変換器のうち1つは、全ての作用極を同一の電位に保持するために各作用極の下流に接続されている、測定装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)実質的に平行に配置された細長い電極材料(15)と、前記電極材料(15)を囲む絶縁性材料との複合体を作製し、前記複合体を、
−固体電極材料(15)を硬化性絶縁材料によって被包するか、
−固体電極材料(15)を、固体絶縁性材料の実質的に平行な切り欠きもしくは穿孔(22)または塑性変形可能な絶縁性材料に導入するか、
−一体型の固体絶縁性材料または穿孔(22)を一致させて積層されたプレート型絶縁性材料の、実質的に平行な切り欠きまたは穿孔(22)にペーストまたは液体硬化性電極材料(15)を充填するか、
−絶縁性材料を含む被覆材(18)を有する電極材料(15)を、前記被覆材(18)を溶融、ポッティングまたは接着接合することにより接続するか、あるいは
−絶縁性材料(18)に囲まれた電極材料(15)から形成された複合体を押し出すことによって作製する工程と、
b)切削、切断もしくは分離用円板を用いるか、または前記積層されたプレート型絶縁性材料を分解することにより、前記複合体を前記電極材料(15)の長手方向に対して実質的に垂直に分離する工程とを含む、方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)穿孔(22)を有する非導電性プレート(10)を設ける工程と、
b)前記プレート(10)の第1の面(12)に硬化性ペースト電極材料(15)を塗布する工程と、
c)前記電極材料(15)を前記穿孔(22)に圧入する工程と、
d)当該電極材料(15)が前記穿孔内に存在する前記電極材料(15)を導電的に接続するように、前記穿孔(22)間に存在する前記電極材料(15)を除去する工程とを含む、方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の装置(17)を製造するための方法であって、
a)穿孔(22)を有する非導電性プレート(10)を設ける工程と、
b)少なくとも部分的に、前記穿孔(22)に対応する孔(26)を有するアパーチャマスク(24)、または、少なくとも部分的に、前記穿孔に対応する透過性領域を有するスクリーン印刷用マスクを、前記孔(26)または前記領域が、少なくとも部分的に、前記プレート(10)の前記穿孔(22)に一致するよう前記プレート(10)の前記第1の面(12)に配置する工程と、
c)前記アパーチャマスク(24)またはスクリーン印刷用マスクに硬化性ペースト電極材料を塗布する工程と、
d)前記電極材料(15)を、前記孔または透過性領域を介して前記穿孔(22)に圧入する工程と、
e)前記アパーチャマスク(24)またはスクリーン印刷用マスクを前記プレート(10)から除去する工程とを含む、方法。
【請求項10】
検体特異的塗膜が前記電極材料(15)に塗布されるか、または検体特異的分子が前記電極材料(15)に導入される、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
捕捉分子、特に電気化学的に不活性な捕捉分子が塗膜または検体特異的分子として塗布されるか、または導入される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
それぞれの場合において異なる塗膜が前記電極材料(15)に塗布されるか、またはそれぞれの場合において異なる検体特異的分子が前記電極材料(15)に導入される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記捕捉分子が、特に一本鎖の、核酸、核酸類似体、配位子,ハプテン、ペプチド、たんぱく質、糖、脂質またはイオン交換体である、請求項1012のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉分子が前記電極材料(15)に共有結合および/または方向性結合されるか、または前記電極材料(15)上に合成もしくは電気化学的に析出される、請求項1013のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉分子が、少なくとも部分的に、中間層、特に電気化学的にほぼ不活性な中間層により前記電極材料(15)に結合されるか、または前記中間層上に合成される、請求項1014のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記中間層がシランから形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電極材料(15)が少なくとも1つの半透過性被膜で覆われる、請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記電極材料(15)が、それぞれの場合において、異なる透過性を有する半透過性被膜で覆われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
液体中の少なくとも1つの検体を検出するための請求項1〜5のいずれかに記載の装置(17)の用途であって、
前記液体を、前記装置(17)の前記プレート(10)の前記第1の面(12)の電極(15)に接触させ、前記電極(15)を、前記プレートの前記第2の面(14)に電気的に接触接続する、用途。
【請求項20】
前記検体または前記検体の存在により形成される物質が前記電極(15)に存在する捕捉分子に結合する条件下で、前記液体を前記電極(15)に接触させ、前記捕捉分子に結合した前記検体またはこれらに結合した前記物質を、電気的、電気化学的、光学的もしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて、またはこれらの組み合わせによって検出する、請求項19に記載の用途。
【請求項21】
少なくとも1つの電極(15)が半透過性被膜で覆われ、検体、検体の分解生成物検体または前記被膜を透過する物質のみが、電気的、電気化学的、光学的もしく光電的に、あるいは酵素、エレクトロルミネセンスもしくは化学ルミネセンスを用いて、またはこれらの組み合わせにより選択的に検出される、請求項19または20に記載の用途。
【請求項22】
前記検体が、生体分子、特に、核酸、たんぱく質、抗原、糖、脂質、細胞またはウイルスである、請求項1921のいずれかに記載の用途。
【請求項23】
前記検体が標識物質を有する、請求項1922のいずれかに記載の用途。
【請求項24】
酸化還元反応または触媒による水素の発生が電気化学的に検出される、請求項1923のいずれかに記載の用途。
【請求項25】
前記電気化学的検出が、差分パルスボルタンメトリー(DPV)、クロノポテンシオメトリによるストリッピング分析(CPSA)または抵抗もしくはインピーダンスの変化の検出によって行なわれる、請求項1924のいずれかに記載の用途。
【請求項26】
請求項1925のいずれかに記載の用途であって、
前記電気化学的検出が、
a)少なくとも1つの対極と、参照極と、および多数個の作用極とを有する請求項1から16のいずれかに記載の装置を設ける工程と、
b)前記液体を、前記作用極と、対極と、参照極とに接触させる工程と、
c)前記作用極と前記参照極との間に所定の電圧プロファイルを同時に与える工程と、
d)測定中はすべての前記作用極を同一の電位に保った状態で、前記作用極を流れる電流を測定する工程とを含む、用途。
【請求項27】
実質的に前記検体または前記物質だけが信号を生じさせる電位間隔が、前記電気化学的検出のための測定用に選択される、請求項1926のいずれかに記載の用途。

【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−504075(P2006−504075A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−516720(P2004−516720)
【出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006818
【国際公開番号】WO2004/003538
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(501242066)ノヴェンバー アクティエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】NOVEMBER AKTIENGESELLSCHAFT