説明

検出装置、検出方法、および受信装置

【課題】負荷変調されているキャリア信号から高い精度で情報を検出する。
【解決手段】信号検出部50は、キャリア信号の電圧の振幅変化に基づいて検波を行う系と、キャリア信号の電圧の位相変化に基づいて検波を行う系から成る。さらに、各系は、検波結果の正相を出力する系と、検波結果の逆相を出力する系とに分けられる。受信された負荷変調されているキャリア信号は、バッファ52にバッファリングされる。この後、検波回路54により、局部発振信号が0のときにはバッファリングされているキャリア信号をそのまま、局部発振信号が1のときにはバッファリングされているキャリア信号の電圧を強制的に0に落として、すなわち、いわゆる半波整流と同様にして、検波信号としてLPF55に出力される。本発明は、非接触通信システムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法、および受信装置に関し、特に、例えば、送信する情報に基づいて負荷変調されたキャリア信号から前記情報を検出する場合に用いて好適な検出装置、検出方法、および受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、FeliCa(ソニー株式会社の登録商標)に代表される非接触通信システムが普及している。この非接触通信システムは、例えば、電車、バスなどの公共交通機関の改札システムや、各種店舗や自動販売機など使用できる電子マネーシステムなどに採用されている。
【0003】
図1は、従来の非接触通信システムの構成の一例を示している。この非接触通信システム10は、リーダライタ11とトランスポンダ12から構成される。例えば、この非接触通信システム10が改札システムに採用される場合、リーダライタ11が改札機に内蔵され、トランスポンダ12が乗車券となるSuica(商標)に代表されるICカードなどに内蔵される。
【0004】
リーダライタ11からトランスポンダ12に対して所定の送信情報を送信する場合、図2Aに示すような正弦波のキャリア信号(搬送波)を当該所定の送信情報に従ってASK(amplitude shift keying)変調して送信する。反対に、トランスポンダ12からリーダライタ11に対して、図2Bに示すようなデジタル化された所定の返信情報を送信する場合、当該所定の返信情報に応じてトランスポンダ12におけるダンピング抵抗R1をスイッチによりオン、オフさせることにより、図2Cに示されるように、キャリア信号の電圧に変化を生じさせる負荷変調が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、この負荷変調されているキャリア信号はリーダライタ11のアンテナで受信される。ただし、受信された負荷変調されているキャリア信号は、図2Dに示されるように、リーダライタ11とトランスポンダ12とのアンテナ間の距離に応じて変調度が低下したものとなり、変調度が低下するほど返信情報を検出し難くなる。
【0006】
ところで、非接触通信システム10が改札システムに利用される場合、利用者の利便性を考慮して、リーダライタ11とトランスポンダ12とのアンテナ間の距離が10cm以上あっても通信可能であることが要求されている。
【0007】
一方、上述したように、リーダライタ11とトランスポンダ12との距離が広がると負荷変調されているキャリア信号の変調度が低下して返信情報を検出し難くなるので、これを補うためにキャリア信号のピークトゥーピーク電圧(以下、Vppと称する)が20V程度まで高められている。
【0008】
図3は、キャリア信号のVppを20Vとした場合に対応する従来のリーダライタの構成の一例を示している。このリーダライタ20は、返信情報を、負荷変調されたキャリア信号の電圧の振幅の変化として検出するものである。
【0009】
例えば、リーダライタ20において受信された負荷変調されたキャリア信号の変調度が図4Aに示されるように10%となっているとする。この場合、リーダライタ20においては、負荷変調されたキャリア信号が、図4Bに示されるように両波整流され、これがピークホールド回路により包絡線検波されて、図4Cに示されるように、1V差のある検波信号が出力される。
【0010】
ところで、負荷変調されたキャリア信号は、リーダライタとトランスポンダとのアンテナ間の距離が広がると変調度が低下するだけでなく、リーダライタとトランスポンダとの間にキャリア信号の電圧に振幅差が生じないNULL状態と称される通信不感帯が存在する。具体的には、図5に示されるように、負荷変調されたキャリア信号をその電圧の振幅の変化に基づいて検波した場合の検波信号の位相が、正相から逆相に変化する位置に通信不感帯が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−307031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この通信不感帯では、負荷変調されたキャリア信号をその電圧の振幅の変化に基づいて検波しても返信情報を検出することができない。
【0013】
ただし、通信不感帯であっても、負荷変調されたキャリア信号には位相変化が生じているので、位相変化に基づいて検波すれば返信情報を検出することが可能である。
【0014】
そこで、電圧の振幅変化と位相変化の両方を検出できるIQ検波器(直交検波器)を非接触通信システムのリーダライタに採用することが望まれている。
【0015】
ところで、従来存在しているIQ検波器は高周波信号を処理対象とする50Ω系にて利用されることが多く、入力されるキャリア信号の許容Vppが2V程度のものしかない。そこで、図6に示すように、従来のIQ検波器の前段に、キャリア信号のVppを1/10に減衰させるアッテネータを設けたリーダライタ30の構成が考えられる。
【0016】
しかしながら、図6に示された構成の場合、図7に示されるように、IQ検波器に入力される減衰されたキャリア信号は電圧の振幅差が0.1Vとなるので、IQ検波器から出力される検波信号にも0.1Vの差しか生じないことになる。この結果、リーダライタ30による返信情報の検出感度が低下してしまうことが起こり得る。
【0017】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、負荷変調されているキャリア信号から高い精度で情報を検出できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の側面である検出装置は、送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号から前記情報を検出する検出装置において、受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリング手段と、バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波手段とを含む。
【0019】
前記検波手段は、前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させるスイッチング手段を含むことができる。
【0020】
前記検波手段は、前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第1のスイッチング手段と、前記局部発振信号の位相を90°遅延させた遅延局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第2のスイッチング手段とを含むことができる。
【0021】
前記検波手段は、前記キャリア信号と同一周波数の第1の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第1のスイッチング手段と、前記第1の局部発振信号の位相を180°遅延させた第2の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第2のスイッチング手段と、前記第1の局部発振信号の位相を90°遅延させた第3の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第3のスイッチング手段と、前記第1の局部発振信号の位相を270°遅延させた第4の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第4のスイッチング手段とを含むことができる。
【0022】
本発明の第1の側面である検出装置は、前記第1のスイッチング手段から出力された検波信号、または前記第2のスイッチング手段から出力された検波信号の一方から他方を減算する第1の減算手段と、前記第3のスイッチング手段から出力された検波信号、または前記第4のスイッチング手段から出力された検波信号の一方から他方を減算する第2の減算手段とを含むことができる。
【0023】
前記検波手段は、前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号と、前記負荷変調されているキャリア信号との乗算結果を検波信号として後段に出力する乗算手段を含むことができる。
【0024】
本発明の第1の側面である検出装置は、受信された前記負荷変調されているキャリア信号の電圧を前記バッファリング手段の電源電圧以下に減衰させる減衰手段をさらに含むことができる。
【0025】
本発明の第1の側面である検出装置は、前記検波信号の脈動成分を除去する除去手段を
さらに含むことができる。
【0026】
本発明の第1の側面である検出方法は、送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号から前記情報を検出する検出装置の検出方法において、受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリングステップと、バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波ステップとを含む。
【0027】
本発明の第1の側面においては、受信された負荷変調されているキャリア信号がバッファリングされ、バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号が検波されて情報が検出される。
【0028】
本発明の第2の側面である受信装置は、送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号を受信する受信手段と、受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリング手段と、バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波手段とを含む。
【0029】
本発明の第2の側面においては、送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号が受信され、受信された前記負荷変調されているキャリア信号がバッファリングされ、バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号が検波されて前記情報が検出される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の第1の側面によれば、負荷変調されているキャリア信号から高い精度で情報を検出することができる。
【0031】
本発明の第2の側面によれば、受信した負荷変調されているキャリア信号から高い精度で情報を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の非接触通信システムの構成の一例を示す回路図である。
【図2】負荷変調されたキャリア信号の変調度の変化を説明するための図である。
【図3】負荷変調されたキャリア信号の振幅変化を検出する従来のリーダライタの構成の一例を示す回路図である。
【図4】図3のリーダライタから出力される検波信号を示す図である。
【図5】NULL状態となる通信不感帯について説明するための図である。
【図6】アッテネータと従来のIQ検波器を搭載したリーダライタの構成の一例を示す回路図である。
【図7】図6のリーダライタにおいてIQ検波器に入力される減衰後のキャリア信号の電圧振幅を示す図である。
【図8】本発明を適用した信号検出部50の構成例を示すブロック図である。
【図9】バッファ52の構成例を示す回路図である。
【図10】バッファ52の他の構成例を示す回路図である。
【図11】検出回路54の構成例を示す回路図である。
【図12】検波回路54−1から出力される検波信号の波形を示している。
【図13】検波回路54−2から出力される検波信号の波形を示している。
【図14】検波回路54−3から出力される検波信号の波形を示している。
【図15】検波回路54−4から出力される検波信号の波形を示している。
【図16】図8の信号検出部の動作を説明するフローチャートである。
【図17】検波回路54の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
<実施の形態>
[信号検出部の構成例]
図8は、本発明の実施の形態である信号検出部の構成例を示している。
【0035】
この信号検出部50は、図1に示された非接触通信システム10のリーダライタ11に内蔵されるものであり、アンテナによって受信された、返信情報に応じて負荷変調されている高電圧(20V程度)のキャリア信号を入力として直交検波を行い、検波結果として返信情報を検出するようになされている。
【0036】
信号検出部50は、キャリア信号の電圧の振幅変化に基づいて検波を行う系と、キャリア信号の電圧の位相変化に基づいて検波を行う系から成る。さらに、各系は、検波結果の正相を出力する系と、検波結果の逆相を出力する系とに分けられる。
【0037】
信号検出部50は、アッテネータ51、バッファ52−1乃至52−4、局部発振器53−1および53−2、検波回路54−1乃至54−4、ローパスフィルタ(LPF)55−1乃至55−4、並びに減算器56−1および56−2から構成される。
【0038】
以下、バッファ52−1乃至52−4を個々に区別する必要がない場合、単にバッファ52と称する。その他の構成要素についても同様とする。
【0039】
アッテネータ51は、アンテナで受信された、負荷変調されている高電圧のキャリア信号の電圧を、後段のバッファ52以降の電源電圧と比較して、それ以下となるように減衰させてバッファ52に出力する。換言すれば、キャリア信号の電圧が20Vであっても、バッファ52以降の電源電圧がキャリア信号のVppを上回るようにすれば(例えば、キャリア信号のVppが20Vである場合に、バッファ52以降の電源電圧を24Vとすれば)、キャリア信号の減衰は行わない。キャリア信号の電圧がバッファ52以降の電源電圧以下で固定されている場合、アッテネータ51を省略するようにしてもよい。
【0040】
バッファ52は、アッテネータ51から入力されたキャリア信号をバッファリングする。バッファ52を設けることにより、後段の回路(検波回路54など)がリーダライタのアンテナの共振に影響してしまうことを抑止することができる。
【0041】
バッファ52は、例えば、図9に示されるようにNPNトランジスタQ1のエミッタフォロワで構成することができる。また、図10に示されるようにPNPトランジスタQ2のエミッタフォロワで構成するようにしてもよい。
【0042】
図8に戻る。局部発振器53−1は、正弦波であるキャリア信号と同期した矩形波の第1の局部発振信号を発振して検波回路54−1に供給する。以下、第1の局部発振信号の位相θを基準となるθ=0とみなすことにする。また、局部発振器53−1は、第1の局部発振信号の位相を180°遅延させた第2の局部発振信号を発振して検波回路54−2に供給する。
【0043】
局部発振器53−2は、第1の局部発振信号の位相を90°遅延させた第3の局部発振信号を発振して検波回路54−3に供給する。また、局部発振器53−2は、第1の局部発振信号の位相を270°遅延させた第4の局部発振信号を発振して検波回路54−4に供給する。
【0044】
検波回路54−1は、第1の局部発振信号が0のときにはバッファリングされているキャリア信号をそのまま、第1の局部発振信号が1のときにはバッファリングされているキャリア信号の電圧を強制的に0に落として、すなわち、いわゆる半波整流と同様にして、検波信号としてLPF55−1に出力する。
【0045】
同様に、検波回路54−2乃至54−3は、それぞれ第2乃至第4の局部発振信号が0のときにはバッファリングされているキャリア信号をそのまま、第2乃至第4の局部発振信号が1のときにはバッファリングされているキャリア信号の電圧を強制的に0に落として、すなわち、いわゆる半波整流と同様にして、検波信号としてLPF55−2乃至55−4に出力する。
【0046】
検波回路54は、具体的には、例えば図7に示すように、局部発振信号に従ってオン・オフするトランジスタQ11をスイッチとして用いて構成すればよい。この構成においては、局部発振信号が0のとき、トラジスタQ11はオフとなり、この結果、キャリア信号がそのまま後段に出力される。反対に、局部発振信号が1のとき、トラジスタQ11はオンとなるので、0Vが後段に出力される。
【0047】
図8に戻る。LPF55−1および55−2は、それぞれ検波回路54−1または54−2から入力された検波信号の脈動成分を除去することにより平均化して減算器56−1に出力する。同様に、LPF55−3および55−4は、それぞれ検波回路54−3または54−4から入力された検波信号の脈動成分を除去することにより平均化して減算器56−2に出力する。
【0048】
図12は、検波回路54−1から出力される検波信号がLPF55−1に入力される前後の波形を示している。同図に示すように、第1の局部発振信号に同期してスイッチングする検波回路54−1からは、負荷変調されているキャリア信号の振幅変調成分が検波信号として出力される。
【0049】
図13は、検波回路54−2から出力される検波信号がLPF55−2に入力される前後の波形を示している。同図に示すように、第2の局部発振信号に同期してスイッチングする検波回路54−2からは、負荷変調されているキャリア信号の振幅変調成分が、検波回路54−2の出力とは正負が逆転した状態の検波信号として出力される。
【0050】
図14は、検波回路54−3から出力される検波信号がLPF55−3に入力される前後の波形を示している。同図に示すように、第3の局部発振信号に同期してスイッチングする検波回路54−3からは、負荷変調されているキャリア信号の位相変調成分が検波信号として出力される。
【0051】
図15は、検波回路54−4から出力される検波信号がLPF55−4に入力される前後の波形を示している。同図に示すように、第4の局部発振信号に同期してスイッチングする検波回路54−4からは、負荷変調されているキャリア信号の位相変調成分が、検波回路54−3の出力とは正負が逆転した状態の検波信号として出力される。
【0052】
図8に戻る。減算器56−1は、LPF55−1または55−2の一方の出力から他方の出力を減算することにより最大値と最小値の差を明確とした振幅変調成分に基づく検出信号1を得る。同様に、減算器56−2は、LPF55−3または55−4の一方の出力から他方の出力を減算することにより最大値と最小値の差を明確とした位相変調成分に基づく検出信号2を得る。
【0053】
[動作説明]
図16は、信号検出部50の動作(以下、信号検出処理と称する)を説明するフローチャートである。
【0054】
この信号検出処理は、非接触通信システムにおけるリーダライタにより受信された、負荷変調されているキャリア信号を処理対象として信号検出部50が実行する。
【0055】
ステップS1において、アッテネータ51は、アンテナで受信された、負荷変調されている高電圧のキャリア信号の電圧を後段のバッファ52以降の電源電圧以下となるように減衰させてバッファ52−1乃至52−4に出力する。ステップS2において、バッファ52−1乃至52−4は、アッテネータ51から入力されたキャリア信号をバッファリングする。
【0056】
ステップS3において、検波回路54−1乃至54−4は、それぞれに入力される第1乃至第4の局部発振信号に基づくスイッチングにより、キャリア信号を検波し、その結果得られる検波信号をLPF55−1乃至55−4に出力する。
【0057】
ステップS4において、LPF55−1乃至55−4は、それぞれ前段の検波回路54−1乃至54−4から入力された検波信号の脈動成分を除去することにより平均化して減算器56−1または56−2に出力する。ステップS5において、減算器56−1は、LPF55−1または55−2の一方の出力から他方の出力を減算することにより最大値と最小値の差を明確とした振幅変調成分に基づく検出信号1を得る。同様に、減算器56−2は、LPF55−3または55−4の一方の出力から他方の出力を減算することにより最大値と最小値の差を明確とした位相変調成分に基づく検出信号2を得る。以上で信号検出処理は終了される。
【0058】
信号検出処理によれば、負荷変調されているキャリア信号から振幅変調成分に検出信号1と、位相変調成分に基づく検出信号2を同時に得ることができる。したがって、リーダライタとトランスポンダの距離に起因する通信不感帯を実質的に解消することができる。
【0059】
[変形例1]
図8に示された信号検出部50の構成例において、LPF55と減算器56を入れ替えるようにしてもよい。すなわち、検波回路54から出力される検波信号を減算器56に入力し、減算器56の出力をLPF55により平均化するようにしてもよい。このようにした場合、LPF55の数を4個から2個に減らすことができる。
【0060】
[変形例2]
検波回路54については、図11に示された局部発振信号に基づくスイッチを利用した構成例に限るものではなく、他の構成例であってもよい。
【0061】
図17は、検波回路54の他の構成例を示す回路図(原理図)である。当該構成例は、乗算器により検波回路54を構成するものであり、乗算されるキャリア信号と局部発振信号とが電源電圧内で上下に重ねたトランジスタに各々入力される。このため、入力信号に対する許容Vppは電源電圧の1/2程度である。なお、同図は原理図であり、実際に検波回路54を構成するためには、抵抗やコンデンサなどの素子を追加する必要となるだけでなく、素子間のペア性も要求されるので、これのばらつきによる性能劣化が避けられない。
【0062】
なお、本実施の形態である信号検出部は、非接触通信システムのリーダライタに適用されるだけでなく、負荷変動された信号を受信する受信装置に適用することが可能である。
【0063】
本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0064】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
50 信号検出部, 51 アッテネータ, 52 バッファ, 53 局部発振器, 54 検波回路, 55 LPF, 56 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号から前記情報を検出する検出装置において、
受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリング手段と、
バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記検波手段は、
前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させるスイッチング手段を
含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検波手段は、
前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第1のスイッチング手段と、
前記局部発振信号の位相を90°遅延させた遅延局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第2のスイッチング手段と
を含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検波手段は、
前記キャリア信号と同一周波数の第1の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第1のスイッチング手段と、
前記第1の局部発振信号の位相を180°遅延させた第2の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第2のスイッチング手段と、
前記第1の局部発振信号の位相を90°遅延させた第3の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第3のスイッチング手段と、
前記第1の局部発振信号の位相を270°遅延させた第4の局部発振信号に同期して、前記負荷変調されているキャリア信号をそのまま検波信号として後段に出力させるか、または固定の電圧を検波信号として後段に出力させる第4のスイッチング手段と
を含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチング手段から出力された検波信号、または前記第2のスイッチング手段から出力された検波信号の一方から他方を減算する第1の減算手段と、
前記第3のスイッチング手段から出力された検波信号、または前記第4のスイッチング手段から出力された検波信号の一方から他方を減算する第2の減算手段と
を含む請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検波手段は、
前記キャリア信号と同一周波数の局部発振信号と、前記負荷変調されているキャリア信号との乗算結果を検波信号として後段に出力する乗算手段を
含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項7】
受信された前記負荷変調されているキャリア信号の電圧を前記バッファリング手段の電源電圧以下に減衰させる減衰手段を
さらに含む請求項2乃至6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検波信号の脈動成分を除去する除去手段を
さらに含む請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号から前記情報を検出する検出装置の検出方法において、
受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリングステップと、
バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波ステップと
を含む検出方法。
【請求項10】
送信すべき情報に基づいて負荷変調されているキャリア信号を受信する受信手段と、
受信された前記負荷変調されているキャリア信号をバッファリングするバッファリング手段と、
バッファリングされた前記負荷変調されているキャリア信号を検波して前記情報を検出する検波手段と
を含む受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−113623(P2012−113623A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263806(P2010−263806)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】