説明

検出装置及び方法、露光装置、デバイス製造方法

【課題】より安定したマークの位置の検出を可能とする。
【解決手段】テンプレートマッチングにより画像内のマークの位置を検出する検出装置は、テンプレートを用いて画像に対してテンプレートマッチングを行う処理部を有し、この処理部は、テンプレートマッチングにおいて得られた相関度が許容条件を満たさない場合に、上記テンプレートとは異なるテンプレートを用いてテンプレートマッチングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マークの位置を検出する検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ上にレチクルパターンを投影露光する際は、ウエハとレチクルの位置合わせを行なってから露光している。そのための位置合わせ技術として、ウエハ上に設けられたアライメントマークを用いて、プリアライメント、ファインアライメントの2種類のアライメントを実行する方法がある。プリアライメントの役割は、ウエハ搬送装置から露光装置内のステージに構成されたウエハチャック上にウエハが置かれた際に発生する送り込みずれ量を検出し、ファインアライメントが正常に処理できる精度内にウエハの位置を粗く位置合わせすることである。また、ファインアライメントの役割は、ステージ上のウエハの位置を正しく計測し、レチクルとの位置合わせ誤差が許容範囲内になる様に精密に位置合わせすることである。プリアライメントの精度は3ミクロン程度が要求される。ファインアライメントの精度は、ウエハ加工精度の要求で異なってくるが、例えば64MDRAMでは80ナノメートル以下が必要となっている。
【0003】
プリアライメントは、先にも述べたように搬送装置がウエハをチャックに送り込んだ際に発生する送り込みずれを検出しなければならない。そのため、非常に広範囲の検出が必要で、一般に500μm□の範囲を検出している。このような広範囲の中にあるアライメントマークからX,Yの座標を検出する方法としてパターンマッチング処理が多く用いられている。
【0004】
この種のパターンマッチング処理としては、大きく分けると2種類有る。1つは画像を2値化して予め持っているテンプレートとのマッチングを行ない、最も相関が有る位置をマーク位置とする方法であり、もう一つは、濃淡画像のまま、濃淡情報を持つテンプレートとの相関演算を行なう方法である。後者には正規化相関法などが良く用いられている。
【0005】
上記のようなパターンマッチング処理は、低コントラスト画像、ノイズ画像、あるいはウエハ加工の際に発生した欠陥を有する画像などにおいては、アライメントマーク検出が困難となる。本願出願人は、このようなアライメントマークの検出が困難な画像に対して安定した検出を行なうことを可能とするマーク検出方法を特許文献により提案した。この方法は、マークのエッジを最適に抽出すると同時にエッジの方向特徴を共に抽出し、方向成分に分けられたエッジに着目したパターンマッチングを行なうことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−260699号公報
【特許文献2】特開平10−97983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プリアライメントの場合、非常に広範囲の検出を行なうが、アライメントマークは小さい。なぜならば、アライメントマークは半導体素子にならないパターンであり、半導体素子の面積をできるだけ大きく取るために、アライメントマークは小さくならざるを得ないからである。そのため、アライメントマークは、素子として使われない領域たとえば、スクライブラインに入れられることが多く、一般にマークサイズはこのスクライブの幅で決まってしまう。
【0008】
近年の半導体製造の効率化と加工精度の向上により、年々スクライブの幅は狭くなっており、スクライブは100μm以下にまで狭くなっている。よって、このようなスクライブに納まる検出マークサイズも60μm以下の大きさとなっている。また、高密度の半導体を製造する為に、様々なウエハ処理工程を経るようになった。
【0009】
アライメントでは下の層に刻印されたマークを検出するが、半導体素子の製造工程においては次第に上に層が形成されていく。このため、アライメントマークの形状の変化が発生することがある。図9に検出マークのマーク線幅の変化の一例を示す。図9において、WOなるサイズで設計値どおりに作られたマークは、テンプレートが設計値通りならば、容易に検出可能である。しかしながら、工程を経て、検出マークの段差構造に各種の膜が積層されるとマーク線幅は細くなったり、逆に太くなったりする。図9では、膜の積層によってマーク線幅WOがWPに狭くなった例を示す。この場合、予め準備されていたテンプレートでの検出は困難となってしまう。
【0010】
また、マークの検出に使用する照明方法が明視野の場合、マークとその周辺の反射率の違いによって観察状態に様々な変化が発生する。図8にそのような状態の一例を示す。図8Aは、検出マークの下地に反射率の低い物質が使われ、その上に反射率の高い物質が積層された場合で、反射率の高い物質をエッチングして形成された検出マークの段差構造を(b)に示している。マークWIN部の反射率の変化を(c)に、WIN部の明るさの変化を(d)に示す。マークの2次元的な画像は図8Aの(a)に示されるようにマークが黒く周辺が白く見える。
【0011】
これに対して、反射率が図8Aと反転している材質に変更すると、図8Bの(a)ような画像となり、明暗が変わってしまう。
【0012】
従来から提案されているテンプレートマッチングによるマーク検出方法として2値化された画像からのテンプレートマッチングや、正規化相関法などがある。これらの処理では、マークの明暗の変化を検出することができない。したがって、それらの相関処理では予め明暗に合わせたテンプレートを準備する必要がある。
【0013】
以上述べたように、高密度の半導体を製造するための技術進歩に伴って、広範囲な検出領域内に存在し、工程によって変形するアライメントマークを検出することは非常に難しくなっている。
【0014】
アライメントマークの変形によりマークを検出できなくなる欠点を補うために、検出エラーが発生する度に画像からマーク部分の特徴を記憶し、記憶した画像をテンプレートとする手法は一般的である。さらには、特許文献2に示されるような、人手によって、マークを検出できるまでテンプレート情報を書き換えるといった手法しかなかった。これらの方法は、いずれも人が介在しなければ、アライメントを完了させることができない。また、積層構造の条件が変化すると検出できなくなるのも問題である。特に近年の半導体工場はクリーン度が増しているため人間が装置を操作しないようになってきた。このため、人を介在させると半導体露光装置のダウンタイムはますます長くなり、生産効率が悪くなる。
【0015】
また、近年の半導体デバイス製造分野では、大容量で処理速度の速い高性能半導体を歩留まりよく大量に生産するために、シリコンの大口径化、パターン幅の微細化、配線の多層化などの技術開発が進められている。これに伴い、基板となるウエハの平坦度に対する要求はますます厳しくなっている。そこで、ウエハの平坦度を増すために、ウエハ加工プロセスの中で、不特定の大きさのダミーとなる繰り返しパターンを構成することがある。このようなパターンがウエハ上に等しく狭い間隔で多数配置されていた場合、上記特許文献1に示されるマークのエッジ情報と類似したパターン配置となることがある。
【0016】
プリアライメントの目的は広い視野の中からウエハの位置を決定するためのアライメントマークを探すことであるので、意図しないパターンが視野の中に入ってくることもある。こうして視野に入ったパターンの構成要素(エッジの位置と方向)がたまたまテンプレートと同じになると、従来のテンプレートマッチングを行なうと相関度の高い座標としてマーク部の座標ではなく、マークのエッジ情報と類似したパターンを誤検出してしまう場合がある。
【0017】
図10を用いて上記現象を具体的に説明する。図10は、プリアライメントマーク251とホール状パターン253を含むウエハ表面の図を示している。図10で十字(実線)の形状をしたパターンがプリアライメントマーク251であり、丸の形状をしたパターンがホール状パターン253である。このような微細なホール状パターン253がウエハ上に等しく狭い間隔で配置してあるため、検出位置252に示すように、プリアライメントマーク251によく似た十字の形状が形成されている。この形状は画像処理的にマークのエッジ情報と類似したパターン配置となっている。
【0018】
図10のウエハに対しテンプレートマッチングを行なうと、相関度の高い座標として、プリアライメントマーク251に対応する座標ではなく、ホール状パターン253内の座標(点線で示した十字(検出位置252))を、誤検出してしまう場合がある。
【0019】
本発明は、より安定したマークの位置の検出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するための本発明による検出方法は、
テンプレートマッチングにより画像内のマークの位置を検出する検出装置であって、
テンプレートを用いて前記画像に対して前記テンプレートマッチングを行う処理部を有し、
前記処理部は、前記テンプレートマッチングにおいて得られた相関度が許容条件を満たさない場合、前記テンプレートとは異なるテンプレートを用いて前記テンプレートマッチングを行う。
【0021】
また、上記の目的を達成するための本発明による検出装置は、
テンプレートマッチングにより画像内のマークの位置を検出する検出方法であって、
テンプレートを用いて前記画像に対して前記テンプレートマッチングを行い、
前記テンプレートマッチングにおいて得られた相関度が許容条件を満たさない場合、前記テンプレートとは異なるテンプレートを用いて前記テンプレートマッチングを行う。
【0022】
また、上記の目的を達成するための本発明による露光装置は、
基板を露光する露光装置において、
前記基板上のマークを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像内のマークの位置を検出する上述の検出装置と、を有し、
前記検出装置により検出されたマークの位置に基づき前記基板の位置決めを行って前記基板を露光する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より安定したマークの位置の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。
【図2A】本実施形態による半導体露光装置の概略構成を示す図である。
【図2B】他の実施形態による半導体露光装置の概略構成を示す図である。
【図2C】他の実施形態による半導体露光装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施形態で用いる検出マークとその検出信号を説明する図である。
【図4】実施形態による検出マークのエッジ抽出を説明する図である。
【図5】実施形態による標準テンプレートと、マッチング処理を説明する図である。
【図6A】実施形態によるXY方向へのテンプレートの変形を説明する図である。
【図6B】実施形態によるXY方向へのテンプレートの変形を説明する図である。
【図7A】実施形態によるY方向へのテンプレートの変形を説明する図である。
【図7B】実施形態によるY方向へのテンプレートの変形を説明する図である。
【図8A】検出マークの下地に反射率の低い物質が使用された場合の、検出マーク検出を説明する図である。
【図8B】検出マークの下地に反射率の高い物質が使用された場合の、検出マーク検出を説明する図である。
【図9】検出マークのマーク線幅の変化の一例を示す図である。
【図10】プリアライメントマーク251とホール状パターン253を含むウエハ表面の例を示す図である。
【図11】第3実施形態によるプリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。
【図12】第3実施形態によるテンプレートを説明する図である。
【図13】第4実施形態によるプリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。
【図14】半導体デバイスの製造フローを示す図である。
【図15】ウエハプロセスの詳細なフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0026】
<第1実施形態>
本実施形態では、マーク線幅の変形、マーク明暗の変化などによって検出が困難なアライメントマークの画像に対してより安定したマーク検出を実現する。そのために、低コントラスト、ノイズ画像、ウエハ加工の際に発生した欠陥を有する画像などの検出に優れた効果をもつ特開2000−260699公報で開示されているパターンマッチングに検出対象マークの変形および明暗の変化に対応するテンプレートの最適化処理と自己学習機能を追加している。
【0027】
特開2000−260699のパターンマッチングの評価は、空間的な位置とその位置の画素が持っている方向性を表したテンプレートを使用することを基本としている。本実施形態による、マークの変形に対応したテンプレートの最適化は、テンプレートの空間的な位置、特に線幅に相当する部分を縮小または拡大するオペレーションを実施しながらテンプレートマッチングを繰り返すことによって行われる。また、本実施形態では、マークの明暗の変化に対応した最適化をテンプレートの持っている方向性を逆向きにするオペレーションによって行なう。更に、自己学習とは、直前に最適化されたテンプレートを次回以降のテンプレートマッチング処理を行なうために記憶する機能である。
【0028】
まず図2Aを用いてプリアライメント動作を説明する。図2Aは本実施形態による半導体露光装置の概略構成を示す図である。ウエハに露光されるパターンはレチクル1に存在し、不図示の照明系よりI線あるいはエキシマレーザ光を使って照明され、その投影光が投影レンズ2を介してウエハ5に照射されることにより、ウエハ5は露光される。
【0029】
一方プリアライメントは、不図示のウエハ搬送装置によって、XYステージ3上のウエハ吸着チャック4に乗せられる。チャック上のウエハは搬送装置の精度で乗せられている。よってそのままウエハの精密な位置計測はできない。その為、ウエハ上のプリアライメント(粗合わせ)マークを投影レンズの外側に構成されるオフアクシススコープ6で観察し、CCDカメラ7などで光電変換し、プリアライメント画像処理装置8でマークの位置を検出する。光電変換されたビデオ信号をA/D変換装置81でデジタル情報に変換し、画像メモリを有する画像処理プロセッサ82でプリアライメントマーク位置の検出を行なう。
【0030】
アライメントマークの形状は一個のマークでX,Y両座標を検出できることがスループット上有利なので、図3のマーク100として示される形状とする。プリアライメントマークの画像を取り込んだときのステージの位置はレーザ干渉系12によって正確に測定されていて、露光制御装置9でマーク位置のずれとステージの位置からウエハの置かれたずれ量を正しく計測する。
【0031】
なお、第1実施形態ではオフアクシススコープでの照明として暗視野照明の場合を例に挙げて説明する。暗視野照明の場合、マーク段差のエッジ位置からの散乱光をCCDカメラなどで受光する。但し、明視野照明であっても本実施形態を適用できることはいうまでもない。
【0032】
次に、図1を参照して、本実施形態によるプリアライメント画像処理を説明する。なお、以下に説明する処理は、画像処理プロセッサ82のCPU(不図示)がROM等のメモリ(不図示)に格納された制御プログラムを実行することにより実現される処理である。
【0033】
図1は、プリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。CCDカメラ7で取込まれた画像に対して、画像処理プロセッサ82でエッジ抽出が行なわれ、エッジ情報が生成される(ステップS100)。エッジの抽出では、そのエッジが上向きエッジ、下向きエッジ、右向きエッジ、左向きエッジのいずれかであるかといった情報も同時に抽出する。本実施形態では上下左右4方向としたが4種類の45度方向を加えて8方向としても構わない。なお、エッジの方向がの上向き、下向き、右向き、左向きのいずれであるかは、図3により後述する閾値thl、thr、thu、thoを超えたか下回ったかにより判別される。
【0034】
次にステップS101において、エッジ情報からエッジのサーチを行なう。サーチとはマークのおおよその位置を画像内から探すことを意味する。マークの形状は既知であるので、マークの中心からどこにどのようなエッジがあるか分かっている。上向きエッジの位置、下向きエッジの位置、右向きエッジの位置、左向きエッジの位置の2次元的な配置を登録エッジ配置として記憶しておき、ステップS100で抽出したエッジ画像と登録エッジ配置とのマッチングを行なう。
【0035】
マッチング結果が検出判定閾値以上であればマークのサーチは成功したこととなり、ステップS102からステップS103へ処理を進める。ステップS103では、マークの詳細な位置測定を行なう。
【0036】
一方、ステップS101におけるサーチが成功しなかった場合、処理はステップS102からステップS104へ進む。サーチ回数が指定回数に達していなければ、ステップS105へ進み、テンプレート形状の変形を予め決められた方法で調整し、ステップS101へ戻って再度サーチを行なう。なお、エッジ情報は既に取得されたものを利用できるので、S101のサーチ処理から実行される。このようなテンプレート形状の変形とサーチの繰り返しループはあらかじめ設定されている回数または、条件によって制御される。要は、上記繰り返しループをこれ以上繰り返してもマークの検出はできないと判断した場合に、検出エラーとなる。
【0037】
[エッジ抽出(S100)について]
次に、上述のステップS100におけるエッジ抽出について説明する。図3、図4は本実施形態によるエッジ抽出を説明する図である。マーク100の散乱光はCCDカメラ7で受光されて光電変換された後、A/D変換器81によってA/D変換され、メモリに記憶される。
【0038】
記憶した画像のあるX方向の走査線では信号Xiが得られる。信号はマークエッジ位置が光り他の部分は黒い。信号Xiを微分すると 信号Xidとなる。走査線を左側からみていくと、エッジの立ち上がりで正、下がりで負の信号となる。信号Xidの立ち上がり側にthlの閾値を設定し、thlよりも信号Xidが大きい場合とそうでない場合とによって二値化すると、エッジを示す信号Leとなる。同様に閾値thrを設定し、thrよりも信号Xidが小さい場合そうでない場合で二値化するとエッジを示す信号Reとなる。信号Leはマーク信号の左向きエッジ位置を示し、信号Reはマーク信号の右向きエッジ位置を示している。
【0039】
同じようにメモリ上である縦ライン(Y方向)における信号を作成すると信号Yiとなる。Yiを下からみていき、Xの場合と同様に、微分、閾値を設定して二値化すると信号Ue及び信号Oeが得られる。信号Ueはマーク信号の下向きエッジ位置を信号Oeはマーク信号の上向きエッジ位置を示している。
【0040】
図4はマーク100の右向きエッジ位置、左向きエッジ位置、上向きエッジ位置、下向きエッジ位置をそれぞれ求めた2次元イメージを示している。合成すると図4の(a)のようになるが、それぞれ独立情報として上向きエッジ位置(図4(b))、下向きエッジ位置(図4(c))、左向きエッジ位置 (図4(d))、右向きエッジ位置(図4(e))をエッジ位置画像として記憶する。
【0041】
ステップS101におけるサーチでは、あらかじめ記憶しているテンプレートと図4の(b)〜(e)に示されるエッジ位置画像とのマッチング演算によって行なう。図5を用いてサーチを説明する。マーク中心(十字)51に対して上側、下側、左側、右側の各エッジがどこにあるかはあらかじめ分かっているので、マークの特徴的な部分を丸印の位置とし、図5(b)〜(e)に示すような配置をテンプレートとして登録する。登録されたテンプレートの上側(図5(b))、下側(図5(c))、左側(図5(d))、右側(図5(e))を合成すると図5(a)となる。なお丸印の位置を特徴着目点と呼び、本実施形態では、この着目点の集合をテンプレートとする。テンプレートは特徴着目点の位置と着目点のエッジの方向を示す方向特徴から構成されている。
【0042】
[エッジサーチ(S101)について]
サーチにおけるマッチング演算は、マーク中心51の位置(十字位置)に対して、図5(b)の丸印の位置に、図4(b)に示すエッジ情報があるかどうか判断する。同様の判断を、図4(c)と図5(c)、図4(d)と図5(d)、図4(e)と図5(e)に関しても行なう。全ての丸印の位置にエッジ情報が存在すると相関度は100%となる。丸印の位置にエッジ情報が無い場所が存在すると100%から下がる。このようなマッチング演算をエッジ画像全体に対して行なう。そして、最終的に、その中で最も相関度が高いマーク位置の座標を抽出しサーチを完了する。
【0043】
なお、図5に示される特徴着目点は間引きされたもので表現されている。この点数を多くしても特徴を表現していなければ効果が無い。また、密にしたとしても相関性が低下した場合には、急激に相関度(相関係数)が下がり、検出判定できないことがある。そのような場合としては、主に、マークが欠損している場合が多い。その為、間引きした特徴着目点を設定したほうが高い検出率を維持できる。
【0044】
上述のサーチで最大相関度のマークを選出できたにも関わらず、その値が判定閾値より低い場合は、最大相関度が得られたテンプレートの座標が正しいマーク位置を示していない可能性がある。すなわち、テンプレート形状とウエハ上に刻印されたアライメントマークの形状が一致していない場合がある。そこで、テンプレートの形状を変形させ、テンプレートの最適化を行なう。以下、テンプレートの最適化について説明する。
【0045】
[テンプレート形状の変更/最適化(S105)について]
図6A、Bを用いてテンプレート形状変形を説明する。なお、図6A、Bともに、図5の(a)に示すテンプレートを標準形状、すなわち設計値どおりの形状として、これを変形したものである。図6AはXY方向に1画素大きなテンプレートを示す。また、図6BはXY方向に2画素大きなテンプレートを示す。
【0046】
図6Aのテンプレートと図5の標準テンプレートとの差は、両図の(b)からわかるように、標準テンプレートに対して上向きのエッジ位置を1画素上側に移動し、(d)からわかるように標準テンプレートに対して左向きのエッジ位置を1画素左側に移動している点である。また、図6Bのテンプレートと標準テンプレートとの差は、標準テンプレートに対して上向きのエッジ位置を1画素上側へ(b)、下向きのエッジ位置を1画素下側へ(c)、左向きのエッジ位置を1画素左側へ(d)、右向きのエッジ位置を1画素右側に(e)それぞれ移動している点である。
【0047】
なお、図示はしていないが、上記と同様に、標準テンプレート(図5)に対して1画素小さいテンプレート、2画素小さいテンプレートを準備する。例えば、1画素小さいテンプレートは、図5の(b)に示される上向きのエッジ位置を1画素下側に移動し、図5の(d)に示される左向きのエッジ位置を1画素右側に移動して得られる。また、2画素小さいテンプレートは、図5に示される上向きのエッジ位置(b)、下向きのエッジ位置(c)、左向きのエッジ位置(d)及び右向きのエッジ位置(e)をそれぞれ下側、上側、右側、左側に1画素移動して得られる。
【0048】
なお、テンプレート変形は、上述の4種類だけではなく、標準テンプレートよりも3画素大きな、或いは小さなテンプレート等も用いうる。そして、例えば、次のようなルール、
(1)1画素大きなテンプレート
(2)1画素小さなテンプレート
(3)2画素大きなテンプレート
(4)2画素小さなテンプレート
(5)3画素大きなテンプレート
(6)3画素小さなテンプレート
: :
: :
に従って変形させたテンプレートを自動生成するのが効率的であろう。
【0049】
テンプレートの変形とエッジサーチの繰り返し回数は線幅に相当する間隔が1以下になるまで、もしくは線幅に相当する間隔が想定されている変形量を超えるまでとする。この時点でテンプレートとのマッチングが取れない場合は、検出エラーとなる(S104)。また、テンプレートの変形を大きく、小さく、大きく、小さくと繰り返すのは、マーク変形量が小さい確率が高いためなるべく小さな変化から評価するほうが、テンプレートとマーク変形が一致しやすく、最短時間で最適化が終了するからである。
【0050】
もちろん変形テンプレートの自動生成方法は上に示した方法に限る必要はない。例えば、検出マークについてはX方向のみの変形が生じる場合、Y方向のみの変形が生じる場合が考えられる。そこで、図7A,Bに示される様に、X方向へテンプレート変形を行なったり、図示していないが、図7A、Bと同様にY方向のテンプレート変形を行なってもよい。図7AはX方向が1画素大きいテンプレートを、図7BはX方向に2画素大きいテンプレートを示す。
【0051】
このようなテンプレートの自動生成に関しても、
(1) X(Y)方向に1画素大きなテンプレート
(2) X(Y)方向に1画素小さなテンプレート
(3) X(Y)方向に2画素大きなテンプレート
(4) X(Y)方向に2画素小さなテンプレート
(5) X(Y)方向に3画素大きなテンプレート
(6) X(Y)方向に3画素小さなテンプレート


のような順序による自動生成が効率的であろう。
【0052】
更に、自動生成として、XYが同時に変形、Xだけ変形、Yだけ変形の全てを組み合わせて、最適なテンプレート自動生成手順を決定することができる。
【0053】
変形テンプレートを自動生成しながらテンプレートマッチングを実施し、最大相関度が判定閾値を超えた場合、自動生成したテンプレートがウエハ上のマークと同じ形状となったと判断され、最適化は完了する。最大相関度が得られた座標は正しいマーク位置である。なお、上記変形テンプレートは予めメモリに保持しておいて必要に応じて読み出すようにしてもよい。但し、そのつどテンプレートの変形を演算する方式を用いれば、標準テンプレートと学習後のテンプレートを保持すればよいので、メモリが節約できる。
【0054】
なお、判定閾値を超えることができた自動生成されたテンプレートは記憶(自己学習)され、次回以降のテンプレートマッチングで使用するテンプレートとする。次回以降も同じようにウエハ上のマークが変形している可能性が高いため、このような自己学習をすることによって、次回以降のテンプレートマッチングで判定閾値を下回る確率が下がる。よって、テンプレートの最適化を繰り返すことなく、迅速にマーク位置を探すことが可能となる。
【0055】
なお、直前の自己学習の結果としての最適テンプレートでマーク位置の検出ができなかった場合は、設計値と一致するテンプレート(標準テンプレート)に戻し、判定閾値を超えるまで先述の方法でテンプレートの最適化と自己学習を実施する。
【0056】
なお、上記では、最大相関度が判定閾値を超えた場合に最適化を完了するものとした。しかしながらこれに限られるものではない。例えば、(1)テンプレートの変形の限界まで最適化を実行し、最適化の過程で最も大きな最大相関度を得ることのできたテンプレートを採用する方法、(2)最大相関度が判定閾値を超えることができた複数のテンプレートの中で中心の線幅となるテンプレート(それらのテンプレートの線幅の平均を取り、その平均に最も近い線幅のテンプレート)を採用する方法もある。これらの方法は、最適化したテンプレートのサイズマージンが大きいため、マーク変形に対してより鈍感なテンプレートと言える。
【0057】
マークのサーチが完了した後の精密な検出は、例えばAD変換した画像のサーチ中心を原点とした輝度分布から重心を求める方法などによって画素分解能以下の精度でマーク位置を決定することが可能である。
【0058】
また、エッジ抽出を画像取り込み後に行なっているが、エッジ抽出の前にノイズ除去フィルタリングを行なって、事前にノイズレベルを下げて不要なエッジ情報が出ない様にしてもよい。このような処理の追加はいずれもマークのサーチの検出率を高める効果がある。
【0059】
以上のように、第1実施形態によれば、テンプレートの最適化を自動的に行なうことによって、標準テンプレートのマッチングによって検出マークを検出できなかった場合でも単純に処理を終了するのではなく、さらに検出率の高いパラメータを検索、設定することが可能となる。こうして、今までは検出困難であった画像でも検出できる様になり、プリアライメントで止まる事無くファインアライメントを実行できるようになる。
【0060】
<第2実施形態>
第1実施形態ではマークの線幅が太くなった場合あるいは、細くなった場合に関するテンプレート形状の最適化を述べた。第2実施形態では図8A,Bのようにマークの明暗が変化した場合に対するテンプレートの最適化を述べる。なお、第2実施形態では、明視野照明を用いる。但し、明視野で説明するのは説明の便宜によるものであり、第2実施形態を暗視野に適用することも可能である。暗視野では、エッジ散乱光で検出するが、マーク部が平坦で、マーク以外のところがざらついた面で構成されていると、マークが黒く、ざらついた面が白くなることがある。このため、暗視野でも白・黒が変化する場合があり、このような場合に第2実施形態を適用できる。
【0061】
図8Aは背景が白くマーク部が黒い例(Black)を示す。逆に図8Bは背景が黒くマーク部が白い例を示す(White)。このようにマーク部の明暗が異なるのは、ウエハのマークとマーク周辺の材質の違いによって発生する。材質によって光の反射率が異なるため、明視野照明の場合、マーク部と周辺に明暗の違いが発生するのである。
【0062】
次に、図8Aと図8Bに示したマークのテンプレートについて説明する。第1実施形態で説明したようにマーク輪郭部を微分して、thl, thr, thu, thdでエッジの方向成分を抽出すると、図8A,Bの(f)に示される信号となる。図8A,Bでは説明を簡単にするため、左向き、右向き方向のエッジ成分のみを示したが、上向き、下向き方向のエッジについても同じである。
【0063】
図8A,Bの(f)に示される様に、明暗が反転していることによってエッジ位置は等しいがエッジ方向すなわち、左向きと右向きがそれぞれ反転することがわかる。図示していないが上向きエッジ、下向きエッジについても同様である。この性質を使い、テンプレート変形によるマークの白・黒色変化に対応した最適化を行なう。
【0064】
例えば予め準備しているテンプレートが白タイプ(図8B)に対応している場合、検出しなければならないマークが黒タイプ(図8A)であると検出は不可能である。従って検出判定閾値を下回る。もしも検出判定閾値を下回った場合、テンプレートを黒タイプに自動的に変更し、再度テンプレートマッチング処理を施す。この場合、検出するマークの明暗と一致するので、検出判定閾値を下回ることはない。なお、テンプレートの黒タイプと白タイプの変更は、エッジの位置を保ったまま、エッジの方向を左向きと右向きの入れ替え、上向きと下向きの入れ替えによって行なう。なお、ここではテンプレートにおけるエッジの向きを右向きと左向きの入れ替え、上向きと下向きの入れ替えとして説明したが、エッジを検出した画像の極性を変えても構わない。右向きエッジ画像を左向きエッジ画像へ、左向きエッジ画像を右向きエッジ画像へ、上向きエッジ画像を下向きエッジ画像へ、下向きエッジ画像を上向きエッジ画像と定義を変更し、元のままのテンプレートとの相関を求めても同じ結果が得られる。すなわち、エッジ検出信号のLeft、Rightの入れ替え、Over、Downの入れ替えで対応することも可能である。
【0065】
なお、第1実施形態と同様に、直前の最適化で決定したタイプのテンプレートを自己学習し、次回以降のテンプレートマッチングに使用する。もしも検出できなかった場合、再度白タイプに戻すことを自動で行なえばよい。
【0066】
このように、第2実施形態によれば、検出するマークの明暗がいかなるタイプであってもマークの明暗を自動的に認識し、パターンマッチングを継続することとなる。
【0067】
なお、第1実施形態で説明したマークの線幅変形に対応したテンプレート最適化と、第2実施形態で説明したマーク明暗の変化に対応したテンプレート最適化を組み合わせて、広範なマーク変形に対応可能としてもよい。この場合も、直前に形状と明暗が最適化されたテンプレートを次回以降のテンプレートマッチングのテンプレートとして採用すると、次回以降のマッチング処理は、テンプレートの最適化処理が不要であるので最短時間でマーク位置を検出することが可能である。
【0068】
また、テンプレートマッチング処理は第1、第2実施形態で示した方式に限ったものでなく、2次元的な空間を記述するテンプレートを用いた処理であれば適応することは可能である。また、正規化相関、2値化パターンマッチングなどを用いたマッチングにも上記実施形態は応用できる。
【0069】
以上説明したように、上記第1乃至第2実施形態によれば、マーク画像のエッジを最適に抽出し、同時にエッジの方向特徴を共に抽出し、方向によって分けられたエッジの位置(上下左右のエッジ位置)に着目したパターンマッチングを行なう。さらに、マーク変形、マーク明暗の変化に対してテンプレートの最適化を自動的に行なうため、広範なタイプのマークに対してマーク位置の検出が可能となる。すなわち、高密度の半導体を製造する為のありとあらゆるアライメントマークの画像に対してより安定したマークの検出が可能となる。その結果、半導体製造の歩留まりが向上するだけでなく、半導体製造装置の駆動していない時間すなわちダウンタイムの軽減を達成でき、より信頼性が増し、今後の高密度加工に対応することができる。
【0070】
<第3実施形態>
第3実施形態では、テンプレートを構成している要素として、エッジが存在している部分に、エッジが存在していない部分を加える。すなわち、第1実施形態において説明したテンプレート情報に対して、必ずエッジが存在していない箇所、すなわち、存在を期待していない箇所を新たに特徴着目点として付加する拡張を行なう。たとえば図10に示されるプリアライメントマーク251は内側にはエッジパターンは存在しない。よって、テンプレートに、内側にはパターンが存在しないことを評価する点を付加することで、ホール上パターンが密集している箇所でも誤検出することを防ぐことができる(すなわち、図10における検出位置252を誤検出することを防止できる)。
【0071】
第3実施形態による露光装置の構成は第1実施形態(図2A)と同様であり、詳細な説明は省略する。また、アライメントマークの形状も、スループットの観点から、第1実施形態と同様に、一個のマークでX,Y両座標検出できる十字形状(図3のマーク100)を取るものとする。
【0072】
また、第3実施形態ではオフアクシススコープの照明として暗視野照明を用いて説明する。暗視野照明ではマーク段差のエッジ位置からの散乱光がCCDカメラなどで受光される。なお、明視野照明にも同様に適用できることはいうまでもない。
【0073】
以下、第3実施形態の露光装置によるプリアライメントの画像処理を説明する。図11は第3実施形態によるプリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。
【0074】
CCDカメラ7で取込まれた画像は、画像処理プロセッサ82でエッジ抽出が行なわれる(ステップS200)。エッジの抽出においては、抽出したエッジが検出マーク信号の上側、下側、左側、右側のいずれであるかといった情報も同時に取得する。図4の(b)〜(e)はマーク100の上エッジ位置、下エッジ位置、左エッジ位置、右エッジ位置をそれぞれ求めた2次元イメージである。各エッジの位置を合成すると図4(a)となるが、第3実施形態ではエッジ位置画像として図4(b)の上側エッジ位置、図4(c)の下側エッジ位置、図4(d)の左側エッジ位置、図4(e)の右側エッジ位置をそれぞれ独立情報として記憶することを特徴の一つとしている。
【0075】
次いで、ステップS201において、ステップS200で抽出したエッジのエッジ情報からエッジのサーチを行なう。サーチとは検出マークのおおよその位置を画像内から探すことを意味する。検出マーク形状は既知なので、予めエッジの位置は登録され、記憶されている。ステップS201では登録されているテンプレートと、ステップS200で抽出したエッジ位置画像とのマッチングが行われる。第3実施形態のマッチング処理の詳細については後述する。
【0076】
ステップS202では、ステップS201におけるマークの検出結果について、正しく検出されたか否かの判定を行なう。すなわち、マッチング結果が検出判定閾値以上であればマークのサーチは成功したこととなり、ステップS201でサーチされたマーク位置を用いて、ステップS203でマークの詳細な精密検出を行なう。一方、マッチング結果が検出判定閾値以下であれば検出エラーとなる。
【0077】
なお、エッジの抽出、上下、左右、エッジの分離およびテンプレートマッチングの詳細については第1実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0078】
次に第3実施形態のテンプレートマッチングについて、図4及び図12を用いて説明する。
【0079】
サーチは、予め記憶している図12(b)〜(e)のテンプレートと図4(b)〜(e)に示されるエッジ位置画像とのテンプレートマッチングによって行なわれる。マーク中心(十字)に対して上側、下側、左側、右側エッジの位置がどこにあるかは予め分かっているので、テンプレートとして、エッジが必ず存在する、図12(b)〜(e)に示す○印箇所の位置を登録する。次に、エッジが必ず存在しない、図12(f)に示す×印箇所の位置を登録する。
【0080】
○印の位置、×印の位置はいずれもマークの特徴を示す。登録されたテンプレートを合成すると図12(a)となる。なお、○印、×印の位置を特徴着目点と呼び、特徴着目点の集合をテンプレートとする。また、○印の位置の特徴着目点に関しては上側、下側、左側、右側の4種類があるが、本実施形態ではこれら4種類を区別することなく、エッジの存在する位置として説明する。なお、図12(b)〜(f)に示されている十字位置はマークの中心位置とする。
【0081】
サーチにおけるテンプレートマッチングは、図4の画像において、図12の全ての○印の位置に対応する位置にエッジ情報が存在すること、さらに、図12に示される全ての×印の位置に対応する位置にエッジ情報が存在しないことを判断することによって行われる。このとき、○印の特徴着目点位置にエッジ成分が存在する場合は相関度を上げ、×印の特徴着目点位置にエッジ成分が存在する場合は相関度を下げる演算を実施する。全ての○印の特徴着目点位置にエッジ情報が存在し、全ての×印の特徴着目点位置にエッジ情報が存在しない場合には、相関度は100%となる。これに対して、○印の位置にエッジ情報の存在しない場所があったり、或いは×印の位置にエッジ情報が存在する場所があると、相関度は100%から下がる。マークの中心位置を移動させながら上記のテンプレートマッチングをエッジ位置画像全体に対して行ない、最終的に最も相関度が高い座標を抽出してサーチを完了する。
【0082】
図10の画像を用いて具体的に本テンプレートマッチングによる相関度を説明する。テンプレートマッチングは図10の画像において図12の全ての○印の位置に対応する位置においてエッジ情報が存在するかどうか、さらに、全ての×印の位置に対応する位置においてエッジ情報が存在するかどうかを判断することによって行われる。なお、図12に示すテンプレートにおいて、○印の特徴着目点と×印の特徴着目点の相関度重みは説明のため同じとする。重みに関してまとめると以下の表となる。
【0083】
【表1】

【0084】
図12に示されているテンプレートの特徴着目点の内訳は、○印の位置が24点、×印の位置が16点である。
【0085】
以上の条件でテンプレートマッチングを行なうと、図10のアライメントマーク251では24個すべての○印の特徴着目点にエッジが存在し、16個すべての×印の特徴着目点にはエッジが存在しない。従って、相関度は24/24=100%となる。一方、検出位置252では24個すべての○印の特徴着目点にエッジが存在するが、16個の特徴着目点にもエッジが存在する。このため、相関度は(24−16)/24=33%となる。したがって、251と252の検出位置における相関度を比較すると、251の検出位置における相関度の方が高い値が得られる。よって、アライメントマーク251が正しい検出位置に決定される。
【0086】
なお、上述の説明では○印と×印の特徴着目点の重みを同じとしたが、異ならせてもよい。この場合、相関度野算出結果が変わってくる。例えば×印を重視して1.5の重みとすると、251の検出位置では(24)/24=100%となり、252の検出位置では(24−16x1.5)/24=0%となる。このように重みによって、検出位置251、252のパターンの識別力を高めることが可能である。
【0087】
また、上述では、テンプレートして○印の位置と×印位置にエッジが存在する場合に着目していたが、同様に○印の特徴着目点にエッジ成分が存在する場合は相関度を上げ、そして×印の特徴着目点にエッジ成分が存在しない場合もマッチ度を上げるようにしてもよい。この場合、テンプレートマッチングの重みに関してまとめると以下の表となる。
【0088】
【表2】

【0089】
図10の画像を用いて具体的に上記テンプレートマッチングによる相関度を説明する。表2に示した重み付けによりテンプレートマッチングを行なうと、251の検出位置では、24個の○印の特徴着目点すべてにエッジが存在し、16個の×印の特徴着目点にはエッジが存在しない。従って、相関度は(24+16/(24+16)=100%となる。一方、252の位置では、24個の○印の特徴着目点すべてにエッジが存在するが、16個の×印の特徴着目点にもエッジが存在する。このため、相関度は(24+0)/(24+16)=60%となる。検出位置251及び252の相関度を比較すると、251の検出位置の方が高い相関度が得られており、251が正しい検出位置と決まる。
【0090】
さらに、当業者によって想到可能な範囲で上述したテンプレートマッチングを変形することが可能であることは言うまでもない。例えば、上述の表1、表2の重みを組み合わせて、以下の表3のようなテンプレートマッチングを用いてもよい。
【0091】
【表3】

【0092】
表3に示したテンプレートマッチングにより、図10の検出位置251、252における相関度は次のように算出される。すなわち、251の検出位置では(24+16)/(24+16)=100%であり、252の検出位置では(24−16/(24+16)=20%である。
【0093】
このように、×印の特徴着目点を導入すると、真のマークと類似マークの識別能力が高くなることがわかる。そして、識別効果が最も高いのが表3に示したテンプレートマッチング手法である。
【0094】
以上、第3実施形態のテンプレートを用いてテンプレートマッチングを行なうと、正しい検出位置が求まることを説明した。しかし、テンプレートの特徴着目点数が多くなるため演算にかかる時間が増加してしまう。このような、演算時間の増加を考慮しなければならない場合には、以下の方法を用いても良い。
【0095】
図11のフローチャートを流用して説明する。ステップS201の1回目の処理では、テンプレートを図12(b)〜(e)の○印の特徴着目点のみとし、マーク中心に対し図4の画像において図12の全ての○印の位置にエッジ情報があるかを判断するテンプレートマッチングを行なう。そして、このマッチングの結果、複数の検出位置が存在する場合には、ステップS202からステップS201に戻る。ステップS201の2回目の処理では、テンプレートを図12(b)〜(f)の○印及び×印の特徴着目点とし、先に説明した何れかのテンプレートマッチングを行なう。このように特徴着目点の組み合わせを○印だけ、さらには○印と×印といったように変更し、必要に応じて特徴着目点を増やすことにより、マークの検出率と検出の高速化を同時に満たすことができる。
【0096】
また、この場合、×印の特徴着目点の全てを一度に導入せず、徐々にその数を増やすようにしてもよい。例えば、上記例では、ステップS201の2回目の処理では16個の特徴着目点のうちまず8個の特徴着目点を追加し、これでも検出候補を絞れなければステップS201の3回目、4回目の処理で12個、16個というように増やしていってもよい。もちろん、○印の特徴着目点と×印の特徴着目点を組み合わて、その数を変化させるようにしてもよい(例えば、1回目は○印を16個、×印を8個、2回めは○印を20個、×印を12個とする)。
【0097】
さらに、この方法により決定した特徴着目点の組み合わせを用いて、次のテンプレートマッチングを行なうようにすると検出の高速化に効果的である。
【0098】
<第4実施形態>
第4実施形態では、真に検出したいマークの一部が欠損などしていて、検出が難しい場合でも、ホール上パターンを誤って検出することのないテンプレートマッチングを説明する。図13は第4実施形態によるプリアライメント画像処理を説明するフローチャートである。なお、図13において、図11のフローチャートと同一の機能を有するステップには同一符号を付してその説明を省略する。
【0099】
サーチを行なった後、マークの一部が欠損している等の理由で、マーク位置の相関度が低く、検出マークの候補点が複数存在し検出エラーとなる場合がある。このような場合、ステップS212に示すように、×印の特徴着目点の位置を微小に変化させ再度サーチを行なう。このようにすることにより、ホール状パターン253等の、マーク以外の位置に存在するパターンは、×印の特徴着目点の位置に応じて相関度もしくは検出位置が変化する。一方、真のマークは、×印の特徴着目点にエッジ情報が存在しないので、×印の特徴着目点の移動の影響を受けず、相関度、位置とも変化しない。
【0100】
このように、エッジの存在しない特徴着目点(×印)の位置を変えても相関度、位置が安定している点を真のマーク位置と識別できる。よってステップS211においては、ステップS212を経た後では、複数の候補点のうちの相関度及び位置の安定した位置を識別する機能を併せて実行することになる。
【0101】
ステップS211における検出判定基準は以下のようになる。
(1)設定された閾値を超える検出位置が1つであれば検出完了。その位置をマーク検出位置とする。
(2)×印の特徴着目点を変更した場合は、
・×印の特徴着目点の位置を変更するたびに相関度が変化した位置は判定位置から除外。
・×印の特徴着目点の位置を変更するたびに出現する位置は判定位置から除外。(3)判定位置から除外されなかった検出位置が1つであれば、その位置をマーク検出位置とする。
【0102】
さらに、この方法により決定した特徴着目点の位置を用いて、次のテンプレートマッチングを行なうようにするとテンプレートの最適化も達成されることになる。
【0103】
以上説明したように、上記第3及び第4実施形態によれば、テンプレートを構成する際に、特徴着目点をエッジ部分が存在している部分とエッジが存在していない部分とした。これにより、テンプレートマッチングの際、ウエハ上にホール状パターン253のようなエッジ部分に似た特徴を持つパターンが存在しても、その部分の相関度を下げることが出来るようになり、正しいマーク位置を検出することが可能となった。エッジの存在しない部分を特徴着目点とすることによりマークの誤検出を効果的に防止できるようになる。
【0104】
<第5実施形態>
第1乃至第4実施形態は、オフアクシス顕微鏡を用いたプリアライメントに適応した場合を示したが、第1及び第2実施形態で説明したマーク位置のサーチ、テンプレートの最適化及び自己学習機能、並びに第3及び第4実施形態で説明したエッジの存在しない特徴点位置を用いたマッチング処理は、オフアクシスを用いたプリアライメントに限った処理ではない。例えば以下のような位置検出系に適用できる。
【0105】
図2Bは、レチクルを通してウエハまたはステージ上のマークを検出するTTR(Through The Reticle)検出系の実施形態を示す図である。TTRの場合は、露光光でマークを検出するので、例えばエキシマレーザ露光装置の場合、CCDカメラ7とレーザ21は同期信号発生器20で同期が取られる。そして、CCDカメラ7の光蓄積時間中だけレーザを発振するようにする。このようにして光電変換されたマークの画像を用いて、第1乃至第4実施形態と同じ方法により、マーク位置のサーチ、テンプレートの最適化及び自己学習が行われる。そして、サーチ後に精密なマーク位置計算を行なう。
【0106】
また、エキシマレーザでなくI線の場合は、画像取り込みと照明系の同期が不要となるが、他は同様である。
【0107】
更に、別の例として、図2Cに、レチクルを介さず投影レンズを介したウエハまたはステージ上のマーク位置を検出するTTL(Through The Lens)検出系の実施形態を示す。この場合も、マークの撮像方法が異なるだけでマークのサーチおよびテンプレートの最適化、自己学習機能は第1乃至第4実施形態と同じである。
【0108】
更に、上記各実施形態の位置検出は、不図示のレチクルを用いない電子ビーム型(EB)露光装置におけるウエハの位置検出にも適用できる。EB露光装置の場合もマークのサーチおよび位置決定は第1乃至第4実施形態と同様に行なうことができる。
【0109】
また、第3、第4実施形態で説明した着目特徴点を用いたサーチを、第1、第2実施形態で説明したテンプレートに適用することも可能である。
【0110】
<他の実施形態>
[半導体製造装置への適用]
次に上記説明した露光装置を利用したデバイスの製造方法の実施形態を説明する。図14は微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造フローを示す。
【0111】
ステップ101(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ102(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを制作する。一方、ステップ103(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ104(ウエハプロセス)では前工程と呼ばれ、上記用意したマスクとウエハを用いて、リソグラフィー技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次にステップ105(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ104によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ106(検査)ではステップ105で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ107)される。
【0112】
図15は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ111(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ112(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ113(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ114(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ115(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ116(露光)では上記説明した露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに焼付露光する。ステップ117(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ118(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ119(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0113】
以上のような製造方法に、第1乃至第5の実施形態で説明した露光装置を用いれば、ありとあらゆるアライメントマークの画像に対してより安定したマークの検出が可能となり、半導体製造の歩留まりが向上するとともに、ダウンタイムの軽減が達成されてスループットが向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプレートマッチングにより画像内のマークの位置を検出する検出装置であって、
テンプレートを用いて前記画像に対して前記テンプレートマッチングを行う処理部を有し、
前記処理部は、前記テンプレートマッチングにおいて得られた相関度が許容条件を満たさない場合、前記テンプレートとは異なるテンプレートを用いて前記テンプレートマッチングを行う、ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記相関度が前記許容条件を満たさない場合のテンプレートマッチングの繰返しを、前記相関度が前記許容条件を満たすか、繰返し回数が予め定められた回数に達するかするまで実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記繰り返しにおいて前記相関度が前記許容条件を満たしたテンプレートを、次回のテンプレートマッチングに用いるテンプレートとして設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記相関度が前記許容条件を満たさない場合のテンプレートマッチングの繰返しを予め定められた回数だけ実行し、該繰返しにより複数のテンプレートを用いてそれぞれ得られた複数の相関度に基づいて、前記複数のテンプレートの中から1つのテンプレートを採用する、ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記採用をされたテンプレートを、次回のテンプレートマッチングに用いるテンプレートとして設定する、ことを特徴とする請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
テンプレートマッチングにより画像内のマークの位置を検出する検出方法であって、
テンプレートを用いて前記画像に対して前記テンプレートマッチングを行い、
前記テンプレートマッチングにおいて得られた相関度が許容条件を満たさない場合、前記テンプレートとは異なるテンプレートを用いて前記テンプレートマッチングを行う、ことを特徴とする検出方法。
【請求項7】
基板を露光する露光装置において、
前記基板上のマークを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像内のマークの位置を検出する請求項1ないし請求項5のうちいずれか1項に記載の検出装置と、を有し、
前記検出装置により検出されたマークの位置に基づき前記基板の位置決めを行って前記基板を露光する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記工程で露光された基板を現像する工程と、を有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−102234(P2013−102234A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−35108(P2013−35108)
【出願日】平成25年2月25日(2013.2.25)
【分割の表示】特願2011−98627(P2011−98627)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】