説明

検出装置及び検出方法

【課題】透過光を用いて素子の傾きを検出することによって、素子の設置誤差を小さくする。
【解決手段】素子の傾きを検出する検出装置である。素子1を保持するとともに、該素子1の傾きを変更する保持手段10と、素子1に検出光を照射する照射手段2と、素子1を透過した検出光を受光し、受光した光の特性を計測する計測手段3を有する。また、素子1の傾きを複数回変更させた際の、計測手段3の出力値の変化に基づいて、検出光の光軸に対する素子1の傾きを求める演算手段40を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン共鳴現象を利用して物質を検出する検出装置並びに検出方法及び素子の傾きを求める検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康問題や環境問題、更には食の安全性の問題に対する意識の高まりと共に、これらの問題に関与する物質(いわゆる生体関連物質などの化学物質(以下、「標的物質」という。)を検出する方法が望まれるようになってきた。標的物質を検出するには高感度な検出技術が必要となる場合が多い。何故なら、標的物質が含まれる試料の採取量は限られていることが多く、更に、血液中の蛋白質などの場合、様々な物質が混在した試料(検体)中に、極微量しか標的物質が含まれていないことがあるためである。このような理由から、標的物質の検出方法において、微量な試料に含まれる極微量な標的物質を検出できるような高感度の検出技術が求められている。
【0003】
このような要求に応えるためのひとつの手法として、金属薄膜表面における表面プラズモン共鳴現象を利用した検出方法の開発が進められている。表面プラズモンとは、金属中の自由電子の疎密波が金属表面に現れたもののことをいう。金属中の自由電子は、通常の伝搬光では励起することが出来ないが、図9にあるようなKretschmann配置と呼ばれる測定系を用い、p偏光を入射させることによって励起することが可能となる。
【0004】
通常、表面プラズモン共鳴において、反射光強度の入射角依存性を測定することにより金属薄膜表面の物質を検出することができる。この時、入射角θを正確に知ることが分析精度を決めるため、測定系の設置を再現性良く行うことが重要となる。特許文献1には、表面プラズモン共鳴測定装置において、測定用プレートの移動もしくは再設置を行った場合について精密な測定が行える技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−017185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、入射光に対する基板の傾きを測定するために、物質測定用の光学系以外に別途光学系が設けられている。この光学系によって求められた基板の傾きと、基準値との誤差に基づいて測定値を補正することによって正確な測定値を得ることができる。しかし、この場合、測定用光学系とは別に傾き測定用の光学系が必要になり、コストがアップする。また、傾き測定用光学系の基準位置に対する絶対精度を保証する手段が必要となる。
【0006】
本発明の第一の目的は、透過光を用いて素子の傾きを検出することによって、素子の設置誤差を小さくすることにある。
【0007】
本発明の第二の目的は、プラズモン共鳴を用いた物質検出において、検出光に対する素子の設置誤差の影響を可及的に少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、素子の傾きを検出する検出装置において、前記素子を保持するとともに、該素子の傾きを変更する保持手段と、前記素子に検出光を照射する照射手段とを有する。また、前記素子を透過した前記検出光を受光し、受光した光の特性を計測する計測手段を有する。さらに、前記素子の傾きを複数回変更させた際の、前記計測手段の出力値の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める演算手段を有する。この検出装置は、前記演算手段によって求められた前記素子の傾きに基づいて、該素子の傾きを調整する制御手段を有することが好ましい。また、前記照明手段が前記素子に対する前記検出光の照射角度を変更可能な光学系を含むことが好ましい。
【0009】
また、上記素子の傾きを検出する検出装置を用いた本発明の物質検出装置は、素子に設けられた微小金属構造体上の物質をプラズモン共鳴現象を用いて検出する物質検出装置である。本発明の物質検出装置は、前記素子を保持するとともに、該素子の傾きを変更する保持手段と、前記素子に検出光を照射する照射手段と、前記素子を透過した前記検出光を受光し、受光した光の特性を計測する計測手段とを有する。この物質検出装置は、前記演算手段によって求められた前記素子の傾きに基づいて、該素子の傾きを調整する制御手段を有することが好ましい。また、前記素子の傾きを複数回変更させた際の、前記計測手段の出力値の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める演算手段を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める検出方法であって、前記素子を保持する工程と、前記素子に検出光を照射する工程と、前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程を含む。また、前記素子の傾きを複数回変更させつつ、傾きを変更する度に前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程と、前記計測された特性の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める工程とを含む。この検出方法は、求められた前記素子の傾きに応じて該素子の傾きを調整する工程をさらに含むことが好ましい。
【0011】
上記傾き検出方法を用いた本発明の物質検出方法は、素子に設けられた微小金属構造体上の物質をプラズモン共鳴現象を用いて検出する方法である。この検出方法は、前記素子を保持する工程と、前記素子に検出光を照射する工程と、前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程とを含む。この物質検出方法は、前記素子の傾きを複数回変更させつつ、傾きを変更する度に前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程を含むことが好ましい。さらに、前記計測された特性の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透過光を用いて素子の傾きを検出することによって、素子の設置誤差を小さくすることができる。とりわけ、プラズモン共鳴を用いた物質検出に適用した場合に、検出光に対する素子の設置誤差の影響を可及的に少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。尚、本発明は請求の範囲の記載によって特定されるものであって、以下の実施形態及び実施例に限定解釈されるものではない。例えば、以下の実施形態及び実施例において述べる材料、組成条件、反応条件、部材、素子配置等は、当業者が理解可能な範囲で自由に変更して本発明を実施することができる。
【0014】
図1は本例の検出装置の構成を示す概念図である。本例の検出装置は、プラズモン共鳴現象を用いて物質を検出する装置(物質検出装置)である。そして、この物質検出装置は、素子の傾きを検出する装置(傾き検出装置)を有している。
【0015】
具体的には、表面に薄膜状の微小金属構造体が形成された素子1を保持し、保持した素子1の傾きを変更する保持手段10を有する。また、素子1に検出光を照射する照射手段20と、素子1を透過した検出光を受光し、その特性を計測する計測手段30を有する。さらに、計測手段の計測結果に基づいて素子1の傾きを求める演算手段40と、計測手段30の計測結果及び演算手段40の演算結果の一方または双方を表示する表示手段50とを有する。加えて、以上の各手段を統括的に制御する制御手段60を有する。
【0016】
以下、素子1、保持手段10、照射手段20、計測手段30、演算手段40、表示手段50及び制御手段60のそれぞれについて具体的に説明する。
(素子)
素子1は、基体2と、気体2の表面に設けられた薄膜状の微小金属構造体3とを有する。微小金属構造体3の形状は、多面体形状であっても、非多面体形状であってもよい。多面体形状の例としては、円柱、多角柱、円錐、角錐、厚さを持ったリング形状、厚さを持った井形や田形などが挙げられる。また、非多面体形状の例としては、回転楕円体形状のような異方性を持った球形状などが挙げられる。
【0017】
微小金属構造体3をその製法に着目して述べれば、微小金属構造体3のうちいくつかの例は金属パターンとも呼びうる。パターニングされた微小金属構造体3の形状の例としては図2(a)〜(i)に示すようなものが挙げられる。なお、微小金属構造体3を基体2の表面上に種々の成膜法を用いて作製する場合、その大きさは粒径測定装置で測定することは困難である。このような場合、微小金属構造体3の好ましい大きさは以下のとおりである。まず、好ましい厚さ(微小金属構造体3が形成された基体表面と垂直な方向の平均の厚さ)は、10nm以上100nm以下である。また、大きさ(微小金属構造体3が形成された基体表面と平行な面における微小金属構造体3上の任意の2点間の距離の最大値)は、10nm以上1450nm以下であることが好ましく、50nm以上450nm以下であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の好適な測定方法である局在プラズモン共鳴法との関連で言えば、微小金属構造体3を構成する金属の一例として次のような金属が挙げられる。金、銀、銅、アルミニウム、白金、亜鉛、これらの元素の二種以上からなる合金、これらの元素の少なくとも一種を含む合金である。より好ましくは、局在プラズモン共鳴を顕著に示す金や銀が挙げられる。尚、微小金属構造体が全体としてプラズモン共鳴を示せば、プラズモン共鳴を示さない金属が含まれていてもよい。
【0019】
基体2は、微小金属構造体3を設けるための平面を有するものであれば如何なるものでも良いが、検出光の透過率が高いものが好ましい。検出光の透過率が高い材料としては、シリカ、石英、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0020】
素子1の製法の一例について説明する。予めTiやCrの接着層が形成された0.75mm厚の石英基板上に、スパッタリング法によって膜厚20nmの金薄膜を形成する。形成された金属膜を、電子線描画装置を用いて例えば図2(a)のような200nm×200nmの正方形状にパターニングする。これによって、互いに離間した複数の微小金属構造体が一主面に形成された素子が得られる。尚、ここでは金属膜のパターニングに電子線描画装置を用いたが、集束イオンビーム加工装置、X線露光装置、紫外線露光装置、エキシマ露光装置を用いてパターニングしてもよい。
【0021】
素子1の他の製法としては、金薄膜上にレジスト膜を形成した後、露光・現像によってレジストパターンを形成し、ICPエッチャにて、レジスト除去部の金をエッチングする方法が挙げられる。この方法では、エッチング後、残っているレジストをアッシング装置にて除去することで、金を用いた素子1を得ることができる。尚、ここでは、エッチングによる方法を記載したが、リフトオフ法で作製してもかまわない。
(保持手段)
再び図1を参照する。素子1を保持する保持手段10は、素子1をしっかりと保持し、かつ、保持した素子1の傾きを変更させることができる手段であればよく、特定の手段に限定されるものではない。
【0022】
保持手段10は、例えば、図3(a)(b)に示すようなゴニオメータ11や、図4(a)(b)に示すような複数の支持点を支持機構12によって実現することができる。図3(a)(b)に示すゴニオメータ11は、固定ステージ11aと、可動ステージ11bとを有する。可動ステージ11bは、同図に鎖線で示した円の中心を回転中心として、同図(b)に示すように回動する。従って、可動ステージ11bに素子1を搭載することによって、素子1を上記円の中心を回転中心として回動させて、その傾きを変更させることができる。一方、図4(a)(b)に示す支持機構12は、台座12aと、台座12aの上に設置された複数(本例では2つの)の圧電素子12bとを有する。素子1は、2つの圧電素子12bに跨ってそれら圧電素子12bの上に搭載される。よって、圧電素子12bに電圧をかけて該圧電素子12bを伸縮させることによって、素子1を傾かせることができる。しかし、既述のゴニオメータ11や支持機構12によって素子1の傾きを制御する場合、図3(b)や図4(b)に示すように、検出光の光軸(図中では鎖線で模式的示す)と交差する方向に素子1が位置ずれを起こす問題が考えられる。そこで、ゴニオメータ11を用いる場合には、図3(c)に示すように、可動ステージ11bと素子1との間にスペーサ11cを介在させることが好ましい。すると、図3(d)に示すように、可動ステージ11bの回動に伴って、素子1に対する検出光の光軸の入射位置が変化することを回避できる。
【0023】
また、支持機構12を用いる場合には、図4(c)に示すように、台座12aをリニアステージ12cに載せることが好ましい。すなわち、素子1が傾いても、該素子1に対する検出光の光軸の入射位置が変化しないように、リニアステージ12cを駆動して素子1の位置を補正することが好ましい。
【0024】
尚、素子1は、ゴニオメータ11や支持機構12が動作しても搭載位置がずれないように、ゴニオメータ11や支持機構12にしっかりと固定されている必要がある。固定手段としては、素子1をスペーサ11cや圧電素子12bに固定する固定治具が挙げられる。また、素子1とスペーサ11cや圧電素子12bとの間の空間を減圧することにより、素子1とスペーサ11cや圧電素子12bとを気圧によって密着固定させる機構なども挙げられる。
(照射手段)
再び図1を参照する。図示されている照明手段20は、保持手段10によって保持されている素子1に検出光を照射するための手段である。素子1に照射される検出光は、金属微小構造体3とプラズモン共鳴を起こす波長帯の光であれば、如何なる光であってもよい。従って、照明手段20を構成する光源としては、レーザー、LED等の種々のものを用いることができる。好ましい光源としては、広帯域な白色光源である、ハロゲンランプ、タングステンランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
【0025】
照射手段20は、不図示の光源と素子1との間に配置される種々の光学系や光学素子を含んでいてもよい。かかる光学系や光学素子の例としては、素子1に対する検出光の照射領域を調整するためのレンズ光学系、検出光をコリメートするための光学系(コリメーター)が挙げられる。また、検出光を偏光させるための偏光板、モノクロメーター等の分光光学系、素子1に対する検出光の照射角度(入射角度)を一定範囲で変更可能とするための輪帯照明系等なども挙げられる。
【0026】
図5に、輪帯照明系を含む照射手段20の具体的構成例を示す。図示されている照射手段20は、光源21と、光源21と素子1との間に配置された輪帯照明系とを有する。輪帯照明系は、二つのアキシコンプリズム22と、集光レンズ23とから構成されている。尚、輪帯照明系を含む光学系や光学素子などは、光源21と素子1との間に限らず、検出光の光路上の任意の位置に設けることができる。また、光学系や光学素子の数も一つに限られない。
(計測手段)
再び図1を参照する。図示されている計測手段30は、素子1を透過した光(透過光)を受光し、その特性を検出できる手段であれば如何なる手段であってもよく、標的物質の検出に利用する透過光の特性変化に合わせて適宜選択することができる。例えば、透過光の強度変化を利用して標的物質を検出する場合には、フォトダイオードや光電子増倍管(PMT)などによって計測手段を実現することが好ましい。また、透過光のスペクトル変化を利用して標的物質を検出する場合には、分光光学系を用いた検出器(所謂、分光器)などによって計測手段を実現することが好ましい。分光光学系を用いる場合、素子1を透過した光をモノクロメーター、ポリクロメーター等の分光器に通して分光測定してもよい。尚、モノクロメーター等の分光光学系を用いて検出光を予め波長の異なる光に分光し、波長毎の透過光強度を測定することでスペクトル測定を行ってもよい。ここで、予め検出光を分光するとは、検出光が素子1に入射する前に分光することを意味している。
(演算手段)
演算手段40は、計測手段30の出力値に基づいて、検出光の光軸に対する素子1の傾きを演算する。具体的には、素子1の基体表面と検出光の光軸とが傾きを有する場合(直交していない場合)と、基体表面と検出光の光軸とが傾きを有さない場合(直交している場合)とでは、素子1による検出光の吸収スペクトルのピーク波長が異なるという性質がある。より具体的には、基体表面と検出光の光軸とが直交していない場合には、直交している場合よりも、吸収スペクトルのピーク波長が長波長側に現れる。換言すれば、素子1の傾きを複数回変更し、その度に吸収スペクトルのピーク波長を求めた場合、ピーク波長が最も短波長側に現れたときが素子1の基体表面と検出光の光軸とが直交していると判断できる。少なくとも複数の傾き状態のうちで、直交状態に最も近い状態であると判断することができる。そこで演算手段40は、保持手段10によって素子1の傾きが変更される度に、計測手段30の出力値に基づいて吸収スペクトルのピーク波長を求める。
【0027】
一方で、演算手段40は、保持手段10の駆動状態に基づいて素子1の現在の傾きを把握している。具体的には、保持手段10が図3に示されているゴニオメータ11によって実現されている場合には、可動ステージ11bの回動量や回動角度などを素子1の傾きとして把握している。また、保持手段10が図4に示されている支持機構12によって実現されている場合には、電圧が印加されている圧電素子12b及びその電圧値を素子1の傾きとして把握している。
【0028】
要するに、演算手段40は、保持手段10の各駆動状態とそのときのピーク波長とをマッチングさせることによって、素子1の傾きを求める。すなわち、このような演算手段およびその均等物並びにそれらのいずれかを用いた傾きを求める工程(これらをまとめて、「本発明の演算」と呼ぶ)が本発明の重要な特徴部分となる。本発明の演算は、プラズモン共鳴を利用して行うことが好ましい。もっとも、本発明の演算は、素子の傾きが素子を透過する光に影響を与える場合のすべてに適用が可能である。言い換えると、本発明の演算はプラズモンを用いた物質検出装置以外にも適用可能である。
(表示手段)
表示手段50は、演算手段40の演算結果及び計測手段30の計測結果の双方または一方を表示する。
(制御手段)
制御手段60は、これまで説明した保持手段10、照射手段20、計測手段30、演算手段40及び表示手段50を統括的に制御する。特に、演算手段40の演算結果に基づいて保持手段10を制御して、素子1の傾きを調整する。
(実施例1)
次に、本発明のより具体的な実施例について図6、図7を参照しながら説明する。図6、図7は、本例の検出装置の全体構成図である。尚、説明の便宜上、一方の図面に示されている構成が他方の図面では省略されている場合がある。
【0029】
本例では、保持手段10を図3(c)(d)に示すゴニオメータ11と、該ゴニオメータ11を駆動制御する駆動制御部13とを備えた傾き制御ユニット14によって実現した。また、照明手段20は、ハロゲンランプ21を光源とする光源ユニット22によって実現した。
【0030】
また、計測手段30として透過光のスペクトル変化を検出する手段を採用した。具体的には、透過光を受光する分光器(受光素子)31と検出器32とによって計測手段30を実現した。表示手段50は、液晶ディスプレイ51によって実現した。もちろん、表示手段50は、CRTモニタやその他の方式の表示装置によって実現することもでき、計測手段30の計測結果や演算手段40の演算結果を印刷するプリンタなども表示手段50に含まれる。
【0031】
また、演算手段40及び制御手段60は、検出器32、傾き制御ユニット14、光源ユニット22及び液晶ディスプレイ51などと接続され、上記機能を果たし得る中央演算処理部61によって実現した。中央演算処理部61は、各種演算処理を実行するCPU、各種情報や制御プログラムなどを記憶するメモリ、各種信号が入出力されるインターフェイスなどを有する。
【0032】
次に、本例の検出装置の動作について説明する。まず、保持手段10によって素子1を保持する工程が実行される。具体的には、素子1を保持手段10であるゴニオメータ11の可動ステージ11bにスペーサ11cを介して固定する。この際、光源ユニット22と分光器31との光軸上に素子1が位置するように、三者の相対的位置関係が調整される。次に、素子1に検出光を照射する工程と、素子1を透過した光を受光して、その特性を計測する工程とが実行される。具体的には、光源ユニット22から出射された検出光が素子1に照射され、透過光が分光器31で受光される。
【0033】
次に、計測された透過光の特性の変化に基づいて素子1の傾きを求める工程が実行される。具体的には、検出器32によって吸収スペクトルが求められ、中央演算処理部61に出力される。中央演算処理部61は、入力された吸収スペクトルのピーク波長を求める。さらに中央演算処理部61は、傾き制御ユニット14の駆動制御部13がゴニオメータ11を駆動させ、素子1の傾きを所定回数変更させる。また、素子1の傾きが変更される度に、上記のようにして吸収スペクトルのピーク波長を求める。その後、複数のピーク波長を求めた中央演算処理部61によって、ピーク波長が最も短波長であった際の素子1の傾きが特定される。実際には、ゴニオメータ11の可動ステージ11bの回動量や回動角度が特定される。次いで、中央演算処理部61は、傾き制御ユニット14に対して、上記特定された傾き近傍でさらに細かく素子1の傾きを変更させる。このときも、素子1の傾きが変更される度に、上記のようにして吸収スペクトルのピーク波長を求め、ピーク波長が最も短波長であった際の素子1の傾きを特定する。以上の動作を繰り返すことによって、素子1の傾きが検出光の光軸と直交する傾きに調整される。すなわち、上記のようにして求められた素子1の傾きに応じて素子1の傾きを調整する工程が実行される。本実施例では、吸収スペクトルのピーク波長を求めることで素子1の傾きを調整しているが、透過光強度の変化によっても傾きを調整することが可能である。吸収スペクトルのピーク波長より短波長側の透過光強度を測定すれば、吸収スペクトルのピーク波長が最も短波長である場合、透過光強度は最も小さくなる。透過光強度の変化を用いて傾きを調整する場合、光源は半導体レーザー等の出力が大きく、安定したものが好ましい。また、計測に用いる受光素子についても、フォトダイオード等の光源の波長に対して受光強度のダイナミックレンジが広く、安定なものが好ましい。
【0034】
上記のように、本発明の検出装置では、素子の傾きが毎回正確に調整されるので、素子を再現性よく設置することができ、常に正確な標的物質検出が行われる。さらには、標的物質の検出のために用いられる光学系と共通の光学系を用いて素子の傾き調整が実現される。尚、上記各工程に続いて、標的物質を検出するための工程が実行されるが、かかる工程は従来の検出装置と異なるところはないので、ここでの説明は省略する。もっとも、図6、図7に示されている中央演算処理部61は、標的物質の検出においても必要各部を統括的に制御する。
(実施例2)
次に、本発明の検出装置の実施例の他例について説明する。もっとも、本例の検出装置の基本構成は実施例1と同一であるので、ここでは異なる構成についてのみ説明する。
【0035】
図8は、本例の検出装置の全体構成図である。本例では、保持手段10を図4(c)(d)に示す支持機構12と、該支持機構12の圧電素子12b及びリニアステージ12cを駆動制御する駆動制御部15とを備えた傾き制御ユニット16によって実現した。尚、駆動制御部15は、圧電素子12bとリニアステージ12cとの動きを連動させて、素子1が傾いても、該素子1に対する検出光の光軸の入射位置が変化しないように、素子1の位置を補正する。
【0036】
また、本例では、照射手段が図5に示す輪帯照明系を含む。具体的には、二つのアキシコンプリズム22と、集光レンズ23とを含む光学系が光源21と素子1との間に配置されている。従って、素子1に対する検出光の照射角度を一定の範囲で変更可能である。
【0037】
本例の検出装置における共鳴素子1の傾き制御動作や標的物質の検出動作も実施例1のそれらと基本的に同一である。ただし、本例の検出装置は、輪帯照明系を備えているので、吸収スペクトル幅の変化を用いて素子1の傾き調整を行うことが可能である。つまり、素子1が光源21と分光器31とを結ぶ光軸に対して傾きを持っている場合、素子1への検出光の入射角度の範囲が広がるため、吸収スペクトル幅が大きくなる。換言すれば、素子1と、光源21と分光器31とを結ぶ光軸とが直交している場合、吸収スペクトル幅が最も狭くなる。従って、かかる性質を利用して素子1の傾きを調整することができる。具体的には、素子1の傾きが変更される度に、不図示の中央演算処理部は、吸収スペクトル幅の求め、吸収スペクトル幅が最も狭くなった際の素子1の傾きを特定する。かかる動作を複数回繰り返すことによって、鳴素子1と、光源21と分光器31とを結ぶ光軸とが直交するように素子1の傾きを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の検出装置の実施形態の一例を示す概念図である。
【図2】素子に設けられる微小金属構造体の形状の異なる例を示す模式図である。
【図3】保持手段の一例であるゴニオメータを示す模式図である。
【図4】保持手段の一例である支持機構を示す模式図である。
【図5】照射手段が備える輪帯照明系の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の検出装置の実施例を示す全体構成図である。
【図7】本発明の検出装置の実施例を示す全体構成図である。
【図8】本発明の検出装置の他の実施例を示す全体構成図である。
【図9】Kretschmann配置を有する測定系を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 素子
3 微小金属構造体
10 保持手段
20 照射手段
30 計測手段
40 演算手段
60 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子の傾きを検出する検出装置において、
前記素子を保持するとともに、該素子の傾きを変更する保持手段と、
前記素子に検出光を照射する照射手段と、
前記素子を透過した前記検出光を受光し、受光した光の特性を計測する計測手段と、
前記素子の傾きを複数回変更させた際の、前記計測手段の出力値の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める演算手段と、を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記演算手段によって求められた前記素子の傾きに基づいて、該素子の傾きを調整する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記照明手段が前記素子に対する前記検出光の照射角度を変更可能な光学系を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める検出方法であって、
前記素子を保持する工程と、
前記素子に検出光を照射する工程と、
前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程と、
前記素子の傾きを複数回変更させつつ、傾きを変更する度に前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程と、
前記計測された特性の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める工程と、を含むことを特徴とする前記素子の傾きを求める検出方法。
【請求項5】
求められた前記素子の傾きに応じて該素子の傾きを調整する工程をさらに含むことを特徴とする前記素子の傾きを求める請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
素子に設けられた微小金属構造体の上の物質をプラズモン共鳴現象を用いて検出する検出装置において、
前記素子を保持するとともに、該素子の傾きを変更する保持手段と、
前記素子に検出光を照射する照射手段と、
前記素子を透過した前記検出光を受光し、受光した光の特性を計測する計測手段と、
前記素子の傾きを複数回変更させた際の、前記計測手段の出力値の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める演算手段と、を有することを特徴とする物質の検出装置。
【請求項7】
前記演算手段によって求められた前記素子の傾きに基づいて、該素子の傾きを調整する制御手段を有することを特徴とする請求項6記載の物質の検出装置。
【請求項8】
前記照明手段が前記素子に対する前記検出光の照射角度を変更可能な光学系を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の物質の検出装置。
【請求項9】
素子に設けられた微小金属構造体の上の物質をプラズモン共鳴現象を用いて検出する方法であって、
前記素子を保持する工程と、
前記素子に検出光を照射する工程と、
前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程と、
前記素子の傾きを複数回変更させつつ、傾きを変更する度に前記素子を透過した光を受光して、その特性を計測する工程と、
前記計測された特性の変化に基づいて、前記検出光の光軸に対する前記素子の傾きを求める工程と、を含むことを特徴とする物質の検出方法。
【請求項10】
求められた前記素子の傾きに応じて該素子の傾きを調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の物質の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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