説明

検査治具

【課題】信頼性が高い検査結果を得ることができる検査治具を提供すること。
【解決手段】検出電極102を有する静電容量センサーシート100の検査をするために検出電極102に接続される検査装置に適用される検査治具10であって、静電容量センサーシート100との間に空気層を生じさせる凹部13を有し静電容量センサーシート100が載置される載置台11と、凹部13内に設けられ、載置台11に載置された静電容量センサーシート100の厚さ方向からみたときに検出電極102と重なる位置で静電容量センサーシート100を支持する柱状部15と、検査装置と電気的に接続され柱状部15との間に検出電極102が挟まれるように静電容量センサーシート100に押し当てられる押し子17と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量センサーシートの検査装置に適用される検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示画面と重ねて設置され、ユーザが直感的に操作できるタッチパネルが知られている。タッチパネルには、ユーザの指などが近接することを検出するための検出電極を有する静電容量センサーシート(以下、単に「センサーシート」と称する。)が設けられている。
【0003】
センサーシートが仕様通りの性能を発揮できるか検査するための一方法として、静電容量の変化を検出する検出回路にセンサーシートを接続し、ユーザの指などの入力体の代替となる電極を、センサーシートの検出電極に近接させることが知られている。
【0004】
センサーシートの検査装置の例として、例えば特許文献1には、入力体の代替となる複数の電極(検査電極)を有する検査治具を備えた検査装置が開示されている。特許文献1に記載の検査装置では、センサーシート(センサーモジュール)の検出電極(センサ電極)に検査治具の検査電極が一定の間隔を開けて対向するように、センサーシートに検査治具が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−86026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサーシートは、樹脂やガラスなどからなる硬質な筐体に接着されたり、インサート成形などによって樹脂等からなる硬質なパネルと一体成形されたりする場合がある。この場合、センサーシート使用時に、センサーシートの厚さ方向の一方の面が空気に触れた状態となっていることがある。また、センサーシートの使用時には、センサーシートが突起によって支持され、センサーシートの厚さ方向の両面が空気に触れた状態となっていることもある。
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置では、検査されるセンサーシートが、平坦な台やベルトコンベア上に載置されるようになっており、厚さ方向の一方の面が空気に触れる状態とは異なる状態で検査が行われる。このため、センサーシートが実際に使用される条件とは異なる条件下での検査となり、検査結果の信頼性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、信頼性が高い検査結果を得ることができる検査治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の検査治具は、検出電極を有する静電容量センサーシートの検査をするために前記検出電極に接続される検査装置に適用される検査治具であって、前記静電容量センサーシートとの間に空気層を生じさせる凹部を有し前記静電容量センサーシートが載置される載置台と、前記凹部内に設けられ、前記載置台に載置された前記静電容量センサーシートの厚さ方向からみたときに前記検出電極と重なる位置で前記静電容量センサーシートを支持する柱状部と、前記検査装置と電気的に接続され前記柱状部との間に前記検出電極が挟まれるように前記静電容量センサーシートに押し当てられる押し子と、を備えることを特徴とする検査治具である。
【0009】
また、前記柱状部は、前記静電容量センサーシートの厚さ方向の一方の表面に密着するように前記一方の表面の形状に倣って形成された柱状部側密着面を有することが好ましい。
【0010】
また、前記押し子は、前記静電容量センサーシートの厚さ方向の一方の表面に対する他方の表面に密着するように前記他方の表面の形状に倣って形成された押し子側密着面を有することが好ましい。
【0011】
また、前記押し子側密着面は直径が5mm以上20mm以下の円形に形成され、前記柱状部側密着面は前記押し子側密着面の直径よりも大きい直径を有する円形に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の検査治具は、前記載置台に着脱可能に取り付けられ前記押し子を前記柱状部へ向けて案内するガイド部材を有し、前記ガイド部材には、前記柱状部の中心軸と同軸状に前記ガイド部材を貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔の内寸は、前記押し子が進退自在に挿通されるとともに前記押し子の中心軸が前記柱状部の中心軸と略同軸となるように前記押し子を支持可能な内寸であり、前記柱状部側密着面の外寸は、前記貫通孔の内寸と略等しいことが好ましい。
【0013】
また、前記押し子は、前記検査装置と電気的に接続され前記押し子側密着面が形成された押し子本体と、前記押し子本体に対して着脱可能であり前記他方の表面の形状に倣って形成された押し子側第二密着面を有し押し子側密着面と前記静電容量センサーシートとの間に所定の隙間を生じさせるスペーサと、を有し、前記スペーサの誘電率は、前記静電容量センサーシートの使用時に前記静電容量センサーシートの厚さ方向に重ねられるパネルの誘電率と略同じであり、前記所定の厚さは、前記パネルの厚さと略等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査治具によれば、センサーシートに空気層が接する状態としつつ検出電極が位置する部分に押し子を確実に接触させることができ、信頼性が高い検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の検査治具を備える検査装置およびセンサーシートを示すブロック図である。
【図2】同検査治具を示す平面図である。
【図3】同検査治具を示す側面図である。
【図4】同検査治具における載置台を示す平面図である。
【図5】図2のA−A線における断面図である。
【図6】検査治具の部分断面図である。
【図7】同実施形態の変形例の検査治具の構成を示す部分断面図である。
【図8】同実施形態の他の変形例の検査治具を図2のA−A線と同様の断面で示す断面図である。
【図9】同実施形態のさらに他の変形例の検査治具を図2のA−A線と同様の断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態の検査治具10について、検査治具10を備える検査装置1を例に説明する。図1は、検査装置1およびセンサーシート100を示すブロック図である。
図1に示すように、検査装置1は、静電容量の変化を検出するための静電容量センサーシート100(以下、単に「センサーシート100」と称する。)を検査する装置である。本実施形態で検査装置1によって検査されるセンサーシート100は、板状、シート状、あるいはフィルム状に形成された絶縁体からなる基板101と、基板101上に形成された検出電極102と、検出電極102に一端が接続された配線103とを有している。配線103の他端は、基板101の周縁部に配置されており、静電容量を検出する検出回路に接続するための端子となっている。
検査装置1は、センサーシート100を保持する検査治具10と、センサーシート100の端子に接続される検査回路30と、検査回路30による検査結果を表示する表示部40とを備える。
【0017】
図2は、検査治具10を示す平面図である。図3は、検査治具10を示す側面図である。図4は、検査治具10における載置台11を示す平面図である。図5は、図2のA−A線における断面図である。
図2、図3、および図4に示すように、検査治具10は、載置台11と、柱状部15と、押し子17と、ガイド部材20とを備える。
図3および図4に示すように、載置台11は、センサーシート100が載置される台であり、センサーシート100が載置される載置面12を有する略直方体形状に形成されている。
図4および図5に示すように、載置台11には、平面視でセンサーシート100の周縁より僅かに内側に輪郭が位置する凹部13と、載置面12に直交する方向へ載置面12から突出した凸部14とが形成されている。
【0018】
図5に示すように、凹部13は、載置面12に直交する方向へ載置面12から窪んで形成されており、凹部13の底面には、複数の柱状部15が固定されている。図4および図5に示すように、載置面12にセンサーシート100が載置されたときに、凹部13は少なくともセンサーシート100において検査対象となる検出電極102のすべてを囲むように開口されている。なお、凹部13の開口の形状は、センサーシート100の検出電極102が検査対象であるか否かによらず全ての検出電極102を囲む形状であってもよい。
【0019】
図5に示すように、凹部13の深さ寸法dは、センサーシート100が電子機器等に組み込まれて実際に使用される状態でセンサーシート100との間に生じる隙間(空気層)の厚さを考慮して設定される。例えば、凹部13の深さ寸法dは、例えば3mm以上13mm以下、具体的には3mm、5mm、13mmなどに設定される。これにより、凹部13は、載置面12上にセンサーシート100が載置されたときに、センサーシート100との間に所定の厚さの空気層を生じさせる。なお、凹部13の深さ寸法dが大きくなるほど、凹部13の底部がセンサーシート100における検出感度に与える影響が軽減される。このため、センサーシート100における検出感度への検査治具10による影響を軽減するという観点からは、凹部13の深さ寸法dは大きい方が好ましい。
【0020】
凸部14は、載置面12とガイド部材20との間に隙間を空け、センサーシート100とガイド部材20との間に空気層を生じさせる。凸部14の突出量は、凹部13の深さ寸法dの設定方法と同様に、センサーシート100の検出感度への検査治具10による影響を考慮して設定される。これにより、凸部14は、載置面12上にセンサーシート100が載置されたときに、センサーシート100との間に所定の厚さの空気層を生じさせる。凸部14と上述の凹部13とがともに載置台11に形成されている場合、センサーシート100の厚さ方向の両面は空気層に接している。
【0021】
なお、センサーシート100の使用時に、センサーシート100の厚さ方向の両面のうち検査治具10の載置面12に接する表面(本明細書では、「センサーシート100の一方の表面100a」と称する。)と反対側の表面(本明細書では、「センサーシート100の他方の表面100b」と称する。)が樹脂等のパネルに密着した状態となる場合には、検査治具10は凸部14を有していなくてもよい。
【0022】
図4および図5に示すように、柱状部15は、載置面12にセンサーシート100が載置されたときに平面視でセンサーシート100の検出電極102と重なる位置に配置された柱状の部材である。本実施形態では、柱状部15は、円柱形状に形成されており、凹部13の底に固定された側と反対側の端面は、センサーシート100の表面の形状に倣って形成された柱状部側密着面16となっている。本実施形態では、センサーシート100は平坦な板状、シート状、あるいはフィルム状であるので、本実施形態における柱状部側密着面16は、センサーシート100の外面に倣って平坦な面となっている。これにより、柱状部側密着面16は、センサーシート100の厚さ方向の一方の表面100aに密着する。
柱状部15の中心軸線方向における柱状部側密着面16の位置は、載置面12と面一となっている。これにより、柱状部15は、載置面12上に載置されたセンサーシート100を載置面12に沿って支持することができる。
【0023】
載置台11を平面視したときの柱状部側密着面16の位置は、載置面12にセンサーシート100が載置されたときに、検出電極102内で検査を行う位置に設定されている。たとえば、センサーシート100を平面視したときの検出電極102の中央に対して検査を行う場合には、柱状部側密着面16は、検出電極102の中央と重なる位置に配置される。
【0024】
柱状部側密着面16は、後述する押し子17に形成された押し子側密着面18の直径と等しいか僅かに大きく形成されている。また、柱状部側密着面16の形状は、押し子17の押し子側密着面18の形状と同形であることが好ましく、本実施形態では、押し子側密着面18の形状に倣った円形に形成されている。
【0025】
本実施形態では、柱状部15は、載置台11と一体成形されている。載置台11および柱状部15の材質は、検査装置1において不要な静電容量が検出されるのを防ぐ目的で、誘電率の低い材質が採用されている。本実施形態では、載置台11および柱状部15の材質としては、フッ素樹脂、発泡スチロール、あるいはスポンジなどを採用することができる。
【0026】
図1に示すように、押し子17は、検査装置1と電気的に接続された誘電体からなる部材である。押し子17は、センサーシート100に対して入力を行う指やスタイラスペンを模した部材であり、センサーシート100の検出電極102に対する検査のための入力操作をする目的で設けられている。
【0027】
図5に示すように、押し子17は、センサーシート100の他方の表面100bの形状に倣って形成された押し子側密着面18を有する。押し子側密着面18は、センサーシート100の他方の表面100bに密着する面であり、たとえばセンサーシート100を使用するユーザの指の太さに基づいて寸法が設定されている。具体的には、押し子側密着面18は、センサーシート100にユーザの指が接触する接触面積と略同程度の面積となる直径が5mm以上20mm以下の円形に形成される。
【0028】
押し子17の位置は、後述するガイド部材20によってガイドされ、柱状部15との間に検出電極102が挟まれるように押し子側密着面18がセンサーシート100に押し当てられる。
押し子17における押し子側密着面18と反対側の端面には、検査装置1の検査回路30と電気的に接続するためのコードが取り付けられている。本実施形態では、押し子17は、検査装置1の検査回路30におけるグランドに接続される。
【0029】
図3および図5に示すように、ガイド部材20は、載置台11に着脱可能に取り付けられる板状の部材であり、柱状部15へ向けて押し子17を案内するための貫通孔21を有する。
図3に示すように、ガイド部材20は、載置台11の凸部14によって、載置台11の載置面12との間に隙間が空けられた状態で支持される。
【0030】
図5に示すように、ガイド部材20に形成された貫通孔21は、柱状部15の中心軸と同軸状にガイド部材20を貫通している。貫通孔21の内寸は、押し子17が進退自在に挿通される内寸であり、且つ、押し子17の中心軸が柱状部15の中心軸と略同軸となるように押し子17を支持可能な内寸となっている。さらに、貫通孔21の内寸と柱状部側密着面16の外寸とは略等しい。
【0031】
ガイド部材20は、載置面12にセンサーシート100が載置されたときに、検出電極102内で検査を行う位置へと押し子側密着面18を案内する。たとえば、センサーシート100を平面視したときの検出電極102の中央に対して検査を行う場合には、ガイド部材20は、検出電極102の中央と重なり柱状部側密着面16と対向する位置に押し子側密着面18を案内する。
【0032】
なお、ガイド部材20に形成された貫通孔21は、押し子17との間に適切なクリアランスを有していることが好ましい。適切なクリアランスの大きさは、押し子側密着面18がセンサーシート100の他方の表面100bに密着するように押し子17が貫通孔21内で僅かに傾くことを許容できる大きさである。
【0033】
以上に説明した構成の検査治具10の作用について説明する。図6は、検査治具10の部分断面図である。
検査治具10は、静電容量の変化を検出する検査回路30を備えた検査装置1とともに使用される。なお、以下では、検査装置1が自己容量方式のセンサーシート100の検査を行う場合を例にして説明する。
【0034】
検査装置1の使用時には、まず、センサーシート100を検査治具10に取り付けるとともにセンサーシート100の端子を検査回路30に接続し、検査治具10の押し子17を検査回路30に接続する(図1参照)。これにより、検査回路30においては、センサーシート100の検出電極102に押し子17を近接させることによって検出電極102における静電容量の変化を検出することができる。
【0035】
図6に示すように、検査治具10へセンサーシート100を取り付けるためには、まず、センサーシート100を載置面12に載置する。このとき、センサーシート100の外縁が平面視で凹部13の開口の僅かに外側に位置し、センサーシート100において検査する検出電極102が平面視で凹部13内に位置するように、センサーシート100を載置する。
図5に示すように、センサーシート100の外縁は、載置面12によって支持される。さらに、センサーシート100の検出電極102は、柱状部15の柱状部側密着面16によって支持される。センサーシート100の一方の表面100aは、凹部13によって生じる空気層と接している。
【0036】
続いて、載置台11にガイド部材20を取り付け、その後、検査装置1の検査回路30によって各検出電極102における静電容量の検出を開始する。ガイド部材20に押し子17が挿入されていない状態は、検出電極102に対する入力操作がされていない状態に対応する。
【0037】
続いて、図6に示すように、ガイド部材20に形成された貫通孔21に押し子17を挿入する。ガイド部材20の貫通孔21に押し子17を挿入する動作は、手作業によって行ってもよいし、図示しないマニピュレータ等を用いて行ってもよい。
センサーシート100の1つの検出電極102のみを検査するときには、押し子17を貫通孔21に1つだけ挿入する。また、センサーシート100の複数の検出電極102を検査するときには、検査する部位に対応する貫通孔21に押し子17をそれぞれ挿入する。さらに、1つの検出電極102の複数の位置への同時入力を検査する場合には、検査対象となる位置に対応する貫通孔21にそれぞれ押し子17を挿入する。
【0038】
ガイド部材20の貫通孔21に挿入された押し子17は、押し子17に形成された押し子側密着面18がセンサーシート100の他方の表面100bへと案内される。これにより、センサーシート100の検出電極102は、押し子側密着面18と柱状部側密着面16とによってはさまれた状態となる。
【0039】
検査回路30のグランドに押し子17が接続されているので、検出回路は、押し子側密着面18がセンサーシート100に密着したことによる検出電極102の静電容量の変化を検出する。検査回路30は、静電容量の変化量が仕様で定められた範囲内にあるか否かを判定し、検査結果をたとえば表示部40に出力する。
【0040】
検査対象となる検出電極102のすべてに対して、押し子17を密着させて静電容量の変化を検出し、検査結果を出力して検査は終了する。
検査が終了したら、押し子17およびガイド部材20を取り外し、センサーシート100を載置台11および検査回路30から取り外して一連の作業を終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の検査治具10によれば、静電容量センサーシート100の実際の使用態様に近い条件で静電容量センサーシート100の検査をすることができる。
【0042】
また、静電容量センサーシート100の表面の形状に倣った形状の柱状部側密着面16が柱状部15に形成されているので、静電容量センサーシート100と柱状部15との間に隙間は生じない。これにより、静電容量の変化を精度よく検査回路30に測定させることができる。
【0043】
また、静電容量センサーシート100の表面の形状に倣った形状の押し子側密着面18が押し子17に形成されているので、静電容量センサーシート100に押し子17を隙間なく接触させることができる。これにより、静電容量の変化を精度よく検査回路30に測定させることができる。
【0044】
また、押し子側密着面18が直径が5mm以上20mm以下の円形に形成されているので、人の指をセンサーシート100に接触させた場合に近い条件でセンサーシート100の検査をすることができる。これにより、センサーシート100の検査においてセンサーシート100がユーザによって使用されている状況を再現することができる。
【0045】
また、ガイド部材20が設けられていない場合には、検出電極102に対して押し子17を押し付ける位置が検査ごとに異なってしまう場合がある。本実施形態では、ガイド部材20によって押し子17を柱状部15へと案内することができるので、検出電極102に対して押し子17を押し付ける位置の精度が高い。これにより、センサーシート100ごとに検出電極102への押し子17の押し付け位置が異なってしまう場合と比較して、検査の精度を高めることができる。
【0046】
(変形例1)
次に、上述の実施形態で説明した検査治具10の変形例について説明する。図7は、本変形例の検査治具を示す部分断面図である。
本変形例の検査治具10Aは、押し子17に代えて押し子17Aを備え、ガイド部材20に代えてガイド部材20Aを備える点で上述の検査治具10と構成が異なっている。
【0047】
押し子17Aは、検査装置1と電気的に接続された押し子本体17A1と、押し子本体17A1に対して着脱可能なスペーサ19とを有する。
押し子本体17A1は、円柱形状に形成された軸部と、軸部の直径よりも細くガイド部材20Aの貫通孔21Aに挿入される円柱形状の挿入部とを備える。押し子本体17A1の挿入部の端面は、上述の押し子側密着面18と同様の押し子側密着面18が形成されている。
【0048】
スペーサ19は、一方が閉じられた筒状に形成されている。本変形例では、スペーサ19は、押し子本体17A1の先端部が挿入可能な断面円形の開口19aを有する。スペーサ19の開口には、スペーサ19の径方向へ広がって形成された円環状のフランジ19bが形成されている。
さらに、スペーサ19には、押し子本体17A1の押し子側密着面18と密着するスペーサ内密着面19cと、センサーシート100の他方の表面100bの形状に倣って形成された押し子側第二密着面19dとが形成されている。
【0049】
スペーサ内密着面19cと押し子側第二密着面19dとは互いに平行な平面となっており、いずれも平滑な表面状態を有している。押し子側第二密着面19dは、上述の押し子17に形成された押し子側密着面18と同様に静電容量センサーシート100の表面に密着することにより、静電容量の変化を精度よく検査回路30に検出させることができる。
【0050】
スペーサ19の誘電率は、静電容量センサーシート100の使用時に静電容量センサーシート100の厚さ方向に重ねられるパネルの誘電率と略同じである。スペーサ19の誘電率をパネルの誘電率と略同じとするためには、スペーサ19が、パネルの材料と同じ材料によって形成されていればよい。また、パネルの材料と異なる材料を用いてスペーサ19を形成する場合には、スペーサ19の厚さを調整したり、複数の材料を混合してスペーサ19の材料としたりすることにより、スペーサ19の誘電率をパネルの誘電率に近づけることができる。
【0051】
押し子本体17A1に取り付けられたスペーサ19によって、押し子側密着面18と静電容量センサーシート100との間に所定の隙間が生じる。所定の隙間の大きさは、パネルの厚さと略等しくなっている。
【0052】
ガイド部材20Aには、上述の実施形態で説明したガイド部材20の貫通孔21とは異なる形状の貫通孔21Aが形成されている。
貫通孔21Aは、スペーサ19を係止するための係止部22を有する。係止部22は、ガイド部材20Aの上面側においてフランジ19bの外寸より大きく、ガイド部材20Aの下面側においてフランジ19bの外寸より小さくなるように貫通孔21Aの内面に形成された段差からなる。
係止部22にスペーサ19が係止された状態では、押し子側第二密着面19dは、柱状部側密着面16と接触可能な程度までガイド部材20Aの下面よりも突出する。これにより、スペーサ19が押し子17に取り付けられた状態ではスペーサ19がガイド部材20Aと載置台11との間に落ち込むことなく押し子側第二密着面19dをセンサーシート100に押し付けることができる。
【0053】
本変形例では、スペーサ19を有していることによって、センサーシート100がパネルに固定されて使用されている状況を再現し、パネルを介して操作入力が行われた場合における検出電極102の機能を検査することができる。
【0054】
なお、本変形例の押し子17Aは、スペーサ19が取り付けられていない状態でも使用することができる。これにより、パネルを設けない条件の下で静電容量センサーシート100の検査をすることもできる。
【0055】
(変形例2)
次に、上述の実施形態の他の変形例について説明する。図8は、本変形例の検査治具を図2のA−A線と同様の断面で示す断面図である。
本変形例の検査治具10Bは、載置面12上に、センサーシート100を位置決めするための位置決め部材11Bが設けられている点が上述の検査治具10と異なっている。
位置決め部材11Bは、たとえば載置台11に形成された凹部13の開口の周囲に沿って所定の間隔を開けて複数設けられた突起状に形成されている。位置決め部材11Bによって囲まれる領域内にセンサーシート100を入れ込むことにより、載置面12上でセンサーシート100を位置決めすることができる。
【0056】
(変形例3)
次に、上述の実施形態のさらに他の変形例について説明する。図9は、本変形例の検査治具を図2のA−A線と同様の断面で示す断面図である。
図9に示すように、本変形例の検査治具10Cは、センサーシート100の位置決めをすることができるとともに凹部13の底部とセンサーシート100との距離を調整できる点が上述の検査治具10と異なっている。
本変形例では、凹部13は、センサーシート100を内部に収容できる形状に開口されている。また、柱状部15に加えて、センサーシート100の外縁を支持する支持部材11Cをさらに備える。
また、柱状部15と支持部材11Cとは、載置台11に対して着脱自在であり、中心軸線方向の長さが異なる複数種類が用意されている。
本変形例では、中心軸線方向の長さが異なる柱状部15および支持部材11Cから1種類を選択して載置台11に取り付ける。これにより、柱状部15の上端は一平面上に揃い、センサーシート100を支持するための載置面12Aが生じる。また、支持部材11Cによって、センサーシート100における検出電極102の位置は位置決めされる。載置面12Aにセンサーシート100を載置することによって、上述の実施形態および変形例と同様にセンサーシート100の検出電極102に対する検査を行うことができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
たとえば、上述の変形例では、スペーサ内密着面および押し子側第二密着面が平坦な平面である例を示したが、スペーサ内密着面および押し子側第二密着面を、センサーシートの形状に倣う立体形状とすることもできる。これにより、立体的に成形されたセンサーシートにおいても精度よく検査を行うことができる。
また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 検査装置
10、10A、10B、10C 検査治具
11 載置台
12、12A 載置面
13 凹部
14 凸部
15 柱状部
16 柱状部側密着面
17、17A 押し子
17A1 押し子本体
18 押し子側密着面
19 スペーサ
19d 押し子側第二密着面
20、20A ガイド部材
21、21A 貫通孔
22 係止部
30 検査回路
40 表示部
100 センサーシート(静電容量センサーシート)
100a 一方の表面
100b 他方の表面
102 検出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出電極を有する静電容量センサーシートの検査をするために前記検出電極に接続される検査装置に適用される検査治具であって、
前記静電容量センサーシートとの間に空気層を生じさせる凹部を有し前記静電容量センサーシートが載置される載置台と、
前記凹部内に設けられ、前記載置台に載置された前記静電容量センサーシートの厚さ方向からみたときに前記検出電極と重なる位置で前記静電容量センサーシートを支持する柱状部と、
前記検査装置と電気的に接続され前記柱状部との間に前記検出電極が挟まれるように前記静電容量センサーシートに押し当てられる押し子と、
を備えることを特徴とする検査治具。
【請求項2】
請求項1に記載の検査治具であって、
前記柱状部は、前記静電容量センサーシートの厚さ方向の一方の表面に密着するように前記一方の表面の形状に倣って形成された柱状部側密着面を有することを特徴とする検査治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査治具であって、前記押し子は、前記静電容量センサーシートの厚さ方向の一方の表面に対する他方の表面に密着するように前記他方の表面の形状に倣って形成された押し子側密着面を有することを特徴とする検査治具。
【請求項4】
請求項3に記載の検査治具であって、
前記押し子側密着面は直径が5mm以上20mm以下の円形に形成され、
前記柱状部側密着面は前記押し子側密着面の直径よりも大きい直径を有する円形に形成されている
ことを特徴とする検査治具。
【請求項5】
請求項4に記載の検査治具であって、
前記載置台に着脱可能に取り付けられ前記押し子を前記柱状部へ向けて案内するガイド部材を有し、
前記ガイド部材には、前記柱状部の中心軸と同軸状に前記ガイド部材を貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔の内寸は、前記押し子が進退自在に挿通されるとともに前記押し子の中心軸が前記柱状部の中心軸と略同軸となるように前記押し子を支持可能な内寸であり、
前記柱状部側密着面の外寸は、前記貫通孔の内寸と略等しい
ことを特徴とする検査治具。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の検査治具であって、
前記押し子は、
前記検査装置と電気的に接続され前記押し子側密着面が形成された押し子本体と、
前記押し子本体に対して着脱可能であり前記他方の表面の形状に倣って形成された押し子側第二密着面を有し押し子側密着面と前記静電容量センサーシートとの間に所定の隙間を生じさせるスペーサと、
を有し、
前記スペーサの誘電率は、前記静電容量センサーシートの使用時に前記静電容量センサーシートの厚さ方向に重ねられるパネルの誘電率と略同じであり、
前記所定の隙間の大きさは、前記パネルの厚さと略等しい
ことを特徴とする検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194874(P2012−194874A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59295(P2011−59295)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】