説明

検査用プレート

【課題】 特に、プレート基板と蓋体とを適切に接合することが出来るとともに、蛍光測定をより的確に行なうことが可能となった検査用プレートを提供することを目的としている。
【解決手段】 流路14の側方に、前記流路14の側面14aから所定の間隔を置いて、前記流路14の方向に沿って形成された凹形状の接着剤溜り溝17が設けられ、前記プレート基板12と蓋体13とが前記接着剤溜り溝17内に充填された接着剤18によって接合される。接着剤18は濃色で遮光性に優れる材質である。これによりプレート基板12と蓋体13とを適切に接合することが出来るとともに、蛍光測定をより的確に行なうことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液検査、尿検査、あるいはDNA検査を医療機関や個人などで行なうことが可能な簡易な検査用プレートに係わり、特に、プレート基板と蓋体とを適切に接合することが出来るとともに、蛍光測定をより的確に行なうことが可能となった検査用プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液や尿など、人体からの採取物に対する検査用のチップの開発が盛んになっている。例えば、DNAチップは、ガラスなどの基板上に多種類のDNA断片(プローブあるいは試薬と称する)を貼り付けた物で、人から採取した遺伝子(検体,あるいはターゲットと称する)の働き具合(発現)等を一度に測定することが出来る。
【0003】
従来、試験管とスポイト、あるいは攪拌機等で行なわれていた生化学反応を前記チップ上で行なうことで、高速度で検査することができ、また検査工程の簡略化を測ることが可能であると考えられ、注目を浴びている。
【0004】
ところで検査チップは、現在、研究用チップとして大学や研究機関向けに開発されているのが主流であるが、将来的には、医療機関や個人向けへの簡易な検査チップが商品化されることが期待される。
【0005】
前記検査チップは、例えば溝形状で形成された流路等を有するプレート基板と前記プレート基板上に重ねられて前記プレート基板に接合される蓋体とで構成される。
【0006】
検査方法は、前記流路内にプローブ(試薬)を入れた後、前記流路内に人体から採取した遺伝子(検体)を流す。そして前記プローブと検体とが生化学反応したか否かを測定し、生化学反応の有無により癌などの診断を行なう。前記生化学反応の測定は、例えば前記プローブには蛍光色素が配合されており、蛍光強度を測定することで前記プローブと検体とが生化学反応したか否かを判断する。
【0007】
ところで、上記したプレート基板と蓋体とを接着剤を介して接合したとき前記接着剤が前記プレート基板に形成された流路内にはみ出ると、前記流路内での前記プローブと検体との生化学反応に悪影響を及ぼす可能性があるため、前記接着剤は前記流路内にはみ出さないように工夫することが必要になる。
【0008】
下記の特許文献1(特開2003−181257号公報)には、この文献の図3に開示されているように、樹脂基板31の表面に一段高い浮き出し段差が設けられ、この浮き出し段差の表面にY字状のカナル32が形成され、前記浮き出し段差の周囲にドレイン36が形成されている。
【0009】
このドレイン36は、前記樹脂基板31とカバー33とを貼り合わせた際に余分な接着剤が流れ込む溝である(特許文献1の[0019]欄等)。
【0010】
特許文献1では浮き出し段差と前記ドレイン36の形成によって前記接着剤のカナル32への流入を防ぐことが出来るとしている。
【特許文献1】特開2003−181257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1の構造では、Y字状のカナル32を形成するための浮き出し段差の形成が必要になる。
【0012】
しかも、ドレイン36は「余分な接着剤」が流れ込む溝であり、特許文献1では、接着剤を樹脂基板31とカバー33間のどの部位に充填するか明確な記載がない。おそらく前記接着剤をカナル32やドレイン36以外での前記樹脂基板31とカバー33とが対面接触する箇所に塗布すると考えられる。係る場合、前記接着剤の一部は前記ドレイン36内に流れ込むと思われるが、前記樹脂基板31とカバー33とを対面接合させたとき、前記浮き出し段差付近で逃げ場を失った接着剤は前記カナル32内に流入する可能性があると考えられ、特許文献1の構造では、前記カナル32への接着剤の流入を完全に防止できる形態にはなっていない。
【0013】
また仮に前記ドレイン36内にのみ接着剤を充填して前記樹脂基板31とカバー33とを接合させようとすると、前記ドレイン36は四角形状の溝で、カナル32はY字状の溝であるから前記ドレイン36とカナル32間には相当な間隔が空くことになるため、例えば熱などにより前記樹脂基板31とカバー33に歪が生じると、前記カナル32の近傍で、前記樹脂基板31とカバー33間に隙間が出来やすい。この結果、前記カナル32内を流れる検体などが前記カナル32内を越えて、前記樹脂基板31とカバー33間の前記隙間に流入するなどの不具合も発生する。よって前記ドレイン36に接着剤を充填しただけでは適切に前記樹脂基板31とカバー33間を接合させることはできない。
【0014】
また上記したように、プローブと検体との生化学反応の有無は蛍光強度の測定によって行なうため、前記樹脂基板31及びカバー33には低蛍光性の材質が求められ、さらに耐熱性や加工容易性など、その他の種々の条件も満たさなければならない。
【0015】
しかし、現在市販されている材質で上記した全ての条件を満たす材質はなかなか存在せず、材質自体ではなく、前記プレート基板の構造自体で、低蛍光性を満たすことができれば非常に好ましい。
【0016】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、特に、プレート基板と蓋体とを適切に接合することが出来るとともに、蛍光測定をより的確に行なうことが可能となった検査用プレートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明における検査用プレートは、凹形状の流路と、前記流路の上流側に位置する凹形状の上流側室と、前記流路の下流側に位置する凹形状の下流側室とを有するプレート基板と、前記プレート基板上に接合される蓋体とを有し、
前記上流側室、流路、及び下流側室に至る溝部の周囲の少なくとも一部に、前記溝部の側面から所定の間隔を置いて、前記溝部の形状に沿って形成された凹形状の接着剤溜り溝が設けられ、
前記プレート基板と蓋体とが前記接着剤溜り溝内に充填された接着剤によって接合されることを特徴とするものである。
【0018】
上記のように前記接着剤溜り溝は前記溝部の側方から所定の間隔を置いて前記溝部の形状に沿って形成されているから、前記接着剤溜り溝内に充填された接着剤が前記溝部内に流入するのを適切に防ぐことができるとともに、特に溝部付近での前記プレート基板と蓋体とを強固に接合でき、前記溝部の近傍で前記プレート基板と蓋体との間に隙間等が形成されるのを適切に抑制することが出来る。
【0019】
本発明では、前記接着剤溜り溝は、少なくとも前記流路の両側に前記流路の方向に沿って形成されることが好ましい。
【0020】
また本発明では、前記接着剤は前記プレート基板及び蓋体に比べて遮光性に優れる材質で形成されることが好ましい。これにより前記プレート基板や蓋体から発せられる光も前記接着剤で遮光することができ、プローブと検体との生化学反応の有無を判断するための蛍光測定を的確に行なうことが可能になる。
【0021】
また本発明では、前記接着剤は前記プレート基板及び蓋体よりも濃色であることが好ましい。例えば、前記接着剤には顔料が添加されていることが好ましい。これにより前記接着剤の遮光性を前記プレート基板及び蓋体に比べて優れたものに出来るとともに、前記接着剤の充填領域をプレート基板上から見ることができ、あるいは前記蓋体を介して透けて見ることができるため、前記接着剤が前記溝部内にはみ出しているか否かを確認しやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、接着剤溜り溝は溝部の側方から所定の間隔を置いて前記溝部の形状に沿って形成されているから、前記接着剤溜り溝内に充填された接着剤が前記溝部内に流入するのを適切に防ぐことができるとともに、特に溝部付近でのプレート基板と蓋体とを強固に接合でき、前記溝部の近傍で前記プレート基板と蓋体との間に隙間等が形成されるのを適切に抑制することが出来る。
【0023】
また前記接着剤溜り溝内に充填される接着剤に顔料などを添加して濃色にすることで、前記接着剤を前記プレート基板及び蓋体に比べて遮光性に優れたものにでき、これにより蛍光強度の測定を的確に行なうことが可能になるし、また前記接着剤の充填領域を容易に認識でき、前記接着剤が溝部内にはみ出しているか否かを確認しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の第1実施形態の検査用プレートの外観部分斜視図、図2は図1に示す検査用プレートをII−II線から膜厚方向へ切断し、その切断面を矢印方向から見た部分断面図、図3は図1に示す検査用プレートを構成するプレート基板の平面図、図4は本発明の第2実施形態の検査用プレートの平面図、図5は図2に示す検査用プレートの部分断面図を用い、蛍光測定を説明するための説明図、である。
【0025】
図1に示す符号10は、検査用プレートである。図1に示す検査用プレート10は、例えば人体から血液や尿などを採取し、これら採取物(検体)を、所定の試薬などと反応させて所定の検査を行なうためのものである。前記検査用プレートを例えばDNAチップとして用いる場合には、採取した前記血液に所定の処理を施して使用する。
【0026】
前記検査用プレート10は、幅方向(図示X1−X2方向)の両端から直角に長さ方向(図示Y1−Y2方向)に延びる所定の厚みを有した略直方形状であるが、前記略直方形状以外の形状であってもかまわない。
【0027】
前記検査用プレート10は、プレート基板12と蓋体13とで構成される。前記プレート基板12及び蓋体13は、ガラスや樹脂などで形成されたものである。前記プレート基板12及び蓋体13は所定の蛍光強度を有する材質で形成される。特に前記検査用プレート10をDNAチップやプロテインチップ等として用いる場合には、前記検査用プレート10はほぼ透明色の低蛍光性で、耐薬品性等に優れた材質であることが好ましく、例えば石英ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などで形成される。
【0028】
前記検査用プレート10が樹脂で形成されるときは、射出成形によって前記検査用プレート10を成形することが好ましく、場合によっては熱プレスを施して、前記検査用プレート10のプレート基板12の上面12aに形成される溝部を高アスペクト比のものとして成形する。また前記検査用プレート10がガラスで形成されるときは、熱プレスにより成形する。
【0029】
図1,図3に示すプレート基板12の上面12aには、一本の流路14が凹形状で形成されている。前記主流路14のY1側は検体等の液体が前記主流路14内を流れる上流側に位置し、Y2側は検体等の液体が前記主流路14内を流れる下流側に位置する。
【0030】
図1,図3に示すように前記流路14の上流側(図示Y1側)には前記流路14と連結する上流側室15が凹形状で形成されている。図1に示すように、前記蓋体13には、前記上流側室15と対向する位置に、前記蓋体13の上面から下面にかけて貫通した注入口13aが設けられており、前記注入口13aからプローブや検体等の物質を前記上流側室15内に入れることが可能になっている。
【0031】
図1,図3に示すように前記流路14の下流側(図示Y2側)には前記流路14と連結する下流側室16が凹形状で形成されている。図1に示すように、前記蓋体13には、前記下流側室16と対向する位置に、前記蓋体13の上面から下面にかけて貫通した排出口13bが設けられており、前記下流側室16に到達した検体やプローブ等の物質を排出口13bから排出することが可能になっている。
【0032】
図1,図3に示すように前記流路14は図示X1−X2方向に所定の幅寸法を有し図示Y1−Y2方向に向けて延びる矩形状で形成されている。一方、前記上流側室15及び下流側室16は、その平面形状が略円形状に形成され、前記上流側室15及び下流側室16の最大幅寸法は前記流路14の幅寸法よりも大きく形成されている。ただし前記流路14、上流側室15及び下流側室16の形状は図1,図3のものに限られず他の形状であってもよい。
【0033】
なお基本的に前記流路14は、単数あるいは複数の物質を上流側(図示Y1側)から下流側(図示Y2側)にかけて流したり、あるいは流している間に複数の物質どうしを混合させる機能を有し、一方、上流側室15は単数あるいは複数の物質を注入して流路14へ送り込んだり、あるいは複数の物質どうしを混合させる機能を有し、また下流側室16は、単数あるいは複数の物質を排出したり、あるいは複数の複数の物質どうしを混合させる機能を有するものであり、使用態様によって、流路14、上流側室15及び下流側室16の使われ方は異なる。
【0034】
図1に示す検査用プレート10では、流路14は、検体を流すとともに、流している間に前記検体とプローブとが反応をしたか否かを測定する測定領域であり、上流側室15は検体とプローブとを注入する領域であり、下流側室16は前記検体を排出する領域として機能する。
【0035】
図1,図2,図3に示すように、前記流路14の両側には前記流路14の側面14aから所定の間隔T2を置いて、前記流路14の方向に沿って形成された接着剤溜り溝17が凹形状で形成されている。前記接着剤溜り溝17には接着剤18が充填される。
【0036】
前記接着剤18には、尿素樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、紫外線硬化型接着剤等、既存の接着剤が使用される。
【0037】
ところで前記接着剤18は前記プレート基板12及び蓋体13に比べて遮光性に優れる材質で形成されることが好ましい。遮光性の必要性に関し以下に説明する。
【0038】
図1ないし図3に示す実施形態では、図1に示す注入口13aから前記上流側室15→流路14へ向けて多数のビーズ19が挿入される。前記ビーズ19はガラスや樹脂などで形成された球状のものであり、前記ビーズ19の表面にはDNA断片(プローブ)が付着されている。各ビーズ19には数種の蛍光色素が異なる割合で配合されており、前記蛍光色素の割合により各ビーズ19を識別することが可能になっている。
【0039】
図3に示すように前記ビーズ19は前記流路14内に多数敷き詰められる。次に図1に示す注入口13aから、人から採取した検体を前記上流側室15→流路14へ向けて流す。このとき前記検体の中に、前記ビーズ19に付着されたプローブと生化学反応を起こす遺伝子が存在すれば、前記プローブと遺伝子とが生化学反応を起こす。生化学反応を起こしたか否かは各ビーズ19に対して蛍光強度の測定を行なえば容易に判断できる。光を強く発するビーズ19は、そのビーズ19に付着されたプローブと検体とが生化学反応したことを示す。前記蛍光強度は図5に示す小型のCCDカメラ20などで測定でき、前記蛍光強度から看者がある特定の病気(例えば癌など)を発症していないか否かを診断することが出来る。
【0040】
図5のようにCCDカメラ20などで各ビーズ19の蛍光強度を測定するため、前記プレート基板12及び蓋体13は出来る限り低蛍光性の材質であることが好ましい点を既に述べた。
【0041】
しかし前記プレート基板12及び蓋体13に、低蛍光性の材質のものを使用しても、前記プレート基板12及び蓋体13が全く光を発しないわけではない。また図5に示すように、蛍光測定は、前記流路14内に敷き詰められたビーズ19に対して行なわれるので、少なくとも前記流路14の周辺を、より遮光性に優れた領域にして乱反射等により蛍光強度の測定が鈍るのを抑制することが重要である。
【0042】
そこで本発明では、前記接着剤18を前記プレート基板12及び蓋体13に比べて遮光性に優れる材質で形成することで、前記蛍光強度の測定の際に、前記プレート基板12や蓋体13からわずかに発せられる光も適切に遮光でき、前記蛍光強度の測定の安定性を向上させることが可能になる。
【0043】
ここで各寸法について説明すると、前記流路14の幅寸法T1及び高さ寸法H1は、20μm〜100μm程度で形成される。また前記流路14と接着剤溜り溝17との間隔T2は10μm〜500μm程度で形成される。また前記接着剤溜り溝17の幅寸法T3は20μm〜30mm程度で形成され、前記接着剤溜り溝17の高さ寸法H2は1μm〜200μm程度で形成される。
【0044】
前記間隔T2が上記の寸法より小さく形成されると前記接着剤溜り溝17に充填された接着剤18が間隔T2を越えて前記流路14内に侵入しやくなるので好ましくない。また前記間隔T2が上記の寸法より大きく形成されると、前記流路14近傍での接着性が低下して前記間隔T2の部分の前記プレート基板12と蓋体13との間に隙間などが生じやすく、また流路14近傍での遮光性が低下するので好ましくない。
【0045】
前記接着剤溜り溝17の幅寸法T3が上記の寸法より小さく形成されると接着力及び遮光性が低下するので好ましくない。前記接着剤溜り溝17の幅寸法T3が上記の寸法より大きくなると前記接着剤溜り溝17内に充填する接着剤18の量が多くなり作業性が低下するなどして好ましくない。また前記接着剤溜り溝17の高さ寸法H2が上記の寸法より小さくなると接着性が低下し好ましくない。また接着剤溜り溝17の高さ寸法H2が上記寸法より大きくなると前記接着剤溜り溝17内に充填する接着量が多くなり作業性が低下するなどして好ましくない。
【0046】
前記接着剤18の遮光性を向上させるには、前記接着剤18に遮光性に優れた顔料などを添加すればよい。顔料には既存の材質を使用すればよい。例えばカーボンブラックや黒鉛を顔料として用いることが出来る。
【0047】
また本発明では、前記接着剤18は前記プレート基板12及び蓋体13よりも濃色にすることが好ましい。上記したカーボンブラック等の顔料を前記接着剤18に添加すれば、前記接着剤18を黒っぽい色にでき前記接着剤18の遮光性を向上させることが出来る。なお添加する顔料の種類によって接着剤18の着色を変えることが出来る。
【0048】
また前記プレート基板12及び蓋体13は透明色か半透明色であるため、前記接着剤18を前記プレート基板12及び蓋体13よりも濃色にすれば、図3のように、前記接着剤18が充填された領域を顕微鏡等ではっきり見ることができ、前記プレート基板12上に蓋体13を接合したときに前記接着剤18が前記流路14内に侵入していないことを、前記蓋体13上から透かして確認できる。逆にいえば前記接着剤18が前記流路14内にはみ出した場合は、それを確認できるから良品か不良品かの区別を製造過程で判断できる。
【0049】
上記したように本発明では、前記プレート基板12の上面12aに設けられた凹形状の流路14の両側に所定の間隔T2を置いて前記流路14方向に沿う接着剤溜り溝17を設け、前記接着剤溜り溝17内に接着剤18を充填して前記プレート基板12と蓋体13とを接合するものであり、これにより次のような効果を奏することが出来る。
【0050】
第1に本発明では、前記接着剤溜り溝17を前記流路14から所定距離だけ離れた位置に設けているから前記接着剤溜り溝17内に充填された接着剤18が前記流路14内にはみ出すことがなく前記接着剤18が前記流路14内でのプローブと検体との生化学反応に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0051】
第2に本発明では、前記接着剤溜り溝17を前記流路14方向に沿って設けているため前記プレート基板12と蓋体13との接合力、特に前記流路14の近傍での接合力を強めることが出来る。前記接着剤溜り溝17を前記流路14の近傍に設けるとともに前記流路14の方向に沿って設けているため、前記流路14の近傍で前記接着剤溜り溝17に充填された接着剤18により前記プレート基板12と蓋体13とが強く接合され、前記プレート基板12と蓋体13とが熱等によって若干の変形を起こしても前記流路14の近傍での前記プレート基板12と蓋体13との間に前記変形による隙間等は生じにくい。このため、前記流路14内を適切に検体等が流れ、前記プローブと検体とを適切に反応させることが出来る。
【0052】
第3に本発明では、前記接着剤18をプレート基板12や蓋体13に比べて濃色のものにすることで、前記接着剤18が前記流路14内に侵入したかしていないかを的確に判断することができ、生産性の効率化を測ることが出来る。前記接着剤18を濃色にするには前記接着剤18に顔料などを添加すればよい。
【0053】
第4に本発明では、前記接着剤18に遮光性に優れた顔料を添加することで、蛍光強度の測定を適切に行なうことが可能になる。また遮光性に優れた接着剤18の充填領域を前記流路14の近傍に設置することで、蛍光性が高く実質的にプレート基板12や蓋体13として使用できないとされた材質を使用しても、前記プレート基板12や蓋体13が発する光を前記接着剤18で適切に遮光でき、蛍光強度の測定を適切に行なうことが可能になる。
【0054】
図1ないし図3に示す実施形態では、前記流路14内にプローブが付着したビーズ19を詰め、前記流路14内に前記上流側室15から検体を流し、前記流路14の下流側にまで流れた前記検体を前記下流側室16から前記排出口13bを通して外部へ排液するものであった。
【0055】
このため、蛍光強度の測定は前記流路14内に詰められた各ビーズ19に対して行なうものであったが、例えば他の形態として、前記下流側室16内に検体などを収納し、前記上流側室15から蛍光色素が付着したプローブを前記下流側室16まで流し前記下流側室16内で前記検体とプローブとが生化学反応したか否かを測定する場合がある。
【0056】
係る場合、前記下流側室16内で適切に検体とプローブとの混合を促進させるとともに前記下流側室16内にまで流れ着いたプローブに対して蛍光強度の測定を行なう必要性があるから前記接着剤溜り溝17は、前記流路14の側方とともに前記下流側室16の周囲にも(あるいは少なくとも前記下流側室16の周囲に)所定の間隔を置いて設けられ前記接着剤溜り溝17内に顔料が添加された濃色の接着剤18を充填して前記プレート基板12と蓋体13間の接合を行なうことが好ましい。
【0057】
すなわち、少なくとも接着剤溜り溝17を設ける位置は、前記プローブと検体とが混合され蛍光強度の測定を行なう領域の周囲に設けられていることが好ましい。なお前記接着剤溜り溝17を蛍光強度の測定を行なう領域の周囲のみに設けるだけでは、プレート基板12と蓋体13間を強固に接合できないとき、図4に示すように前記接着剤溜り溝17を、上流側室15,流路14及び上流側室16に至る溝部の周囲全体に、前記溝部の側面から所定の間隔を置いて、前記溝部の形状に沿って形成し、前記接着剤溜り溝17内に接着剤18を充填して前記プレート基板12と蓋体13とを接合すれば、より強く前記プレート基板12と蓋体13間を接合することができて好ましい。または、蛍光強度の測定を行なう領域の周囲のみに、溝部の形状に沿う接着剤溜り溝17を形成し、それ以外の領域には前記接着剤溜り溝17とは別形態の接着剤溜りなどを設け、前記プレート基板12と蓋体13間の接合力を強めても良い。
【0058】
なお本発明の検査用プレート10は、血液検査や尿検査、あるいは、DNAチップやプロテインチップの簡便な診断用として使用でき、また反応、分離、分析等を一つのプレート上で行なうことが出来るμ−TAS(micro-total analysis system)や、Lab−on−chip、あるいはマイクロファクトリー用のプレートの一部として用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態の検査用プレートの外観部分斜視図、
【図2】図1に示す検査用プレートをII−II線から膜厚方向へ切断し、その切断面を矢印方向から見た部分断面図、
【図3】図1に示す検査用プレートを構成するプレート基板の平面図、
【図4】本発明の第2実施形態の検査用プレートの平面図、
【図5】図2に示す検査用プレートの部分断面図を用い、蛍光測定を説明するための説明図、
【符号の説明】
【0060】
10 検査用プレート
12 プレート基板
13 蓋体
13a 注入口
13b 排出口
14 流路
15 上流側室
16 下流側室
17 接着剤溜り溝
18 接着剤
19 ビーズ
20 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹形状の流路と、前記流路の上流側に位置する凹形状の上流側室と、前記流路の下流側に位置する凹形状の下流側室とを有するプレート基板と、前記プレート基板上に接合される蓋体とを有し、
前記上流側室、流路、及び下流側室に至る溝部の周囲の少なくとも一部に、前記溝部の側面から所定の間隔を置いて、前記溝部の形状に沿って形成された凹形状の接着剤溜り溝が設けられ、
前記プレート基板と蓋体とが前記接着剤溜り溝内に充填された接着剤によって接合されることを特徴とする検査用プレート。
【請求項2】
前記接着剤溜り溝は、少なくとも前記流路の両側に前記流路の方向に沿って形成される請求項1記載の検査用プレート。
【請求項3】
前記接着剤は前記プレート基板及び蓋体に比べて遮光性に優れる材質で形成される請求項1または2に記載の検査用プレート。
【請求項4】
前記接着剤は前記プレート基板及び蓋体よりも濃色である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の検査用プレート。
【請求項5】
前記接着剤には顔料が添加されている請求項4記載の検査用プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−53094(P2006−53094A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236074(P2004−236074)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】