説明

検査用具

【課題】 検査用培地を簡単にかつ短時間で調製することができる検査用具を提供する。
【解決手段】 包装体10のチューブ状容器12の内部に、第1内容物20を収容するとともに、第1内容物と混合されることにより検査用培地が調製される第2内容物が封入され包装体10に対し外部から加えられる変形力によって破裂する内部包装体16を収容して、包装体10を密封した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、細菌等の微生物を分離し検索する微生物検査において、微生物を分離培養するために使用される培地を調製したり、食品工場における機械類やレストラン等における調理器具、調理台、食器類などを洗浄した後に、微生物汚染の要因となる蛋白質やデンプンなどの栄養成分が残留していないかどうかを検査したりする場合などに使用される検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、嫌気性細菌を培養する場合には、密閉可能な容器または袋内に、嫌気性細菌を接種した培地と脱酸素剤を入れ、ピペットなどを用いて一定量の精製水を脱酸素剤に分注し、脱酸素剤と精製水との反応が開始すると容器(袋)を密封して、密封容器(密封袋)内で嫌気性細菌の培養を行う(例えば、特許文献1参照。)。また、サルモネラ属細菌を選択的に培養する場合には、ハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地に一定量のヨウ素溶液(ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液)を添加し、基礎培地中の成分であるチオ硫酸塩とヨウ素およびヨウ化カリウムとの反応によりテトラチオン酸カリウムを生成させて、このテトラチオン酸カリウムを含むハーナ・テトラチオン酸塩培地でサルモネラ属細菌を増殖させる。
(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
また、細菌検査を行う場合において、目的とする細菌が検体中に少量しか存在しないときや、目的菌が損傷を受けているときには、最初から選択培地を用いると、培地中の選択剤により目的菌自体も少なからずダメージを受けて、目的菌の増殖を図ることができず、培養結果が陰性となることがある。そこで、先ず、非選択性の培地を用いて培養を行うことにより、目的菌および雑菌を増殖させてから、その一部を選択培地に接種して目的菌を増殖させる、といったことが行われる。また、別の方法として、先ず、非選択培地に検体を接種して、少量の目的菌の増殖または損傷菌の回復を図ってから、例えば6時間程度の後に選択剤を培地に添加して、目的菌以外の雑菌の増殖を抑制する、といったことが行われる。
【0004】
また、細菌培養中における培地のpHの変化や酸化還元電位の変化を調べる場合には、フェノールレッドやメチルレッドなどの色素を予め培地に添加しておく。そして、培地の色の変化を観察することにより、培地のpHや酸化還元電位の変化を感知するようにしている。
【特許文献1】特公平4−61635号公報(第2−3頁)
【特許文献2】特開2002−243743号公報(第7−8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、微生物の培養操作を行う際に、ピペットなどを用いて一定量の精製水を培地と脱酸素剤に分注したり、基礎培地に一定量のヨウ素溶液を添加したりするなどして、検査用培地を調製する方法では、その調製操作に手間と時間がかかる。また、非選択培地を用いて目的菌および雑菌の培養を行った後に、その一部を選択培地に接種したり選択剤を培地に添加したりする方法は、培養の途中で細菌を移植したり選択剤を添加したりする操作が面倒であり、その操作に時間もかかる。さらに、色素は菌の発育を抑制することが知られているが、予め培地に色素を添加する方法では、細菌の増殖速度が遅くなり、また、細菌の発育が阻害されるため、検査に時間を要し、また、確実な検査を行えない、といった問題点がある。
【0006】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、検査用培地を簡単にかつ短時間で調製することができる検査用具、微生物の培養の途中で培地を変えたり培地に薬剤を添加する操作を行ったりする必要が無く、操作が簡単で時間もかからない検査用具、および、速やかにかつ確実に微生物に関係した検査を行うことができる検査用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、微生物検査のための培地を調製する検査用具において、少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有する包装体の内部に、液状または粉末状の第1内容物を収容するとともに、前記第1内容物と混合されることにより検査用培地が調製される液状、粉末状またはガス状の第2内容物が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記第1内容物が培地および脱酸素剤であり、前記第2内容物が精製水であって、嫌気培養のための検査用培地を調製することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記第1内容物がハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地であり、前記第2内容物がヨウ素溶液であって、サルモネラ属細菌の選択増菌培地である検査用培地を調製することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記第1内容物が滅菌精製水であり、前記第2内容物が粉末培地であって、液体培地である検査用培地を調製することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記第2内容物が、液体培地の成分の一部を粉末化したものであり、前記第1内容物が、液体培地の他の成分を含む溶液であって、液体培地である検査用培地を調製することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記第2内容物が濃縮培地であり、前記第1内容物が希釈液であって、液体培地である検査用培地を調製することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の検査用具において、前記包装体が、柔軟性樹脂材料で形成され開口部が設けられたチューブ状容器、および、このチューブ状容器の開口部に嵌脱自在に嵌着されるキャップから構成され、前記キャップの内側に拭き取り検査用の綿棒が取着されて、その綿棒の綿球が前記希釈液中に浸漬されたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の検査用具において、前記包装体の内部に、消毒剤が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する内部包装体がさらに収容されたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、微生物検査のための培地を収容する検査用具において、少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有する包装体の内部に培地を収容するとともに、添加剤が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の検査用具において、前記培地が、目的菌および雑菌を増殖させる非選択培地であり、前記添加剤が、目的菌以外の雑菌の増殖を抑制する選択剤であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項9に記載の検査用具において、前記添加剤が検査用色素であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る発明は、微生物汚染の要因となる汚染要因物質の有無を検査する検査用具において、少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有し開口部が設けられた容器、および、この容器の開口部に嵌脱可能に嵌着されるキャップから構成され、前記キャップの内側に拭き取り検査用の綿棒が取着されてその綿棒が前記容器内に挿入された包装体の内部に、微生物汚染の要因となる汚染要因物質と反応する試薬が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする。
【0019】
請求項13に係る発明は、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の検査用具において、前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明の検査用具においては、包装体の外面を指で押して包装体に対し変形力を加えることにより、包装体の内部に収容された内部包装体が破裂して、内部包装体内から第2内容物が流出し、包装体内に収容された第1内容物と第2内容物とが混合されて検査用培地が調製される。
したがって、請求項1に係る発明の検査用具を使用すると、検査用培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0021】
請求項2に係る発明の検査用具では、内部包装体内から流出した精製水と包装体内に収容された脱酸素剤とを反応させることにより、嫌気培養のための検査用培地を調製することができる。
【0022】
請求項3に係る発明の検査用具では、内部包装体内から流出したヨウ素溶液のヨウ素およびヨウ化カリウムと包装体内に収容されたハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地のチオ硫酸塩とを反応させることにより、サルモネラ属細菌の選択増菌培地を調製することができる。
【0023】
請求項4に係る発明の検査用具では、内部包装体内から流出した粉末培地を、包装体内に収容された滅菌精製水に溶解させることにより、液体培地を調製することができる。
【0024】
請求項5に係る発明の検査用具では、内部包装体内から流出した液体培地の成分の一部を、包装体内に収容された液体培地の他の成分を含む溶液と混合させることにより、所要成分を含んだ液体培地を調製することができる。
【0025】
請求項6に係る発明の検査用具では、内部包装体内から流出した濃縮培地を、包装体内に収容された希釈液で希釈することにより、所定濃度の液体培地を調製することができる。
【0026】
請求項7に係る発明の検査用具では、キャップの内側に取着された綿棒が、チューブ状容器内に収容された希釈液中に浸漬された状態で保管され、拭き取り検査を行うときは、チューブ状容器の開口部からキャップを取り外す。この際、キャップに取着された綿棒の綿球は希釈液で湿潤した状態であり、この湿潤状態の綿球で被検査部位の表面を拭き取って試料を採取する。試料採取後、チューブ状容器の開口部にキャップを嵌着してチューブ状容器を密封し、内部包装体を破裂させることにより所定濃度の液体培地を完成させて、この液体培地で微生物を培養し、微生物の検索等を行う。
したがって、請求項7に係る発明の検査用具を使用すると、拭き取り検査における試料採取から微生物の培養までの一連の操作を効率良く短時間で行うことができるとともに、培地作成の手間を省くことができる。
【0027】
請求項8に係る発明の検査用具では、液体培地で微生物を培養して検査が終了した後に、チューブ状容器の外面を指で押してチューブ状容器に対し変形力を加え、チューブ状容器の内部に収容されたもう一つの内部包装体を破裂させて、その内部包装体内から消毒剤を流出させ、微生物が繁殖した培地に消毒剤を混合させることにより、培地を消毒することができる。
したがって、請求項8に係る発明の検査用具を使用すると、拭き取り検査後に培地を安全に廃棄することができる。
【0028】
請求項9に係る発明の検査用具においては、包装体の外面を指で押して包装体に対し変形力を加えることにより、包装体の内部に収容された内部包装体が破裂して、内部包装体内から添加剤が流出し、包装体内に収容された培地に添加剤が添加される。
したがって、請求項9に係る発明の検査用具を使用すると、培地に添加剤を添加する操作を簡単にかつ短時間で行うことができる。
【0029】
請求項10に係る発明の検査用具では、包装体内に収容された非選択培地で目的菌および雑菌を或る程度増殖させた後に、内部包装体内から流出した選択剤を非選択培地に添加することにより、目的菌以外の雑菌の増殖を抑制することができる。
【0030】
請求項11に係る発明の検査用具では、包装体内に収容された培地で微生物を通常通りに増殖させた後に、内部包装体内から流出した検査用色素を培地に添加することにより、培地の色の変化を観察して、例えば培地のpHや酸化還元電位などの変化を感知することができる。
したがって、請求項11に係る発明の検査用具を使用すると、速やかにかつ確実に微生物検査を行うことができる。
【0031】
請求項12に係る発明の検査用具においては、拭き取り検査を行うときに、容器の開口部からキャップを取り外し、キャップに取着された綿棒の綿球で被検査部位の表面を拭き取って試料を採取する。試料採取後、容器の開口部にキャップを嵌着してから、容器の外面を指で押して容器に対し変形力を加えることにより、容器の内部に収容された内部包装体が破裂して、内部包装体内から試薬が流出し、その試薬が綿棒の綿球に付着した汚染要因物質と反応することにより、汚染要因物質の有無を検査することができる。そして、この検査用具の使用前において、綿棒は密封された包装体の容器内に挿入されており、また、綿棒と共に容器内に収容された試薬は内部包装体内に封入された状態であるので、綿棒は清浄な状態に保持される。
したがって、請求項12に係る発明の検査用具を使用すると、微生物汚染の要因となる汚染要因物質の検査を速やかにかつ確実に行うことができる。
【0032】
請求項13に係る発明の検査用具では、包装体に対し変形力が加えられることにより、内部包装体は、弱く接着された周縁部が容易に剥離して破裂する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す斜視図である。
【0034】
この検査用具は、チューブ状容器12とキャップ14とからなる包装体10の内部に内部包装体16を収容して構成されている。チューブ状容器12は、指先で摘むことにより容易に変形する柔軟性樹脂材料で形成されており、上部に開口部が設けられている。このチューブ状容器12の開口部にキャップ14が嵌脱自在に嵌着され、包装体10を密封することができるようになっている。内部包装体16は、包装体10を指先で摘んで変形させ包装体10の外部から力を加えることにより破裂するように形成されている。例えば、内部包装体16は、フィルム材料で密閉袋状に形成されて、その周縁部18の一部が熱接着等により弱く接着された構成を有している。そして、包装体10に対し変形力が加えられることにより、弱く接着された周縁部18が容易に剥離して、内部包装体16が破裂するようになっている。
【0035】
包装体10のチューブ状容器12内には、液状または粉末状の第1内容物20が収容されている。また、内部包装体16内には、第1内容物20と混合されることにより検査用培地が調製される液状、粉末状またはガス状の第2内容物が封入されている。具体的には、例えば、包装体10のチューブ状容器12内に培地および脱酸素剤が収容されており、内部包装体16内に一定量の精製水が封入されている。このような検査用具は、微生物の嫌気培養を行うときに以下のようにして使用される。
【0036】
包装体10のチューブ状容器12の開口部からキャップ14を取り外し、チューブ状容器12内の培地に嫌気性細菌を接種した後、チューブ状容器12の開口部にキャップ14を嵌着して包装体10を密封する。続いて、包装体10のチューブ状容器12を指で押して変形させ、内部包装体16に対して力を加えることにより内部包装体16を破裂させて、内部包装体16内から精製水を流出させる。これにより、内部包装体16内から流出した精製水とチューブ状容器12内の脱酸素剤とが反応して、密封された包装体10内から酸素が除去され、包装体10の内部が嫌気雰囲気となり、包装体10内の培地で嫌気培養が行われる。このように、この検査用具を使用すると、嫌気雰囲気の検査用培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0037】
また、サルモネラ属細菌の選択増菌培地であるハーナ・テトラチオン酸塩培地は、培養検査の前に、ハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地に一定量のヨウ素溶液(ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液)を添加し、基礎培地中の成分であるチオ硫酸塩とヨウ素およびヨウ化カリウムとを反応させてテトラチオン酸カリウムを生成させるようにするが、テトラチオン酸カリウムは水溶液中で不安定である。このため、テトラチオン酸カリウムを生成させた日に検査を行う必要があるが、図1に示した構成の検査用具を利用すれば、培養検査の直前にハーナ・テトラチオン酸塩培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。すなわち、包装体10のチューブ状容器12内にハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地を入れ、内部包装体16内に一定量のヨウ素溶液を封入しておく。そして、検査前に、上記したように包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させ、内部包装体16内からヨウ素溶液を流出させる。これにより、内部包装体16内から流出したヨウ素溶液のヨウ素およびヨウ化カリウムとチューブ状容器12内の基礎培地中のチオ硫酸塩とが反応して、テトラチオン酸カリウムが生成し、テトラチオン酸カリウムを含むハーナ・テトラチオン酸塩培地が完成される。
【0038】
培地は、通常、液体培地に比べて粉末培地の方が有効期限が長くなる。そこで、図1に示した構成の検査用具において、包装体10のチューブ状容器12内に滅菌精製水を入れ、内部包装体16内に一定量の粉末培地と空気を封入しておく。このようにすると、包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させ、内部包装体16内の粉末培地を滅菌精製水に溶解させて、使用直前に液体培地を完成させることにより、培地の有効期限を長く設定することができる。なお、包装体10のチューブ状容器12内に粉末培地を入れ、内部包装体16内に滅菌精製水を封入しておくようにしてもよい。また、液体培地の成分のうち溶液状態では有効期限が短い成分、例えば抗生物質、光により分解する色素などの粉末化したものを内部包装体16内に封入しておき、包装体10のチューブ状容器12内に液体培地の他の成分を含む溶液を入れておくようにしてもよい。
【0039】
また、内部包装体16内に濃縮培地を封入しておき、包装体10のチューブ状容器12内に希釈液を入れておくようにすると、包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させたときに、内部包装体16内から流出した濃縮培地が希釈液で希釈されて、所定濃度の液体培地が得られることとなる。この場合において、図2に示すように、包装体22のキャップ24の内側に綿棒26が取着された構成としておくと、この検査用具を、次のような拭き取り検査に用いることができる。
【0040】
例えば、包装体22のチューブ状容器12内に、食品衛生試験で言うところの希釈液を10ml入れておき、その希釈液中に綿棒26の綿球28が浸漬された状態とし、内部包装体16内に10倍濃度のLMX培地(大腸菌が存在すると青色を呈し、大腸菌が発育したときに、波長344nmの紫外線を照射すると青色に発光する)を1ml封入しておくようにする。そして、拭き取り検査を行うときに、チューブ状容器12の開口部からキャップ24を取り外し、希釈液で湿潤した状態である綿棒26の綿球28で被検査部位の表面を拭き取って試料を採取する。試料採取後、試料が付着した綿棒26の綿球28をチューブ状容器12内に挿入しチューブ状容器12の開口部にキャップ24を嵌着して、包装体22を密封する。この後、包装体22のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させ、10倍濃度のLMX培地を希釈液で10倍に薄めて、所望濃度のLMX培地を完成させる。そして、その状態のままで、包装体22内においてLMX培地で細菌を培養する。このようにすることにより、拭き取り検査における試料採取から細菌の培養までの一連の操作を効率良く短時間で行うことができるとともに、培地作成の手間を省くことができる。
【0041】
さらに、上記した包装体22のチューブ状容器12の内部に、アルコール等の消毒剤が封入され内部包装体16と同様に外力によって破裂する別の内部包装体を収容しておくようにしてもよい。このような構成としておくことにより、液体培地で細菌を培養して検査が終了した後に、チューブ状容器12の外面を指で押してもう一つの内部包装体を破裂させ、その内部包装体内から消毒剤を流出させて、大腸菌等が繁殖した培地に消毒剤を混合させる。これにより、培地を消毒することができるので、拭き取り検査後に培地が収容された検査用具を安全に廃棄することが可能となる。
【0042】
上記した実施形態では、使用前に検査用培地を完成させることができる検査用具について説明したが、図1に示した検査用具と同様の構成により、第1および第2の各内容物を変更することで、以下のような用途に用いることができる検査用具を提供することができる。
【0043】
包装体10のチューブ状容器12内に、目的菌および雑菌を増殖させる非選択培地を入れ、内部包装体16内に、目的菌以外の雑菌の増殖を抑制する選択剤を封入しておくようにする。そして、目的とする細菌が検体中に少量しか存在しないときや、目的菌が損傷を受けているようなときに、先ず、包装体10のチューブ状容器12内において、非選択培地で細菌の培養を行うことにより、目的菌および雑菌を増殖させる。このようにして少量の目的菌の増殖や損傷菌の回復を図ってから、例えば6時間程度の後に、上記したように包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させ、内部包装体16内から選択剤を流出させる。これにより、包装体10内の非選択培地に選択剤が添加されて、以後の培養では、目的菌以外の雑菌の増殖が抑制されつつ目的菌が増殖する。したがって、非選択培地を用いて培養を行った後に、その一部を選択培地に接種したり非選択培地に選択剤を添加したりしなくても、それと同じ目的を、包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させるだけの簡単な操作で達成することができる。
【0044】
また、包装体10のチューブ状容器12内に培地を入れ、内部包装体16内にフェノールレッドやメチルレッド等の検査用色素を封入しておくようにする。そして、包装体10のチューブ状容器12内において、微生物を通常通りに培地で増殖させた後に、包装体10のチューブ状容器12を指で押して内部包装体16を破裂させ、内部包装体16内から検査用色素を流出させて、検査用色素を培地に添加する。これにより、微生物の発育を抑制する色素が含まれていない培地で微生物を早く確実に増殖させ、その後に、色素が添加された培地の色の変化を観察して、例えば培地のpHや酸化還元電位などの変化を感知することができる。
【0045】
次に、図3は、上記した検査用具とは異なる構成の検査用具を示す一部破断斜視図である。この検査用具は、微生物汚染の要因となる蛋白質やデンプンなどの汚染要因物質の有無を検査するものであるが、チューブ状容器32とキャップ34とからなる包装体30の内部に内部包装体36を収容し、キャップ34の内側に綿棒38が取着され、内部包装体36が、包装体30に対して加えられる変形力によって破裂する構造である、といった構成は、図2に示した検査用具と同様である。この検査用具が上記した検査用具と相違するのは、包装体30のチューブ状容器32内に内容物が収容されていないことである。内部包装体36内には、微生物汚染の要因となるタンパク質やデンプンなどの汚染要因物質と反応する試薬が封入されている。
【0046】
図3に示した検査用具を用いて拭き取り検査を行うときは、包装体30のチューブ状容器32の開口部からキャップ34を取り外し、キャップ34に取着された綿棒38の綿球40で被検査部位の表面を拭き取って試料を採取する。試料採取後、試料が付着した綿棒38の綿球40をチューブ状容器32内に挿入しチューブ状容器32の開口部にキャップ24を嵌着してから、包装体30のチューブ状容器32を指で押して内部包装体36を破裂させ、内部包装体36内から試薬を流出させる。内部包装体36内から流出した試薬は、綿棒38の綿球40に塗布されて、綿球40に付着した汚染要因物質と反応する。これにより、汚染要因物質の有無を検査することができる。このように、この検査用具を使用すると、食品工場における機械類やレストラン等における調理器具、調理台、食器類などを洗浄した後に、微生物汚染の要因となる蛋白質やデンプンなどの栄養成分が残留していないかどうかを速やかに検査することができる。そして、検査用具の使用前においては、綿棒26は密封された包装体30内に収容されており、また、綿棒26と共にチューブ状容器32内に収容された試薬は内部包装体36内に封入された状態である。このため、綿棒38の綿球40は、試薬で汚されたりすることなく清浄な状態に保持されるので、確実な検査を行うことができる。
【0047】
上記した実施形態では、包装体10、22、30のチューブ状容器12、32を柔軟性樹脂材料で形成するようにしたが、チューブ状容器の材質は特に問わない。また、チューブ状容器の全体が柔軟性を有していなくても、一部が柔軟性もしくは可撓性を有しておればよい。さらに、上記実施形態では、包装体10、22、30をチューブ状容器12、32とキャップ14、24、34とで構成したが、容器に代えて密封可能な袋を用いるようにしてもよい。また、包装体10、22、30内に収容する内部包装体16、36の数は1つに限らず2以上であってもよい。さらに、内部包装体は、上記した実施形態のようにフィルム材料で形成され周縁部の一部が弱く接着された袋形態のものに限らず、包装体に対して加えられる外力によって破裂する密閉容器などであってもよい。また、包装体10、22、30と内部包装体16、36とに入れる内容物を上記実施形態のものと相互に入れ替えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す斜視図である。
【図2】この発明の別の実施形態を示す検査用具の斜視図である。
【図3】図1および図2とは異なる構成の検査用具を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10、22、30 包装体
12、32 チューブ状容器
14、24、34 キャップ
16、36 内部包装体
20 第1内容物
26、38 綿棒
28、40 綿棒の綿球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有する包装体の内部に、液状または粉末状の第1内容物を収容するとともに、前記第1内容物と混合されることにより検査用培地が調製される液状、粉末状またはガス状の第2内容物が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする検査用具。
【請求項2】
前記第1内容物が培地および脱酸素剤であり、前記第2内容物が精製水であって、嫌気培養のための検査用培地を調製する請求項1に記載の検査用具。
【請求項3】
前記第1内容物がハーナ・テトラチオン酸塩基礎培地であり、前記第2内容物がヨウ素溶液であって、サルモネラ属細菌の選択増菌培地である検査用培地を調製する請求項1に記載の検査用具。
【請求項4】
前記第1内容物が滅菌精製水であり、前記第2内容物が粉末培地であって、液体培地である検査用培地を調製する請求項1に記載の検査用具。
【請求項5】
前記第2内容物が、液体培地の成分の一部を粉末化したものであり、前記第1内容物が、液体培地の他の成分を含む溶液であって、液体培地である検査用培地を調製する請求項1に記載の検査用具。
【請求項6】
前記第2内容物が濃縮培地であり、前記第1内容物が希釈液であって、液体培地である検査用培地を調製する請求項1に記載の検査用具。
【請求項7】
前記包装体が、柔軟性樹脂材料で形成され開口部が設けられたチューブ状容器、および、このチューブ状容器の開口部に嵌脱自在に嵌着されるキャップから構成され、前記キャップの内側に拭き取り検査用の綿棒が取着されて、その綿棒の綿球が前記希釈液中に浸漬された請求項6に記載の検査用具。
【請求項8】
前記包装体の内部に、消毒剤が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する内部包装体がさらに収容された請求項7に記載の検査用具。
【請求項9】
少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有する包装体の内部に培地を収容するとともに、添加剤が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする検査用具。
【請求項10】
前記培地が、目的菌および雑菌を増殖させる非選択培地であり、前記添加剤が、目的菌以外の雑菌の増殖を抑制する選択剤である請求項9に記載の検査用具。
【請求項11】
前記添加剤が検査用色素である請求項9に記載の検査用具。
【請求項12】
少なくとも一部が柔軟性もしくは可撓性を有し開口部が設けられた容器、および、この容器の開口部に嵌脱可能に嵌着されるキャップから構成され、前記キャップの内側に拭き取り検査用の綿棒が取着されてその綿棒が前記容器内に挿入された包装体の内部に、微生物汚染の要因となる汚染要因物質と反応する試薬が封入され前記包装体に対し外部から加えられる変形力によって破裂する1つもしくは2以上の内部包装体を収容して、前記包装体を密封したことを特徴とする検査用具。
【請求項13】
前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものである請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の検査用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−223168(P2006−223168A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39955(P2005−39955)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591237641)株式会社日研生物医学研究所 (10)
【Fターム(参考)】