説明

検査装置

【課題】光学式検査装置では、光学系のずれ等は、検査結果に影響を与えるため、調整を行うことが必要となる。また、欠陥の位置座標のずれはレビューに影響を与えるため位置座標を補正することが必要となる。この光学系の調整、及び補正値の算出は、従来作業者が行っており、長時間を必要としていた。また、レビュー装置での座標精度までを考慮すると、なお一層調整、補正値の算出に時間がかかる。
【解決手段】レビュー装置による基準試料のレビュー結果、及び光学式検査装置による前記基準試料の検査結果を用いて、検出した欠陥の位置を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の欠陥を検出する検査装置に関する。そのほかには、検査装置、及び検査装置の結果を使用してレビューを行うレビュー装置を備えた検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、歩留まりを管理することが重要である。この歩留まりは、基板上の傷,異物等の欠陥に左右される。よって、欠陥の存在,位置を正しく得るような検査を行うことが重要である。
【0003】
この検査には、光学式検査装置、及びレビュー装置を備えた検査システムが用いられる。一般的には、光学式検査装置で欠陥の存在、及び位置を特定した後、レビュー装置でその欠陥の性状,位置を得る。そして、欠陥の評価を行うことで、歩留まりの管理を行っている。
【0004】
なお、先行技術としては、以下の特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−175551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の検査システムでの検査に当たっては、様々な調整,検査結果の補正が必要となる。
【0007】
例えば、光学式検査装置では、光学系のずれ等は、検査結果に影響を与えるため、調整を行うことが必要となる。また、欠陥の位置座標のずれはレビューに影響を与えるため位置座標を補正することが必要となる。
【0008】
この光学系の調整、及び補正値の算出は、従来作業者が行っており、長い時間を必要としていた。また、レビュー装置は光学式検査装置よりも座標精度が高く、レビュー装置での座標精度までを考慮すると、なお一層調整,補正値の算出に時間がかかることも考えられる。
【0009】
ここで、光学式検査装置において、この補正値の算出の自動化については従来技術では配慮がなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レビュー装置による基準試料のレビュー結果、及び光学式検査装置による前記基準試料の検査結果を用いて、検出した欠陥の位置を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の効果を奏する。なお、以下の効果は独立して奏される場合もあれば、同時に奏される場合もある。
(1)補正値を自動的に算出することが可能となる。
(2)真の欠陥位置とのずれが少ない位置座標を得ることができる。
(3)光学式検査装置,レビュー装置間の座標リンクが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例の検査システムの構成を示す図。
【図2】格子点付きウエハ200を説明する図。
【図3】第1のフローチャートを説明する図。
【図4】第2のフローチャートを説明する図。
【図5】図3の306を説明する図。
【図6】半径ずれを説明する図。
【図7】Lを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0014】
〔実施例〕
図1は本実施例の検査システムの構成を示す図である。
【0015】
検査システム100は、レビュー装置101、及び、光学式検査装置102とを有する。
【0016】
レビュー装置101は、基板を搭載する搭載系と、基板に電子線を照射してラスター走査を行う電子光学系と、基板から発生した2次電子等を検出する2次電子検出系と、2次電子検出系の検出結果から2次電子像,欠陥の性状、及び位置を得る処理系を有する。
【0017】
光学式検査装置102は、基板を搭載し移動する搬送系と、基板に光を照明する照明光学系と、基板からの光(反射光,散乱光等)を検出する検出光学系と、検出光学系の検出結果と閾値とを比較することで欠陥の存在、及び位置とを得る処理系を有する。この際、光学式検査装置102で得られた座標系は(R,θ)極座標系(OPR,OPθ)によって得られる。
【0018】
まず、検査の前に行われる動作について図2、及び図3の第1のフローチャートを用いて説明する。
【0019】
FIB装置103は、収束したイオンビームを基板に照射し、基板を加工するものである。
【0020】
FIB装置103によって、図2に示す格子点付きウエハ200が作製される。格子点付きウエハ200には、FIB装置103によって凹形の格子点201がX方向、及びY方向に規則的に形成されている。この格子点付きウエハ200は例えば、基準となるマークが一定の間隔で形成された基準試料と表現することができる。
【0021】
このような格子点付きウエハ200をレビュー装置101によってレビューし、電子光学系による格子点の位置を特定し、レビュー結果を記憶する(図3の301)。
【0022】
この記憶されたレビュー結果は、光学式検査装置102に送られる(図3の302)。
【0023】
なお、ここで、格子点はFIB装置103によって形成された凹型でなくても良い。例えば、凸型の構造、より具体的には既知の粒径の粒子(いわゆるPSL粒子)をX方向、及びY方向に並べても良い。この場合は、検出する信号の強度をより強く得ることができる。
【0024】
光学式検査装置102では、レビュー装置101でレビューした格子点付きウエハ200と同様の格子点付きウエハを検査する(図3の303)。
【0025】
そして、その検査結果(検出した欠陥の位置)を(R,θ)極座標系(OPRstandard,OPθstandard)で装置内の記憶部に記憶する(図3の304)。
【0026】
次に、光学式検査装置102は、装置内の処理部で、検出した格子点の位置を(R,θ)極座標系(OPRstandard,OPθstandard)からX方向とY方向とで表現される直交座標系(OPxstandard,OPystandard)に変換する(図3の305)。
【0027】
そして、図5に示すように、装置内の処理部で、レビュー装置101で検出した格子点501の座標(EBxstandard,EBystandard)(電子光学系の座標)にもっとも近い光学式検査装置で検出した格子点502(これは任意にディスプレイ等で選択することもできる)を検索し、その座標(OPxstandard,OPystandard)(光学系の座標)を装置内の記憶部から読み出す(図3の306)。
【0028】
次に、この(EBxstandard,EBystandard),(OPxstandard,OPystandard)の差(ΔXphase1,ΔYphase1)、すなわち直交座標系の誤差を算出する(図3の307)。
【0029】
同様に、他の格子点についても(ΔXphase1,ΔYphase1)を計算する。すなわち、レビュー装置101の電子工学系の座標系と光学式検査装置102の光学系の座標系との直交座標系における第1の誤差の分布(ΔXphase1n,ΔYphase1n)(nは格子点の数)を算出する(図3の308)。
【0030】
さらに、レビュー装置101で検出した格子点301の座標(EBxstandard,EBystandard)を(R,θ)極座標系(EBRstandard,EBθstandard)に変換する(図3の309)。
【0031】
そして、変換した(R,θ)極座標系(EBRstandard,EBθstandard)での座標と光学式検査装置102で検出した格子点の(R,θ)極座標系(OPRstandard,OPθstandard)での座標との差(ΔRphase1,Δθphase1)を算出する(図3の310)。
【0032】
同様に、他の格子点についても(ΔRphase1,Δθphase1)を計算する。すなわち、レビュー装置101の電子工学系の座標系と光学式検査装置102の光学系の座標系との極座標系における第1の誤差の分布(ΔRphase1n,Δθphase1n)(nは格子点の数)を算出する(図3の311)。
【0033】
これによって、直交座標系における第1の誤差の分布(ΔXphase1n,ΔYphase1n)、及び極座標系における第1の誤差の分布(ΔRphase1n,Δθphase1n)を得る(図3の312)。
【0034】
以降は、実際の検査での補正について図4の第2のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
まず、光学式検査装置の極座標系の補正について説明する。
【0036】
実際の検査ウエハで検出した欠陥の極座標を(OPR,OPθ)で得る(図4の401)。
【0037】
まずOPθを補正する方法を説明する。
【0038】
OPθには光学式検査装置102の照明光学系からの光のずれ(具体的には、この光の理想的な位置から現実の位置までのずれのY座標成分ΔE)、及び角度ずれΔθが含まれる。
【0039】
ΔEは例えば以下のような近似式で得ることができる(図4の402)。
ΔE=(a×b(Ave(Δθphase1b)−Ave(Δθphase1a)π/180)/(a−b))
a:ウエハ中心からの第1の距離
b:ウエハ中心からの第2の距離(b<a)
Ave(Δθphase1a):第1の距離の範囲内におけるΔθの平均値
Ave(Δθphase1b):第2の距離の範囲内におけるΔθの平均値
【0040】
つぎにOPθにΔEを反映する(図4の403)。
【0041】
反映後の値はOPθ1とする。OPθ1は以下のように表現される。
OPθ1=OPθ×ΔE/2πR/極座標系のデータ取得数
【0042】
OPθ1を得ることによって、光学式検査装置102の照明光学系からの光のずれを反映した補正値を得ることができる(図4の404)。
【0043】
ここで、(ΔXphase1n,ΔYphase1n),(ΔRphase1n,Δθphase1n)にはΔ前述したΔEが反映される。そして、(ΔXphase1n,ΔYphase1n),(ΔRphase1n,Δθphase1n)は第2の誤差の分布である(ΔXphase2n,ΔYphase2n),(ΔRphase2n,Δθphase2n)に更新される(図4の405)。
【0044】
そして、次に、OPθ1に角度ずれΔθを反映する。具体的には、Δθphase2nを加算した合計をnの個数で割った値である平均値AvΔθphase2を使用して、OPθ1を補正する(図4の406)。
【0045】
より具体的には、補正された値であるOPθ2は以下のように表現される。
OPθ2=OPθ1+AvΔθphase2/極座標系のデータ取得数
【0046】
これにより、光学式検査装置102の照明光学系からの光のずれ、及びレビュー装置101との角度ずれを反映した正しいθの値を得ることができる。
【0047】
さらに、(ΔXphase2n,ΔYphase2n)、(ΔRphase2n,Δθphase2n)は、前述した平均値AvΔθphase2が反映される。そして、(ΔXphase2n,ΔYphase2n),(ΔRphase2n,Δθphase2n)は第3の誤差の分布である(ΔXphase3n,ΔYphase3n),(ΔRphase3n,Δθphase3n)に更新される(図4の407)。
【0048】
次に、OPRを補正する方法を説明する。
【0049】
ここで、このOPRは、詳細には光学式検査装置102内で半径方向に行くに従って大きくなるずれ、レビュー装置101,光学式検査装置102間でのずれΔFを有する。
【0050】
まず、OPRに半径ずれを反映して補正する方法について説明する。
【0051】
この半径ずれは、図6に示すように、ウエハの中心から外周にいくにしたがってΔRが大きくなるような変化率M(M=1+L)を有する。ここで、601〜603はレビュー装置101にて得た格子点の座標であり、611〜613は光学式検査装置102にて得た601〜603に対応する格子点の座標である。
【0052】
つぎにLについて説明する。Lは、図7に示すようにX軸をウエハ中心からある格子点までの距離dとして、Y軸を前述したΔRphase3nの値とした場合の、線形回帰直線701の傾きとして表現できる。すなわち(1−線形回帰直線の傾き)を得ることによって、半径ずれを補正する補正値OPR1を得ることができる。具体的には、OPR1は以下のように得ることができる(図4の408)。
OPR1=OPR×(1−線形回帰直線の傾き)
【0053】
ここで、(ΔXphase3n,ΔYphase3n),(ΔRphase3n,Δθphase3n)には(1−線形回帰直線の傾き)が反映される。そして、(ΔXphase3n,ΔYphase3n),(ΔRphase3n,Δθphase3n)は第4の誤差の分布である(ΔXphase4n,ΔYphase4n),(ΔRphase4n,Δθphase4n)へ更新される(図4の409)。
【0054】
つぎに、OPR1にレビュー装置101,光学式検査装置102間でのずれΔFを反映して補正する方法について説明する。ΔFはΔRphase4nを加算した合計をnの個数で割った値である平均値AvΔRphase4によって得ることができる。そして、補正後の値OPR2は以下のように得ることができる(図4の410)。
OPR2=OPR1+AvΔRphase4
【0055】
これにより、光学式検査装置102内で半径方向にいくに従って大きくなるずれ(半径ずれΔG)、及びレビュー装置101,光学式検査装置102間でのずれΔFを反映したR座標を得ることができる。
【0056】
ここで、(ΔXphase4n,ΔYphase4n),(ΔRphase4n,Δθphase4n)は、前述した平均値AvΔRphase4が反映される。そして、(ΔXphase4n,ΔYphase4n),(ΔRphase4n,Δθphase4n)は第5の誤差の分布である(ΔXphase5n,ΔYphase5n),(ΔRphase5n,Δθphase5n)に更新される(図4の411)。
【0057】
次に実際の検査での光学式検査装置の直交座標系の補正について説明する。
【0058】
まず、直交座標系の座標(OPx,OPy)は前述した(OPR,OPθ)を直交座標系に変換することで得る(図4の412)。
【0059】
(OPx,OPy)の補正には前述した(ΔXphase5n,ΔYphase5n)を使用する。具体的には、ΔXphase5nを加算した合計をnの個数で割った値である平均値AvΔXphase5、及びΔYphase5nを加算した合計をnの個数で割った値である平均値AvΔYphase5を使用する。補正後の値、(OPx1,OPy1)は以下のように得ることができる(図4の413)。
OPx1=OPx+AvΔXphase5,OPy1=OPy+AvΔYphase5
【0060】
上記の動作によって、例えば、レビュー装置101の座標系と同等程度の高精度な極座標(OPR2,OPθ2),直交座標(OPx1,OPy1)を得ることができる。
【0061】
また、補正に要する時間を短縮することができる。例えば、数時間かかっていた補正時間を、数分に短縮することができる。
【0062】
そして、この後レビュー装置101によるレビューが行われる(図4の414)。
【0063】
ここで、上記の処理を繰り返せば、前述した格子点付きウエハ200が繰り返しの使用によって、汚れている場合に特に有効である。なお、この繰り返しの回数は、作業者がディスプレイ等を通じて任意に設定できるようにしても良い。また、上述した様々な数値等をディスプレイ等に表示しても良い。
【0064】
本発明は、本実施例に限定されない。
【0065】
また、本実施例では、様々な要素を補正する例を説明したが、いずれか1つを選択的に補正するようにしても良い。
【0066】
また、本実施例の補正値の算出は、光学式検査装置102以外のサーバー等、別の装置で行っても良い。
【0067】
また、本実施例は、例えば、直交座標系における第1の誤差の分布(ΔXphase1n,ΔYphase1n)、及び極座標系における第1の誤差の分布(ΔRphase1n,Δθphase1n)から補正を始め、様々な要素の補正を行い、その補正の際に使用した値を、補正と並行して、第1の誤差の分布に反映し更新し、誤差自体を少なくていくと表現することができる。
【0068】
また、本実施例は、例えば、レビュー装置による基準試料のレビュー結果、及び前記光学式検査装置による前記基準試料の検査結果を用いて、前記処理系で得た前記欠陥の位置を変えると表現することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 検査システム
101 レビュー装置
102 光学式検査装置
103 FIB装置
200 格子点付きウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式検査装置において、
前記基板に光を照明する照明光学系と、
前記基板からの光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系の検出結果と閾値とを比較することで欠陥の存在、及び位置とを得る処理系と、を有し、
前記処理系は、
レビュー装置による基準試料のレビュー結果、及び前記光学式検査装置による前記基準試料の検査結果を用いて、前記処理系で得た前記欠陥の位置を変えることを特徴とする光学式検査装置。
【請求項2】
光学式検査装置において、
前記基準試料は、
基準となるマークが一定の間隔で形成された基板であることを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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