説明

検眼装置、眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ、遠近両用眼鏡の製造方法及び遠近両用眼鏡

【課題】被検眼の適切な加入度を求めることができる検眼装置、眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ、遠近両用眼鏡の製造方法及び遠近両用眼鏡を提供する。
【解決手段】検眼装置1は、被検眼6の近点P及び遠点Rの差異から定まる調節力aを取得する調節力算出部18bと、修正調節力B2を算出する調節力算出部18bと、視標13bを被検眼6の光軸方向に駆動する駆動部13dと、調節力算出部18bが算出した修正調節力B2に対応する修正調節位置L2に、駆動部13dを制御して視標13bを配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定部18dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠近両用眼鏡の作製に適した検眼装置、眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ、遠近両用眼鏡の製造方法及び遠近両用眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固視表を移動させて被検眼の遠方視屈折力、近方視屈折力を測定する検眼装置があった(例えば特許文献1)。そして、遠近両用眼鏡(老眼鏡)は、測定した遠用度数(遠方視屈折力)、近用度数(近方視屈折力)に基づいて調節力、加入度を算出して、この加入度に基づいて作製されていた。
しかし、従来、算出された加入度が適切ではない場合があった。この場合、作製された遠近両用眼鏡を近用距離(近方視距離)で使用すると、被検眼が緊張状態等となってしまい、疲れ等の症状を生じるときがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、被検眼の適切な加入度を求めることができる検眼装置、眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ、遠近両用眼鏡の製造方法及び遠近両用眼鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
第1の発明は、被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得部と、前記調節力取得部が取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出部と、視標を前記被検眼の光軸方向に駆動する駆動部と、前記修正調節力算出部が算出した積算値に対応する修正調節位置に、前記駆動部を制御して前記視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定部と、を備える検眼装置である。
第2の発明は、第1の発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定結果を出力する出力部を備え、前記緊張性微動測定部は、前記出力部が前記測定結果を出力した後に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を受け付ける再測定受け付け部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
第3の発明は、第1又は第2の発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定結果を出力する出力部を備え、前記緊張性微動測定部は、前記出力部が前記測定結果を出力した後に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を受け付ける再測定受け付け部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
第4の発明は、第2又は第3の発明の検眼装置において、前記出力部は、前記緊張性微動測定部の緊張性微動測定の再測定を出力し、前記再測定受け付け部は、緊張性微動測定の再測定での前記視標の位置を遠点側又は近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を、繰り返して受け付けること、を特徴とする検眼装置である。
第5の発明は、第1の発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態であるか否かを判定する測定結果判定部を備え、前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部が前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をすること、を特徴とする検眼装置である。
第6の発明は、第1又は第5の発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定結果を解析し、前記被検眼がリラックス状態であるか否かを判定する測定結果判定部を備え、前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部が前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をすること、を特徴とする検眼装置である。
第7の発明は、第5又は第6の発明の検眼装置において、前記測定結果判定部は、前記緊張性微動測定部の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼の状態を判定し、前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部の判定結果に応じて、前記緊張性微動測定の再測定での前記視標の位置を遠点側又は近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を、繰り返して行うこと、を特徴とする検眼装置である。
第8の発明は、第7の発明の検眼装置において、判定基準を複数記憶する記憶部と、検者の選択を受け付ける操作部とを備え、測定結果判定部は、操作部の操作に基づいて前記記憶部に記憶された前記判定基準を選択し、選択した前記判定基準に基づいて前記被検眼の状態を判定すること、を特徴とする検眼装置である。
第9の発明は、第1から第8までのいずれかの発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定で駆動した前記視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
第10の発明は、第1から第9までのいずれかの発明の検眼装置において、前記調節力取得部は、前記被検眼の前記遠点及び前記近点の屈折力を測定する他覚的屈折力測定部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
第11の発明は、第1から第10までのいずれかの発明の検眼装置において、前記調節力取得部が測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
第12の発明は、第11の発明の検眼装置において、前記緊張性微動測定部の測定結果に応じて、インセット量算出をするか、緊張性微動測定をするかを選択する選択部を備えること、を特徴とする検眼装置である。
【0007】
第13の発明は、被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得工程と、前記調節力取得工程で取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出工程と、前記修正調節力算出工程で算出した積算値に対応する修正調節位置に、視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定工程と、前記緊張性微動測定工程の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態、適正状態、リラックス状態であるかを判定する測定結果判定工程と、前記測定結果判定工程で前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をし、前記測定結果判定工程で前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をする再測定工程と、前記再測定工程の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼が適正状態と判定されるまで前記測定結果判定工程及び前記再測定工程を繰り返す再測定繰り返し測定工程と、前記測定結果判定工程で適正状態であると判定された視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出工程と、前記調節力取得工程で測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出工程と、前記加入度算出工程で算出した加入度に対応した遠近両用眼鏡のレンズの近方視屈折部分の近用中心を、前記インセット量算出工程において算出したインセット量に基づいて配置する近用中心配置工程と、を備える眼鏡レンズの製造方法である。
【0008】
第14の発明は、第13の発明の遠近両用眼鏡の製造方法により作製された眼鏡レンズである。
【0009】
第15の発明は、被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得工程と、前記調節力取得工程で取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出工程と、前記修正調節力算出工程で算出した積算値に対応する修正調節位置に、視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定工程と、前記緊張性微動測定工程の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態、適正状態、リラックス状態であるかを判定する測定結果判定工程と、前記測定結果判定工程で前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をし、前記測定結果判定工程で前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をする再測定工程と、前記再測定工程の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼が適正状態と判定されるまで前記測定結果判定工程及び前記再測定工程を繰り返す再測定繰り返し測定工程と、前記測定結果判定工程で適正状態であると判定された視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出工程と、前記調節力取得工程で測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出工程と、前記加入度算出工程で算出した加入度に対応した遠近両用眼鏡のレンズの近方視屈折部分の近用中心を、前記インセット量算出工程において算出したインセット量に基づいて配置する近用中心配置工程と、を備える遠近両用眼鏡の製造方法である。
【0010】
第16の発明は、第15の発明の遠近両用眼鏡の製造方法により作製された遠近両用眼鏡である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、修正調節位置に視標を配置し、毛様体緊張性微動に基づいて眼調節機能を測定するので、修正調節位置つまり加入度が適切か否かを判定できる。
(2)本発明は、視標を修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定を受け付けるので、検者は、加入度が適切ではないと判定した場合に、緊張性微動測定の再測定を行い、適切な加入度を求めることができる。
【0012】
(3)本発明は、視標を修正調節位置よりも近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を受け付けるので、検者は、調節力に余裕があると判断した場合に、緊張性微動測定の再測定を行い、適切な加入度を求めることができる。
(4)本発明は、緊張性微動測定の再測定を繰り返し受け付けるので、検者は、より精度よく加入度を求めることができる。
【0013】
(5)本発明は、被検眼が緊張状態であると判定した場合に、視標を修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をするので、検眼装置が自動で再測定するか否かを判定して、上記(2)と同様な効果を得ることができる。
(6)本発明は、調節力に余裕があると判定した場合に、視標を修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をするので、検眼装置が自動で再測定するか否かを判定して、上記(3)と同様な効果を得ることができる。
【0014】
(7)本発明は、測定結果判定部の判定結果に応じて、緊張性微動測定の再測定を繰り返すので、検眼装置が自動で再測定するか否かを判定して、上記(4)と同様な効果を得ることができる。
(8)本発明は、操作部の操作に基づいて判定基準を選択して、被検眼の状態を判定するので、被検者の年齢等の個人差を考慮して、被検眼の状態を判定することができる。
【0015】
(9)本発明は、緊張性微動測定部の測定で駆動した視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出部を備えるので、緊張性微動測定部で被検眼の緊張状態がないことを確認した上で、適切な加入度を求めることができる。
(10)本発明は、他覚的屈折力測定部が被検眼の遠点の屈折力(遠方視屈折力)及び近点の屈折力(近方視屈折力)を測定するので、いわゆるオートレフラクトメータを利用して、緊張性微動を考慮し、調節力を適切に測定できる。
【0016】
(11)本発明は、インセット量算出部を備えるので、遠近両用眼鏡のレンズを作製する場合に、レンズの近方視用の屈折部の近用中心の位置を、他覚的屈折力測定からインセット量算出の一連の処理によって求めることができる。
(12)本発明は、インセット量算出をするか、緊張性微動測定をするかを選択する選択部を備えるので、検者は、インセット量を算出する前に、緊張性微動測定によって加入度が適正であるか否かを確認できる。
(13)本発明は、測定結果判定工程で適正状態であると判定された視標の位置に基づいて加入度を算出し、調節力取得工程で測定した遠点の屈折力に基づいてインセット量を算出し、その加入度及び計算したインセット量に基づいて、遠近両用眼鏡のレンズのうち近方視屈折部分の近用中心を設定しているので、調節力を測定し、その調節力を用いた加入度が適切であるか否かの判定等の工程から近方視屈折部分の光軸設定の工程を一連のものにすることができるため、遠近両用の眼鏡レンズ及び眼鏡の作製の工程を簡便にでき、かつ被検者に適切なレンズ及び眼鏡を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の検眼装置1の外観図である。
【図2】第1実施形態の検眼装置1の構成図である。
【図3】第1実施形態のチョッパ15aの縞模様を示す図である。
【図4】第1実施形態の遠点R及び近点Pの測定例、緊張性微動測定の測定例を説明する図である。
【図5】第1実施形態の検眼装置1の全体の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の右眼加入度検証処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の表示部16の表示例を示す図である。
【図8】第2実施形態の検眼装置201の構成図である。
【図9】第2実施形態の右眼加入度検証処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態の遠近両用眼鏡350及び遠近両用レンズ360の作製方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の検眼装置1の外観図である。
図2は、第1実施形態の検眼装置1の構成図である。
図3は、第1実施形態のチョッパ15aの縞模様を示す図である。
図4は、第1実施形態の遠点R及び近点Pの測定例、緊張性微動測定の測定例を説明する図である。
図1、図2に示すように、検眼装置1は、滑動台2と、検眼装置移動部3と、左右方向位置検出部4と、本体部10とを備えている。
滑動台2は、検眼装置1の土台となる部分であり、測定時には、例えば机上等に設置される。滑動台2は、測定時に被検者の顔を固定する額当て2a、顎受け部2b等が設けられている。
【0019】
検眼装置移動部3は、本体部10を滑動台2に対して左右方向X、前後方向Yに移動可能に支持する部分である。検眼装置移動部3は、スライダ機構3a、本体部10を左右方向X、前後方向Yに駆動するDCモータ(図示せず)等を備えている。検眼装置移動部3は、レバー12aの操作に応じて、制御部18によって制御される。
左右方向位置検出部4は、本体部10の滑動台2に対する位置を検出する光学センサ等である。左右方向位置検出部4は、検出信号を制御部18に出力する。
また、検眼装置1は、データ記憶のための外部記憶部5を備えている。
【0020】
本体部10は、検眼装置1の主要な部分が設けられている。本体部10は、顔受け部2aに固定された被検者の被検眼6の位置に応じて、レバー12aの操作によって滑動台2に対して左右方向X、前後方向Yに移動できる。
本体部10は、操作部12と、視標投影部13と、眼屈折力測定装置15(他覚的屈折力測定部)と、ダイクロイックミラー14と、表示部16(出力部)と、記憶部17と、制御部18等とを備えている。
【0021】
操作部12は、検者(測定者)がこの検眼装置1を操作するための入力部であり、ケースに設けられている。操作部12は、初期設定値を入力したり、各種操作をするボタン等を備えている。操作部12は、レバー12aと、加入度検証ボタン12bと、遠点側移動測定ボタン12cと、測定終了ボタン12dと、近点側移動測定ボタン12eと、調節力測定ボタン12fとを備えている。
レバー12aは、視標投影部13及び眼屈折力測定装置15を一体で左右方向X、前後方向Yに移動するためのものである。
加入度検証ボタン12bは、後述するように、右眼の加入度a1を算出した後に、右眼加入度検証処理をするか否かを選択するために操作されるボタンである。加入度検証ボタン12bは、左眼の加入度a1を算出した後にも、左眼加入度検証処理をするか否かを選択するために、同様に操作される。
【0022】
遠点側移動測定ボタン12cは、右眼加入度検証処理(後述する)において、視標13bを遠点R側に移動して緊張性微動測定の再測定をするための操作ボタンである。
測定終了ボタン12dは、緊張性微動測定の測定を終了するための操作ボタンである。
近点側移動測定ボタン12eは、右眼加入度検証処理(後述する)において、視標13bを近点P側に移動して緊張性微動測定の再測定をするための操作ボタンである。
調節力測定ボタン12fは、視標13bを遠点R側に移動させて右眼の遠方視屈折力を測定し、更に、近点P側に移動させて右眼の近方視屈折力を測定するためのボタンである。
遠点側移動測定ボタン12c、近点側移動測定ボタン12e、調節力測定ボタン12fは、左眼においても同様に操作される。
【0023】
視標投影部13は、視標13bを被検眼6に観察させるための部分である。視標投影部13は、被検眼6に遠い側から順に、光源13aと、視標13bと、凸レンズ13cとを備え、また駆動部13dを備えている。
光源13aは、視標13bを照らす照明である。
視標13bは、被検眼6によって観察される部材である。
凸レンズ13cは、視標13bを平行光束に近い状態に変換して被検眼6へ入射させるレンズである。このため、被検眼6には、視標13bが実際の位置よりも遠方にあるように観察される。
【0024】
駆動部13dは、光源13a及び視標13bを光軸方向に移動するための装置である。駆動部13dは、制御部18により制御される。駆動部13dは、スライダ機構(図示せず)と、モータ13eと、ロータリエンコーダ(図示せず)とを備えている。
スライダ機構は、光源13a及び視標13bを互いの位置関係を不変にした状態で、光軸方向に移動可能に支持する支持部である。
モータ13eは、光源13a及び視標13bを移動するDCモータ等である。
ロータリエンコーダは、視標13bの光軸方向における位置を検出する検出部であり、例えば光学式のエンコーダである。ロータリエンコーダは、モータ13eの回転軸に設けられている。ロータリエンコーダは、検出信号を制御部18に出力する。
【0025】
ダイクロイックミラー14は、眼屈折力測定装置15から出射される測定光(赤外光)と、視標投影部13から出射される観察光(可視光)とを、それぞれ被検眼6へ導き、また、被検眼6から戻る赤外光を、眼屈折力測定装置15へ戻す働きをする。
【0026】
眼屈折力測定装置15は、チョッパ15aと、モータ15bと、光源15c(赤外光光源)と、レンズ15d,15eと、ハーフミラー15fと、レンズ15gと、絞り15hと、受光部15iとを備えている。
チョッパ15aは、円盤状の部材であり、回転可能に設けられている。
図3に示すように、チョッパ15aは、被検眼6の眼底に縞模様を投影するスリットが形成されている。縞模様は、2種類の方向の縞が形成されており、チョッパ15aが1周すると、2方向の経線方向が測定され眼屈折力(後述する)が算出される。
【0027】
図2に示すように、モータ15bは、チョッパ15aを回転させるモータである。
光源15cは、チョッパ15aを照明する赤外光光源である。
レンズ15d,15eは、光源15cの赤外光及びチョッパ15aにより形成される縞模様を被検眼6の眼底に投影するレンズである。
ハーフミラー15fは、被検眼6の眼底から戻る赤外光を、受光部15iへと導くミラーである。
レンズ15g、絞り15h及び受光部15iは、被検眼6の眼底から戻る赤外光が形成する縞模様の移動速度を検出するため検出部である。
受光部15iは、眼底から戻る光を受光する受光素子である。受光部15iは、受光信号を制御部18に出力する。
【0028】
眼屈折力測定装置15は、チョッパ15aを回転させて、被検眼6の眼底に投影される縞模様は移動する。このとき、受光部15i上に形成される縞模様の移動速度は、被検眼6の眼屈折力に応じて変化する。これにより、前述したように、チョッパ15aが1周すると、眼屈折力が算出される。
【0029】
この眼屈折力は、遠方視屈折力(遠点の屈折力)DR、近方視屈折力(近点の屈折力)DPであり、眼屈折力測定装置15は、それぞれ球面屈折力(S)、乱視屈折力(C)、乱視軸(AX)のデータを算出する。一般に調節力を算出する場合、等価球面屈折力=S+C/2を用いてそれぞれ遠方視等価球面屈折力、近方視等価球面屈折力を算出し調節力を求める。
以下、理解を容易にするために、乱視屈折力を考慮せず、等価球面屈折力を単に屈折力として説明する。
【0030】
表示部16は、眼屈折力、瞳孔間距離(Pupil Distance)及び緊張性微動の各測定結果等や、被検眼6の映像、インセット量iの算出結果等を出力する表示部である。表示部16は、例えば液晶表示装置等であり、検者が観察可能に設けられている。なお、制御部18は、操作部12の出力に応じて、表示部16に出力される内容を、プリンタ16aを制御して紙に印刷する。
記憶部17は、検眼装置1の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。
【0031】
制御部18は、検眼装置1を統括的に制御するための制御部であり、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。制御部18は、記憶部17に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
制御部18は、例えば、各検出部や操作部12の出力に基づいて視標投影部13及び眼屈折力測定装置15を駆動したり、各測定をしたり、記憶部17のデータの保存及び読み出しを行ったりする。
【0032】
制御部18は、屈折力測定制御部18aと、調節力算出部18b(調節力取得部、修正調節力算出部)と、加入度算出部18cと、緊張性微動測定部18dと、インセット量算出部18fとを備え、必要に応じてこれら各制御部の間で情報を伝達する。
屈折力測定制御部18aは、被検眼6の遠方視及び近方視の眼屈折力を測定する制御部である。屈折力測定制御部18aは、各検出部や操作部12の出力に基づいて視標投影部13及び屈折力測定装置15を制御して、被検眼6の遠方視屈折力DR、近方視屈折力DPを測定し、遠点R及び近点Pを算出する。
【0033】
図4(a)に示す測定例では、被検眼6を測定した結果、遠点R=1mである。
遠方視屈折力DR=1/R=1/1m=1Dpである。
同様に、近点P=0.4mであれば、
近方視屈折力DP=1/0.4m=2.5Dpである。
【0034】
調節力算出部18bは、被検眼6の近点P及び遠点Rの差異から定まる調節力B1及び修正調節力B2を取得する制御部である。
図4の測定例では、
調節力B1=DP−DR=1.5Dp…式(1)
である。
【0035】
調節力算出部18bは、調節力算出部18bが取得した調節力B1及び修正係数bを積算して修正調節力B2(積算値)を算出する。
なお、このように、調節力B1を修正調節力B2に修正する理由は、近点Pに基づいて近用距離L1で用いる眼鏡を製作した場合に、近用距離L1での使用時に、近方視すると調節力を目一杯使うことになり、被検眼6に無理な状態(緊張した状態)を強いることになるためである。なお、近用距離L1は、眼鏡を製作するために設定される距離であり、被検者が利用する距離であり、例えば、製作した眼鏡を用いて読書等のために実際に書籍等を置く距離である。
図4の測定例では、修正係数b=2/3と設定しており、
修正調節力B2=調節力B1×修正係数b=1.5Dp×2/3=1Dp…式(2)
である。
【0036】
加入度算出部18cは、修正調節力B2及び近用距離L1に基づいて、加入度a1を算出する制御部である。
加入度とは老視用遠近両用レンズの処方に用いられる用語で遠方視屈折力と近方視屈折力との差をいい、一般に近用距離Lが短いと強くなり、調節力が低下すると強くなる。
図4の測定例では、近用距離L1=0.3mと設定しており、
加入度a1=1/近用距離L1−修正調節力B2=1/0.3−1≒2.3Dp…式(3)
である。
なお、後述するように、加入度検証処理によって視標13bを移動した場合には、加入度算出部18cは、緊張性微動測定部18dの測定において、移動した視標13bの位置に基づいて、加入度a2を算出する。
【0037】
緊張性微動測定部18dは、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて緊張性微動(眼調節機能)を測定する制御部である。緊張性微動測定部18dは、修正調節力B2に対応する修正調節位置L2に視標13bを配置した状態で緊張性微動測定をしたり、再測定受け付け部18eの出力に基づいて、緊張性微動の再測定をする。
【0038】
調節機能の測定は、特許4173296号公報に説明されている方法を用いる。簡単に説明すると、ある視標位置にて取得された屈折力の経時変化データを、例えばFFT(高速フーリエ変換)によりフーリエ変換して、毛様体緊張性微動を解析するものである。検者は、被検眼6が緊張状態であることを示す高周波数1〜2.3Hzの出現する頻度に基づいて、緊張状態、適正状態、リラックス状態であるかを判定することができる。
検者は、高周波数1〜2.3Hzの出現頻度に基づいて、例えば以下のように判定することができる。
出現頻度70%以上:緊張状態
出現頻度50%以上70%未満:適正状態
出現頻度50%未満:リラックス状態(加入度に十分余裕がある状態)
【0039】
緊張性微動測定部18dは、再測定受け付け部18eを備えている。
再測定受け付け部18eは、表示部16が測定結果を出力した後に、緊張性微動測定の再測定を受け付ける制御部である。再測定受け付け部18eは、遠点側移動測定ボタン12c、近点側移動測定ボタン12eの操作に応じて、視標13bを遠点R側、近点P側へ補正値ΔL(Dp)駆動して、視標13bの位置を補正する。
【0040】
インセット量算出部18fは、屈折力測定制御部18aが測定した遠方視屈折力DR及び近用距離L1に基づいて、インセット量iを算出する。
インセット量iは、以下の数式によって求める。
インセット量i=p/[1+{(1/(d+t)−DR/1000)}×(L1−d)]…式(4)
p:片眼瞳孔間距離
d:角膜頂点距離
t:回旋中心距離(角膜頂点から眼球の回旋中心までの距離)
片眼瞳孔間距離pとは、被検者の顔の中心から左右眼それぞれの瞳孔中心までの距離をいい、一方、瞳孔間距離とは、左右眼の瞳孔中心間の距離をいう。後述するように、本実施形態では、瞳孔間距離が測定可能であるので、「片眼瞳孔間距離p=瞳孔間距離/2」としてインセット量iを算出する。
なお、片眼瞳孔間距離pを測定可能である場合には、その値を用いてインセット量iを算出してもよい。
【0041】
図5は、第1実施形態の検眼装置1の全体の動作を示すフローチャートである。
図6は、第1実施形態の右眼加入度検証処理の動作を示すフローチャートである。
図7は、第1実施形態の表示部16の表示例を示す図である。
なお、以下の説明は、図4に示す測定例に基づいて説明する。
ステップS(以下単に「S」という)10において、検者が操作部12を操作して初期設定値を入力すると、制御部18は、初期設定値の入力を受け付ける。制御部18は、初期設定値として、近用距離L1、角膜頂点距離d、回旋中心距離t、補正値ΔLの入力を受け付ける。
図4の例では、近用距離L1は、0.3mである。
角膜頂点距離dの値は、例えば、被検者が日本人であれば、0.012mであり、被検者が欧米人であれば、0.013〜0.015mである。また、一般的には、角膜頂点距離d、回旋中心距離tの値は、角膜頂点距離d及び回旋中心距離tの加算値が、被検者が日本人であれば、0.025mになるように、被検者が欧米人であれば、0.027mになるように設定される。
補正値ΔLについては、後述する。
【0042】
S20において、検者により調節力測定ボタン12fが操作されると、屈折力測定制御部18aは、被検者の右の被検眼6(右眼)の遠方視屈折力DRを測定する。
屈折力測定制御部18aは、この測定をする場合には、レバー12aの操作に応じて駆動部13dを制御して、視標投影部13及び眼屈折力測定装置15を移動して、視標投影部13及び眼屈折力測定装置15の光軸と、右眼の光軸とを合わせる。屈折力測定制御部18aは、右眼の左右方向Xの位置を記憶部17に記憶する。
Xの位置を記憶するのは瞳孔間距離PDを計測するためである。(後述説明する)
その後、屈折力測定制御部18aは、視標13bを移動して右眼遠方視屈折力DRを測定する。
【0043】
S30において、検者により調節力測定ボタン12fが操作されると、屈折力測定制御部18aは、被検者の左の被検眼6(左眼)の、左眼の遠方視屈折力DRを測定する。
屈折力測定制御部18aは、この測定をする場合には、S20と同様に、レバー12aの操作に応じて駆動部13dを制御して、視標投影部13及び眼屈折力測定装置15の光軸と、左眼の光軸とを合わせ、左眼の左右方向Xの位置を記憶部17に記憶する。その後、屈折力が変化しなくなったら左眼遠方視屈折力DRを測定する。
S40において、制御部18は、記憶部17に記憶した左眼及び右眼の左右方向Xの位置に基づいて、瞳孔間距離を算出する。
【0044】
S50において、検者により調節力測定ボタン12fが操作されると、屈折力測定制御部18aは、右眼近方視屈折力DPを測定する。
屈折力測定制御部18aは、この測定をする場合には、最初に、レバー12aの操作を受け付けて、視標投影部13及び眼屈折力測定装置15の光軸と、右眼の光軸とを合わせる。屈折力測定制御部18aは、駆動部13dを制御して、視標13bを右眼の方向に移動して、屈折力が変化しなくなったら右眼近方視屈折力DPを測定する。
【0045】
S60において、調節力算出部18bは、式(1)に従って、右眼遠方視屈折力DR及び右眼近方視屈折力DPに基づいて調節力B1を算出する(調節力取得工程)。また、調節力算出部18bは、式(2)、式(3)に従って、調節力B1及び修正係数b(=2/3)に基づいて右眼加入度a1を算出する(修正調節力算出工程)。
【0046】
S70において、制御部18は、検者による操作部12の操作に応じて、右眼加入度a1の検証が選択されたか否かを判定する。制御部18は、右眼加入度a1の検証が選択されたと判定した場合には(S70:YES)、S80に進んで右眼加入度a1の検証処理を行い、一方、右眼加入度a1の検証が選択されていないと判定した場合には(S70:NO)、S90に進む。
【0047】
(右眼加入度検証処理)
図6に示す右眼加入度検証処理について説明する。
図4(b)に示すように、右眼加入度a1の検証処理では、最初に、S81において、緊張性微動測定部18dは、視標13bを、修正調節力B2(=1Dp)に対応する修正調整値L2に移動する。
S82において、緊張性微動測定部18dは、緊張性微動測定を開始する。
上記S81,S82の処理によって、緊張性微動測定部18dは、視標13bを修正調節位置L2に移動して、眼調節機能を測定することなる(緊張性微動測定工程)。
S83において、緊張性微動測定部18dは、緊張性微動測定の測定結果を表示部16に出力する。
【0048】
図7(a)に示すように、例えば緊張性微動の出現頻度75%である場合には、検者は、出現率75%以上であるので(欄19a参照)、視標13bが修正調節位置L2にある状態では、右眼が緊張状態であると判定できる。この場合には、検者は、遠点側移動測定ボタン12cを操作して、後述する緊張性微動測定の再測定を選択できる。
図7(b)に示すように、例えば出現頻度60%である場合には、検者は、50%以上70%未満であるので(欄19b参照)、視標13bが修正調節位置L2にある状態では、右眼が適正状態であると判定できる。この場合には、検者は、測定終了ボタン12dを操作すればよく、緊張性微動測定の再測定を選択することはない。
図7(c)に示すように、例えば出現頻度45%である場合には、検者は、50%未満であるので(欄19c参照)、視標13bが修正調節位置L2にある状態では、右眼がリラックス状態であると判定できる。この場合には、検者は、近点側移動測定ボタン12eを操作して、後述する緊張性微動測定の再測定を選択できる。
【0049】
S84において、再測定受け付け部18eは、操作部12の出力に基づいて、緊張性微動測定の再測定をするか否の選択を受け付ける。検者は、前述したように、緊張性微動測定の測定結果に基づいて、遠点側移動測定ボタン12c又は近点側移動測定ボタン12eを操作して、緊張性微動測定の再測定をするか否の選択をすることができる。再測定受け付け部18eは、緊張性微動測定の再測定が選択された場合には(S84:YES)、S85に進み、一方、緊張性微動測定の再測定が選択されていない場合には(S84:NO)、S86に進む。
緊張性微動測定の測定結果が緊張状態である場合には、図4(c)に示すように、検者は、右眼が緊張状態から適正状態に向かう方向に視標13bを遠点R側に移動するようにすればよい。
一方、緊張性微動測定の測定結果がリラックス状態である場合には、図4(d)に示すように、検者は、右眼がリラックス状態から適正状態に向かう方向に視標13bを近点P側に移動するようにすればよい。
【0050】
S85において、再測定受け付け部18eは、S84で遠点側移動測定ボタン12c及び近点側移動測定ボタン12eのいずれが選択されたかを判定する。
再測定受け付け部18eは、遠点側移動測定ボタン12cが操作されたと判定した場合には(S85:YES)、S85aに進み、一方、近点側移動測定ボタン12eが操作されたと判定した場合には(S85:NO)、S85bに進む。
【0051】
S85aにおいて、再測定受け付け部18eは、視標13bを補正値ΔL(マイナス)だけ遠点R側に駆動し(図4(c)参照)、その後、緊張性微動測定部18dは、S82からの処理を繰り返す。ここでは修正調節力B2を基準にして遠点R側にマイナス、近点P側をプラスとする。したがって遠点R側に|ΔL|に駆動する場合の符号はマイナスであり、近点P側に|ΔL|に駆動する場合の符号はプラスである。
補正値ΔLは、ディオプタ単位であり、例えば、0.125Dp毎移動、0.25Dp毎移動等のように初期設定で選択できる(S10)。この処理では、0.25Dpとして説明する。
一方、S85bにおいて、再測定受け付け部18eは、視標13bを補正値ΔLだけ近点P側に駆動して(図4(d)参照)、S82からの処理を繰り返す。なお、近点P側に移動する場合には、遠点R側に移動する場合とは反対方向である。
【0052】
繰り返されるS82からの処理において、緊張性微動測定部18dは、視標13bの位置を前回の測定の位置よりも、遠点R側に補正値ΔL(マイナス)又は近点P側に補正値ΔLだけ移動して緊張性微動測定の再測定をし(再測定工程)、その測定結果の表示を行う。
これにより、検者は、緊張性微動の出現率が適正値50%以上70%未満になるまで、緊張性微動測定の再測定を繰り返し行うことができるわけである(再測定繰り返し測定工程)。
【0053】
S86において、加入度算出部18cは、緊張性微動測定部18dの再測定で駆動した視標13bの位置に基づいて、加入度a2を算出する(加入度算出工程)。つまり、加入度a2は、
加入度a2=1/L1−((DP−DR)×2/3+ΣΔL)
の数式によって表される。ここで、補正値ΔLは、遠点R側に駆動する時はマイナス、近点P側に駆動する時はプラスとなる。
図4(c)の例において、補正値ΔL(=−0.25Dp)だけ2度遠点R側に移動した場合には、ΣΔL=−0.5Dpとなるので、
加入度a2=1/0.3−((2.5−1)×2/3−0.5)=2.8Dp
となる。
なお、加入度算出部18cは、緊張性微動測定の再測定を一度も選択されなかった場合、つまり「S84:YES」を一度も経由しなかった場合には、S60で算出した加入度a1をそのまま加入度a2=加入度a1と書き換える。
その後、制御部18は、S90に進む(S87)。
【0054】
図5に戻り、S90〜S120において、制御部18は、左眼についても、右眼の処理S50〜S80と同様に処理し、左眼の加入度a1,a2を算出する。
【0055】
S130において、加入度算出部18cは、左眼及び右眼について、それぞれ加入度aを決定する。
加入度算出部18cは、右眼加入度a1の検証をしていない場合には(S70:NO)、右眼加入度a=a1(S60で算出)と決定し、一方、右眼加入度a1の検証をした場合には(S70:YES)、右眼加入度a=a2(S80(S86)で算出)と決定する。
同様に、加入度算出部18cは、左眼加入度a1の検証をしていない場合には(S110:NO)、左眼加入度a=a1(S100で算出)と決定し、一方、左眼加入度a1の検証をした場合には(S110:YES)、右眼加入度a=a2(S120で算出)と決定する。
【0056】
S140において、インセット量算出部18fは、屈折力測定制御部18aが測定した屈折力に基づいて、式(4)に従って、インセット量iを算出する(インセット量算出工程)。インセット量算出部18fは、算出したインセット量iを表示部16に出力する。その後、制御部18は、一連の処理を終了する(S150)。
【0057】
なお、上記処理において、検者は、緊張性微動測定を行わずに、直接インセット量iの算出をする場合には、S70、S110において、加入度検証処理を選択しないように、操作部12(選択部)を操作すればよい。これにより、検者は、必要に応じて、緊張性微動測定によって加入度が適正であるか否かを確認できる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の検眼装置1は、算出した加入度aが適切か否かを判定できる。
これにより、緊張状態から適正状態へと加入度aを修正した場合には、近用距離L1で使用した場合に、被検眼6に疲れ等を生じない遠近両用眼鏡を作製できる。
一方、リラックス状態から適正状態へと加入度aを修正した場合には、加入度aを小さくできるので、レンズに段差やゆがみが少ない遠近両用眼鏡を作製できる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明を適用した検眼装置の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分、処理には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図8は、第2実施形態の検眼装置201の構成図である。
検眼装置201は、記憶部217と、測定結果判定部218gとを備えている。
記憶部217は、第1実施形態と同様な以下の判定基準を記憶する記憶部である。
出現頻度70%以上:緊張状態
出現頻度50%以上70%未満:適正状態
出現頻度50%未満:リラックス状態
【0060】
測定結果判定部218gは、緊張性微動測定部218dの測定結果を解析し、高周波数1〜2.3Hzの出現頻度に基づいて、記憶部217の判定基準に従って、被検眼6が緊張状態、リラックス状態、適正状態であるか否かを判定する制御部である。
つまり、第1実施形態では、検者が被検眼6の状態を判定するのに対して、第2実施形態では、検眼装置201自体が被検眼6の状態を判定するのである。
【0061】
図9は、第2実施形態の右眼加入度検証処理の動作を示すフローチャートである。
S284において、測定結果判定部218gは、緊張性微動測定部218dの測定結果を解析し、被検眼6が適正状態であるか否かを判定する。測定結果判定部218gは、被検眼6が適正状態であると判定した場合(S284:YES)、S86に進み、一方、被検眼6が適正状態ではないと判定した場合には(S284:NO)、S285に進む。
S86の処理は、第1実施形態と同様であり、加入度算出部18cが、加入度a2を算出する。
【0062】
S285において、測定結果判定部218gは、被検眼6が緊張状態、リラックス状態かを判定する。測定結果判定部218gは、被検眼6が緊張状態であると判定した場合には(S285:YES)、S285aに進み、一方、被検眼6が緊張状態ではないつまりリラックス状態であると判定した場合には(S285:NO)、S285bに進む。
S285aにおいて、緊張性微動測定部218dは、第1実施形態と同様に、視標13bを補正値ΔL(Dp)だけ遠点R側に駆動して、S82からの処理を繰り返す。
S285bにおいて、緊張性微動測定部218dは、第1実施形態と同様に、視標13bを補正値ΔL(Dp)だけ近点P側に駆動して、S82からの処理を繰り返す。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の検眼装置201は、検眼装置201自体が被検眼6の状態を判定し、適切な加入度aを算出できる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、第1実施形態の検眼装置1を用いた遠近両用眼鏡350及び遠近両用レンズ360(眼鏡レンズ)の作製方法である。
図10は、第3実施形態の遠近両用眼鏡350及び遠近両用レンズ360の作製方法を説明する図である。
図10(a)は、被検者が遠近両用眼鏡350を装用した状態を、上側から見た図である。
図10(b)は、右眼用の遠近両用レンズ360を正面(遠点P側)から見た図である。
図10(c)は、被検者が遠近両用眼鏡350を装用した状態における右眼用の遠近両用レンズ360及び被検眼6の位置関係を側面(図10(a)の下側)から見た図(図10(b)のc−c部矢視断面図)であり、眼球が回旋中心6aを回旋して視線を上下することにより、遠方から近方まで連続して見える状態を説明する図である。
図10(d)は、遠近両用レンズ360の屈折力の変化を説明するグラフである。
【0065】
図10(a)に示すように、遠近両用眼鏡350は、フレーム351に左右の遠近両用レンズ360が固定されている。
図10(b)に示すように、遠近両用レンズ360は、遠方視部361(遠方視屈折部分)と、中間視部362と、近方視部363(近方視屈折部分)とを備えている。遠近両用レンズ360は、遠方から近方まで一枚で見ることができるレンズのうち、累進多焦点レンズである。
この累進多焦点レンズは、遠方視部361及び中間視部362の境界線362a、中間視部362及び近方視部363の境界線362bが視認できないレンズである。なお、図10(b)は、遠方視部361、中間視部362、近方視部363の境界を表現するために、境界線362a,362bを破線で示している。
【0066】
遠方視部361は、遠近両用レンズ360の上側の遠方視をするため部分であり、屈折力DRが一定である(図10(d)参照)。
中間視部362は、遠方視部361及び近方視部363の間の部分であり、レンズの上側から下側に向かうに従って、屈折力が屈折力DRから屈折力DNに連続的に変化する(図10(d)参照)。
近方視部363は、遠近両用レンズ360の下側の近方視をするため部分であり、屈折力DNが一定である(図10(d)参照)。遠近両用レンズにおいて加入度はDN−DRである。
【0067】
遠近両用眼鏡350の作製方法について説明する。
遠近両用眼鏡350は、以下の順序で行われる。なお、以下の工程は、遠近両用眼鏡350を作製するために、例えば、図面上で行われる光学設計の作業等であってもよい。
(1)最初に、検者は、第1実施形態の図5、図6の処理をすることにより、被検者の左右の被検眼6の遠方視屈折力DR、近方視屈折力DN、加入度a2、インセット量i等を求める。これらの値のうち、眼鏡処方に必要とされるのは遠方視屈折力DR,加入度a2、インセット量iである。
(2)図10(a)に示すように、フレーム351に右眼及び左眼(被検眼6)の2つの遠近両用レンズ360を配置する(レンズ配置工程)。
【0068】
(3)検者は、各遠近両用レンズ360に遠方視部361を配置する(遠方視部配置工程)。
この工程では、検者は、被検眼6が無限点を見たときに右眼及び左眼の回旋中心6aに到達する各遠方視光軸ORが、遠用中心361a(遠方視部361の光学設計上の中心)を通るように、遠用中心361aを配置する。
なお、検者は、(1)の工程で求めた遠方視屈折力DRを、遠方視部361の屈折力に設定する。
【0069】
(4)検者は、各遠近両用レンズ360に近方視部363を配置する(近方視部配置工程)。
この工程では、検者は、被検眼6が物点Nを見たときに回旋中心6aに到達する各近方視光軸OPが、近用中心363a(近方視部363の光学設計上の中心)を通るように,近用中心363aを配置する(近用中心配置工程)。
なお、被検者が近用距離L1の物点Nを観察するときには、眼球が内側に回旋する。このため、検者は、各近方視光軸OPが近用中心363aを通って斜めに進むように、近用中心363aを各遠方視光軸ORよりも、上記処理によって求めたインセット量iだけ内側にずらして配置する。
なお、検者は、(1)の工程で求めた近方視屈折力DNを、近方視部363の各屈折力に設定する。
【0070】
(5)検者は、各遠近両用レンズ360に中間視部362を配置する(中間視部配置工程)。
この工程では、検者は、前述した工程で配置した遠方視部361及び近方視部363の間に、中間視部362を配置する。検者は、中間視部362では、屈折力が屈折力DRから屈折力DNに連続的に変化するように、レンズ形状を設定する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の遠近両用眼鏡350及び遠近両用レンズ360の作製方法は、第1実施形態の検眼装置1を利用して被検眼6の測定から遠近両用レンズ360の設計までを一連の工程で行うことができる。また、遠方視屈折力DR、近方視屈折力DN、加入度a2、インセット量iが計測されているため、これらの値のうち遠方視屈折力DR,加入度a2、インセット量iを用いて光学設計を行うことにより、遠近両用眼鏡350の作製の工程を簡便にでき、かつ眼鏡装用者(被検者)の個々人に最適な遠近両用眼鏡350を作製することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態の検眼装置1を利用した例を説明したが、第2実施形態の検眼装置201を利用しても、同様に遠近両用眼鏡350及び遠近両用レンズ360を作製することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0073】
(変形形態)
第2実施形態において、記憶部に記憶した判定基準は1通りの例を示したが、これに限定されない。例えば、被検者の年齢等を応じて複数の判定基準をテーブルの形態で記憶部に記憶しておき、操作部の操作に従って、測定結果判定部が判定基準を選択できるようにしてもよい。これにより、被検者の年齢等の個人差を考慮して、被検眼の状態を判定することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,201…検眼装置 3…検眼装置移動部 10…本体部 12…レバー 13…視標投影部 15…眼屈折力測定装置 16…表示部 18a…屈折力測定制御部 18b…調節力算出部 18c…加入度算出部 18d,218d…緊張性微動測定部 18f…インセット量算出部 218g…測定結果判定部 350…遠近両用眼鏡 360…遠近両用レンズ 361…遠方視部 362…中間視部 363…近方視部 361a…遠用中心 363a…近用中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得部と、
前記調節力取得部が取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出部と、
視標を前記被検眼の光軸方向に駆動する駆動部と、
前記修正調節力算出部が算出した積算値に対応する修正調節位置に、前記駆動部を制御して前記視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定部と、
を備える検眼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定結果を出力する出力部を備え、
前記緊張性微動測定部は、前記出力部が前記測定結果を出力した後に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を受け付ける再測定受け付け部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定結果を出力する出力部を備え、
前記緊張性微動測定部は、前記出力部が前記測定結果を出力した後に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を受け付ける再測定受け付け部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の検眼装置において、
前記出力部は、前記緊張性微動測定部の緊張性微動測定の再測定を出力し、
前記再測定受け付け部は、緊張性微動測定の再測定での前記視標の位置を遠点側又は近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を、繰り返して受け付けること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態であるか否かを判定する測定結果判定部を備え、
前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部が前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をすること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項5に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定結果を解析し、前記被検眼がリラックス状態であるか否かを判定する測定結果判定部を備え、
前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部が前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をすること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の検眼装置において、
前記測定結果判定部は、前記緊張性微動測定部の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼の状態を判定し、
前記緊張性微動測定部は、前記測定結果判定部の判定結果に応じて、前記緊張性微動測定の再測定での前記視標の位置を遠点側又は近点側へ補正した緊張性微動測定の再測定を、繰り返して行うこと、
を特徴とする検眼装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検眼装置において、
判定基準を複数記憶する記憶部と、
検者の選択を受け付ける操作部とを備え、
測定結果判定部は、操作部の操作に基づいて前記記憶部に記憶された前記判定基準を選択し、選択した前記判定基準に基づいて前記被検眼の状態を判定すること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定で駆動した前記視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の検眼装置において、
前記調節力取得部は、前記被検眼の前記遠点及び前記近点の屈折力を測定する他覚的屈折力測定部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の検眼装置において、
前記調節力取得部が測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検眼装置において、
前記緊張性微動測定部の測定結果に応じて、インセット量算出をするか、緊張性微動測定をするかを選択する選択部を備えること、
を特徴とする検眼装置。
【請求項13】
被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得工程と、
前記調節力取得工程で取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出工程と、
前記修正調節力算出工程で算出した積算値に対応する修正調節位置に、視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定工程と、
前記緊張性微動測定工程の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態、適正状態、リラックス状態であるかを判定する測定結果判定工程と、
前記測定結果判定工程で前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をし、前記測定結果判定工程で前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をする再測定工程と、
前記再測定工程の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼が適正状態と判定されるまで前記測定結果判定工程及び前記再測定工程を繰り返す再測定繰り返し測定工程と、
前記測定結果判定工程で適正状態であると判定された視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出工程と、
前記調節力取得工程で測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出工程と、
前記加入度算出工程で算出した加入度に対応した遠近両用眼鏡のレンズの近方視屈折部分の近用中心を、前記インセット量算出工程において算出したインセット量に基づいて配置する近用中心配置工程と、
を備える。
【請求項14】
請求項13の記載の遠近両用眼鏡の製造方法により作製された。
【請求項15】
被検眼の近点及び遠点の差異から定まる調節力を取得する調節力取得工程と、
前記調節力取得工程で取得した前記調節力及び修正係数の積算値を算出する修正調節力算出工程と、
前記修正調節力算出工程で算出した積算値に対応する修正調節位置に、視標を配置し、毛様体緊張性微動を示す周波数成分の出現頻度に基づいて眼調節機能を測定する緊張性微動測定工程と、
前記緊張性微動測定工程の測定結果を解析し、前記被検眼が緊張状態、適正状態、リラックス状態であるかを判定する測定結果判定工程と、
前記測定結果判定工程で前記被検眼を緊張状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも遠点側に補正した緊張性微動測定の再測定をし、前記測定結果判定工程で前記被検眼をリラックス状態であると判定した場合に、前記視標を前記修正調節位置よりも近点側に補正した緊張性微動測定の再測定をする再測定工程と、
前記再測定工程の再測定の測定結果を解析し、前記被検眼が適正状態と判定されるまで前記測定結果判定工程及び前記再測定工程を繰り返す再測定繰り返し測定工程と、
前記測定結果判定工程で適正状態であると判定された視標の位置に基づいて、加入度を算出する加入度算出工程と、
前記調節力取得工程で測定した前記遠点の屈折力に基づいて、インセット量を算出するインセット量算出工程と、
前記加入度算出工程で算出した加入度に対応した遠近両用眼鏡のレンズの近方視屈折部分の近用中心を、前記インセット量算出工程において算出したインセット量に基づいて配置する近用中心配置工程と、
を備える。
【請求項16】
請求項15に記載の遠近両用眼鏡の製造方法により作製された

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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