説明

検知装置、受電装置、送電装置、非接触電力伝送システム及び検知方法

【課題】給電中でも精度よく金属異物の検知が行えるようにする。
【解決手段】外部と電磁的に結合するコイルを含む回路と接続された検知部によって、この回路のQ値を、給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属等の導体の存在を検知する検知装置、受電装置、送電装置、非接触電力伝送システム及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触電力伝送において、送受電用コイルの近くに存在する金属などの導体又はコイルを含む回路を検知することは、安全性及び効率の良い充電を行う上で非常に重要である。
【0003】
従来は、送電装置と受電装置を組み合わせて、受電装置の負荷が変化したときの振幅及び位相の情報から送電装置(送電コイル)と受電装置(受電コイル)との間に挿入された金属物を検知していた(例えば、特許文献1参照)。また、送受電電力効率(コイル間効率とも呼ばれる)の変化から金属物を検知したり、磁気センサ、容量センサあるいは赤外線センサなどを用い、センサ出力の変化から金属物を検知したりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4413236号(特開2008−206231号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送電装置と受電装置を組み合わせて、受電装置(2次側)の負荷が変化したときの振幅及び位相の情報から金属物を検知する方法や、送受電電力効率の変化から金属物を検知する方法では、送電装置と受電装置を組み合わせて通信をしなければ金属物を検知できない。例えば、送電装置のコイルに、受電回路ではない金属物や通信が不可となった正規の受電装置との間で発生する信号が載っても、金属物を検知できない。また送電装置(送電コイル)と受電装置(受電コイル)の電磁的な結合度やキャリア信号の周波数に依存するため、検知結果のばらつきが大きく精度が悪い。
【0006】
また、磁気センサ、容量センサあるいは赤外線センサなどを用いて金属物を検知する方法では、送電コイルもしくは受電コイル以外に送電装置及び受電装置にセンサを配置しなければならない。これは、装置筺体にデザイン制約に加えることになってしまい、またコストの面でも不利である。
【0007】
本開示は、上記の状況を考慮してなされたものであり、給電中でも精度よく金属異物の検知が行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、外部と電磁的に結合するコイルを含む回路と接続された検知部によって、この回路のQ値を、給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する。このコイルを含む回路のQ値測定は、給電が行われているときに行う。
一例としては、Q値の測定に用いられる上記コイルが、給電用コイルと別である。
【0009】
本開示の一側面によれば、給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いることにより、給電用の交流信号とQ値測定用の交流信号が分けられ、給電中にQ値の測定が行えるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、給電中でも精度よく金属異物の検知が行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の第1の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの概要を示す概略構成図である。
【図2】本開示の第1の実施形態例に係る受電装置に設けられたQ値測定回路30の構成例を示すブロック図である。
【図3】A,Bは、共振回路の他の例(並列共振回路)を示す回路図である。
【図4】本開示の第1の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの給電時における処理を示すフローチャートである。
【図5】導体を検知する方法を示す説明図である。
【図6】送電装置及び受電装置に用いられるコイルの一例を示す概略図である。
【図7】Q値検知用コイルに用いられるコイルの一例を示す概略図である。
【図8】送電コイル、受電コイル及びQ値検知用コイルの間に金属物を挟んだ状態における概略断面図である。
【図9】本開示の第1の実施形態例に係る金属サイズ角に対する諸特性を示すグラフである。
【図10】送電側Q値の共振周波数特性を示すグラフである。
【図11】本開示の第2の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの概要を示す概略構成図である。
【図12】本開示の第3の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの概要を示す概略構成図である。
【図13】直列共振回路におけるインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図14】並列共振回路におけるインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図15】インピーダンスの実部成分と虚部成分の比からQ値を計算するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示を実施するための形態の例について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施の形態(Q値測定用コイルと受電コイルを別に備える例)
2.第2の実施の形態(受電コイルがタップを備える例)
3.第3の実施の形態(Q値測定用コイルと受電コイルを共通とした例)
4.その他(Q値測定の他の例)
【0014】
本開示は、送電側(1次側)と受電側(2次側)の間に存在する金属異物をコイルのQ値の変化を用いて検出する際に、給電する交流信号の周波数と、Q値を測定するための交流信号の周波数を異ならせることを特徴とする。
なお、金属異物とは、送電側と受電側の間に存在する金属などの導体やコイルを含む回路を指す。本明細書でいう導体には、広義の導体すなわち半導体も含まれる。以下、金属などの導体やコイルを含む回路を検知することを、「導体等を検知する」ともいう。
【0015】
コイルを含む共振回路のQ値は、エネルギーの保持と損失の関係(共振回路の共振の強さ)を表す指標である。送電側の送電コイルもしくは受電側の受電コイルの近くに例えば金属物があると、磁力線が金属物を通過して金属物に渦電流が発生する。これはコイルからみると、金属物とコイルが電磁的に結合して、コイルに実抵抗負荷がついたように見え、コイルのQ値を変化させる。このQ値の変化を測定することによって、コイルの近くにある金属物(電磁結合している状態)を検知する。電磁結合は、「電磁界共振結合」あるいは「電磁共鳴」などとも呼ばれ、電界結合と磁界結合がある。いずれも共振(共鳴)を利用し、共振しているデバイスのみに電界もしくは磁界の結合で電力伝送を行う。
【0016】
<1.第1の実施形態>
[非接触電力伝送システムの概要]
まず第1の実施形態例(以下、「本例」ともいう)では、給電用コイルとQ値測定用コイルを別々に設けた例について説明する。
Q値を測定するQ値測定回路30を含む非接触電力伝送システムの概要を、図1に示す。本例の非接触電力伝送システムは、送電装置10(検知装置の一例)と、Q値測定用コイル28を含む受電装置20(検知装置の一例)から構成される。
【0017】
送電装置10は、交流信号を発生させる交流電源12及び抵抗素子13を含む信号源11と、キャパシタと、送電コイル15(1次側コイル)を備える。
抵抗素子は、交流電源12の内部抵抗(出力インピーダンス)を図示化したものである。本例では、信号源11に対しキャパシタ14と送電コイル15が直列共振回路を形成するように接続されている。そして、給電したい周波数において共振するように、キャパシタ14のキャパシタンス(静電容量とも呼ばれる)の値(C値)、及び送電コイル15のインダクタンスの値(L値)が調整されている。信号源11とキャパシタ14で構成される送電部17は、送電コイル15を通じて外部へ非接触で電力を伝送する(送電)。
【0018】
受電装置20は、キャパシタ25(もしくは二次電池)及び抵抗素子26を含む充電部24と、交流信号を直流信号に変換する整流部23と、受電コイル21(2次側コイル)と、その受電コイル21と共振回路を構成するキャパシタ22を備える。また、Q値測定用コイル28と、そのQ値測定用コイル28と共振回路を構成するキャパシタ29と、Q値測定回路30(検知部の一例)を備える。
【0019】
抵抗素子26は、キャパシタ25の内部抵抗(出力インピーダンス)を図示化したものである。本例では、充電部24に対しキャパシタ22と受電コイル21が直列共振回路を形成するように接続され、給電周波数において共振するように、キャパシタ22のキャパシタンスの値(C値)、及び受電コイル21のインダクタンスの値(L値)が調整されている。
【0020】
同様に、キャパシタ29とQ値測定用コイル28が直列共振回路を形成するように接続され、Q値測定周波数において共振するように、キャパシタ29のキャパシタンスの値(C値)、及びQ値測定用コイル28のインダクタンスの値(L値)が調整されている。その直列共振回路がQ値測定回路30と接続されている。充電部24、整流部23及びキャパシタ22で構成される受電部27は、受電コイル21を通じて外部から非接触で電力の供給を受ける(受電)。充電部24に充電した電力はQ値測定回路30へ供給される。
【0021】
直列共振回路を構成するQ値測定用コイル28とキャパシタ29間の電圧をV1、Q値測定用コイル28両端の電圧をV2とすると、直列共振回路のQ値は、式(1)で表される。
【数1】

:周波数fにおける実効抵抗値
【0022】
電圧V1がQ倍されて電圧V2が得られる。Q値測定用コイル28に金属物が近づくと実効抵抗値rsが大きくなり、Q値が下がる。このように金属物がQ値測定用コイル28に近づくと、測定されるQ値(電磁結合している状態)が変化するので、この変化を検知することにより、Q値測定用コイル28の近くにある金属物を検知できる。
【0023】
なお、図1の例は直列共振回路を備える基本の回路を示したものであるから、上記回路の機能を備えていれば詳細な構成は種々の形態が考えられる。例えば図1では、受電装置20に設けた負荷の一例としてキャパシタ(2次電池)を示したが、この例に限られない。
また、受電装置20が信号源11を有し、受電コイル21を介して外部装置へ非接触で電力を伝送するようにしてもよいし、送電装置10が負荷を備え、送電コイル15を介して外部装置から非接触で電力の供給を受けるようにしてもよい。
【0024】
(Q値測定回路の説明)
図2は、第1の実施形態例の受電装置20に設けられるQ値測定回路30の構成例を示すブロック図である。
このQ値測定回路30により、金属等の導体やコイルを含む回路を検知する。Q値測定回路30内のブロックを含む受電装置20を構成する各ブロックは、充電部24から供給される電力により動作する。Q値測定回路30が設けられた受電装置20は、電磁結合状態を検知する検知装置の一例である。
【0025】
本例のQ値測定回路30は、検知部の一例であり、フィルタ部31A,31Bと、整流部32A,32Bと、アナログ−デジタル変換器(以下、「ADC」という)33A,33Bと、メイン制御部34を備える。
【0026】
フィルタ部31Aは、Q値測定用コイル28とキャパシタ29との間から入力される交流信号(交流電圧)に含まれる、受電した微弱な給電周波数信号やその高調波など、Q値を測定する際に不要なノイズ成分を取り除くフィルタ回路である。同様に、フィルタ部31Bは、信号源38とキャパシタ29との間から入力される交流信号(交流電圧)に含まれる、Q値を測定する際に不要なノイズ成分を取り除くフィルタ回路である。
【0027】
整流部32A,32Bの各々は、フィルタ部31A,31Bによりノイズが除去された、Q値測定交流信号を直流信号(直流電圧)に変換して出力する。
【0028】
ADC33A,33Bの各々は、整流部32A,32Bから入力されるアナログの直流信号をデジタルの直流信号に変換して、メイン制御部34へ出力する。
【0029】
メイン制御部34は、制御部の一例であり、例えばMPU(Micro-Processing Unit)から構成され受電装置20全体の制御を行う。このメイン制御部34は、演算処理部34Aと判定部34Bとしての機能を備える。
【0030】
演算処理部34Aは、所定の演算処理を行うブロックであり、本例では、ADC33A,33Bから入力される直流信号から電圧V1と電圧V2の比、すなわちQ値を計算し、計算の結果を判定部34Bへ出力する。
【0031】
判定部34Bは、演算処理部34Aから入力される計算の結果を、不揮発性のメモリ35に保存されている閾値と比較して、比較の結果に基づいて金属等の導体やコイルを含む回路が近くにあるか否かを判定する。Q値測定用コイル28つまりは受電コイル21の近傍に何もない又は受電コイル21に何も置かれていない状態でのQ値の閾値(Ref_Q)を予め測定して、メモリ35に保存しておく。
【0032】
通信制御部36は、送電装置10が備える同機能を持つ通信制御部(図示略)との間で通信を行う。例えば、給電前に送電装置10とネゴシエーションのための通信をし、また給電中にメイン制御部34の指示に従い送電装置10へ信号を送出し、送電装置10の信号源11による交流電圧の発生及び停止を制御する。それにより、送電装置10と受電装置20との間で非接触による電力伝送が安全かつ良好に行われる。また、通信制御部36は、Q値測定時における信号源38の交流信号の発生を制御する。なお、通信制御部36を介さず、メイン制御部34から信号源38へ直接指示を出すようにしてもよい。
【0033】
入力部37は、ユーザ操作に応じた入力信号を生成し、メイン制御部34に出力する。
【0034】
なお、本例では、受電装置20にQ値測定回路30を内蔵している構成としているが、送電装置10と受電装置20のどちらに設けてもよく、もしくは両方に設けてもよい。
【0035】
また、本例は、Q値測定回路30を直列共振回路に接続して適用した例を説明したが、共振回路としてその他の共振回路を用いてもよい。図3(a),(b)にそれぞれ例を示す。
図3(a)の例では、キャパシタ29BとQ値測定用コイル28の並列共振回路に対し、キャパシタ29Aを直列に接続して共振回路を構成している。
また、図3(b)の例では、キャパシタ29AとQ値測定用コイル28の直列共振回路に対し、キャパシタ28Bを並列に接続して共振回路を構成している。Q値測定回路30は、図3(a),(b)に示す共振回路に得られる、Q値測定用コイル28及びキャパシタ29B間の電圧V1と、Q値測定用コイル28両端の電圧V2を利用して、Q値を計算する。
以上、説明した直列共振回路及びその他の共振回路は、本開示の電磁結合状態検知方法の原理を説明するために例示したのであり、共振回路の構成をこれらの例に限定するものではない。
【0036】
(給電及びQ値測定の処理)
次に、本開示の第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムの全体制御処理を説明する。
図4は、送電装置10と受電装置20を備えて構成される非接触電力伝送システムの給電時における処理を示すフローチャートである。
まず送電装置10を起動し、受電装置20を送電装置10の近くに置くと、送電装置10の図示しないメイン制御部と受電装置20のメイン制御部34との間でネゴシエーションを行う。送電装置10と受電装置20が相互に認識した後に、送電装置10から受電装置20への給電を開始する(ステップS1)。送電装置10又は受電装置20のメイン制御部は、給電開始に際してQ値測定用コイルのQ値測定を行うが、そのQ値測定の回数が初回であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0037】
一例として、送電装置10又は受電装置20の電源が入った直後であれば、各々の装置のメイン制御部は、初回のQ値測定であると判定する。あるいは、ネゴシエーションの結果、送電装置10は、受電装置20のID情報(識別情報)から当該受電装置20が初めての通信相手であるとき、初回のQ値測定であると判定する。または、送電装置10は、ネゴシエーション時に、受電装置20が計算したQ値測定回数の結果を当該受電装置20から受信し、Q値測定の回数を把握するようにしてもよい。
【0038】
さらに他の例として、前回のQ値測定からの経過時間により判断するようにしてもよい。送電装置10(及び受電装置20)は、図示しない時計部を有し、Q値測定を行ったとき、測定したQ値を測定時刻と対応づけてメモリへ記憶する。そして、前回のQ値測定時刻と今回のQ値測定時刻を比較して、所定値を超える時間差があれば初回のQ値測定であると判断する。Q値測定回数は、例えば周波数スイープを伴うQ値測定を初回とし、これを基準に回数を計算する。なお、前回のQ値測定時に時計部のタイマー機能を起動し、タイマーの経過時間を元に判断するようにしてもよい。
【0039】
そして、初回のQ値測定である場合は、受電装置20のメイン制御部34は、信号源38が出力する測定用のテスト信号(正弦波)に複数の周波数を用い(スイープ測定)、得られた複数のQ値のうち最も大きいQ値を得る(ステップS3)。Q値が最も大きいときのテスト信号の周波数をメモリ35に保存しておく。
【0040】
Q値を測定するためには共振周波数となる正弦波を受電装置20へ入力する必要があるが、受電装置20の部品のばらつきや2次側コイルの周りの環境、金属異物の混入等でも共振周波数は変化する。そのため共振周波数のずれを考慮し、ある程度の適切なレンジ(測定範囲)で異なる複数の周波数を用いて測定(周波数スイープ)することにより、共振周波数を探す必要がある。この周波数スイープに関しては、非接触電力伝送システム全体で考えると、初回のQ値測定では必ず必要であるが、2回目以降は省くことが可能である。
【0041】
一方、ステップS2の判定処理において初回のQ値測定ではない場合、受電装置20は、1回目のQ値測定で求められた周波数のテスト信号を用いてQ値を得る(ステップS4)。
【0042】
送電装置10又は受電装置20は、2次側Q値に基づいて金属異物が存在する可能性があるか否かを判定する(ステップS5)。金属異物が存在する可能性がない場合はステップS7へ進む。
【0043】
一方、ステップS5の判定処理で金属異物が存在する可能性がある場合は、ステップS3へ進み、受電装置20のメイン制御部34は、テスト信号の周波数スイープを行い、複数のQ値のうち最も大きなQ値を得る。
【0044】
ステップS3の処理が終了後、送電装置10又は受電装置20のメイン制御部は、計算により得られた2次側Q値に基づいて金属異物の有無を判定する(ステップS6)。金属異物がある場合は、終了処理ということで給電の強制終了やユーザへの警告を行う。給電の強制処理としては、送電装置10が送電を停止するか、あるいは送電装置10が送電を行ったとしても受電装置20が受電を停止する方法がある。
【0045】
上述したステップS3〜S6におけるQ値測定は、受電装置20が行う場合には送電装置10から受電した電力を利用して行う。他の方法として、キャパシタやバッテリなどの蓄電部に充電された電力を用いてもよい。
【0046】
そして、ステップS6において金属異物がない場合は、受電装置20のメイン制御部34は、図示しないバッテリ等(負荷)が満充電されたか否かを判定する(ステップS7)。満充電された場合は、送電装置10の送電処理を停止又は受電装置20の受電処理を停止することにより充電処理を終了し、満充電されていない場合は、ステップS2へ移行して上記処理を繰り返す。
【0047】
(測定結果)
次に、実際に受電装置20のQ値測定用コイル28の近くに金属物を置いたときの、Q値の測定結果を説明する。
測定は、図5に示すように、台座40に載置した送電装置10と受電装置20を近づけ、間に金属物を挟み、Q値測定回路30を操作して行った。今回の測定では送電コイル15として、図6に示すような、複数の細い銅線を縒りあわせた導線であるリッツ線41(線径φ1.0mm)を巻いた150mm(W1)×190mm(W2)のスパイラルコイルを用いた。またスパイラルコイルの裏面には、厚さ1.0mmのフェライト材の磁性体42が敷いてある。金属物が近くにないときの送電コイル15のL値は、192.0μH、Q値は230.7である。共振させるキャパシタ14のC値は8.2nFである。この場合、送電コイル15を含む直列共振回路の共振周波数は127.0kHzとなる。
【0048】
また、一般に共振回路のQ値はキャパシタのQ値をQc、コイルのQ値をQとすると、1/{(1/Qc)+(1/Q)}の関係で表される。この測定に用いたキャパシタ14のQ値は送電コイル15のQ値に対して十分高く設計されており、直列共振回路のQ値への影響は無視できる。ただし、逆に送電コイル15のQ値をキャパシタ14のQ値に対して十分に高くなるよう設計してもよいし、又はどちらも同程度のQ値であってもよい。
【0049】
また受電コイル21として用いたコイルは、図6に示したものと同様な構造であり、線径φが0.65mmのリッツ線41を用いて巻かれた、コイルサイズ30mm(W1)×50mm(W2)のスパイラルコイルである。このスパイラルコイルの裏面には、磁性体42に替えて、厚さ0.2mmのフェライト材の磁性シートが貼られている。受電装置20が近くにないときの送電コイルのL値は14.0μH、Q値は48.4である。受電コイル21を含む直列共振回路の共振周波数は、127.0kHzである。また、送電コイル15と受電コイル21の電磁結合の度合いである結合係数kは0.10、コイル間効率は0.83である。本例では二次側コイル(受電コイル21)に対して、一次側コイル(送電コイル15)が大きいが、それに限定されるものではなく、例えば同じ大きさであってもよい。
【0050】
ところで、コイル間効率(理論最大値)ηmaxは、下記の式(2)で示されることが知られている。
【数2】

ここで、Sは以下の式で表される。
【数3】

【数4】

【0051】
Qは非接触電力伝送システム全体のQ値、Qは1次側のQ値、Qは2次側のQ値を示す。すなわち磁界共鳴方式において、コイル間効率ηmaxは、1次側コイルと2次側コイルの電磁結合の度合いである結合係数kと、それぞれ無負荷の共振回路のQ値である1次側のQ値(Q)と、2次側のQ値(Q)から理論的に一意に求められる。ゆえに結合係数kが低くても送電側と受電側の双方のQ値が高ければ、高効率での電力伝送が可能である。ただし、本例は、上記の数値例に限られるものではないことは勿論である。
【0052】
さらに、受電コイル21とは別に、図7に示すQ値測定用コイル28には、φ7mm、長さ6mmのフェライトからなるコア28aを有し、その側面に線径φが0.65mmのリッツ線を用いて巻かれたコイルを使用している。送電装置10が近くにないときの受電コイル21のL値は1.0uH、Q値は47.2である。Q値測定用コイル28を含む直列共振回路の共振周波数は、1MHzである。コア28aを有するQ値測定用コイル28の構成は一例であってこれに限るものではない。
【0053】
このQ値測定用コイル28を含む直列共振回路に対し、厚さ1.0mmの鉄(Fe)又はアルミニウム(Al)を近づける。送電コイル15と各金属物の距離はスペーサ等により8mmに固定してある。そして、金属サイズを変えながら受電装置20のQ値測定回路30によりQ値を測定する。
【0054】
図8は、上述の測定において送電コイル15と受電コイル21の間に金属物を挟んだ状態の概略断面を示している。
裏面に磁性体42を敷いた送電コイル15と、裏面に磁性シート52を貼り付けた受電コイル21との間に、Q値測定用コイル28と金属物53とスペーサ54を配置している。
【0055】
金属サイズ角に対するQ値の特性を表したグラフを、図9に示す。この図9に示すグラフは、金属物を挟まないとき(金属サイズ角0mmに相当)のQ値を100%として正規化した変化率で表わしてある。
鉄(Fe)及びアルミニウム(Al)を用いた測定結果から、金属物のサイズが大きくなることで等価的に実効抵抗値が上がったように見え、Q値が劣化することが分かる。すなわち、金属物のサイズが大きくなることは、同じサイズの金属物であれば、より送電コイル15の近くにあることに等しい。判定部34Bは、測定したQ値(もしくはそのQ値の変化率)を、メモリ35に保存してある閾値と比較し、Q値が閾値の範囲内にあるかどうかにより金属物があるか否かを判定する。
【0056】
以上より、Q値の測定結果に基づいて金属物がQ値測定用コイル28の近くにあることを検知することができる。金属材質によって、Q値の劣化量は変化するが、Q値の劣化が大きい金属ほど、発熱しやすい。つまり、Q値は発熱要因と結びついており、検知しなければならない発熱しやすい金属ほど検知しやすくなる。
【0057】
ここで、本実施形態に係る共振回路のQ値を用いて金属異物を検出する方法において、給電用コイル(受電コイル21)とQ値測定用コイル(Q値測定用コイル28)を分けた理由を説明する。
【0058】
まず、給電周波数が同一であって、かつ給電用コイルとQ値測定用コイルを兼ねた場合、大電力の給電信号をフィルタリングすることができない。それにより、例えば信号源38のドライバ出力に大電力がかかるなど、Q値測定回路30を破壊してしまう恐れがある。
また、給電中に相対する送電コイルもしくは受電コイルのQ値を測定しようとすると、負荷に接続された状態の共振回路のQ値を測定することになり、本来測定したい無負荷Q(オープン状態の共振回路のQ値)を測定することができない。
それゆえ、単に共振回路のQ値を用いて金属異物を検出する方法では、給電中に精度よくQ値を測定することが不可能である。
【0059】
また、共振回路のQ値を用いて異物を検出する方法において給電用コイルとQ値測定用コイルを分けない場合、高感度に異物金属を検知するには給電を止めて、無負荷Qが測定できる状態にしてからQ値を測定する必要があった。このため、定期的に受電側への給電を止める必要があり、受電側機器の電源がオフになる、もしくは受電側機器のバッテリからQ値検知回路への給電に切り替える制御が必要となる。したがって、受電側機器の制御フローが複雑になったり、送電側から受電側へ給電をしない時間が発生したりするため、単位時間あたりの給電効率が下がってしまうという問題がある。
【0060】
ここで、図10に、受電側の共振回路のキャパシタのキャパシタンスの値を変化させることによって、共振周波数を変化させたときの送電コイルのQ値測定結果を示す。
測定の際、受電側の負荷には10Ωの抵抗負荷を接続してある。受電コイルを含む共振回路の共振周波数が送電コイルを含む共振回路の共振周波数に近づくにつれて、測定されるQ値の測定値が下がっていることがわかる。結合係数kの値を変えて測定を行っても同様の傾向が見られる。
これは、送電コイルを含む共振回路の共振周波数と受電コイルを含む共振回路の共振周波数が近づくことによって、両者の電磁的結合が強くなり、2次側の負荷の影響が見えやすくなるためである。
【0061】
これを避けるために、給電用コイルとQ値測定用コイルを分け、給電時とQ値測定時の共振周波数を違わせることによって、給電信号をフィルタリングすることが可能となり、かつ無負荷状態に近いQ値を測定することが可能となった。給電中にQ値測定を実施するので、少なくともQ値測定用コイルの周囲に自装置外ではない任意のコイルを含む回路の存在が有ることは認識している。
【0062】
上述のように構成された本実施形態によれば、送電側と受電側との間で給電している最中に、精度のよいQ値測定を行うことができる。
したがって、給電中にQ値測定が行えるので受電側における制御が簡単になる。
また、Q値測定のために給電を停止する必要がなくなるので、時間あたりの給電効率が向上する。
さらに、Q値測定のために給電を停止する必要がないということは給電とQ値測定の同期をとる必要がないということであり、送電側から受電側へ送電開始及び送電停止の信号を送信することが不要となる。
【0063】
なお、本実施形態では、主に給電中にQ値を測定することを説明したが、給電中でなくてもQ値を測定できることは勿論である。また、受電装置20にQ値測定用コイル28を設けてQ値測定及び金属異物の有無の判定をしたが、送電装置10に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0064】
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態の給電用コイルに対してタップを設けた例である。
図11に、本開示の第2の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの概要を示す。
受電装置20Aは、タップ21aが設けられた受電コイル21Aを有する。タップ21aは、キャパシタ29を介してQ値測定回路30のV1測定用の入力端子に接続している。またタップ21aは、V2測定用の入力端子に接続している。
【0065】
受電コイル21Aの接地グラウンド側の端部からタップ21aまでのコイル部分とキャパシタ29から構成される共振回路の共振周波数を給電周波数と変えて、その共振周波数でQ値測定を行う。
【0066】
本実施形態によれば、タップ付きの受電コイルを利用して給電時の共振周波数とQ値測定時の共振周波数を変える構成を採っているので、受電コイルとは別のQ値測定用コイルが不要である。
したがって、第1の実施形態に係る受電装置による作用効果に加え、受電装置の小型化が可能になるという効果がある。
【0067】
なお、本実施形態では、受電装置20Aにタップ21a付きの受電コイル21Aを設けてQ値測定及び金属異物の有無の判定をしたが、送電装置10に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0068】
<3.第3の実施形態>
第3実施形態は、第2の実施形態のように給電用コイルにタップを設けるのではなく、給電用コイルとQ値測定用コイルを共通としたものである。
図12に、本開示の第3の実施形態例に係る非接触電力伝送システムの概要を示す。
受電装置20Bは、給電用コイル(受電コイル21)とQ値測定用コイルを共通とし、給電用の共振回路のキャパシタ22とQ値測定用の共振回路のキャパシタ29を分けている。受電コイル21の接地グラウンドと反対側の端部は、キャパシタ29を介してQ値測定回路30のV1測定用の入力端子に接続している。また受電コイル21の接地グラウンドと反対側の端部はV2測定用の入力端子に接続している。
【0069】
給電用の共振回路のキャパシタ22とQ値測定用の共振回路のキャパシタ29を分けて、各々のキャパシタンスを違う値とすることにより、Q値測定用の共振回路の周波数を給電用の共振回路の給電周波数と変えて、Q値測定が行われる。
【0070】
本実施形態によれば、給電用コイルとQ値測定用コイルを共通とし、かつ給電用の共振回路のキャパシタとQ値測定用の共振回路のキャパシタを別にして、各々のキャパシタンスの値を異ならせ、給電時の共振周波数とQ値測定時の共振周波数を変える構成を採っている。そのため、受電コイルと別にQ値測定用コイルを設ける必要がない。また、第2の実施形態のように、受電コイルのタップも不要である。
以上のことから、第1及び第2の実施形態に係る受電装置による作用効果に加え、受電装置のさらなる小型化が可能になるという効果がある。
【0071】
なお、本実施形態では、受電装置20Bにおいて受電コイルとQ値測定用コイルを共通としてQ値測定及び金属異物の有無の判定をしたが、送電装置10を同様の構成としてもよいし、両方に適用してもよい。
【0072】
<4.その他>
(Q値測定の変形例1)
第1〜第3の実施形態例では、Q値測定回路のQ値演算部は、共振回路のQ値測定用コイルとキャパシタ間の電圧V1、Q値測定用コイル両端の電圧V2からQ値を求めているが、半値幅法によりQ値を求めてもよい。
【0073】
半値幅法では、直列共振回路を構成した場合において、図13のグラフに示すように共振周波数f0でのインピーダンス(Zpeak)の絶対値に対して√2倍のインピーダンスとなる帯域(周波数f1〜f2)より、式(5)で求められる。
【数5】

【0074】
また、並列共振回路を構成した場合では、図14のグラフに示すように共振周波数f0でのインピーダンス(Zpeak)の絶対値に対して1/√2倍のインピーダンスとなる帯域(周波数f1〜f2)より、式(5)で求められる。
【0075】
(Q値測定の変形例2)
また、変形例2では、Q値測定回路30のQ値演算部が、共振回路のインピーダンスの実部成分と虚部成分の比からQ値を計算する。本例では、自動平衡ブリッジ回路及びベクトル比検出器を用いてインピーダンスの実部成分と虚部成分を求める。
【0076】
図15は、変形例2に係る、インピーダンスの実部成分と虚部成分の比からQ値を計算するための自動平衡ブリッジの回路図である。
図15に示す自動平衡ブリッジ回路60は一般によく知られた反転増幅回路と同様の構成である。反転増幅器63の反転入力端子(−)にコイル62を接続し、非反転入力端子(+)をグラウンドに接続する。そして帰還抵抗素子64によって反転増幅器63の出力端子より反転入力端子(−)に負帰還をかける。また、コイル62に交流信号を入力する交流電源61の出力(電圧V1)と、反転増幅器63の出力(電圧V2)をベクトル比検出器65に入力する。コイル62は、図1に示したQ値測定用コイル28に対応する。
【0077】
この自動平衡ブリッジ回路60は、負帰還の作用によって常に反転入力端子(−)の電圧がゼロになるように動作する。また、交流電源61にからコイル62に流れた電流は、反転増幅器63の入力インピーダンスが大きいことから、ほぼ全てが帰還抵抗素子64に流れ込む。その結果、コイル62にかかる電圧は交流電源61の電圧V1と同じになると共に、反転増幅器63の出力電圧はコイル62を流れる電流Iと帰還抵抗値Rsの積になる。この帰還抵抗値Rsは、既知のリファレンス抵抗値である。したがって、電圧V1と電圧V2を検出してその比をとればインピーダンスが求まる。ベクトル比検出器65は、電圧V1と電圧V2を複素数として求めるため、交流電源61の位相情報(一点鎖線)を利用する。
【0078】
本例では、このような自動平衡ブリッジ回路60及びベクトル比検出器65などを用いて共振回路のインピーダンスZの実部成分R、虚部成分Xを求め、その比からQ値を求める。下記の式(6)及び式(7)は、Q値を求める過程を表した計算式である。
【数6】

【数7】

【0079】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
外部と電磁的に結合するコイルと、
前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、非接触で給電される交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
検知装置。
(2)
前記検知部は、前記回路のQ値を測定して前記コイルと外部との電磁結合状態を検知する
前記(1)に記載の検知装置。
(3)
非接触の給電に用いられる給電用コイル、を有し、
前記Q値の測定に用いられる前記コイルが、前記給電用コイルと別である
前記(2)に記載の検知装置。
(4)
外部と電磁結合している状態とは、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルを含む回路の存在の有無のことである
前記(1)〜(3)に記載の検知装置。
(5)
前記検知部は、
前記コイルとキャパシタを含む共振回路の該コイルと該キャパシタ間にかかる第1電圧と、前記コイルの両端にかかる第2電圧を取得し、第1電圧と第2電圧の比からQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
前記(1)〜(4)に記載の検知装置。
(6)
前記コイルとキャパシタを含む直列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して√2倍となる帯域からQ値を求める半値幅法を用いてQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
前記(1)〜(4)に記載の検知装置。
(7)
前記コイルとキャパシタを含む並列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して1/√2倍となる帯域からQ値を求める半値幅法を用いてQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
前記(1)〜(4)に記載の検知装置。
(8)
自動平衡ブリッジ回路及びベクトル比検出器を用いて前記共振回路のインピーダンスの実部成分及び虚部成分を求め、その比からQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
前記(1)〜(4)に記載の検知装置。
(9)
非接触の給電に用いられる、タップ付きの給電用コイル、を有し、
前記Q値の測定に用いられる前記コイルは、前記タップによって分割された前記給電用コイルの一部である
前記(2)に記載の検知装置。
(10)
非接触の給電に用いられる給電用コイルと前記Q値の測定に用いられる前記コイルが共通であり、
給電用の回路に含まれるキャパシタのキャパシタンスとQ値測定用の回路に含まれるキャパシタのキャパシタンスが異なる
前記(2)に記載の検知装置。
(11)
前記検知部は、給電が行われているときに前記コイルを含む回路のQ値を測定する
前記(1)〜(10)に記載の検知装置。
(12)
外部から受電するのに用いられる受電コイルと、
前記受電コイルを介して交流信号を受電する受電部と、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記受電部が受電する交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
受電装置。
(13)
非接触の送電に用いられる送電コイルと、
前記送電コイルに交流信号を供給する送電部と、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記送電部から供給される交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
送電装置。
(14)
電力を無線により送電する送電装置と、該送電装置からの電力を受電する受電装置を含んで構成され、
前記送電装置又は前記受電装置の少なくとも一方は、
非接触の給電に用いられる給電用コイルと、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
非接触電力伝送システム。
(15)
外部と電磁的に結合するコイルを含む回路と接続された検知部によって、前記回路のQ値を、給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する
検知方法。
【0080】
上述した一実施の形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0081】
また、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0082】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0083】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0084】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0085】
以上、本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
すなわち、上述した各実施形態の例は、本開示の好適な具体例であるため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本開示の技術範囲は、各説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる使用材料とその使用量、処理時間、処理順序および各パラメータの数値的条件等は好適例に過ぎず、また説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【符号の説明】
【0086】
10…受電装置、14…キャパシタ、15…送電コイル、20,20A,20B…送電装置、21,21A…受電コイル、21a…タップ、22…キャパシタ、28…Q値測定用コイル、29…キャパシタ、30…Q値測定回路、32A,32B…整流部、33…アナログ−デジタル変換器(ADC)、34…メイン制御部、34A…演算処理部、34B…判定部、35…メモリ、36…通信制御部、38…信号源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と電磁的に結合するコイルと、
前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、非接触で給電される交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記回路のQ値を測定して前記コイルと外部との電磁結合状態を検知する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
非接触の給電に用いられる給電用コイル、を有し、
前記Q値の測定に用いられる前記コイルが、前記給電用コイルと別である
請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
外部と電磁結合している状態とは、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルを含む回路の存在の有無のことである
請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記コイルとキャパシタを含む共振回路の該コイルと該キャパシタ間にかかる第1電圧と、前記コイルの両端にかかる第2電圧を取得し、第1電圧と第2電圧の比からQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
請求項4に記載の検知装置。
【請求項6】
前記コイルとキャパシタを含む直列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して√2倍となる帯域からQ値を求める半値幅法を用いてQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
請求項4に記載の検知装置。
【請求項7】
前記コイルとキャパシタを含む並列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して1/√2倍となる帯域からQ値を求める半値幅法を用いてQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
請求項4に記載の検知装置。
【請求項8】
自動平衡ブリッジ回路及びベクトル比検出器を用いて前記共振回路のインピーダンスの実部成分及び虚部成分を求め、その比からQ値を計算する演算処理部と、
前記演算処理部により求めたQ値を、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルが存在しないときに予め測定したQ値に基づいて設定した閾値と比較することにより、前記外部と電磁結合している状態を判断する判定部と、を備える
請求項4に記載の検知装置。
【請求項9】
非接触の給電に用いられる、タップ付きの給電用コイル、を有し、
前記Q値の測定に用いられる前記コイルは、前記タップによって分割された前記給電用コイルの一部である
請求項2に記載の検知装置。
【請求項10】
非接触の給電に用いられる給電用コイルと前記Q値の測定に用いられる前記コイルが共通であり、
給電用の回路に含まれるキャパシタのキャパシタンスとQ値測定用の回路に含まれるキャパシタのキャパシタンスが異なる
請求項2に記載の検知装置。
【請求項11】
前記検知部は、給電が行われているときに前記コイルを含む回路のQ値を測定する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項12】
外部から受電するのに用いられる受電コイルと、
前記受電コイルを介して交流信号を受電する受電部と、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記受電部が受電する交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
受電装置。
【請求項13】
非接触の送電に用いられる送電コイルと、
前記送電コイルに交流信号を供給する送電部と、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記送電部から供給される交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
送電装置。
【請求項14】
電力を無線により送電する送電装置と、該送電装置からの電力を受電する受電装置を含んで構成され、
前記送電装置又は前記受電装置の少なくとも一方は、
非接触の給電に用いられる給電用コイルと、
外部と電磁的に結合するコイルと、
少なくとも前記コイルを含む回路と接続され、前記回路のQ値を、前記給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する検知部と、を備える
非接触電力伝送システム。
【請求項15】
外部と電磁的に結合するコイルを含む回路と接続された検知部によって、前記回路のQ値を、給電用コイルに流れる交流信号の周波数とは異なる周波数の交流信号を用いて測定する
検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27171(P2013−27171A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160186(P2011−160186)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】