説明

検知装置に対する補完信号発射装置及び検知装置に対する安全システム

【課題】 間欠的な信号の発射と停止とを周期的に繰り返す検知装置に対して、植込み型医療装置における非線形特性に起因した低周波信号の影響を防止することのできる、検知装置に対する補完信号発射装置を提供する。
【解決手段】 補完信号の周波数が、補完信号が発射される前の検知装置から発射された電磁波の周波数と同一の周波数から、その補完信号が発射された後に検知装置から発射される電磁波の周波数と同一の周波数まで、連続的に変化されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に植え込まれ、前記生体より発せられる電気信号を検出する機能を有する植込み型医療機器に対して、間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置(以下、単に検装置とも表記する。)から発射される電磁波が影響しないようにした、検知装置に対する補完信号発射装置及び検知装置に対する安全システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、植え込み型医療装置の普及は急速なものがあり、徐脈性不整脈の治療機器としては、植込み型心臓ペースメーカが、また、心室粗動・細動等の致死的心疾患の治療機器としては、植込み型除細動器が、広く用いられている。これらの植込み型医療装置における大部分の機種では、植込み型医療装置を作動させる信号として、植込み型医療装置が植込まれた患者自身の心臓から発せられる心電位が利用されている。
【0003】
この心電位は、心筋細胞の興奮によって発生する膜電位変化に由来するものであって、患者の自発心拍が生じたときに発せられる電気信号として取り出すことができる。植込み型医療装置では、電極を有するカテーテルを心臓の所望の部位に挿入しておき、挿入した部位における心電位を検出する構成となっている。
【0004】
そして、検出した心電位である電気信号は、植込み型医療装置の装置本体内に内蔵されている制御手段等に入力される。植込み型医療装置では、入力された電気信号によって異常状態の発生が判断されると、異常状態を回避するための電気信号が前記カテーテルに対して出力され、異常状態を回避する処置がとられる。
【0005】
心臓の所望の部位に導入した電極から検出される心電位のレベルとしては、0.2mVから10mV以下の電位を検出することになり、その動作周波数としては高々数kHz程度までとなっている。
そして、0.2mVから10mV以下の低い電位を検出できるようにするため、植込み型医療装置においては高い検出感度が要求されている。このため、電磁波による外来ノイズ(Electro Magnetic Interference: EMI)による誤動が受け易い構成となっている。
【0006】
特に、植込み型医療装置が植込まれた患者のまわりには、様々な電磁波発生源が存在しており、これらの電磁波発生源から発生した電磁波が、植込み型医療装置に対して悪影響を与えてしまう危険性がある。例えば、携帯電話、警備システム、RFID機器、電子商品監視機器、電磁調理器といった電磁波を発生する機器が、植込み型医療装置を装着した患者周辺に数多く存在している。
【0007】
現実においても、外来ノイズを自発心拍と誤認識した植込み型心臓ペースメーカが、誤認識した判断に基づいて心筋に対しての刺激を与えてしまった障害例などが発生している。また、植込み型心臓ペースメーカを装着した女性が、図書館出入り口に設置されていた電子商品監視機器の中で立ち止まった際に、電子商品監視機器から発射されていた電磁波が植込み型心臓ペースメーカに影響を与えていた障害例が報告されている。
【0008】
更には、外来ノイズを患者自身の心臓で発生した頻脈と誤認識した植込み型除細動器が、除細動パルスを発生させてしまうといった生命に対して深刻な危険を伴う障害例も発生している。
【0009】
このように、植込み型医療装置においては、電磁波による外来ノイズ(EMI)による誤動作は、装着している患者に予期せぬ健康被害をもたらす恐れがあり、患者自身の不安を取り除くうえからも根本的なEMI対策が求められている。
【0010】
EMI対策としては、電磁波による外来ノイズを衣服によって防護しようとする発明や、電磁波による外来ノイズを検出したときに、電磁波の発生源に対して防護信号を送信して、発生源からの送信信号のレベルを抑制したり、送信信号を停止させたりする発明が提案されている。また、電磁波による外来ノイズの影響を受け易い植込み型医療装置のコネクタ部を改良した発明も提案されている。
【0011】
外来ノイズを衣服によって防護しようとする発明としては、特開2004−277964号公報(特許文献1)に記載されたような電磁波をシールドする織布の発明、特開2001−131811号公報(特許文献2)に記載されたような電磁波シールド衣服の発明等が提案されている。
【0012】
また、特開2005−42223号公報(特許文献3)に記載されたような、電磁波に共振して高周波電流を発生する受信アンテナを、電磁波によって悪影響を受ける恐れのある部位を覆うようにして衣服の一部に設けるとともに、前記受信アンテナで発生した高周波電流を受信アンテナから離れた位置で電磁波として放散させる放散用アンテナを同じ衣服に設けた電磁波防護衣服の発明なども提案されている。
【0013】
電磁波の発生源に対して防護信号を送信して発生源を制御する発明としては、特開2004−297204号公報(特許文献4)に記載されたような、植込み型医療装置に設けられた電磁波障害通知器が、他の機器から発せられた電磁波を感知したときに、同電磁波を発している機器に対して電磁波の発生を中止又は抑制する要求信号を送信する発明等が提案されている。
【0014】
また、特開2002−300656号公報(特許文献5)に記載されたように、携帯できる動作制御装置から動作制限信号を送信しておき、動作制御装置の周囲に動作制限領域を設けておく。そして、移動体通信端末が動作制限領域内にある間は、移動体通信端末から電磁波送信が行われないようにした発明も提案されている。
【0015】
植込み型医療装置のコネクタ部を改良した発明としては、特開2002−263201号公報(特許文献6)に記載されたような、植込み型医療装置のケースに取り付けられた貫通端子部において、導線部とケースの間に容量値が5000〜50000pFのコンデンサを配置した発明が提案されている。コンデンサを設けることによって、信号線に重畳した有害雑音を効果的に減少させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−277964号公報
【特許文献2】特開2001−131811号公報
【特許文献3】特開2005−42223号公報
【特許文献4】特開2004−297204号公報
【特許文献5】特開2002−300656号公報
【特許文献6】特開2002−263201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1〜3に示すような外来ノイズを衣服によって防護しようとする発明においては、衣服の網目等の隙間から外来ノイズが入り込んだりして、外来ノイズを完全に防護しておくことはできなかった。外来ノイズを完全に防護できる衣服に構成した場合には、衣服が重くなってしまい、着用に適さないものになってしまう。
【0018】
また、人体は導電体でもあるので、衣服によって覆われていない首等の露出している部位から外来ノイズを拾ってしまうことがある。この場合には、拾った外来ノイズが皮膚等を伝わって植込み型医療装置に影響を与えてしまう危険性が生じる。
【0019】
特許文献4、5に示すような電磁波の発生源に対して防護信号を送信して発生源を制御する発明では、発生源から発せられる信号を抑えたり中止させたりしてしまうことになる。このため、RFID機器、電子商品監視機器等が電磁波の発信源であると、一時的にせよRFID機器、電子商品監視機器等を作業不能状態にしてしまう。
【0020】
また、特許文献6に示すような植込み型医療装置のコネクタ部を改良した発明では、設置したコンデンサで減衰させることのできる外来ノイズであれば、問題は生じない。しかし、設置したコンデンサで減衰させることのできない周波数の外来ノイズ等が発生しているときには、コンデンサで減衰させることができなくなってしまう。
【0021】
想定される全ての周波数の外来ノイズに対応できるようにコンデンサを構成しようとすると、異なる容量のコンデンサを数多く設けなければならなくなる。しかしながら、数多くのコンデンサを設置するには大きな設置スペースを必要とし、このような設置スペースを植込み型医療装置に確保することは難しいものとなっている。
【0022】
ところで、RFID機器、電子商品監視機器等の発信源から発生する電磁波の周波数は、数百kHz〜数GHzであるのに対して、植込み型医療装置の動作周波数は数kHz程度である。このため、電子商品監視機器等で用いられる電磁波の周波数としては、植込み型医療装置の動作周波数に対して2桁〜6桁以上高い周波数が用いられている。
【0023】
このような周波数信号が、RFID機器、電子商品監視機器等で用いられていても、基本的には植込み型医療装置が感知できない周波数となっている。しかし、高い周波数の信号であっても、それが間欠的な信号の発射と停止とを繰り返して行われていると、植込み型医療装置の内部回路における非線形応答による包絡線検波によって、植込み型医療装置が感知できる周波数の雑音として検出してしまうことになる。
【0024】
即ち、図1(a)に示すような間欠的な信号の発射と停止とを周期的に繰り返している高周波信号が、植込み型医療装置における非線形特性を有する回路素子に入力されると、信号発射時と停止期間との電磁波のレベル差が、回路素子における非線形特性によって検波されてしまい、図1(b)に示すような低周波数帯の包絡線成分をもった信号が出現することになる。
【0025】
そして、この包絡線成分による信号が、植込み型医療装置における心電位検出回路におけるフィルタ通過帯域内の周波数になると、包絡線成分が増幅されて出力されることになり、植込み型医療装置に悪影響を与えてしまうことになる。
【0026】
しかしながら、間欠的な信号の発射と停止とを周期的に繰り返して、高周波信号を発射するRFID機器、電子商品監視機器等の検知装置に対して、植込み型医療装置における非線形特性に起因した低周波信号の影響を防止できる防止装置、防止方法に関して、有効な発明等は提案されていなかった。
【0027】
本願発明では、上述したような、間欠的な信号の発射と停止とを周期的に繰り返す検知装置に対して、植込み型医療装置における非線形特性に起因した低周波信号の影響を防止することのできる、検知装置に対する補完信号発射装置及び検知装置に対する安全システムを提供することにある。
ここで、RFID機器の信号周波数は各国の電波法により決められており、例えば日本国内では952〜954MHz内の一定周波数を用いるけれども、欧米のように900〜926MHz内でランダムに変更されるもの、860MHz近傍でランダムに変更されるもの等があり、これらに対応して補完信号周波数を変更する必要が生ずる場合もある。
本願発明は、この場合にも対応できる検知装置に対する補完信号発射装置及び検知装置に対する安全システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本願発明の課題は請求項1〜12に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明は、間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波が、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器等の植込み型医療機器に対して影響しないようにする検知装置に対する補完信号発射装置であって、
前記検知装置が、間欠的に信号の発射と停止とを行い、前記信号の発射期間内に同信号を受信した他の装置からの応答信号を受信してなり、前記補完信号発射装置が、前記検知装置からの信号の停止期間中に、前記停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波を、少なくとも前記植込み型医療機器の周辺領域に向けて発射してなることを最も主要な特徴となしている。
【0029】
また、本願発明の前記間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波は、常時一定の周波数であるか、又はその発射時毎の周波数がランダムに変化するものであることを特徴とする。
そして、前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号波の振幅が、前記検知装置から発射される電磁波の振幅に対して約0.5倍から約1.5倍の大きさであることを特徴としている。
【0030】
更に、本願発明の前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号波の周波数と、前記検知装置から発射される電磁波の周波数とは、異なる周波数であることを特徴とするものも含まれる。
また、本願発明の前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号の周波数が、その補完信号が発射される前の前記検知装置から発射された電磁波の周波数と同一の周波数から、その補完信号が発射された後に前記検知装置から発射される電磁波の周波数と同一の周波数まで、連続的に変化されることを特徴とするものも含まれる。
【0031】
更にまた、本願発明の前記連続的に変化される補完信号の周波数変化は、直線的変化であるもの及び曲線的変化であるものも特徴とする。
【0032】
更に、本願発明の前記補完信号発射装置が、前記検知装置内に組み込まれてなるもの及び前記検知装置とは別体に構成されてなるものを特徴としている。
【0033】
そして、本願発明は、間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波が、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器等の植込み型医療機器に対して影響しないようにする検知装置に対する安全システムであって、
前記検知装置から信号の発射が停止している停止期間に、前記停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波を、少なくとも前記植込み型医療機器の周辺領域に向けて発射してなることを特徴とする検知装置に対する安全システムであるとともに、前記植込み型医療機器の装着者が、前記検知装置に接近したことを検出したときに、前記補完信号波が発射されてなることを特徴とするものも含まれる。
【発明の効果】
【0034】
本願発明に係わる補完信号発射装置及び安全システムでは、間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波に対して、検知装置から電磁波の発射が停止している停止期間に、前記停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波を、少なくとも植込み型医療機器の周辺領域に向けて発射している。補完信号波としては、電磁波を用いることもパルス波を用いることもできる。
【0035】
このように構成した本願発明によって、植込み型医療装置に非線形特性を有する回路素子が存在していたとしても、検知装置から発射される電磁波と同電磁波の停止期間における時間的な隙間を埋めるために発射した補完信号波とが重ね合わさって、新たな合成波形を形成することができる。この新たな合成波形においては、低周波数帯の包絡線成分をもった信号が消滅されている。
【0036】
従って、非線形特性を有する回路素子で上記合成波形を検波しても、低周波数帯の包絡線成分をもった信号が、非線形特性を有する回路素子から出現することはない。また、前記回路素子によって低周波数帯の包絡線成分をもった信号が検波されたとしても、低周波数帯の包絡線成分を低減させておくことができる。
【0037】
このように、検知装置から発射される電磁波による電磁干渉発生の阻止、緩和を図ることができるようになるので、検知装置から発射される電磁波によって植込み型医療装置が誤動作してしまうのを防止できる。
【0038】
停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波としては、前記停止期間を完全に埋めてしまう補完信号波を用いることができる。また、補完信号波と前記停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔となるものであれば、停止期間を完全に埋めてしまわない補完信号波を用いることもできる。
【0039】
補完信号波と前記停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔であれば、低周波数帯の包絡線成分による影響を緩和しておく効果がある。即ち、補完信号波と前記停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔となる補完信号波を用いていれば、停止期間に発射される補完信号波形によって包絡線の形状を変化させ、変化した包絡線によって生じる周波数としては1kHz以上になる。従って、この周波数では、植込み型医療装置に影響を与えることがない。
【0040】
また、例えば、検知装置として使用されるものが、RFID機器における誘導結合方式、電磁誘導方式、又は電波方式のパッシブ型リーダライタアンテナであったとしても、リーダライタアンテナとタグとの間における送受信は、いずれも負荷変調方式あるいは変調バックスキャッタ方式により通信を行う構成となっている。このため、リーダライタアンテナとタグとの間における全ての送受信は、一つのバースト信号内で完結する。
【0041】
このため、リーダライタアンテナからの送信停止期間に、補完信号波が発射されたとしても、リーダライタアンテナとタグとの間における通信には問題を生じない。また、複数のリーダライタアンテナを同一周波数で使う場合には、リーダライタアンテナからの送信停止期間は、共用化のためのキャリアセンス(送信を開始する前に送信する周波数が空いているか否かの確認。)等に用いられている。
【0042】
更に、RFIDバースト信号内におけるASK変調(振幅に情報を持たせた変調)等では、通常数10kHz以上の周波数で変調されるため、RFIDバースト信号内において包絡線に変化が生じたとしても、この変化によって植込み型医療装置に対しての影響を及ぼすことはない。
【0043】
本願発明では、検知装置から発射される電磁波の停止期間に、補完信号発射装置から発射される補完信号波の振幅としては、検知装置から発射される電磁波の振幅に対して約0.5倍から約1.5倍の大きさにすることができる。
【0044】
補完信号波の振幅と検知装置から発射される電磁波の振幅とを上述したような大きさの関係にしておくことにより、非線形特性に起因する低周波数帯の包絡線成分が出現するのを低減、あるいは消滅させることができる。特に、補完信号波の振幅が検知装置から発射される電磁波の振幅と同一の振幅となるように構成しておくことにより、包絡線成分を消滅させることができる。
【0045】
また、補完信号波の振幅と検知装置から発射される電磁波の振幅とを上述した関係にしておくことにより、低周波数帯の包絡線成分が、植込み型医療装置に対して影響を及ぼさないようにすることができる。
【0046】
本願発明では、補完信号波の周波数と検知装置から発射される電磁波の周波数とが、異なる周波数となるようにしておくことができる。
このとき、両周波数間における周波数の差としては、10MHz程度の範囲内に収まるように構成しておくことが望ましい。このように構成しておくことにより、低周波数帯の包絡線成分が、植込み型医療装置に対して影響を及ぼさないようにすることができる。
【0047】
本願発明では、検知装置から発射される電磁波の停止期間に、補完信号波を発射する補完信号発射装置を、検知装置内に組み込んだ構成としておくことも、検知装置とは別体にて構成しておくこともできる。
補完信号発射装置を、検知装置内に組み込んだ構成としておくことにより、予め検知装置から発射される電磁波の周波数、振幅に対応した補完信号波が発射されるように、補完信号発射装置を構成しておくことができる。
また、補完信号発射装置を検知装置とは別体にて構成しておく場合には、検知装置から離れた所望の場所に補完信号発射装置を設置しておくことができる。また、携帯式の補完信号発射装置として構成したときには、植込み型医療装置の装着者が補完信号発射装置を常に携帯することができる。
【0048】
補完信号発射装置を検知装置内に設けた場合や、検知装置から離れた所望の場所に設けた場合には、対応する検知装置から発射される電磁波の周波数、振幅、電磁波発射の周期に対応した補完信号波が発射されるように、補完信号発射装置を構成しておくことができる。また、携帯式の補完信号発射装置として構成した場合には、植込み型医療装置の装着者が常に保持することができるといった利便性が生じる。
【0049】
しかし、携帯式の補完信号発射装置では、植込み型医療装置の装着者が通過する所に配されている検知装置から、どのような周波数、振幅の電磁波が発射されるのか分らない。そのため、検知装置から発射されている電磁波が、どのような周波数、振幅で、しかもどのような周期で発射と停止とが繰り返されているのを検出する検出回路等を、携帯式の補完信号発射装置に備えさせておくことができる。
【0050】
例えば、検知装置における送信回路と補完信号発射装置における補完信号波発射回路とを直接接続して、検知装置から発射される電磁波の振幅、周波数、発射間隔を検知することができる。あるいは、検知装置からの電磁波発射をキャリアセンスして、補完信号発射装置から発射する補完信号波の振幅、周波数、発射のタイミングを検知することもできる。
【0051】
そして、植込み型医療装置の装着者が通過する所に配されている検知装置に対応した補完信号波を、携帯式の補完信号発射装置から発射することができるように構成しておくことができる。
【0052】
本願発明では、間欠的な信号の発射と停止とを周期的に繰り返す検知装置において、前記検知装置から間欠的に発射される信号周波数が、毎回相違する周波数である検知装置に対しても、有効に植込み型医療装置における非線形特性に起因する低周波信号を影響を防止することができる。
【0053】
上記検知装置から間欠的に発射される信号周波数がランダムに変化すると、変化する前後の信号周波数に対応して上記補完信号周波数をも変化させることによって、上記植込み型医療装置における非線形特性に起因する低周波信号の影響を防止できる。
この場合に、上記補完信号周波数の変化は、直線的でも曲線的でも可能であり、少なくとも補完信号周波数は、その補完信号の発射前の検知装置からの信号周波数と略等しい周波数から、その補完信号の発射終了後に発射される検知装置からの信号周波数と略等しい周波数まで、直線的又は曲線的に連続して変化する周波数であれば良い。
【0054】
本願発明では、植込み型医療機器の装着者が、検知装置に接近したことを検出したときに、補完信号波が発射されるように構成しておくことができる。
植込み型医療機器の装着者が通る通路に、装着者の通過、接近を検知する装置を設けておくことによって、装着者が検知装置に接近したことを検出することができる。この装着者の通過を検知する装置としては、監視カメラからの画像や赤外線センサ、通路上に配した重量センサ等を用いることができる。
【0055】
また、携帯式の補完信号発射装置に設けた検出回路等が、検知装置からの電磁波を検出したときには、補完信号発射装置に設けた制御装置等によって、検知装置に装着者が接近したことを判断することもできる。
このようにして検知装置に装着者が接近したことが検知されると、検知装置から間欠的に発射されている電磁波に対して、補完信号波を発射することができる。従って、植込み型医療機器における回路素子の非線形特性に起因する低周波数帯の包絡線成分が、出現して植込み型医療機器に悪影響を与えてしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】検知装置から発射された電磁波信号(周波数一定)を示す図である。
【図2】検知装置から発射された電磁波と補完信号発射装置から発射された補完信号波との関係を示す図である。
【図3】振幅が同じ場合での、検知装置から発射された電磁波と補完信号発射装置から発射された補完信号波との関係を示す図である。
【図4】振幅が異なる場合での、検知装置から発射された電磁波と補完信号発射装置から発射された補完信号波の関係を示す図である。
【図5】補完信号発射装置を検知装置内に配した場合における、検知装置から発射される信号を示した図である。
【図6】補完信号発射装置を検知装置とは別体に配した場合における各装置から発射される信号を示した図である。
【図7】試験装置の概略構成を示した図である。
【図8】電磁波を発射する回路構成の概略図である。
【図9】実験結果を示した図である。
【図10】検知装置から発射された電磁波信号(周波数がランダムに変化)を示す図である。
【図11】検知装置から発射された電磁波と補完信号発射装置から発射された補完信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の好適な実施の形態について、添付の図1〜図11に基づいて具体的に説明する。本願発明の補完信号発射装置の構成としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0058】
先ず、RFIDリーダライタ信号周波数が変化しない場合の実施例について説明する。
図1(a)は、間欠的に高周波信号を発射するRFID機器、電子商品監視機器等の検知装置から発射された電磁波信号を示す図である。図1(b)は、図1(a)で示した電磁波信号を植込み型医療機器における回路素子の非線形特性に起因して検波した低周波数帯の包絡線を示す図である。
尚、図1(a)、(b)を用いた以下における説明では、発明が解決しようとする課題の欄において、引用した図1(a)、(b)を用いた説明と重複している説明がある。
【0059】
電磁誘導方式RFIDリーダライタアンテナのコイル近傍磁界も含めて、RFID機器、電子商品監視機器等の検知装置から発せられる電磁波の周波数は、植込み型心臓ペースメーカ、植込み型除細動器等の植込み型医療装置における動作周波数である数kHz程度の周波数に比較して、数百kHz〜数GHz程度の周波数となっている。
【0060】
このように、植込み型医療装置の動作周波数に比べて、2桁〜6桁以上高い周波数の電磁波が、RFID機器等の検知装置から発射されているので、検知装置から発射された電磁波の周波数を基本的には直接、植込み型医療装置で感知することはない。そして、検知装置から発射された電磁波が直接的に、植込み型医療装置に対して悪影響を与えてしまうことはない。
【0061】
しかし、検知装置から発射された電磁波が高い周波数の信号であったとしても、その信号が周期的に発射と停止とを繰り返している信号であるときには、植込み型医療装置における内部回路の非線形応答によって、高い周波数の信号から心臓ペースメーカの感知周波数範囲となった外来ノイズが検波されてしまう。
【0062】
即ち、検知装置から発射された電磁波の発射時と停止期間とにおける電磁波のレベル差が、植込み型医療装置に設けられている回路素子の非線形特性によって、図1(b)に示すような低周波数帯の包絡線成分をもった信号として検波されてしまうことになる。この検波された包絡線成分による波形が、植込み型医療装置の心電位検出回路でのフィルタ通過帯域内を通過する周波数であると、検波された包絡線成分による波形が増幅されてしまう。そして、増幅された包絡線成分による波形を、植込み型医療装置を装着している患者自身から検出した自発心拍として、誤認識してしまう危険性が生じてしまう。
【0063】
本願発明では、検知装置から発射された電磁波の停止期間を埋める補完信号波を発射させることができ、補完信号波としては、図2(a)の下方に図示したような補完信号波とすることができる。補完信号波としては、電磁波を用いることも、パルス波を用いることもできる。
【0064】
即ち、図2(a)の上方に図示した検知装置から発射された電磁波が停止している停止期間中、図2(a)の下方に図示したような補完信号波を発射することによって、少なくとも患者の植込み型医療機器の周辺領域では、図2(b)で示したような合成波形の電波状態にしておくことができる。
【0065】
合成波形としては、補完信号波の振幅と検知装置から発射された電磁波の振幅とが、同じ振幅のときには、図3(a)のようになり、非線形特性を有する回路素子で検波されたとしても、図3(b)で示すように低周波帯の包絡線成分は出現しない。
また、合成波形としては、補完信号波の振幅と検知装置から発射された電磁波の振幅とが、異なる振幅のときには、図4(a)のようになる。そして、この合成波形が、非線形特性を有する回路素子で検波されたとしても、図4(b)で示すように低周波帯の包絡線成分が低減した状態となる。
【0066】
このように、検知装置から発射された電磁波の停止期間を埋める補完信号波を発射させることによって、図4(b)で示すように低周波帯の包絡線成分の低減又は消滅を行わせることができるようになり、電磁干渉発生の阻止、緩和を行うことが可能となる。
【0067】
図1又は図2(a)に示したような検知装置から発射される電磁波は、電磁波の送信停止期間を挟んで断続的に検知装置から発射されている。例えば、検知装置をRFID機器とした場合には、リーダライタアンテナから発射される電磁波によるバースト信号を発射している期間とバースト信号の送信停止期間の時間は、それぞれ数10〜数百msである。
【0068】
このため、補完信号波によって送信停止期間を完全に埋めておく場合だけでなく、補完信号波によって送信停止期間が完全に埋められていない場合でも、補完信号波と前記停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔であれば、低周波数帯の包絡線成分による影響を緩和させておく効果が生じる。
【0069】
即ち、補完信号波とバースト信号の停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔となる補完信号波を用いておくことで、停止期間に発射される補完信号波形によって包絡線の形状を変化さることができる。そしてこのとき、変化した包絡線によって生じる周波数としては、1kHz以上になっている。従って、補完信号波とバースト信号の停止期間との間の隙間が数ms以下の間隔となる補完信号波であれば、植込み型医療装置に影響を与えることは防止できる。
【0070】
また、例えば、検知装置としてRFID機器を用いた場合でも、RFID機器のリーダライタアンテナと外部タグとの間における送受信は、いずれも負荷変調方式あるいは変調バックスキャッタ方式により通信を行う構成となっている。このため、リーダライタアンテナと外部タグとの間における全ての送受信は、一つのバースト信号内で完結している。
【0071】
このため、リーダライタアンテナからのバースト信号の送信を停止している期間に、補完信号波が発射されたとしても、リーダライタアンテナと外部タグとの間における通信には問題が生じない。また、複数のリーダライタアンテナを同一周波数で使う場合には、リーダライタアンテナからの送信停止期間は、共用化のためのキャリアセンス等に用いられているので、リーダライタアンテナと外部タグとの間における通信には問題が生じない。
【0072】
更に、RFID機器におけるバースト信号内でのASK変調等においては、通常数10kHz以上の周波数帯で変調される構成になっているので、バースト信号を発射している期間内での包絡線に変化が生じたとしても、この変化によって植込み型医療装置に対して影響を及ぼすことはない。
【0073】
バースト信号の停止期間に発射する補完信号波の周波数としては、RFID機器から発射された電磁波のキャリア周波数と同じ周波数としておくことも、前記電磁波のキャリア周波数に対して最大で10MHz程度の差を持った異なる周波数としておくこともできる。
【0074】
補完信号波を発射する補完信号発射装置を検知装置内に配置した場合に、検知装置から発射される電磁波の出力状態は、図6に示すような波形となる。そして、この電磁波が、植込み型医療装置における内部回路の非線形応答によって検波されたとしても、図3(b)で示すような低周波数帯の包絡成分が消滅した状態となる。
【0075】
補完信号波を発射する補完信号発射装置を検知装置とは別体に構成した場合に、検知装置及び補完信号発射装置からそれぞれ発射される電磁波の出力状態は、図6に示すような波形となる。そして、補完信号発射装置からは、検知装置から発射された電磁波の停止期間を埋める補完信号波が発射されることになる。
【0076】
補完信号発射装置から発射された補完信号波の振幅が、検知装置から発射された電磁波の振幅と同じ振幅であるときには、検知装置から発射された電磁波と補完信号発射装置から発射された補完信号波との合成波形としては、図3(a)に示すような波形となる。補完信号発射装置から発射された補完信号波の振幅と、検知装置から発射された電磁波の振幅とが異なるときには、図4(a)に示すような波形となる。このとき、補完信号発射装置から発射する補完信号波の振幅としては、検知装置から発射された電磁波の振幅に対して約0.5倍〜約1.5倍の振幅としておくことが望ましい。
【0077】
補完信号波の振幅と検知装置から発射される電磁波の振幅とをこのような大きさの関係にしておくことにより、非線形特性に起因する低周波数帯の包絡線成分が出現するのを低減、あるいは消滅させることができる。特に、補完信号波の振幅が検知装置から発射される電磁波の振幅と同一の振幅となるように構成しておくことにより、包絡線成分を消滅させることができる。
【0078】
また、植込み型医療機器の装着者が、検知装置に接近したことを検出したときに、補完信号波が発射されるように構成しておくこともできる。この場合、植込み型医療機器の装着者が通る通路に、装着者の通過、接近を検知する装置を設けておくことで、装着者が検知装置に接近したことを検出することができる。
【0079】
この装着者の通過を検知する装置としては、監視カメラからの画像や赤外線センサ、通路上に設けた重量センサ等を利用することができる。
携帯式の補完信号発射装置に設けた検出回路等が、検知装置からの電磁波を検出したときに、補完信号発射装置に設けた制御装置等によって、装着者が検知装置に接近していることを判断することもできる。
【0080】
このようにして検知装置に装着者が接近したことが検知されると、検知装置から間欠的に発射されている電磁波に対して、補完信号波を発射させることができる。このように構成しておくことによっても、植込み型医療機器における回路素子の非線形特性に起因する低周波数帯の包絡線成分が、出現して植込み型医療機器に悪影響を与えてしまうのを防止できる。
【実験例1】
【0081】
図7〜図9を用いて、検知装置としてのRFID機器5から発射されている電磁波に対して、補完信号発射装置から補完信号波を発射した、電磁干渉緩和に関する実験について説明する。図7には、試験装置の概略構成図を示しており、図8には、電磁波を発射する回路構成の概略図を示している。また、図9には、実験結果を示している。
【0082】
図7に示すように、本実験では、試験で使用した測定装置類と人体ファントム1に設置した植込み型心臓ペースメーカ2とを、相互に接続している。植込み型医療装置として用いた植込み型心臓ペースメーカ2は、人体ファントム1内に設置している。
【0083】
人体ファントム1は、人体組織による電磁界の減衰、電磁干渉によって人体内に誘起される電流等が再現されるように構成されたダミー人形である。そして、外部電磁環境によって人体内に植込まれた植込み型心臓ペースメーカ等に誘起される現象をシミュレートすることができる。
【0084】
人体ファントム1は、0.18重量%の食塩水を満たしたアクリル製の水槽から構成されており、植込み型心臓ペースメーカ2を装着した患者の人体内と同じ環境で、動作させることができる。そして、植込み型心臓ペースメーカ2とペースメーカ電極3との間は、リード線4によって接続されている。
【0085】
ペースメーカ電極3は、植込み型心臓ペースメーカ2の動作監視、記録、及び植込み型心臓ペースメーカ2の動作モードにとって必要なものである。即ち、動作を制御するための擬似心電位発生器11から発した心電位信号は、ペースメーカ電極3を介して植込み型心臓ペースメーカ2に対して注入されることになる。そして、心房側、心室側に配したペースメーカ電極3は、ともに直記式記録計12及びオシロスコープ10に接続してある。
【0086】
また、本試験で用いた人体ファントム1は、人体ファントムを考案したIrnich博士の提案に従って構成されており、外部電磁環境によって植込み型心臓ペースメーカ3に誘起される雑音強度が、与えられた条件下において最大となるように設計されている。
【0087】
本実験では、検知装置としたRFID機器5内には、補完信号波を発射する補完信号発射装置が内蔵された構成で実験を行った。そのため、信号発生器15aからはリーダライタの信号を模擬した電磁波を出力させ、信号発生器15bからは補完信号発射装置から発射する補完信号波を出力させることができる。
【0088】
そして、信号発生器15a及び信号発生器15bから出力させる各信号の発生タイミングは、外部に接続した任意信号発生器14からの制御信号によって制御されている。信号発生器15a及び信号発生器15bから出力された各信号は、信号合成部17によって合成され、高周波増幅器16で増幅されてアンテナ6から発射される。
【0089】
本実験では、信号発生器15bから発射される補完信号波の振幅と、信号発生器15aから出力される電磁波の振幅とは、同一振幅となるように設定した。また、信号発生器15bから出力される補完信号波の周波数fbを、信号発生器15aから出力される電磁波の周波数faとは異なる任意の周波数(fb=fa+Δf)にて変更できるように設定した。Δfは、デルタfを意味している。
【0090】
本実験によって、補完信号発射装置を検知装置内に設置した場合、及び補完信号発射装置を検知装置とは別体に構成し、検知装置から発されている電磁波の振幅、周波数、及び発射停止の周期を、補完信号発射装置で検出することができた場合についての擬似実験を一つの実験で行うことができる。
【0091】
実験を行った干渉緩和効果の一例を図9に示している。尚、図9では、検知装置から発されている電磁波を擬した信号発生器15aから出力される電磁波の周波数としては、950MHzとして常に一定の周波数にしている。また、補完信号発射装置から発射される補完信号波を擬した信号発生器15bから出力される補完信号波の周波数としては、850MHz〜949MHzまでの範囲で変化させて実験を行った。
また、図9では、信号発生器15bから補完信号波が出力されていないとき、即ち、信号発生器15aからのみ電磁波が出力されているときの最大干渉消滅距離Lを、「1」として規格化を行って実験をした。
【0092】
図9から分かるように、検知装置としたRFID機器からのリーダライタ信号の周波数(信号発生器15aから出力される電磁波の周波数)と補完信号発射装置から発射される補完信号波の周波数(信号発生器15bから出力される補完信号波の周波数)とが近づくにつれて、最大干渉消滅距離Lが短縮していくことが分かる。
【0093】
RFID機器におけるリーダライタ信号の周波数から10MHz程度離れた周波数の補完信号波を発射すれば、最大干渉消滅距離Lは補完信号波なしの場合に比べて半分以下となった。また、リーダライタ信号の周波数から1MHz離れた周波数の補完信号波を発射すれば、最大干渉消滅距離Lは補完信号波なしの場合に比べて20分の1以下に短縮された。
【0094】
この実験から分かるように、患者に装着される実際の心臓ペースメーカを用いて、電磁干渉緩和の実験を行ってみたところ、本願発明に基づいた検知装置に対する補完信号発射装置及び検知装置に対する安全システムが、RFID機器、電子商品監視機器等のように検知装置から間欠的に信号の発射と停止とを繰り返す信号によって、電磁干渉が発生するのを阻止、あるいは電磁干渉の発生を低減させることに対して特に有効な技術となっている。
【実施例2】
【0095】
前記実施例1において説明したように、RFIDリーダライタ信号周波数が短時間で時間的に変化する場合の対応について、図10、図11を用いて他の実施例で説明する。
RFIDリーダライタ信号周波数が短時間で時間的に変化する規格(例えば、UHF帯RFIDに用いられるFHSS方式等)の場合、RFIDバースト信号内のキャリア信号周波数は時間的に変化する。
【0096】
図10は、このようなRFIDリーダライタ信号のキャリア信号周波数の変化を示している。
すなわち、上記のごとき規格の場合、キャリア信号周波数fは同図(a)に示すように、各バースト信号間にそれぞれ送信停止時間を介して周波数f〜fとランダムに変化する。
同図(b)は、このようなキャリア信号の変化する信号周波数を例示している。
【0097】
このようにRFIDリーダライタ信号周波数が時間的に変化する場合、前述の実施例1において用いた補完信号波を各バースト信号間の送信停止時間に発射すると、ある補完信号波と、その前後のバースト信号内のキャリア信号周波数との間の周波数変化の度合いが相当に大きくなる。
【0098】
このような場合に、図9により明らかなように、リーダライタ信号の周波数を補完信号波の周波数に近いものとすることで、最大干渉消滅距離Lを小さくできることから、この実施例においては、上記の作用効果に着目して補完信号の周波数を可変とする方式を採用した。
【0099】
図11は、上記方式の各RFIDバースト信号f〜fとそれらの信号発射停止時間内に発射する補完信号との関係を示している。
図11(a)は、先に説明した図2(b)に対応しており、上記ランダムに変化する周波数に対応して間欠的に発射されるREIDバースト信号の停止時間内に、それぞれ周波数が変化する補完信号が発射された状態を示している。
【0100】
図11(b)は、上記のRFIDバースト信号及び補完信号における、時間に対応した各信号の周波数を示している。
すなわち、RFIDバースト信号の周波数がfである状態に続いて、停止時間後に周波数fのRFIDバースト信号が発射される場合に、補完信号として周波数がfからfまで直線的に変化する補完信号が発射されている。
【0101】
続いて、周波数fのRFIDバースト信号が終了すると、前記と同様に、その周波数がfから次のRFIDバースト信号の周波数fまで直線的に変化するごとき、補完信号が発射されるものである。
【0102】
更に、周波数fのバースト信号が停止すると続いて、周波数fから次のRFIDバースト信号の周波数に相当する周波数fまで変化する補完信号が発射されるが、この場合の補完信号の周波数の変化は図から明らかなように、曲線的に変化する例を示している。更にまた、周波数fのRFIDバースト信号の停止に続いて、周波数fから、更に続いてRFIDのバースト信号の周波数fに対応する周波数まで曲線的に変化する補完信号が発射されるものである。
【0103】
すなわち、この実施例における補完信号は、当該補完信号の発射前のRFIDバースト信号周波数fから、次のRFIDバースト信号の周波数fn+1まで、その補完信号の周波数が直線的に又は曲線的に変化する補完信号であることを特徴としている。
【0104】
この実施例に示すような補完信号は、FM変調又はPM変調成分を持つが、AM変調成分は持たないため、検波された低周波信号成分が低減可能となる。
また、このような周波数を変化させる形成の補完信号を用いることで、RFIDキャリア信号周波数の変動が大きなFHSS方式(例えば20MHz以上)等においても、補完信号による電磁干渉緩和が可能となった。
【符号の説明】
【0105】
1 人体ファントム
2 植込み型心臓ペースメーカ
3 ペースメーカ電極
5 RFID機器
6 アンテナ
8 検知装置
9 補完信号発射装置
11 擬似心電圧発生器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波が、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器等の植込み型医療機器に対して影響しないようにする検知装置に対する補完信号発射装置であって、
前記検知装置が、間欠的に信号の発射と停止とを行い、前記信号の発射期間内に同信号を受信した他の装置からの応答信号を受信してなり、
前記補完信号発射装置が、前記検知装置からの信号の停止期間中に、前記停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波を、少なくとも前記植込み型医療機器の周辺領域に向けて発射してなることを特徴とする検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項2】
前記間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波が、常時一定の周波数であることを特徴とする請求項1記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項3】
前記間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波は、その発射時毎の周波数がランダムに変化するものであることを特徴とする請求項1記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項4】
前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号波の振幅が、前記検知装置から発射される電磁波の振幅に対して約0.5倍から約1.5倍の大きさであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項5】
前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号波の周波数と、前記検知装置から発射される電磁波の周波数とは、異なる周波数であることを特徴とする請求項1記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項6】
前記補完信号発射装置から発射される前記補完信号の周波数が、その補完信号が発射される前の前記検知装置から発射された電磁波の周波数と同一の周波数から、その補完信号が発射された後に前記検知装置から発射される電磁波の周波数と同一の周波数まで、連続的に変化されることを特徴とする請求項5記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項7】
前記連続的に変化される補完信号の周波数変化は、直線的変化であることを特徴とする請求項6記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項8】
前記連続的に変化される補完信号の周波数変化は、曲線的変化であることを特徴とする請求項6記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項9】
前記補完信号発射装置が、前記検知装置内に組み込まれてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項10】
前記補完信号発射装置が、前記検知装置とは別体に構成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検知装置に対する補完信号発射装置。
【請求項11】
間欠的に信号の発射と停止とを行う検知装置から発射される電磁波が、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器等の植込み型医療機器に対して影響しないようにする検知装置に対する安全システムであって、
前記検知装置から信号の発射が停止している停止期間に、前記停止期間の時間的な隙間を埋める補完信号波を、少なくとも前記植込み型医療機器の周辺領域に向けて発射してなることを特徴とする検知装置に対する安全システム。
【請求項12】
前記植込み型医療機器の装着者が、前記検知装置に接近したことを検出したときに、前記補完信号波が発射されることを特徴とする請求項11記載の検知装置に対する安全システム。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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