説明

検索仲介システム

【課題】 情報にアクセスしようとする相手に応じて、公開する情報を制御することが可能な検索仲介システムを提供する。
【解決手段】 本システムの利用者は事前に検索者として検索者情報記憶手段21に自身の情報を登録しておき、データベースの開設者は、その公開条件を公開条件記憶手段22に登録しておく。そして、検索受付手段23が、利用者端末10から検索要求を受け付けると、その検索要求に基づいて、検索依頼手段24が、各データベース30a〜30cに検索依頼を行う。各データベース30a〜30cは、それぞれ受け付けた検索依頼に従って検索結果を検索仲介システム20に返信する。検索結果取得手段25が検索結果を受け取ると、検索結果提供手段26は、検索者情報記憶手段21、公開条件記憶手段22を参照して、提供すべき情報を抽出し、利用者端末10に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開設者が異なる複数のデータベースを検索するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流管理や物品所在管理の情報を企業を超えて共有することが求められている。ebXML(electronic business XML)に代表されるように、そのための基本情報の取得の仕組み、情報共有・交換の枠組みや交換される情報の項目の共通化が整備されつつある。この共通化された情報共有・交換の枠組みを利用して企業の業務情報を蓄積したデータベースを既存あるいは潜在の取引先に必要に応じて検索させることで、円滑な事業運営をはかることも始まりつつある。一方、データの保管先の仲介を行うシステム等はすでに提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−146293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自社が管理する情報を公開することは、それにより新たな顧客を開拓することができるという利点を有している。しかしながら、情報を無条件に公開すると、競合相手にも手の内を明かしてしまうことになるという問題もある。これは情報の内容はもちろん、データベースの所在自体も、潜在取引先には周知させたいが、産業スパイやクラッキング妨害などを予防するためにも競合相手など不都合な相手には秘匿しておきたいという矛盾した要求を抱えることになる。標準化されたデータ共有・交換の手法が普及しつつある今日、この恩恵として共通の基盤で結ばれることにより、これまでには出会うことの無かったより有利な取引関係が新たに結ばれる好機が潜在している。しかしながら、基盤として共通化されていてもその存在や所在を探知することは依然として困難がある。
【0004】
一方、企業間商業取引以外の一般生活者向けのインターネットショッピングサービスや、商取引を伴わない極普通のコンテンツサービスを周知するないしは紹介するサービスとして、検索エンジンが広く利用され大きな貢献を果たしている。インターネット上での企業間情報XML Webサービスの供給を告知することを主な用途としてUDDI(Universal Description, Discovery, and Integration)方式も一部では利用されている。匿名による検索エンジン利用は検索者にとって見ればワンストップで求める情報の所在が一括して取得できる利便があり望ましいサービス形態であるが、そのために匿名アクセスを前提に事前にその複写を提供することは前述の事業情報の機密性に起因する制約があるため、情報管理の点から提供者にとっては受け入れ難いものとなる。UDDIは提供されるサービスの内容を告知する手段に過ぎず、検索者が求める情報内容が実際にそのサービス提供者の下に存在しているかは、そのサービス利用契約を取り交わして交信のための手続きを終え許諾を受けた後で検索して始めてその有効無効が判明するという大きな手間を強いられることになる。
【0005】
そこで、本発明は、情報にアクセスしようとする相手に応じて、データベースへのアクセスと、公開する情報を制御することが可能な検索仲介システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、開設者が異なる複数のデータベースを利用者端末から検索する際に、検索の仲介を行うシステムであって、検索者の情報を記憶した検索者情報記憶手段と、各データベースの公開条件を記憶した公開条件記憶手段と、利用者端末からの検索要求を受け付ける検索受付手段と、受け付けた検索要求に従って、各データベースに検索依頼を行う検索依頼手段と、前記各データベースから送られてきた検索結果を取得する検索結果取得手段と、前記検索者情報、前記公開条件に基づいて、取得した検索結果から要求元の検索者に対して公開可能なものを抽出し、利用者端末に提供する検索結果提供手段を有する検索仲介システムを提供する。
【0007】
また、本発明では、前記公開条件は、検索者の登録属性及び検索者開示属性により定まる検索者カテゴリとそれに対応する粒度処理ルールの全ての組み合わせにより表現されるものであって、前記粒度処理ルールは、データベースの各項目ごとに粒度のレベル数と、各粒度レベルごとに当該項目のオリジナル値を該粒度レベルで表示する際に適用する変換規則または置き換え語彙を定めたものであって、前記検索結果提供手段は、取得した検索結果であるオリジナルデータから前記公開条件により検索者の検索者カテゴリを決定し、前記公開条件に従って特定の粒度処理ルールを適用して検索結果の各項目を所定の粒度レベルの表示に変換された変換済み検索結果を作成して、これを利用者端末に提供するものである検索仲介システムを提供する。
【0008】
本発明では、さらに前記検索受付手段が、検索要求元である検索者についての検索者情報を前記検索者情報記憶手段から抽出して、当該検索者情報で前記公開条件記憶手段を参照して、当該検索者に対して公開可能なデータベースを特定し、前記検索依頼手段は、前記特定されたデータベースに対してのみ検索依頼を行うものである検索仲介システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、事前に検索者の情報、データベースの公開条件を記録しておき、検索要求してきた検索者に応じて、検索した情報のうち公開可能な情報を抽出し、提供するようにしたので、情報にアクセスしようとする相手に応じて、公開する情報を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る検索仲介システムの一実施形態を示す構成図である。図1において、10は利用者端末、20は検索仲介システム、30a〜30cはデータベースである。
【0011】
利用者端末10は、検索を行う利用者が利用する端末装置であり、ネットワークを介して検索仲介システム20にアクセス可能な汎用のコンピュータで実現される。検索仲介システム20は、利用者端末10からの検索要求に応じてネットワーク上のデータベースを検索し、検索結果を利用者端末10に返信する機能を有するサーバコンピュータであり、検索者情報記憶手段21、公開条件記憶手段22、検索受付手段23、検索依頼手段24、検索結果取得手段25、検索結果提供手段26を有している。
【0012】
検索者情報記憶手段21は、検索者に関する情報を記憶した記憶手段である。公開条件記憶手段22は、データベース30a〜30cの公開条件を記憶した記憶手段である。検索受付手段23は、利用者端末10からの検索要求を受け付ける機能を有している。検索依頼手段24は、利用者端末10から受け付けた検索要求に従って、データベース30a〜30cに対して検索依頼を行う機能を有している。検索結果取得手段25は、データベース30a〜30cからの検索結果を取得する機能を有している。検索結果提供手段26は、検索者情報記憶手段21に記憶された検索者情報、公開条件記憶手段22に記憶された公開条件を参照し、データベース30a〜30cから取得した検索結果のうち、検索者に公開可能な検索結果のみを抽出し、検索要求元の利用者端末10に提供する機能を有している。
【0013】
データベース30a〜30cは、それぞれ異なる企業が管理し、検索仲介システム20からのアクセスを許可したデータベースである。各データベースは、互いに独立しており、検索仲介システム20を介さない限り互いの連携はない。図1において、利用者端末10と検索仲介システム20を結ぶネットワーク、検索仲介システム20とデータベース30a〜30cを結ぶネットワークは同一のものであっても別のものであっても良い。利用者端末10からデータベース30a〜30cへは潜在的な通信経路としては到達可能であるが、通信先としての所在が知られておらず、またデータベース30a〜30cから見て利用者端末10は既知の関係に無いため、直接のアクセスはできないようになっている。データベース30a〜30cは企業が管理する重要な情報を記録したものであるので、検索仲介システム20にのみアクセスを許可している。このように、利用者端末10からデータベース30a〜30cには直接アクセスできず、必ず、検索仲介システム20を仲介することになる。逆に、この仕組みを利用することにより、検索者はデータベース30a〜30cの所在を特定する必要はなくなる。実務上においても、検索者が、データベース30a〜30cの開設者と個別にアクセス許諾契約を結ぶよう要求し交渉する必要がなくなる。
【0014】
検索仲介システム20は、ネットワークに接続されたサーバコンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現される。また、検索者情報記憶手段21、公開条件記憶手段22としての情報のデータ記憶領域は、ハードディスク等の大容量記憶装置内に確保される。利用者端末10と検索仲介システム20を結ぶネットワークとしてインターネットを採用した場合には、検索仲介システム20にXML Webサービスサーバの機能を持たせておくことにより、利用者端末10からは、XML Webサービスを利用して検索仲介システム20にアクセスが可能となる。検索仲介システム20にXML Webサービスサーバの機能を持たせるには、検索仲介システム20を実現するコンピュータに、Apache axis(登録商標)と呼ばれるソフトウェアを組み込む。
【0015】
図2は、検索者情報記憶手段21に記憶された検索者情報の一例を示す図である。本システムを利用して検索を行おうとする者は、事前に自身に関する情報を検索者情報として登録しておかなければならない。本実施形態では、図2に示すように検索者情報として、検索者名、業種、所在地、年商規模、検索者情報開示条件、その他の情報を登録している。その他の情報としては、検索者の利用者端末と検索仲介システム20との間の通信を秘匿するための利用者端末を特定する公開鍵データ等が挙げられる。そして、各検索者には、検索者を特定するための検索者IDが発行され、対応付けて検索者情報記憶手段21に登録される。検索者情報開示条件は、検索者情報をデータベースの開設者に対して開示する場合の条件を定めたものであり、検索者情報の各項目単位での設定、開設者の業種に応じた設定が可能となっている。検索者情報開示条件は、矛盾を起こさない限り1検索者について複数の内容を設定しておくことが可能である。
【0016】
検索仲介システム20においては、検索者とデータベース開設者の関係に応じて各データベースを検索して得た情報の「粒度」をコントロールして検索者に提供することができる。すなわち、検索結果提供手段26は、図3に示すような、各データベース開設者が定めた粒度処理ルール表を保有しており、データベースに記録される各項目の値は開示粒度レベルに応じて各項目ごとに定義される粗さで表される値に変換されて検索者に提供される。後述する検索者カテゴリ別クラス対応表、クラス定義表に従って、ある検索要求時のデータベースの各項目の開示粒度レベルが決定される。図3に示すように、粒度処理ルール表には、各項目について、レベルA〜レベルdの最大7段階で、どの程度の正確さで情報を提供するかを規定してある。粒度処理を実行するためには、各DB項目にはそれぞれ粒度レベルに応じた「値」の変換ルールが定まっている。これは、図4に例示するように、各粒度レベルに応じた「値」の表現語彙または変換規則を、粒度の粗いレベルDから、最も精細なレベルAまで、階層的に予め定義することに他ならない。
【0017】
図4は項目「商品所在」の階層構造(各粒度レベルで表示する際の使用語彙と変換規則)を示した図である。項目「商品所在」はレベルAからレベルDの4段階の粒度レベルをもち、例えばレベルAで項目「商品所在」の値を表示する場合は、「保管区域イ」、「保管区域ロ」等の値で表示される。また、レベルBでは項目「商品所在」の値を「建屋/施設a」、「建屋/施設b」等で表示する。すなわち各粒度レベルでとりえる値のセット(語彙)は予め規定されている。また、レベルAで「保管区域イ」、「保管区域ロ」、「保管区域ハ」のいずれかで表示される値は、粒度レベルを1階層あげてレベルBで表示しなければならないときは、「建屋/施設a」に変換される。すなわち「建屋/施設a」は「保管区域イ」、「保管区域ロ」、「保管区域ハ」の置き換え語彙である。図4で示される階層構造は、下位レベルの値がより上位レベルではどんな値に置き換えられるか、すなわち、変換規則を示している。
【0018】
公開条件記憶手段22には、公開条件について、クラス定義表と、検索者カテゴリ別クラス対応表の2つが記録されている。本実施形態では、クラス定義表と、検索者カテゴリ別クラス対応表により公開条件が定まることになる。図5に、クラス定義表の一例を示す。クラス定義表は、データベースが保有する情報の各項目について、どの程度のレベルで開示するかをクラス単位で設定したものである。クラスとは、データベースの各項目についての開示粒度レベルを全項目について定めた場合のその開示粒度レベルのセットのことである。図5の例で、クラス1、クラス2、‥などと表しているのは、そのような開示粒度レベルの様々なセットにつけた名前と考えてよい。すなわち、クラス1、クラス2、‥により、ある開示粒度レベルのセットが特定される。このクラス定義表により、データベースの開設者が、どの程度の情報を公開するかを設定する際に、各項目を個別に設定することなく、簡易に各項目の開示粒度レベルを設定できるようになる。
【0019】
図5の例では、クラス1が最も厳しく、クラスの番号が増えるにつれて緩やかな内容となっている。クラス1は、データベースの存在の公開も不可、データベースの開設者の業種の公開も不可である。クラス1の場合、データベースの存在の公開が不可であるため、データベースに記録された情報の各項目についても当然公開不可である。クラス2は、データベースの存在の公開は可であるが、開設者の業種の公開は不可となっており、在庫個数、商品所在はレベルDでの公開となっている。レベルについては、レベルAが最も詳細な情報を提供するものとなっており、レベルB、C、Dとなるにつれて、大まかな情報を提供するものとなっている。したがって、クラス2は、在庫個数、商品所在ともに、非常に漠然とした形での情報の提供をするものとなっている。クラス3以降は、データベースの存在、開設者の業種ともに公開可となっており、各項目については、在庫個数、商品所在について、クラス番号が増えるにしたがって詳細なレベルで公開されるものとなっていることがわかる。
【0020】
検索者カテゴリ別クラス対応表の一例を図6に示す。検索者カテゴリとはデータベース開設者がデータベース開設者の都合により定めた検索者を識別するカテゴリである。検索者カテゴリは検索者情報として登録される検索者属性情報に基づいてデータベース開設者が任意に定義するカテゴリに、通常は、身元開示検索者かそうでないかの2通りの組合せを掛けて定められる。身元非開示検索者、身元開示検索者における“身元”とは、その検索者を特定するのに十分な情報を意味しており、本実施形態では、検索者名である。図6に示した検索者カテゴリ別クラス対応表は、ある1つのデータベースについてのものであり、各データベースについて、同様のものが設定されることになる。クラスの設定は、開設者側が任意に設定することができるが、通常、図6に示すように、身元非開示検索者に厳しいものとなっている。また、カテゴリとして検索者名を直接特定し、クラスを設定することもできる。
【0021】
ここで、データベース30aに記録された情報の一例を図7に示す。図7に示すように、データベース30aには、記録時刻、商品ID、商品所在、在庫個数の項目により情報が記録されている。このうち、商品所在については、図4に示すような階層構造で記録されている。データベース30a〜30cは互いに独立しており、データベース30b、30cは、図4、図7に示した構造とは異なっている場合もある。
【0022】
(処理動作)
次に、図1に示したシステムの処理動作について説明する。まず、検索者情報記憶手段21に検索者として登録した利用者は、利用者端末10から検索仲介システム20にアクセスし、検索要求を送信する。この際、検索受付手段23は、検索者の認証を行い、検索者情報記憶手段21に登録されたどの検索者であるかを特定する。これは、例えば、検索者情報記憶手段21にパスワードを登録しておき、アクセスしてきた利用者に対して、検索者IDとパスワードを要求して行うようにすれば良い。より確実に検索者を特定し、通信を保護するためには、検索者が送信してきた検索式文書のハッシュ値を利用者端末10に発給された秘密鍵で暗号化した発信者証明を事前送付された対になる公開鍵で復号し、送付された検索式から送信時と同一のハッシュ法で求めた値と照合することも利用できる。合わせて、検索式本文も検索仲介システム20の発給した公開鍵で暗号化して送信し、受信した検索仲介システム20の秘密鍵で復号することで、系路上の通信を保護することもできる。これにより自己申告された検索者の身元が登録された本来の利用者であることが同定される。
【0023】
検索者IDが特定されたら、検索受付手段23は、その検索者IDで検索者情報記憶手段21を参照し、検索者の属性情報を取得する。ここでは、属性情報として、業種、検索者情報開示条件を取得する。続いて、検索受付手段23は、取得した属性情報で公開条件記憶手段22を参照し、その検索者に対して公開可能なデータベースのアドレスを取得する。例えば、図5、図6の例では、業種非開示検索者に対しては、データベースの存在が公開不可となっているため、アドレスの取得は行われない。図5、図6の例では、その他の場合には、そのデータベースのアドレスの取得が行われる。このようにして、検索受付手段23は、受け付けた検索者に対して公開可能なデータベースのアドレスを取得していく。
【0024】
公開条件記憶手段22からデータベースのアドレスを取得したら、検索受付手段23は、利用者端末10から受信した検索要求に従った内容の検索を行うよう、アドレスを取得した全てのデータベースに検索依頼を行う。したがって、検索者の属性が、データベースの公開条件に合わない場合には、そのデータベースについてのアドレスは取得しないため、検索依頼の対象とならない。これにより検索仲介システム20において無効破棄されることが事前に確定している検索結果を得るために無用な検索処理も途上の無効トラフィックも事前に抑制される。データベース30a〜30cの全てのアドレスが取得できた場合には、データベース30a、データベース30b、データベース30c宛てに、検索依頼を送信することになる。
【0025】
データ共有・交換の手法が標準化されていて、検索を依頼されるデータベース30a〜30cが全てこれに準拠している場合は、各データベース30a〜30cにはこの共通の書式での同一内容での検索が依頼される。一方、この標準方式に従わないデータベースに対しては、そのデータベースが交信可能な通信手順および検索式書式に変換して委託する。これには事前にそのデータベースの仕様を取得して設計された変換対照表を利用したり、XSLT(XML Stylesheet Language Transformations)による変換規則を適用するなどの手法を利用する。
【0026】
各データベース30a〜30cでは、検索依頼を受信すると、検索仲介システム20からの依頼であることの認証を行った後、検索依頼を受け付ける。そして、各データベースは、受け付けた依頼内容に従って、自身のデータベース内を検索し、検索結果を得る。検索結果が得られたら、各データベース30a〜30cは、それぞれ検索結果を検索仲介システム20に送信する。このとき返信される検索結果には、検索者によっては公開を制限する必要のある事業上の機密内容が含まれている場合がある。回答にあたって実際の検索者を認識し、事業上の関係に照会して秘匿するべき内容を省略する処理を、回答するデータベース30a〜30c側で実現することも可能であるが、これには本来、自社内で活用するために開発されたデータベースシステムに当初想定外の社外向けの情報管理機能を与えるための改修を加える必要が生じるとともに、その情報管理処理負荷により本来用途への能力圧迫を招く弊害が生じる、ないしはそれを見越した余分な能力増強を迫られることがある。本発明では、検索仲介システム20において公開条件に基づいた公開内容抽出を行っているため、データベース30a〜30c側でこの秘匿処理負荷を負う必要がない。
【0027】
検索仲介システム20では、検索結果取得手段25が、データベース30a〜30cから送信された検索結果を取得する。このとき、回答するデータベースの中に標準から外れた通信手順と回答書式を要するものがある場合には、それに応じた回答手段で検索結果を取得し、標準不整合な書式から、検索式変換を行ったときと同様に事前取得したその仕様に基づく変換手段を適用することにより、他の標準法と同等の回答に整形変換することを事前処理として行うことにより、続く他の回答と同じ開示提供可能な情報の抽出が可能になる。続いて、検索結果提供手段26が、検索者情報記憶手段21に記憶された検索者情報、公開条件記憶手段22に記憶された公開条件を参照して、提供すべき検索結果を抽出する。例えば、この検索の検索者IDがA001であった場合、検索結果提供手段26は、検索者情報記憶手段21を参照し、業種「ドラッグストアチェーン」、検索者情報開示条件について「製薬業には業種のみ開示」を取得する。そして、検索結果提供手段26は、取得した情報で公開条件記憶手段22を参照する。
【0028】
ここでは、データベース30aについての処理について説明する。検索者A001は「製薬業には業種のみ開示」であるので、検索結果提供手段26は、データベース30aの開設者の業種を確認する。データベース30aの開設者が製薬業であったとすると、検索者A001の検索者情報は、データベース30aに対しては「業種のみ開示」となる。そして、検索結果提供手段26は、身元非開示検索者、業種「ドラッグストアチェーン」で検索者カテゴリ別クラス対応表(図6)を参照し、「クラス4」を取得する。さらに、この「クラス4」でクラス定義表(図5)を参照し、データベース存在の「公開可」、開設者業種の「公開可」、商品所在「レベルD」、在庫個数「レベルC」、商品ID「レベルB」を取得する。
【0029】
このとき、商品所在に関する情報であれば、データベース30aの開設者が抽出条件設定を登録している図3に示した粒度処理ルール表に従ってレベルDの「企業(大代表)」が適用される。それに伴い、検索仲介システム20に事前に通知されているないしはデータベース30a自身が検索仲介システム20からの問合せに対して都度供給するデータベース開設者の属する事業所の施設帰属関係を記述した図4に示す構造の事業所構成マスターデータを参照することで、この帰属の階層に割り当てられた段階意味属性としての「企業(大代表)」の階層まで、取得した商品所在情報からその帰属先を繰り上げていくことで、検索者に回答するべき指定の情報粒度に適った所在表記内容を得ることができ、これを検索者への回答として抽出することで実際の検索結果が元来持っていた商品所在の精細度と異なるデータベース30aの開設者の指定した公開範囲を順守することができる。また、在庫個数については、図3の粒度処理ルール表に従ってレベルCの「桁数回答」が適用される。したがって、在庫個数は、その商品の在庫数の10進桁数が回答される。商品IDについては、図3の粒度処理ルール表に従ってレベルBの「品種コードに丸め」が適用される。したがって、商品IDは、各個体ではなく、品種を特定するレベルの品種コードの情報が得られる。
【0030】
データベース30aに格納されている情報は業務記録である場合も多く、その場合は、元来データベース開設者の自家用途に供するためのものであるため、当然ながら記録されている内容は最も詳細なレベルで記載されている。従って、この発明が解決する課題として上げているように、他社とのデータ共有・交換のために自社用の業務情報の精細さを加工するフィルターシステムを自前で構築しその処理に掛けない限り、検索仲介システム20に提供されるデータベース30aからの業務記録は、自社用と同一の記載内容を保っている。しかしながら、この最も詳細なレベルの記載内容は事業の業績状態や業務上のノウハウ、保安といった社外への流出がはばかられる内容そのもの、ないしはそれを容易に類推できる材料となるものである。あるいは検索者にとっては冗長ないしは過剰な関心の及ばない瑣末な内容である場合も多い。企業を超えてデータ共有・交換を適正に行うには、この記録の粒度と交換の精度を公開レベルとして適切に調整することが、検索者、開設者、双方にとっても望ましい。
【0031】
同様に、商品ID、在庫個数、商品所在以外の各項目についても処理を行い、依頼元用の検索結果を作成して、検索者の利用者端末10に送信する。同様に、検索者は、他のデータベースからも自身の検索者情報とデータベースの公開条件に対応したレベルの情報を取得することになる。
【0032】
公開する情報の決定について、再度説明しておく。たとえば、データベース30aの開設者の業種が製薬業である場合を考えてみる。データベース30aを検索者A003が検索する場合、図2に示すように、検索者情報開示条件が「小売、製薬業には開示」となっているので、データベース30aには検索者A003の検索者情報が開示されることになる。また、図2に示すように、検索者A003は、卸売業であるので、図6の検索者カテゴリ別クラス対応表で、情報開示検索者、卸売業を参照して、クラス6と判定される。一方、データベース30aを検索者A001が検索する場合、図2に示すように、検索者情報開示条件は「製薬業には業種のみ開示」となっている。この場合、データベース30aの開設者は製薬業であるため、業種のみ開示されることになる。そして、図6の検索者カテゴリ別クラス対応表で、身元非開示検索者、ドラッグストアチェーンを参照して、クラス4と判定される。クラス4の場合、図5に示したクラス定義表より、商品所在はレベルD、在庫個数はレベルC、商品IDはレベルBとなる。商品所在はレベルDであるので、企業名のみ公開される。在庫個数はレベルCであるので、桁数のみ公開される。商品IDはレベルBであるので、品種コードが公開される。このように、検索者が業種のみ開示している状態、すなわち匿名と実名の狭間に当たる限定的な属性開示を行っている場合であっても、適切な公開情報の抽出範囲を設定し、確実に履行させることができる。
【0033】
以上のようにして、公開すべき情報を決定し、検索結果を提供することになるが、検索者情報記憶手段21に記憶された検索者情報内の検索者情報開示条件から、事前に図8に示すような各開設者別に対する検索者−開設者対応表を作成しておくようにしても良い。図8に示すような検索者−開設者対応表を所定の記憶領域に記憶させておくことにより、検索仲介システム20は、検索者IDを特定した後、検索者−開設者対応表を参照して、即座に検索依頼を行うべきデータベースが特定できるとともに、返ってきた検索結果から検索者に回答すべき内容の特定を行う際にも、図6に示した検索者カテゴリ別クラス対応表の参照を高速に行うことが可能となる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、図6に示したように、公開条件の一部である検索者カテゴリ別クラス対応表において、検索者の業種別にクラス設定を行うようにしたが、検索者の所在地や年商規模等、検索者情報内の他の項目別にクラス設定を行うようにしても良い。また、上記実施形態では、公開条件を、クラス定義表と、検索者カテゴリ別クラス対応表により定まるようにしたが、さらに他の表を組み合わせることにより定まるような構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る検索仲介システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】検索者情報記憶手段21に記憶された検索者情報の一例を示す図である。
【図3】粒度処理ルール表を示す図である。
【図4】商品情報の一項目である商品所在の階層構造を示す図である。
【図5】公開条件記憶手段22に記憶されたクラス定義表を示す図である。
【図6】公開条件記憶手段22に記憶された検索者カテゴリ別クラス対応表を示す図である。
【図7】データベース30aに記憶された情報の一例を示す図である。
【図8】検索者−開設者対応表を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・利用者端末
20・・・検索仲介システム
21・・・検索者情報記憶手段
22・・・公開条件記憶手段
23・・・検索受付手段
24・・・検索依頼手段
25・・・検索結果取得手段
26・・・検索結果提供手段
30a〜30c・・・データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開設者が異なる複数のデータベースを利用者端末から検索する際に、検索の仲介を行うシステムであって、
検索者の情報を記憶した検索者情報記憶手段と、
各データベースの公開条件を記憶した公開条件記憶手段と、
利用者端末からの検索要求を受け付ける検索受付手段と、
受け付けた検索要求に従って、各データベースに検索依頼を行う検索依頼手段と、
前記各データベースから送られてきた検索結果を取得する検索結果取得手段と、
前記検索者情報、前記公開条件に基づいて、取得した検索結果から要求元の検索者に対して公開可能なものを抽出し、利用者端末に提供する検索結果提供手段と、
を有することを特徴とする検索仲介システム。
【請求項2】
前記公開条件は、検索者の登録属性及び検索者開示属性により定まる検索者カテゴリとそれに対応する粒度処理ルールの全ての組み合わせにより表現されるものであって、
前記粒度処理ルールは、データベースの各項目ごとに粒度のレベル数と、各粒度レベルごとに当該項目のオリジナル値を該粒度レベルで表示する際に適用する変換規則または置き換え語彙を定めたものであって、
前記検索結果提供手段は、取得した検索結果であるオリジナルデータから前記公開条件により検索者の検索者カテゴリを決定し、前記公開条件に従って特定の粒度処理ルールを適用して検索結果の各項目を所定の粒度レベルの表示に変換された変換済み検索結果を作成して、これを利用者端末に提供するものであることを特徴とする請求項1に記載の検索仲介システム。
【請求項3】
前記検索受付手段は、検索要求元である検索者についての検索者情報を前記検索者情報記憶手段から抽出して、当該検索者情報で前記公開条件記憶手段を参照して、当該検索者に対して公開可能なデータベースを特定し、
前記検索依頼手段は、前記特定されたデータベースに対してのみ検索依頼を行うものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検索仲介システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の検索仲介システムとして、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−15552(P2009−15552A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175789(P2007−175789)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】