説明

楔状支持体を通した生体試料アレイの空間的に制御された照明

蛍光標識種を含む2次元資料又は資料アレイ、例えば電気泳動ゲル及びマイクロプレートは、照明装置によって照明され、照明装置は、自己蛍光性のない又は低自己蛍光性の材料のスラブを含み、スラブは、1又は複数の縁部から励起光を受け取ると共に上面の長さ及び幅に沿って均一な強度でスラブの上面から出現する光を分布するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料アレイを撮像する方法及び装置の分野に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年1月20日出願の米国仮特許出願第61/145,792号の利益を主張し、その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
生物学的及び生化学的な研究及び分析において、具体的には分析媒体の二次元撮像において、蛍光標識が幅広く使用される。量子ドット、蛍光染料、及びタンパク質、又は本来蛍光する他の生物学的な種が全て、蛍光標識として使用されている。これらの標識が使用されている媒体は、スライド上の矩形の不連続点アレイ、チップ、及びマイクロプレート内のマイクロリットルサイズの試料、並びに連続媒体、例えば組織試料、コロニー計数板、及びスラブ状の電気泳動ゲルを含む。これらの媒体のいずれかにおいて蛍光標識を用いて行われる検出及び撮像は、標識に適した励起波長で媒体を照明すると共に励起の結果として生じる標識からの発光を検出することによって達成される。正確な結果を得るために、媒体の全長及び全幅にわたって照明を均一にして、その結果、媒体中の各一連の座標の箇所が、これらの位置とは無関係に同じ照明を受けることになる。発光がその起点箇所と適切に相関して標識が起源でない放射又は発光と容易に区別できること、かつ発光信号が定量化可能であり、多くの場合において記録可能であることが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、領域の長さ及び幅にわたって実質的に均一に照明することによって二次元領域を蛍光検出する透過照明(transillumination)システムにある。本発明はこれを、標識された試料を支持する平担な表面と、楔の厚い端部においてスラブの縁部に向けられた光源によって照明される楔状の外形とを有する光学的に透明な材料のスラブを使用することにより達成する。スラブの傾斜している下面での反射、屈折、又はその他の光を方向付け直す手段によって、光エネルギを照明縁部から平担な表面に伝達することが達成される。任意の付加的な機構、例えばスラブの下面に位置する局所的な反射若しくは屈折の機構が、又は照らされた縁部の長さに沿って不均一な強度である光源を使用することが、上面に達する光の分布を制御するのに貢献する。本発明のさらなる任意の機構は、入射光を選択された励起波長又は波長範囲に限定する、1若しくは複数の光学フィルタ又はスラブと一体化された同等の要素を含む。スラブの平担な上面は、スラブが二次元的な試料又は試料アレイのためのプラテンとして又は一般的には支持体として役立つことを可能にする。スラブは、好ましくは、撮像機器、具体的にはアレイの下方に限られた隙間しか有していない撮像機器に挿入するように構成されている。好ましい実施態様では、スラブはトレイに組み込まれている。トレイは、撮像機器内の電源に接続するための電気接点に加えて、光源及び任意のレンズと、光学フィルタと、光を透過及び分布する他の構成要素とを含んでいる。「スラブ」という用語がここでは便宜上使用されている。この用語が適用される構成部分が、高度な技術によって製造されると共に精密機器に使用されるものであることが下記の説明から認識されることになる。
【0005】
本発明のこうした機構及びその他の機構、並びにこれらの機構を達成する手段を下記記載において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】本発明によるスラブの側面図。
【図1b】図1aのスラブの頂面図。
【図2a】本発明による第2のスラブの断面図。
【図2b】図2aのスラブの底面図。
【図3】本発明による第3のスラブの断面図。
【図4】本発明による第4のスラブの断面図。
【図5】本発明による第5のスラブの斜視図。
【図6】図5のスラブと共に使用する光源の正面図。
【図7】図1のスラブを組み込むトレイの斜視図。
【図8】図7のトレイを受け取るように構成された撮像機器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のスラブの上面は、スラブが試料支持体として役立つように全体的に平坦であり、スラブの下面はほとんどの場合、やはり平坦であるか、又は平坦な区分を有している。スラブの好ましい形状は矩形であり、また厚さの点では、楔、切頂楔、又は一連の連続的な切頂楔である形状である。楔状のスラブ又は楔状区分を備えたスラブにおいて、光源は各楔の厚い縁部に向けられるか又は光学的に結合される。ここでは、「光学的に結合される」という用語は、一方の部分、この場合は光源から出現した全ての光が、他方の部分、この場合には楔の厚い縁部によって受け取られることを表すために使用される。楔の角度は、表面が完全に平滑ならば、入射光のほとんど、好ましくは全てを全内部反射するのに十分に小さい。したがって、楔は、数パーセント楔、例えば1%〜10%楔、好ましくは2%〜8%楔であることが可能である。(「%楔」という表現は、ここではその通常の意味で、すなわち所与の水平方向距離にわたる鉛直方向の立ち上がり距離を水平方向距離で割り算したものに100を掛けた値という意味で使用される。)好ましい実施態様では、楔の厚い端部は、厚さが約4mm〜約8mmである。スラブは単一の楔から形成されていてもよく、または2つ以上の楔から形成されて、スラブ周囲の厚い縁部が外方に向き、薄い端部が互いに対面して接合されていてもよい。このように方形スラブを、2〜4つの楔から形成することができる。複数の楔の場合には、各楔は、その厚い外縁部に独立した光源とその固有のレンズ、フィルタ及び光分布機構とを有し、縁部に入射する光からその長さ及び幅に沿った光を独立に抽出して抽出した光を上面に方向付け直すことになる。
【0008】
スラブの下面に沿って表面機構を組み込んで、スラブからの光を抽出することと、単純な内部反射以外の手段によって光を上面に方向付け直すこととを補助することができる。従来技術の楔状光ガイドに使用されている表面機構、例えば液晶ディスプレ(LCD)のためのバックライトとして使用されているものを、この目的に使用することができる。楔のテーパと組み合わせたこれらの表面機構の分布は、スラブ上面から出現する上面の単位面積当たりの射出光量が実質的に一定になるように選択することができる。これらの表面機構は、反射作用又は回折作用のあるスラブ下面上の地形的な機構(topographical features)であってもよい。これらの表面機構は、反射する又は回折するスラブの下面に位置する地形的な機構であってもよい。これらの地形的な機構は、下面に施されたテクスチャ、又はホログラフィ形態(holographic morphology)を有するものを含むデジタル処理でデザインされた微細構造化パターンであってもよい。地形的な機構の例は球面状及び楕円形状の凹部であり、これらは規則的又は不規則的アレイを形成することができる。地形的な機構のさらなる例は、艶消し面、微小楔、マイクロプリズム、及び光を方向付け直す外形を有するライン(トラフ又は畝)である。光を方向付け直す外形は、円形又はマイクロプリズムの外形であってもよい。全てのこのような機構は、LCDのための光ガイドの技術分野で公知である。地形的な機構を、成形、機械加工、ビードブラスト加工、酸エッチング、又は他の化学的若しくは機械的手段によって形成することができる。
【0009】
光源からスラブの上面への光透過を改善するのに加えて、地形的な機構を、スラブを通る光透過の固有の不均一性を補填するように構成することができる。例えば縦方向の不均一性は、スラブ自体の内部での吸収に起因して強度が低下することから生じることがある。それというのも、スラブの遠位端部(光源とは反対側)に達するためにより長い距離を移動する光線は、光源に近い方の下面に衝突する光線よりも多くの吸収を、下面に衝突する前に被ることになるからである。同様に、横方向の非照明縁部を通って光エネルギが逃げることから、横方向の不均一性が生じる場合もある。不均一性の方向に沿ってサイズ、高さ、間隔、及び密度を変化させる地形的な機構を使用することによって、任意のこうした不均一性を補填することができる。光の抽出を増大させる地形的な機構を、さもなければ強度が低下する地点で使用することができ、吸収作用を高める地形的な機構を、比較的強度の高い地点で使用することができる。下面上に、局所的な吸収領域又は反射領域、例えばドット又はグリッドを含むことにより、同様の変更を達成することができる。ドット及びグリッドは任意の従来のやり方によって、例えば塗装又は印刷によって適用することができ、これらのサイズ及び密度を、地形的な機構と同じやり方で、同じ目的のために変化させることができる。地形的な機構、ドット、及びグリッドの代替のものは、スラブの下面に光学的に接着された反射膜又は屈折膜である。このような膜の一例は、VIKUITI(登録商標)TRAF2(3M,米国ミネソタ州セントポール)の名称で販売されている膜である。
【0010】
スラブは、透明材料ではあるが、しかし好ましくは実質的に自己蛍光性のない、すなわち低自己蛍光性又は自己蛍光性が全くない材料から作成される。「実質的に自己蛍光性でない」という用語は、いずれの自己蛍光作用も、被検出種の蛍光強度をこれらの種自体に対してかつ試料中の他の種に対して測定する撮像装置の能力に影響を及ぼさないほど十分に低いことを表すために、ここでは使用される。したがって、自己蛍光を発することで知られた材料、例えば樹脂(プラスチック)材料は好ましくない。種々のガラス形態、特にホウケイ酸フロートガラスが好ましい。一例はBOROFLOAT(商標)33(Schott North America, Inc., 米国ペンシルバニア州ドリエ)である。その他の適した材料は、溶融石英及びサファイアを含む。
【0011】
光源は、スラブの縁部を照明する任意の源であってもよい。スラブが、接合された楔区分の形態をなしている場合には、これらの区分は、各楔の厚い縁部がスラブの外縁部に位置するように配置され、別個の光源がその厚い縁部でそれぞれの楔を照明することになる。このように、スラブが薄い縁部で合体する2つの楔から形成されている場合、別個の光源はそれぞれの楔を照明し、光を合体線に向かって方向付けることになる。三楔スラブは3つの光源を利用し、四楔スラブは4つの光源を利用する、などということになる。光源の波長範囲を、蛍光標識の要求を満たすように選択することができる。好ましい光源は、紫外線、可視光、又は近赤外線の範囲で発光するものである。本発明の好ましい実施態様では、さもなければスラブを迂回するかもしれない光を含む、各光源からの光を集め、平行にし、かつスラブ内に方向付けるために、レンズが含まれている。光源として従来の電球を使用することもできるが、照明縁部の長さに沿って均一な強度が求められる場合には、蛍光灯(long bulbs)及びラインライト(linelights)が好ましい。光を方向付けし直すためのリフレクタを備えるバルブを使用することもできる。レーザのように全内部反射によって作用するリフレクタを組み込んだものを含む発光ダイオード(LED)を使用することもできる。密な間隔で配置された電球アレイ又はLEDラインライト、例えばStockerYale, Inc.(米国ニューハンプシャー州セーレム)から入手できるもののように、LED又はレーザのアレイを使用することもできる。LEDラインライトは、アパーチャマスク及び円柱レンズを含む光学系が付随するプリント回路板上に直接に搭載されたLEDダイの連続ラインである。
【0012】
具体的には側縁部が露出した単一楔又は二重楔のスラブの場合、楔の側縁部での光損失を補填するように構成された光源を使用することもできる。したがって、不連続に間隔を置いて配置された個別のLED又はレーザの列を、列の端部に向かって間隔を小さくした状態で用いることにより、端部に供給される光の強度をより高くするように使用することができる。
【0013】
間隔を置いて配置された不連続なLED又はレーザを使用する場合には、丸い又は円柱形の、球面又は非球面レンズをそれぞれのLED又はレーザと一緒に用いることができる。このようなレンズは、JML Optical industries Inc.及びCVI Melles Griot(両方とも米国ニューヨーク州ロチェスター)から入手することができる。最小限の所要スペースのために特に好ましいレンズは、球面又は円柱形式のフレネルレンズ(Fresnel Optics, 米国ニューヨーク州ロチェスター)である。
【0014】
光学フィルタが使用される場合、フィルタは、光がスラブに入る前に通過する最後の構成要素である。好ましい光学フィルタは、狭い波長範囲内の光の70〜95%を透過し、その範囲外の光をppmレベルまで、好ましくは光学濃度(OD)6まで遮断する、被覆された光学干渉帯域通過フィルタである。このようなフィルタは、光源から漏れる光を含む背景光が、スラブが挿入された機器内の検出器に達するのを防止する。フィルタは、長い矩形のストリップフィルタであるか、又は組立てられて長いフィルタになる小型フィルタ集合体であってよい。個々のLED又はレーザに対して、小型の丸いフィルタを使用することもできる。システム内にフレネルレンズが含まれる場合、フレネルレンズによってもたらされるあらゆる自己蛍光性を排除するのにフィルタが有用となる。
【0015】
スラブから出現する光の輝度を高めることができ、多くの場合には、輝度増強フィルタ(BEF)をスラブの上面に光学的に結合することによって、輝度をほぼ倍にすることができる。光学的結合は、光学接着剤又はその他の従来の手段で容易に達成される。BEFは、成形マイクロプリズム機構を含有する薄膜である。これらの機構は、高角度の全内部反射を用いて、高角度光線をスラブ内部に逆反射させる。一旦スラブ内に入ると、反射光は、光が出現するのを可能にする入射角でマイクロプリズムに接近するまで、マイクロプリズムに反射し続ける。その結果、バルクスラブ(bulk slab)表面に対して垂直な方向に対する光の出現角度が小さくなる。成形プラスチックのBEFが使用される場合には、極めて薄いBEFを使用することによって自己蛍光作用を最小化することができる。或いは、マイクロシートガラスのBEFを使用することもできる。現在利用可能なBEFの一例は、製品名VIKUITI(登録商標)BEF III(3M,米国ミネソタ州セントポール)で販売されているものである。
【0016】
スラブから出現する光の均一性を、スラブの上面にディフューザを設けることによってさらに向上させることができる。一般的な照明のために使用される従来のディフューザと同様に、このディフューザは、粗面化、点刻、又は艶消しを施された表面を有していて、スラブから出現した光を、光が試料アレイに達する前に拡散させることができる。スラブのいずれかの側が、均一性を改善するための白い表面又は拡散性の反射面を有することができる。
【0017】
スラブ、光源、及びレンズ及び含まれる場合にはフィルタを、撮像装置又はその他のゲル文書化システム(gel documentation system)内に摺動するトレイに一体化させることができる。撮像システムの例は、Bio−Rad Molecular Imager(商標) Gel Doc(商標) XR System及びBio−Rad Molecular Imager(商標) ChemiDoc(商標) XRS System(Bio−Rad Laboratories, Inc., 米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)である。トレイは、トレイの挿入時に撮像装置内の電源に接続するための電気接続部を含むことができる。或いは、トレイは、一体化された電源としてバッテリーパックを含有することができる。
【0018】
上述のように、本発明の照明装置を、二次元アレイの形態の生体試料、並びに組織区分、コロニー計数板及び他の二次元試料を撮像するために使用することができる。生体試料上、例えばクーマシーブルーで染色された核酸ゲル上で、白色光源、例えば白色LED又は可視白色電球を使用して、較正された濃度測定を実施するための照明装置として本発明の照明装置を使用することもできる。標準的なステップ密度タブレットターゲット(step−density tablet target)で、較正自体を実施することができる。このようなターゲットは、例えばTiffen Company(米国ニューヨーク州ハウポジ(Hauppage))から入手可能である。
【0019】
本発明によるスラブの一例は、図1a及び1bに示されている。これらの図面に示されたスラブ11は、図1bの頂面図に示されているように、形状が矩形である上面及び下面を有している。図1aの側面図に示されているように、スラブ11の上面12は水平方向に平坦であるのに対して、下面13は平坦ではあるものの傾斜しており、スラブに楔形状を与えている。下面の勾配はこれらの図面では誇張して示されている。楔の厚い縁部14は、図面では左側にあり、薄い縁部15は右側にある。楔は、1つの箇所に向けてテーパしておらず、その代わりに、薄い縁部15において有限の厚さで終端しているという点で切頂楔である。
【0020】
図1a及び1bのスラブは単一楔であり、光を楔の厚い縁部に方向付けるように、単一の光源16が位置決めされている。コリメーティングレンズ17が光源からの光線を平行又はほぼ平行にし、光学フィルタ18は、所望の範囲外の波長の光をフィルタリングして排除する。楔の下面13内部に成形された抽出機構は、スラブの内部からの上向きに、光線が出現する上面12に対して光線を方向付け直すのを制御する。上面12には電気泳動ゲル21が示されている。ゲル中の溶質又は溶質バンドに蛍光染料が標識されており、蛍光染料は、上面12を通して出現する光線から励起光を受け取る。蛍光発光の検出はゲルの上方から行われる。
【0021】
図2a及び2bは、図1a及び1bに示されたような1つの楔ではなく、4つの楔の形態をなすスラブ31を示している。図2aの断面図では、楔32,33,34の3つを見ることができるのに対して、図2bの底面図では、4つ全ての楔32,33,34,35を見ることができる。4つの楔の厚い縁部は、スラブ31の矩形周囲部を形成しており、各楔の形状は三角形であり、その下面は上向きにスラブの中心に向かって或る角度をなしている。したがって、スラブは、その下面に4つの切子面(facet)を有しており、それぞれの切子面が4つの楔のうちの1つの楔の傾斜面を画定している。4つ全ての切子面はスラブの中心箇所36で合体し、この中心箇所はスラブにおける最も薄い箇所である。4つの楔のそれぞれは、固有の光源41a,41b,41c,41d、固有のコリメートレンズ42a,42b,42c,42d、及び固有の光学フィルタ43a,43b,43c,43dを有する。それぞれの楔は、図1a及び図1bの単一楔と同じように作用し、上面に位置する電気泳動ゲル51によって受け取られるように、上面に出現する、スラブを通る上向きの励起光を方向付ける。
【0022】
本発明の特定の実施態様によるスラブの種々の層の分解図が図3に示されている。スラブ31自体、及び電気泳動ゲル32として示された試料は、図1a及び1bと同一である。スラブの上面には、輝度増強フィルタ33及びディフューザ34が設けられている。下面には、反射又は屈折によって光を方向付け直す作用を向上させる膜35が設けられている。
【0023】
スラブ31の下面の地形的な機構41が、図4の側面図に示されている。上述したように、これらの機構は、光源からの入射光を受け取り、スラブの上面42に光を方向付け直す。
【0024】
スラブから出現する光の横方向の不均一性が図5に示されている。この図面のスラブ51は、楔の厚い縁部52のわずかに上方から見た状態で斜視図で示されている。厚い縁部52に向けられた光源から上面53に達した光は、2つの側縁部54,55に近い部位で強度の低下を被る。この低下を補填するために、図6に示された光源61が使用される。光源61は、LED又はレーザ62の線形アレイであり、アレイの2つの端部におけるLED又はレーザの中心間の間隔63は、アレイ中央部における中心間の間隔64よりも小さい。光源から結果としてもたらされた光の出力がグラフとして示されている。ここで縦軸は光の強度である。
【0025】
図7は、前出の図面に示された構成要素を組み込んだトレイ71を示しており、図8は、トレイ及び試料を受容する撮像機器81を示している。図7で見ることができる部分は、スラブの上面72及び光源73の外縁部である。見ることはできないものの、レンズ、光学フィルタ、及び膜又はスラブの上面及び下面に光学的に結合された他の層も構造内に組み込まれている。トレイ71はさらに、機器81内の対応する接点と接続するための電気接点74,75と、機器内へのトレイの挿入のための案内部76,77とを含んでいる。示されているように、楔の最も厚い縁部を形成するスラブの縁部が図7の前部に示されており、この縁部は、この端部が最初に機器内に挿入されるように構成されている。図8の機器81は、トレイ71が配置されるスライド又は引き出し82を含み、全ての検出し撮像する構成要素が機器ハウジング83内部にあり、これらを見ることはできない。コントロールパネル84が機器の前部に位置している。
【0026】
添付の特許請求の範囲において、「を具備する」又は「を含む」という用語およびその活用形は、ステップ又は要素の記載に続く場合、さらなるステップ又は要素の追加が任意であり、排除されないことを意味するものとする。本明細書中に引用された全ての特許明細書、特許出願明細書、及びその他の刊行済参考文献は、これらの全体を引用することにより本明細書に組み入れられる。本明細書中に引用された参考資料又は一般的な従来技術と、本明細書の明確な教示内容とのいずれの矛盾も、本明細書中の教示内容を優先させて解決されるものとする。これは、当業者に理解される語句の定義と、本明細書中に明示された同じ語句の定義とのいかなる矛盾をも含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識生体試料の平面アレイを照明する装置であって、
光学的に透明な材料のスラブと、光源と、光学フィルタとを具備し、
前記光学的に透明な材料のスラブが、光による照射時に自己蛍光を実質的に示さず、前記スラブが、平担な上面と前記上面に対して鋭角をなす下面とを有する区分を具備して、これにより全体的に楔状の外形を有する前記区分を提供し、前記区分の厚さが前記区分の1つの縁部に沿って最大の厚さに増大しており、前記下面が、前記区分に入る光を前記縁部で前記上面に向かって方向付けるようになっており、
前記光源が、光を、前記縁部を通して前記区分内に方向付けるように位置決めされており、
前記光学フィルタが、前記光源と前記縁部との間に位置決めされて、予め選択された波長範囲内の光を選択的に通す、
装置。
【請求項2】
前記スラブが、正確に1つの前記区分を含んでいる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スラブが、複数の前記区分を含んでおり、
前記装置が、前記区分毎に別個の前記光源と別個の前記光学フィルタとを含んでいる、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スラブが2つ又は4つの前記区分を含んでおり、
前記装置が、前記区分毎に別個の前記光源と別個の前記光学フィルタとを含んでいる、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記下面が平担である、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記楔状の外形が1%楔〜10%楔の範囲内にある、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記楔状の外形が2%楔〜8%楔の範囲内にある、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記下面が、前記スラブから前記上面を通って出現する光の均一性を促進するように、全体的に平担ではあるものの前記下面上に分布した表面の偏向を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
さらに、前記下面上に、光吸収性又は光反射性が前記下面の残りの部分よりも大きい領域を具備し、
前記領域が、前記スラブから前記上面を通って出現する光の均一性を促進するように、前記下面上に分布している、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
さらに、前記光源と前記縁部との間に位置決めされたコリメーティングレンズを具備し、
前記コリメーティングレンズが、さもなければ前記縁部を迂回することになる前記光源からの光を、前記縁部を通るように方向付ける、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記光源が、前記縁部の全長にわたって延びる連続光源である、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記光源が、前記縁部に沿って配置された不連続光源のアレイである、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記光源がLEDラインライトである、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記縁部の各端部に向かって強度が増大する光を生成するように、前記縁部に沿って不連続光源のアレイが配置されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
さらに、前記上面に光学的に結合された輝度増強フィルタを具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
さらに、前記上面にディフューザを具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項17】
さらに、前記スラブと前記光源と前記光学フィルタとを組み込んだトレイを具備し、
さらに、組み込まれた電源と前記光源を前記電源に接続させる電気接続部とを含む撮像装置内部に、前記トレイを摺動させること可能にする機構を含んでいる、
請求項1に記載の装置。
【請求項18】
蛍光標識生体試料の平面アレイを照明する方法であって、
前記方法が、
(a)光による照射時に自己蛍光を実質的に示さない光学的に透明な材料のスラブの上面上に前記平面アレイを置くステップであって、
前記スラブが、下面の少なくとも一区分が前記上面に対して鋭角である下面を有し、これにより、前記区分に、前記スラブの縁部に沿って最大の厚さを有する全体的に楔状の外形を提供し、前記下面が、前記縁部で前記区分に入って前記下面に入射する光を、前記上面に向かって方向付け直すステップと、
(b)前記縁部を通して前記区分内に光を方向付けるように位置決めされた光源で前記スラブを照明して、これにより、前記蛍光標識生体試料の平面アレイを照明するように、前記光が前記下面によって前記スラブを通って前記上面に向かって方向付け直されるステップと、
を含む、
方法。
【請求項19】
ステップ(b)が、前記縁部の各端部に向かって増大する入射光強度を達成するように、前記縁部の長さに沿って不均一に前記縁部を通して前記スラブを照明するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記スラブに入る光を予め選択された波長範囲に事前に限定するように、前記光源からの光をフィルタリングするステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
さらに、前記光源からの前記光を、前記光源と前記縁部との間に位置するコリメーティングレンズを通して平行にするステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記縁部が照明縁部として画定され、かつ、
前記照明縁部に隣接する前記スラブの露出した縁部を通して生じる光損失を補填するように、前記下面が前記表面に沿って不均一なテクスチャが形成される、
請求項18に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記上面に光学的に結合された輝度増強フィルタに前記光を通すことにより、前記蛍光標識生体試料の平面アレイに達する光の輝度を増大するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記楔状の外形が1%楔〜10%楔の範囲内にある、
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記楔状の外形が2%楔〜8%楔の範囲内にある、
請求項18に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−515897(P2012−515897A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546439(P2011−546439)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/021456
【国際公開番号】WO2010/090824
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】