説明

極低粘度セルロースエーテルの製造方法および製品

本開示は、変色が殆どまたは全くない極低粘度セルロースエーテルを製造する方法およびそれから得られるセルロースエーテル製品を対象とする。該方法は、セルロースエーテルを酸化剤および酸と接触させて混合物を形成することを含む。該混合物を次いで加熱および中和する。該方法は、第2の酸化剤を混合物に添加して、粘度1.2cPから2cP未満の極低粘度セルロースエーテルを形成することを含む。極低粘度エーテルはまた、APHA色値1〜100を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、米国特許出願整理番号第60/986,686号(2007年11月9日出願)に対する優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組入れる。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、極低粘度セルロースエーテルを形成する方法およびそれから得られるセルロースエーテル製品に関する。
【0003】
セルロースエーテルは、一般的に、錠剤上のフィルムコーティング物質として、食品添加物として、および医薬カプセルにおいて使用される。低分子量セルロースエーテルは、しばしば、黄変または変色を示す。セルロースエーテルの分子量が低くなると、変色度が増大することが公知である。
【0004】
外観の影響が大きい用途について許容可能な着色である極低粘度セルロースエーテルを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
本開示は、変色が殆どまたは全くない極低粘度セルロースエーテルの製造方法およびその製品を対象とする。ある態様において、セルロースエーテルの製造方法を提供する。該方法は、セルロースエーテルを酸化剤および酸と接触させて混合物を形成することを含む。該混合物を次いで加熱する。該混合物を続いて中和する。該方法は、少なくとも第2の酸化剤を混合物に添加して、20℃で測定したときの粘度が1.2cP〜50cPであるセルロースエーテルを形成することを含む。ある態様において、該方法は、2質量%水性溶液で20℃にて測定したときの粘度が1.2cPから2cP未満である極低粘度セルロースエーテルを形成する。
【0006】
混合物は、温度70℃〜100℃で1〜20時間加熱できる。混合物はまた、第2の酸化剤の添加後に同じパラメータ下で加熱できる。
【0007】
ある態様において、該方法は、混合物の水の量を3質量%〜6質量%の間で維持することを含む。
【0008】
ある態様において、該方法は、酸素不含有環境中で実施できる。酸素不含有環境は、不活性ガスのブランケット(blanket)(雰囲気生成)を反応チャンバーに適用することによって与えることができる。
【0009】
ある態様において、該方法は、APHA値が1〜100であるセルロースエーテルを形成することを含む。別の態様において、該方法は、セルロースエーテルを、APHA値1〜20を有するように形成することを含むことができる。よって、極低粘度セルロースエーテルは、同時に、極低着色セルロースエーテルであることができる。
【0010】
セルロースエーテルを製造する別の方法を提供する。ある態様において、セルロースエーテル製造のためのこの方法は、セルロースエーテルを第1の酸化剤と接触させて混合物を形成することを含む。該混合物を加熱する。該方法はまた、第2の酸化剤を混合物に添加し、そしてAPHA値が1〜20である極低着色セルロースエーテルを形成することを含む。この方法は、極低着色セルロースエーテルを、酸の添加なしで製造する。加熱は、第2の酸化剤の添加前、第2の酸化剤の添加後、およびこれらの組合せで行うことができる。
【0011】
ある態様において、該方法は、セルロースエーテルを酸と接触させることを含む。酸は、第1の酸化剤とともに添加し、そして2質量%水性溶液で20℃にて測定したときの粘度が約3cP未満であるセルロースエーテルを形成する。該混合物は加熱後に中和してもよい。
【0012】
ある態様において、基材をコーティングする方法を提供する。該方法は、極低粘度セルロースエーテルの水性溶液を基材上に適用すること、および、極低粘度エーテルを含有するコーティングを基材上に形成することを含む。水性溶液は、APHA値1〜100を有してもよい。別の態様において、コーティングを基材全体に適用して、コーティングが基材全体を包囲するようにすることができる。
【0013】
ある態様において、水性溶液は、少なくとも10質量%の極低粘度セルロースエーテルを含有する。この高濃度のセルロースエーテル溶液を、次いで、基材上にスプレーして基材をコートする。
【0014】
ある態様において、組成物を提供する。組成物はコーティング組成物であることができる。組成物は、セルロースエーテルを含む。セルロースエーテルの2質量%水性溶液の粘度は、20℃で、1.2cPから2cP未満である。セルロースエーテルの2質量%水性溶液はまた、APHA値1〜100を有することができる。ある態様において、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。組成物はコーティング溶液であることができる。コーティング溶液は、少なくとも10質量%のセルロースエーテルを含有できる。
【0015】
ある態様において、コーティング組成物であることができる別の組成物を提供する。組成物は、セルロースエーテルを含む。セルロースエーテルの2質量%水性溶液は、20℃での粘度3cP未満、およびAPHA値1〜100を有する。
【0016】
ある態様において、コートされた組成物を提供する。コートされた組成物は、基材および該基材上のコーティングを含む。コーティングは、極低粘度セルロースエーテルを含有する。コーティング中に存在するセルロースエーテルの粘度は、2質量%水性溶液で測定したときに、20℃で1.2cPから2cP未満である。コーティングは基材全体を包囲できる。
【0017】
さらなる態様において、コーティングは、少なくとも10質量%の極低粘度セルロースエーテルを含有する。コーティングは単層であることができる。コーティングは、基材の1質量%〜20質量%の量で存在できる。
【0018】
ある態様において、コーティング中に存在する極低粘度セルロースエーテルは、極低着色セルロースエーテルである。ある態様において、コーティングは透明、明澄、無ヘイズおよび/または無着色であることができる。
【0019】
本開示の利点は、極低粘度セルロースエーテルを形成するための改善された方法の提供である。
【0020】
本開示の利点は、極低着色セルロースエーテルを形成するための改善された方法の提供である。
【0021】
本開示の利点は、改善された極低粘度セルロースエーテルの提供である。
【0022】
本開示の利点は、極低着色セルロースエーテルでもある極低粘度セルロースエーテルの提供である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、従来のセルロースエーテルについての色対粘度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に挙げる任意の数値範囲は、下側値から上側値までの全ての値を、任意の下側値と任意の上側値との間が少なくとも2単位離れていることを条件に、1単位刻みで包含する。例としては、組成の、物理的なまたは他の特性,例えば分子量、メルトインデックス等が100〜1,000であると記載される場合、全てのそれぞれの値,例えば100,101,102等、および下位範囲,例えば100〜144,155〜170,197〜200等が、本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満である値を含むか、または1超の端数を含む(例えば1.1,1.5等)範囲について、1単位は、それに見合って0.0001,0.001,0.01または0.1と考えられる。10未満の有効数字1桁を含む範囲(例えば1〜5)について、1単位は、典型的には0.1と考えられる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、そして列挙する下限値と上限値との間の数値の全ての可能な組合せは、本明細書で明示的に記載されると考えるべきである。本明細書で議論するように、密度、成分の質量パーセント、tanデルタ、分子量および他の特性に言及して数値範囲を列挙した。
【0025】
本明細書で用いる用語「組成物」は、組成物を含む物質の混合物、さらに、組成物の物質から形成される反応生成物および分解生成物を包含する。
【0026】
本発明で用いる用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンド物は混和性であってもそうでなくてもよい。このようなブレンド物は、相分離していてもしていなくてもよい。このようなブレンド物は、透過型電子顕微鏡によって評価される1以上のドメイン配置を含んでも含まなくてもよい。
【0027】
ある態様において、セルロースエーテルを製造する方法を提供する。該方法は、セルロースエーテルを第1の酸化剤と接触させて混合物を形成することを含む。酸を混合物に添加する。混合物を加熱してセルロースエーテルを解重合させる。混合物を続いて中和させる。該方法は、少なくとも第2の酸化剤を混合物に添加することを含む。該方法は、2質量%水性溶液で20℃にて測定したときの粘度が1.2cP〜50cP(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であるセルロースエーテルを形成することをさらに含む。
【0028】
ある態様において、該方法は極低粘度セルロースエーテルを形成することを含む。本明細書で用いる「極低粘度(VLV)」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が1.2センチポイズ(cP)から2cP未満(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であるような分子量のセルロースエーテルである。本明細書で記載する粘度値は、ASTM D1347(メチルセルロース)および/またはASTM D2363(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って、2質量%セルロースエーテル水性溶液中で20℃での測定にて評価されることが理解される。
【0029】
本明細書で用いる「セルロースエーテル」は、セルロースのエーテル結合誘導体(部分または完全のいずれも)である。セルロースエーテルは、セルロースパルプ(典型的には木材またはコットンから得る)から製造する。セルロースパルプは、セルロースパルプを水酸化アルカリでアルカリ化することによってアルカリセルロースに変換し、そして次いで、アルカリ化したセルロースを、乾式、ガス相またはスラリープロセスにおいて、1種以上のエーテル化剤でエーテル化して、高分子量のセルロースエーテルを形成する。これらのセルロースエーテルの分子量は、次いで、セルロースエーテルを酸(例えば塩化水素)で解重合させ、そして任意に、解重合させたセルロースエーテルを塩基化合物(例えば無水炭酸水素ナトリウム)で中和することによって低下させることができる。代替として、セルロースエーテルを、酸触媒分解、酸化的分解、高エネルギー放射による分解、および微生物または酵素による分解によってさらに解重合させてもよい。
【0030】
セルロースエーテルは、「水溶性」セルロースエーテルまたは「水不溶性」セルロースエーテルであることができる。「水溶性」セルロースエーテルは、部分解重合前に水中での溶解性が少なくとも2グラム(100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧で)であるセルロースエーテルである。水溶性セルロースエーテルの非限定の例としては、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルセルロース;カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース;C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルセルロース;C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;混合ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、混合C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルエチルセルロース、またはアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(アルコキシ基が直鎖または分岐であり2〜8炭素原子を含有するもの)が挙げられる。
【0031】
セルロースエーテルは、水不溶性セルロースエーテルであることができる。「水不溶性」セルロースエーテルは、部分解重合前に、水中での溶解度が2グラム未満、または1グラム未満(100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧にて)であるセルロースエーテルである。水不溶性のセルロースエーテルの非限定の例としては、エチルセルロース、プロピルセルロースおよびブチルセルロースが挙げられる。
【0032】
ある態様において、セルロースエーテルは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0033】
さらなる態様において、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはメチルセルロース(MC)である。HPMCおよびMCは、METHOCEL商標でThe Dow Chemical Company,Midland,Michiganから入手可能である。好適なHPMCおよびMCの非限定の例を、下記表1に記載する。
【0034】
【表1】

【0035】
ある態様において、混合物中で用いるセルロースエーテルは高粘度セルロースエーテルである。「高粘度」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が400cP超、または400cP〜100,000cPであるような分子量のセルロースエーテルである。別の態様において、初期セルロースエーテルは、低粘度セルロースエーテルであることができる。「低粘度」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が2センチポイズ(cP)〜400cPであるような分子量のセルロースエーテルである。さらなる態様において、初期セルロースエーテルは、方法の完了後のセルロースエーテルの粘度よりも大きい粘度を有する。
【0036】
ある態様において、セルロースエーテルは、自由流動性粒状物質である。セルロースエーテルは粉砕および乾燥させる。セルロースエーテルについての平均粒子サイズは、20μm〜約1000μm(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であることができる。初期セルロースエーテルについての水分量は、セルロースエーテルの、1質量%〜10質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または1.5質量%〜5質量%、または約2質量%である。
【0037】
セルロースエーテルは、反応器のチャンバー内に入れる。反応器は、その中に入れる物質をかき混ぜ(agitate)、混合または撹拌(stir)するように装備できる。好適な反応器の非限定の例としては、フラスコ、卵型フラスコ、転動反応器、リボンブレンダー、Loedige反応器、およびロータリーエバポレーターが挙げられる。前記の反応器のいずれも、反応器の内容物を混合、かき混ぜおよび/または撹拌する好適な設備を備えることができる。
【0038】
酸化剤を反応器内のセルロースエーテルに添加して、混合物を形成する。酸化剤は、過酸化水素およびその塩、他のパーオキソ化合物,例えば、ナトリウムパーオキソスルフェート、オゾン、パーボレートナトリウムクロライト、ハロゲン、ハロゲンオキサイドならびに他の化合物(漂白用に用いるもの)等であることができる。ある態様において、酸化剤は過酸化水素である。酸化剤は溶液状で添加できる。酸化剤の濃度は、溶液の1質量%〜50質量%または30質量%〜40質量%の範囲であることができる。酸化剤は、セルロースエーテルの約0.01質量%〜約6質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または2質量%〜約4質量%の量で添加できる。ある態様において、酸化剤は、混合物の水の量を、セルロースエーテルの1質量%〜10質量%の間、または3質量%〜6質量%の間に維持するように添加する。さらなる態様において、ホウ化水素ナトリウムを酸化剤代わりに用いてもよい(無水または酸化剤と同じ量および形状のいずれでも)。
【0039】
該方法は、酸を混合物に添加することを含む。酸は反応器に添加され、そしてセルロースエーテルと接触して混合物を形成する。好適な酸の非限定の例としては、任意のハロゲン化水素酸(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素)、硫酸、硝酸およびリン酸が挙げられる。前記の酸の任意の組合せもまた使用できる。酸の量は、0.05%〜1%、または0.1%〜0.5%(セルロースエーテルの総質量基準)である。ある態様において、酸のpKaは5未満である。
【0040】
酸は、部分的にセルロースエーテルを分解または他には解重合させる。酸は、混合物に、反応器内で任意の形状,例えば液体、蒸気またはガスとして添加できる。ある態様において、酸は、混合物に無水ガスの形で添加する。無水ガスは多くの理由:1)無水酸ガスは、セルロースエーテルとの高度の分散および接触を与えること;2)無水酸ガスの導入は、酸の局所的な濃縮を防止し、これにより反応器内のタール形成を回避すること;3)無水酸ガスは、水の混合物への添加を回避すること;そして4)添加される追加の水なしで、セルロースエーテル製品による水の吸収および反応器内の水の凝縮の問題を回避すること;で有利である。無水酸ガスは、反応器の上部空間に、またはセルロースエーテル粉末中に直接、添加できる。反応器の上部空間を不活性ガスでパージして、反応チャンバーからの酸素を排除できる。
【0041】
混合物を加熱して解重合反応を促進する。ある態様においては、加熱中に混合物をかき混ぜる(撹拌、振とう、および/または転動させる)。混合物を温度約70℃〜約100℃で約1時間〜20時間(またはその間の任意の値または下位範囲)または8時間〜16時間、または10時間超〜20時間、または約16時間加熱する。
【0042】
セルロースエーテルが解重合するに従って、セルロースエーテルは変色を示す。言い換えると、セルロースエーテルの分子量が低くなるに従って、セルロースエーテルの変色が増大する。いずれの特定の理論にも拘束されることを望まないが、解重合が進行するに従って、ポリマー末端基がますます形成されると考えられる。ポリマー末端基の増大は、数が増えるフォルマントポリマー末端基をキャップする不純物の数の増大に対応する。これらの残存不純物は変色を招来する。相対的により高い数の末端基が低粘度セルロースエーテル中に存在すると仮定すると、低粘度セルロースエーテルは、高粘度セルロースエーテルよりも大きい変色を有する傾向がある。粘度のより低い終点に近づくに従って、セルロースエーテル変色の増大が顕著である。例えば、図1は、種々のMETHOCEL(E3,E5,E6,El5,E50,およびE4M)製品についての着色と粘度との反比例関係を示す。
【0043】
セルロースエーテルの変色は、1)酸素不含有環境中で解重合反応を実施すること、および/または2)解重合の間の混合物の水の量を1質量%〜10質量%の間に制限すること、によって最小化できることを見出した。ある態様において、該方法は酸素不含有環境中で実施する。酸素不含有環境は、解重合反応の間および/または製造方法全体の間に、反応器チャンバー内の不活性ガス(例えば窒素ガスまたは希ガス)のブランケットを適用することによって与えることができる。
【0044】
混合物の水の量を、解重合反応の間に、1質量%〜10質量%の間(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)に維持すること(単独または不活性ガスのブランケットとの組合せで)は変色を低減する。(i)水の量が少なすぎる混合物、および(ii)水の量が多すぎる混合物、の両者が各々セルロースエーテルの変色に寄与することを見出した。驚くべきことに、混合物の水の量を3質量%〜6質量%の間に維持することは、解重合反応の間の変色の量を最小化する。
【0045】
該方法は、混合物を中和することを含む。ある態様において、中和剤を反応混合物に添加する。「中和剤」は、混合物の低pH(典型的には、酸添加後にpH1〜5)をpH約5.0〜約8.0にすることができる化合物である。中和剤は、解重合反応による任意の残存する酸を中和する。中和剤はまた、セルロースエーテル中に存在する酸を抽出してもよい。好適な中和剤の非限定の例としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩、コハク酸のアルカリ塩、およびこれらの組合せが挙げられる。ある態様において、中和剤は炭酸水素ナトリウムである。
【0046】
中和剤の添加は、解重合反応の終了を確保する。ある態様において、中和剤は無水塩基粉末である。無水粉末は有利である。これは混合物中に水または水分を導入しないからである。例えば、中和剤は無水炭酸水素ナトリウム粉末である。ある態様において、中和剤は、セルロースエーテルの水分量を1質量%〜10質量%の間、または3質量%〜6質量%の間に維持するように水分量を有してもよい。
【0047】
中和剤は、当該分野で一般的に公知であるようにこれを反応器内に導入することによって混合物に添加する。中和剤の好適な添加方法の非限定の例としては、液体注入、エアロゾルまたは蒸気のスプレー、粉末の吹き付け(すなわち圧縮または強制換気された空気または他の機械的圧力での乾燥粉末の吹き付けによる)が挙げられる。中和剤は、上部空間内に存在する任意の酸を中和し、そしてセルロースエーテル中に存在する幾らかまたは殆どの酸を引き出す。ある態様において、中和を行うに従って混合物をかき混ぜる。
【0048】
中和は、酸および中和剤の化学的特性に応じて幅広い範囲の温度で行うことができる。中和剤は、解重合反応温度で添加してもよい。代替として、混合物は、中和剤の混合物への添加前に、解重合反応温度未満(または雰囲気温度以下)まで冷却してもよい。
【0049】
該方法は、第2の酸化剤を混合物に添加することを含む。第1の酸化剤および第2の酸化剤は、同じでも異なってもよい。第2の酸化剤は、本明細書で先に議論した任意の酸化剤であってもよい。第2の酸化剤は、混合物の0.01質量%〜6質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または混合物の2質量%〜4質量%の量で添加する。第2の酸化剤を添加した時点で、混合物を温度60℃〜110℃(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または70℃〜100℃で、1分間〜20時間(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または1時間〜4時間加熱してもよい。これは、粘度が約1.2cPから2cP未満である極低粘度(VLV)セルロースエーテルを形成する。ある態様において、第2の酸化剤は、混合物の水の量を1質量%〜10質量%の間、または3質量%〜6質量%の間に維持するように添加する。該方法は、任意の数の追加の酸化剤(すなわち、3、4、5またはこれを超える酸化剤)の添加を含むことができることが理解される。任意の後続の酸化剤は、第2の酸化剤の添加と同様の様式で添加できる。
【0050】
ある態様において、該方法は、American Public Health Association(APHA)色値が1〜100(またはその中の任意の値もしくは下位範囲)、または1〜50、または1〜30、または1〜20であるセルロースエーテルを形成することを含む。APHA値は、ASTM D−5386(水性溶液中2%濃度で雰囲気温度にて)に従って評価する。本明細書で用いる「極低着色(very low color)」(VLC)セルロースエーテル」は、APHA値が1〜20(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であるセルロースエーテルである。
【0051】
本発明の方法は、低着色のVLVセルロースエーテルを有利に製造する。先に議論したように、許容可能な着色のVLVセルロースエーテルを製造することが、特に外観の影響が大きい用途(例えば錠剤コーティング)について問題であった。図1に示すように、セルロースエーテル粘度が10cP未満に低下するに従って、変色は劇的に増大する。このような変色は、粘度約3〜5cP以下を有するセルロースエーテルを、外観の影響が大きい用途について好適でないものにする。本発明の方法は、しかし、この問題を解決して、驚くべき高い色品質を有するVLVセルロースエーテル−すなわち、APHA値1〜100のセルロースエーテルを形成する。ある態様において、VLVセルロースエーテルについてのAPHA値は100未満であることができる。さらなる態様において、本発明の方法は、極低着色の、すなわちAPHA値が1〜20である、VLVセルロースエーテルを形成する。
【0052】
ある態様において、この方法は、組成物,例えばコーティング組成物を製造できる。組成物はセルロースエーテルを含む。セルロースエーテルの2質量%水性溶液は、粘度1.2cPから2cP未満を20℃で有する(すなわち、VLVセルロースエーテル)。ある態様において、セルロースエーテルの2質量%溶液のAPHA値は1〜100である。さらなる態様において、このVLVセルロースエーテルはまた、APHA値1〜20であるVLCセルロースエーテルであることができる。さらに、さらなる態様において、セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。コーティング組成物を用いて即時放出コーティングを形成できる。即時放出コーティングの非限定の用途は、経口投与錠剤のコーティング用である。
【0053】
ある態様において、組成物は、VLVセルロースエーテルを含有するコーティング溶液である。VLVセルロースエーテルは、コーティング溶液の少なくとも10質量%、または20質量%超、または少なくとも10質量%から40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)の量で存在する。
【0054】
前記の方法は、本明細書で開示する2つ以上の態様を含むことができる。
【0055】
ある態様において、セルロースエーテルを製造するための別の方法を提供する。該方法は、セルロースエーテルを第1の酸化剤と接触させて混合物を形成することを含む。混合物を次いで加熱する。該方法は、第2の酸化剤を混合物に添加して、APHA値が1〜20である極低着色セルロースエーテルを形成することを含む。該方法は任意の数の追加の酸化剤(すなわち、3、4、5またはこれを超える酸化剤)の添加を含むことができることが理解される。任意の後続の酸化剤は、第2の酸化剤の添加と同様の様式で添加できる。発明者らは、驚くべきことに、酸化剤の複数ステップ添加を用いるこの方法が驚くべき高い色品質(すなわち変色が低いかまたはない)のセルロースエーテルを、酸添加の必要性なしでもたらすことを見出した。本発明の方法はVLCセルロースエーテルを製造する。VLCセルロースエーテルは酸の使用なしで製造される。
【0056】
第1の酸化剤および第2の酸化剤は同じでも異なってもよく、そして本明細書で先に開示した任意の酸化剤であることができる。第1および第2の酸化剤の形状および量は本明細書で先に開示した通りであることができる。ある態様において、第1の酸化剤および第2の酸化剤は、セルロースエーテルの水の量1質量%〜10質量%の間または3質量%〜6質量%の間を維持するように添加する。
【0057】
混合物の加熱は、(i)第2の酸化剤の添加前(すなわち、第1の酸化剤の添加後)、(ii)第2の酸化剤の混合物への添加後、および(iii)これらの任意の組合せ、の時点で実施できる。加熱は、本明細書で先に議論した任意の温度および/または持続時間で行うことができる。
【0058】
ある態様において、該方法は酸を使用できる。この態様において、該方法は、セルロースエーテルを第1の酸化剤および酸と接触させることを含む。酸(ならびに酸の形状および量)は、本明細書で先に開示した通りであることができる。該方法は、粘度約3cP未満(2質量%水性溶液で20℃にて測定したとき)であるセルロースエーテルの形成をさらに含む。さらなる態様において、該方法は、混合物を加熱後に中和することを含む。続いて、該方法は、粘度3cP未満のVLCセルロースエーテルの形成を含む。
【0059】
ある態様において、この方法は組成物(例えばコーティング組成物)を製造できる。該組成物はセルロースエーテルを含む。セルロースエーテルの2質量%水性溶液の粘度は20℃で3cP未満であり、そしてAPHA値は1〜100(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)である。ある態様において、セルロースエーテルを含む組成物の2質量%溶液は、APHA値が1〜20であるVLCセルロースエーテル溶液である。さらに、さらなる態様において、セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0060】
ある態様において、基材をコーティングするための方法を提供する。該方法は、VLVセルロースエーテルの水性溶液を基材上に適用し、そして基材上にコーティングを形成することを含む。水性溶液を適用して、基材の1つ以上の表面をコートまたはそうでなければ覆うことができる。代替として、水性溶液を適用して基材全体をコートできる。
【0061】
本発明で用いる「基材」は、セルロースエーテルで部分的または完全に覆うことができる対象物である。好適な基材の非限定の例としては、経口摂取用錠剤、食物製品、医薬製品(医薬の錠剤およびカプセル)、薬剤、薬物、種子、動物飼料、顆粒、ビーズ、粉末、トローチ、および肥料が挙げられる。基材は、カプセル化物(例えば粒子状物質)であってもよく、粒子状物質はコーティングによってカプセル化(マイクロ−またはマクロ−カプセル化)されている。
【0062】
水性溶液の基材上への適用としては、水性溶液の基材上へのスプレーおよび/またはアトマイズを挙げることができる。適用としては、基材の水性溶液中への浸漬(全体的または部分的に)も挙げることができる。ある態様において、水性溶液を基材上にスプレーする。
【0063】
ある態様において、VLVセルロースエーテルの水性溶液のAPHA値は1〜100である。さらなる態様において、水性溶液は、APHA値1〜20および粘度3cP未満のVLCセルロースエーテル溶液であることができる。
【0064】
ある態様において、水性溶液は、少なくとも10質量%、または20質量%超、または10質量%〜40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)のVLVセルロースエーテルを含有する。該方法は、少なくとも10質量%のVLVセルロースエーテルを含有する水性溶液を基材上にスプレーして基材をコートすることを含む。さらなる態様において、該方法は、少なくとも10%のセルロースエーテルを含有する単層の水性溶液を適用し、そして基材をセルロースエーテルで完全にコーティングすることを含む。
【0065】
ある態様において、少なくとも10%のVLVセルロースエーテルを有する水性溶液は、粘度3cP〜6cPの従来のセルロースエーテル溶液と同様および/または同一の着色を有することができる。例えば、既知粘度の10質量%超のVLVセルロースエーテルを有する水性溶液についての着色は、Methocel E3,E5および/またはE6の溶液の着色(すなわちAPHA値40〜60)と同一またはこれより低い(同じ(またはより低い)粘度で)ことができる。言い換えると、少なくとも10%濃度のVLVセルロースエーテル溶液は、セルロースエーテル濃度がより低い従来のセルロースエーテルコーティング溶液(すなわち従来のMETHOCEL E3,E5,E6のコーティング溶液)と同じまたはより低い変色を有する。よって、本開示は、従来のセルロースエーテルコーティング溶液と比べて、(i)より高いセルロースエーテル濃度、および(ii)同じ(またはより良好な)色品質、を有するVLVセルロースエーテルコーティング溶液を提供する。
【0066】
少なくとも10質量%のセルロースエーテルを含有する水性溶液をスプレーする能力は、幾つかの理由で有利である。従来のフィルムコーティング技術は時間がかかる。典型的なセルロースエーテルコーティング溶液(特に即時放出フィルムコーティング)は10質量%を超えるセルロースエーテルを含有できないからである。これは、10質量%超の濃度のセルロースエーテルがコーティング溶液のアトマイズ噴霧を妨げるからである。加えて、従来のセルロースエーテル濃度の10質量%超は、顕著な変色を有し、このような溶液を、外観の影響が大きい用途に対して好適でないものにする。本発明のセルロースエーテルの極低粘度はこの問題を解決する。本発明のVLVセルロースエーテルの高い溶液濃度(すなわち、10質量%超のセルロースエーテルの水性溶液)は、溶液をスプレー噴霧する場合にアトマイズ噴霧の問題を被らない。本発明のVLVセルロースエーテルによれば、高濃度のセルロースエーテルのコーティング溶液を、従来のアプリケーター(すなわち、アトマイザーおよびスプレー装置)を用いて、アトマイズに閉塞なく、および/または支障なく、基材に適用することが可能になる。さらに、少なくとも10%のセルロースエーテルを有する本発明の溶液は、許容可能な低い着色を有し、外観の影響が大きい用途に対してこれを好適にする。
【0067】
10質量%超のセルロースエーテルを含有する水性溶液をスプレーできることのさらなる利点は、これが与える製造効率である。高濃度セルロースエーテル溶液をスプレーすることは、単位スプレー当たりで、10質量%セルロースエーテル濃度に制限される従来のセルロースエーテル溶液よりも多くのセルロースエーテルを送達する。より多くのセルロースエーテルを(i)より短い時間内で、(ii)より少ないコーティング溶液で、適用する能力は、基材をコートするために必要な時間および物質を低減することにより製造効率を与える。
【0068】
前記の方法および/または組成物は、本明細書で開示する2つ以上の態様を含むことができる。
【0069】
ある態様において、コートされた組成物を提供する。コートされた組成物は、基材および該基材上のコーティングを含む。コーティングは、VLVセルロースエーテル(粘度1.2cPから2cP未満)を含有する。VLVセルロースエーテルは、APHA値1〜100を有することができる。コーティング中のVLVセルロースエーテルはまた、VLCセルロースエーテル(1〜20APHA値)であることができる。ある態様において、乾燥コーティングは、基材の1質量%〜20質量%であり、かつ透明である。さらなる態様において、この1〜20質量%コーティングは、明澄であり、着色を有さず(すなわち、APHA値≦1)、または他には、無着色(color-free)であり、および/または無ヘイズ(haze-free)である。
【0070】
コーティングは、基材の一部の上に位置することができる。別の態様において、コーティングは基材全体を包囲し、そして基材をカプセル化する。ある態様において、コーティングは基材の表面全て(表面、側部、端部)に沿って均一である。
【0071】
ある態様において、コーティングは、少なくとも10質量%、または20質量%超、または10質量%〜30質量%の間(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)の極低粘度セルロースエーテルを含む。コーティングは、基材の1質量%〜20質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)の量で存在する。さらなる態様において、コーティングは単層である。
【0072】
本明細書で開示するVLV/VLCセルロースエーテルは、建材、食品用途、医薬剤用賦形剤、化粧品、および医薬用錠剤コーティング、薬剤、栄養補助製品、キャンディ、ハーブ製品、店頭販売医薬、および薬物において有用である。本発明のVLV/VLCセルロースエーテルはまた、味のマスキング用および香味固定用途に対して有用である。
【0073】
コートされた組成物は、本明細書で開示する2つ以上の態様を含むことができる。
【0074】
例のために、そして制限なく、本開示の例をここで与える。
【0075】

例1
METHOCEL F4M(29.5質量%MeO,5.7質量%HPO)を卵型フラスコに添加し、そして無水HClをシリンジで添加し、そしてフラスコを、回転させながら86℃の水浴中に下記表2に示す時間浸漬する。この手順のパラメータを下記表2に記載する。
【0076】
【表2】

【0077】
窒素ブランケットをサンプルに亘って配置する。炭酸水素ナトリウムを反応後に添加して酸を中和する。
【0078】
サンプル7をLoedige反応器に移し、10グラムの30%過酸化水素をスプレーによって添加する一方、Methocelを混合する。反応器ジャケットを75℃まで加熱する一方、混合を続ける。3時間後、生成物を反応器から取り出して試験する。APHA色は31.4であることが分かる。
【0079】
サンプル9(492g)をLoedige反応器に移し、20グラムの30%過酸化水素をこれにスプレーによって添加する一方、生成物を混合する。5分間の混合後、反応器ジャケットを75℃まで加熱し、混合を続けながら3時間保持する。次いで、別の10グラムの30%過酸化水素を添加し、混合を1時間75℃で続ける。Methocelを取り出して粘度および着色について試験する。粘度は2.17cP(2%溶液)である。APHA色は21.2である。
【0080】
例2
パイロットプラントバッチを、パイロットスケール転動反応器内で以下の条件下で形成する。
【0081】
出発Methocel:F4M(29.4質量%MeO,6.5質量%HPO)
ポンド:10
過酸化物処理:91グラムの30%過酸化水素
HCl:0.34質量%(Methocel基準)
時間:110分間
温度:95℃
添加する炭酸水素ナトリウム:40グラム
生成物2%粘度:1.66cp.
生成物APHA色:488
【0082】
この生成物を4つのサンプルに分け、次いで、種々の量の30%過酸化水素を各サンプルに別個のより小さいLoedige内で添加することによって試験する。これは、過酸化物を生成物上に室温でスプレーして10分間混合することによって行う。サンプルを次いで取り出して、そして一部を卵型フラスコに移す。これを次いで、75℃の水浴中で2時間浸漬しながら回転させる。APHA色を次いで各サンプルで測定する。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
例3
METHOCEL E4M(29.0質量%MeO,8.5質量%HPO)が出発物質である。サンプルは、LV反応ステップの終点で、目視で著しく黄色である。APHA色は測定しない。全LV反応は、250グラムのE4Mおよび0.6グラムの塩化水素を用い、そして水浴中に浸漬された回転している丸底フラスコ内で行う。窒素ブランケットを全ての実施で用いる。後処理を3時間75℃で回転フラスコ内で実施する。結果を下記表4に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
例4
METHOCEL E4M,250グラムを丸底フラスコに添加し、そして0.6グラムの無水塩化水素を添加する。フラスコを、ロータリーエバポレータ(rotovap)に取付けて、88℃の加熱浴内に5時間、回転および窒素パージさせながら浸漬する。次いで、著しく変色した粉末に炭酸水素ナトリウムを添加して混合する。次いで10グラムの30%過酸化水素を添加し、そしてフラスコをロータリーエバポレータ上に戻して浴中にさらに2時間浸漬する。得られる生成物を試験し、そして溶液粘度2.2cPおよびAPHA溶液色7.3を有することが分かる。
【0087】
例5
【0088】
【表5】

【0089】
サンプルNo.53を、表5に示す条件下で製造する。サンプルNo.53は終点粘度2.2cPおよびAPHA値33を有する。次いで、250gのサンプルNo.53を反応器に添加する。水を添加して水分量を4.1%以下にする。5グラムの30%過酸化水素を反応開始前に添加する。16時間75℃で反応させ、炭酸水素ナトリウムを添加して酸を中和し、そして10グラムの30%過酸化水素を添加する。フラスコをロータリーエバポレータに戻し、そして75℃の水浴中でさらに4時間加熱する。2つの実施(サンプルNo.55およびサンプルNo.57)をこの手順を用いて行う。サンプルNo.55およびサンプルNo.57を組合せて評価用サンプルを作製する。組合せたサンプル、サンプルNo.58は、2%粘度1.9cPおよびAPHA色10を有する。
【0090】
米国特許実務のために、本明細書で参照するいずれの特許、特許出願または公開公報の内容も参照によりこれらの全部を本明細書に組み込む(特に、構造、合成方法および当該分野で一般的な技術の開示に関し)。本明細書で記載する本発明の好ましい態様に対する種々の変更および改変が当業者に明らかとなることを理解すべきである。このような変更および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、そしてその意図する利点を損なうことなく、なされることができる。従って、このような変更および改変は特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエーテルの製造方法であって:
セルロースエーテルを第1の酸化剤および酸と接触させて混合物を形成すること;
混合物を加熱すること;
混合物を中和すること;
少なくとも第2の酸化剤を混合物に添加すること;ならびに
2質量%水性溶液で20℃にて測定したときの粘度が1.2cP〜50cPであるセルロースエーテルを形成すること;
を含む、方法。
【請求項2】
極低粘度エーテルを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
APHA値1〜100のセルロースエーテルを形成することを含む、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
混合物を温度70℃〜100℃で1〜20時間加熱することを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2の酸化剤の添加後に混合物を加熱することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該方法を酸素不含有環境中で実施することを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
混合物の水の量を3質量%〜6質量%の間に維持することを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
セルロースエーテルの製造方法であって:
セルロースエーテルを第1の酸化剤と接触させて混合物を形成すること;
混合物を加熱すること;
少なくとも第2の酸化剤を混合物に添加すること;ならびに
APHA値1〜20の極低着色セルロースエーテルを形成すること;
を含む、方法。
【請求項9】
加熱を、添加前、添加後およびこれらの組合せからなる群から選択される時点で実施することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
セルロースエーテルを酸および第1の酸化剤と接触させること;ならびに2質量%水性溶液で20℃にて測定したときの粘度が約3cP未満であるセルロースエーテルを形成すること;を含む、請求項8〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
加熱後に混合物を中和することを含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
基材をコーティングする方法であって:
極低粘度セルロースエーテルの水性溶液を基材上に適用すること;および
極低粘度セルロースエーテルを含むコーティングを該基材上に形成すること;
を含む、方法。
【請求項13】
水性溶液のAPHA値が1〜20である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基材全体をコーティングで包囲することを含む、請求項12〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
水性溶液が、少なくとも10質量%の極低粘度セルロースエーテルを含む、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
セルロースエーテルの2質量%水性溶液の20℃での粘度が1.2cPから2cP未満である、セルロースエーテル;
を含む、組成物。
【請求項17】
セルロースエーテルのコーティング溶液を含み、該セルロースエーテルがコーティング溶液の少なくとも10質量%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
水性溶液のAPHA値が1〜100である、請求項16〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
セルロースエーテルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項16〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
セルロースエーテルの2質量%水性溶液の20℃での粘度が3cP未満であり、そしてAPHA値が1〜100である、セルロースエーテル;
を含む、組成物。
【請求項21】
基材;および
該基材上の、極低粘度セルロースエーテルを含むコーティング;
を含む、コートされた組成物。
【請求項22】
コーティングが、少なくとも10質量%の極低粘度セルロースエーテルを含む、請求項21に記載のコートされた組成物。
【請求項23】
極低粘度セルロースエーテルが、極低着色セルロースエーテルである、請求項21〜22のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項24】
コーティングが基材全体を包囲している、請求項21〜23のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項25】
コーティングが、透明、明澄、無着色、無ヘイズ、およびこれらの組合せからなる群から選択される特性を有する、請求項21〜24のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項26】
コーティングが、基材の1質量%〜20質量%の量で存在する、請求項21〜25のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項27】
コーティングが単層である、請求項21〜26のいずれかに記載のコートされた組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503294(P2011−503294A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533212(P2010−533212)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082477
【国際公開番号】WO2009/061815
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】